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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】固定体の取付構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
F16B5/02 F
F16B5/02 U
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020058201
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156381
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 彰久
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 総史
(72)【発明者】
【氏名】野田 裕介
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179169(JP,A)
【文献】特開2012-149711(JP,A)
【文献】特開2006-118711(JP,A)
【文献】特開平05-292628(JP,A)
【文献】特開2000-032627(JP,A)
【文献】特開2004-159380(JP,A)
【文献】特開平06-207699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00- 5/12
H02G 3/08
B60R 16/02
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部材に固定体をボルトとナットとで取り付ける固定体の取付構造であって、
前記固定体に設けられた固定部に、前記ボルトが貫通する貫通孔を形成する孔縁部が設けられるとともに、
前記孔縁部の内周面に沿って、金属製の筒状部材が設けられ、
前記筒状部材は、前記孔縁部からボルト貫通方向に突出し、
前記筒状部材より前記ボルト貫通方向に突出する環状のリブが前記孔縁部の外周に配置されるとともに、
前記リブの変形を促進する変形促進部が設けられ、
前記リブは、径方向断面において突出方向に先細り形状で形成され、
前記リブの径内側側面が、径外側側面より前記固定部の表面に対して緩やかな角度で形成された
固定体の取付構造。
【請求項2】
環状に構成された前記リブにおける周方向の少なくとも一部に前記リブの強度を低下させる強度低下部が設けられ、
該強度低下部で前記変形促進部が構成された
請求項1に記載の固定体の取付構造。
【請求項3】
前記強度低下部は、前記リブを径方向に貫通するスリットで形成され、
前記環状において前記スリットより前記リブが占める割合が大きい
請求項2に記載の固定体の取付構造。
【請求項4】
前記リブの径外側及び径内側のうち少なくとも一方の近傍に溝部が設けられ、
該溝部で前記変形促進部が構成された
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の固定体の取付構造。
【請求項5】
前記溝部の空間断面積が、前記リブにおいて前記筒状部材より突出する部分の断面積以上で形成された
請求項4に記載の固定体の取付構造。
【請求項6】
前記溝部における前記リブ側の溝部側面と、前記リブの前記溝部側の側面とが前記ボルト貫通方向において面一である
請求項4又は5に記載の固定体の取付構造。
【請求項7】
前記リブの径外側の近傍に前記溝部が設けられ、
前記孔縁部の前記ボルト貫通方向の一端よりも前記溝部の溝底が低い
請求項4乃至6のうちいずれかに記載の固定体の取付構造。
【請求項8】
前記固定体がボックスである
請求項1乃至7のうちいずれかに記載の固定体の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ボルトとナットとで被固定部材に取り付ける固定体の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載される電気接続箱を車体に固定する場合や、アッパーケースとロアケースとを固定する場合などのように、金属製のボルトを用いて樹脂製品同士や樹脂製品と金属製品とを締結固定することがある。
【0003】
このような樹脂製品である電気接続箱(固定体)をボルトで固定する構造として、固定体の固定部に設けた挿通孔に金属製の筒状部材を挿入するとともに、筒状部材に対してボルトを挿通して締結し、固定体を被固定体に固定する固定体の取付構造が特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示されている筒状部材は、挿入孔に挿入した状態で固定部の表面よりも、ボルトの挿入方向の後ろ側に突出している。このため、ボルトで締結したとしても、金属製の筒状部材とボルトが接触することとなる。したがって、樹脂製の固定部にボルトの締結力が作用せず、固定部が損傷することを防止できるとされている。
