IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-回転コネクタ 図1
  • 特許-回転コネクタ 図2
  • 特許-回転コネクタ 図3
  • 特許-回転コネクタ 図4
  • 特許-回転コネクタ 図5
  • 特許-回転コネクタ 図6
  • 特許-回転コネクタ 図7
  • 特許-回転コネクタ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】回転コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20231222BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20231222BHJP
   H01R 35/04 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H04B10/80
B60R16/027 L
H01R35/04 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019156358
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021034985
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】牛山 政利
(72)【発明者】
【氏名】吉村 賢二
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-017179(JP,U)
【文献】特開2019-043400(JP,A)
【文献】特開2018-037174(JP,A)
【文献】特開平04-154226(JP,A)
【文献】特開平05-268164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/80
B60R 16/027
H01R 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、
前記固定体と同一の軸線上にかつ前記軸線に沿って前記固定体に対して所定の間隔をあけて相対的に回転自在に設けられた回転体と、
前記固定体と前記回転体との間に形成された環状の空間に巻き回された複数のフラットケーブルと、
前記固定体又は前記回転体の一方において前記フラットケーブル側の面に取り付けられた発光素子と、
前記固定体又は前記回転体の他方において前記フラットケーブル側の面に取り付けられた受光素子と、
を備え
前記フラットケーブルは、前記環状の空間を径方向に交差して延びる交差部を有し、
前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記交差部の互いの設置角度と、複数の発光素子が設けられている場合の前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記発光素子同士の設置角度及び複数の受光素子が設けられている場合の前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記受光素子同士の設置角度とは異なっており、
複数の前記受光素子のうちの一部の前記受光素子が前記交差部に重なった場合において、他の一部の前記受光素子は、前記交差部とは重なっておらず、近傍の前記発光素子との間で光通信を行うことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
前記発光素子は、前記回転体に取り付けられており、
前記受光素子は、前記固定体に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転コネクタ。
【請求項3】
複数の前記発光素子が前記軸線を中心に全周に亘って均等に設けられており、
前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記発光素子同士の照射範囲が互いに重なり合う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転コネクタ。
【請求項4】
複数の前記受光素子が前記軸線を中心に全周に亘って均等に設けられており、
前記発光素子の円形の照射範囲の直径よりも、前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記受光素子間の距離が小さい
ことを特徴とする請求項3に記載の回転コネクタ。
【請求項5】
前記交差部の数よりも多い数の前記発光素子及び前記受光素子を備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の回転コネクタ。
【請求項6】
複数の前記交差部は、前記軸線を中心に周方向に所定の間隔をあけて設けられており、
複数の前記発光素子及び複数の前記受光素子は、前記所定の間隔よりも狭い間隔を周方向にあけて設けられている
