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特許7407499凹部又は貫通孔の形成方法、電極の形成方法
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  • 特許-凹部又は貫通孔の形成方法、電極の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】凹部又は貫通孔の形成方法、電極の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20231222BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20231222BHJP
   C03B 33/02 20060101ALI20231222BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C03C15/00 Z
B23K26/53
C03B33/02
H05K3/40 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017249776
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019116395
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-10-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
(72)【発明者】
【氏名】村澤 尚樹
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】立木 林
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-170901(JP,A)
【文献】特開2013-215668(JP,A)
【文献】特開2016-9783(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129254(WO,A1)
【文献】特開2017-202488(JP,A)
【文献】特開2008-288577(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0261261(US,A1)
【文献】特開2005-152693(JP,A)
【文献】特開2006-256933(JP,A)
【文献】特表2016-506351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C15/00
B23K26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の厚さ方向に沿う凹部又は貫通孔を該基板に形成する凹部又は貫通孔の形成方法であって、
該基板に対して透過性を有する波長のレーザビームの該基板の厚さ方向に延在する集光領域を該基板内部に位置づけた状態で該レーザビームを該基板に照射して、該基板から表出し該集光領域に沿う細孔を形成するとともに該基板の表面に露出し該基板の厚さ方向に沿う柱状の変質領域を形成する変質領域形成ステップと、
該変質領域形成ステップを実施した後、該変質領域をすべてがエッチングされる前までエッチングして該基板に凹部又は貫通孔を形成するエッチングステップと、を備え、
該変質領域形成ステップでは、該集光領域は、該基板の上面に達するか、該基板の下面に達するか、該基板の該上面から該下面に至り、
該変質領域形成ステップでは、該変質領域は、該細孔の周囲に形成され、
該エッチングステップでは、エッチャントが該細孔を伝わることを特徴とする凹部又は貫通孔の形成方法。
【請求項2】
該基板は、ガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載の凹部又は貫通孔の形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の形成方法により形成された該凹部又は該貫通孔に電極を形成する電極の形成方法であって、
該エッチングステップを実施した後、該凹部又は該貫通孔に導電部材を充填することで該基板の厚さ方向に沿う該電極を該基板に形成する電極形成ステップを備えることを特徴とする電極の形成方法。