【0005】
しかしながら、この金属製の筒状部材は固定部の表面から突出しているため、例えば、固定体をそのまま持ち運びする際に、固定部が他の部材に干渉して、筒状部材が他の部材を損傷させるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-32627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述した問題を鑑み、固定部の貫通孔に設けられた金属製の筒状部材が他の部材を損傷させることを防止できる固定体の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、被固定部材に固定体をボルトとナットとで取り付ける固定体の取付構造であって、前記固定体に設けられた固定部に、前記ボルトが貫通する貫通孔を形成する孔縁部が設けられるとともに、前記孔縁部の内周面に沿って、金属製の筒状部材が設けられ、前記筒状部材は、前記孔縁部からボルト貫通方向に突出し、前記筒状部材より前記ボルト貫通方向に突出する環状のリブが前記孔縁部の外周に配置されるとともに、前記リブの変形を促進する変形促進部が設けられ、前記リブは、径方向断面において突出方向に先細り形状で形成され、前記リブの径内側側面が、径外側側面より前記固定部の表面に対して緩やかな角度で形成されたことを特徴とする。
【0009】
上述の環状のリブとは、ボルト貫通方向から視て環状に構成された一又は複数のリブだけでなく、ボルト貫通方向から視て複数のリブが互いに間隔を隔てて環状に配置された構成も含む。また、環状のリブとは、必ずしも孔縁部の外周全周に囲む必要はなく、部分的に孔縁部の外周を囲むように構成されていてもよい。
上述のリブの変形とは、リブが径外側や径内側に倒れること、あるいはリブの突出部分がボルト貫通方向に向けて潰れることを含む。
【0010】
前記変形促進部は、ボルトの締め付けによってボルトと筒状部材とが接触できるようにリブの変形を促進できる構成をさす。例えば、リブの径外側又は径内側に形成された溝や、リブの突出方向の基端部分を径方向に沿って入れた切込み形状、ボルト貫通方向から視て環状に構成されたリブを径方向に貫通するあるいは部分的に切り欠いたスリットなどを含む。
上述の緩やかな角度で形成されとは、前記固定部の表面に対する前記リブの径内側側面の傾斜角が、前記固定部の表面に対する前記リブの径外側側面の傾斜角よりも小さいことをさす。
【0011】
この発明により、固定部の貫通孔を形成する前記孔縁部の内周面に沿って設けられた金属製の筒状部材が他の部材を損傷させることを防止できる。
詳述すると、固定部が他の部材と干渉したとしても、筒状部材よりボルト貫通方向に突出した環状のリブが他の部材と干渉することとなる。このため、他の部材が金属製の筒状部材によって損傷することを防止できる。
【0012】
また、リブの変形を促進する変形促進部が設けられているため、ボルトを固定部に締結することでリブが変形し、ボルトと筒状部材とを直接接触させることができる。これにより、固定部にボルトの締結力が作用せず、固定部が損傷することを防止できる。したがって、ボルトとナットによる締結固定が弛むことを抑制することができる。
【0013】
また、前記リブは、径方向断面において突出方向に先細り形状で形成されていることにより、リブの突出方向の先端側の強度を低下させることができるため、ボルトの締結によりリブの突出方向の先端側を容易に変形させることができる。これにより、確実にボルトと筒状部材とを接触させることができ、ボルトとナットによる締結固定が弛むことをより抑制することができる。
【0014】
さらにまた、前記リブの径内側側面が、径外側側面より前記固定部の表面に対して緩やかな角度で形成されていることにより、リブの内側よりも外側の強度を低くできるため、ボルトの締結によりリブに外力が作用した場合に、リブを外側に倒すことができる。これにより、変形されたリブによる肉詰まりを防止でき、変形されたリブの高さを筒状部材より低くすることができる。したがって、締結されたボルトと筒状部材とを接触させることができ、ボルトとナットによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0015】
詳述すると、リブが内側に倒れた場合、径内側側面に対応する部分が詰まることとなり、倒れてきたリブを支持することとなる。これにより、リブが十分に倒れ切らず、変形したリブの高さが固定部の表面に対する筒状部材の高さよりも高くなることがある。この場合、ボルトは筒状部材と接触しないでリブに接触するため、ボルトの締結により固定部が損傷して固定体を被固定部材に固定できないおそれがある。
