(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法、評価プログラムおよび評価システム
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20231222BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
G01N17/00
G01N3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020144208
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】力久 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政寛
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋幸
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-197059(JP,A)
【文献】特開2007-135349(JP,A)
【文献】特開2013-011498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0227677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準となる第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う第1試験部と、
前記第1電力伝送線と仕様が同一または異なる評価対象の第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に前記一定期間と同等の長さの期間に配置されていた前記第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、前記画像試験と同一の試験または前記機械試験と同一の試験を行う第2試験部と、
前記第1試験部による試験結果と、前記第2試験部による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う評価部とを備える評価装置。
【請求項2】
前記基準環境は、複数の異なる場所に点在しており、
前記第1試験部は、複数の異なる場所に点在している前記基準環境に対して、それぞれ一定期間配置されていたそれぞれの前記第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行い、
前記評価部は、前記第1試験部による複数の異なる場所に点在している前記基準環境に配置されていたそれぞれの前記第1試験片の試験結果と、前記第2試験部による前記第2試験片の試験結果とをそれぞれ比較し、複数の異なる場所に点在している前記基準環境ごとに、前記評価環境についての相対的な評価を行う請求項1記載の評価装置。
【請求項3】
前記評価部による評価結果に基づいて、前記基準環境と前記評価環境とを相対的に比較した情報を生成する生成部を備える請求項1または2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記基準環境には、前記第1試験片が配置されている場所に当該基準環境の環境情報を検出する第1センサが前記一定期間と同等の長さの期間に配置されており、
前記評価環境には、前記第2試験片が配置されている場所に当該評価環境の環境情報を検出する第2センサが前記一定期間と同等の長さの期間に配置されており、
前記第1センサにより検出された検出情報を受け付ける第1受付部と、
前記第2センサにより検出された検出情報を受け付ける第2受付部と、
前記評価部は、前記第1受付部により受け付けた検出情報と、前記第2受付部により受け付けた検出情報とを比較し、この検出情報の比較結果も加えて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う請求項1から3のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項5】
前記第1センサおよび前記第2センサにより、配置されている環境の振動、湿度、温度、付着水分量、付着塩分量、および応力のうち1つ以上が検出される請求項4に記載の評価装置。
【請求項6】
前記第1センサは、非接触で給電が行われ、内部に保存されている前記検出情報が読み出され、
前記第1受付部は、この読み出された前記検出情報を受け付け、
前記第2センサは、非接触で給電が行われ、内部に保存されている前記検出情報が読み出され、
前記第2受付部は、この読み出された前記検出情報を受け付ける請求項4または5に記載の評価装置。
【請求項7】
気象情報を保有する外部サーバにアクセスし、前記一定期間における前記基準環境の気象情報を取得する第1取得部と、
前記外部サーバにアクセスし、前記一定期間における前記評価環境の気象情報を取得する第2取得部とを備え、
前記評価部は、前記第1取得部により取得した気象情報と、前記第2取得部により取得した気象情報とを加えて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う請求項1から6のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項8】
前記基準環境とは、前記第1電力伝送線の表面、前記第1電力伝送線が配置されている空間または前記第1電力伝送線の内部である請求項1から7のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項9】
