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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20231222BHJP
【FI】
H01L33/48
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022078658
(22)【出願日】2022-05-12
(65)【公開番号】P2023051712
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021161016
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】▲蔭▼山 弘明
(72)【発明者】
【氏名】西野 光治
(72)【発明者】
【氏名】小関 健司
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094461(WO,A1)
【文献】特開2015-088744(JP,A)
【文献】国際公開第2021/182139(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0152827(US,A1)
【文献】特開2011-200933(JP,A)
【文献】特開平10-012670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、光取り出し面と前記光取り出し面の反対側に位置する面に配置された第1接合部とを備える複数の第1素子であって、前記光取り出し面が前記支持基板と対向するように前記支持基板上に配置された前記複数の第1素子とを含む第1部材と、配線基板と、前記配線基板上に配置された複数の第2接合部とを含む第2部材を準備する工程と、
前記第1接合部と前記第2接合部とを第1接合条件で接合し、前記支持基板を前記第1素子から離す工程と、
前記複数の第1素子の電気的特性を評価する工程と、
前記評価する工程により不良と判断された前記第1素子の前記第1接合部を前記第2接合部から離すことにより、前記不良と判断された前記第1素子を前記配線基板から除去する工程と、
前記配線基板における前記除去された前記第1素子が載置されていた領域に、第3接合部を備える第2素子を載置することにより、前記第3接合部と、前記除去された前記第1素子の第1接合部が接合されていた前記第2接合部とを接触させる工程と、
前記第1接合部と前記第2接合部とを第2接合条件で接合すると共に、前記第3接合部と前記除去された前記第1素子の前記第1接合部が接合されていた前記第2接合部とを前記第2接合条件で接合する工程と、
を備え、
前記第1接合部、前記第2接合部及び前記第3接合部は金を含む発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2接合条件の温度は前記第1接合条件の温度よりも高いか、前記第2接合条件の荷重は前記第1接合条件の荷重よりも高いか、又は、前記第2接合条件の温度が前記第1接合条件の温度よりも高く且つ前記第2接合条件の荷重が前記第1接合条件の荷重よりも高い請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1接合条件の温度は80度以上200度以下であり、前記第2接合条件の温度は200度以上300度以下である請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に印加する荷重は10MPa以上150MPa未満であり、前記第2接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に印加する荷重は40MPa以上200MPa以下である請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間は、前記第1接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間よりも長い請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数の第1素子は前記支持基板に行列状に配列されており、前記複数の第2接合部は前記配線基板に行列状に配列されている請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記不良と判断された前記第1素子を前記配線基板から除去する工程は、前記不良と判断された前記第1素子を加熱する工程を有する請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1素子を加熱する工程は、前記第1素子にレーザ光を照射する工程を有する請求項7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記不良と判断された前記第1素子を前記配線基板から除去する工程は、治具を前記不良と判断された前記第1素子に接着させて、前記配線基板から離す工程を有する請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1枚の配線基板に多数の半導体素子を搭載した発光装置が開示されている。このような発光装置においては、配線基板に搭載された半導体素子の中に不良品があった場合に、この不良品を除去し、良品と交換する工程が必要となる。しかしながら、この交換工程により、発光装置の生産性が低下するという問題が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-074005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、不良品の素子を効率よく交換することができる発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法は、支持基板と、光取り出し面と前記光取り出し面の反対側に位置する面に配置された第1接合部とを備える複数の第1素子であって、前記光取り出し面が前記支持基板と対向するように前記支持基板上に配置された前記複数の第1素子とを含む第1部材と、配線基板と、前記配線基板上に配置された複数の第2接合部とを含む第2部材と、を準備する工程と、前記第1接合部と前記第2接合部とを第1接合条件で接合し、前記支持基板を前記第1素子から離す工程と、前記複数の第1素子の電気的特性を評価する工程と、前記評価する工程により不良と判断された前記第1素子の前記第1接合部を前記第2接合部から離すことにより、前記不良と判断された前記第1素子を前記配線基板から除去する工程と、前記配線基板における前記除去された前記第1素子が載置されていた領域に、第3接合部を備える第2素子を載置することにより、前記第3接合部と、前記除去された前記第1素子の第1接合部が接合されていた前記第2接合部とを接触させる工程と、前記第1接合部と前記第2接合部とを第2接合条件で接合すると共に、前記第3接合部と前記除去された前記第1素子の前記第1接合部が接合されていた前記第2接合部とを前記2接合条件で接合する工程と、を備える。前記第1接合部、前記第2接合部及び前記第3接合部は金を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、不良品の素子を効率よく交換することができる発光装置の製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図1B図1Bは、第1部材を示す下面図である。
