(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】バスバー、回転電機システム、およびバスバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
H02K3/04 J
(21)【出願番号】P 2020004066
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅野 和行
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】松永 啓伍
(72)【発明者】
【氏名】繁松 孝
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-58275(JP,A)
【文献】特開2019-75970(JP,A)
【文献】特開2010-246298(JP,A)
【文献】特開2006-261100(JP,A)
【文献】特開2003-134759(JP,A)
【文献】特開2016-35946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0338002(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機を駆動する駆動回路と、
前記回転電機の第一端子と前記駆動回路の第二端子との間を電気的に接続し、長手方向に延びたスリットが設けられた
バスバーと、
を備えた回転電機システムに用いられる、前記バスバーであって、
前記第一端子の近傍から当該第一端子と前記第二端子との間の中間位置まで延びた前記スリットが設けられた区間と、
前記中間位置と前記第二端子との間の前記スリットが設けられない区間と、
を有した、バスバー。
【請求項2】
前記スリットとして、複数の平行なスリットが設けられた、請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記スリットは、前記バスバーの表面に対して垂直である、請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項4】
前記スリットは、前記バスバーの表面に対して傾斜している、請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項5】
前記バスバーは、厚さ方向に曲がっている、請求項1~
4のうちいずれか一つに記載のバスバー。
【請求項6】
前記スリットの両側面の間に介在する絶縁性の第一介在物を備えた、請求項1~
5のうちいずれか一つに記載のバスバー。
【請求項7】
前記第一介在物と一体に設けられ前記バスバーを覆う絶縁性の被覆を備えた、請求項
6に記載のバスバー。
【請求項8】
厚さ方向に重ねられた複数の板状部材を備え、
前記スリットは、前記複数の板状部材のうち少なくとも一つに設けられ、
前記複数の板状部材のうち互いに隣接した二つの板状部材の間に介在する絶縁性の第二介在物を備えた、請求項1~
7のうちいずれか一つに記載のバスバー。
【請求項9】
前記スリットの両側面の間に介在し前記第二介在物と一体の絶縁性の第一介在物を備えた、請求項
8に記載のバスバー。
【請求項10】
前記スリットの幅は、1000μm以下である、請求項1~
9のうちいずれか一つに記載のバスバー。
【請求項11】
前記バスバーにおいて前記スリットが貫通する部位の厚さは、5mm以下である、請求項1~
10のうちいずれか一つに記載のバスバー。
【請求項12】
前記回転電機と、
前記駆動回路と、
請求項1~11のうちいずれか一つに記載のバスバーと、
を備えた、回転電機システム。
【請求項13】
請求項1~11のうちいずれか一つに記載のバスバーの製造方法であって、
前記バスバーを準備する第一工程と、
前記第一工程で準備された前記バスバーにレーザ光を照射することにより
前記長手方向に延びたスリットを設ける第二工程と、
を備えた、バスバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー、回転電機システム、およびバスバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渦電流による電力損失をより小さくすることができるバスバーとして、螺旋状に巻かれた帯状導体で構成されたバスバー(特許文献1)や、互いに絶縁された複数の平角線を纏めたバスバー(特許文献2)などが、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-143905号公報