第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う第1試験工程と、
前記第1電力伝送線と仕様が同一または異なる第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に前記一定期間と同等の長さの期間に配置されていた前記第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、前記画像試験と同一の試験または前記機械試験と同一の試験を行う第2試験工程と、
前記第1試験工程による試験結果と、前記第2試験工程による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う評価工程とを備える評価方法。
【請求項10】
コンピュータに、
第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う第1試験工程と、
前記第1電力伝送線と仕様が同一または異なる第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に前記一定期間と同等の長さの期間に配置されていた前記第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、前記画像試験と同一の試験または前記機械試験と同一の試験を行う第2試験工程と、
前記第1試験工程による試験結果と、前記第2試験工程による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う評価工程と、を実行させるための評価プログラム。
【請求項11】
試験片を解析して評価を行う評価装置を備える評価システムにおいて、
前記評価装置は、
第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う第1試験部と、
前記第1電力伝送線と仕様が同一または異なる第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に前記一定期間と同等の長さの期間に配置されていた前記第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、前記画像試験と同一の試験または前記機械試験と同一の試験を行う第2試験部と、
前記第1試験部による試験結果と、前記第2試験部による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う評価部とを備える評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備が配置される環境を評価する評価装置、評価方法、評価プログラムおよび評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
設備(例えば、電線やケーブルなど)は、経年老朽化や災害等に伴い、ひび割れや腐食等の劣化や損傷等が発生する。そのため、維持管理のために点検補修等の対策作業が必要である。近年では、これらの設備の劣化等の状態を診断、検出するシステムが開発されている。
【0003】
例えば、引用文献1では、環境要因による絶縁体の表面変化率の第1の時間依存性曲線を導出し、算出された放電による硝酸イオン付着量と環境による硝酸イオン付着量、硫酸イオン付着量および絶縁体の色パラメータに基づいて、放電要因による絶縁体の表面抵抗率の第2の時間依存性曲線を導出し、第2の時間依存性曲線に基づいて、算出された絶縁体の表面抵抗率とあらかじめ定められた短絡閾値とから短絡余寿命を算出することにより、受配電機器の短絡余寿命を診断するシステムが開示されている。
【0004】
ところで、設備が敷設されている場所の環境によって、設備の劣化の度合いが異なる。ここで、対象となる設備が敷設されている環境を、基準となる環境と比較(相対比較)し、その比較した結果に基づいて設備の寿命を診断する手法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、対象となる設備が敷設されている場所のみに基づいた診断を行っており、上述した相対比較による診断を行っていない。
【0007】
本願発明では、相対比較によって設備が敷設されている環境の評価を行うことができる評価装置、評価方法、評価プログラムおよび評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)基準となる第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う第1試験部と、前記第1電力伝送線と仕様が同一または異なる評価対象の第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に前記一定期間と同等の長さの期間に配置されていた前記第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、前記画像試験と同一の試験または前記機械試験と同一の試験を行う第2試験部と、前記第1試験部による試験結果と、前記第2試験部による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う評価部とを備える評価装置。