図1C図1Cは、第2部材を示す上面図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図2B図2Bは、図2Aの領域IIBを示す一部拡大断面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。
図8A図8Aは、第1の実施形態に係る発光装置を示す上面図である。
図8B図8Bは、図8Aに示すVIIIB-VIIIB線による断面図である。
図9図9は、第1の実施形態の変形例に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る発光モジュールを示す斜め上側から見た斜視図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る発光モジュールを示す斜め下側から見た斜視図である。
図12図12は、図10の領域XIIを示す一部拡大上面図である。
図13図13は、図10に示すXIII-XIII線による断面図である。
図14A図14Aは、図13の領域XIVAを示す一部拡大断面図である。
図14B図14Bは、図14Aの領域XIVBを示す一部拡大断面図である。
図15図15は、第2の実施形態における発光素子を示す上面図である。
図16図16は、図15に示すXVI-XVI線による断面図である。
図17図17は、第2の実施形態の第1の変形例における発光素子を示す上面図である。
図18図18は、図17に示すXVIII-XVIII線による断面図である。
図19図19は、第2の実施形態の第2の変形例における発光素子を示す上面図である。
図20A図20Aは、第3の実施形態に係る発光モジュールを示す上面図である。
図20B図20Bは、1つの波長変換部材を示す一部拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、断面図として切断面のみを示す端面図を用いる場合もある。
【0009】
<第1の実施形態>
図1Aは本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。図1Bは第1部材を示す下面図である。図1Cは第2部材を示す上面図である。
図2Aは本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。図2B図2Aの領域IIBを示す一部拡大断面図である。
図3図7は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。
図8Aは本実施形態に係る発光装置を示す上面図である。図8B図8Aに示すVIIIB-VIIIB線による断面図である。
【0010】
(第1部材と第2部材を準備する工程)
図1A及び図1Bに示すように、第1部材10を準備する。第1部材10は、1つの支持基板11と、複数の第1素子12とを含む。複数の第1素子12は、光取り出し面と、光取り出し面の反対側に位置する面に配置された第1接合部13とを備える。複数の第1素子12は、光取り出し面が支持基板11と対向するように支持基板11上に配置されている。各第1素子12は、第1接合部13を有している。第1接合部13は金(Au)を含む。例えば、第1接合部13の少なくとも最表面は金(Au)からなる。第1素子12の光取り出し面とは、第1素子12からの光が主に取り出される面である。
【0011】
複数の第1素子12は、例えば、支持基板11の第1面11aに行列状に配列されている。但し、第1素子12の配置は行列状には限定されず、任意である。第1素子12は、例えば、発光素子であり、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。各第1素子12は、例えば、2つの第1接合部13を備える。第1素子12の2つの第1接合部13は、第1素子12のアノード電極又はカソード電極として機能する。
【0012】
支持基板11は、例えば移載用の治具であり、例えば、シリコン、ガラス又はサファイアを含む。支持基板11の第1面11aは、粘着性を有していてもよい。この場合、第1素子12は、支持基板11の粘着性を有する第1面11aに接合されている。支持基板11には、例えば、サファイア基板の表面に粘着性の樹脂を設けた部材を用いることができる。
【0013】
一方、図1A及び図1Cに示すように、第2部材20を準備する。第2部材20は、1つの配線基板21と、複数の第2接合部22を含む。複数の第2接合部22は、配線基板21上に配置されている。第2接合部22は、金を含む。例えば、第2接合部22の少なくとも最表面は金(Au)からなる。
【0014】
複数の第2接合部22は、例えば、配線基板21の第2面21aに行列状に配列されている。但し、第2接合部22の配置は行列状には限定されず、任意である。複数の第1接合部13と複数の第2接合部22は、支持基板11の第1面11aと配線基板21の第2面21aを対向させたときに、1つの第1接合部13が1つの第2接合部22それぞれに接触する位置に配置されている。
【0015】
図1A及び図1Cに示す例では、配線基板21は、絶縁性の母材23と、母材23の内部に配置された導電性を有する複数の配線24を含む。第2面21aにおいては、母材23に複数の開口部25が形成されており、複数の開口部25のそれぞれには配線24が露出している。配線24の表面のうち、開口部25において露出していない領域は、母材23により覆われている。第2接合部22は、配線基板21の第2面21a及び開口部25内に配置されている。第2接合部22の断面形状は、例えば、平坦に近い上面を有する形状である。各第2接合部22は、開口部25で各配線24に接続されている。なお、第2接合部22の断面形状は、平坦に近い上面を有する形状には限定されず、例えば、上面に開口部25の形状を反映した凹部を有する形状であってもよい。
【0016】
(第1接合部と第2接合部とを第1接合条件で接合する工程)
次に、図2A及び図2Bに示すように、第1接合部13と第2接合部22とを第1接合条件で接合する。そして、支持基板11を第1素子12から離す。第1接合部13と第2接合部22との接合は、支持基板11の第1面11aを配線基板21の第2面21aに対向させ、第1接合部13を第2接合部22に接触させることで行う。
【0017】
