(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】半導体デバイス用処理液、基板の処理方法、及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/42 20060101AFI20231221BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231221BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20231221BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20231221BHJP
C11D 7/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/304 647A
C11D7/50
C11D7/26
C11D7/04
(21)【出願番号】P 2023098535
(22)【出願日】2023-06-15
【審査請求日】2023-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 謙太
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/019134(WO,A1)
【文献】特開2006-098421(JP,A)
【文献】特開2003-068699(JP,A)
【文献】特開昭61-172147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/42
H01L 21/304
H01L 21/30
C11D 7/50
C11D 7/26
C11D 7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素化合物として、フッ化アンモニウム
、又は
、フッ化アンモニウム及びフッ化水素と、
水と、
環状エーテル化合物として、エチレンオキサイド、又は1,4-ジオキサンと、
前記環状エーテル化合物以外の水溶性有機溶媒として、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN-メチル-2-ピロリドンと、を含有し、
前記環状エーテル化合物に対する前記水溶性有機溶媒の質量比は、650,000~7,000,000であり、
前記環状エーテル化合物の含有量が、0.000001質量%~0.0003質量%である、半導体デバイス用処理液(ただし、グルコース、マンノース、又はガラクトースを含有する半導体デバイス用処理液、及び、無水酢酸又は酢酸を含有する半導体デバイス用処理液を除く)。
【請求項2】
前記半導体デバイスが、Alを含有する金属層を備えた基板を含み、
前記処理液が、前記金属層に対する処理に使用される、
請求項1に記載の半導体デバイス用処理液。
【請求項3】
前記半導体デバイスが、Cuを含有する金属層を備えた基板を含み、
前記処理液が、前記金属層に対する処理に使用される、
請求項1又は2に記載の半導体デバイス用処理液。
【請求項4】
前記半導体デバイスの製造に使用される、金属層を備えた基板について、
前記基板に対し、エッチング処理が施された後に発生する残渣物の除去に使用される、
請求項1又は2に記載の半導体デバイス用処理液。
【請求項5】
Al及び/又はCuを含有する金属層を備えた基板に対し、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記基板をドライエッチングする工程と、
含フッ素化合物として、フッ化アンモニウム
、又は
、フッ化アンモニウム及びフッ化水素と、環状エーテル化合物として、エチレンオキサイド、又は1,4-ジオキサンと、前記環状エーテル化合物以外の水溶性有機溶媒として、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN-メチル-2-ピロリドンと、水と、を含有し、前記環状エーテル化合物に対する前記水溶性有機溶媒の質量比は、650,000~7,000,000であり、前記環状エーテル化合物の含有量が、0.000001質量%~0.0003質量%である、半導体デバイス用処理液(ただし、グルコース、マンノース、又はガラクトースを含有する半導体デバイス用処理液、及び、無水酢酸又は酢酸を含有する半導体デバイス用処理液を除く)を用いて、残渣物を前記基板から除去する工程と、
を含有する、基板の処理方法。
【請求項6】
Al及び/又はCuを含有する金属層を備えた基板に対し、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記基板をドライエッチングする工程と、
含フッ素化合物として、フッ化アンモニウム
、又は
、フッ化アンモニウム及びフッ化水素と、環状エーテル化合物として、エチレンオキサイド、又は1,4-ジオキサンと、前記環状エーテル化合物以外の水溶性有機溶媒として、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN-メチル-2-ピロリドンと、水と、を含有し、前記環状エーテル化合物に対する前記水溶性有機溶媒の質量比は、650,000~7,000,000であり、前記環状エーテル化合物の含有量が、0.000001質量%~0.0003質量%である、半導体デバイス用処理液(ただし、グルコース、マンノース、又はガラクトースを含有する半導体デバイス用処理液、及び、無水酢酸又は酢酸を含有する半導体デバイス用処理液を除く)を用いて、残渣物を前記基板から除去する工程と、