【0016】
これに対して、前記リブの径内側側面が、径外側側面より前記固定部の表面に対して緩やかな角度で形成されている場合、径外側側面が倒れてきたリブを支持する範囲が少なくなる。このため、リブは径外側に倒れやすくなるとともに、径外側に倒れることにより、変形したリブが肉詰まりを起こすことを防止できる。
【0017】
このため、リブの高さが固定部の表面に対する筒状部材の高さよりも低くすることができる。したがって、締結されたボルトと筒状部材とを接触させることができ、ボルトとナットによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0018】
この発明の態様として、環状に構成された前記リブにおける周方向の少なくとも一部に前記リブの強度を低下させる強度低下部が設けられ、該強度低下部で前記変形促進部が構成されてもよい。
前記強度低下部とは、例えば前記リブにおける周方向の少なくとも一部を径方向に貫通するスリットや径方向に切り欠いたスリット、リブの径内側又は径外側に設けた溝である場合、又はリブの突出方向の基端部分に入れた切込みなどであってもよい。
【0019】
この発明によると、リブの強度を低下させているため、ボルトを挿通孔に挿入し締結することで、リブを容易に変形させることができる。これにより、ボルトと筒状部材とを接触させることができ、ボルトとナットによる締結固定が弛むことを抑制することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記強度低下部は、前記リブを径方向に貫通するスリットで形成され、前記環状において前記スリットより前記リブが占める割合が大きくてもよい。
この発明により、複数のリブがスリットの間隔だけ隔てて環状に配置されることとなる。このようにスリットを介して互いに間隔を隔てて配置されたリブは、隣接する他のリブに支持されることがなく、環状に一体構成されている場合に比べて強度を低下させることができる。したがって、ボルトの締結によりリブを確実に変形させることができ、ボルトと筒状部材とを接触させて、ボルトとナットによる締結固定が弛むことをより抑制することができる。
【0021】
また、前記環状において前記スリットより前記リブが占める割合が大きいため、リブ全体として所定の強度を有する。このため、リブに意図しない外力が作用したとしてもリブが容易に変形することを防止できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記リブの径外側及び径内側のうち少なくとも一方の近傍に溝部が設けられ、該溝部で前記変形促進部が構成されてもよい。
この発明により、溝部が設けられたリブの径内側又は径外側において、リブの支持力を弱くすることができる。このため、ボルトの締結によりリブに外力が作用した場合に、溝部が設けられた側にリブが倒れることとなる。
【0023】
また、溝部を設けられることにより、体積の大きな空間が構成された方向にリブが倒れた場合に、変形したリブの高さが固定部の表面に対する筒状部材の高さよりも低くすることができる。したがって、締結されたボルトと筒状部材とを接触させることができ、ボルトとナットによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記溝部の空間断面積が、前記リブにおいて前記筒状部材より突出する部分の断面積以上で形成されてもよい。
この発明により、十分な空間断面積を有する溝部に向けてリブを倒しながら変形させることができるため、より確実に変形したリブの高さを固定部の表面に対する筒状部材の高さよりも低くすることができる。したがって、締結されたボルトと筒状部材とを接触させることができ、ボルトとナットによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記溝部における前記リブ側の溝部側面と、前記リブの前記溝部側の側面とが前記ボルト貫通方向において面一であってもよい。
この発明により、より確実に前記リブを溝部側に倒すことができ、変形したリブの高さが固定部の表面に対する筒状部材の高さよりも低くすることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記リブの径外側の近傍に前記溝部が設けられ、前記孔縁部の前記ボルト貫通方向の一端よりも前記溝部の溝底が低くてもよい。
この発明により、リブの径外側の強度がリブの径内側の強度よりも弱くなるため、リブを確実に外側に変形させながら倒すことができるとともに、変形されたリブの高さを固定部の表面に対する筒状部材の高さよりも低くすることができる。したがって、締結されたボルトと筒状部材とを接触させることができ、ボルトとナットによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記固定体がボックスであってもよい。
