(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231222BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20231222BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01L21/78 Z
B23Q17/24 A
B23Q17/09 C
B23Q17/09 A
H01L21/78 F
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2019205557
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 航太朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229800(JP,A)
【文献】特開2013-074198(JP,A)
【文献】特開2016-219756(JP,A)
【文献】特開2013-149932(JP,A)
【文献】特開平11-054429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23Q 17/24
B23Q 17/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットによる被加工物の加工結果または加工ユニットの状態を検査し判定する判定部と、該判定部の判定結果に基づいた情報を報知する報知部と、を備える加工装置であって、
該判定部は、
該判定部で合否判定をするための許容値を登録する合否許容値登録部と、
所定の単位時間当たりの否判定が発生する回数の閾値を登録する発生閾値登録部と、を備え、
該報知部は、該否判定の発生回数が該閾値を超えた事を該報知部が報知
し、
該発生閾値登録部には、第1の閾値と該第1の閾値より大きい第2の閾値が登録され、
該報知部は、該第1の閾値を超えた場合と該第2の閾値を超えた場合とで異なる情報を報知する加工装置。
【請求項2】
チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットによる被加工物の加工結果または加工ユニットの状態を検査し判定する判定部と、該判定部の判定結果に基づいた情報を報知する報知部と、を備える加工装置であって、
該判定部は、
該判定部で合否判定をするための許容値を登録する合否許容値登録部と、
所定の単位時間当たりの否判定が発生する回数の閾値を登録する発生閾値登録部と、を備え、
該報知部は、該否判定の発生回数が該閾値を超えた事を該報知部が報知
し、
該加工ユニットの加工条件を入力する入力部と、
該入力部を制御する制御ユニットと、をさらに備え、
該制御ユニットは、該否判定の発生回数が該閾値を超えた場合、該入力部からの入力に制限を設ける加工装置。
【請求項3】
チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットによる被加工物の加工結果または加工ユニットの状態を検査し判定する判定部と、該判定部の判定結果に基づいた情報を報知する報知部と、を備える加工装置であって、
該判定部は、
該判定部で合否判定をするための許容値を登録する合否許容値登録部と、
所定の単位時間当たりの否判定が発生する回数の閾値を登録する発生閾値登録部と、を備え、
該報知部は、該否判定の発生回数が該閾値を超えた事を該報知部が報知
し、
該発生閾値登録部には、第1の閾値と該第1の閾値より大きい第2の閾値が登録され、
該報知部は、該第1の閾値を超えた場合と該第2の閾値を超えた場合とで異なる情報を報知し、
該加工ユニットの加工条件を入力する入力部と、
該入力部を制御する制御ユニットと、をさらに備え、
該制御ユニットは、該否判定の発生回数が該閾値を超えた場合、該入力部からの入力に制限を設ける加工装置。
【請求項4】
該報知部は、画面表示ユニット、音声ユニット、または異なる加工装置または端末装置に情報を送信する情報送信ユニットを有する請求項1
、請求項2
または請求項3に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハや樹脂パッケージ基板、ガラス基板やセラミックス基板等、板状の被加工物を切削ブレードで切削する加工装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、被加工物を研削砥石で研削したり、レーザー光線でレーザー加工したりする各種加工装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-262983号公報
【文献】特許第2628256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工装置では、加工途中で、被加工物の状態を画像処理して数値化して検査したり、加工装置の状態を各種圧力計、流量計の計測値を採取して検査したりすることで、加工の異常が発生してもいち早く察知し、加工条件や工具の状態を修正し、異常の発生を抑えたり、少なくしたりする。しかしながら、異常であるか否か(合否)を判定する許容値は、安全をみて厳しめに設定されることが多く、実際は許容値を多少超えても、異常なく加工が行われる場合も多い。その場合、オペレータは異常の発生を知らせるアラームに慣れてしまい、アラームをクリアして引き続き加工を続行することに違和感がなくなり、本当に異常が発生していたとしても、それに気付かず生産を続けてしまう恐れがあるという問題があった。このように、従来の加工装置では、異常が発生している可能性が高いことを確認することが困難となるおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、異常が発生している可能性が高いことを確認することができる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットによる被加工物の加工結果または加工ユニットの状態を検査し判定する判定部と、該判定部の判定結果に基づいた情報を報知する報知部と、を備える加工装置であって、該判定部は、該判定部で合否判定をするための許容値を登録する合否許容値登録部と、所定の単位時間当たりの否判定が発生する回数の閾値を登録する発生閾値登録部と、を備え、該報知部は、該否判定の発生回数が該閾値を超えた事を該報知部が報知し、該発生閾値登録部には、第1の閾値と該第1の閾値より大きい第2の閾値が登録され、該報知部は、該第1の閾値を超えた場合と該第2の閾値を超えた場合とで異なる情報を報知するものである。