【請求項4】
該電極形成ステップでは、該凹部又は該貫通孔に該導電部材として導電性の粉末を充填し、該基板を加熱して該電極を形成することを特徴とする請求項3に記載の電極の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に凹部又は貫通孔を形成する形成方法、及び該凹部又は該貫通孔に電極を形成する形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるデバイスチップでは、近年、所定の実装対象へ該デバイスチップを実装する際の実装面積の省面積化や、SoC(System-on-a-chip)における低消費電力化等の目的のため、複数のチップが積層されて1つのパッケージに収められている。従来、該複数のチップはワイヤボンディングにより互いに接続されていたが、結線のための領域が必要となる分パッケージを大きくしなければならなかった。
【0003】
そこで、例えば、チップとは別にシリコン基板を用意し、該シリコン基板に厚さ方向に沿う貫通電極を形成し、該複数のチップ間に該シリコン基板を配設してチップ間を該貫通電極で接続する技術が開発されている。なお、チップ間に配設される基板はインターポーザと呼ばれ、シリコン基板に形成された貫通電極により上下のチップを接続する技術はTSV(Through-silicon via)と呼ばれている。該貫通電極はビア電極と呼ばれており、該貫通電極が形成される貫通孔はビアホールと呼ばれている。
【0004】
シリコン基板をインターポーザとして使用するTSVは、該シリコン基板が比較的高価である上、貫通電極における電気信号の伝送損失が大きいとの問題がある。そこで、ガラス基板に貫通電極を形成してインターポーザとして使用するTGV(Through-glass via)の開発が進められている。ガラス基板はシリコン基板よりも安価であり、大型基板の製造が可能であることから、インターポーザの製造コストを抑えられる。
【0005】
ところで、基板に貫通電極を形成するには、まず、基板に貫通孔を形成し、次に該貫通孔に導電部材を配設する。シリコン基板に貫通孔を形成する方法として、シリコン基板のエッチングと、保護膜の形成と、を繰り返す方法が知られている(特許文献1参照)。該方法では、基板表面の所定の箇所をエッチングし、エッチングにより形成された穴の内壁に保護膜を形成し、さらに該穴の底面をエッチングして穴を深くし、新たに露出された穴の内壁に保護膜を形成し、との工程を繰り返す。
【0006】
また、貫通孔をガラス基板に形成する方法として、レーザビームを基板に照射して細孔を形成する方法が知られている(特許文献2参照)。もしくは、貫通孔は、サンドブラストで所定の箇所に形成されてもよい。
【0007】
さらに、基板に形成された貫通孔に導電材料を充填し貫通電極を形成する方法としては、例えば、電解めっき法により該貫通孔に導電材料を析出させる方法が知られている(特許文献3)。この方法では、電解めっき法を実施する前に貫通孔の内壁面にシード膜として機能する給電用の膜をスパッタ法等で形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第94/14187号
【文献】特開2007-67082号公報
【文献】特開2010-77496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、エッチングと、保護膜の形成と、を交互に繰り返して貫通孔を形成する方法では、貫通孔の内壁に凹凸形状が形成されてしまい、スパッタ法では該貫通孔の内壁に均一にシード膜を形成できない場合がある。そのため、その後に電解めっき法を実施しても質の高い貫通電極を形成できない場合がある。
【0010】