を含有する半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス用処理液、基板の処理方法、及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の半導体素子や液晶パネル素子は、例えば、基板上にCVD蒸着された金属膜やSiO2膜等の絶縁膜上にレジストを均一に塗布し、これを選択的に露光、現像処理をしてレジストパターンを形成し、このパターンをマスクとして上記CVD蒸着された金属膜やSiO2膜等の絶縁膜が形成された基板を選択的にエッチングし、微細回路を形成した後、不要のレジスト層を除去して、製造される。
【0003】
上記CVD蒸着された金属膜としては、種々のものが用いられている。これらの金属膜は、基板上に、単層又は複数層で積層される。
【0004】
一方、近年の集積回路の高密度化に伴い、より高密度の微細エッチングが可能なドライエッチングが主流となっている。これらエッチング処理により、パターンの側部や底部等に、変質膜等の残留物が残存したり、あるいは他成分由来の残渣物が残存したりしてしまう。その他にも、エッチング時の金属膜を削るときに金属デポジションが発生してしまう。このような残渣物やデポジションの除去が不十分である場合、半導体製造の歩留まり低下をきたすなどの不具合が生じる。そのため、このような残渣物やデポジションを除去するための処理液(洗浄液、剥離液等と呼ばれることもある。)が使用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、フッ化水素酸、水溶性有機溶媒、及び芳香族ヒドロキシ化合物、アセチレンアルコール、カルボキシル基含有有機化合物及びその無水物、並びにトリアゾール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の防食剤を含有することを特徴とするレジスト用剥離液組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した残渣物やデポジション等は、エッチングガスの種類、基板上に形成される金属の種類、絶縁膜の種類、使用するレジストの種類等によって、それぞれ異なった組成のものが生成される。近年の半導体の様々な改良に伴う、各種処理における処理条件の過酷さや使用される金属、絶縁膜、レジストの多種多様化により、発生する残渣物の成分も多様化しており、残渣物の除去が難しいという事情がある。このような事情等も相まって、従来の処理液は更に改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エッチング後に発生する残渣物の除去性に優れるとともに、金属層が形成された基板に対する腐食防止効果に優れる半導体デバイス用処理液、基板の処理方法、及び半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、含フッ素化合物と、水と、環状エーテル化合物と、前記環状エーテル化合物以外の水溶性有機溶媒と、を含有する半導体デバイス用処理液とすることによって、上記課題が解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
<1>
含フッ素化合物と、水と、環状エーテル化合物と、前記環状エーテル化合物以外の水溶性有機溶媒と、を含有する半導体デバイス用処理液である。
<2>
前記環状エーテル化合物における環を形成する炭素数は2~4であり、環を形成する酸素原子数は1~2である、<1>に記載の半導体デバイス用処理液である。
<3>
前記環状エーテル化合物に対する前記水溶性有機溶媒の質量比は、100,000~15,000,000である、<1>又は<2>に記載の半導体デバイス用処理液である。
<4>
前記環状エーテル化合物の含有量が、0.000001質量%~10質量%である、
<1>又は<2>に記載の半導体デバイス用処理液である。
<5>
前記半導体デバイスが、Alを含有する金属層を備えた基板を含み、前記処理液が、前記金属層に対する処理に使用される、<1>又は<2>に記載の半導体デバイス用処理液である。
<6>
前記半導体デバイスが、Cuを含有する金属層を備えた基板を含み、前記処理液が、前記金属層に対する処理に使用される、<1>又は<2>に記載の半導体デバイス用処理液である。
<7>
前記半導体デバイスの製造に使用される、金属層を備えた基板について、前記基板に対し、エッチング処理が施された後に発生する残渣物の除去に使用される、<1>又は<2>に記載の半導体デバイス用処理液である。
<8>
Al及び/又はCuを含有する金属層を備えた基板に対し、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記基板をドライエッチングする工程と、含フッ素化合物と、水溶性有機溶媒と、水と、環状エーテル化合物と、を含有する半導体デバイス用処理液を用いて、残渣物を前記基板から除去する工程と、を含有する、基板の処理方法である。
<9>
