(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20231222BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/00 301
H01B7/18 H
(21)【出願番号】P 2020042270
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 崇範
(72)【発明者】
【氏名】松村 有史
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】西口 雅己
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0276174(US,A1)
【文献】特開2020-027776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2対の信号線と、前記信号線と外径が異なる2本の電源線とを備える複合ケーブルにおいて、
前記信号線及び前記電源線がいずれも絶縁被覆層で被覆され、
前記複合ケーブルの中心に、導電性を有する連続体が前記複合ケーブルの長手方向に延設されており、
前記2対の信号線と前記2本の電源線と前記連続体とがシース層で一括してシースされた構造を有しており、前記シース層が前記2対の信号線と前記2本の電源線の外周の形状に沿って形成され、
前記信号線の各対の間に前記連続体が介在し、前記2本の電源線の間に前記連続体が介在するように前記2対の信号線と前記2本の電源線と前記連続体が配置されていることを特徴とする複合ケーブル。
【請求項2】
前記連続体を中心として、前記2対の信号線と前記2本の電源線とが全体的に撚り合わされた構造を有することを特徴とする請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記連続体は、中心導体と、前記中心導体を被覆する絶縁被覆層とで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記中心導体は、複数の素線が撚り合わされて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記信号線、前記電源線及び前記連続体の各絶縁被覆層は、いずれも耐熱樹脂で被覆されており、前記耐熱樹脂が架橋された樹脂を含むことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記2対の信号線は、対ごとに前記信号線同士が撚り合わされていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
前記信号線及び前記電源線は、いずれも、中心導体が、複数の素線が撚り合わされて構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合ケーブル。
【請求項8】
撚り合わされた前記信号線及び前記電源線の撚り込み率が、それぞれ0.5%以上になるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の複合ケーブル。
【請求項9】
前記シース層が架橋性の耐熱樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ケーブルに係り、特に2対の信号線と2本の電源線とを備える複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、近年、車両では、高度な電子化により車輪側に複数のセンサが取り付けられており、車両内に、バッテリからそれらのセンサ等に電力を供給する電源線や、検出した信号をセンサからECU等に送信する信号線が配置される場合がある。
そして、それらの電源線や信号線を車両内に配置する際、従来は、それらの線をテープで巻いたり結束バンドで束ねる等してまとめられて配置されることが多かった。
【0003】
近年、それらの線を1本のケーブルにまとめた複合ケーブルの開発が進められている(例えば特許文献1参照)。そして、そのような複合ケーブルの中には、2対の信号線と2本の電源線とを備える6芯の複合ケーブルも含まれている(例えば特許文献2、3参照)。
そして、このように複数の線をまとめて1本の複合ケーブルとすることで、線を束ねるなどする場合に比べて、線やケーブルが車両内で占めるスペースをより小さくすること、すなわち省スペース化を図ることが可能となる等のメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6219263号公報