【0007】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットによる被加工物の加工結果または加工ユニットの状態を検査し判定する判定部と、該判定部の判定結果に基づいた情報を報知する報知部と、を備える加工装置であって、該判定部は、該判定部で合否判定をするための許容値を登録する合否許容値登録部と、所定の単位時間当たりの否判定が発生する回数の閾値を登録する発生閾値登録部と、を備え、該報知部は、該否判定の発生回数が該閾値を超えた事を該報知部が報知し、該加工ユニットの加工条件を入力する入力部と、該入力部を制御する制御ユニットと、をさらに備え、該制御ユニットは、該否判定の発生回数が該閾値を超えた場合、該入力部からの入力に制限を設けるものである。
【0008】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットによる被加工物の加工結果または加工ユニットの状態を検査し判定する判定部と、該判定部の判定結果に基づいた情報を報知する報知部と、を備える加工装置であって、該判定部は、該判定部で合否判定をするための許容値を登録する合否許容値登録部と、所定の単位時間当たりの否判定が発生する回数の閾値を登録する発生閾値登録部と、を備え、該報知部は、該否判定の発生回数が該閾値を超えた事を該報知部が報知し、該発生閾値登録部には、第1の閾値と該第1の閾値より大きい第2の閾値が登録され、該報知部は、該第1の閾値を超えた場合と該第2の閾値を超えた場合とで異なる情報を報知し、該加工ユニットの加工条件を入力する入力部と、該入力部を制御する制御ユニットと、をさらに備え、該制御ユニットは、該否判定の発生回数が該閾値を超えた場合、該入力部からの入力に制限を設けるものである。
【0009】
該報知部は、画面表示ユニット、音声ユニット、または異なる加工装置または端末装置に情報を送信する情報送信ユニットを有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、異常が発生している可能性が高いことを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の加工装置におけるカーフチェックの検査項目を説明する平面図である。
【
図3】
図3は、
図1の加工装置のカーフチェックの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1の加工装置における所定の単位時間当たりの否判定の発生回数のデータを示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図1の加工装置の異常判定の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る加工装置の構成例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図6の加工装置におけるブレードチェックの検査項目であるブレード破損を説明するグラフである。
【
図9】
図9は、
図6の加工装置におけるブレードチェックの検査項目であるブレード消耗量を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工装置1の構成例を示す斜視図である。実施形態1に係る加工装置1は、被加工物200を切削し、切削加工によって形成された加工結果(加工痕ともいう)である切削溝300(
図2参照)に対していわゆるカーフチェックを遂行する切削装置である。以下において、実施形態1に係る加工装置1が、切削加工によって形成された切削溝300に対してカーフチェックを遂行する形態について説明する。
【0014】
なお、加工装置1は、本発明ではこれに限定されず、被加工物200にレーザー光線を照射して被加工物200をレーザー加工し、レーザー加工によって形成された加工結果であるレーザー加工溝に対していわゆるカーフチェックを遂行するレーザー加工装置であってもよい。また、加工装置1は、本発明では、研削砥石で被加工物200を研削加工し、研削加工によって形成された研削面を検査する研削装置であってもよい。
【0015】
実施形態1において、加工装置1が切削する被加工物200は、
図1に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどのウェーハである。被加工物200は、平坦な表面201の格子状に形成される複数の分割予定ライン202によって区画された領域にデバイス203が形成されている。被加工物200は、表面201の裏側の裏面204に粘着テープ205が貼着され、粘着テープ205の外縁部に環状フレーム206が装着されている。なお、被加工物200は、本発明ではこれに限定されず、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状の樹脂パッケージ基板、ガラス基板、又はセラミックス基板等でも良い。
【0016】
加工装置1は、
図1に示すように、加工ユニット10と、チャックテーブル40と、カメラ50と、制御ユニット60と、報知部30とを備える。加工装置1は、
図1に示すように、加工ユニット10を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0017】
また、加工装置1は、
図1に示すように、X軸移動ユニット71と、Y軸移動ユニット72と、Z軸移動ユニット73と、をさらに備える。X軸移動ユニット71は、チャックテーブル40を加工ユニット10に対して相対的に、水平方向の一方向であるX軸方向に沿って加工送りする。Y軸移動ユニット72は、加工ユニット10をチャックテーブル40に対して相対的に、水平方向の別の一方向でありX軸方向に直交するY軸方向に沿って割り出し送りする。Z軸移動ユニット73は、加工ユニット10をチャックテーブル40に対して相対的に、X軸方向とY軸方向との双方と直交し鉛直方向に平行なZ軸方向に沿って切り込み送りする。
【0018】
チャックテーブル40は、被加工物200を保持する。チャックテーブル40は、被加工物200を保持する平坦な保持面41が上面に形成されかつ多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から構成された円盤形状の吸着部と、吸着部を上面中央部の窪み部に嵌め込んで固定する枠体とを備えた円盤形状である。チャックテーブル40は、X軸移動ユニット71により移動自在で、不図示の回転駆動源により回転自在に設けられている。チャックテーブル40は、吸着部が、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面41全体で、被加工物200を吸引保持する。また、チャックテーブル40の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム206をクランプするクランプ部42が複数設けられている。
【0019】