Al及び/又はCuを含有する金属層を備えた基板に対し、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記基板をドライエッチングする工程と、含フッ素化合物と、水溶性有機溶媒と、水と、環状エーテル化合物と、を含有する半導体デバイス用処理液を用いて、残渣物を前記基板から除去する工程と、を含有する半導体デバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エッチング後に発生する残渣物の除去性に優れるとともに、金属層が形成された基板に対する腐食防止効果に優れる半導体デバイス用処理液、基板の処理方法、及び半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0013】
<半導体デバイス用処理液>
【0014】
本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、含フッ素化合物と、水と、環状エーテル化合物と、環状エーテル化合物以外の水溶性有機溶媒と、を含有する半導体デバイス用処理液である。
【0015】
((a)成分)
【0016】
(a)含フッ素化合物は、フッ素原子を含有する化合物である。含フッ素化合物は、金属イオンを含まない化合物であることが好ましい。含フッ素化合物の具体例としては、フッ化アンモニウム(AF)、フッ化水素(HF)、ホウフッ化アンモニウム、メチルアミンフッ化水素塩、エチルアミンフッ化水素塩、プロピルアミンフッ化水素塩、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、エタノールアミンフッ化水素塩、メチルエタノールアミンフッ化水素塩、ジメチルエタノールアミンフッ化水素塩、ヒドロキシルアミンフッ化水素塩、ジメチルヒドロキシルアミンフッ化水素塩、トリエチレンジアミンフッ化水素塩等が挙げられる。これらの中でも、フッ化アンモニウム(AF)、フッ化水素(HF)が好ましく、フッ化アンモニウムがより好ましい。そして、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(a)成分として2種以上を併用する場合の組み合わせとしては、フッ化アンモニウムとフッ化水素の2種を含むことが好ましく、(a)成分としてフッ化アンモニウムとフッ化水素の2種のみを含むことがより好ましい。そして、フッ化アンモニウムとフッ化水素を併用する場合、フッ化アンモニウムに対するフッ化水素の質量比(フッ化水素/フッ化アンモニウム)は、0.01(例えば、フッ化アンモニウム:フッ化水素=1:0.01)以上0.1以下(例えば、フッ化アンモニウム:フッ化水素=1:0.1)であることが好ましい。この質量比の下限は0.03(例えば、フッ化アンモニウム:フッ化水素=1:0.03)以上であることが好ましい。また、この質量比の上限は0.07(例えば、フッ化アンモニウム:フッ化水素=1:0.07)以下であることが好ましい。
【0018】
(a)成分の含有量は、0.01~10質量であることが好ましい。(a)成分の含有量の下限は、0.5質量%以上であることがより好ましく、0.8質量%以上であることが更に好ましい。(a)成分の含有量の上限は、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以下であることがより更に好ましい。
【0019】
((b)成分)
【0020】
(b)水は、例えば、半導体用デバイスの製造に適しているという観点から、脱イオン水(DIW)、超純水(UPW)、純水、高純度イオン水等を使用することができる。これらの中でも、脱イオン水が好ましい。
【0021】
(b)成分の含有量は、10~50質量%であることが好ましい。(b)成分の含有量の下限は、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。また、(b)成分の含有量の上限は、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが更に好ましい。
【0022】
((c)成分)
【0023】
(c)環状エーテル化合物は、分子中に酸素原子を含有する環を1個含有することが好ましい。そして、(c)環状エーテル化合物における環を形成する炭素数は2~4であることが好ましい。ここでいう環を形成する炭素数とは、環1個を形成する炭素数である。また、環状エーテル化合物の環を形成する酸素原子数は1~2であることが好ましい。
【0024】
(c)環状エーテル化合物の分子量は、特に限定されないが、200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、105以下であることが更に好ましく、90以下であることがより更に好ましく、50以下であることが一層更に好ましい。また、(c)成分の分子量の下限は、40以上であることが好ましい。
【0025】
(c)成分の具体例としては、例えば、エチレンオキシド(酸化エチレン、オキシラン;分子量44.5)、1,4-ジオキサン(分子量88.1)、テトラヒドロフラン(THF、分子量72.1)、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP、分子量100)等が挙げられる。これらの中でも、エチレンオキシド、1,4-ジオキサンが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。そして、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、(c)成分としては、エチレンオキシド及び/又は1,4-ジオキサンのみを含有することが好ましい。エチレンオキシド及び1,4-ジオキサンを併用する場合の質量比(エチレンオキシド:1,4-ジオキサン)は、例えば、10:90~90:10であり、15:85~85:15であることが好ましく、15:85~60:40であることがより好ましく、15:85~55:45であることが更に好ましい。