【文献】特許第6424950号公報
【文献】特開2018-22633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2対の信号線と2本の電源線とを備える6芯の複合ケーブルでは、通常、信号線よりも電源線の方が太いため、上記の特許文献2、3にも記載されているように、複合ケーブル100(
図5参照)の内部で、対ごとに撚り合わされた信号線101が2本の電源線102の両側に配置される場合が少なくない。
なお、
図5以下の各図でも同様であるが、信号線101の対を含む破線の円は、信号線101が対ごとに撚り合わされていることを表している。
【0006】
しかし、この場合、複合ケーブル100の端末を加工する際に、シース層103の厚さが、信号線101の部分(図中のT1参照)と電源線102の部分(図中のT2参照)とで大きく異なるため、電源線102の部分のシース層103を剥ぎ取りにくくなったり、シース層103を剥ぎ取ったときに電源線102の部分のシース層103が剥ぎ取れずに残ったりするなど、複合ケーブル100の端末加工性が悪くなる。
そのため、例えば
図6に示すように、2本の電源線102同士を離すようにして複合ケーブル100を製造すれば、シース層103の厚さが、信号線101の部分(図中のT1参照)と電源線102の部分(図中のT2参照)とで同程度の厚さになり、複合ケーブル100の端末加工性が良くなる。
【0007】
しかし、複合ケーブル100の製造時に電源線102に掛かる張力は、信号線101にかかる張力よりも格段に強いため、容易に
図5に示した状態に戻ってしまい、2本の電源線102同士が離れた状態を維持することは必ずしも容易ではない。また、この状態では、逆に、信号線101の対同士が接近したり、
図7に示すように接触したりしてしまう可能性もある。
また、
図6や
図7に示した状態では、信号線101の対同士の間に電源線102が存在しない状態になる。
【0008】
すなわち、
図5に示した状態では信号線101の対同士の間に電源線102が存在していたため、信号線101の対の一方でノイズが発生しても、電源線102でシールドされているため、それを他方の信号線101の対が拾うことはなかった。
しかし、
図6や
図7に示したように2本の電源線102同士が離れた状態では、信号線101の対同士の間に電源線102がないため、一方の信号線101の対でノイズが発生した場合、それを他方の信号線101の対が拾ってしまい、信号線101で送信される信号にノイズが乗る可能性がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、2対の信号線と2本の電源線とを備える6芯の複合ケーブルにおいて、端末加工性に優れ、しかも、信号線の対同士の間を的確にシールドすることが可能な複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
2対の信号線と、前記信号線と外径が異なる2本の電源線とを備える複合ケーブルにおいて、
前記信号線及び前記電源線がいずれも絶縁被覆層で被覆され、
前記2対の信号線と前記2本の電源線とがシース層で一括してシースされた構造を有しており、
前記複合ケーブルの中心に、導電性を有する連続体が前記複合ケーブルの長手方向に延設されており、
前記信号線の各対の間に前記連続体が介在し、前記2本の電源線の間に前記連続体が介在するように前記2対の信号線と前記2本の電源線と前記連続体が配置されていることを特徴とする。
そして、上記構成は、前記2対の信号線と前記2本の電源線と前記連続体とがシース層で一括してシースされた構造を有しており、前記シース層が前記2対の信号線と前記2本の電源線の外周の形状に沿って形成されるものとしてもよい。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の複合ケーブルにおいて、前記連続体を中心として、前記2対の信号線と前記2本の電源線とが全体的に撚り合わされた構造を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の複合ケーブルにおいて、前記連続体は、中心導体と、前記中心導体を被覆する絶縁被覆層とで構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の複合ケーブルにおいて、前記中心導体は、複数の素線が撚り合わされて構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の複合ケーブルにおいて、前記信号線、前記