(2)前記基準環境は、複数の異なる場所に点在しており、前記第1試験部は、複数の異なる場所に点在している前記基準環境に対して、それぞれ一定期間配置されていたそれぞれの前記第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行い、前記評価部は、前記第1試験部による複数の異なる場所に点在している前記基準環境に配置されていたそれぞれの前記第1試験片の試験結果と、前記第2試験部による前記第2試験片の試験結果とをそれぞれ比較し、複数の異なる場所に点在している前記基準環境ごとに、前記評価環境についての相対的な評価を行う(1)に記載の評価装置。
(3)前記評価部による評価結果に基づいて、前記基準環境と前記評価環境とを相対的に比較した情報を生成する生成部を備える(1)または(2)に記載の評価装置。
(4)前記基準環境には、前記第1試験片が配置されている場所に当該基準環境の環境情報を検出する第1センサが前記一定期間と同等の長さの期間に配置されており、前記評価環境には、前記第2試験片が配置されている場所に当該評価環境の環境情報を検出する第2センサが前記一定期間と同等の長さの期間に配置されており、前記第1センサにより検出された検出情報を受け付ける第1受付部と、前記第2センサにより検出された検出情報を受け付ける第2受付部と、前記評価部は、前記第1受付部により受け付けた検出情報と、前記第2受付部により受け付けた検出情報とを比較し、この検出情報の比較結果も加えて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う(1)から(3)のいずれか一項に記載の評価装置。
(5)前記第1センサおよび前記第2センサにより、配置されている環境の振動、湿度、温度、付着水分量、付着塩分量、および応力のうち1つ以上が検出される(4)に記載の評価装置。
(6)前記第1センサは、非接触で給電が行われ、内部に保存されている前記検出情報が読み出され、前記第1受付部は、この読み出された前記検出情報を受け付け、前記第2センサは、非接触で給電が行われ、内部に保存されている前記検出情報が読み出され、前記第2受付部は、この読み出された前記検出情報を受け付ける(4)または(5)に記載の評価装置。
(7)気象情報を保有する外部サーバにアクセスし、前記一定期間における前記基準環境の気象情報を取得する第1取得部と、前記外部サーバにアクセスし、前記一定期間における前記評価環境の気象情報を取得する第2取得部とを備え、前記評価部は、前記第1取得部により取得した気象情報と、前記第2取得部により取得した気象情報とを加えて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う(1)から(6)のいずれか一項に記載の評価装置。
(8)前記基準環境とは、前記第1電力伝送線の表面、前記第1電力伝送線が配置されている空間または前記第1電力伝送線の内部である(1)から(7)のいずれか一項に記載の評価装置。
(9)第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う第1試験工程と、前記第1電力伝送線と仕様が同一または異なる第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に前記一定期間と同等の長さの期間に配置されていた前記第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、前記画像試験と同一の試験または前記機械試験と同一の試験を行う第2試験工程と、前記第1試験工程による試験結果と、前記第2試験工程による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う評価工程とを備える評価方法。
(10)コンピュータに、第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う第1試験工程と、前記第1電力伝送線と仕様が同一または異なる第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に前記一定期間と同等の長さの期間に配置されていた前記第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、前記画像試験と同一の試験または前記機械試験と同一の試験を行う第2試験工程と、前記第1試験工程による試験結果と、前記第2試験工程による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う評価工程と、を実行させるための評価プログラム。
(11)試験片を解析して評価を行う評価装置を備える評価システムにおいて、前記評価装置は、第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う第1試験部と、前記第1電力伝送線と仕様が同一または異なる第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に前記一定期間と同等の長さの期間に配置されていた前記第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、前記画像試験と同一の試験または前記機械試験と同一の試験を行う第2試験部と、前記第1試験部による試験結果と、前記第2試験部による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、前記基準環境に対する前記評価環境についての相対的な評価を行う評価部とを備える評価システム。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、相対比較によって設備が敷設されている環境の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、評価システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、相対比較情報の一例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、相対比較情報の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、センシング情報の一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、相対比較情報の一例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、評価方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、コンピュータの構成を示す図である。