加工ユニット10は、チャックテーブル40で保持された被加工物200を分割予定ライン202に沿って加工して切削溝300を形成する。加工ユニット10は、切削ブレード11と、スピンドル12と、スピンドルハウジング13と、を備える。切削ブレード11は、Y軸と平行な軸心周りの回転動作が加えられて、チャックテーブル40に保持された被加工物200を切削する。スピンドル12は、軸心がY軸方向に沿って設けられ、先端で軸心周りに回転可能に切削ブレード11を支持する。スピンドル12は、制御ユニット60の制御に従って電流を負荷して、Y軸周りに回転駆動する。スピンドルハウジング13は、スピンドル12をY軸周りの回転動作を可能に収納する。加工ユニット10は、スピンドルハウジング13が、チャックテーブル40に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット72によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット73によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0020】
カメラ50は、チャックテーブル40に保持された被加工物200を撮影する。カメラ50は、実施形態1では、加工ユニット10と一体的に移動するように、加工ユニット10に固定されている。カメラ50は、チャックテーブル40に保持された切削加工前の被加工物200の分割予定ライン202、及び、切削加工後の被加工物200の加工痕である切削溝300を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。
【0021】
カメラ50は、チャックテーブル40に保持された切削加工前の被加工物200を撮像して、被加工物200と切削ブレード11との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を後述する制御ユニット60に出力する。また、カメラ50は、チャックテーブル40に保持された切削加工後の被加工物200を撮像して、切削溝300が分割予定ライン202の中に収まっているか、大きな欠けなどが発生していないかを自動的に確認する、いわゆるカーフチェックを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット60に出力する。
【0022】
制御ユニット60は、加工装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する切削加工及びカーフチェックに関する各動作を加工装置1に実施させるものである。制御ユニット60は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット60は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。
【0023】
制御ユニット60は、判定部20を備える。判定部20は、加工ユニット10による加工で形成された被加工物200の切削溝300を検査し、切削溝300の良否を判定する。判定部20は、実施形態1では、被加工物200の切削加工により形成された切削溝300についてカーフチェックを遂行する。判定部20は、合否許容値登録部21と、発生閾値登録部22と、を備える。合否許容値登録部21は、判定部20で被加工物200の切削溝300の合否を判定するための許容値を、切削溝300の検査項目ごとに登録する。判定部20は、合否許容値登録部21によって登録された許容値に基づいて、検査項目ごとに、切削溝300が合格である旨の合格判定か、切削溝300が不合格である旨の否判定かを出す。
【0024】
発生閾値登録部22は、所定の単位時間111(
図4参照)当たりの否判定が発生する回数の閾値を登録する。発生閾値登録部22は、実施形態1では、切削溝300の全ての検査項目について共通の否判定の発生回数の閾値を登録するが、本発明ではこれに限定されず、検査項目ごとに異なる閾値を登録してもよい。
【0025】
判定部20は、切削溝300の各検査項目の否判定の単位時間当たりの発生頻度に応じて、報知部30が報知する際の警告レベルを変更する。なお、警告レベルは、実施形態1では、異常が発生している可能性が低い方から、レベル1、レベル2、レベル3、レベル4及びレベル5の5段階で設定する。
【0026】
判定部20の機能は、実施形態1では、制御ユニット60の演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。合否許容値登録部21及び発生閾値登録部22は、制御ユニット60の記憶装置により実現される。なお、判定部20は、本発明ではこれに限定されず、例えば、制御ユニット60と独立したコンピュータシステムに基づいて実現されていてもよい。
【0027】
報知部30は、判定部20の判定結果に基づいた情報や、切削加工及びカーフチェックに関する各動作の状態をオペレータに報知する。報知部30は、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が、発生閾値登録部22が登録した閾値を超えたことをオペレータに報知する。報知部30は、実施形態1では、判定部20で設定された警告レベルに応じて、オペレータに対してより目立つように報知する。
【0028】
報知部30は、実施形態1では、
図1に示すように、画面表示ユニット31と、音声ユニット32と、情報送信ユニット33と、光報知ユニット34と、を有する。報知部30の各構成要素は、いずれも、制御ユニット60の入出力インターフェース装置を介して、制御ユニット60の演算処理装置内の判定部20と接続されている。
【0029】
画面表示ユニット31は、判定部20の判定結果に基づく画像や、切削加工及びカーフチェックに関する各動作の状態の画像等を表示する。画面表示ユニット31は、判定結果に基づく画像を表示する際、例えば、警告レベルに応じて、異常が発生している可能性が高くなることに応じて、表示する文字を大きくしたり、表示を点滅させたり、表示の点滅速度を早くしたり、表示する文字や画面全体の色を目立つ色に変更したり、目立つアイコンを表示させたり、否判定が発生した検査項目と否判定の発生回数を表示させたりすること等により、オペレータに対してより目立つように報知する。画面表示ユニット31は、実施形態1では、液晶表示装置等により構成される。
【0030】
音声ユニット32は、判定部20の判定結果や切削加工及びカーフチェックに関する各動作の状態に基づいて音声を発信する。音声ユニット32は、判定結果に基づく音声を発信する際、例えば、警告レベルに応じて、異常が発生している可能性が高くなることに応じて、アラーム音の音を高くしたり、アラーム音の音を時間経過と共に変化させたり、アラーム音のリズムを早くしたり、アラーム音のリズムを時間経過と共に変化させたり、否判定が発生した検査項目や否判定の発生回数に基づくコメントを音声で報知したりすること等により、オペレータに対してより目立つように報知する。音声ユニット32は、実施形態1では、スピーカ等により構成される。
【0031】