電源線及び前記連続体の各絶縁被覆層は、いずれも耐熱樹脂で被覆されており、前記耐熱樹脂が架橋された樹脂を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の複合ケーブルにおいて、前記2対の信号線は、対ごとに前記信号線同士が撚り合わされていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合ケーブルにおいて、前記信号線及び前記電源線は、いずれも、中心導体が、複数の素線が撚り合わされて構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の複合ケーブルにおいて、撚り合わされた前記信号線及び前記電源線の撚り込み率が、それぞれ0.5%以上になるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の複合ケーブルにおいて、前記シース層が架橋性の耐熱樹脂で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2対の信号線と2本の電源線とを備える6芯の複合ケーブルにおいて、端末加工性に優れ、しかも、信号線の対同士の間を的確にシールドすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る複合ケーブルの構成を表す断面図である。
【
図2】電源線や信号線の中心導体が複数の素線を撚り合わされて構成されていることを表す図である。
【
図3】複合ケーブル内で連続体を中心として2対の信号線と2本の電源線とが全体的に撚り合わされた状態を表す図である。
【
図4】本実施形態に係る複合ケーブルでは信号線の部分と電源線の部分とでシースの厚さが同程度になることを表す断面図である。
【
図5】従来の複合ケーブルの構成を表す断面図である。
【
図6】
図5の複合ケーブルにおいて2本の電源線同士を離した状態を表す断面図である。
【
図7】
図6の複合ケーブルにおいて2対の信号線同士が接触した状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る複合ケーブルについて説明する。
ただし、以下に述べる各実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態や図示例に限定するものではない。
【0022】
図1は、本実施形態に係る複合ケーブルの構成を表す断面図である。
本実施形態では、複合ケーブル1は、2対の信号線2と、2本の電源線3とを備える6芯の複合ケーブルであり、各信号線2と各電源線3はそれぞれ中心導体21、31が絶縁被覆層22、32で被覆されている。
そして、2対の信号線2と2本の電源線3とがシース層4で隙間なく直接被覆されており、2対の信号線2と2本の電源線3とがシース層4で一括してシースされた構造を有している。
【0023】
なお、
図1における信号線2の対を含む破線の円は、信号線2が対ごとに撚り合わされていることを表している。
そして、このように、2対の信号線2を、対ごとに信号線2同士を撚り合わせて構成することで、撚り合わせない場合に比べて、信号線2が対ごとに撓みやすくなるとともに、複合ケーブル1が長手方向に引っ張られた際に信号線2が伸びることができるため、複合ケーブル1の可撓性や耐屈曲性(繰り返しの曲げに対する耐性)を向上させることが可能となる。
【0024】
信号線2は、例えば銅合金やアルミニウム合金等の金属線を中心導体21とし、それをポリエステル等の樹脂等からなる絶縁被覆層22で被覆したものを用いることができる。
なお、以下では、信号線2の中心導体21が金属線であることを前提に説明するが、信号線2の中心導体21に例えば光ファイバ心線等が含まれていてもよい。
【0025】
電源線3は、例えば軟銅、銅合金、アルミニウム等の導線からなる中心導体31をポリエステル等の樹脂等からなる絶縁被覆層32で被覆したものを用いることができる。
また、電源線3は、その外径が信号線2の外径よりも太いものが用いられている。このように、本実施形態では、電源線3は信号線2とは外径が異なっている。
【0026】
そして、本実施形態では、
図2に示すように、信号線2や電源線3は、いずれも、中心導体21、31が、複数の素線21a、31aが撚り合わされて構成されている。なお、
図2は、信号線2の中心導体21(素線21a)と電源線3の中心導体31(素線31a)とが同じ太さであることを表すものではない。