【0026】
(c)成分の含有量は、0.000001質量%~10質量%であることが好ましい。(c)成分の含有量の下限は、0.000005質量%以上であることがより好ましく、0.000008質量%以上であることが更に好ましく、0.00001質量%以上であることがより更に好ましい。また、(c)成分の含有量の上限は、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることがより更に好ましく、0.001質量%以下であることが一層更に好ましく、0.0003質量%以下であることがより一層更に好ましい。
【0027】
((d)成分)
【0028】
(d)水溶性有機溶媒は、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分と混和性のある水溶性有機溶媒であればよく、使用する(a)成分、(b)成分、及び(c)成分の種類や含有量を考慮して適切な水溶性有機溶媒を選択することができる。なお、(d)成分は、(c)成分に該当する化合物以外の溶媒であることが好ましい。また、(d)成分は、環状エーテル化合物以外の水溶性有機溶媒であることが好ましい。
【0029】
(d)成分の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアミド類;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン等のラクタム類;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体が挙げられる。これらの中でも、本実施形態の効果を更に向上させることができる観点から、スルホキシド類、アミド類、ラクタム類が好ましく、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等がより好ましく、ジメチルスルホキシドが更に好ましい。
【0030】
なお、(c)成分と(d)成分の組み合わせとしては、(c)成分としてエチレンオキシド及び1,4-ジオキサンからなる群より選択される少なくとも1種と、(d)成分としてジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種と、のみを含むことが好ましく;(c)成分としてエチレンオキシド及び/又は1,4-ジオキサンと、(d)成分としてジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種と、のみを含むことより好ましい。
【0031】
(d)成分の含有量は、50~80質量%であることが好ましい。(d)成分の含有量の下限は、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましい。また、(d)成分の含有量の上限は、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
【0032】
(c)環状エーテル化合物に対する(d)水溶性有機溶媒の質量比((d)/(c))は、例えば、100,000~15,000,000であり、200,000~10,000,000であることが好ましい。この質量比の下限は、600,000以上であることがより好ましく、650,000以上であることが更に好ましい。また、この質量比の上限は、9,000,000以下であることがより好ましく、8,000,000以下であることがより更に好ましく、7,000,000以下であることが一層更に好ましい。
【0033】
なお、(c)成分及び(d)成分を、上記の比率で配合することにより、エッチング後に発生する残渣物の除去性と金属への腐食抑制を両立することができる。そして、この比率を上記範囲内としたことにより得られる効果は、意外にも、溶媒として(d)成分のみを含有する場合に、特に優れたものとなる(ただし、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
【0034】
(その他の成分)
【0035】
本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、本実施形態の効果が得られる範囲であれば、(a)~(d)成分以外の任意成分を更に含有してもよい。例えば、防食剤、界面活性剤等が挙げられる。防食剤は、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、アセチレンアルコール、カルボキシル基含有有機化合物及びその無水物、トリアゾール化合物、並びに糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性イオン性界面活性剤が挙げられ、腐食防止性の観点でノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0036】