この発明により、ボックスを持ち運ぶ際に他の部材を損傷させることを防止できるとともに、ボックスを確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、固定部の貫通孔に設けられた金属製の筒状部材が他の部材を損傷させることを防止できる固定体の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】電気接続箱の概略斜視図。
図2】固定部の概略拡大斜視図。
図3】固定部の平面図。
図4】固定部のA-A矢視断面図。
図5】固定部のB-B矢視断面図。
図6】固定部にボルトを締結する前の状態を表す断面図。
図7】固定部にボルトを締結途中の状態を表す断面図。
図8】固定部にボルトを締結した後の状態を表す断面図。
図9】他の実施形態における固定部の断面図。
図10】他の実施形態における固定部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
本実施形態の電気接続箱1は、例えば車両のエンジンルームに配置されている。このような電気接続箱1を車体Xに締結固定するために備えられた固定部30について、図1から図8に基づいて説明する。
【0031】
図1は電気接続箱1の概略斜視図を示し、図2は電気接続箱1に設けられた固定部30の概略拡大斜視図を示し、図3は固定部30の平面図を示し、図4図3中におけるA-A矢視断面図を示し、図5図3中におけるB-B矢視断面図を示す。
【0032】
図6は車体Xに電気接続箱1を固定する前に固定部30にボルトBを挿通させてボルトBを締結する前の状態を表す断面図を示し、図7は固定部30にボルトBを締結している途中の状態を表す断面図を示し、図8は固定部30にボルトBを締結した後の状態を表す断面図を示す。なお、図6乃至図8図3中におけるA-A矢視に対応する断面図である。
図9及び図10は、他の実施形態における固定部30の断面図を示す。なお、図9及び図10図3中におけるA-A矢視断面に対応する断面図である。
【0033】
図4について詳述する。図4(a)は固定部30における全体断面を表した図3中におけるA-A矢視断面図を示し、図4(b)は図4(a)におけるα部を拡大表示した拡大断面図を示す。
【0034】
ここで、図1中の上下方向を上下方向Zとし、電気接続箱1の幅方向(図1において左上と右下とを結ぶ方向)を幅方向Wとし、電気接続箱1の奥行方向(図1において左下と右上とを結ぶ方向)を奥行方向Hとしている。
【0035】
また、上下方向Zにおいて上側を上方向Zuとするとともに、下側を下方向Zdとする。また、幅方向Wにおいて手前側(図1において右下側)を右側Wrとするとともに、奥側(図1において左上側)を左側Wlとする。そして、奥行方向Hにおいて奥側(図1において右上側)を前方側Hfとするとともに、手前側(図1において左下側)を後方側Hbとする。
なお、図1中で示した方向は、便宜上、図2乃至図10において同様とする。
【0036】
電気接続箱1は、内部にヒューズやバスバーなどの電子部品が収納されている筐体であり、この電子部品は車両に搭載されたバッテリや他の電子機器、あるいは、車室内に配置された電子機類と電気的に接続されている。このように構成されている電気接続箱1は車体XにボルトBとナットNとで締結固定されている。
【0037】
電気接続箱1について詳述する。電気接続箱1は、図1に示すように、略矩形状に構成された硬質樹脂製の筐体であり、ロアケース10と、ロアケース10と係止するアッパーケース20とで構成されている。
【0038】
ロアケース10は、上下方向Zから視て外形が略長方形となるように、上方向Zuが開口した内部中空状の略箱状に形成されており、内部には図示しない電子部品を収容する空間が構成されている。そして、このロアケース10の側面には、図1に示すように、ボルトBを挿入するとともに、車体Xに固定するための固定部30が設けられている。
【0039】
固定部30は、ロアケース10及びアッパーケース20と同様に硬質樹脂製であり、ロアケース10の側面から後方側Hbに向けて突出する略平板形状で構成されている。この固定部30は、図2乃至図5に示すように、枠体31と、枠体31の中央部分において円環状に構成された干渉防止部32とで一体に構成されている。
【0040】
枠体31は、図2乃至図5に示すように、外枠31aと、中央部分に形成された円筒枠31bと、外枠31aと円筒枠31bとを連結する8本の連結枠31cと、円筒枠31bの下端と外枠31aとを連結する連結部31dとで構成されている。
【0041】
外枠31aは、図3及び図4(a)、図5に示すように、平面視で略長方形状に構成された矩形状の枠であり、上下方向Zに沿って所定の板厚を有する。