ことを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の回転コネクタ。
【請求項7】
複数の前記交差部は、前記軸線を中心に周方向に90°毎に設けられており、
前記発光素子及び前記受光素子はそれぞれ、20°~80°の範囲において前記軸線を中心に周方向に均等に設けられている
ことを特徴とする請求項からまでのいずれか一項に記載の回転コネクタ。
【請求項8】
~3個の前記発光素子が設けられており、
4個以上の前記受光素子が設けられており、
前記発光素子及び前記受光素子の少なくとも一方は、前記軸線を中心に周方向に均等に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転コネクタ。
【請求項9】
~3個の前記受光素子が設けられており、
4個以上の前記発光素子が設けられており、
前記発光素子及び前記受光素子の少なくとも一方は、前記軸線を中心に周方向に均等に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に装着される回転コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の車体側とステアリングとを電気的に接続し、車体側からの信号や電源をステアリング内の各種スイッチに通電するための回転コネクタとして、ステアリングロールコネクタが広く知られている。
【0003】
ステアリングロールコネクタは、固定体と、固定体に対して回転自在な回転体とを備える。回転体及び固定体は、互いに同一の軸線上で軸線方向に沿って所定の間隔をあけて設けられている。回転体と固定体との間には、電気配線体としてのフラットケーブルが設けられている。
【0004】
近年では、車体側に設けられ機器とステアリング側に設けられた機器との間で大容量のデータの高速通信が求められている。このような要望に対応して、フラットケーブルに加えて光通信を可能にする光通信部(発光素子及び受光素子)をステアリングロールコネクタに用いる技術が公知になっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1の回転コネクタにおいて、収容されているケース及びフラットケーブルが収容されているケースは互いに異なる。2つのケースは、互いに同一の軸線上にかつ軸線に沿って並列に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-43400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1における回転コネクタは、フラットケーブルに加えて光通信部を備えているので、大容量データの高速通信を達成している。しかしながら、特許文献1の回転コネクタにおいては、ステアリングロールコネクタの回転軸線に沿って同一の軸線上に並ぶ異なるケースにフラットケーブル及び光通信部がそれぞれ設けられている。そのため、回転コネクタの厚さが大きくなっており、車体及びステアリングにおける限られたスペースに適した小型化された回転コネクタに対する需要が高まっている。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、大容量データの高速通信を可能にする小型化された回転コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、固定体と、前記固定体と同一の軸線上にかつ前記軸線に沿って前記固定体に対して所定の間隔をあけて相対的に回転自在に設けられた回転体と、前記固定体と前記回転体との間に形成された環状の空間に巻き回された複数のフラットケーブルと、前記固定体又は前記回転体の一方において前記フラットケーブル側の面に取り付けられた発光素子と、前記固定体又は前記回転体の他方において前記フラットケーブル側の面に取り付けられた受光素子と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記発光素子は、前記回転体に取り付けられており、前記受光素子は、前記固定体に取り付けられていてもよい。
【0011】
また、複数の前記発光素子が前記軸線を中心に全周に亘って均等に設けられており、前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記発光素子同士の照射範囲が互いに重なり合ってもよい。
【0012】
また、複数の前記受光素子が前記軸線を中心に全周に亘って均等に設けられており、前記発光素子の円形の照射範囲の直径よりも、前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記受光素子間の距離が小さくてもよい。
【0013】