情報送信ユニット33は、判定部20の判定結果に基づいた情報や、切削加工及びカーフチェックに関する各動作の状態に基づく情報を、加工装置1とは異なる加工装置92または端末装置94に送信して、加工装置92や端末装置94のオペレータに報知する。加工装置92は、実施形態1では、切削装置、レーザー加工装置、または研削装置等である。端末装置94は、実施形態1では、コンピュータシステム等である。実施形態1では、情報送信ユニット33は、加工装置92や端末装置94を通じて、加工装置1のオペレータや工程管理者に加工装置1に関する各種情報を報知することができる。
【0032】
光報知ユニット34は、切削加工及びカーフチェックに関する各動作の状態に基づいて点灯する。光報知ユニット34は、判定結果に基づいて点灯する際、例えば、警告レベルに応じて、異常が発生している可能性が高くなることに応じて、点滅させたり、点滅速度を早くしたり、点灯する色を目立つ色に変更したりすること等により、オペレータに対してより目立つように報知する。光報知ユニット34は、発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)などにより構成される。
【0033】
加工装置1は、
図1に示すように、入力部39をさらに備える。入力部39は、オペレータが加工ユニット10の加工条件及び許容値や閾値等のカーフチェックに関する情報等を、入力及び登録等する際に用いる。入力部39は、制御ユニット60の判定部20により制御される。制御ユニット60の判定部20は、入力部39からの入力に制限を設けることができる。制御ユニット60の判定部20は、実施形態1では、警告レベルに応じて、異常が発生している可能性が高くなることに応じて、オペレータに対して入力がより煩わしくなるように入力部39からの入力に制限を設ける。制御ユニット60の判定部20は、例えば、警告レベルに応じて、異常が発生している可能性が高くなることに応じて、入力部39を、オペレータが所定のパスワードを入力しないと次の処理に進めないように制御したり、アラーム音をクリアするためのクリアボタンを選択する回数を増やすように制御したりすることで、入力部39からの入力に制限を設ける。入力部39は、実施形態1では、画面表示ユニット31に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0034】
また、加工装置1は、
図1に示すように、切削加工前後の被加工物200を収容するカセット80と、カセット80の収容前後の被加工物200を仮置きする仮置きユニット82と、切削加工後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット90と、被加工物200をチャックテーブル40、カセット80、仮置きユニット82及び洗浄ユニット90の間で搬送する搬送ユニット85と、をさらに備える。搬送ユニット85は、被加工物200を保持する吸着部を備え、吸着部が、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、制御ユニット60の制御に従って被加工物200を吸引保持する。
【0035】
加工装置1は、切削加工時に、搬送ユニット85がカセット80内から被加工物200を1枚取り出してチャックテーブル40の保持面41に載置する。加工装置1は、チャックテーブル40の保持面41で被加工物200を吸引保持して、加工ユニット10から被加工物200に切削水を供給しながら、X軸移動ユニット71、回転駆動源、Y軸移動ユニット72及びZ軸移動ユニット73によりチャックテーブル40と加工ユニット10とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させて、加工ユニット10で被加工物200の分割予定ライン202を切削して切削溝300を形成する。加工装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、被加工物200を洗浄ユニット90で洗浄した後にカセット80内に収容する。
【0036】
加工装置1は、制御ユニット60の判定部20が、1枚の被加工物200の加工開始から加工終了までの間に、任意のタイミングで加工痕である切削溝300の状態を検査するいわゆるカーフチェックを遂行する。
図2は、
図1の加工装置1におけるカーフチェックの検査項目を説明する平面図である。以下において、
図2を用いて、実施形態1に係る加工装置1が実施するカーフチェックの詳細を説明する。
【0037】
実施形態1に係るカーフチェックで判定部20が検査する検査項目は、
図2に示すように、各加工ユニット10により形成される切削溝300の溝幅301、各加工ユニット10により形成される切削溝300の幅方向の中心302の分割予定ライン202の幅方向の中心202-2からのずれであるカット位置ずれ303、及び、チッピングの切削溝300の縁からの長さであるチッピングサイズ304である。
【0038】
合否許容値登録部21は、切削加工前に、
図2に示すように、溝幅301の許容値である第1の許容値101と、第1の許容値より大きい溝幅301の許容値である第2の許容値102とを登録する。合否許容値登録部21は、カット位置ずれ303及びチッピングサイズ304についても、溝幅301の許容値と同様に、切削加工前に、第1の許容値101と第2の許容値102とを登録する。第1の許容値101は、実施形態1では、第2の許容値102よりも厳しい(許容範囲が狭い)許容値であり、超えてしまうと、切削加工に異常が発生する可能性がある条件となっている。第1の許容値101は、実施形態1では、判定部20が否判定を出す基準の許容値である。また、第2の許容値102は、実施形態1では、第1の許容値101よりも緩い(許容範囲が広い)許容値であり、超えてしまうと、切削ブレード11が分割予定ライン202の幅202-1を超えてデバイス203を切削加工してしまう等の大きな異常が発生する条件となっている。第2の許容値102は、実施形態1では、判定部20が切削加工を中止する基準の許容値である。
【0039】
発生閾値登録部22は、切削加工前に、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数の閾値である第1の閾値107(
図4参照)と、第1の閾値107より大きい第2の閾値108とを登録する。
【0040】
実施形態1に係る加工装置1のカーフチェックの動作について以下に説明する。
図3は、
図1の加工装置1のカーフチェックの動作の一例を示すフローチャートである。
【0041】
判定部20は、
図3に示すように、切削加工時に、1枚の被加工物200の加工開始から加工終了までの間に、任意のタイミングで、切削溝300の状態を検査するいわゆるカーフチェックを遂行する(ステップST11)。
【0042】
ステップST11では、まず、判定部20が、カメラ50により、チャックテーブル40に保持された切削加工後の被加工物200におけるカーフチェックの検査箇所を撮影して、この検査箇所においてカーフチェックを遂行するための画像を取得する。なお、判定部20は、加工ユニット10により被加工物200に切削加工を施す前に実施するアライメントの際に、被加工物200上の各分割予定ライン202を検出し、その位置を座標で認識しているため、これに基づき、円滑にカメラ50の撮影領域を被加工物200における分割予定ライン202上の検査箇所へ移動させることができる。
