(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ケーブル取出し用保護部材、角形電線管の管路、角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造、及び角形電線管の管路の積層構造
(51)【国際特許分類】
H02G 9/06 20060101AFI20231222BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20231222BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H02G9/06
F16L57/00 A
H02G1/06
(21)【出願番号】P 2020107478
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 恵人
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慶人
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕志
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/06
F16L 57/00
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの半割り部材が組み合せられて形成され、さらに前記半割り部材が固定部材で固定されるケーブル取出し用保護部材であって、
2つの前記半割り部材は、大径部収納部、筒状部、大径部収納部が管軸方向に順に形成された半筒状部材であり、
一方の前記半割り部材は、前記筒状部が所定角度で分岐する円筒状の分岐部を有する半筒状部材であり、他方の前記半割り部材は、前記筒状部が分岐部を有しない半筒状部材であり、
前記半割り部材の前記大径部収納部は、内部に角形電線管の略矩形状の大径部が収納できるように、外周がコーナ部に丸みを有する略U字状であり、前記分岐部を除く前記筒状部より外径が大きく形成され、
2つの前記半割り部材のそれぞれの前記大径部収納部の前記略U字状の幅方向の両端部には、互いに嵌合可能な係止突起と係止凹部とがそれぞれ形成され、2つの前記半割り部材の前記大径部収納部の前記略U字状の幅方向の両端部を当接させることで、前記係止突起を前記係止凹部に嵌合させることが可能であり、
2つの前記半割り部材の前記分岐部を除く前記筒状部の内周面、及び前記筒状部の両側の前記大径部収納部の内周面の全周には、止水部材が貼合されており、
2つの前記半割り部材を組み合わせた状態で、前記筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周において、固定部材で固定されることを特徴とするケーブル取出し用保護部材。
【請求項2】
前記止水部材は、ゴムパッキンまたは水膨張部材を含む不織布であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項3】
前記分岐部は、2つの前記半割り部材の一方の前記半割り部材に、前記筒状部より所定角度で円筒状に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項4】
前記固定部材は伸縮性を有するバンド状固定部材であり、前記筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周が前記固定部材で固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項5】
前記固定部材は拡開可能なばね性を有するCリングであり、前記筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周に前記Cリングを配置することで、前記Cリングの縮径力により、前記筒状部を固定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項6】
前記Cリングの内周には、円周方向に略平行か、あるいは螺旋状の複数のねじ山からなるねじ部が形成され、さらに前記筒状部の外周には、これと嵌合可能なねじ部が形成され、前記Cリングの内周のねじ部が、前記筒状部の外周のねじ部に嵌合されることを特徴とする請求項5に記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項7】
前記筒状部の前記バンド状固定部材または前記Cリングが配置される位置の内側近傍に、前記筒状部の外周に前記筒状部の外径より僅かに外径の大きな突状部を設け、前記筒状部の両端部と前記突状部の間にそれぞれ前記バンド状固定部材または前記Cリングが固定されることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項8】
前記分岐部の先端近傍の外周には接続部が形成され、前記接続部に分岐用電線管が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項9】
前記接続部が、大径の下部接続部と、前記下部接続部より小径の上部接続部の2段に形成され、前記下部接続部と前記上部接続部の2つの接続部のいずれかに分岐用電線管が接続されることを特徴とする請求項8記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項10】
前記接続部には、らせん状のねじ部、またはリング部材と止水部材を有する雄型接続部のいずれかが形成されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項11】