また、前記フラットケーブルは、前記環状の空間を径方向に交差して延びる交差部を有し、前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記交差部の互いの設置角度と、複数の発光素子が設けられている場合の前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記発光素子同士の設置角度及び複数の受光素子が設けられている場合の前記軸線を中心に周方向に隣り合う前記受光素子同士の設置角度とは異なっていてもよい。
【0014】
また、前記交差部の数よりも多い数の前記発光素子及び前記受光素子を備えていてもよい。
【0015】
また、複数の前記交差部は、前記軸線を中心に周方向に所定の間隔をあけて設けられており、複数の前記発光素子及び複数の前記受光素子は、前記所定の間隔よりも狭い間隔を周方向にあけて設けられていてもよい。
【0016】
また、前記複数の交差部は、前記軸線を中心に周方向に90°毎に設けられており、前記発光素子及び前記受光素子はそれぞれ、20°~80°の範囲において前記軸線を中心に周方向に均等に設けられていてもよい。
【0017】
また、1~3個の前記発光素子が設けられており、4個以上の前記受光素子が設けられており、前記発光素子及び前記受光素子の少なくとも一方は、前記軸線を中心に周方向に均等に設けられていてもよい。
【0018】
また、1~3個の前記受光素子が設けられており、4個以上の前記発光素子が設けられており、前記発光素子及び前記受光素子の少なくとも一方は、前記軸線を中心に周方向に均等に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大容量データの高速通信を可能にする小型化された回転コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る回転コネクタの概略的な斜視図である。
図2】本発明に係る回転コネクタの概略的な分解斜視図である。
図3】本発明に係る回転コネクタの概略的な断面図である。
図4】本発明に係る回転コネクタの収容空間におけるフラットケーブルの収容状態を説明するための図である。
図5】本発明に係る回転コネクタにおいてロテータがステータに対して所定の角度だけ回転した状態を示す図である。
図6】本発明に係る回転コネクタにおける光通信部の実施例について示す表及び概略図である。
図7】本発明に係る回転コネクタにおける光通信部の実施例について示す表及び概略図である。
図8】本発明に係る回転コネクタにおける光通信部の実施例について示す表及び概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
本発明に係る回転コネクタは、自動車等の車両の車体に設けられたオーディオ機器(図示せず。)及びコンピュータ機器(図示せず。)等の機器と、ステアリングホイール(図示せず。)に設けられた各種スイッチ(図示せず。)及びエアバック装置(図示せず。)等の機器とを通信可能に接続するステアリングロールコネクタである。本発明に係る回転コネクタが適用される車両は特定の車両に限定されない。なお、説明の便宜上、回転コネクタ1の回転中心となる回転軸線を以下では「軸線x」ともいう。
【0023】
図1は、本発明に係る回転コネクタ1の概略的な斜視図である。図2は、本発明に係る回転コネクタ1の概略的な分解斜視図である。図3は、本発明に係る回転コネクタ1の軸線xに沿った概略的な断面図である。本発明に係る回転コネクタ1は、固定体(以下、「ステータ」ともいう。)10と、固定体10と同一の軸線x上にかつ軸線xに沿って固定体10に対して所定の間隔をあけて相対的に回転自在に設けられた回転体(以下、「ロテータ」ともいう。)20と、固定体10と回転体20との間に形成された環状の空間(以下、「収容空間」ともいう。)Sに巻き回された複数のフラットケーブル40と、固定体10又は回転体20の一方においてフラットケーブル側の面212に取り付けられた発光素子51と、固定体10又は回転体20の他方においてフラットケーブル40側の面112に取り付けられた受光素子52と、を有する。以下、回転コネクタ1の構成について具体的に説明する。
【0024】
車両等の車体の一部をなすステアリングコラム(図示せず。)の一端には車両の運転者によって回転操作されるステアリングホイールが設けられている。ステアリングホイールは、ステアリングコラムに対し回転可能に支持されている。
【0025】
ステアリングコラムとステアリングホイールとの間に回転コネクタ1が設けられている。回転コネクタ1は、車体に設けられたオーディオ機器及びコンピュータ等の機器と、ステアリングホイールに設けられた各種スイッチ及びエアバッグ装置等の機器とを通信可能に接続する。回転コネクタ1は、車体に対しステアリングホイールが回転可能に支持されている状態のもとで、車体側の上記機器とステアリングホイール側の上記機器とを接続することができる。
【0026】