【文献】特開2010-246298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のような構成にあっては、バスバーの製造の手間やコストが増大しやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、渦電流による電力損失をより小さくすることができるとともに、製造の手間やコストを抑制することが可能なバスバー、回転電機システム、およびバスバーの製造方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバスバーは、例えば、長手方向に延びたスリットを備える。
【0007】
また、前記バスバーでは、例えば、前記スリットとして、複数の平行なスリットが設けられる。
【0008】
また、前記バスバーでは、例えば、前記スリットは、前記バスバーの表面に対して垂直である。
【0009】
また、前記バスバーでは、例えば、前記スリットは、前記バスバーの表面に対して傾斜している。
【0010】
また、前記バスバーでは、例えば、前記スリットは、長手方向の他方の端部よりも一方の端部の近くに設けられている。
【0011】
また、前記バスバーは、例えば、厚さ方向に曲がっている。
【0012】
また、前記バスバーは、例えば、前記スリットの両側面の間に介在する絶縁性の第一介在物を備える。
【0013】
また、前記バスバーは、例えば、前記第一介在物と一体に設けられ前記バスバーを覆う絶縁性の被覆を備える。
【0014】
また、前記バスバーは、例えば、厚さ方向に重ねられた複数の板状部材を備え、前記スリットは、前記複数の板状部材のうち少なくとも一つに設けられ、前記複数の板状部材のうち互いに隣接した二つの板状部材の間に介在する絶縁性の第二介在物を備える。
【0015】
また、前記バスバーは、例えば、前記スリットの両側面の間に介在し前記第二介在物と一体の絶縁性の第一介在物を備える。
【0016】
また、前記バスバーでは、例えば、前記スリットの幅は、1000μm以下である。
【0017】
また、前記バスバーでは、例えば、前記バスバーにおいて前記スリットが貫通する部位の厚さは、5mm以下である。
【0018】
本発明の回転電機システムは、例えば、回転電機と、前記回転電機を駆動する駆動回路と、前記回転電機の第一端子と前記駆動回路の第二端子との間を電気的に接続し、長手方向に延びたスリットが設けられたバスバーと、を備える。
【0019】
また、本発明の回転電機システムでは、例えば、前記スリットは、前記第二端子よりも前記第一端子の近くに位置される。
【0020】
本発明のバスバーの製造方法は、例えば、バスバーを準備する第一工程と、前記第一工程で準備された前記バスバーにレーザ光を照射することにより長手方向に延びたスリットを設ける第二工程と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、例えば、渦電流による電力損失を抑制することができるとともに、製造の手間やコストを抑制することが可能なバスバー、回転電機システム、およびバスバーの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1実施形態のバスバーの例示的かつ模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のバスバーの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態の第1変形例のバスバーの、
図3と同等位置での断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の第2変形例のバスバーの例示的かつ模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の第3変形例のバスバーの、
図2と同等位置での断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の第4変形例のバスバーの例示的かつ模式的な平面図である。
【
図10】
図10は、実施形態の第5変形例のバスバーの、
図3と同等位置での断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態の第6変形例のバスバーの、
図3と同等位置での断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の回転電機システムの例示的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0024】
以下に示される実施形態および変形例は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態および変形例の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0025】