また、本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、溶媒として非水溶性有機溶媒を含有しないことが好ましい。非水溶性有機溶媒としては、例えば、ハロゲン置換又は非置換の炭化水素溶媒等が挙げられる。
【0037】
上述した組成を有する本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、(b)水を含有する水系処理液として好適に使用することができる。そして、かかる半導体デバイス用処理液は、以下に説明するような基板の処理液として、好適に使用できる。また、以下に説明する基板の処理方法に好適に使用できる。以下、半導体デバイス用処理液の使用態様に関する好適例を説明する。
【0038】
<処理液を用いる基板、及び、基板の処理方法>
【0039】
(基板)
【0040】
本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、半導体デバイスの製造に使用される、金属層を備えた基板について、基板上にレジストパターンが形成されて、エッチング処理が施された後に発生する残渣物を除去するのに好適である。より具体的には、基板上に設けたレジストパターン(例えば、フォトレジスト)をマスクとして、基板にエッチング処理を施すことができる。さらに、その後にアッシング処理を施してもよい。その後に、本実施形態に係る半導体デバイス用処理液を用いて、基板を処理することができる。または、化学機械研磨(CMP)の工程後の処理液(洗浄液)として用いてもよい。基板の処理は枚葉方式でもよい。処理としては、例えば、処理液への浸漬、処理液の塗布等を行うことができる。
【0041】
基板の構成については、本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、半導体デバイスが、Alを含有する金属層を備えた基板を含み、この処理液が金属層に対する処理に使用されるものとして、好適である。Alを含有する金属層としては、例えば、Al、Al合金、AlCu合金等を含有する金属層が挙げられる。
【0042】
あるいは、本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、半導体デバイスが、Cuを含有する金属層を備えた基板を含み、処理液が、金属層に対する処理に使用されるものとして、好適である。Cuを含有する金属層としては、例えば、Cu、Cu合金、AlCu合金等を含有する金属層が挙げられる。
【0043】
本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、基板の洗浄に好適に使用することができる。本実施形態に係る基板の処理方法の好適例としては、例えば、
Al及び/又はCuを含有する金属層を備えた基板に対し、レジストパターンを形成する工程と、
レジストパターンをマスクとして基板をドライエッチングする工程と、
含フッ素化合物と、水溶性有機溶媒と、水と、環状エーテル化合物と、を含有する半導体デバイス用処理液を用いて、残渣物を基板から除去する工程と、
を含有する、基板の処理方法が挙げられる。そして、上記の半導体デバイス用処理液としては、例えば、上述した組成を有する処理液を用いることができる。Al及び/又はCuを含有する金属層としては、上述したCu、Cu合金、Al、Al合金、及びAlCu合金等からなる群より選択される少なくとも1種を含有する金属層が例示されるが、金属層を備えた基板の具体例については、後述する。
【0044】
<半導体デバイスの製造方法>
【0045】
本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法の好適例としては、例えば、
(i)Al及び/又はCuを含有する金属層を備えた基板に対し、レジストパターンを形成する工程と、
(ii)レジストパターンをマスクとして基板をドライエッチングする工程と、
(iii)含フッ素化合物と、水溶性有機溶媒と、水と、環状エーテル化合物と、を含有する半導体デバイス用処理液を用いて、残渣物を上記基板から除去する工程と、
を含有する半導体デバイスの製造方法が挙げられる。
【0046】
そして、必要に応じて、(ii)工程(ドライエッチング工程)の後に、アッシング工程を行ってもよい。すなわち、(ii)工程は、(ii-1)レジストパターンをマスクとして上記基板をドライエッチングする工程と、(ii-2)レジストパターンをアッシングする工程と、を行う工程であってもよい。本実施形態に係る製造方法(あるいは処理方法)は、基板上に設けたレジストパターン(フォトレジストパターン等)をマスクとして、該基板にエッチング処理及びアッシング処理をした後、上述した半導体デバイス用処理液を使用して、基板を処理することができる。
【0047】