円筒枠31bは、固定部30の中央部分を上下方向Zに沿って貫通する貫通孔S1を構成する円筒状の枠である。この円筒枠31bは、外枠31aの板厚のおよそ半分の高さとなるように構成されている。
【0042】
この円筒枠31bの下方向Zdの端部には外枠31aの内壁と連結する連結部31dが設けられている。なお、円筒枠31bの上端は外枠31aの上端と同じ高さである。また、貫通孔S1の貫通方向、すなわち上下方向Zは、ボルトBを貫通孔S1に貫通させる方向であるボルト貫通方向と一致する。
【0043】
この円筒枠31bの径内側には、筒状部材に対応するカラー40が円筒枠31bの内周面に沿って装着されている。カラー40は、円筒枠31bの内径と等しい外径を有する金属製の円柱管であり、図4及び図5に示すように、円筒枠31bの高さよりも高くなるように構成されている。このように構成されたカラー40は、上端及び下端がそれぞれ円筒枠31bの上端及び下端からわずかに突出している。なお、カラー40の円筒枠31bの上端に対する高さをカラー高さL1とする。
【0044】
連結枠31cは、図3に示すように、上下方向Zから視て円筒枠31bの中心から放射線状に延出する棒状体であり、奥行方向H及び幅方向Wに沿った4本と、その4本の間に配置された4本の計8本設けられている。この8本の連結枠31cは、それぞれが、外枠31aと円筒枠31bとを連結している。
【0045】
干渉防止部32は、図2乃至図5に示すように、円筒枠31bの径外側に円環状に並んで8つ設けられており、連結枠31cに対応する箇所において径方向に沿ったスリットCにより分断されている。すなわち、干渉防止部32は円筒枠31bの外径に沿って所定の間隔(連結枠31cの幅)を隔てて8つ配置されている。
【0046】
この干渉防止部32は、円筒枠31bの径外側に沿って設けられたリブ33と、リブ33の径外側に設けられた円環溝部34とで構成されている。
リブ33は、図4(b)に示すように、円筒枠31bの上端から上方に突出した凸部であり、平面視で円弧状に構成されている。またリブ33は、円筒枠31bの中心を通る径方向断面において、上方向Zuに向かうに伴い先細りする断面視台形状に構成されている。
【0047】
このリブ33の円筒枠31bの上端に対する径内側高さL2は、円筒枠31bの上端から上方に突出するカラー40の高さであるカラー高さL1よりも高くなるように構成されている。また、平面視円弧状に形成されたリブ33の弧長は、対応する径方向の位置における連結枠31cの幅の長さよりも長くなっている。すなわち、同心円上において、8つのリブ33が占める円弧の長さは、8本の連結枠31cの幅の全長よりも長くなっている。
【0048】
また、このリブ33の径内側の傾斜面である凸部内側面33aは、径外側の傾斜面、すなわち円環溝部34側の傾斜面である凸部外側面33bよりも緩やかな傾斜をしている。このように凸部内側面33aは、凸部外側面33bよりも緩やかに傾斜するように構成されていることにより、リブ33の径外側の強度は、径内側に比べて弱く構成されている。なお、円筒枠31bの上端面に対する凸部外側面33bの傾斜角は、65度以上が好ましい。
このように構成されたリブ33は、円筒枠31bの中心を通る径方向断面において、カラー40の上端よりも上方向Zuに突出した断面積V1の突出片を構成している。
【0049】
円環溝部34は、図3及び図4(b)に示すように、リブ33の径外側において下方向Zdに向けて窪ませた溝であり、平面視で円弧状に構成される。また、円環溝部34は、円筒枠31bの中心を通る径方向断面において、断面視略台形状をしている。
【0050】
この円環溝部34は、円環溝部34の溝底に対するリブ33の上端部分の径外側高さL3は、径内側高さL2に比べて長くなるように構成されている。また、この円環溝部34の径内側の傾斜面、すなわちリブ33側の側面である溝内側面34aは、凸部外側面33bと面一となるように構成されている。なお、円環溝部34の径外側の傾斜面である溝外側面34bは、溝内側面34aに比べて緩やかな傾斜をしている。
【0051】
このように構成された円環溝部34は、図4(b)に示すように、円筒枠31bの中心を通る径方向断面(すなわち、A-A矢視断面)において、リブ33の径外側に、リブ33の断面積V1よりも大きな空間断面積V2を有する退避空間S2を構成している。
【0052】
上述のように構成されたロアケース10とともに電気接続箱1を構成するアッパーケース20は、ロアケース10の上方向Zuの開口を覆うように構成された電気接続箱1の蓋である。なお、アッパーケース20には、電気接続箱1の内部に収納された電子回路やヒューズなどの電子部品と外部機器とを電気的に接続するためのコネクタ接続部21が複数設けられている。
【0053】
次に、ボルトB及びナットNを用いて、電気接続箱1を車体Xに締結固定する場合について図6乃至図8に基づいて簡単に説明する。