前記接続部に、電線管を接続しない場合には、止水栓が被冠されることが可能なことを特徴とする請求項10記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項12】
前記半割り部材の両側に形成された前記大径部収納部の管軸方向の距離が、ケーブル取出し用保護部材に固定される角形電線管の大径部の配置間隔と一致する長さに設定されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載のケーブル取出し用保護部材。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載のケーブル取出し用保護部材を有する角形電線管の管路であって、
前記ケーブル取出し用保護部材の両側には角形電線管が接続され、前記ケーブル取出し用保護部材の両端の前記大径部収納部に、前記角形電線管の大径部が収納されることを特徴とする角形電線管の管路。
【請求項14】
前記角形電線管が、外管の小径部に内管が融着することで形成される二重壁角形電線管であり、前記二重壁角形電線管が前記ケーブル取出し用保護部材の両側に接続されることを特徴とする請求項13記載の角形電線管の管路。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造であって、
前記角形電線管の管路には、複数の前記電線あるいはケーブルが挿通され、前記電線あるいはケーブルのいずれかが、前記ケーブル取出し用保護部材の分岐部から取出されることを特徴とする角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造。
【請求項16】
請求項15に記載の前記角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造が、多条多段に積層された角形電線管の管路の積層構造の最上段に配置されていることを特徴とする角形電線管の管路の積層構造。
【請求項17】
前記分岐部から分岐された前記電線あるいはケーブルが、外部接続されることを特徴とする請求項16に記載の角形電線管の管路の積層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの分岐部に用いられるケーブル取出し用保護部材、これを用いた角形電線管の管路、角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造、及び角形電線管の管路の積層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、丸型の螺旋状波付電線管が多く用いられていたが、近年、地中埋設用の電線保護管として、角形断面と円形断面が交互に形成されている角形電線管が提案されている。角形電線管は、電線管を密着して多条多段の管路を形成することが可能なため、電線管の埋設工事において、土砂の掘り起こし量が少なく、工事期間も短いメリットがある。このため、近年の災害対策の一環として、電柱でのケーブル敷設に代わり、角形電線管を使用したケーブル敷設方式が注目されており、特に大都会において、角形電線管の施工が多く取り入れられている。
【0003】
なお、角形電線管の場合には、小径部と大径部の段差が大きいため、通信ケーブル等を角形電線管に挿入する際に、通信ケーブルが小径部と大径部の段差に引っかかって通線できないという問題が発生する場合がある。これに対し、電線管の内部に通信ケーブルを通線しやすいように、電線管の内部に内管を設けた二重壁角形電線管も提案されている。
【0004】
一方、電線管に挿通された電線ケーブルの敷設構造に対して、電線ケーブルを分岐する場合がある。この際、電線管の管路の一部を切断して、切断した部分の電線管の管路に対して取り付けが容易な止水性に優れるケーブル取出し用保護部材の必要性が従来にも増して高まっている。
【0005】
このようなケーブルの分岐のための地中埋設管としては、例えば、管内を分離板によって二分し、その一方に幹線ケーブルを、他方に幹線ケーブルから分岐した分岐ケーブルを配置収容して保護する地中埋設管が提案されている(特許文献1)。特許文献1の地中埋設管は、分離板の幅方向の両端が埋設管内壁に当接して管内を上下方向に二分し、地中埋設管の内壁と当接する弧状板が設けられる。この地中埋設管は、管路の途中に分岐管継手が形成され、管内の分岐ケーブルは、この分岐管継手を経て分岐管へと引き出される。
【0006】
また、他のケーブルの分岐部の構造として、通信ケーブルを挿入する高防食性の合成樹脂からなる保護管や分岐管を有する継手の構造が提案されている(特許文献2)。この保護管の内部に、長手方向に亘り上下に分割するネット状物を設け、下部空間に幹線ケーブルが配置され、上部空間に引き込みケーブルが配置される。また、上部空間に対して斜め上方に突出する分岐管が設けられる。
【0007】
また、内部にケーブル等が通線される保護管の配管分岐部に設けられる配管分岐カバーが提案されている(特許文献3)。特許文献3の配管分岐部は、主管と枝管とが、底部が開口した配管分岐カバーにより保持される。配管分岐カバーの主管保持部により主管が保持され、枝管保持部先端近傍の内面には、枝管保持突起が設けられる。枝管保持部に挿入された枝管の外周の波形が枝管保持突起により係止されて固定される。
【0008】
また、新たな需要家にケーブルを引き込む場合に、内管を分岐させる箇所にハンドホールを設置せずに、分岐を行う施工方法が提案されている(特許文献4)。このケーブル分岐部の施工方法は、外管内に収納されている内管を分岐させる分岐工法である。具体的には、まず、外管に開口部を形成し、開口部を利用して分岐させる内管の所定長さ分を切除する。次に、切除された内管の各端部に分岐部材を装着して端部同士を連通させ、内分岐管を開口部に通して外管の外側に突出させる。そして、内分岐管を外分岐管に挿入し、サドル部で開口部を密封することで分岐構造を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-143394号公報