また、レーザビームを基板に照射して貫通孔を形成する方法では、レーザビームの照射により形成された基板の溶融物であるデブリが該基板表面の貫通孔の周囲に堆積してしまうが、デブリを基板表面から除去するのは容易ではない。表面にデブリが残るインターポーザをチップ間に配設しても、貫通電極により適切にチップ間を電気的に接続できない場合がある。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基板に質の高い貫通電極を形成するための凹部又は貫通孔の形成方法及び電極の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、基板の厚さ方向に沿う凹部又は貫通孔を該基板に形成する凹部又は貫通孔の形成方法であって、該基板に対して透過性を有する波長のレーザビームの該基板の厚さ方向に延在する集光領域を該基板内部に位置づけた状態で該レーザビームを該基板に照射して、該基板から表出し該集光領域に沿う細孔を形成するとともに該基板の表面に露出し該基板の厚さ方向に沿う柱状の変質領域を形成する変質領域形成ステップと、該変質領域形成ステップを実施した後、該変質領域をすべてがエッチングされる前までエッチングして該基板に凹部又は貫通孔を形成するエッチングステップと、を備え、該変質領域形成ステップでは、該集光領域は、該基板の上面に達するか、該基板の下面に達するか、該基板の該上面から該下面に至り、該変質領域形成ステップでは、該変質領域は、該細孔の周囲に形成され、該エッチングステップでは、エッチャントが該細孔を伝わることを特徴とする凹部又は貫通孔の形成方法が提供される。なお、該基板は、ガラス基板でもよい。
【0013】
また、本発明の該一態様に係る形成方法により形成された該凹部又は該貫通孔に電極を形成する電極の形成方法であって、該エッチングステップを実施した後、該凹部又は該貫通孔に導電部材を充填することで該基板の厚さ方向に沿う該電極を該基板に形成する電極形成ステップを備えることを特徴とする電極の形成方法もまた本発明の一態様である。さらに、電極形成ステップでは、該凹部又は該貫通孔に該導電部材として導電性の粉末を充填し、該基板を加熱して該電極を形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る凹部又は貫通孔の形成方法では、基板内部にレーザビームを照射して、表面に露出し該基板の厚さ方向に沿う柱状の変質領域を形成する。レーザビームで基板を部分的に除去するのではなく、レーザビームで変質領域を形成し、その後、エッチングにより該変質領域を除去して凹部又は貫通孔を形成する。この方法ではデブリが生じず、基板表面にデブリが堆積することはない。
【0015】
基板に形成された凹部又は貫通孔に導電部材を充填して電極を形成し、例えば、基板の表面側又は裏面側を研削すると、表面側及び裏面側に露出する貫通電極を形成できる。すなわち、チップ間を貫通電極により適切に接続できるインターポーザを形成できる。
【0016】
したがって、本発明の一態様により、基板に質の高い貫通電極を形成するための凹部又は貫通孔の形成方法及び電極の形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(A)は、基板を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、変質領域形成ステップを模式的に示す断面図である。
図2図2(A)は、基板に形成された変質領域を模式的に示す該基板の表面に平行な面における断面図であり、図2(B)は、基板に形成された変質領域を模式的に示す該基板の厚さ方向を含む面における断面図である。
図3図3(A)は、基板に形成された変質領域の一例を模式的に示す断面図であり、図3(B)は、基板に形成された変質領域の他の一例を模式的に示す断面図である。
図4】エッチングステップを模式的に示す断面図である。
図5図5(A)は、エッチングステップで形成された凹部を模式的に示す断面図であり、図5(B)は、該凹部に形成された電極を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施形態について説明する。
【0019】
(実施形態1)
本実施形態では、基板に対して透過性を有する波長のレーザビームを基板1に照射して該基板の表面に達する細孔(起点領域)と、該細孔を囲む柱状の変質領域と、を形成する変質領域形成ステップを含む凹部又は貫通孔の形成方法について説明する。図1(A)は、本実施形態に係る凹部等の形成方法により該凹部等が形成される基板1を模式的に示す斜視図である。
【0020】
該基板1は、例えば、サファイア、ガラス、石英、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)等の材料からなる基板である。該ガラスは、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等である。