電気接続箱1は、固定部30を車体Xにおける所定の固定箇所(図示省略)に固定部30を固定することにより、車体Xに搭載している。
【0054】
この電気接続箱1は、図6に示すように、リブ33がカラー40の上端よりも上方向Zuに突出している。このため、カラー40が他の部材と干渉しそうな場合であっても、樹脂製のリブ33が他の部材と当接するため、他の部材が金属製のカラー40によって損傷することを防止できる。
【0055】
このような電気接続箱1を車体Xに固定する場合、はじめに固定部30の貫通孔S1にボルトBのネジ先端B1を上方向Zuから下方向Zdに向けて挿入する。このとき、金属製のボルトBの頭部B2が樹脂製のリブ33と当接することとなる(図6参照)。
【0056】
次に、ボルトBを下方向Zdに向けて押し付けるように締めつけていくことで、樹脂製のリブ33に対して下方に向けた外力が作用する。この外力により、リブ33が径外側に向けて倒れながら潰れ、ボルトBをカラー40に直接当接させることができる(図7及び図8参照)。すなわち、固定部30にボルトBの締結力が作用することを防止でき、固定部30がボルトBの締結によりに損傷することを防止できるとともに、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことを抑制することができる。
【0057】
このリブ33を押し下げるように潰した状態について詳述する。
干渉防止部32は、スリットCによって周方向に分断されている。また、干渉防止部32は、リブ33の外径側に円環溝部34が設けられているとともに、凸部内側面33aが凸部外側面33bに比べて緩やかに傾斜している。
【0058】
このため、リブ33の強度は、径内側に比べて径外側が弱くなるように構成されている。したがって、リブ33に対して上方向Zuから下方向Zdに向けた外力が作用した場合、リブ33は径外側に向けて倒れるように潰れていくこととなる(図7(b)参照)。
【0059】
また、円環溝部34がリブ33の径外側に退避空間S2を構成するとともに、退避空間S2の空間断面積V2がリブ33の断面積V1よりも大きくなるように構成されている。これにより、ボルトBを上方向Zuから下方向Zdに向けてさらに押し下げていくことで、リブ33は潰れながら円環溝部34に収まることとなる。
【0060】
これにより、潰れたリブ33がカラー高さL1よりも低くなる(図8参照)。すなわち、リブ33が、カラー40の上端よりも上方向Zuに突出することなく、固定部30にボルトBの締結力を作用させずにボルトBをカラー40に当接させることができる。したがって、固定部30がボルトBによって損傷することを防止できるとともに、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことを抑制することができる。
【0061】
このように、車体Xに電気接続箱1をボルトBとナットNとで取り付ける電気接続箱1に設けられた固定部30は、ボルトBが貫通する貫通孔S1を形成する円筒枠31bが設けられ、円筒枠31bの内周面に沿って、金属製のカラー40が設けられている。このカラー40は、ボルトBの貫通方向(上下方向Z)に沿った円筒枠31bの長さよりも長く構成されるとともに、円筒枠31bから上方向Zuに突出している。そして、カラー40より上方向Zuに突出する環状のリブ33が円筒枠31bの外周に配置されるとともに、リブ33の変形を促進する円環溝部34やスリットCが設けられている。
【0062】
これにより、電気接続箱1の持ち運びの際に固定部30の貫通孔S1を形成する円筒枠31bの内周面に沿って設けられた金属製のカラー40が他の部材を損傷させることを防止できる。
詳述すると、電気接続箱1を持ち運んだ場合において、固定部30が他の部材と干渉したとしても、カラー40より上方向Zuに突出した環状のリブ33が他の部材と干渉することとなる。このため、他の部材が損傷することを防止できる。
【0063】
また、上述のようにリブ33の変形を促進する円環溝部34やスリットCが設けられていることにより、固定部30にボルトBの締結することでリブ33が変形し、ボルトBとカラー40を直接接触させることができる。これにより、固定部30にボルトBの締結力が作用せず、固定部30が損傷することを防止でき、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことを抑制することができる。
【0064】
また、環状に構成されたリブ33における周方向の少なくとも一部に設けられたスリットCは、リブ33の強度を低下させるため、ボルトBを挿通孔に挿入し締結することで、リブ33を容易に変形させることができる。これにより、ボルトBとカラー40とを接触させることができ、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことを抑制することができる。