第1接合条件においては、例えば、第1接合部13と第2接合部22に熱を印加し、相互に近づく方向に荷重を印加する。第1接合条件において、例えば、温度を80度以上200度以下として熱を印加することが好ましい。第1接合条件の温度は、例えば、140度とする。第1接合条件において、印加する荷重は、例えば、10MPa以上150MPa未満とすることが好ましく、10MPa以上100MPa未満とすることがさらに好ましく、10MPa以上40MPa未満とすることがさらに好ましい。第1接合条件の加重は、例えば、30MPaとする。第1接合条件において荷重を印加する時間は、例えば、0.1秒以上10秒以下とすることが好ましい。第1接合条件の荷重を印加する時間は、例えば、0.5秒とする。
【0018】
第1接合部13を第2接合部22に接触させる前に、第1部材10の支持基板11における第1素子12が配置された第1面11a側と、第2部材20の配線基板21における第2接合部22が配置された第2面21a側に対して、プラズマ処理を施してもよい。これにより、第1接合部13の表面と第2接合部22の表面を活性化させ、第1接合部13と第2接合部22との接合性をより向上させることができる。第1接合条件において、超音波は印加しないことが好ましい。
【0019】
この工程では、第1接合部13及び第2接合部22は接合前の形状を概ね維持したまま、第1接合部13及び第2接合部22の表面の一部同士が接合する。例えば、接合前の第2接合部22の上面に凹部が形成されている場合は、第1接合部13と第2接合部22の凹部との間に空隙が残留してもよい。第1接合部13と第2接合部22とを第1接合条件で接合することにより、第1接合部13と第2接合部22は電気的に接続されるが、機械的な接合強度は後述する第2接合条件による接合強度よりも低い状態となる。以下、第1接合条件によって実現したこのような状態を、「仮接合状態」という。これにより、第1素子12が配線基板21に接合される。その後、支持基板11を第1素子12から離す。
【0020】
(第1素子の電気的特性を評価する工程)
次に、図3に示すように、配線基板21を介して複数の第1素子12に電力を供給し、第1素子12の電気的特性を評価する。第1素子12が発光素子である場合には、評価する電気的特性は、例えばそれぞれの発光素子に電圧を印加したときに発光素子から出射される光の輝度である。このような電気的特性を評価することにより、配線基板21に接合された複数の第1素子12を、良品と不良品とに分類する。例えば、基準値以上の輝度である発光素子を良品とし、基準値よりも低い輝度である発光素子を不良品とする。以下、不良と判断された第1素子12を「第1素子12x」ともいう。また、第1素子12の電気的特性を評価する工程において不良と判断された第1素子12が接合された第2接合部22を「第2接合部22r」という。
【0021】
(不良と判断された第1素子を配線基板から除去する工程)
次に、図4及び図5に示すように、不良と判断された第1素子12xの第1接合部13を配線基板21の第2接合部22rから離すことで、不良と判断された第1素子12xを配線基板21から除去する。例えば、本実施形態においては、第1素子12xにレーザ光32を照射することにより、第1素子12xを加熱する。これにより、第1接合部13と第2接合部22rとの界面に熱応力が印加され、第1素子12xの第1接合部13が第2接合部22rから除去される。
【0022】
第1素子12xが半導体層を含む発光素子である場合には、この半導体層の上面にレーザ光32を集光させる。第1素子12xがサファイア基板と、サファイア基板上に配置された半導体層とを含む場合には、レーザ光32をサファイア基板側から照射し、サファイア基板を透過させて半導体層の上面にレーザ光32を集光させる。これにより、レーザ光32が集光された半導体層が熱膨張することで第2接合部22rとの間に熱応力が発生し、第1接合部13が第2接合部22rから除去される。
【0023】
第1素子12xは、例えば、第1素子12xを粘着性のある治具に接着させて除去してもよい。また、第1素子12xは、吸引器で吸引して除去してもよく、空気を部分的に吹き付けることで吹き飛ばして除去してもよい。
【0024】
(第3接合部と第2接合部とを接触させる工程)
次に、図6に示すように、第2素子15を準備する。第2素子15は、例えば、第1素子12と同じ構造を有する素子である。第2素子15は、第3接合部16を備える。第3接合部16は金を含む。例えば、第2素子15は2つの第3接合部16を備える。第2素子15の2つの第3接合部16は、第2素子15のアノード電極又はカソード電極として機能する。
【0025】
次に、治具34によって第2素子15を保持し、配線基板21における除去された第1素子12xが載置されていた領域に、第2素子15を載置する。これにより、第2素子15の第3接合部16と第2接合部22rとを接触させる。次に、治具34を第2素子15から離す。
【0026】
第2素子15の第3接合部16と第2接合部22rとを接触させる前に、配線基板21及び第2素子15に対してプラズマ処理を施してもよい。これにより、第2接合部22rの表面と、第2素子15の第3接合部16の表面が活性化する。このとき、プラズマが配線基板21と第1素子12との間に回り込むことにより、良品と判断された第1素子12の第1接合部13及びこの第1接合部に仮接合された第2接合部22の表面も活性化する。これにより、後述する第2接合条件で接合する工程において、第1接合部13と第2接合部22とをより強固に接合することができる。
【0027】
また、第2素子15の第3接合部16と第2接合部22rとを接触させる前に、配線基板21に対してレーザ光を照射してもよい。これにより、不良と判断された第1素子12xを配線基板21から除去する工程の後、配線基板21の表面に金属の残渣等が残っていたとしても、これを除去することができる。その結果、後述する第2接合条件で接合する工程において、第2素子15の第3接合部16と第2接合部22rとをより強固に接合することができる。
【0028】
(第2接合条件で接合する工程)
次に、図7に示すように、治具35を用いて第1素子12及び第2素子15に対して配線基板21に向かう荷重を印加する。これにより、仮接合状態にある第1接合部13と第2接合部22とを接合すると共に、新たに載置された第2素子15の第3接合部16と、除去された第1素子12xの第1接合部13が接合されていた第2接合部22rとを接合する。治具35は支持基板11と同じ構成のものであってもよく、支持基板11を再び用いてもよい。
【0029】
この工程における第1接合部13と第2接合部22との接合及び第3接合部16と第2接合部22rとの接合は、第2接合条件により行う。第2接合条件は、第1接合条件と比較して、温度又は荷重のうち、少なくとも一方が高い。すなわち、第2接合条件の温度は第1接合条件の温度よりも高いか、第2接合条件の荷重は第1接合条件の荷重よりも高いか、又は、第2接合条件の温度が第1接合条件の温度よりも高く且つ第2接合条件の荷重が第1接合条件の荷重よりも高い。また、第2接合条件において荷重を印加する時間は、第1接合条件において荷重を印加する時間よりも長いことが好ましい。なお、第1接合条件の荷重及び温度と第2接合条件の荷重及び温度のうち少なくとも一方を同じとし、第2接合条件において荷重を印加する時間を、第1接合条件において荷重を印加する時間よりも長くしてもよい。