(i)工程について説明する。例えば、シリコンウエハやガラス等の基板上に、フォトレジスト層を形成する。基板上には、所望により、蒸着等によって、導電性金属膜・金属酸化膜や、SiO2膜等の絶縁膜を形成してもよい。導電性金属膜・金属酸化膜等の金属としては、例えば、アルミニウム(Al);アルミニウム-ケイ素(Al-Si)等のアルミニウム合金;銅(Cu);銅-ケイ素(Cu-Si)等の銅(Cu合金);アルミニウム-銅(Al-Cu)、アルミニウム-ケイ素-銅(Al-Si-Cu)等のアルミニウム・銅合金(AlCu合金);チタン(Ti);チタンナイトライド(TiN)、チタンタングステン(TiW)等のチタン合金(Ti合金);タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)等が用いられ、これらは単層~複数層にて基板上に形成される。特に、Al、Al合金、Cu、Cu合金、AlCu合金、Ti、Ti合金等からなる群より選択される少なくとも1種を含有する金属層を有する基板に上記処理を施した場合には、残渣物が付着し、デポジションが発生しやすい。この点、本実施形態に係る半導体デバイス用処理液によれば、特に優れた残渣物除去性を発揮することができる。さらに、Al、Al合金、Cu、Cu合金、及びAlCu合金等からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第1の金属層と、Ti、及びTi合金等からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第2の金属層と、を備える基板の場合に、より優れた効果を発揮することができる。
【0048】
(ii)工程について説明する。レジストとして、例えば、フォトレジストパターンを基板上に形成する。その場合の露光条件及び現像条件は、目的や使用するフォトレジストに応じて、適宜選択し得る。露光は、例えば、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザ、X線、電子線等の活性光線を発光する光源(例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ等)により、所望のマスクパターンを介して、フォトレジスト層を露光することができる。あるいは、電子線を走査しながらフォトレジスト層に照射してもよい。その後、必要に応じて、露光後加熱処理(ポストエクスポージャーベイク)を行ってもよい。
【0049】
そして、フォトレジスト用現像液を用いてパターン現像を行い、所定のフォトレジストパターンを得ることができる。なお、現像方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法を採用することができる。例えば、フォトレジストが塗布された基板を現像液に一定時間浸漬した後、水洗して乾燥させる浸漬現像;塗布されたフォトレジストの表面に現像液を滴下し、一定時間静置した後、水洗乾燥するパドル現像;フォトレジスト表面に現像液をスプレーした後に水洗乾燥するスプレー現像等、目的に応じて適切な現像方法を採用することができる。
【0050】
続いて、形成されたフォトレジストパターンをマスクとして、上記導電性金属膜・金属酸化膜や絶縁膜を選択的にドライエッチング等によりエッチングし、微細回路を形成する。その後、必要に応じて、不要のフォトレジスト層をプラズマアッシングにより除去する。
【0051】
(iii)工程について説明する。(ii)工程でエッチング、あるいは、エッチング及びアッシングを行った際、基板表面に、レジスト残渣や金属膜エッチング時に発生した金属デポジションが残渣物として付着、残存する。これら残渣物を本実施形態に係る半導体デバイス用処理液に浸漬あるいは接触させる等して、基板上に付着、残存する残渣物を除去する。本実施形態に係る半導体デバイス用処理液を用いることにより、これら残渣物が容易に除去される。特にAl、Al合金、Cu、Cu合金、AlCu合金等の金属を含有する金属層を備える基板に対する腐食防止効果に優れる。さらに、Al、Al合金、Cu、Cu合金、及びAlCu合金等からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第1の金属層と、Ti、及びTi合金等からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第2の金属層と、を備える基板の場合に、腐食防止効果及び残渣物除去性について、より優れた効果を発揮することができる。
【0052】
本実施形態に係る半導体デバイス用処理液を用いた処理条件は、目的とする半導体デバイスの構成、材料、及び特性、並びに、エッチング及びアッシングの条件等を考慮して、好適な条件を選択することができる。例えば、処理液に浸漬させることによって処理する場合、浸漬時間は1~60分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましい。また、浸漬時の温度は、5~30℃であることが好ましく、20~25℃であることがより好ましい。
【0053】
半導体デバイス用処理液を用いた処理の後は、必要に応じて、基板をリンスすることができる。例えば、基板(又は半導体デバイス)は、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、水、水及び界面活性剤混合物、並びにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いてリンスすることができる。リンスの後、窒素ガス、スピンドライサイクル、蒸気乾燥等によって乾燥させることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、エッチング後に発生する残渣物の除去性に優れるとともに、金属層が形成された基板に対する腐食防止効果に優れる。さらに、エッチング及びアッシング後に使用した場合においても、優れた効果を発揮することができる。残渣物として、レジストから発生する残渣(レジスト残渣)だけでなく、基板及び金属層から発生する残渣(金属酸化物の残渣)等も効率よく除去できる。