【0065】
また、リブ33を径方向に貫通するスリットCが設けられ、環状においてスリットCよりリブ33が占める割合が大きいことにより、複数のリブ33がスリットCの間隔だけ隔てて環状に配置されることとなる。このようにスリットCを介して互いに間隔を隔てて配置されたリブ33は、隣接する他のリブ33に支持されることがないため、環状に一体構成されている場合に比べてリブ33の強度を低下させることができる。したがって、固定部30にボルトBを締結することによりリブ33を確実に変形させることができるため、ボルトBとカラー40を接触させることができ、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことをより抑制することができる。
【0066】
また、平面視において、スリットCよりリブ33が占める割合が大きいため、リブ33は所定の強度を有する。このため、リブ33に意図しない外力が作用したとしても、リブ33が容易に変形することを防止できる。
【0067】
また、リブ33は、径方向断面において突出方向に先細りする先細り形状で形成されていることにより、リブ33の突出方向の先端側における強度を低下させることができる。このため、ボルトBの締結によりリブ33の突出方向の先端側を容易に変形させることができる。これにより、確実にボルトBとカラー40を接触させることができ、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことをより抑制することができる。
【0068】
また、リブ33の凸部内側面33aが、凸部外側面33bより固定部30の表面に対して緩やかな角度で形成されていることにより、リブ33の内側よりも外側の強度を低くできる。このため、ボルトBの締結によりリブ33に外力が作用した場合に、リブ33を外側に倒すことができる。
【0069】
これにより、変形されたリブ33による肉詰まりを防止でき、変形されたリブ33の高さをカラー40のカラー高さL1よりも低くできる。したがって、締結されたボルトBとカラー40とを接触させることができ、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0070】
詳述すると、リブ33が径内側に倒れた場合、凸部内側面33aに対応する部分が詰まって倒れてきたリブ33を支持するため、リブ33が十分に倒れ切らず、変形したリブ33の高さが固定部30の表面に対するカラー40の高さよりも高くなることがある。この場合、ボルトBはカラー40と接触しないで固定部30と接触した状態となるため、固定部30が損傷し、電気接続箱1を車体Xに確実に固定できなくなるおそれがある。
【0071】
これに対して、リブ33の凸部内側面33aが、凸部外側面33bより固定部30の表面に対して緩やかな角度で形成されているため、凸部外側面33b側において倒れてきたリブ33を支持する体積が少なくなる(図7参照)。このため、リブ33は径外側に倒れやすくなるとともに、径外側に倒れることにより、変形したリブ33が肉詰まりを起こすことを防止できる。
【0072】
これにより、リブ33の高さが固定部30の表面に対するカラー40の高さ(カラー高さL1)よりも低くすることができる(図8参照)。したがって、締結されたボルトBがカラー40と接触するため、固定部30が損傷することなくボルトBとナットNによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0073】
また、リブ33の径外側の近傍に円環溝部34が設けられていることにより、円環溝部34が設けられたリブ33の径外側において、リブ33の支持力を弱くすることができる。このため、ボルトBの締結によりリブ33に外力が作用した場合に、円環溝部34が設けられた側にリブ33が倒れることとなる。
【0074】
また、円環溝部34を設けられることにより、体積の大きな空間が構成されたリブ33の径外側にリブ33を倒すことができ、変形したリブ33の高さが固定部30の表面に対するカラー40の高さよりも低くすることができる。したがって、締結されたボルトBとカラー40とを接触させることができ、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0075】
さらにまた、円環溝部34の空間断面積V2が、リブ33においてカラー40より突出する部分の断面積V1以上で形成されていることにより、十分な空間断面積V2を有する円環溝部34に向けてリブ33を倒しながら変形させることができる。このため、より確実に変形したリブ33の高さが固定部30の表面に対するカラー40の高さよりも低くすることができる。したがって、締結されたボルトBとカラー40とを接触させることができ、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0076】