【文献】特開2006-174544号公報
【文献】特開2011-041395号公報
【文献】特開2004-080953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載される構造は、管路の途中に分岐管継手が形成された上下に2分されたものである。また、特許文献2、特許文献4に記載されている構造は、分岐部を有する内管または保護管である。これらは、いずれもリジッドなY字状の分岐部を有する一体の筒状管構造を有するものであり、これを利用してケーブルの取出しを行おうとすると、取出し部材を容易に組立することができないという問題がある。
【0011】
一方、特許文献3は、容易に着脱可能なカバー部材に関するものであるが、カバー部材が分岐部を除き主管全体を覆うものでないため、主管とカバーの接触面の隙間から水が浸入する恐れがあり、止水性にも問題がある。つまり、特許文献3は、構造的には、分岐部の開口部を塞ぐカバーに過ぎない。このように、上記の特許文献1から特許文献4のいずれの発明も、組立作業性に優れるものではなく、止水性にも問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、組立作業性及び止水性に優れたケーブル取出し用保護部材、これを用いた角形電線管の管路、角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造、及び角形電線管の管路の積層構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために第1の発明は、2つの半割り部材が組み合せられて形成され、さらに前記半割り部材が固定部材で固定されるケーブル取出し用保護部材であって、2つの前記半割り部材は、大径部収納部、筒状部、大径部収納部が管軸方向に順に形成された半筒状部材であり、一方の前記半割り部材は、前記筒状部が所定角度で分岐する円筒状の分岐部を有する半筒状部材であり、他方の前記半割り部材は、前記筒状部が分岐部を有しない半筒状部材であり、前記半割り部材の前記大径部収納部は、内部に角形電線管の略矩形状の大径部が収納できるように、外周がコーナ部に丸みを有する略U字状であり、前記分岐部を除く前記筒状部より外径が大きく形成され、2つの前記半割り部材のそれぞれの前記大径部収納部の前記略U字状の幅方向の両端部には、互いに嵌合可能な係止突起と係止凹部とがそれぞれ形成され、2つの前記半割り部材の前記大径部収納部の前記略U字状の幅方向の両端部を当接させることで、前記係止突起を前記係止凹部に嵌合させることが可能であり、2つの前記半割り部材の前記分岐部を除く前記筒状部の内周面、及び前記筒状部の両側の前記大径部収納部の内周面の全周には、止水部材が貼合されており、2つの前記半割り部材を組み合わせた状態で、前記筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周において、固定部材で固定されることを特徴とするケーブル取出し用保護部材である。
【0014】
前記止水部材は、ゴムパッキンまたは水膨張部材を含む不織布であることが望ましい。
【0015】
前記分岐部は、2つの前記半割り部材の一方の前記半割り部材に、前記筒状部より所定角度で円筒状に突出するように形成されていてもよい。
【0016】
前記固定部材は伸縮性を有するバンド状固定部材であり、前記筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周が前記固定部材で固定されてもよい。
【0017】
前記固定部材は拡開可能なばね性を有するCリングであり、前記筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周に前記Cリングを配置することで、前記Cリングの縮径力により、前記筒状部を固定してもよい。
【0018】
前記Cリングの内周には、円周方向に略平行か、あるいは螺旋状の複数のねじ山からなるねじ部が形成され、さらに前記筒状部の外周には、これと嵌合可能なねじ部が形成され、前記Cリングの内周のねじ部が、前記筒状部の外周のねじ部に嵌合されてもよい。
【0019】
前記筒状部の前記バンド状固定部材または前記Cリングが配置される位置の内側近傍に、前記筒状部の外周に前記筒状部の外径より僅かに外径の大きな突状部を設け、前記筒状部の両端部と前記突状部の間に、それぞれ前記バンド状固定部材または前記Cリングが固定されてもよい。ここで、前記突状部は、筒状部の外周全周に形成されてもよいし、円周上の一部に形成されてもいずれでもよい。
【0020】
前記分岐部の先端近傍の外周には接続部が形成され、前記接続部に分岐用電線管が接続されてもよい。
【0021】
この場合、前記接続部が、大径の下部接続部と、前記下部接続部より小径の上部接続部の2段に形成され、前記下部接続部と前記上部接続部の2つの接続部のいずれかに分岐用電線管が接続されてもよい。
【0022】
前記接続部には、らせん状のねじ部、またはリング部材と止水部材を有する雄型接続部のいずれかが形成されてもよい。
【0023】
前記接続部に、電線管を接続しない場合には、止水栓を被冠することが可能であってもよい。
【0024】
前記半割り部材の両側に形成された前記大径部収納部の管軸方向の距離が、ケーブル取出し用保護部材に固定される角形電線管の大径部の配置間隔と一致する長さに設定されてもよい。
【0025】
第1の発明によれば、ケーブル取出し用保護部材が、2つの半割り部材を組み合わせ、筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周において、固定部材で固定されるだけで得ることができるので、組み立て性が良好である。この際、互いに嵌合可能な係止突起と係止凹部とがそれぞれ形成されるため、部材の位置決めも容易である。また、2つの半割り部材の筒状部の内周面、及び筒状部の両側の大径部収納部の内周面の全周に、止水部材が貼合されているため、止水性を確保することができる。