本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0026】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。なお、X方向は、長手方向、延び方向、あるいはスリットの延び方向とも称され、Y方向は、短手方向、幅方向、あるいはスリットの幅方向とも称され、Z方向は、厚さ方向あるいはスリットの深さ方向とも称されうる。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のバスバー10Aの平面図、
図2は、
図1のII-II断面図、また、
図3は、
図1のIII-III断面図である。
【0028】
バスバー10Aは、電流を流す導体部材である。長手方向の端部10a,10bには、それぞれ、他の電気部品の端子と機械的かつ電気的に接続するための貫通穴10cが設けられている。
【0029】
バスバー10Aは、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金のような、電気抵抗率の小さい金属材料によって作られるのが好適である。電気抵抗率が小さいという観点からは、バスバー10Aは、銅によって作られるのが好適である。
【0030】
図1~3に示されるように、バスバー10Aは、扁平な帯状かつ板状の形状を有している。バスバー10Aは、Y方向に略一定の幅およびZ方向に略一定の厚さ(高さ)で、X方向に延びている。
【0031】
バスバー10Aは、Z方向およびZ方向の反対方向の端部において、二つの面11を有している。面11は、Z方向と交差して広がっている。本実施形態では、面11は、Z方向と直交し、X方向およびY方向に延びている。面11は、表面の一例である。
【0032】
図1,2に示されるように、バスバー10Aには、X方向に延びる複数のスリット12が設けられている。スリット12は、Y方向に略一定の幅で、X方向に延びている。
【0033】
本実施形態では、複数のスリット12が、Y方向に等間隔で設けられている。なお、本実施形態では、5本のスリット12が等間隔で設けられているが、スリット12は、5本未満であってもよいし、6本以上であってもよい。また、複数のスリット12は、等間隔で無くてもよい。
【0034】
図2,3に示されるように、スリット12は、バスバー10Aの二つの面11の間の貫通している。
【0035】
また、
図3に示されるように、スリット12は、面11に対して垂直に設けられている。
【0036】
バスバー10Aに生じる渦電流による電力損失は、バスバー10Aの幅や厚さが大きいほど大きくなることが知られている。厚さに関しては、当該厚さの2乗に比例して渦電流による電力損失が大きくなる。この点、本実施形態では、スリット12を設けることによりバスバー10Aを幅方向に分割し、各分割部分の幅をより小さくすることができる。これにより、各分割部分に生じる渦電流のループのサイズをより小さくすることができ、ひいては渦電流による電力損失をより小さくすることができる。
【0037】
スリット12は、例えば、ファイバレーザのようなレーザ装置(不図示)からレーザ光を照射し金属材料を溶断することにより、形成することができる。
図4は、バスバー10Aの製造方法を示すフローチャートである。
図4に示されるように、本実施形態では、プレスや切削加工等により、プレス加工や切削加工等によりバスバー10Aを成形するなどして準備し(S1、第一工程)、その後、準備したバスバー10Aにレーザ光を照射することにより、複数のスリット12を形成する(S2、第二工程)。なお、第一工程S1(準備工程)は、他の場所で成形されたバスバー10Aを搬入する工程であってもよい。また、バスバー10Aは、レーザ切断により形成してもよい。
【0038】
レーザ光の照射によって形成されたスリット12の幅wsは、機械加工や放電加工によって形成されたスリットの幅に比べて、より細くすることができる。一例として、シングルモードファイバレーザを用いて加工した場合、スリット12の幅wsは、300[μm]以下にできる。なお、スリット12の成形にはマルチモードファイバレーザを用いてもよい。一例として、マルチモードファイバレーザを用いて加工した場合、スリット12の幅wsは、1000[μm]以下にできる。
【0039】
電気抵抗を小さくするため、スリット12が設けられた場合にあっても、バスバー10Aの断面積は、電流値に応じて確保する必要がある。このため、スリット12が設けられたバスバー10Aにあっては、スリット12の幅wsが大きいほど、バスバー10Aの幅Wが大きくなってしまう。この点、本実施形態では、レーザ光の照射によってスリット12を形成することにより、機械加工や放電加工によって形成した場合に比べてスリット12をより細く形成することができるため、バスバー10Aの幅Wをより小さくすることができる。
【0040】
言い換えると、バスバー10Aの幅Wに制限がある場合にあっては、スリット12が細いほど、所要の電流値を確保しながら、スリット12の本数を増やすことができる。スリット12の本数が増えるほど、スリット12によるバスバー10Aの分割部分の幅が小さく(狭く)なり、渦電流のループのサイズをより小さくすることができ、ひいては渦電流による電力損失をより小さくすることができる。すなわち、本実施形態では、レーザ光の照射によってスリット12を形成することにより、機械加工や放電加工によってスリット12を形成した場合に比べて、渦電流による電力損失をより小さくしやすい。