【0030】
例えば、第2接合条件においては、温度を200度以上300度以下とすることが好ましい。例えば、第2接合条件の温度は200度とする。また、第2接合条件においては、第1接合部13と第2接合部22に印加する荷重を40MPa以上200MPa以下とすることが好ましい。第2接合条件において、例えば、印加する荷重を120MPaとする。更に、第2接合条件においては、接合時間を1秒以上60秒以下とすることが好ましい。第2接合条件において、接合時間は、例えば、30秒とする。なお、第2接合条件においても、第1接合条件と同様に、超音波は印加しないことが好ましい。また、第2接合条件において、荷重を印加しなくてもよい。
【0031】
これにより、第1接合部13と第2接合部22がより強固に接合されると共に、第3接合部16と第2接合部22rが接合される。このとき、相互に接合された2つの接合部は一体化し、界面の大部分が消滅する。また、界面に空隙が発生していた場合には、空隙の大部分が消滅する。これにより、第3接合部16と第2接合部22rは電気的に接続され、且つ、第1接合部13と第2接合部22との機械的な接合強度および第3接合部16と第2接合部22rとの機械的な接合強度は、仮接合状態よりも高くなる。以下、第2接合条件によって実現したこのような状態を、「本接合状態」という。第2接合条件により接合することで、第1素子12及び第2素子15が配線基板21に強固に接合される。次に、治具35を第1素子12及び第2素子15から離す。このようにして、発光装置1が製造される。
【0032】
なお、図3に示す第1素子12の電気的特性の評価工程において、全ての第1素子12が良品と判断された場合には、図4及び図5に示す第1素子12xの除去工程と、図6に示す第2素子15の載置工程は行わず、図7に示す第2接合条件で接合する工程を実施する。
【0033】
(発光装置)
図8A及び図8Bに示すように、本実施形態に係る発光装置1は、配線基板21と、第4接合部36が配置された第1素子12と、第4接合部36が配置された第2素子15を含む。配線基板21は、絶縁性の母材23と、母材23中に配置された導電性を有する複数の配線24を含む。第1素子12及び第2素子15は、配線基板21の第2面21aにおいて、例えば、行列状に配列されている。
【0034】
第1素子12及び第2素子15は、例えば、同じ構造を有する素子であり、例えば、発光ダイオードである。第1素子12及び第2素子15は、第4接合部36を介して配線基板21の配線24に電気的に接続されると共に、機械的に接合されている。第4接合部36は、第1接合部13と第2接合部22、又は、第3接合部16と第2接合部22rが一体化して形成されたものである。したがって、第4接合部36は金を含む。
【0035】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、1回目の接合工程として、図2A及び図2Bに示す工程において、複数の第1素子12の第1接合部13を配線基板21の第2接合部22に接合した後、図3に示す工程において、各第1素子12の電気的特性を評価する工程を行う。次に、第1素子12の電気的特性を評価する工程において不良と判断された第1素子12xを、図4及び図5に示す工程において除去する。次に、図6に示す工程において、配線基板21における第1素子12xが除去されたあとの領域に第2素子15を載置する。そして、2回目の接合工程として、図7に示す工程において、良品と判断された第1素子12の第1接合部13を第2接合部22に接合すると共に、新たに載置した第2素子15を不良と判断された第1素子12xが接合されていた第2接合部22rに接合する。
【0036】
これにより、1回目の接合工程において、複数の第1素子12を一括して配線基板21に電気的に接続し、配線基板21を介して複数の第1素子12の電気的特性を評価することができる。そして、第1素子12の電気的特性を評価した結果、不良と判断された第1素子12xのみを除去した後、配線基板21のうち第1素子12xを除去した領域に第2素子15を載置する。その後、2回目の接合工程を行うことにより、良品の第1素子12が配線基板21に接合されると共に、新たな第2素子15も配線基板21に接合される。この結果、不良品の第1素子12xを効率よく交換することができ、発光装置1の生産性が向上する。
【0037】
また、本実施形態においては、1回目の接合工程を第1接合条件で行い、2回目の接合工程を第2接合条件で行っている。第2接合条件は第1接合条件と比較して、温度又は荷重のうち少なくとも一方が高い。これにより、第1接合条件による接合工程においては、第1接合部13は第2接合部22に対して電気的には接続されるが、機械的な接合強度は本接合状態よりも低い仮接合状態となる。そのため、第1素子12の電気的特性の評価を行いつつ、不良と判断された第1素子12xの除去が容易になる。一方、第2接合条件による接合工程においては、第1接合部13と第2接合部22の接合強度および第3接合部16と第2接合部22rの接合強度は、仮接合状態よりも高い本接合状態となる。この結果、第1素子12及び第2素子15と配線基板21との接合強度を高くすることができるため、発光装置1の信頼性が向上する。
【0038】
更に、本実施形態においては、不良と判断された第1素子12xを加熱することにより、この第1素子12xの第1接合部13と配線基板21の第2接合部22rとの間に熱応力を発生させている。これにより、配線基板21の損傷を抑制しつつ、第1接合部13と第2接合部22rとの結合を解除できる。また、第1素子12xにレーザ光32を照射することにより、複数の第1素子12のうち不良と判断された第1素子12xのみを精度よく加熱できる。
【0039】
更にまた、本実施形態においては、第1接合部13、第2接合部22及び第3接合部16が金を含む。1回目の接合工程において、第1接合部13の金を含む部分と第2接合部22の金を含む部分とが接合される。例えば、第1接合部13の金からなる最表面と第2接合部22の金からなる最表面とが接合される。その後、第1接合部13と第2接合部22の接合界面に熱応力を生じさせることで不良と判断された第1素子12xを除去する。ここで、1回目の接合工程において、例えば、第1接合部13と第2接合部22とを錫を含む接合材料を用いて接合する場合、不良と判断された第1素子12xを除去した後、第2接合部22の表面に接合材料の残渣が残ってしまう。また、1回目の接合工程において、例えば、第1接合部13と第2接合部22とをめっきを形成することにより接合する場合においても、不良と判断された第1素子12xを除去した後、第2接合部22rの表面にめっきの残渣が残ってしまう。そのため、第2素子15を第1素子12xが載置されていた第2接合部22rに接合する際、接合材料またはめっき材料の残渣により第2素子15と第2接合部22rとの接合強度が低くなる可能性がある。錫を含む接合材料を用いた接合またはめっきによる接合においては、一度接合させると接合後に接合材料やめっき材料を除去することが難しい。