【
図8】
図8は、コンピュータの他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本実施形態に係る設備を管理する評価装置、評価方法、評価プログラムおよび評価システムの構成と動作について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0012】
(評価システムの構成について)
図1は、評価システム100の構成を示す図である。評価システム100は、試験片を解析または分析して評価を行う評価装置1と、外部サーバ2とがネットワークNを介して接続されている。
【0013】
評価装置1は、試験片に対して、少なくとも、構成材料の物性評価または構成材料への付着物の付着量評価を行って環境(具体的には、試験片が配置された環境)の評価を行う装置である。本実施形態にかかる試験片は、設備の代表例である電力伝送線を所定の長さ(例えば、30cm)で切断した電力伝送線を想定するが、これに限定されない。例えば、試験片は、被覆材材料のシート、被覆材材料のフィルム、被覆材材料に劣化促進剤(酸化剤)を混ぜたもの、被覆材量以外のシートやフィルム(劣化しやすい樹脂や金属など)、試験紙(水や紫外線を受けて色が変わるものなど)などでもよい。
【0014】
また、試験片は、電力伝送線が配置されている環境において、現に使用されている電力伝送線よりも環境の影響を受けやすい材料や素材で構成されることが好ましい。このような試験片の場合、試験のために配置(放置)する時間を短縮化することができるからである。
【0015】
また、電力伝送線とは、裸線や絶縁電線である被覆されていない電線と、CV(cross-linked polyethylene insulated vinyl sheath cable)ケーブルを包括する概念である。CVケーブルとは、架橋結合をしたポリエチレンを絶縁材料として用いた電力用ケーブルのことである。
【0016】
評価装置1は、第1試験部11と、第2試験部12と、評価部13と、生成部14とを備える。第1試験部11は、基準となる第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う。なお、電力伝送線に悪影響を与える要素は、主に、水分、塩分、その他(曲げなど)である。なお、基準環境とは、第1電力伝送線の表面、第1電力伝送線が配置されている空間または第1電力伝送線の内部である。
【0017】
基準環境は、例えば、敷設されている電力伝送線が20年で破損し交換が必要になった環境や、敷設されている電力伝送線が30年を経過しても破損せず、交換が必要になっていない環境などである。なお、基準環境に敷設されている電力伝送線は、屋外に敷設されている場合もあれば、屋内に敷設されている場合もある。
【0018】
一定期間とは、試験片を環境に配置して、その試験片の変化(劣化)が生じるのに十分な期間であり、例えば、1年間である。
【0019】
ユーザは、基準環境に一定期間配置した第1試験片を回収する。第1試験部11は、この第1試験片に対して、各種の試験を行う。
【0020】
画像試験とは、目視や顕微鏡(光学顕微鏡および電子顕微鏡など)により行われる試験であり、試験片の色、傷、割れなどの程度を観察する試験である。
【0021】
機械試験とは、試験片に対して構成材料の物性評価をするための試験であり、引張試験、圧縮試験、せん断試験、曲げ試験、衝撃試験、高速変形試験、硬さ試験、疲労試験、高温材料試験、破壊脆性試験、粘弾性試験、動的粘弾性試験などの試験である。
【0022】
引張試験とは、試験片を破断まで引張り、最大荷重、降伏点、伸び率、絞り率等を評価する試験である。圧縮試験とは、円柱状などの試験片を軸方向に圧縮して、強度と変形しやすさ等を評価する試験である。せん断試験とは、試験片に軸心のずれた二つの平行な引張、圧縮応力を与えて強度と変形のしやすさ等を評価する試験である。曲げ試験とは、ダイス、ポンチを組合せて板状の材料を曲げ加工し、変形しやすさを評価する試験である。衝撃試験とは、切欠きを付けた試験片を高速で破壊し、靭性(ねばり強さ)を評価する試験(シャルピー衝撃試験)、および、錘を試験片上に落下させて、吸収エネルギー等を評価する試験(落重試験)である。高速変形試験とは、高速で試験片を引っ張る試験(高速引張試験)により評価する試験である。硬さ試験とは、材料表面の硬さを評価する試験である。硬さ試験は、例えば、ダイヤモンドの小ピラミッドを押込める深さで評価するビッカース硬さ試験、および、硬い鋼球を押込むロックウェル硬さ試験などがある。疲労試験とは、引張、除荷、圧縮の組合せで、繰返し応力に対する耐久性(疲労強さ)を評価する試験である。高温材料試験とは、例えば、電気炉の中で行う引張試験である。破壊脆性試験とは、例えば、き裂を有する材料の破壊じん性(破壊抵抗)を求める試験(CTOD(Crack Tip Opening Displacement)試験)である。粘弾性試験とは、試験片の粘弾性特性を評価する試験である。動的粘弾性試験とは、試験片の動的な粘弾性特性を評価する試験である。