すなわち、信号線2は、中心導体21が、それを構成する複数の素線21a、すなわち複数の金属線が互いに撚り合わされて構成されている。複数の素線21aは、全体を一括に撚った撚線であってもよく、複数の素線を撚ったものをさらに撚り合わせた撚撚線であってもよい。
【0027】
また、電源線3も、中心導体31が、それを構成する複数の素線31a、すなわち軟銅、銅合金、アルミニウム等の導線が互いに撚り合わされて構成されている。
そして、このように構成することで、撚り合わせない場合に比べて、信号線2自体や電源線3自体が撓みやすくなるとともに、複合ケーブル1が長手方向に引っ張られた際に信号線2自体や電源線3自体が伸びることができるため、複合ケーブル1の可撓性や耐屈曲性を向上させることが可能となる。
【0028】
なお、信号線2や電源線3の中心導体21、31を構成する素線21a、31aの撚りピッチ(撚り線がある配置から次に同じ配置になるまでの長さ)が小さくなり過ぎると、撚りピッチが大きい場合に比べて信号線2や電源線3の長さが長くなり、信号線2や電源線3で電気抵抗が大きくなったり信号が低下したりする場合がある。
そのため、撚り合わされた信号線2や電源線3の撚り込み率は、それぞれ適切な値に設定されることが望ましい。
【0029】
なお、撚り込み率A(%)は、撚りピッチをP、層心径をDとするとき、下記式(1)で表される。
【数1】
【0030】
本発明者らの研究によると、信号線2や電源線3の撚り込み率は、それぞれ0.5%以上になるように構成されていることが好ましいことが分かっている。
そして、このように構成すれば、信号線2や電源線3で必要以上に電気抵抗が大きくなったり必要以上に信号が低下したりすることなく、複合ケーブル1の可撓性や耐屈曲性を向上させることが可能となる。
【0031】
一方、本実施形態では、信号線2や電源線3の各絶縁被覆層22、32は、耐熱樹脂で被覆されており、耐熱樹脂が例えば架橋ポリエチレン(Cross-linked polyethylene)等の架橋された樹脂を含むように構成されている。
このように、信号線2や電源線3の各絶縁被覆層22、32を耐熱樹脂で被覆することで、信号線2や電源線3の耐熱性を向上させることが可能となる。
【0032】
そして、耐熱樹脂が架橋された樹脂を含むように構成することで、信号線2や電源線3の耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
そのため、例えば、車両に組み付けられた複合ケーブル1がエンジン等の熱で高温に晒される場合があるが、そのような場合でも熱により信号線2や電源線3の絶縁被覆層22、32が溶けるなどして損傷することを防止することが可能となる。
【0033】
本実施形態では、シース層4も架橋性の耐熱樹脂で構成されている。
架橋性の耐熱樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等の種々の樹脂を用いることが可能であり、それを電子線架橋法や化学架橋法、シラン架橋法等の架橋法で架橋するなどしてシース層4を形成することができる。
【0034】
そして、このように、シース層4を架橋性の耐熱樹脂で構成することで、上記の信号線2や電源線3の絶縁被覆層22、32を被覆する耐熱樹脂の場合と同様に、複合ケーブル1が高温に晒される等しても、熱によりシース層4が溶けるなどして複合ケーブル1が損傷することを防止することが可能となる。
なお、シース層4を樹脂層等で外側から更に被覆するように構成することも可能である。
【0035】
また、複合ケーブル1の可撓性や耐屈曲性をより向上させるために、例えば、シース層4を、エチレン-αオレフィン系エラストマーが含まれるように構成することも可能である。
エチレン-αオレフィン系エラストマーはゴム性を有するとともに、高温や低温に晒されても硬度が上昇しないため、温度に関わりなく複合ケーブル1の可撓性や耐屈曲性が向上する。また、シース層4を容易に成形加工することが可能となる等のメリットがある。
また、同様の理由で、シース層4にスチレン系エラストマーが含まれるように構成することも可能である。
【0036】
次に、本発明に特徴的な導電性を有する連続体5について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、複合ケーブル1の中心に、導電性を有する連続体5(以下、導電体5という。)が複合ケーブル1の長手方向に延設されている。
そして、信号線2の各対の間に導電体5が介在し、2本の電源線3の間に導電体5が介在するように、2対の信号線2と2本の電源線3と導電体5が配置されている。
【0037】
導電体5は、信号線2のように信号を送信したり電源線3のように電力を供給したりするものではなく、いわゆるダミーの導電体である。