【0021】
本実施形態では、該基板1の厚さ方向に沿って凹部等を形成し、該凹部等に導電部材を配設し、該導電部材を基板1の上面及び下面に露出させることで該基板1を厚さ方向に貫く複数の貫通電極を形成する。複数の貫通電極が形成された該基板1は、所定のサイズに切り出されてインターポーザとなる。複数のチップが積層されて一つのパッケージが形成される際にチップ間に該インターポーザが配設されると、該貫通電極が上下のチップ間を電気的に接続する。
【0022】
ガラス基板は、例えば、シリコン基板よりも大面積化が容易であり、安価な材料であることから、該基板1にガラス基板を用いると、インターポーザを安価に作製できる。また、ガラス基板を用いてインターポーザを作製すると、シリコン基板から作製されたインターポーザよりも電気信号の貫通電極における伝送損失が小さくなる。
【0023】
次に、本実施形態に係る凹部又は貫通孔の形成方法で使用されるレーザ加工装置について、図1(B)を用いて説明する。図1(B)は、変質領域形成ステップを示す断面図である。
【0024】
図1(B)に示すレーザ加工装置2は、基板1を保持する保持テーブル4と、加工ヘッド6と、を有する。該レーザ加工装置2は、基板1を透過する波長のレーザビーム8をパルス発振し該基板1に該レーザビーム8を照射することで、基板1の内部から該基板1の上面又は下面に達する細孔(起点領域)と、該細孔を囲む柱状の変質領域と、を形成する。
【0025】
保持テーブル4は、該保持テーブル4の保持面(上面)に一端が接続された図示しない吸引路と、該吸引路の他端に接続された吸引源と、を有する。該保持面の上に基板1を載せ、該吸引源を作動させると、基板1は保持テーブル4に吸引保持される。
【0026】
保持テーブル4は、保持面に平行な方向に移動可能である。保持テーブル4を加工ヘッド6に対して相対的に移動させることで、基板1の凹部又は貫通孔の形成予定領域を該加工ヘッド6の集光領域(後述)に位置付けられる。加工ヘッド6は保持テーブル4の上方に配設され、基板1を透過する波長のレーザビーム8を基板1の内部に集光する機能を有する。
【0027】
加工ヘッド6は、例えば、レーザビーム8を基板1の厚さ方向に延在する領域に集光させる。加工ヘッド6によりレーザビーム8が集光される領域を集光領域とする。該加工ヘッド6から基板1にレーザビームを照射すると、基板1の厚さ方向に沿う複数の細孔(起点領域)と、該細孔を囲む柱状の変質領域と、を基板1に形成できる。
【0028】
ここで、加工ヘッド6には、レーザビーム8の集光用のレンズとして、開口数(NA)を基板1の屈折率で割った値が0.05~0.2となる集光レンズが使用される。また、例えば、基板1に照射されるレーザビーム8の波長は1064nmであり、平均出力は0.2W~3Wとされる。レーザビーム8の繰り返し周波数と、基板1の送り速度と、は、形成する細孔及び変質領域の間隔(ピッチ)に応じて設定される。
【0029】
加工ヘッド6は、基板1に垂直な方向に移動可能であり、該集光領域を基板1に垂直な方向に移動できる。例えば、該集光領域の上端が基板1の上面に達するように該集光領域を位置付けると、レーザビームの照射により基板1の上面に開口する細孔と、該細孔を囲む該上面に露出した変質領域と、が基板1に形成される。また、該集光領域の下端が基板1の下面に達するように加工ヘッド6を位置付けると、基板1の下面に開口する細孔と、該細孔を囲む該下面に露出した変質領域と、が基板1に形成される。
【0030】
さらに、基板1の上面から下面に至る領域にレーザビームを集光させると、レーザビームの照射により基板1の上面及び下面の両面に開口する細孔と、該上面及び該下面に露出する変質領域と、を形成できる。
【0031】
また、レーザ加工装置2では、発振されたレーザビームを複数に分岐させ、加工ヘッド6からの距離が互いに異なる集光位置に集光させるように分岐されたそれぞれのレーザビームを基板1に同時に照射してもよい。
【0032】
次に、本実施形態に係る凹部又は貫通孔の形成方法について説明する。該形成方法では、まず、基板1をレーザ加工装置2の保持テーブル4上に載せ、保持テーブル4の吸引源(不図示)を作動させて、基板1を保持テーブル4に吸引保持させる。
【0033】