【0023】
第2試験部12は、第1電力伝送線と仕様が同一または異なる評価対象の第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に一定期間と同等の長さの期間に配置されていた第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、画像試験と同一の試験または機械試験と同一の試験を行う。
【0024】
評価環境とは、基準環境と同一でも異なる環境でもよく、例えば、屋外であって、太陽が出ているときは、直射日光が降り降り注ぐような環境や、冬場において降雪するような環境である。
【0025】
ユーザは、評価環境に一定期間配置した第2試験片を回収する。第2試験部12は、この第2試験片に対して、各種の試験を行う。ここで、第1試験片と第2試験片とは同一の構造の試験片である。
【0026】
なお、第1試験部11と第2試験部12とは、同じ機能を有しており、一つの試験部として構成されてもよい。
【0027】
評価部13は、第1試験部11による試験結果と、第2試験部12による試験結果とを比較(相対比較)し、試験結果の比較結果(相対比較結果)に基づいて、基準環境に対する評価環境についての相対的な評価を行う。評価部13は、第1試験部11および第2試験部12により行われた全試験の結果を相対的に示す。
【0028】
生成部14は、評価部13による評価結果に基づいて、基準環境と評価環境とを相対的に比較した情報(以下では、相対比較情報と称する)を生成する。
【0029】
図2は、生成部14により生成された相対比較情報の一例を模式的に示す図である。評価部13は、第1試験片に対する各種試験(例えば、引張試験)の結果を基準にして、第2試験片に対する各種試験(例えば、引張試験)の結果について相対的な評価を行う。
【0030】
図2に示す相対比較情報では、試験の一例である引張試験において、基準環境と評価環境とを比較し、評価環境が基準環境よりも20%悪いことが示されている。なお、
図2では、基準環境に基づいて(基準環境を中心にして)、評価環境を相対的に示しているが、これに限定されず、評価環境に基づいて(評価環境を中心にして)、基準環境を相対的に示してもよい。
【0031】
また、
図2では、引張試験の相対比較情報を示しているが、本実施形態では、複数の試験を行うことを想定している。よって、生成部14は、評価部13により評価された複数の試験についての評価結果に基づいて、複数の相対比較情報を生成する。また、生成部14は、複数の相対比較情報に基づいて、総合的な相対比較情報(評価環境は、基準環境に対して10%悪い、など)を生成する構成でもよい。
【0032】
また、基準環境に敷設されていた電力伝送線が20年で破損して交換が生じた場合には、例えば、生成部14は、「評価環境は、過去に20年で破損した電力伝送線が敷設されていた環境(基準環境)よりも、10%(環境が)悪いので、この評価環境に敷設されている電力伝送線は、20年以内に破損する可能性がある」などの分析結果を生成する構成でもよい。
【0033】
このようにして、評価装置1は、基準環境に配置された第1試験片の試験結果を基準にして、評価環境に配置された第2試験片の試験結果を相対的に比較することによって、相対的に評価環境を評価することができる。また、評価装置1は、電力送電線が敷設されている環境の評価を相対的に行うことにより、評価環境に敷設されている電力伝送線の寿命(耐用期間)を基準環境に敷設されている電力伝送線の寿命(耐用期間)に基づいて相対的に示すことができる。
【0034】
(基準環境が複数の場所に点在している場合について)
基準環境は、複数の異なる場所に点在していてもよい。基準環境は、評価環境と比較される環境であるので、異なる複数の環境であることが好ましい。例えば、複数の環境とは、敷設されている電力伝送線が20年で破損し交換が必要になった環境(以下、第1基準環境と称する)や、敷設されている電力伝送線が30年を経過しても破損せず、交換が必要になっていない環境(以下、第2基準環境と称する)などである。なお、同じ環境に敷設されている電力伝送線の寿命が大きく異なった場合には、敷設されている環境以外の要因(例えば、電気的要因(過電圧や過電流など)や施工不良など)が考えられる。
【0035】
第1試験部11は、複数の異なる場所に点在している基準環境に対して、それぞれ一定期間配置されていたそれぞれの第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う。
【0036】
例えば、第1試験部11は、第1基準環境と第2基準環境とにそれぞれ一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う。
【0037】
評価部13は、第1試験部11による複数の異なる場所に点在している基準環境に配置されていたそれぞれの第1試験片の試験結果と、第2試験部12による第2試験片の試験結果とをそれぞれ比較し、複数の異なる場所に点在している基準環境ごとに、評価環境についての相対的な評価を行う。
【0038】
図3は、生成部14により生成される相対比較情報の一例を模式的に示す図である。評価部13は、第1基準環境に配置されていた第1試験片に対する各種試験(例えば、引張試験)の結果を基準にして、第2試験片に対する各種試験(例えば、引張試験)の結果について相対的な評価を行い、また、第2基準環境に配置されていた第1試験片に対する各種試験(例えば、引張試験)の結果を基準にして、第2試験片に対する各種試験(例えば、引張試験)の結果について相対的な評価を行う。