回転コネクタ1は、ステータ10と、ロテータ20と、フラットケーブル40と、光通信部50と、スリーブ30と、を備える。ステータ10は、車両においてステアリングコラム(図示せず。)に回転不能に取り付けられている。ステータ10は、底板11と、外周円筒壁12と、2つのコネクタ部13とを有する。底板11は、円環で略平リング板状に形成されている。底板11には軸線xを中心とした孔111が形成されている。回転コネクタ1が車両に取り付けられた状態において孔111にステアリングシャフト(図示せず。)が挿通される。ステータ10自体は、車体に対して不動に取り付けられており、ステアリングシャフトは、ステータ10に対して相対的に回転する。
【0027】
底板11は、6個の凹部113を有する。凹部113は底板11において、ロテータ20の後述する天板21に向く側に設けられている。換言すると、底板11は、後述するフラットケーブル40を向く面112に6個の凹部113を有する。凹部113は、軸線xを中心とした周方向に互いに等角度、つまり60°又は略60°毎に形成されている。ここで「略60°」とは、±5°程度の誤差を含むものである。凹部113は、底板11の内周縁と外周縁との間で略真ん中に形成されている。凹部113は、同心円上に形成されている。
【0028】
凹部113は、軸線xに沿ってロテータ20とは反対の側に凹に形成されている。凹部113には、後述する光通信部50の受光素子52が収容されている。なお、本実施の形態においては6個の凹部113が設けられていたが、凹部113の数は特に限定されない。また、本実施の形態においては個別の凹部113が形成されていたが、全周に亘って繋がった環状の溝が形成されていてもよい。
【0029】
外周円筒壁12は、底板11の外周縁に形成されている。外周縁は、孔111における内周縁に対して径方向外側に位置する。外周円筒壁12は、外周縁に沿って軸線xに沿ってロテータ20に向かって延びている。
【0030】
2つのコネクタ部13は、外周円筒壁12の軸線xとは反対側を向く外周面に設けられている。コネクタ部13は、接線方向において互いに同じ方向に突出している。コネクタ部13には、後述するフラットケーブル40の一端が挿入されている。
【0031】
ロテータ20は、ステアリングホイールの転舵に追従する。ロテータ20は、ステータ10と同一の軸線x上に設けられている。ロテータ20は、ステータ10に対して所定の間隔をあけて相対的に時計方向及び反時計方向に回転自在に組み付けられている。
【0032】
ロテータ20は、天板21と、内周円筒壁22と、コネクタ23とを有する。天板21は、ステータ10の底板11と軸線x方向において対向する。天板21は、円環で略平リング板状に形成されている。天板21には軸線xを中心とした孔211が形成されている。回転コネクタ1が車両に取り付けられた状態において孔211にステアリングシャフト(図示せず。)が挿通される。ロテータ20は、ステアリングシャフトに取り付けられておりステータ10に対して相対的に回転する。
【0033】
天板21は、6個の凹部213を有する。凹部213は天板21において、ステータ10の底板11に向く側に設けられている。換言すると、天板21は、後述するフラットケーブル40を向く面212に6個の凹部213を有する。凹部213は、軸線xを中心とした周方向に互いに等角度、つまり60°又は略60°毎に形成されている。ここで「略60°」とは、±5°程度の誤差を含むものである。凹部213は、天板21の内周縁と外周縁との間で略真ん中に形成されている。凹部213は、同心円上に形成されている。
【0034】
凹部213は、軸線xに沿ってステータ10とは反対の側に凹に形成されている。凹部213には、後述する光通信部50の発光素子51が収容されている。なお、本実施の形態においては6個の凹部213が設けられていたが、凹部213の数は特に限定されない。また、本実施の形態においては個別の凹部213が形成されていたが、全周に亘って繋がった環状の溝として形成されていてもよい。
【0035】
内周円筒壁22は、天板21の内周縁に形成されている。内周円筒壁22は、底板11の外周円筒壁12より径方向内側に設けられている。内周円筒壁22は、内周縁に沿って軸線xに沿ってステータ10に向かって延びている。
【0036】
コネクタ部13は、天板21の収容空間Sとは反対側を向く面に形成されている。コネクタ部13は、軸線x方向に突出している。
【0037】
回転コネクタ1において、ステータ10とロテータ20との間に環状の収容空間Sが形成されている。収容空間Sは、軸線x方向においてはステータ10の底板11及びロテータ20の天板21、径方向外側においてはステータ10の外周円筒壁12、径方向内側においてはロテータ20の内周円筒壁22によって画定されている。この収容空間Sにおいて4枚のフラットケーブル40が巻き回されている。なお、収容空間Sの軸線x方向における幅は、フラットケーブル40の軸線x方向における幅に応じて設計されている。
【0038】
スリーブ30は、略円筒状の円筒部31と、拡径部32と、押え凸部33とを有する。円筒部31は、ステータ10とロテータ20と同一の軸線x上に位置する。拡径部32は、円筒部31のステータ10及びロテータ20の側の上端から径外側に延びている。押さえ凸部33は、拡径部32の外縁部付近に形成され、ステータ10及びロテータ20の側に突出している。スリーブ30は、ステータ10に対してロテータ20とは反対の側に配置されている。スリーブ30は、押さえ凸部33においてロテータ20に係合し、軸線xに沿った上下方向からステータ10を挟み込みロテータ20に固定されている。