基板1を保持テーブル4に吸引保持させた後、基板1の厚さ方向に沿う柱状の変質領域を形成する変質領域形成ステップを実施する。図1(B)は、変質領域形成ステップを模式的に示す断面図である。
【0034】
変質領域形成ステップでは、まず、基板1の凹部又は貫通孔の形成予定位置の上方に加工ヘッド6を位置付けるように保持テーブル4と、加工ヘッド6と、を相対的に移動させる。そして、形成される変質領域3が基板1の上面又は下面の少なくとも一方の表面に露出するように、該加工ヘッド6を基板1の厚さ方向に移動させて所定の高さ位置に集光領域を位置付ける。次に、基板1に対して透過性を有する波長のレーザビーム8を基板1に照射して細孔8aとともに変質領域3を形成する。
【0035】
基板1の凹部又は貫通孔の形成予定領域の一つに細孔8a及び変質領域3を形成した後、保持テーブル4と、加工ヘッド6と、を相対的に移動させて次々に基板1にパルス発振されたレーザビーム8を照射し、基板1に複数の細孔8a及び変質領域3を形成する。そして、該形成予定領域のすべてに細孔8a及び変質領域3を形成して変質領域形成ステップを完了させる。
【0036】
変質領域形成ステップで形成される変質領域3について説明する。図2(A)は、基板1に形成された変質領域3を模式的に示している。図2(A)は、基板1の表面に平行な面における基板1の断面図である。基板1にレーザビーム8を照射すると、図2(A)に示す通り、細孔8aと、該細孔8aの周辺に変質領域3と、が形成される。
【0037】
また、図2(B)は、基板1に形成された変質領域3を模式的に示している。図2(B)は、基板1の厚さ方向を含む面における基板1の断面図である。基板1にレーザビーム8を照射すると、集光領域に沿った細孔8aと、基板1の厚さ方向に沿った変質領域3と、が形成される。図2(B)に示す例では、基板1には、該基板1の下面に開口する細孔8aと、下面に露出する変質領域3と、が形成される。
【0038】
なお、細孔8aは、図2(B)に示す通り変質領域3に沿って連続していなくてもよく、基板1の上面及び下面の両方に開口していなくてもよい。これらの場合も本実施形態では細孔と称する。ただし、後述のエッチングステップで凹部又は貫通孔を適切に形成するために、細孔8aは基板1の上面又は下面の少なくとも一方に表出しているのが好ましい。また、形成される細孔の径は1μm以下であり、変質領域の径は数μm程度となる。
【0039】
図3(A)は、基板1に形成された変質領域の変形例を模式的に示す断面図である。図3(A)に示す通り、変質領域形成ステップでは、基板1の上面及び下面に開口する細孔8aと、該上面及び該下面に露出する変質領域3aと、を基板1に形成してもよい。この場合、例えば、基板1の上面から下面に至る領域にレーザビーム8を照射する。
【0040】
本実施形態に係る凹部又は貫通孔の形成方法では、該変質領域形成ステップを実施した後、変質領域3をエッチングして基板1に凹部又は貫通孔を形成するエッチングステップを実施する。エッチングステップでは、基板1にウェットエッチング又はドライエッチングを実施して、基板1に形成された変質領域3を除去する。
【0041】
エッチングステップの一例として、ウェットエッチングを実施する場合について図4を用いて説明する。図4は、エッチングステップを模式的に示す断面図である。エッチングステップで使用される処理槽10には、液体のエッチャント12が準備される。基板1がガラス基板である場合、例えば、該エッチャント12には濃度1.1%(wt/vol%)のフッ酸水溶液が使用される。
【0042】
エッチングステップでは、基板1をエッチャント12に浸漬できる大きさの処理槽10が使用される。処理槽10の内側底部には、基板1の下面の一部をエッチャント12中に露出させるため支持部14が配設されている。
【0043】
エッチングステップでは、変質領域3が形成された基板1を処理槽10に貯められたエッチャント12中に沈め、支持部14の上に載せる。該支持部14に基板1を載せると、基板1の上面及び下面がエッチャント12に曝されるため、上下方向からエッチングを進行できる。
【0044】
変質領域3は、基板1の変質されていない領域と比較してエッチャント12に対する反応性が高い。そのため、変質領域3がエッチングされて除去される。変質領域3の中央には基板1の厚さ方向に沿って延在する細孔8aが形成されているため、該変質領域3の基板1の表面から深い領域にまでエッチャント12が到達しやすい。エッチャント12中に基板1を沈め所定の時間が経過した後、基板1を引き上げて純水等で洗浄してエッチングの進行を停止させ、エッチングステップを完了させる。