【0039】
図3に示す相対比較情報では、試験の一例である引張試験において、第1基準環境と評価環境とを比較し、評価環境が基準環境よりも20%良いことが示され(
図3(a))、第2基準環境と評価環境とを比較し、評価環境が基準環境よりも5%良いことが示されている(
図3(b))。
【0040】
また、生成部14は、評価部13により行われた評価結果に基づいて、評価環境がどの基準環境に近い環境であるのかを示す情報を生成する構成でもよい。
図3に示す例では、生成部14は、引張試験について、評価環境が第2基準環境に近いことを示す情報を生成する。
【0041】
このようにして、評価装置1は、複数の異なる基準環境に配置されたそれぞれの第1試験片の試験結果を基準にして、評価環境に配置された第2試験片の試験結果を相対的に比較することによって、相対的に評価環境を評価することができる。
【0042】
(センシング情報を利用する形態について)
基準環境には、第1試験片が配置されている場所に当該基準環境の環境情報を検出する第1センサが一定期間と同等の長さの期間に配置されている。評価環境には、第2試験片が配置されている場所に当該評価環境の環境情報を検出する第2センサが一定期間と同等の長さの期間に配置されている。第1センサと第2センサとは、動作および機能が同一の構成を有するセンサである。
【0043】
評価装置1は、
図1に示すように、第1受付部15と、第2受付部16とを備える。第1受付部15は、第1センサにより検出された検出情報(センシング情報)を受け付ける。第2受付部16は、第2センサにより検出された検出情報(センシング情報)を受け付ける。
【0044】
また、各センサにより検出される情報は様々考えられるが、第1センサおよび第2センサにより、配置されている環境の振動、湿度および温度のうち1つ以上が検出される。
【0045】
また、第1センサは、非接触で給電が行われ、内部に保存されている検出情報が読み出される。第1受付部15は、この読み出された検出情報を受け付ける。また、第2センサは、非接触で給電が行われ、内部に保存されている検出情報が読み出される。第2受付部16は、この読み出された検出情報を受け付ける。
【0046】
例えば、第1センサは、基準環境に敷設されている第1電力伝送線に配置されている。ここで、第1センサは、第1電力伝送線に直接配置されていてもよいし、第1電力伝送線の付近に配置されていてもよい。
【0047】
第1センサが配置されている場所(第1センサが配置されている場所から所定距離離れている場所でもよい)において、第1センサに非接触で給電を行い、第1センサに内蔵されているメモリに保存されている検出情報を読み出す装置(以下、検出情報読出装置と称する)を利用する。具体的には、検出情報読出装置は、所定の電波を出力する。この電波には第1センサのメモリに保存されている検出情報を読み出すための要求信号が含まれているものとする。
【0048】
電波は、第1電力伝送線を伝わって、第1センサのアンテナ部に供給される。第1センサは、供給された電波を電力に変換し、この電力を利用してメモリに保存されている検出情報を読み出し、アンテナ部を利用して電波を出力する。第1センサから出力された電波は、第1電力伝送線を伝わって、検出情報読出装置により受信される。このようにして、検出情報読出装置は、第1センサから検出情報を読み出す。なお、第2センサから検出情報を読み出す手段も上述と同様である。
【0049】
また、検出情報読出装置は、内部電池から供給される電力により駆動されてもよいし、商業用の電力が供給されているコンセントにプラグを差し込んで得られる電力により駆動されてもよいし、光を電力に変換する装置(ソーラーパネル)を利用して発電された電力により駆動されてもよい。あるいは、非接触給電や、エナジーハーベストを用いてもよい。電力伝送線などからの電磁誘導を利用して発電してもよい。
【0050】
ここで、センシング情報について説明する。
図4は、第1センサおよび第2センサにより検出されるセンシング情報I1の一例を模式的に示す図である。
【0051】
センシング情報I1は、
図4に示すように、センサが配置される場所に固有に付されているIDごとに、各種のセンサにより取得された電力伝送線周辺の環境の変化に関する情報(以下、センシング情報と称する場合がある)が時系列で構成されている情報である。
図4には、代表として「ID:0000000a」のセンシング情報I4を模式的に示している。
【0052】
センシング情報とは、電力伝送線の周辺の温度、湿度、電力送電線に付着した水分量、塩分量、電力送電線の曲げ量や圧縮量、あるいは、電力送電線の振動などの情報である。なお、センシング情報は、電力伝送線の周辺の温度、湿度、振動数に限定されず、電力伝送線の周辺の日射量や紫外線量や降水の酸性度などを含めてもよい。
【0053】
電力伝送線の周辺には、温度、湿度および振動、水没などを検出する各種のセンサが配置されている。各種のセンサは、予め定められたタイミングで温度などをセンシングする。予め定められたタイミングとは、例えば、10分ごと、30分ごと、1時間ごと、などである。データのセンシングのタイミングとデータの送信のタイミングは、同時でなくてもよい。また、データは、有線や無線を使ったオンラインで取得することが望ましいが、ロボットや人手を用いたオフラインでデータを取得してもよい。
【0054】
また、センシング情報I1は、各種のセンサによりセンシングされたデータを所定の期間ごとに平均化し、その平均化されたデータで構成されてもよい。例えば、気温の場合、一日ごとに、午前の平均値と午後の平均値で示されてもよいし、最低気温と最高気温で示されてもよい。