【0041】
また、レーザ光の照射によってスリット12を形成することにより、機械加工や放電加工によってスリット12を形成した場合に比べて、材料のロスをより少なくしやすいという利点も得られる。
【0042】
発明者らの検討によれば、上述したような観点から、スリット12の幅wsは、500[μm]以下であるのが好適であり、300[μm]以下であるのがさらに好適であることが判明した。また、現実的な強度のレーザ光の照射によりバスバー10AをZ方向に貫通するスリット12を形成する、という観点から、バスバー10Aの厚さは、5[mm]以下であるのが好適であり、3[mm]以下であるのがさらに好適であることが判明した。また、レーザ加工のタクトタイムの観点から、バスバー10Aの厚さは、2[mm]以下であるのが好適であることが判明した。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態では、バスバー10Aには、長手方向に延びたスリット12が設けられている。
【0044】
このような構成によれば、例えば、スリット12により、バスバー10Aに生じる渦電流のループのサイズをより小さくすることができるため、渦電流による電力損失をより小さくすることができる。また、レーザ光を照射してスリット12を形成することにより、渦電流による電力損失のより少ないバスバー10Aを、より容易に製造することができる。また、スリット12が設けられた分、バスバー10Aの表面積が増えるため、放熱性が向上するという利点も得られる。
【0045】
また、本実施形態では、バスバー10Aには、複数の平行なスリット12が設けられている。
【0046】
このような構成によれば、例えば、複数の平行なスリット12により、スリット12によるバスバー10Aの分割部分の幅をより小さくすることができる。これにより、渦電流のループのサイズをより小さくすることができるため、渦電流による電力損失をより小さくすることができる。
【0047】
また、本実施形態のバスバー10Aの製造方法は、バスバー10Aを準備する工程S1(第一工程)と、準備されたバスバー10Aにレーザ光を照射することによりスリット12を形成する工程S2(第二工程)と、を備えている。
【0048】
このような製造方法によれば、例えば、バスバー10Aに、他の製造方法でスリット12を形成した場合よりも細いスリット12を形成することができる。これにより、他の製造方法でより太い幅のスリット12を形成した場合に比べて、バスバー10Aの幅をより小さくすることができるとともに、バスバー10Aの幅に制限がある場合にスリット12の数をより多くして、渦電流のループのサイズをより小さくすることができるため、渦電流による電力損失をより小さくすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、スリット12は、バスバー10Aの面11(表面)に対して垂直である。
【0050】
このような構成によれば、例えば、バスバー10Aにレーザ光の照射によってスリット12を形成する際、レーザ光を照射する装置と、レーザ光の照射対象としてのバスバー10Aとの相対的な位置や方向をより容易に設定しやすいという利点が得られる。
【0051】
また、本実施形態では、スリット12の幅は、1000[μm]以下である。
【0052】
このような構成によれば、例えば、バスバー10Aの幅が大きくなるのを抑制できる。また、例えば、バスバー10Aの幅の制限がある場合にあっては、スリット12によるバスバー10Aの分割数を増やすことができ、これによりバスバー10Aの分割部分の幅をより小さくすることができるため、渦電流による電力損失をより小さくすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、バスバー10Aの厚さ、すなわちバスバー10Aにおいてスリット12が貫通する部位の厚さは、5mm以下である。
【0054】
このような構成によれば、例えば、現実的な強度のレーザ光の照射によりバスバー10AをZ方向に貫通するスリット12を、より容易に、より迅速に、あるいはより確実に、形成することができる。
【0055】
[第1変形例]
図5は、第1変形例のバスバー10Bの
図3と同等位置での断面図である。
図5に示されるように、バスバー10Bに設けられたスリット12は、バスバー10Bの面11に対して傾斜している。具体的に、スリット12は、Z方向、すなわちバスバー10Bの厚さ方向および面11の垂直方向に対して傾斜するとともに、Y方向、すなわちバスバー10Bおよび面11の幅方向に対して傾斜している。すなわち、レーザ光Lの照射方向が、Z方向に対して傾斜するとともに、Y方向に対して傾斜している。