【0039】
収容空間Sには4枚のフラットケーブル40が収容されている。図4は、収容空間Sにおけるフラットケーブル40の収容状態を説明するための図である。本実施の形態において軸線x方向に沿ったフラットケーブル40の幅は20mmであるが、例えば、10mm、15mmであってもよい。各フラットケーブル40は、収容空間Sにおいて巻き絞め及び巻き解き可能に収容されている。フラットケーブル40は、一端側でステータ10の外周円筒壁12に一方向に巻き付けられ、他端側でロテータ20の内周円筒壁22に異なる方向に折り返されて巻き付けられている。
【0040】
各フラットケーブル40は、外周部40aと、折返し部(交差部)40bと、内周部40cとを有する。外周部40aは、収容空間Sにおいて、ステータ10の外周円筒壁12の収容空間Sを向く内面に1又は複数回巻かれている。フラットケーブル40の外周部40aにおける一端は、コネクタ部13に接続されている。
【0041】
折返し部40bは、収容空間Sを径方向に交差して延びている。折返し部40bは、外周円筒壁12に巻き付けられたフラットケーブル40(外周部40a)の巻付け方向を周方向において変更する部分である。本実施の形態では、反時計回り方向に外周円筒壁12に巻き付けられたフラットケーブル40の巻付け方向が、折返し部40bを介して時計回り方向に変更されている。フラットケーブル40の折返し部40bは、前記軸線を中心に周方向に約90°毎に設けられている。換言すれば、4つの折返し部40bが周方向に互いに略等間隔をあけて設けられている。
【0042】
内周部40cは、収容空間Sにおいて、ロテータ20の内周円筒壁22の収容空間Sを向く内面に1又は複数回巻かれている。内周部40cは、径方向において外周部40aと対向している。ステータ10に対してロテータ20を時計回り方向に回転させると、外周円筒壁12の内面に沿って巻き回されたフラットケーブル40の外周部40aが巻き解かれ、曲げ返しされた折返し部40bが時計回り方向に移動しながら内周部40cがロテータ20の内周円筒壁22の内面にさらに巻き付けられる。
【0043】
逆に、ステータ10に対してロテータ20を反時計回り方向に回転させると、ロテータ20の内周円筒壁22に巻き付けられた内周部40cが巻き解かれ、曲げ返しされた折返し部40bが反時計回り方向に移動しながら、外周部40aがステータ10の外周円筒壁12の内面に沿ってさらに巻き回される。
【0044】
ステータ10に対してロテータ20を回転させることにより、収容空間Sにおいて、フラットケーブル40は、回転するロテータ20に対しても、回転が固定されたステータ10に対しても相対移動する。ステータ10に対するロテータ20の回転に伴い、折返し部40bも周方向に移動する。
【0045】
近年、ステアリングと車体との間で大容量データを高速通信するという需要が高まっている。そこで、回転コネクタ1は、車体側に設けられた機器と、ステアリングホイールに設けられた機器とを、光通信によって接続するための光通信部50を備えている。
【0046】
光通信部50は、6個の発光素子51と、6個の受光素子52とを有する。発光素子51は、ロテータ20の天板21においてステータ10の側に露出した状態において埋め込まれている。具体的には、発光素子51は、ロテータ20の凹部213に収容されている。受光素子52は、ステータ10の底板11においてロテータ20の側に露出した状態において埋め込まれている。
【0047】
具体的には、受光素子52は、ステータ10の凹部113に収容されている。本実施の形態においては、6個の発光素子51が軸線xを中心に全周に亘って均等に設けられており、軸線xを中心に周方向に隣り合う発光素子51同士の照射範囲Ir(図6図8参照。)が互いに重なり合っている。ここで「照射範囲」とは、発光素子51から照射される所定の直径をもつ円形の光の範囲である。なお、発光素子51からの光の照射角は90°以内の範囲である。発光素子51の円形の照射範囲Irの直径よりも、軸線xを中心に周方向に隣り合う受光素子52間の距離が小さい。
【0048】
回転コネクタ1においては、6個の発光素子51が設けられている。軸線xを中心に周方向に隣り合う発光素子51同士は、互いに略等間隔をあけて設けられている。発光素子51同士は、軸線xを中心とした周方向に互いに等角度、つまり60°又は略60°の範囲に形成されている。つまり、軸線xを中心に周方向において隣り合う折返し部40b同士の設置角度と、軸線xを中心に周方向に隣り合う発光素子51同士の設置角度とは異なっている。
【0049】