【0045】
なお、エッチングステップを実施する場となる処理槽10は、支持部14を備えていなくてもよい。その場合、基板1の上面及び下面の双方にエッチングを実施するには、まず、基板1の一方の面を処理槽10の内部の底面に接するように基板1をエッチャント12中に沈め、基板1の他方の面に対してエッチング処理を実施する。その後、基板1の上下を反転させて、基板1の該一方の面に対してエッチング処理を実施する。
【0046】
変質領域3が基板1の上面又は下面の一方にのみ露出している場合、エッチングにより該変質領域3と略同形状の凹部が基板1に形成される。図5(A)は、エッチングステップで形成された凹部5を模式的に示す断面図である。また、変質領域3が基板1の上面及び下面の両方に露出している場合、エッチングにより変質領域3と略同形状の貫通孔が基板1に形成される。すなわち、エッチングステップを実施すると、基板1に凹部5又は貫通孔が形成される。
【0047】
なお、本実施形態に係る形成方法では、2μm~10μm程度の径の凹部5又は貫通孔が形成される。該凹部等の径は、変質領域形成ステップで形成される変質領域3の径や、エッチングステップで基板1をエッチャント12に曝した時間、エッチャント12の性質等により決まる。
【0048】
例えば、変質領域3が基板1の上面及び下面の両方に露出している場合、処理槽10の底面に接するように基板1をエッチャント12中に沈め、途中で基板1の上下を反転させて10分間エッチングを実施すると、2.5μmの径の貫通孔を形成できた。同様に20分間エッチングを実施すると、4μmの径の貫通孔を形成できた。60分間のエッチングを実施すると6.5μmの径の貫通孔を形成でき、120分間のエッチングを実施すると10μmの径の貫通孔を形成できた。
【0049】
なお、基板1のエッチャント12に対するエッチングレートは変質領域3のエッチングレートよりも小さいが、変質領域3がすべてエッチングされた後にもエッチングを続行することで基板1のエッチングを進行させて該凹部等の径を大きくできる。
【0050】
また、変質領域3がすべてエッチングされる前にエッチングを終了させることで、形成される該凹部等の径を小さくできる。エッチャント12が細孔8aを伝って変質領域3の深い部分にも達するため、通孔等を適切に形成できる。この場合、該凹部等の周りに変質領域3が残る場合がある。
【0051】
本実施形態に係る凹部又は貫通孔の形成方法によると、レーザビームによるアブレーション加工を実施しないため、基板1の溶融物(デブリ)が基板1に付着することがない。そのため、基板1からインターポーザを作製したときに、該インターポーザの機能はデブリにより阻害されない。
【0052】
次に、基板1に形成された凹部又は貫通孔に導電部材を充填することで、基板1の厚さ方向に沿う電極を基板1に形成する電極形成ステップを実施する。例えば、基板1に凹部5が形成されている場合、該凹部5に該導電部材として導電性の粉末を充填して、該導電性の粉末を加熱する。すると、該粉末が互いに結合した電極7が形成される。図5(B)は、凹部5に形成された電極7を模式的に示す断面図である。この方法では、該凹部5の内部に均一に電極7を形成できる。
【0053】
該粉末の加熱には、例えば、特定の領域を加熱できる焦点型のホーンを有する超音波発生装置が用いられる。また、基板1の耐熱性が高い場合に該基板1を炉に入れ、又はホットプレート上に載せ、該基板1を加熱することで該導電性の粉末を加熱してもよい。
【0054】
また、基板1に貫通孔が形成されている場合、例えば、該基板1を上面が平坦な載置台の上に載せて貫通孔の一端を塞ぎ、同様に該貫通孔に導電性の粉末を充填し、加熱することで該貫通孔に電極7を形成する。導電性の粉末を凹部5又は貫通孔に充填して該粉末を加熱して電極7を形成する方法では、凹部5又は貫通孔の内壁に凹凸形状が形成されている場合でも凹部5又は貫通孔の内部に均一に該粉末を充填できるため、均一な電極7を基板1に形成できる。
【0055】