導電体5として、例えば銅線を用いることが可能であるが、導電性を有する連続体であればよく、必ずしも銅線である必要はない。
【0038】
また、導電体5は、中心導体51が、1本の連続体で構成されていてもよく、あるいは信号線2や電源線3と同様に複数の素線が撚り合わされて構成されていてもよい。導電体5が撚り合わせ構造を有していれば、信号線2や電源線3の場合と同様に、複合ケーブル1の可撓性や耐屈曲性を向上させることが可能となる。
また、導電体5を、例えば銅編組線等の導電性を有する編組線等で構成することも可能である。
【0039】
また、例えば
図3に示すように、複合ケーブル1内で、導電体5を中心として、2対の信号線2と2本の電源線3とが全体的に撚り合わされた構造を有するように構成することが可能である。
このように、2対の信号線2と2本の電源線3が全体的に撚り合わされることで、複合ケーブル1全体の可撓性や耐屈曲性をより向上させることが可能となる。
【0040】
一方、本実施形態では、導電体5は、上記のような中心導体51と、中心導体51を被覆する絶縁被覆層52とで構成されている。
このように、導電体5の中心導体51が絶縁被覆層52で被覆されていれば、例えば信号線2や電源線3を流れる信号や電力が導電体5中を流れてしまうことが防止される。そのため、複合ケーブル1内に導電体5を設けても、信号線2における信号の低下や電源線3で供給される電力の低下が生じることがない。
【0041】
また、2対の信号線2や2本の電源線3に囲まれた内部空間にシース層4が充填されない場合があるが、導電体5が設けられていないと、この内部空間が空洞になってしまい、この空洞を伝って外部から複合ケーブル1内に水が流入する可能性があるが、本実施形態では、この内部空間(2対の信号線2や2本の電源線3に囲まれた内部空間)に導電体5が配置されているため、導電体5により水の流入が防止される。
そのため、複合ケーブル1の中心に導電体5(導電性を有する連続体5)を設けることで、複合ケーブル1内での止水性を向上させることが可能となる。
【0042】
さらに、信号線2や電源線3の各絶縁被覆層22、32と同様に、導電体5の絶縁被覆層52が耐熱樹脂で被覆されており、耐熱樹脂が架橋された樹脂を含むように構成されていれば、導電体5の耐熱性を向上させることが可能となる。
そして、耐熱樹脂が架橋された樹脂を含むように構成することで、導電体5の耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
【0043】
図1に示したように、本実施形態に係る複合ケーブル1では、複合ケーブル1の中心に導電体5(導電性を有する連続体5)が複合ケーブル1の長手方向に延設されており、信号線2の各対の間に導電体5が介在し、2本の電源線3の間に導電体5が介在するように2対の信号線2と2本の電源線3と導電体5が配置されている。
そのため、
図4に示すように、複合ケーブル1の内部で、導電体5が介在する分だけ2本の電源線3同士が離れた状態になり、電源線3がシース層4の外面側に近い位置に配置される状態になる。
【0044】
そのため、
図4に示した本実施形態に係る複合ケーブル1と、
図5に示した導電体5が設けられていない従来の6芯の複合ケーブル100と比較すると分かるように、電源線3の部分のシース層4の厚さT2が従来の場合よりも薄くなり、信号線2の対の部分のシース層4の厚さT1と同程度になる。
そのため、複合ケーブル1の端末を加工する際に、シース層4の厚さが、信号線2の部分(
図4中のT1参照)と電源線3の部分(
図4中のT2参照)とで同程度の厚さになるため、シース層4の剥ぎ取りやすさが信号線2の部分と電源線3の部分とで同程度になりシース層4が剥ぎ取りやすくなるとともに、信号線2の部分と電源線3の部分とでシース層4の厚さにほとんど差がなくなるためシース層4を剥ぎ取ったときに信号線2の部分にも電源線3の部分にもシース層4が残らなくなる。そのため、本実施形態では、複合ケーブル1は、端末加工性が良いものになる。
【0045】
また、従来の複合ケーブル100では、
図6に示したように、シース103の厚さT1、T2を同程度にするために2本の電源線102同士を離すと、信号線101の対同士の間に電源線102が存在しない状態になり(すなわちシールドがない状態になり)、一方の信号線101の対でノイズが発生した場合、それを他方の信号線101の対が拾ってしまい、信号線101で送信される信号にノイズが乗る可能性が生じていた。
それに対し、本実施形態に係る複合ケーブル1では、