【0043】
ステップST11では、次に、判定部20が、カメラ50が撮影して取得した画像に対して所定の画像解析を実施することで、検査箇所における切削溝300を検出し、検査項目である溝幅301、カット位置ずれ303、及び、チッピングサイズ304と、を導出する。
【0044】
ステップST11では、その次に、判定部20が、導出した溝幅301、カット位置ずれ303、及び、チッピングサイズ304が、それぞれについて切削加工前に設定した第1の許容値101及び第2の許容値102を超えているか否かを判定する。判定部20は、ステップST11を実施した後、処理をステップST12へ進める。
【0045】
判定部20は、ステップST12以降の処理を、検査項目ごとに実施する。なお、以下、検査項目として「溝幅301」を判定する場合を説明し、他の検査項目を判定する説明は、「溝幅301」を判定する場合と同じであるので、説明を省略する。
【0046】
判定部20は、ステップST11の結果、溝幅301が第2の許容値102を超えていると判定した場合(ステップST12でNo)、切削加工に大きな異常が発生していると判定し、処理をステップST13に進める。ステップST13では、まず、判定部20は、警告レベルを一気に最大のレベル5まで上げる。判定部20は、その後、一気に最大のレベル5まで上げた警告レベルに応じて、オペレータに目立つようにこの溝幅301についての判定結果に基づいた情報を報知部30に報知させる。また、判定部20は、一気に最大のレベル5まで上げた警告レベルに応じて、入力部39からの入力に制限を設けるとともに、加工ユニット10による切削加工を中止する(ステップST13)。判定部20は、ステップST13を実施した後、実施形態1に係るカーフチェックの動作のフローを終了する。
【0047】
一方、判定部20は、ステップST11の結果、溝幅301が第2の許容値102以下であると判定した場合(ステップST12でYes)、実施形態1に係るカーフチェックの動作のフローをステップST14へ進める。判定部20は、ステップST12でYesとなった後、溝幅301が第1の許容値101を超えていると判定した場合(ステップST14でNo)、否判定を1回カウントした後(ステップST15)、実施形態1に係るカーフチェックの動作のフローを終了する。なお、ステップST15では、判定部20は、否判定が発生した時の検査項目及び検査時間と対応付けて、否判定を1回カウントした旨を記憶する。
【0048】
判定部20は、ステップST12でYesとなった後、溝幅301が第1の許容値101以下であると判定した場合(ステップST14でYes)、溝幅301について検査対象の切削溝300が合格である旨の合格判定を出し、実施形態1に係るカーフチェックの動作のフローを終了する。
【0049】
図4は、
図1の加工装置1における所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数のデータ110を示すグラフである。否判定の発生回数のデータ110は、実施形態1に係る加工装置1のカーフチェックの動作のステップST15で判定部20が作成し、記憶する。所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数は、実施形態1では、所定の単位時間111内に発生した全検査項目についての否判定の発生回数の合計である。なお、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数は、本発明ではこれに限定されず、検査項目ごとの所定の単位時間111内に発生した否判定の発生回数としてもよい。
【0050】
否判定の発生回数のデータ110は、
図4に示す例では、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が第1の閾値107以下のデータ112と、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が第1の閾値107を超え、なおかつ第2の閾値108以下のデータ113と、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が第2の閾値108を超えたデータ114と、を含んでいる。
【0051】
実施形態1に係る加工装置1の異常判定の動作について以下に説明する。
図5は、
図1の加工装置1の異常判定の動作の一例を示すフローチャートである。判定部20は、否判定の発生回数のデータ110に基づいて、加工動作中の任意のタイミングで、加工装置1の異常判定の動作を実施する。なお、判定部20は、本発明ではこれに限定されず、加工装置1の異常判定の動作を、加工装置1のカーフチェックの動作を実施するタイミングで実施してもよく、加工装置1のカーフチェックの動作を実施した後に引き続きのタイミングで実施してもよい。
【0052】
判定部20は、
図5に示すように、否判定の発生回数のデータ110に基づいて、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が第1の閾値107及び第2の閾値108を超えているか否かを判定する(ステップST21)。
【0053】
判定部20は、ステップST21の結果、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が第2の閾値108を超えていると判定した場合(ステップST22でNo)、否判定の発生頻度が非常に高く、異常が発生している可能性が非常に高いと判定し、所定の第2処置を実施する(ステップST23)。所定の第2処置では、実施形態1では、判定部20が、警告レベルを2段階上げて、2段階上げた警告レベルに応じて、オペレータに目立つようにこの判定結果に基づいた情報を報知部30に報知させる。また、所定の第2処置では、その後、判定部20が、2段階上げた警告レベルに応じて、入力部39からの入力に制限を設けるとともに、加工ユニット10による切削加工を中止する。判定部20は、所定の第2処置を実施した後、実施形態1に係る異常判定の動作のフローを終了する。
【0054】
一方、判定部20は、ステップST21の結果、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が第2の閾値108以下であると判定した場合(ステップST22でYes)、実施形態1に係る異常判定の動作のフローをステップST24へ進める。
【0055】