【0055】
そして、本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、水系の処理液とすることができるため、環境負荷を軽減できるだけでなく、後続のリンス工程において、処理した基板(半導体デバイス)から効率よく処理液を留去することも期待できる。さらに、本実施形態に係る半導体デバイス用処理液は、金属イオンを含有しない態様(メタルフリーな処理液)として使用することもできる。
【実施例】
【0056】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において特に断りがない限り、数量は質量基準であり、実験は25℃、大気圧の条件下で行った。
【0057】
<使用した成分>
【0058】
本実施例において使用した含フッ素化合物、水、環状エーテル化合物、水溶性有機溶媒は以下のとおりである。表1に示す濃度となるように各成分を調製し、各処理液を得た。なお、(d)水溶性有機溶媒は各処理液の残部として調製を行った。表1における(d)の質量%の値は(d)/(c)の質量比の算出の根拠として示す。
【0059】
(a)含フッ素化合物
・フッ化アンモニウム(AF)
・フッ化水素(HF)
(b)水
・超純水(DIW)
(c)環状エーテル化合物
・エチレンオキサイド(EO:酸化エチレン、3員環、酸素原子1個)
・1,4-ジオキサン(DO:6員環、酸素原子2個)
(d)水溶性有機溶媒
・ジメチルスルホキシド(DMSO)
・N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
・N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
【0060】
<実施例1>
【0061】
商業的に入手可能なエッチング装置中で塩素系ガスによってレジストパターンをマスクとしたドライエッチングを行い、次いで酸素・フッ素混合ガスによる脱塩素処理とアッシング処理によるレジストパターン除去を行うことよって、TiN/Ti/AlCu/TiN/Ti/SiO2のスタックを有するシリコンウエハ基板を用いて試験した。なお、AlCuは、アルミニウム-銅合金である。そして、このスタック中のAlCuは側面が露出した状態であり、当該側面や、スタックが存在していないウエハ基板の表面には、レジスト残渣物やTiO系残渣物(以下、これらを「残渣物」と総称することがある。)が付着していた。
【0062】
続いて、ウエハ基板を、約1cm×約2cmの小サンプル片に切断し、当該小サンプル片を実施例1の処理液(表1参照)に5分間又は10分間それぞれ浸漬洗浄した。(残渣物除去性の評価では、浸漬時間5分間として、AlCuへの腐食防止性の評価では浸漬時間10分間とした。)浸漬後、小サンプル片を取り出し、超純水でリンス処理を行った。その後、SEM(走査型電子顕微鏡:倍率2万倍)でスタック側面におけるAlCu層とTi含有層の界面を観察して、下記の基準で、残渣物除去性、及びAlCuへの腐食防止性を、それぞれ評価した。
【0063】
<実施例2~11、比較例1~4>
【0064】
表1に記載の条件に変更した点以外は、実施例1と同様にして、処理液を作製した。そして、実施例1と同様にして小サンプル片を準備して、下記の基準で、残渣物除去性、及びAlCuへの腐食防止性を、それぞれ評価した。
【0065】
<評価条件>
【0066】
・残渣物除去性の評価
◎:小サンプル片を処理液に5分間浸漬した後にSEMで観察した際、18μm2の撮像エリア内で確認された残渣がなく、層の界面が確認できた。
〇:小サンプル片を処理液に5分間浸漬した後にSEMで観察した際、18μm2の撮像エリア内で確認された残渣があるものの、層の界面が確認できた。
×:小サンプル片を処理液に5分間浸漬した後にSEMで観察した際、撮像エリア内で確認された残渣があり、層の界面が確認できなかった。
【0067】
・AlCuへの腐食防止性の評価
◎:小サンプル片を処理液に10分間浸漬した後にSEM写真でAlCuの表面を観察した際には、腐食が確認されなかった。
〇:小サンプル片を処理液に5分間浸漬した後には、腐食が観測されず、10分間浸漬した後にSEM写真でAlCuの表面を観察した際には、腐食がわずかに確認された。
△:小サンプル片を処理液に5分間浸漬した後には、腐食が観測されず、10分間浸漬した後にSEM写真でAlCuの表面を観察した際には、腐食が確認された。
×:小サンプル片を処理液に5分間浸漬した後に、腐食が観測された。
【0068】
表1に各実施例及び各比較例の処理液の組成を示し、表2に各実施例及び各比較例の評価結果を示す。
【0069】
【0070】
【0071】
以上より、各実施例に係る処理液は、エッチング後に発生する残渣物の除去性に優れるとともに、金属層が形成された基板に対する腐食防止効果に優れることが、少なくとも確認された。
【要約】
【課題】エッチング後に発生する残渣物の除去性に優れるとともに、金属層が形成された基板に対する腐食防止効果に優れる半導体デバイス用処理液、基板の処理方法、及び半導体デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】含フッ素化合物と、水と、環状エーテル化合物と、前記環状エーテル化合物以外の水溶性有機溶媒と、を含有する半導体デバイス用処理液、基板の処理方法、及び半導体デバイスの製造方法を提供する。
【選択図】なし