回転コネクタ1においては、6個の受光素子52が設けられている。軸線xを中心に周方向に隣り合う受光素子52同士は、互いに略等間隔をあけて設けられている。受光素子52同士は、軸線xを中心とした周方向に互いに等角度、つまり60°又は略60°の範囲に形成されている。軸線xを中心に周方向において隣り合う折返し部40b同士の設置角度と、軸線xを中心に周方向に隣り合う受光素子52同士の設置角度とは異なっている。軸線xを中心に周方向に隣り合う発光素子51及び受光素子52は、軸線xを中心に周方向に隣り合う折返し部40b同士の間隔よりも狭い間隔を周方向にあけて設けられている。
【0050】
なお、発光素子51及び受光素子52とフラットケーブル40との間には軸線xに沿って所定の間隔があけられており、例えば、2mm~3mm程度の間隔があけられている。
【0051】
以上のような回転コネクタ1によれば、フラットケーブル40と光通信部50とを同じ収容空間Sに設けるので、大容量データを高速通信することが可能になり、例えば、ステアリングに居眠り防止用のカメラを搭載することができる。これにより、例えば、解像度が高い画像データの通信が可能になる。また、回転コネクタ1によれば、軸線x方向における低背化を実現することができる。
【0052】
回転コネクタ1においては、ステアリングの回転によってロテータ20が回転する場合、フラットケーブル40の折返し部40bも併せて移動する。折返し部40bの移動により、折返し部40bが発光素子51及び受光素子52に重なり、光通信部50の通信経路が折返し部40bによって遮断されることがある。
【0053】
そこで回転コネクタ1においては、発光素子51及び受光素子52の配置位置が、フラットケーブル40の折返し部40bに、一部の発光素子51及び受光素子52が重なった場合であっても、他の発光素子51及び受光素子52間において光通信が行われるようになっている。図5は、回転コネクタ1においてロテータ20がステータ10に対して所定の角度だけ回転した状態を示す図である。
【0054】
例えば、ロテータ20の回転により一部の受光素子52a,52bがフラットケーブル40の折返し部40bと重なる場合がある。この場合、光通信部50において、発光素子51aと受光素子52aとの間、及び発光素子51bと受光素子52bとの間における光通信は、折返し部40bにより阻害される可能性がある。しかしながら、軸線xを中心に周方向において隣り合う発光素子51及び受光素子52の設置角度は、フラットケーブル40の折返し部40bの設置角度(90°)とは異なる設置角度(60°)である。
【0055】
一部の受光素子52が折返し部40bと重なったとしても、4個の受光素子52は折返し部40bとは重なっておらず、近傍の発光素子51との間で光通信を行うことができる。発光素子51の一部が折返し部40bに重なった場合であっても、折返し部40bによって重なっていない発光素子51と受光素子52との間で光通信が行われる。
【0056】
また、発光素子51同士の照射範囲Irは、周方向に互いに重なっているので、受光素子52により光通信は常時可能になっている。
【0057】
次に、フラットケーブル40の軸線x方向における幅と、発光素子51及び受光素子52の設置数について上記の実施の形態とは異なる実施例について説明する。なお、実施例においては、軸線xを中心として半径r(40mm)の円の周上に発光素子51の円形の照射範囲Irの中心があり、かつ受光素子52がある。
【0058】
図6図8は、本発明に係る回転コネクタにおける光通信部の実施例について示す表及び概略図である。図6(a)~図8(a)は、実施例におけるフラットケーブル40の幅と発光素子51及び受光素子52の設置数との関係を示す表である。実施例1においては、フラットケーブル40の幅が10mmであり、12個の発光素子51及び1個の受光素子52が設けられている。実施例1においては、軸線xを中心に周方向に隣り合う発光素子51同士の設置角度θは30°である。周方向に隣り合う発光素子51の円形の照射範囲Irが重なっており、受光素子52が1つであっても光通信が常時可能になっている(図6(b)参照。)。
【0059】
実施例2においては、フラットケーブル40の幅が10mmであり、1個の発光素子51及び12個の受光素子52が設けられている。発光素子51の円形の照射範囲Irの直径Rよりも、周方向に隣り合う受光素子52間の距離Dが小さくなっている(R>D)。なお、照射範囲Irの直径Rは、少なくとも受光素子52を含む水平な平面において測定される。
【0060】
実施例2において、例えば、発光素子51の照射範囲Irの直径Rは、27mmであり、受光素子52間の距離Dは、20.24mmである。これにより、少なくとも1つの受光素子52は、必ず発光素子51の照射範囲Ir内にあり、光通信が常時可能になっている(図6(c)参照。)。
【0061】
なお、実施例1,2においては1個の発光素子51及び12個の受光素子52であったが、これに限定されない。発光素子51の数を「n」、受光素子52の数を「m」とした場合、以下の関係式
n×m=12
を満たせば、発光素子51の数及び受光素子52の数は適宜変更してもよい。
【0062】