判定部20は、ステップST22でYesとなった後、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が第1の閾値107を超えていると判定した場合(ステップST24でNo)、否判定の発生頻度が比較的高く、異常が発生している可能性が比較的高いと判定し、所定の第1処置を実施する(ステップST25)。所定の第1処理では、実施形態1では、判定部20が、警告レベルを1段階上げて、1段階上げた警告レベルに応じて、オペレータに目立つようにこの判定結果に基づいた情報を報知部30に報知させる。また、所定の第1処置では、その後、判定部20が、警告レベルを1段階上げた結果、最大のレベル5になった場合のみ、入力部39からの入力に制限を設け、加工ユニット10による切削加工を中止する。判定部20は、所定の第1処置を実施した後、実施形態1に係る異常判定の動作のフローを終了する。
【0056】
判定部20は、実施形態1では、ステップST23の所定の第2処置とステップST25の所定の第1処置とでは、異なる情報を報知し、オペレータに異なる処置を促す。判定部20は、ステップST23の所定の第2処置では、ステップST25の所定の第1処置よりも、異常判定を実施した検査項目についての警告レベルを1段階多く上げ、オペレータに目立つように情報を報知部30に報知させる。
【0057】
判定部20は、ステップST22でYesとなった後、所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数が第1の閾値107以下であると判定した場合(ステップST24でYes)、否判定の発生頻度が十分低いと判定し、警告レベルを1段階下げて、実施形態1に係る異常判定の動作のフローを終了する。
【0058】
以上のような構成を有する実施形態1に係る加工装置1は、加工ユニット10による被加工物200の加工結果を検査して判定する判定部20が、合否許容値登録部21が登録した第1の許容値101に基づいて加工結果について合否判定をし、この合否判定によって発生した否判定が、発生閾値登録部22が登録した所定の単位時間111当たりの否判定の発生回数の第1の閾値107や第2の閾値108を超えているか否かを判定して、第1の閾値107や第2の閾値108を超えている旨の判定結果が得られた場合に、報知部30が、その旨の判定結果に基づいてオペレータに報知する。このため、実施形態1に係る加工装置1は、否判定の発生頻度が高く、異常が発生している可能性が高い場合に、オペレータがその異常を間違いなく確認することができるという作用効果を奏する。
【0059】
また、実施形態1に係る加工装置1は、発生閾値登録部22には、第1の閾値107と、第1の閾値107より大きい第2の閾値108が登録され、報知部30が、第1の閾値107を超えた場合と、第2の閾値108を超えた場合とで異なる情報を報知する。具体的には、実施形態1に係る加工装置1は、報知部30が、第1の閾値107を超えた場合には、1段階上げた警告レベルに応じた報知をし、第2の閾値108を超えた場合には、2段階上げた警告レベルに応じた報知をする。このため、実施形態1に係る加工装置1は、否判定の発生頻度に応じて、異常が発生している可能性が高いことを確認することができるという作用効果を奏する。
【0060】
また、実施形態1に係る加工装置1は、報知部30が、画面表示ユニット31、音声ユニット32、または異なる加工装置92または端末装置94に情報を送信する情報送信ユニット33を有する。このため、実施形態1に係る加工装置1は、文字や画像、音声、または異なる加工装置92または端末装置94により、異常が発生している可能性が高いことをオペレータに確認させることができるという作用効果を奏する。
【0061】
また、実施形態1に係る加工装置1は、加工ユニット10の加工条件を入力する入力部39と、入力部39を制御する制御ユニット60とをさらに備え、制御ユニット60は、否判定の発生回数が第1の閾値107や第2の閾値108を超えた場合、入力部39からの入力に制限を設ける。このため、実施形態1に係る加工装置1は、入力制限を設けることにより、異常が発生している可能性が高いことをオペレータに確認させることができるという作用効果を奏する。
【0062】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工装置1-2を図面に基づいて説明する。
図6は、実施形態2に係る加工装置1-2の構成例を示す断面図である。
図7は、
図6の加工装置1-2の構成例を示す側面図である。
図8は、
図6の加工装置1-2におけるブレードチェックの検査項目であるブレード破損を説明するグラフである。
図9は、
図6の加工装置1-2におけるブレードチェックの検査項目であるブレード消耗量を説明するグラフである。
図6~
図9は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
実施形態2に係る加工装置1-2は、
図6に示すように、実施形態1に係る加工装置1-1において、加工ユニット10を加工ユニット10-2に変更し、制御ユニット60内の機能部を変更したものである。
【0064】
加工ユニット10-2は、
図6及び
図7に示すように、切削ブレード11と、スピンドル12と、スピンドルハウジング13と、ブレードマウント14と、ブレードカバー15と、給水ノズル16-1,16-2と、給水源接続部17と、溝状部材18と、昇降部19と、を備える。実施形態2に係る制御ユニット60は、
図6に示すように、合否許容値登録部21及び発生閾値登録部22を備える判定部20と、開閉指示部61と、発光素子62と、受光素子63と、アンプ64と、光電変換部65と、を備える。実施形態2に係る制御ユニット60内の判定部20は、実施形態1と同様に、報知部30と接続されている。
【0065】
切削ブレード11は、ブレードマウント14を介してスピンドル12の先端に固定されて、回転軸となるスピンドル12により回転されることで、被加工物200を切削する。切削ブレード11は、実施形態2では所謂ハブブレードであり、
図6及び
図7に示すように、環状の切り刃11-1と、円盤状の基台11-2と、とを有する。切り刃11-1は、基台11-2の外周縁に設けられ、基台11-2の外周から突出している。切り刃11-1は、例えば、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。基台11-2は、中央にブレードマウント14に固定されるための挿入穴を有し、環状に形成されている。基台11-2は、例えば、アルミニウム合金などの金属から構成されている。なお、切削ブレード11は、本発明ではハブブレードに限定されず、挿入穴を有する切り刃11-1のみで構成された所謂ハブレスブレードであってもよい。
【0066】
ブレードマウント14は、円板状のフランジ部で切削ブレード11を挟持して、円筒状のボス部が挿入穴に挿入されてスピンドル12の先端に装着されることで、切削ブレード11を軸心周りに回転可能にスピンドル12の先端に装着する。
【0067】
ブレードカバー15は、スピンドルハウジング13の先端側に装着されており、切削ブレード11の上方、前方及び後方を覆う。ブレードカバー15は、開閉指示部61の制御に従って、切削ブレード11を覆う閉位置と、切削ブレード11から離間して開放する開位置との間を移動する。ブレードカバー15は、内部に複数の水路が形成されており、