【0026】
このように、ケーブル取出し用保護部材1は、上部半割部材と下部半割部材との嵌合及び固定構造と、止水性確保の構造が独立して形成されるため、簡易な構造で、確実に両者の効果を相互に阻害することなく得ることができる。また、本ケーブル取出し用保護部材は、新設管路であっても既設管路であっても同様に適用可能である。
【0027】
また、止水部材が、ゴムパッキンまたは水膨張部材を含む不織布であれば、高い止水性を確保することができる。
【0028】
また、分岐部が筒状部より所定角度で円筒状に突出するように形成されることで、分岐部の先端近傍に、分岐用電線管を接続可能である。
【0029】
また、固定部材が伸縮性を有するバンド状固定部材であり、筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周を固定部材で固定することで、確実に2つの半割部材を組立てた状態で固定することができる。
【0030】
また、固定部材が拡開可能なばね性を有するCリングであり、筒状部の管軸方向の両端部近傍の外周にCリングを配置することで、Cリングの縮径力により、筒状部を固定することができる。
【0031】
また、Cリングの内周に、円周方向に略平行か、あるいは螺旋状の複数のねじ山からなるねじ部が形成され、さらに筒状部の外周に、これと嵌合可能なねじ部が形成されれば、Cリングの内周のねじ部と筒状部の外周のねじ部とを嵌合させることができる。このため、確実に2つの半割部材を組立てた状態で固定することができるとともに、Cリングのずれを抑制することができる。
【0032】
Cリングの内周に形成されるねじ部は、円周方向に略平行な複数のねじ山でも、螺旋状のねじ山でもよく、筒状部にいずれかのねじ山を形成すれば、Cリングと筒状部とを嵌合させることができる。
【0033】
以上の他、筒状部にねじ部を形成する代わりに、筒状部のバンド状固定部材またはCリングが配置される位置の内側近傍に突状部を形成することでも、バンド状固定部材またはCリングなどの固定部材による2つの半割り部材の固定位置を安定化させ、さらにこれらの固定部材のずれを防止することが可能になる。なお、前記突状部は、筒状部の円周上の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0034】
また、分岐部の先端近傍の外周に接続部が形成されれば、接続部に分岐用電線管を接続することができる。
【0035】
また、接続部が、大径の下部接続部と、下部接続部より小径の上部接続部の2段に形成されれば、2つの接続部のいずれかに分岐用電線管を接続することができる。
【0036】
接続部が、らせん溝で形成されるか、または抜け止めリングとゴムパッキンからなる雄型接続部のいずれかで形成されれば、接続部への分岐用電線管の接続が容易である。
【0037】
また、接続部に止水栓を被冠可能とすることで、接続部に分岐用電線管を接続しない場合に接続部を閉塞することができる。
【0038】
また、半割り部材の両側に形成された大径部収納部の管軸方向の距離が、ケーブル取出し用保護部材に固定される角形電線管の大径部の配置間隔と一致する長さに設定されれば、ケーブル取出し用保護部材を既設の角形電線管の管路の途中に設置することもできる。
【0039】
第2の発明は、第1の発明にかかるケーブル取出し用保護部材を有する角形電線管の管路であって、前記ケーブル取出し用保護部材の両側には角形電線管が接続され、前記ケーブル取出し用保護部材の両端の前記大径部収納部に、前記角形電線管の大径部が収納されることを特徴とする角形電線管の管路である。
【0040】
前記角形電線管が、外管の小径部に内管が融着することで形成される二重壁角形電線管であり、前記二重壁角形電線管が前記ケーブル取出し用保護部材の両側に接続されてもよい。
【0041】
第2の発明によれば、ケーブル取出し用保護部材の両側から角形電線管を挿入して、両者を接続して管路を形成することができる。
【0042】
また、角形電線管が二重壁角形電線管であれば、前述したように、電線管内部の凹凸がほとんどないため、管路へのケーブル等の挿通が容易である。
【0043】
第3の発明は、第2の発明にかかる角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造であって、前記角形電線管の管路には、複数の前記電線あるいはケーブルが挿通され、前記電線あるいはケーブルのいずれかが、前記ケーブル取出し用保護部材の分岐部から取出されることを特徴とする角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造である。
【0044】
第3の発明によれば、ケーブル取出し用保護部材の両側から角形電線管を挿入して形成された管路において、接続部からケーブルを分岐させることができる。
【0045】
第4の発明は、第3の発明にかかる角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造が、多条多段に積層された角形電線管の管路の積層構造の最上段に配置されていることを特徴とする角形電線管の管路の積層構造である。
【0046】
前記分岐部から分岐された前記電線あるいはケーブルが、外部接続されてもよい。
【0047】
第4の発明によれば、多条多段に積層された角形電線管の管路から、ケーブルを分岐させることができる。
【0048】