【0040】
本実施形態においては、不良と判断された第1素子12xを除去する工程において、第1接合部13の金を含む部分と第2接合部22の金を含む部分との界面で結合が解除されるため、第2接合部22の表面に残渣が残りづらい。そのため、第2素子15を第1素子12xが載置されていた第2接合部22rに接合する際、第2素子15と第2接合部22rとの接合強度を高くすることができる。2回目の接合工程において、第3接合部16の金を含む部分と第2接合部22の金を含む部分とが接合される。第2素子15を第2接合部22に接合する際、錫を含む接合材料やめっきを形成する必要がないため、接合精度を向上しつつ、工程を簡略化することができる。
【0041】
更にまた、本実施形態においては、1回目及び2回目の接合工程において、超音波を印加しない。これにより、第1素子12及び第2素子15を配線基板21に接合する際に生じる第1素子12及び第2素子15の位置ずれを抑制できる。
【0042】
なお、第2素子15の第3接合部16を配線基板21の第2接合部22rに接触させた後、配線基板21を介して第2素子15の電気的特性を評価する工程を行ってもよい。この工程により第2素子15が不良と判断された場合は、第1素子12xと同様な方法により、第2素子15を除去してもよい。このとき、電気的特性を評価する前に、第3接合部16を第1接合条件により接合し、第3接合部16と第2接合部22rとの接合状態を仮接合状態としてもよい。
【0043】
<第1の実施形態の変形例>
図9は、本変形例に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
本変形例においては、第1の実施形態と異なる部分のみを説明する。本変形例における下記以外の方法は、第1の実施形態と同様である。後述する第2及び第3の実施形態においても、同様である。
【0044】
先ず、図1A図3に示す工程を実施する。
次に、図9に示すように、治具37を準備する。治具37は、例えば粘着性を有する。治具37の大きさは、1つの第1素子12xのみに接触でき、他の第1素子12には接触しないような大きさである。
【0045】
そして、不良と判断された第1素子12xに、治具37を接着させる。次に、治具37を配線基板21から離れる方向に移動させることにより、第1素子12xを配線基板21から離す。
その後、図6及び図7に示す工程を実施する。
【0046】
本変形例によれば、第1素子12xを加熱することなく、除去することができる。このため、第1の実施形態と比較して、良品と判断された第1素子12に及ぼす影響が少ない。
【0047】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、前述の第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を用いて、発光モジュールを製造する例である。
【0048】
先ず、本実施形態に係る発光モジュールの構成について説明する。
図10は、本実施形態に係る発光モジュールを示す斜め上側から見た斜視図である。
図11は、本実施形態に係る発光モジュールを示す斜め下側から見た斜視図である。
図12は、図10の領域XIIを示す一部拡大上面図である。
図13は、図10に示すXIII-XIII線による断面図である。
図14Aは、図13の領域XIVAを示す一部拡大断面図である。
図14Bは、図14Aの領域XIVBを示す一部拡大断面図である。
【0049】
図10及び図11に示すように、本実施形態に係る発光モジュール101は、パッケージ基板110、配線基板120、複数の発光素子130、第1樹脂140、第2樹脂150、複数のワイヤ160、及び、第3樹脂170を備える。なお、図10においては、図示の便宜上、第3樹脂170の一部及び第2樹脂150の一部を省略しており、ワイヤ160の一部及び発光素子130の一部を可視化している。
【0050】
パッケージ基板110の平面視の形状は、例えば、矩形である。パッケージ基板110においては、例えば、セラミックス材料又は樹脂材料からなる絶縁基体111を含む。絶縁基体111の内部には、導電性材料、例えば、銅(Cu)からなる複数の配線が形成されている。配線の一部は、パッケージ基板110の上面110aに露出して複数の第1パッド112となり、配線の他の一部はパッケージ基板110の下面110bに露出して複数の第2パッド113となっている。
【0051】
本実施形態においては、説明の便宜上、XYZ直交座標を採用する。パッケージ基板110の長手方向を「X方向」とし、短手方向を「Y方向」とし、厚さ方向を「Z方向」とする。Z方向のうち、パッケージ基板110の下面110bから上面110aに向かう方向を「上」ともいい、その逆方向を「下」ともいうが、この表現も便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。
【0052】
また、パッケージ基板110の上面110a及び下面110bには、熱伝導性材料、例えば、銅からなる放熱部114が露出している。平面視で、放熱部114はパッケージ基板110の中央部に配置されている。第1パッド112及び第2パッド113は、Y方向において、放熱部114の両側に配置されている。第1パッド112及び第2パッド113は、例えば、パッケージ基板110の長辺に沿って配列されている。
【0053】
配線基板120は、パッケージ基板110の放熱部114上に配置されている。配線基板120は、例えば、集積回路が内蔵されたシリコン基板であり、例えば、特定用途向け集積回路基板(Application Specific Integrated Circuit基板:ASIC基板)である。配線基板120の下面は、放熱部114の上面に、例えば接合部材を介して接合されている。接合部材には、例えば、シリコーン銀ペーストを用いる。配線基板120の上面121の中央部には、発光素子130に接続されるパッドが配置されている。発光素子130に接続されるパッドの周辺には、外部接続用パッドが配置されている。
【0054】
ワイヤ160は、パッケージ基板110の第1パッド112と、配線基板120の外部接続用パッドとに接続されている。ワイヤ160は、例えば、金(Au)からなる。例えば、ワイヤ160の数は第1パッド112の数と同じである。
【0055】
第3樹脂170の平面視の形状は、配線基板120の外縁に沿った矩形である。第3樹脂170は、パッケージ基板110の上面及び配線基板120の上面に配置され、パッケージ基板110の第1パッド112、ワイヤ160、及び、配線基板120の外部接続用パッドを覆っている。平面視において、第3樹脂170の中央部は開口している。これにより、第3樹脂170は、複数の発光素子130、第1樹脂140及び第2樹脂150を覆っていない。
【0056】