図7に示すように、複数の水路の下側の一端には給水ノズル16-1,16-2が設けられ、複数の水路の上側の他端には給水源接続部17が設けられている。給水ノズル16-1は、給水源接続部17から供給される切削水を切削ブレード11の切り刃11-1の側方に供給する。給水ノズル16-2は、給水源接続部17から供給される切削水を切削ブレード11の切り刃11-1の前方に供給する。切削水は、例えば、純水であり、制御ユニット60によりその流量が制御される。
【0068】
溝状部材18は、
図6に示すように、切削ブレード11の切り刃11-1の厚みよりも広い幅の溝18-1が形成されている。溝状部材18は、ブレードカバー15に設けられ、溝18-1により切り刃11-1の上端部を挟み込んでいる。昇降部19は、溝状部材18を昇降移動させる。
【0069】
溝状部材18は、
図6に示すように、発光部18-2と、受光部18-3と、を備える。発光部18-2は、溝18-1の一方の側壁に設けられ、溝18-1の他方の側壁に向けて光を発する。発光部18-2は、発光素子62が光ファイバー等により光学的に接続されており、発光素子62からの光を発する。受光部18-3は、溝18-1の他方の側壁に発光部18-2と対面する位置に設けられ、発光部18-2で発せられた光を受光する。受光部18-3は、受光素子63が光ファイバー等により光学的に接続されており、受光素子63で受光部18-3が受光した光を検出する。
【0070】
アンプ64は、判定部20の制御に従って、発光素子62からの発光量を増幅することで、発光部18-2から発する発光量を調整する。光電変換部65は、判定部20の制御に従って、受光素子63で検出した受光部18-3に到達した光を電流信号に変換し、受光量の電流値を得る。光電変換部65は、変換して得られた受光量の電流値を判定部20に送信する。
【0071】
判定部20が光電変換部65から取得する受光量の電流値は、切削ブレード11の切り刃11-1の外縁が切削ブレード11の径方向に突き出している場合には減少し、径方向に凹んでいる場合には増大する。このため、判定部20が光電変換部65から取得する受光量の電流値は、スピンドル12に装着中の切削ブレード11の切り刃11-1の外縁の平面形状を示すものとなる。
【0072】
判定部20は、実施形態2では、加工ユニット10の状態を検査し、判定する。判定部20は、具体的には、加工ユニット10の切削ブレード11の状態を検査するブレードチェックを遂行する。合否許容値登録部21は、実施形態2では、判定部20で切削ブレード11の合否を判定するための許容値を、切削ブレード11の検査項目ごとに登録する。発生閾値登録部22は、実施形態2では、切削ブレード11の全ての検査項目について共通の否判定の発生回数の閾値を登録するが、本発明ではこれに限定されず、検査項目ごとに異なる閾値を登録してもよい。
【0073】
実施形態2に係るブレードチェックで判定部20が検査する検査項目は、ブレード破損、及び、ブレード消耗量である。ブレード破損の検査は、切削ブレード11の切り刃11-1の外縁に欠けが発生しているか否かを検査するものである。ブレード消耗量の検査は、一定時間402(
図9参照)当たりの切削ブレード11の切り刃11-1の消耗量を検査するものである。
【0074】
切削ブレード11が破損している場合、すなわち、切削ブレード11の切り刃11-1の外縁に欠けが発生している場合には、
図8に示すように、判定部20が光電変換部65から取得する受光量の電流値は、欠けの大きさに応じて、スパイク状に増加する。
図8に示す例では、判定部20が光電変換部65から取得する受光量の電流値は、切削ブレード11の切り刃11-1の外縁に発生した欠けにより、電流値の変化量401だけ増加している。判定部20は、実施形態2に係るブレードチェックでは、電流値の変化量401を検査することで、ブレード破損を検査する。
【0075】
切削ブレード11が消耗している場合、すなわち、切削ブレード11の切り刃11-1が消耗している場合には、
図9に示すように、判定部20が光電変換部65から取得する受光量の電流値は、消耗の速度に応じて、徐々に増加する。
図9に示す例では、判定部20が光電変換部65から取得する受光量の電流値は、切削ブレード11の消耗により、一定時間402当たり電流値の変化量403だけ増加している。判定部20は、実施形態2に係るブレードチェックでは、一定時間402当たりの電流値の変化量403を検査することで、一定時間402当たりのブレード消耗量を検査する。なお、
図9における段階的な電流値の変化は、ブレードチェックの際に、切削ブレード11と発光部18-2及び受光部18-3との鉛直方向の位置調整によって生じたものである。
【0076】
実施形態2に係る合否許容値登録部21は、実施形態1と同様に、切削加工前に、電流値の変化量401及び一定時間402当たりの電流値の変化量403について、第1の許容値101と第2の許容値102とを登録する。実施形態2に係る発生閾値登録部22は、実施形態1と同様に、切削加工前に、第1の閾値107と第2の閾値108とを登録する。
【0077】
実施形態2に係る加工装置1-2の動作について以下に説明する。判定部20は、切削加工時に、1枚の被加工物200の加工開始から加工終了までの間に、任意のタイミングで、加工ユニット10の切削ブレード11の状態を検査するブレードチェックを遂行する。
【0078】
実施形態2に係るブレードチェックは、判定部20が、切削ブレード11が発光部18-2及び受光部18-3の間に位置するように、昇降部19で溝状部材18の鉛直方向の位置を調整された状態から開始される。判定部20は、切削ブレード11を軸心周りに回転させた状態で、発光素子62からの光を発光部18-2から発し、受光部18-3により発光部18-2で発せられた光を受光する。そして、判定部20は、受光素子63により受光部18-3に到達した光を検出し、光電変換部65により受光素子63が検出した光を電流信号に変換して受光量の電流値を得る。
【0079】
実施形態2に係るブレードチェックでは、次に、判定部20が、光電変換部65により得た受光量の電流値に対して所定の解析を実施させることで、例えばスパイク状に増加する際の電流値の変化量401と、一定時間402当たりの電流値の変化量403と、を導出する。実施形態2に係るブレードチェックでは、その次に、判定部20が、導出した電流値の変化量401、及び、一定時間402当たりの電流値の変化量403が、それぞれについて切削加工前に設定した第1の許容値101及び第2の許容値102を超えているか否かを判定する。
【0080】
ここで、実施形態2に係るブレードチェックでは、判定部20は、受光量の電流値が所定時間内に所定量以上スパイク状に増加した場合には、部分的なブレード破損と判定する。また、判定部20は、受光量の電流値が所定量以上増加し、その状態が切削ブレード11の一周分以上に相当する所定時間以上続く場合には、切削ブレード11の全周がブレード破損した状態であると判定する。また、判定部20は、受光量の電流値が所定量未満の増加で、その状態が切削ブレード11の一周分以上に相当する所定時間以上続く状態である場合には、ブレード消耗と判定する。