この際、分岐部で分岐された電線あるいはケーブルを外部接続することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、組立作業性及び止水性に優れたケーブル取出し用保護部材、これを用いた角形電線管の管路、角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造、及び角形電線管の管路の積層構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】(a)は、上部半割部材2aの斜視図、(b)は、上部半割部材2aの側面図。
【
図2】(a)は、下部半割部材2bの斜視図、(b)は、下部半割部材2bの側面図。
【
図4】バンド状固定部材9で固定されたケーブル取出し用保護部材1を示す側面図。
【
図5】Cリング8で固定されたケーブル取出し用保護部材1を示す側面図。
【
図6】(a)は、Cリング8の正面図、(b)は、(a)のA-A線断面図、(c)は、Cリング8aの正面図、(d)は、(c)のB-B線断面図。
【
図7】(a)は、リング部材とゴムパッキンが取り付けられたケーブル取出し用保護部材1を示す側面図、(b)は、ケーブル取出し用保護部材1aを示す側面図。
【
図8】(a)は、ケーブル取出し用保護部材1bを示す側面図、(b)は、止水栓7が被冠されたケーブル取出し用保護部材1を示す側面図。
【
図9】(a)、(b)は、ケーブル取出し用保護部材1を用いた角形電線管12の管路を示す図。
【
図10】ケーブル取出し用保護部材1を用いた二重壁角形電線管13の管路を示す図。
【
図11】ケーブル取出し用保護部材1を用いた二重壁角形電線管13の管路からのケーブルの取出し構造を示す図。
【
図12】(a)は、角形電線管の多条多段の積層構造14を示す図、(b)は、角形電線管の多条多段の積層構造14aを示す図。
【
図13】角形電線管の多条多段の積層構造14からのケーブル11の引き出し構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態にかかるケーブル取出し用保護部材について説明する。本実施形態にかかるケーブル取出し用保護部材は、2つの半割り部材が組み合わせられ、2つの半割り部材が固定部材で固定されて構成される。
【0052】
図1(a)は、上部半割部材2aの斜視図、
図1(b)は、上部半割部材2aの側面図である。また、
図2(a)は、下部半割部材2bの斜視図、
図2(b)は、下部半割部材2bの側面図である。
【0053】
2つの上部半割部材2a、下部半割部材2bは、それぞれ、大径部収納部3、筒状部4、大径部収納部3が管軸方向に順に形成された半筒状部材である。一方の上部半割部材2aは、筒状部4が所定角度で分岐する円筒状の分岐部5を有する半筒状部材である。また、他方の下部半割部材2bは、筒状部4が分岐部を有しない半筒状部材である。すなわち、分岐部5は、2つの半割り部材の内、いずれか一方の半割り部材に、筒状部4より所定角度で円筒状に突出するように形成されている。以下、各半割部材について詳細に説明する。
【0054】
まず、上部半割部材2aについて説明する。前述したように、上部半割部材2aは、一方の端部から他方の端部に向けて、順に、大径部収納部3、筒状部4、大径部収納部3が形成された半筒状部材であり、筒状部4には、分岐部5が設けられる。なお、上部半割部材2aは、例えば高密度ポリエチレンやポリプロピレンなどの高強度のポリオレフィン樹脂で構成される。分岐部5は、上部半割部材2aの筒状部4より、所定角度で円筒状に突出するように形成される。分岐部5の先端近傍には、分岐用電線管を接続可能な接続部6が形成されている。接続部6の詳細は後述する。
【0055】
上部半割部材2aの大径部収納部3は、内部に、後述する角形電線管の略矩形状の大径部が収納できるように形成される。具体的には、上部半割部材2aの大径部収納部3の外周の形状は、コーナ部に丸みを有する略U字状で、上部半割部材2aの大径部収納部3の外周には、周方向に補強用リブが形成されている。また、上部半割部材2aの大径部収納部3は、分岐部5を除く筒状部4より外径が大きく形成される。
【0056】
上部半割部材2aの大径部収納部3の略U字状の幅方向の両端部には、係止突起として、大径部収納部突起31が形成される。大径部収納部突起31は、後述する下部半割部材2bとの嵌合部となる。
【0057】
上部半割部材2aの筒状部4の両側の大径部収納部3の内周面の全周には、止水部材34が貼合される。さらに、止水部材34は、上部半割部材2aの分岐部5を除く筒状部4の内周面に配置されることが望ましい。止水部材34は、例えばゴムパッキンまたは水膨張部材を含む不織布である。
【0058】
止水部材34がゴムパッキンの場合には、例えば、EPゴム、SBR、CR、NBR、ACMゴムやEPDM/PPの動的架橋エラストマー等が適用可能である。
【0059】
また、止水部材34が水膨張性不織布の場合には、例えば、ポリエステル繊維とポリアクリル酸ナトリウムの繊維とバインダー樹脂を加えた不織布が適用可能である。この場合、ポリエステル繊維とポリアクリル酸ナトリウムの割合は、両者の合計を100質量%に対して、ポリアクリル酸ナトリウム量は、30質量%から70%質量%であることが望ましい。また、水膨張性不織布には、ポリエステル繊維とポリアクリル酸ナトリウムの繊維の両者の合計に対して、バインダー樹脂を1~10質量%の範囲で使用することが望ましい。
【0060】
ここで、水膨張性不織布は、吸水膨潤してゲル化する。ゲルについての高分子化学における定義は、溶媒に不溶な三次元網目構造を有する高分子およびその膨潤体として定義され、三次元網目構造を持つ架橋高分子では、溶媒との相互作用により膨潤するものの、架橋構造をもつために、有限の膨潤性を示す。この膨潤の度合い(膨潤度)は、架橋密度に依存し、架橋密度が高いほど膨潤度が小さい。また、膨潤ゲルは、液体と固体の中間の物質形態であり、その化学組成や種々の要因を制御することで、粘性のある液体から固体に近い状態まで、粘性と適度な変形能を有する状態に変化させることができる。このため、水膨張性不織布を膨潤してゲル化することにより、止水性を確保すると同時に変形能に優れた状態を作りだすことが可能となり過剰な応力を逃がすことができる。