該凹部又は該貫通孔には、他の方法で導電部材を充填してもよい。例えば、導電材料を含むペーストを該凹部又は該貫通孔に供給し、該ペーストを固化させる。または、電解めっき法で該凹部又は該貫通孔の内部にシード膜を形成し、スパッタ法により該凹部又は該貫通孔に導電部材を充填する。なお、該導電部材は、例えば、金、銀、銅、タングステン、又は、アルミニウム等の導電性の材料である。
【0056】
基板1の該凹部5又は該貫通孔に電極7を形成した後、該電極7を基板1の上面と、下面と、の両側に露出する貫通電極とするために、基板1の上面及び下面を研削する。特に、基板1に凹部5が形成されている場合、該凹部5の底部を除去するように基板1を研削して該電極7を露出させる。該基板1の上面及び下面を研削すると、該電極7の端部と、該基板1の表面と、が連続する平面となる。そして、基板1を所定のサイズに分割すると、複数の貫通電極を備えるインターポーザが形成される。
【0057】
以上に説明した通り、本実施形態により、基板1に質の高い貫通電極を形成するための凹部又は貫通孔の形成方法及び電極の形成方法が提供される。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態では、基板に対して透過性を有する波長のレーザビームを基板内に集光させ多光子吸収により改質領域を形成し、該集光領域の高さを変えて複数回レーザビームを照射する変質領域形成ステップを含む凹部又は貫通孔の形成方法について説明する。本実施形態に係る形成方法は、上述の実施形態に係る形成方法とは変質領域形成ステップのみが異なるため、該変質領域形成ステップ以外の説明は省略する。
【0059】
変質領域形成ステップでは、上述の実施形態で説明したレーザ加工装置2と同様に構成されるレーザ加工装置2を使用する。本実施形態では、加工ヘッド6により集光されるレーザビーム8の集光領域は実質的に点状であり、基板1の凹部又は貫通孔の形成予定領域に該集光領域の高さを変えてレーザビーム8を基板1に複数回照射して多光子吸収により変質領域を形成する。
【0060】
図3(B)は、基板1に形成された変質領域3bを模式的に示す断面図である。集光領域の高さを変えてレーザビーム8を基板1に複数回照射すると、図3(B)に示す通り、該基板1の厚さ方向に連続する複数の変質領域が一体となった変質領域3bを形成できる。
【0061】
なお、この場合、レーザビーム8を集光させる複数の点のうち、基板1のレーザビーム8の被照射面から遠い点から、すなわち、基板1の下面側に最も近い点から順にレーザビーム8を集光させる。レーザビーム8を基板1に集光させる際、該被照射面と、集光点と、の間に先に変質領域が形成されているとレーザビーム8を適切に集光しにくいためである。
【0062】
また、本実施形態に係る変質領域形成ステップでは、さらに、基板1に外力等を与えることで変質領域3bから基板1の厚さ方向に伸長するクラックを形成するのが好ましい。基板1に該クラックが形成されていると、エッチングステップでは該クラックを伝わらせるように変質領域3bの深部にエッチャントを到達させることができる。
【0063】
その後、本実施形態においても上述の実施形態と同様にエッチングステップを実施することで基板1に凹部又は貫通孔を形成できる。さらに上述の実施形態と同様に電極形成ステップを実施することで該基板1の厚さ方向に沿う電極を基板1に形成できる。その後、基板1の上面及び下面に研削加工等を実施すると、該基板1に貫通電極を形成できる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、基板1に形成された変質領域3をエッチングにより除去して凹部又は貫通孔を形成し、該凹部又は貫通孔に導電部材を充填して電極を形成するが、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0065】
該凹部又は貫通孔は、他の方法で形成されてもよく、例えば、基板1が吸収性を有する波長のレーザビームを基板1に照射してアブレーション加工により凹部又は貫通孔を形成し、該凹部又は該貫通孔に導電部材を充填して電極を形成してもよい。
【0066】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0067】
1 基板
1a 表面
1b 裏面
3,3a,3b 変質領域
5 凹部
7 電極
2 レーザ加工装置
4 保持テーブル
6 加工ヘッド
8 レーザビーム
8a 細孔
10 処理槽
12 エッチャント
14 支持部
図1
図2
図3
図4
図5