図13に示すように、第3樹脂170は、パッケージ基板110上に配置された第1樹脂枠171と、配線基板120上に配置された第2樹脂枠172と、第1樹脂枠171と第2樹脂枠172との間に配置された保護樹脂173と、を含む。第1樹脂枠171は、パッケージ基板110に配置されている。第2樹脂枠172は、配線基板120上に配置されている。保護樹脂173は、パッケージ基板110の上面、配線基板120の上面、及びワイヤ160の表面を連続して覆っている。第1樹脂枠171及び第2樹脂枠172は、例えば、透光性樹脂からなり、例えば、ジメチルシリコーン樹脂からなる。保護樹脂173においては、例えば、透光性樹脂からなる母材内に光反射性物質が含有されている。樹脂には、例えば、ジメチルシリコーン樹脂を用いることができる。光反射性物質は、例えば、酸化チタンである。
【0057】
図10図12図13に示すように、複数の発光素子130は、配線基板120の上面121の中央部上に載置されている。複数の発光素子130は、例えば行列状に配列されている。一例では、発光素子130が64行64列に配列されたセグメントが4つ配置されており、発光素子130は合計で16,384個配置されている。一例では、各発光素子130のサイズは、40μm以上50μm以下である。一例では、隣り合う発光素子130間の距離は4μm以上8μm以下である。発光素子130は、配線基板120の上面121に露出したパッドに接続されている。発光素子130は、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)であり、例えば、青色の光を出射する。
【0058】
図14Aに示すように、発光素子130は、上面131と、上面131と反対側の下面132と、上面131と下面132との間に配置された側面133と、を有する。側面133は、下面132から上面131に向かって広がるように傾斜している。側面133は、4面配置されている。発光素子130の下面132は配線基板120の上面121に対向している。発光素子130は、一対の接合部139を介して、配線基板120のパッドに接続されている。このため、発光素子130の下面132は配線基板120の上面121から離れている。接合部139は金を含む。
【0059】
第1樹脂140は、配線基板120の上面121と発光素子130の下面132との間、及び、隣接する発光素子130の側面133間に配置されている。第1樹脂140においては、透光性樹脂からなる母材141中に、光反射性物質142が含まれている。第1樹脂140における光反射性物質142の濃度は、50質量%以上70質量%以下であることが好ましく、例えば、60質量%である。透光性樹脂は、例えば、ジメチルシリコーン樹脂である。光反射性物質は、例えば、酸化チタンである。
【0060】
第2樹脂150は、発光素子130の上面131及び第1樹脂140の上面143を被覆している。第2樹脂150は、発光素子130の上面131、側面133の上部、及び、第1樹脂140の上面143に接している。第2樹脂150においては、透光性樹脂からなる母材151中に、蛍光体152が含まれている。蛍光体152は、例えば、発光素子130からの青色の光を吸収して、黄色の光を放射する。
【0061】
図14Bに示すように、隣り合う発光素子130間において、第1樹脂140の上面143は、Z方向、すなわち、配線基板120から第2樹脂150に向かう方向において、発光素子130の上面131と下面132との間に位置する。これにより、発光素子130の側面133のうち、下部は第1樹脂140によって被覆され、上部は第2樹脂150によって被覆される。
【0062】
次に、発光素子130の構成について説明する。
図15は、本実施形態における発光素子を示す上面図である。
図16は、図15に示すXVI-XVI線による断面図である。
本実施形態の発光素子130は、第1の実施形態の第1素子12に相当する。
【0063】
図15及び図16に示すように、発光素子130においては、半導体部分180が配置されている。半導体部分180は、例えば、窒化ガリウム(GaN)を含んでいる。半導体部分180においては、下から上に向かって、p型層181、発光層182、n型層183がこの順に積層されている。p型層181は、p型不純物を含む半導体層を含む。p型不純物としては、例えば、マグネシウム(Mg)を用いる。n型層183は、n型不純物を含む半導体層を含む。n型不純物としては、例えば、シリコン(Si)を用いる。
【0064】
半導体部分180のn型層183の上面には、複数の凸部184が形成されている。
半導体部分180のp型層181の下面には、穴185が形成されている。穴185は、p型層181の下面側からp型層181及び発光層182を貫通し、n型層183の途中まで到達している。平面視で、穴185の形状は、例えば円形である。穴185の底面には、n電極186が配置されている。n電極186は、n型層183に電気的に接続されている。
【0065】
n電極186は、例えば、複数の金属層が積層された積層構造である。n電極186は、例えば、n型層183側から順に、Ti層、AlCu層、Ti層、Ru層が積層された積層構造であってもよい。また、上記積層構造において、例えば、1層目のTi層の厚さは1.2nm、2層目のAlCu層の厚さは200nm、3層目のTi層の厚さは150nm、4層目のRu層の厚さは100nmとすることができる。p型層181の下面における穴185を除く領域には、p電極187が配置されている。p電極187は、p型層181と電気的に接続されている。p電極187は、透光性を有し、例えば、酸化インジウム錫(Indium-Tin-Oxide:ITO)からなる。p電極187の厚さは、例えば、150nm以上300nm以下である。
【0066】
半導体部分180の下面には、p電極187の一部を覆うように、光反射層188が配置されている。平面視で、光反射層188の形状は略矩形であり、相互に対向する2辺それぞれから内側に向かって延在する2つの切込部188a及び188bが配置されている。切込部188aは穴185に到達し、穴185の底面を露出している。光反射層188は穴185の側面も覆っている。光反射層188は、例えば、複数の誘電体が積層された誘電体多層膜を含んでいてもよい。
【0067】
半導体部分180の表面には、絶縁層189が配置されている。半導体部分180の下面において、絶縁層189には、開口部191及び192が形成されている。開口部191は、光反射層188の切込部188a内であって穴185の底面の中央部に位置している。開口部192は、光反射層188の切込部188b内に位置している。絶縁層189は、p電極187の一部、及び、光反射層188の一部を覆っている。絶縁層189は、例えば、SiOからなる。絶縁層189の厚さは、例えば、複数の凸部184を覆う領域で400nmであり、それ以外の領域で550nmである。
【0068】