【0061】
ここで、ゲル化は、架橋構造によりもたらされるが、架橋構造の生成は、必ずしも架橋構造による必要がなく、異なる分子鎖の特定の単位間の2次的な結合力、例えば水素結合などによっても可能である。また、膨潤してゲル化した三次元網目構造を持つ架橋高分子は、乾燥により収縮してもとの状態に戻ることができる。
【0062】
次に、下部半割部材2bについて説明する。
図2(a)、
図2(b)に示すように、下部半割部材2bも上部半割部材2aと同様に、一方の端部から他方の端部に向けて、順に、大径部収納部3、筒状部4、大径部収納部3が形成された半筒状部材である。また、前述したように、下部半割部材2bの筒状部4には、分岐部5は形成されない。
【0063】
また、上部半割部材2aと同様に、下部半割部材2bの大径部収納部3の外周の形状は、コーナ部に丸みを有する略U字状で、下部半割部材2bの大径部収納部3の外周には、周方向に平行に補強用リブが形成されている。また、下部半割部材2bの大径部収納部3は、筒状部4より外径が大きく形成される。なお、下部半割部材2bも上部半割部材2aと同様に、例えば、高密度ポリエチレンやポリプロピレンなどの高強度のポリオレフィン樹脂製である。
【0064】
下部半割部材2bの大径部収納部3の略U字状の幅方向の両端部には、係止凹部として、大径部収納部凹部32が形成される。大径部収納部凹部32は、前述した上部半割部材2aの大径部収納部突起31と嵌合可能である。このように、2つの上部半割部材2a及び下部半割部材2bの、それぞれの大径部収納部3の略U字状の幅方向の両端部に、互いに嵌合可能な係止突起と係止凹部とがそれぞれ形成される。
【0065】
図3は、2つの上部半割部材2a及び下部半割部材2bを組み合わせて形成されたケーブル取出し用保護部材1を示す側面図である。
図3に示すように、2つの上部半割部材2a及び下部半割部材2bの大径部収納部3の略U字状の幅方向の両端部を当接させることで、大径部収納部突起31を大径部収納部凹部32に嵌合させることが可能である。
【0066】
図2(a)に示すように、下部半割部材2bの筒状部4の両側の大径部収納部3の内周面の全周には、止水部材34が貼合される。さらに、止水部材34は、下部半割部材2bの筒状部4の内周面に配置されることが望ましい。このように、2つの上部半割部材2a及び下部半割部材2bの分岐部5を除く筒状部4の内周面、及び筒状部4の両側の大径部収納部3の内周面の全周に、止水部材34が貼合されることが望ましい。
【0067】
図4は、2つの上部半割部材2a及び下部半割部材2bを組み合わせた状態で、筒状部4の管軸方向の両端部近傍の外周において、上部半割部材2a及び下部半割部材2bが固定部材で固定されたケーブル取出し用保護部材1を示す側面図である。
【0068】
図示した例では、固定部材として伸縮性を有するバンド状固定部材9が用いられる。バンド状固定部材9によって、筒状部4の管軸方向の両端部近傍の外周が固定される。なお、バンド状固定部材9は、例えば伸縮性を有するゴム製である。このように、バンド状固定部材9によって、筒状部4の管軸方向の両端部近傍を締め付けることで、上部半割部材2aと下部半割部材2bの嵌合部に圧がかかり、確実に両者を嵌合して止水性を確保することができる。
【0069】
なお、固定部材としては、バンド状固定部材9には限られない。
図5は、固定部材として、Cリング8を用いたケーブル取出し用保護部材1を示す図であり、
図6(a)は、Cリング8の正面図、
図6(b)は
図6(a)のA-A線断面図である。Cリング8は、周方向の一部が切れた略環状の部材である。Cリング8は、拡開可能なばね性を有し、例えば、ABS樹脂、PP樹脂、硬質塩化ビニル、これらのいずれかとPC樹脂の混合樹脂またはポリマーアロイのいずれかまたは金属製である。
【0070】
上部半割部材2aと下部半割部材2bの筒状部4の管軸方向の両端部近傍の外周に前記Cリング8を配置することで、Cリング8の縮径力により、筒状部4を固定することができる。このように、バンド状固定部材9と同様に、Cリング8によって筒状部4の管軸方向の両端部近傍を締め付けることで、上部半割部材2aと下部半割部材2bの嵌合部に圧がかかり、確実に両者を嵌合して止水性を確保することができる。
【0071】
なお、止水部材が水膨張性不織布である場合には、Cリング8やバンド状固定部材9の締め付け力による効果に加えて、水膨張性不織布が吸水膨潤してゲル化した場合には、水膨張性不織布が自在に変形すると同時に膨張して水膨張性不織布を配置部近傍の止水空間を完全に閉塞することから止水性を吸水によりさらに高めることができる。この際、大径部収納部3の外周には、補強用リブが形成されていることから、水膨張性不織布が吸水膨潤して、大径部収納部に圧力が付与されても大径部収納部が変形することがない。
【0072】
なお、Cリング8の内周面は、平滑であってもよいが、ねじを形成してもよい。
図6(c)は、Cリング8aを示す正面図であり、
図6(d)は、
図6(c)のB-B線断面図である。Cリング8aの内周には、円周方向に略平行な複数のねじ山からなるねじ部81が形成される。
【0073】
この場合には、筒状部4の外周に、Cリング8aのねじ部81と嵌合可能なねじ部が形成される。Cリング8aの内周のねじ部が、筒状部4の外周のねじ部に嵌合されることで、Cリング8aが筒状部4に固定される。このようにすることで、Cリング8aが筒状部4の管軸方向の両端部近傍からずれることを抑制することができる。
【0074】
また、Cリングの内周に形成されるねじ部は、円周方向に略平行な複数のねじ山でなく、螺旋状のねじ山でもよく、この場合には、筒状部に螺旋状のねじ山を形成すれば、両者を嵌合させることができる。