図4に示したように、2本の電源線3同士を離してもその間に導電体5が存在するため、一方の信号線2の対でノイズが発生しても、導電体5(導電性を有する連続体5)でシールドされるため、そのノイズを他方の信号線2の対が拾うことはなく、他方の信号線2で送信される信号にノイズが乗ることがない。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る複合ケーブル1によれば、複合ケーブル1の中心に導電体5(導電性を有する連続体5)を延設したため、2対の信号線2と2本の電源線3とを備える6芯の複合ケーブル1が、端末加工性に優れ、しかも、信号線2の対同士の間を的確にシールドすることが可能となる。
なお、導電体5の太さは、
図1や
図4に示した導電体5のような太さ、すなわち2対の信号線2や2本の電源線3に囲まれた内部空間に導電体5が過不足なく収まるような太さであることが好ましいが、それより多少太くてもよく、あるいは多少細くてもよい。
【0047】
ここで、本実施形態に係る複合ケーブル1(実施例1~4)や、導電体5を導電性を有しないものに替えたもの(比較例1、2)、従来の複合ケーブル100(
図5参照。比較例3)、
図7に示した構成の複合ケーブル100(比較例4)について、端末加工性やシールド性の観点から性能評価した結果を表Iに示す。
【0048】
【0049】
なお、表Iにおいて、「撚り合わせ」は信号線2の対や電源線3を撚り合わせ構造にしたか否かを表し、撚り合わせ構造にした場合を「あり」、しない場合を「なし」と記載した。
また、「構造」の欄には、その実施例や比較例における複合ケーブルを表す図の番号を記載した。
【0050】
さらに、「中心」の欄は、複合ケーブルの中心に延設させたものを記載し、「電線」は本実施形態に係る複合ケーブル1の導電体5を、複数の素線を撚り合わせて構成したものを表す。「編組」は導電体5を銅編組線で構成したものを表す。「導体棒」は導電体5を1本の連続体(銅の細棒)で構成したものを表す。「糸」は複合ケーブルの中心に糸を延設させたものを表す。「樹脂棒」は複合ケーブルの中心にプラスチック製の細棒を延設させたものを表す。
なお、「中心」の欄のうち空欄は、複合ケーブルの中心に特に何も設けていない場合を表す。
【0051】
また、評価項目のうち「端末加工性」は、作製した複合ケーブルの端末100mmにおいて実際にシースを剥ぎ取り、その際の皮むき性を評価した。
そして、シースの信号線の部分と電源線の部分とで皮むき性に相違がなく、複合ケーブルに剥ぎ取ったシースの残りがない場合を〇、それ以外の場合を×とした。
【0052】
また、「シールド性」は、作製した複合ケーブルの2対の信号線でそれぞれ所定の信号を送信した際に、いずれの対の信号線で送信される信号にも所定量以上のノイズが乗らない場合を〇、少なくともいずれか1対の信号線で送信される信号に所定量以上のノイズが乗ることが観測された場合を×とした。
【0053】
実施例1~4では、端末加工性とシールド性のいずれについても良好な結果が得られた。
一方、比較例1は、複合ケーブルの中心に連続体(糸)が設けられているため、端末加工性は比較的良いが、連続体が糸であるため、信号線の対の間をシールドすることができず、シールド性が劣る。
また、比較例2も同様に、複合ケーブルの中心に連続体(プラスチック製の細棒)が設けられているため、端末加工性は比較的良いが、連続体がプラスチック製の細棒であるため、信号線の対の間をシールドすることができず、シールド性が劣る。
【0054】
比較例3は、複合ケーブルの中心に特に何も設けられていない従来の複合ケーブル100(
図5参照)であり、信号線の対同士の間に2本の電源線が存在するため、シールド性は良好であるが、端末を加工する際、シースの信号線の部分と電源線の部分とで皮むき性が異なり、特に電源線の部分でシースが分厚いため皮むき性が悪かったり剥ぎ取り後にシースが電源線の部分に残るなどして、端末加工性が劣る。
比較例4も、複合ケーブルの中心に特に何も設けられておらず、信号線の対同士が接触する状態であるため(
図7参照)、シールド性が劣る。また、端末を加工する際、シースの信号線の部分と電源線の部分とで皮むき性が異なり、特に信号線の対の部分でシースが分厚いため皮むき性が悪かったり剥ぎ取り後にシースが電源線の部分に残るなどして、端末加工性が劣る。
【0055】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 複合ケーブル
2 信号線
21 中心導体
21a 素線
22 絶縁被覆層
3 電源線
31 中心導体
31a 素線
32 絶縁被覆層
4 シース層
5 導電体(導電性を有する連続体)
51 中心導体
52 絶縁被覆層