半導体部分180の下面には、2つの導電層193及び194が配置されている。2つの導電層193及び194は、上述した第1接合部13に相当する。平面視で、導電層193及び194の形状は略矩形である。導電層193は絶縁層189の開口部191を介してn電極186に電気的に接続されている。したがって、導電層193はn電極186を介してn型層183に接続されている。導電層194は絶縁層189の開口部192を介してp型層181に接続されている。導電層193及び194は、例えば、複数の金属層が積層された積層構造である。導電層193及び194は、例えば、半導体部分180側から順に、Ti層、Rh層、Au層が積層された積層構造であってもよい。また、上記積層構造において、例えば、Ti層の厚さは3.5nmであり、Rh層の厚さは400nmであり、Au層の厚さは100nmである。導電層193及び194は、内部に複数の空隙を含むポーラス状としてもよい。
【0069】
次に、本実施形態に係る発光モジュールの製造方法について説明する。
図10及び図13に示すように、配線基板120を準備する。本実施形態の配線基板120は、第1の実施形態における配線基板21に相当する。次に、配線基板120上に複数の発光素子130を搭載する。本実施形態の発光素子130は、第1の実施形態における第1素子12に相当する。
【0070】
このとき、第1の実施形態において説明したように、配線基板120に発光素子130を仮接合状態で接合し、発光素子130の電気的特性、例えば輝度を評価し、不良と判断された発光素子130は除去する。そして、不良と判断された発光素子130が除去された後の領域に、新たな発光素子130を載置し、全ての発光素子130を一括して本接合状態で接合する。本実施形態における新たな発光素子130は、第1の実施形態における第2素子15に相当する。これにより、不良品の発光素子130(第1素子)が良品の発光素子130(第2素子)に交換される。また、配線基板120と発光素子130との間に、接合部139が形成される。本実施形態の接合部139は、第1の実施形態の第4接合部36に相当する。
【0071】
次に、配線基板120及び発光素子130を覆うように、第1樹脂140を形成する。次に、発光素子130上から第1樹脂140を除去する。次に、例えばシリコーン銀ペーストを介して、パッケージ基板110上に配線基板120を載置する。次に、パッケージ基板110の第1パッド112と配線基板120の外部接続用パッドとを、ワイヤ160によって接続する。次に、パッケージ基板110上に第1樹脂枠171を形成すると共に、配線基板120上に第2樹脂枠172を形成する。次に、第1樹脂枠171と第2樹脂枠172との間に、保護樹脂173を形成する。これにより、ワイヤ160を保護する第3樹脂170が形成される。
【0072】
次に、半硬化状態の第2樹脂150を複数の発光素子130上及び第1樹脂140上に配置する。上述の如く、第2樹脂150においては、母材151中に蛍光体152が含有されている。第2樹脂150は、平面視において、第3樹脂170の内側に配置されている。第2樹脂150は、複数の発光素子130が配置された領域を覆うように配置されている。
【0073】
次に、熱処理を施すことにより、第2樹脂150を硬化させる。このとき、第2樹脂150を第1の温度、例えば、100℃で加熱すると、第2樹脂150が一旦液状化して、発光素子130間の隙間であって第1樹脂140上の空間内に進入する。これにより、第2樹脂150が発光素子130の側面133の上部に接触する。次に、第2樹脂150を第1の温度よりも高い第2の温度、例えば、150℃で加熱すると、第2樹脂150が最終的に硬化する。このようにして、本実施形態に係る発光モジュール101が製造される。
【0074】
<第2の実施形態の第1の変形例>
第2の実施形態の第1の変形例においては、前述の第2の実施形態と比較して、発光素子の構成が異なっている。
図17は、本変形例における発光素子を示す上面図である。
図18は、図17に示すXVIII-XVIII線による断面図である。
【0075】
図17及び図18に示すように、本変形例の発光素子130aにおいては、導電層193の下面に2つの導電部材195が配置されており、導電層194の下面に2つの導電部材196が配置されている。導電部材195及び196は、例えば、金を含む。平面視において、2つの導電部材195の合計面積は、導電層193の面積よりも小さい。また、平面視において、2つの導電部材196の合計面積は、導電層194の面積よりも小さい。
【0076】
平面視において、導電部材195及び196の形状は、例えば、矩形状、円形状又は楕円形状等であるが、これには限定されない。図17及び図18に示す例では、平面視において、導電部材195及び196の形状は矩形状である。この場合、導電部材195及び196の一辺の長さは、例えば、5μm以上15μm以下とすることができ、例えば10μmとすることができる。断面視における導電部材195及び196の形状は、先端に向かって、すなわち、導電層193及び194から離れる方向に向かって、幅が小さくなる形状とすることができる。導電部材195及び196の高さは、例えば、1μm以上5μm以下とすることができる。
【0077】
本変形例においては、導電層193及び194の下面にそれぞれ導電部材195及び196を配置することにより、配線基板120に発光素子130aを仮接合する際に、配線基板120に発光素子130aの導電部材195及び196が接触する。これにより、配線基板120に導電層193及び194が接触する場合と比較して接触面積が小さくなり、仮接合時に印加する荷重を小さくできる。この結果、不良と判定された発光素子130aを容易に除去できると共に、配線基板120及び発光素子130aの損傷を抑制できる。本変形例における上記以外の製造方法及び構成は、第2の実施形態と同様である。
【0078】
<第2の実施形態の第2の変形例>
第2の実施形態の第2の変形例においても、前述の第2の実施形態と比較して、発光素子の構成が異なっている。
図19は、本変形例における発光素子を示す上面図である。
【0079】
図19に示すように、本変形例の発光素子130bにおいては、導電層193の下面に8つの導電部材197が配置されており、導電層194の下面に8つの導電部材198が配置されている。導電部材197及び198は、例えば、金を含む。平面視において、8つの導電部材197の合計面積は、導電層193の面積よりも小さい。また、平面視において、8つの導電部材198の合計面積は、導電層194の面積よりも小さい。
【0080】
平面視において、導電部材197及び198の形状は、例えば、円形状である。この場合、導電部材197及び198の直径は、例えば、2μm以上5μm以下とすることができ、例えば3μmとすることができる。断面視における導電部材197及び198の形状は、先端に向かって幅が小さくなる形状とすることができる。導電部材197及び198の高さは、例えば、1μm以上5μm以下とすることができる。本変形例における上記以外の製造方法、構成及び作用効果は、第2の実施形態の第1の変形例と同様である。
【0081】
<第3の実施形態>
第3の実施形態も、前述の第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を用いて、発光モジュールを製造する例である。
【0082】
先ず、本実施形態に係る発光モジュールの構成について説明する。