【0075】
以上の他、特に図示しないが、筒状部4のCリング8が配置される位置の内側近傍に、筒状部4の外周に筒状部4の外径より僅かに外径の大きな突状部を設け、筒状部4の両端部と突状部の間にそれぞれCリング8を固定することで、Cリング8のずれ防止を行ってもよい。この場合には、Cリング8の内周にねじ部を形成する必要はない。また、筒状部4の両端部と突状部の間に、Cリング8を配置する代わりにそれぞれバンド状固定部材9を配置してもよい。
【0076】
図7(a)は、接続部6に、抜け止め用のリング部材とゴムパッキンが取り付けられた状態を示す図。接続部6は、抜け止めリングとゴムパッキンからなる雄型接続部である。なお、抜け止めリングは、開口部を有するC型であってもよく、環状であってもよい。抜け止めリングに形成される係止爪で、ロックできれば良い。ゴムパッキンと合わせることで抜け止めと止水を行うことができる。
【0077】
なお、ゴムパッキンとしては、例えば、EPゴム、SBR、CR、NBR、ACMゴムやEPDM/PPの動的架橋エラストマー等を適用可能である。
【0078】
図7(b)は、ケーブル取出し用保護部材1aを示す側面図である。ケーブル取出し用保護部材1aの接続部は、大径の下部接続部61と、下部接続部61より小径の上部接続部62の2段に形成される。下部接続部61と上部接続部62の2つの接続部のいずれかに分岐用電線管を接続することができる。すなわち、径の異なる分岐用電線管を接続することができる。
【0079】
なお、接続部6は、他の分岐用電線管と接続可能であればその構造は限定されない。例えば、
図8(a)は、接続部6が、らせん溝が形成されたらせん状のねじ部71であるケーブル取出し用保護部材1bを示す側面図である。なお、接続部6に分岐用電線管を螺旋接続する場合には、接続部6のねじ部の表面に止水部材が貼合されているか、接続される分岐用電線管の内面に止水部材が貼合されればよい。このように、接続部6は、らせん溝、または抜け止めリングとゴムパッキンからなる雄型接続部のいずれかで形成されることが望ましい。なお、以下の説明では、ケーブル取出し用保護部材1について説明する。
【0080】
ケーブル取出し用保護部材1の両側の大径部収納部3には、後述する角形電線管が配置され、分岐部5からは、電線管内部のケーブルが分岐される。この場合には、分岐部5に他の分岐用電線管が接続される。なお、分岐部5からケーブルを分岐させず、接続部6に電線管を接続しない場合には、分岐部5を閉塞してもよい。
図8(b)は、分岐部5の先端に止水栓7を配置して分岐部5を閉塞した状態を示す図である。このように、分岐部5の接続部6に止水栓7を被冠することが可能であり、接続部6の先端に止水栓7を被冠させることで、ケーブル取出し用保護部材1の内部に雨水や地下水の侵入を防止することができる。
【0081】
次に、ケーブル取出し用保護部材1を有する角形電線管の管路からのケーブルの取出し構造について説明する。
図9(a)は、角形電線管の管路を示す図である。なお、以下の説明において、止水部材及び固定部材の図示を省略する。前述したように、ケーブル取出し用保護部材1は、上部半割部材2aと下部半割部材2bとが固定されて構成される。この状態で、ケーブル取出し用保護部材1の両側には角形電線管12が接続される。
【0082】
角形電線管12は、断面略正方形状の大径部と、断面略円形状の小径部とが交互に形成された電線管である。ケーブル取出し用保護部材1の両端の大径部収納部3にはそれぞれ角形電線管12の大径部が収納される。すなわち、角形電線管12は、それぞれ所定距離離間して対向配置される。
【0083】
ここで、上部半割部材2aと下部半割部材2bの両側に形成された大径部収納部3の管軸方向の距離(大径部収納部間距離33)は、ケーブル取出し用保護部材1に固定される角形電線管12の大径部の配置間隔と一致する長さに設定されてもよい。このようにすることで、既設の角形電線管12の管路の小径部を切断したとしても、既設の管路の当該切断部にケーブル取出し用保護部材1の大径部間の距離を適合させることが可能になり、ケーブル取出し用保護部材1を適切に配置することができる。
【0084】
なお、
図9(b)に示すように、小径部の略中央には、二つの小突起が形成されてもよい。この二つの小突起の間の溝をガイドとして、角形電線管12の切断を容易に行うことができる。このように、切断用の中央に切断溝が形成されていることが望ましいが、このような突起と溝は形成されていなくてもよい。また、
図9(b)のように、ケーブル取出し用保護部材1の両側に接続された、いずれかの角形電線管12から、所定本数のケーブル11が一方の上部半割部材2aの分岐部5から取り出すこともできる。
【0085】
また、角形電線管12としては、
図9(a)、
図9(b)に示すような一重構造の角形電線管ではなく、二重構造の角形電線管であってもよい。
図10に示す例では、角形電線管12に変えて、二重壁角形電線管13がケーブル取出し用保護部材1に接続される。すなわち、ケーブル取出し用保護部材1が用いられた二重壁角形電線管13の管路が形成される。二重壁角形電線管13は、角形電線管12と同様の形態の外管の内部に、略円断面形状の内管が配置されて両者が一体化したものである。より詳細には、円管である内管の外面が、角形電線管12と同形態の外管の小径部の内面において融着されて一体化したものである。
【0086】
このように、二重壁角形電線管13を、ケーブル取出し用保護部材1の両側に接続することで、二重壁角形電線管13の管路は形成される。また、角形電線管の管路においては、所定距離離間して対向配置された一方の二重壁角形電線管13から他方の二重壁角形電線管13を貫通するように複数の電線あるいはケーブル(図示した例ではケーブル11)が挿通される。
【0087】