【0055】
また、センシング情報I1は、各種のセンサによりセンシングされた全データから構成されてもよい。この構成の場合には、評価装置1は、センシング情報I1に含まれている各データを所定の期間ごとに平均化するなどの処理を行ってもよい。
【0056】
評価部13は、第1受付部15により受け付けた検出情報と、第2受付部16により受け付けた検出情報とを比較し、この検出情報の比較結果も加えて、基準環境に対する評価環境についての相対的な評価を行う。生成部14は、評価部13による評価結果に基づいて、相対比較情報を生成する。相対比較情報は、得点形式、偏差値形式などでもよい。また、基準環境よりも評価環境の条件の優劣に応じて、基準環境に置かれた電力伝送線の保証期間を、その分だけ増減した、評価環境に置かれた電力で送電線用の保証期間を生成してもよい。例えば、基準環境よりも評価環境の平均の外気温が2倍に高い場合には、評価環境での保証期間を半減してもよい。増減に利用する割合などの算出には、一般的な温度による材料の劣化のアルゴリズム(アレニウスの式等)を利用できる。さらに、基準環境よりも評価環境の条件の優劣に応じて、評価環境の電線の敷設期間を、その分だけ増減した、仮想的な敷設期間を演算してもよい。すなわち、基準環境よりも評価環境の平均の外気温が2倍に高い場合には、実際の敷設期間の2倍の期間敷設されたという仮想的な敷設期間を生成してもよい。さらに、その仮想的な敷設期間と、保証期間を比較した値を生成してもよい。
【0057】
図5は、生成部14により生成された相対比較情報の一例を模式的に示す図である。
図5に示す相対比較情報では、試験の一例である引張試験において、基準環境と評価環境とを比較し、評価環境が基準環境よりも20%悪いことが示され(
図5(a))、また、湿度において、基準環境と評価環境とを比較し、評価環境が基準環境よりも20%高いことが示されている(
図5(b))。
【0058】
さらに、基準環境に敷設されていた電力伝送線が20年で破損して交換が生じた場合には、例えば、生成部14は、「評価環境は、過去に20年で破損した電力伝送線が敷設されていた環境(基準環境)よりも、20%湿度が高いので、この評価環境に敷設されている電力伝送線は、20年以内に破損する可能性がある」などの分析結果を生成する構成でもよい。
【0059】
このようにして、評価装置1は、基準環境に配置された第1試験片の試験結果と、評価環境に配置された第2試験片の試験結果を相対的に比較し、また、当該基準環境に配置されたセンサによるセンシング情報と、評価環境に配置されたセンサによるセンシング情報を相対的に比較して、相対的に評価環境を評価することができる。
【0060】
(外部サーバを活用した構成について)
評価装置1は、
図1に示すように、第1取得部17と、第2取得部18とを備える。
【0061】
第1取得部17は、気象情報を保有する外部サーバ2にアクセスし、一定期間における基準環境の気象情報を取得する。第2取得部18は、外部サーバ2にアクセスし、一定期間における評価環境の気象情報を取得する。第1取得部17と第2取得部18とは、動作および機能が同一の構成を有するので、同一の取得部として構成されてもよい。また、外部サーバ2とは、例えば、気象情報などを提供しているWebサイトである。
【0062】
具体的には、第1取得部17は、外部サーバ2にアクセスし、第1試験片が配置されていた場所の住所に基づいて、基準環境の気象情報(例えば、基準環境周辺の過去3年の平均気温の情報、降雨量の情報、寒暖差の情報など)を取得する。
【0063】
また、第2取得部18は、外部サーバ2にアクセスし、第2試験片が配置されていた場所の住所に基づいて、評価環境の気象情報(例えば、評価環境周辺の過去3年の平均気温の情報、降雨量の情報、寒暖差の情報など)を取得する。なお、第1取得部17で取得する気象情報の期間と、第2取得部18で取得する気象情報の期間とは、同一の期間である。また、第1取得部17で取得する気象情報の期間と、第2取得部18で取得する気象情報の期間には、第1試験片および第2試験片が配置していた期間を含むことが好ましい。
【0064】
評価部13は、第1取得部17により取得した気象情報と、第2取得部18により取得した気象情報とを加えて、基準環境に対する評価環境についての相対的な評価を行う。
【0065】
このようにして、評価装置1は、基準環境に配置された第1試験片の試験結果と、評価環境に配置された第2試験片の試験結果を相対的に比較した結果に、基準環境の気象情報と評価環境の気象情報とを比較した結果を加えて、相対的に評価環境を評価することができる。
【0066】
(評価方法について)
つぎに、相対比較によって設備(電力伝送線)が敷設されている環境(評価環境)の評価を行うための評価方法について説明する。評価方法は、試験片に対して、少なくとも、構成材料の物性評価または構成材料への付着物の付着量評価を行って試験片の配置された環境の評価を行う方法である。
図6は、当該評価方法の手順を示すフローチャートである。
【0067】
ステップST1において、第1試験部11は、第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う(第1試験工程)
【0068】
ステップST2において、第2試験部12は、第1電力伝送線と仕様が同一または異なる第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に上述した一定期間と同等の長さの期間に配置されていた第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、上述した画像試験と同一の試験、または、上述した機械試験と同一の試験を行う(第2試験工程)。