図20Aは、本実施形態に係る発光モジュールを示す上面図である。
図20Bは、1つの波長変換部材を示す一部拡大上面図である。
本実施形態においても、第2の実施形態と同様に、XYZ直交座標系を採用する。
【0083】
図20A及び図20Bに示すように、本実施形態に係る発光モジュール201においては、配線基板211を備えている。配線基板211の平面視の形状は、例えば、長方形である。配線基板211の上面には、複数の発光素子212が配置されている。各発光素子212には2つの接合部213が配置されており、接合部213を介して配線基板211に搭載されている。接合部213は金を含む。
【0084】
配線基板211の上面において、発光素子212は、例えば、2列に配列されている。各列は配線基板211の長手方向、すなわち、X方向に延びている。第1列221においては、例えば20個の発光素子212が配列されており、第2列222においては、例えば22個の発光素子212が配列されている。したがって、発光モジュール201には、合計で42個の発光素子212が配置されている。一例では、各発光素子212の平面視の形状は正方形であり、一辺の長さは500μm以上1000μm以下である。
【0085】
各発光素子212上には、それぞれ波長変換部材214が配置されている。波長変換部材214は、例えば、蛍光体としてYAG(Yttrium Aluminum Garnet:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)を含む板状の部材である。一例では、各波長変換部材214の平面視の形状は正方形であり、一辺の長さは550μm以上1100μm以下である。各列において隣り合う波長変換部材214間の距離は、一例では、30μm以上70μm以下である。波長変換部材214の数は発光素子212の数と同じである。
【0086】
配線基板211上には、樹脂部材215が配置されている。樹脂部材215は、配線基板211の上面の中央部を覆っている。樹脂部材215は、発光素子212の側面及び波長変換部材214の側面を覆い、波長変換部材214の上面を覆っていない。したがって、波長変換部材214の上面は樹脂部材215から露出している。樹脂部材215においては、例えば、透光性樹脂中に光反射性物質が含有されている。樹脂は、例えば、ジメチルシリコーン樹脂である。光反射性物質は、例えば、酸化チタンである。
【0087】
配線基板211の上面における樹脂部材215に覆われた領域のY方向両側には、パッド216が配置されている。パッド216は、配線基板211のX方向に延びる端縁に沿って、2列に配列されている。パッド216の第3列223は、発光素子212の第1列221側に配置されている。パッド216の第4列224は、発光素子212の第2列222側に配置されている。
【0088】
各列に属するパッド216の数は、対応する列に属する発光素子212の数よりも1つ多い。すなわち、第3列223には21個のパッド216が配列されており、第4列224には23個のパッド216が配列されている。第3列に属する21個パッド216と第1列に属する20個の発光素子212は、交互に直列に接続されている。同様に、第4列に属する23個パッド216と第2列に属する22個の発光素子212は、交互に直列に接続されている。
【0089】
次に、本実施形態に係る発光モジュールの製造方法について説明する。
図20A及び図20Bに示すように、配線基板211を準備する。配線基板211の上面には、パッド216が配置されている。本実施形態の配線基板211は、第1の実施形態の配線基板21に相当する。次に、配線基板211上に複数の発光素子212を搭載する。本実施形態の発光素子212は、第1の実施形態の第1素子12に相当する。
【0090】
このとき、第1の実施形態において説明したように、配線基板211に発光素子212を仮接合状態で接合し、発光素子212の電気的特性、例えば輝度を評価し、不良と判断された発光素子212は除去する。そして、不良と判断された発光素子212が除去されたあとの領域に、新たな発光素子212を載置し、全ての発光素子212を一括して本接合状態で接合する。本実施形態における新たな発光素子212は、第1の実施形態における第2素子15に相当する。これにより、不良品の発光素子212が良品に交換される。また、配線基板211と発光素子212との間に、接合部213が形成される。接合部213は、第1の実施形態の第4接合部36に相当する。
【0091】
次に、それぞれの発光素子212上に波長変換部材214を配置する。次に、配線基板211の上面、発光素子212の側面、及び、波長変換部材214の側面を覆うように、樹脂部材215を形成する。このようにして、本実施形態に係る発光モジュール201が製造される。
【0092】
前述の各実施形態及びその変形例は、本発明を具現化した例であり、本発明はこれらの実施形態及び変形例には限定されない。例えば、前述の各実施形態及び各変形例において、いくつかの構成要素又は工程を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。また、前述の各実施形態及び各変形例は、相互に組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えば、車両用の前照灯及び表示装置の光源等に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1:発光装置
10:第1部材
11:支持基板
11a:第1面
12、12x:第1素子
13:第1接合部
15:第2素子
16:第3接合部
20:第2部材
21:配線基板
21a:第2面
22、22r:第2接合部
23:母材
24:配線
25:開口部
32:レーザ光
34:治具
35:治具
36:第4接合部
37:治具
101:発光モジュール
110:パッケージ基板
110a:上面
110b:下面
111:絶縁基体
112:第1パッド
113:第2パッド
114:放熱部
120:配線基板
121:上面
130、130a、130b:発光素子
131:上面
132:下面
133:側面
138:領域
139:接合部
140:第1樹脂
141:母材
142:光反射性物質
143:上面
150:第2樹脂
151:母材
152:蛍光体
160:ワイヤ
170:第3樹脂
171:第1樹脂枠
172:第2樹脂枠
173:保護樹脂
180:半導体部分
181:p型層
182:発光層
183:n型層
184:凸部
185:穴
186:n電極
187:p電極
188:光反射層
188a、188b:切込部
189:絶縁層
191、192:開口部
193、194:導電層
195、196、197、198:導電部材
201:発光モジュール
211:配線基板
212:発光素子
213:接合部
214:波長変換部材
215:樹脂部材
216:パッド
221:第1列
222:第2列
223:第3列
224:第4列
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B