図5の断面において、スリット12の延び方向SとZ方向との間の角度差αzは、0°より大きくかつ90°より小さく、また、スリット12の延び方向SとY方向との間の鋭角の角度αyは、0°より大きくかつ90°より小さい。傾斜しているとは、平行でなくかつ直交でないことを意味する。また、スリット12の形成された範囲において、バスバー10Bおよびスリット12は、
図5の断面形状を維持しながらX方向に延びている。
【0056】
このような構成によれば、例えば、バスバー10Bに照射されたレーザ光Lが面11で反射してレーザ光Lを照射した装置に戻り出力が弱まるのを抑制することができるので、レーザ装置において特に対策を施すことなく、当該レーザ装置からのレーザ光Lの出力の低下を抑制することができる。
【0057】
[第2変形例]
図6は、第2変形例のバスバー10Cの平面図である。
図6に示されるように、本変形例のバスバー10Cでは、スリット12は、バスバー10Cの端部10bよりも端部10aの近くに設けられている。端部10aは、一方の端部の一例であり、端部10bは、他方の端部の一例である。
【0058】
例えば、バスバー10Cが、インバータ(不図示)によって駆動される回転電機(不図示)と、当該インバータとの間の導体として用いられ、端部10aが回転電機の端子に接続され、端部10bがインバータの端子に接続される場合、回転電機で生じた磁界によってバスバー10Cに生じる渦電流は、回転電機に近い場所ほど大きくなる。このような場合にあっては、スリット12が、バスバー10Cにおいて、長手方向の全体ではなく、インバータの端子と接続される端部10bよりも回転電機の端子と接続される端部10aに近い場所に設けられることにより、十分な効果が得られる場合がある。
【0059】
このような構成によれば、スリット12が、端部10bよりも端部10aの近くに設けられることにより、例えば、スリット12を長手方向の全体に亘って設けた場合に比べて、スリット12を設けるのに要する手間やコストを抑制することができるという利点が得られる。
【0060】
[第3変形例]
図7は、第3変形例のバスバー10Dの、
図2と同等位置での断面図である。
図7に示されるように、本変形例のバスバー10Dは、厚さ方向に曲がっている。このような構成にあっても、スリット12は、屈曲部を超えて延びている。
【0061】
この場合、スリット12が設けられた後にバスバー10Dが曲げられてもよいし、曲げられたバスバー10Dに対してレーザ装置によってレーザ光を照射することにより、スリット12が設けられてもよい。レーザ装置を3次元的に移動させることにより、このような加工が可能となる。
【0062】
このような構成によれば、例えば、厚さ方向に曲げられたバスバー10Dにあっても、スリット12が設けられることによる利点が得られる。
【0063】
[第4変形例]
図8は、第4変形例のバスバー10Eの平面図であり、
図9は、
図8のIX-IX断面図である。
図8,9に示されるように、本変形例のバスバー10Eは、スリット12の隙間の両側面12a間に介在する絶縁層13aを備えている。絶縁層13aは、スリット12内の全体に亘って介在している。また、バスバー10Eのスリット12が設けられた部分の周囲は、絶縁層13bで覆われている。絶縁層13aと絶縁層13bとは、同じ工程において、境目のない連続した一部品として、一体に構成される。絶縁層13aは、第一介在物の一例であり、絶縁層13bは、被覆の一例である。なお、絶縁層13aは、スリット12の全体に亘って設けられる必要はなく、スリット12内で部分的に両側面12a間に介在してもよい。
【0064】
絶縁層13a,13bは、例えば、ポリイミドや、エポキシ、アクリルのような絶縁性の合成樹脂材料である。絶縁層13a,13bは、例えば、電着塗装や、粉体塗装等によって、設けられる。
【0065】
以上、説明したように、本変形例では、バスバー10Eは、スリット12の両側面12a間に介在する絶縁層13a(第一介在物)を備えている。
【0066】
このような構成によれば、例えば、バスバー10Eの撓み等によってスリット12の隙間が詰まり渦電流抑制の効果が軽減するのをより確実に抑制することができる。
【0067】
また、本変形例では、バスバー10Eは、絶縁層13aと一体に設けられバスバー10Eを覆う絶縁層13b(被覆)を備えている。
【0068】
このような構成によれば、例えば、バスバー10Eの周辺部品等に対する絶縁性を高めることができる。また、絶縁層13aと絶縁層13bとが一体に設けられることにより、絶縁層13aと絶縁層13bとが別々に設けられた場合に比べて、製造の手間やコストを抑制できる。
【0069】
[第5変形例]
図10は、第5変形例のバスバー10Fの、
図3と同等位置での断面図である。