【0081】
実施形態2に係るブレードチェックでは、その後、判定部20は、電流値の変化量401及び一定時間402当たりの電流値の変化量403について、実施形態1に係るカーフチェックのステップST12以降と同じ処理を実施する。
【0082】
実施形態2に係る加工装置1-2の異常判定の動作について以下に説明する。実施形態2に係る加工装置1-2の異常判定の動作では、判定部20は、ブレード破損及びブレード消耗量の2つの検査項目について、実施形態1に係る加工装置1の異常判定の動作と同じ処理を実施する。
【0083】
また、実施形態2に係るブレードチェックでは、判定部20は、所定時間以上連続して受光量の電流値が増加しない、または減少した場合には、発光部18-2、受光部18-3の汚れ、アンプ64の不調などが考えられるため、受光量の電流値の取得の異常が発生したと判定する。判定部20は、この受光量の電流値の取得の異常の発生を否判定として取り扱い、ブレード破損及びブレード消耗と同様に、単位時間当たりの発生回数を第1の閾値107及び第2の閾値108で異常判定を実施する。
【0084】
以上のような構成を有する実施形態2に係る加工装置1-2は、実施形態1に係る加工装置1において、検査項目をブレード破損及びブレード消耗量に変更したものである。このため、実施形態2に係る加工装置1-2は、実施形態1に係る加工装置1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0085】
判定部20は、実施形態1では、加工ユニット10による被加工物200の加工結果を検査し、判定する。また、判定部20は、実施形態2では、加工ユニット10の状態を検査し、判定する。なお、判定部20は、本発明では、いかなる加工ユニット10による加工で形成された被加工物200の加工結果または加工ユニット10の状態を検査し、判定してもよい。
【0086】
〔変形例〕
本発明の実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工装置を説明する。変形例に係る加工装置は、実施形態1に係る加工装置1及び実施形態2に係る加工装置1-2において、判定部20が検査して判定する検査項目を、アライメントエラー、搬送バキュームエラー、チャックテーブルバキュームエラー、スピンドル負荷電流値オーバー、加工水量エラー、水及びエアーの圧力異常、のそれぞれに変更したものである。
【0087】
アライメントエラーの検査項目では、判定部20が、カメラ50が撮像した切削加工前の被加工物200の画像において、切削加工する予定の分割予定ライン202が検出できないこと等により、アライメントが実施できなかったときに否判定を出す。変形例に係る加工装置は、判定部20により、アライメントエラーについての否判定について、実施形態1及び実施形態2と同様の異常判定の動作を実施する。
【0088】
搬送バキュームエラーの検査項目では、判定部20が、搬送ユニット85の吸着部に接続された真空吸引経路内の気圧が所定の許容値を超えたときに否判定を出す。なお、合否許容値登録部21は、搬送ユニット85の吸着部に接続された真空吸引経路内の気圧について、実施形態1及び実施形態2と同様に、第1の許容値と第2の許容値との2段階を登録して、判定部20がこれらの許容値を合否判定に使用してもよい。変形例に係る加工装置は、判定部20により、搬送バキュームエラーについての否判定について、実施形態1及び実施形態2と同様の異常判定の動作を実施する。
【0089】
チャックテーブルバキュームエラーの検査項目では、判定部20が、チャックテーブル40の吸着部に接続された真空吸引経路内の気圧が所定の許容値を超えたときに否判定を出す。なお、合否許容値登録部21は、チャックテーブル40の吸着部に接続された真空吸引経路内の気圧について、実施形態1及び実施形態2と同様に、第1の許容値と第2の許容値との2段階を登録して、判定部20がこれらの許容値を合否判定に使用してもよい。変形例に係る加工装置は、判定部20により、チャックテーブルバキュームエラーについての否判定について、実施形態1及び実施形態2と同様の異常判定の動作を実施する。
【0090】
スピンドル負荷電流値オーバーの検査項目では、判定部20が、スピンドル12がY軸周りに回転駆動する際に負荷する電流値が所定の許容値を超えたときに否判定を出す。なお、合否許容値登録部21は、スピンドル12の負荷する電流値について、実施形態1及び実施形態2と同様に、第1の許容値と第2の許容値との2段階を登録して、判定部20がこれらの許容値を合否判定に使用してもよい。変形例に係る加工装置は、判定部20により、スピンドル負荷電流値オーバーについての否判定について、実施形態1及び実施形態2と同様の異常判定の動作を実施する。
【0091】
加工水量エラーの検査項目では、判定部20が、給水源接続部17から供給される切削水の量、または、給水ノズル16-1,16-2から供給する切削水の量が所定の許容値を超えたときに否判定を出す。なお、合否許容値登録部21は、切削水の量について、実施形態1及び実施形態2と同様に、第1の許容値と第2の許容値との2段階を登録して、判定部20がこれらの許容値を合否判定に使用してもよい。変形例に係る加工装置は、判定部20により、加工水量エラーについての否判定について、実施形態1及び実施形態2と同様の異常判定の動作を実施する。
【0092】
水及びエアーの圧力異常の検査項目では、判定部20が、給水源接続部17から供給される切削水及びエアーの圧力、または、給水ノズル16-1,16-2から供給する切削水及びエアーの圧力が所定の許容値を超えたときに否判定を出す。なお、合否許容値登録部21は、切削水及びエアーの圧力について、実施形態1及び実施形態2と同様に、第1の許容値と第2の許容値との2段階を登録して、判定部20がこれらの許容値を合否判定に使用してもよい。変形例に係る加工装置は、判定部20により、水及びエアーの圧力異常についての否判定について、実施形態1及び実施形態2と同様の異常判定の動作を実施する。
【0093】
以上のような構成を有する変形例に係る加工装置は、実施形態1に係る加工装置1及び実施形態2に係る加工装置1-2において、判定部20が検査して判定する検査項目を変更したものである。このため、変形例に係る加工装置は、実施形態1に係る加工装置1及び実施形態2に係る加工装置1-2と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0095】
1,1-2 加工装置
10 加工ユニット
11 切削ブレード
20 判定部
21 合否許容値登録部
22 発生閾値登録部
30 報知部
31 画面表示ユニット
32 音声ユニット
33 情報送信ユニット
34 光報知ユニット
39 入力部
40 チャックテーブル
50 カメラ
60 制御ユニット
200 被加工物