実施例3においては、フラットケーブル40の幅が15mmであり、8個の発光素子51及び1個の受光素子52が設けられている。実施例3においては、軸線xを中心に周方向に隣り合う発光素子51同士の設置角度θは45°である。周方向に隣り合う発光素子51の円形の照射範囲Irが重なっており、受光素子52が1つであっても光通信が常時可能になっている(図7(b)参照。)。
【0063】
実施例4においては、フラットケーブル40の幅が15mmであり、1個の発光素子51及び8個の受光素子52が設けられている。発光素子51の円形の照射範囲Irの直径Rよりも、周方向に隣り合う受光素子52間の距離Dが小さくなっている(R>D)。実施例4において、例えば、発光素子51の照射範囲Irの直径Rは、38mmであり、受光素子52間の距離Dは、29.93mmである。これにより、少なくとも1つの受光素子52は、必ず発光素子51の照射範囲Ir内にあり、光通信が常時可能になっている(図7(c)参照。)。
【0064】
なお、実施例3,4においては1個の発光素子51及び8個の受光素子52であったが、これに限定されない。発光素子51の数を「n」、受光素子52の数を「m」とした場合、以下の関係式
n×m=8
を満たせば、発光素子51の数及び受光素子52の数は適宜変更してもよい。
【0065】
実施例5においては、フラットケーブル40の幅が20mmであり、6個の発光素子51及び1個の受光素子52が設けられている。実施例3においては、発光素子51は、軸線xを中心に周方向に隣り合う発光素子51同士の設置角度θは60°である。周方向に隣り合う発光素子51の円形の照射範囲Irが重なっており、受光素子52が1つであっても光通信が常時可能になっている(図8(b)参照。)。
【0066】
実施例6においては、フラットケーブル40の幅が20mmであり、1個の発光素子51及び6個の受光素子52が設けられている。発光素子51の円形の照射範囲Irの直径Rよりも、周方向に隣り合う受光素子52間の距離Dが小さくなっている(R>D)。実施例6において、例えば、発光素子51の照射範囲Irの直径Rは、48mmであり、受光素子52間の距離Dは、39.1mmである。これにより、少なくとも1つの受光素子52は、必ず発光素子51の照射範囲Ir内にあり、光通信が常時可能になっている(図8(c)参照。)。
【0067】
なお、実施例5,6においては1個の発光素子51及び6個の受光素子52であったが、これに限定されない。発光素子51の数を「n」、受光素子52の数を「m」とした場合、以下の関係式
n×m=6
を満たせば、発光素子51の数及び受光素子52の数は適宜変更してもよい。
【0068】
図5(a)~図7(a)に記載されている他の実施例については、複数の発光素子51が軸線xを中心に全周に亘って均等に設けられており、周方向に隣り合う発光素子51同士の照射範囲Irが互いに重なり合うように発光素子51の仕様、設置条件等を調整すればよい。また、複数の受光素子52が軸線xを中心に全周に亘って均等に設けられており、発光素子51の円形の照射範囲Irの直径R1~3よりも、周方向に隣り合う受光素子52間の距離D1~3が小さくなるように、発光素子51の仕様、設置条件及び受光素子52の設置条件を調整すればよい。
【0069】
以上、本発明の好適な実施の形態及び実施例について説明したが、本発明は上記の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、上記実施の形態及び実施例の各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態及び実施例における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、上記の実施の形態及び実施例においては、発光素子51がロテータ20の側に設けられており、受光素子52がステータ10の側に設けられていたが、受光素子52がロテータ20の側に設けられており、発光素子51がステータ10の側に設けられていてもよい。
【0070】
また、上記の実施の形態においては、6個の発光素子51及び6個の受光素子52が互いに60°の間隔をあけて設けられていたが、例えば、発光素子51及び受光素子52は、折返し部40bの数より多く設けられていればよく、例えば、5個~18個の発光素子51及び受光素子52が設けられていてもよい。なお、折返し部40bの数より多い数の発光素子51及び受光素子52が設けられていれば、同数の発光素子51及び受光素子52が設けられている必要はない。
【符号の説明】
【0071】
1 回転コネクタ、10 ステータ(固定体)、11 底板、12 外周円筒壁、20 ロテータ(回転体)、21 天板、22 内周円筒壁、40 フラットケーブル、40a 外周部、40b 折返し部(交差部)、40c 内周部、50 光通信部、51 発光素子、52 受光素子、Ir 照射範囲、S 収容空間(環状の空間)、x 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8