図10に示されるように、本変形例では、複数の第4変形例のバスバー10Eが厚さ方向に重ねられている。二つのバスバー10Eは、端部10aおよび端部10bのそれぞれにおいて、互いに電気的に接続されている。すなわち、複数のバスバー10Eは、互いに並列である。なお、バスバー10Fは、互いに並列な3枚以上のバスバー10Eを有してもよい。バスバー10Eは、板状部材の一例である。
【0070】
図10に示されるように、二つのバスバー10Eの間には、各バスバー10Eの被覆としての絶縁層13bが介在している。絶縁層13bは、スリット12が設けられた部位において、二つのバスバー10Eを互いに絶縁している。なお、スリット12は、複数のバスバー10Eのうちいずれか一つに設けられてもよい。絶縁層13bは、第二介在物の一例である。
【0071】
以上、説明したように、本変形例では、バスバー10Fは、厚さ方向に重ねられた複数のバスバー10Eを備え、互いに隣接する二つのバスバー10E間には、絶縁層13b(第二介在物)が介在し、複数のバスバー10Eのうち少なくとも一つに、スリット12が設けられている。
【0072】
このような構成によれば、例えば、本変形例と同じ厚さで、分割されずかつ絶縁層が介在しない一体型のバスバーに比べて、渦電流のループのサイズをより小さくすることができるため、渦電流による電力損失をより小さくすることができる。
【0073】
[第6変形例]
図11は、第6変形例のバスバー10Gの、
図3と同等位置での断面図である。
図11に示されるように、本変形例では、複数の第1変形例のバスバー10Aが厚さ方向に隙間をあけて重ねられている。バスバー10Aは、板状部材の一例である。
【0074】
そして、厚さ方向の隙間には、絶縁層13cが介在し、スリット12内には、絶縁層13aが介在している。絶縁層13aは、少なくともスリット12が設けられた部位において、二つのバスバー10A間に介在している。絶縁層13aと絶縁層13cとは、同じ工程において、境目のない連続した一部品として、一体に構成される。絶縁層13aおよび絶縁層13cは、例えば、ポリイミドや、エポキシ、アクリルのような絶縁性の合成樹脂材料である。絶縁層13a,13cは、例えば、電着塗装や、粉体塗装等によって、設けられる。絶縁層13aは、第一介在物の一例であり、絶縁層13cは、第二介在物の一例である。
【0075】
本変形例では、絶縁層13a(第一介在物)と絶縁層13c(第二介在物)とが、一体に設けられている。
【0076】
このような構成によれば、例えば、絶縁層13aと絶縁層13cとが別々に設けられた場合に比べて、製造の手間やコストを抑制できる。
【0077】
[第2実施形態]
図12は、本実施形態の回転電機システム100の模式図である。回転電機システム100は、電源101と、インバータ102と、回転電機103と、バスバー10A(またはバスバー10B~10G)と、を備えている。なお、回転電機システムは、回転電機駆動システムとも称されうる。
【0078】
電源101は、直流電力を出力する電池であり、例えば、二次電池である。電源101は、コンデンサを含んでもよい。
【0079】
回転電機103は、例えば、3相のモータジェネレータや、3相モータであり、インバータ102は、例えば、複数のMOS-FETやIGBTのようなスイッチング素子104を有した、3相のインバータである。インバータ102は、駆動回路の一例である。
【0080】
インバータ102の各相の端子102aと、回転電機103の各相の端子103aとを接続する導体として、第1実施形態のバスバー10Aが適用されている。端子102aは、第二端子の一例であり、端子103aは、第一端子の一例である。
【0081】
ただし、第1実施形態のバスバー10Aに替えて、他の実施例のバスバー10B~10Gを適用してもよい。
【0082】
第2変形例のバスバー10Cのように、スリット12がバスバー10Cの端部10bよりも端部10aの近くに設けられている構成にあっては、端部10aが回転電機103の端子103aと接続され、端部10bがインバータ102の端子102aと接続される。このような構成により、部分的なスリット12によって、渦電流による電力損失をより小さくできる場合がある。
【0083】
本実施形態の回転電機システム100によれば、例えば、バスバー10A~10Gによって得られる効果を得ることができ、ひいては回転電機システム100の製造の手間およびコストを抑制できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
10A~10G…バスバー
10a,10b…端部
10c…貫通穴
11…面
12…スリット
12a…側面
13a…絶縁層(第一介在物)
13b…絶縁層(被覆)
13c…絶縁層(第二介在物)
100…回転電機システム
101…電源
102…インバータ(駆動回路)
102a…端子(第二端子)
103…回転電機
103a…端子(第一端子)
104…スイッチング素子
W…(バスバーの)幅
ws…(スリットの)幅
X…方向(延び方向)
Y…方向(幅方向)
Z…方向(厚さ方向)