図11は、角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造を示す図である。なお、図示した例では、二重壁角形電線管13を用いた、角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造を示すが、角形電線管12も同様の構成である。
【0088】
ケーブル取出し用保護部材1の両側に接続された、いずれかの二重壁角形電線管13から、所定本数のケーブル11が一方の上部半割部材2aの分岐部5から取り出される。前述したように、分岐部5の接続部6には、分岐用電線管(図示省略)が接続され、分岐されたケーブル11は、分岐部5を介して分岐用電線管に挿通される。なお、分岐用電線管は、接続部6に嵌合可能な雌型嵌合部が形成されればよい。
【0089】
次に、角形電線管の管路の積層構造について説明する。
図12(a)は、角形電線管の多条多段の積層構造14を示す図である。角形電線管の多条多段の積層構造14は、複数の角形電線管12の管路が、積層されて構成される。なお、角形電線管12に変えて、二重壁角形電線管13を用いてもよい。また、角形電線管12の配置数やサイズ等は図示した例には限られない。
【0090】
角形電線管の多条多段の積層構造14では、角形電線管の管路からの電線あるいはケーブルの取出し構造が、多条多段に積層された角形電線管12の管路の積層構造の最上段に積層されている。なお、角形電線管の多条多段の積層構造14におけるケーブル取出し用保護部材1の分岐部5は、側方に向けて配置される。このようにすることで、分岐部5から、ケーブル取出し用保護部材1に接続された角形電線管の内部のケーブルを取り出して、分岐させることができる。なお、分岐部5から分岐された電線あるいはケーブルは、さらに外部で接続されてもよい。
【0091】
なお、分岐部5は、必ずしも横向きに配置されなくてもよい。例えば、
図12(b)に示す、角形電線管の多条多段の積層構造14aのように、最上段に配置されたケーブル取出し用保護部材1の分岐部5を、上方に向けて配置してもよい。この場合でも、分岐部5から、ケーブル取出し用保護部材1に接続された角形電線管の内部のケーブルを取り出して、分岐させることができる。上記の多条多段に段済みする電線管の製品寸法が複数種にわたる場合には、段済みの積層構造が安定するように、製品寸法の小さい電線管を上段に積層することが望ましい。上記のように多条多段に段積みする電線管の製品寸法が複数種にわたる場合には、段積みの積層構造が安定するように、製品寸法の小さい電線管を上段に積層することが望ましい。
【0092】
図13は、角形電線管の多条多段の積層構造14から、需要者までのケーブル11の敷設状態を示す概略図である。角形電線管の多条多段の積層構造14は地中に埋設される。角形電線管12の管路の内部から、一部のケーブル11が分岐部5を介して取り出される。
【0093】
ケーブル取出し用保護部材1の分岐部5には、分岐用電線管15が接続される。分岐用電線管15は、角形電線管の管路から需要者まで敷設される。このため、角形電線管の多条多段の積層構造14から、一部のケーブル11を分岐させて、需要者まで敷設することができる。
【0094】
以上、本実施の形態によれば、一方の上部半割部材2aの大径部収納部突起31が、他方の下部半割部材2bの大径部収納部凹部32に嵌合するため、相互にずれることがない。また、固定部材によって、上部半割部材2aと下部半割部材2bとを確実に固定することができる。
【0095】
また、止水部材によって、上部半割部材2aと下部半割部材2bの接合面等や内面から、内部に配置される角形電線管の内部に雨水や地下水が浸入することを防止することができる。このように、ケーブル取出し用保護部材1は、上部半割部材2aと下部半割部材2bとの嵌合及び固定構造と、止水性確保の構造が独立して形成されるため、簡易な構造で、確実に両者の効果を相互に阻害することなく得ることができる。
【0096】
また、ケーブル取出し用保護部材1を用いれば、必要に応じて必要な位置から適宜電線やケーブル11を取り出すことができる。この際、前述したように止水性を有するため、新規に管路を敷設する場合や、既設の管路に取り付ける場合にも、きわめて有効に適用できる。
【0097】
また、ケーブル取出し用保護部材1が角形電線管(角形電線管12及び二重壁角形電線管13)を接続可能であるため、角形電線管を密着して多条多段に積層することができる。このように、角形電線管の管路を形成することが可能なため、角形電線管の埋設工事において、土砂の掘り起こし量が少なく、工事期間も短い。
【0098】
また、ケーブル取出し用保護部材1の、大径部収納部間距離33と、角形電線管の大径部間の距離を一致させることで、角形電線管の管路を新規に設ける場合だけでなく、角形電線管の管路を敷設した後であっても、既設の角形電線管の小径部を所定長さに切断するだけで、ケーブル取出し用保護部材1を容易に設置することができるため、既設管路への適用が容易で既設管路の他の部位の再施工などが不要で効率的な工事が可能になる。
【0099】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0100】
1、1a、1b………ケーブル取出し用保護部材
2a………上部半割部材
2b………下部半割部材
3………大径部収納部
31………大径部収納部突起
32………大径部収納部凹部
33………大径部収納部間距離
34………止水部材
4………筒状部
5………分岐部
6………接続部
61………下部接続部
62………上部接続部
7………止水栓
71………ねじ部
8、8a………Cリング
81………ねじ部
9………バンド状固定部材
11………ケーブル
12………角形電線管
13………二重壁角形電線管
14、14a………角形電線管の多条多段の積層構造
15………分岐用電線管