また、円環溝部34におけるリブ33側の溝内側面34aと、リブ33の円環溝部34側側面とがボルトB貫通方向において面一であることにより、より確実にリブ33を円環溝部34側に倒すことができる。したがって、変形したリブ33の高さが固定部30の表面に対するカラー40の高さよりも低くすることができる。
【0077】
さらにまた、リブ33の径外側の近傍には、円環溝部34が設けられ、円筒枠31bよりも、円環溝部34の溝底が低いため、リブ33の径外側の強度がリブ33の径内側の強度よりも弱くなり、確実に外側にリブ33を変形させながら倒すことができる。したがって、変形されたリブ33の高さが、固定部30の表面に対するカラー40の高さよりも低くすることができ、締結されたボルトBとカラー40とを接触させて、ボルトBとナットNによる締結固定が弛むことをより確実に抑制することができる。
【0078】
また、電気接続箱1がボックスであることにより、ボックスを持ち運ぶ際に他の部材を損傷させることを防止できるとともに、ボックスを確実に固定することができる。
【0079】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の被固定部材は、車体Xに対応し、
以下同様に、
ボルトは、ボルトBに対応し、
ナットは、ナットNに対応し、
固定体は、電気接続箱1に対応し、
固定部は、固定部30に対応し、
貫通孔は、貫通孔S1に対応し、
孔縁部は、円筒枠31bに対応し、
筒状部材は、カラー40に対応し、
リブは、リブ33に対応し、
変形促進部及び強度低下部は、円環溝部34及びスリットCに対応し、
スリットは、スリットCに対応し、
径内側側面は、凸部内側面33aに対応し、
径外側側面は、凸部外側面33bに対応し、
溝部は、円環溝部34に対応し、
溝部側面は、溝内側面34aに対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0080】
例えば、本実施形態において、リブ33はボルトBの貫通方向から視て環状に8つ構成されている。しかしながら、リブ33はこの構成に限定されず、例えば円環状に構成された1つのリブ33であってもよい。この場合、例えば平面視で径方向に沿って切れ目を加えるなどし、容易に変形するように構成されていることが好ましい。
【0081】
さらにまた、環状のリブ33とは、必ずしもカラー40の外周全周に囲む必要はなく、部分的にカラー40の外周を囲むように構成されていてもよい。例えば、8つあるリブ33のうちの右側Wr及び左側Wlに設けられた2つのみでも構わない。
【0082】
また、本実施形態において、リブ33は径外側に倒れる構成としているが、必ずしもこの構成である必要はない。例えば、リブ33は径内側に倒れる構成であっても構わないし、リブ33が下方に向けて潰れるような構成であっても構わない。なお、リブ33は径内側に倒れる構成とするため、円環溝部34に対応する溝部をリブ33の径内側に設けてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、リブ33の径外側に円環溝部34が設けられているが、円環溝部34に代わり、図9に示すように、リブ33の径外側を下方に切り欠いた切り欠き部35を設けてもよい。
【0084】
詳しくは、切り欠き部35は、図9に示すように、平面視において円筒枠31bの中心と円弧の中心とを結んだ直線が構成する断面において、凸部外側面33bと面一となる切り欠き傾斜面35aを有する断面略台形状の切り欠き空間S3を構成してもよい。
【0085】
また、本実施形態において、円環溝部34はボルトBの締め付けによってボルトBとカラー40が接触できるようにリブ33を径外側に向けた変形を促進するように構成されている。このようにリブ33の変形を促進する構成として、例えば、リブ33の径内側に形成された溝や、リブ33の突出方向の基端部分を径方向に沿って入れた切込み部36(図10参照)がある。また、本実施形態のように、スリットCもリブ33の変形を促進できる構成である。
【0086】
なお、上述の実施形態におけるリブ33の変形を促進する構成は、一つに限らず、カラー40とボルトBを接触させるためのリブ33の変形を阻害しないのであれば、これらの組み合わせてもよく、また組み合わせを適宜変更しても構わない。
【符号の説明】
【0087】
1 電気接続箱
30 固定部
31b 円筒枠
33 リブ
34 円環溝部
33a 凸部内側面
33b 凸部外側面
34 円環溝部
34a 溝部側面
40 カラー
B ボルト
C スリット
N ナット
S1 貫通孔
X 車体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10