【0069】
ステップST3において、評価部13は、第1試験工程による試験結果と、第2試験工程による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、基準環境に対する評価環境についての相対的な評価を行う(評価工程)。
【0070】
このようにして、評価方法は、基準環境に配置された第1試験片の試験結果を基準にして、評価環境に配置された第2試験片の試験結果を相対的に比較することによって、相対的に評価環境を評価することができる。また、評価方法は、電力送電線が敷設されている環境の評価を相対的に行うことにより、評価環境に敷設されている電力伝送線の寿命(耐用期間)を基準環境に敷設されている電力伝送線の寿命(耐用期間)に基づいて相対的に示すことができる。
【0071】
(評価プログラムについて)
つぎに、相対比較によって設備(電力伝送線)が敷設されている環境(評価環境)の評価を行うための評価プログラムについて説明する。評価プログラムは、試験片に対して、少なくとも、構成材料の物性評価または構成材料への付着物の付着量評価を行って試験片の配置された環境の評価を行うプログラムである。評価プログラムは、主に以下の工程で構成されており、コンピュータ500(ハードウェア)によって実行される。
【0072】
工程1:第1電力伝送線が敷設されている環境を基準環境として、当該基準環境に一定期間配置されていた第1試験片に対して、画像試験または機械試験を行う工程
工程2:第1電力伝送線と仕様が同一または異なる第2電力伝送線が敷設されている環境を評価環境として、当該評価環境に工程1の一定期間と同等の長さの期間に配置されていた第1試験片と仕様が同一の第2試験片に対して、工程1の画像試験と同一の試験または工程1の機械試験と同一の試験を行う工程
工程3:第1工程による試験結果と、第2工程による試験結果とを比較し、試験結果の比較結果に基づいて、基準環境に対する評価環境についての相対的な評価を行う工程
【0073】
ここで、コンピュータ500の構成と動作について図を用いて説明する。
図7は、コンピュータ500の構成を示す図である。コンピュータ500は、
図7に示すように、プロセッサ501と、メモリ502と、ストレージ503と、入出力I/F504と、通信I/F505とがバスA上に接続されて構成されており、これらの各構成要素の協働により、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現する。
【0074】
入出力I/F504には、ディスプレイやポインティングデバイス(例えば、マウスやキーボードなど)が接続される。通信I/Fは、所定の通信規格に準拠したインターフェイスであり、有線または無線によりネットワークNを介して、外部サーバ2と通信を行う。通信I/Fは、第1受付部15、第2受付部16、第1取得部17、第2取得部18に相当する。
【0075】
メモリ502は、RAM(Random Access Memory)で構成される。RAMは、揮発メモリまたは不揮発性メモリで構成されている。
【0076】
ストレージ503は、ROM(Read Only Memory)で構成される。ROMは、不揮発性メモリで構成されており、例えば、HDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)により実現される。ストレージ503には、上述した工程1~工程3で実現される評価プログラムなどの各種のプログラムが格納されている。
【0077】
例えば、プロセッサ501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。プロセッサ501は、ストレージ503からオペレーティングシステムや多様な機能を実現する様々なプログラムをメモリ502にロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する演算装置である。
【0078】
具体的には、プロセッサ501は、ユーザの操作を受け付けた場合、ストレージ503に格納されているプログラム(例えば、本発明に係る評価プログラム)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ502に展開し、プログラムを実行する。また、プロセッサ501が評価プログラムを実行することにより、第1試験部11、第2試験部12、評価部13、生成部14の各機能が実現される。
【0079】
ここで、プロセッサ501の構成について説明する。プロセッサ501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、これら以外の各種演算装置、またはこれらの組み合わせにより実現される。
【0080】
また、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現するために、プロセッサ501、メモリ502およびストレージ503などの機能の一部または全部は、専用のハードウェアである処理回路601で構成されてもよい。
図8は、コンピュータ600の処理回路601の構成を示す図である。処理回路601は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0081】
また、プロセッサ501は、単一の構成要素として説明したが、これに限られず、複数の物理的に別体のプロセッサの集合により構成されてもよい。本明細書において、プロセッサ501によって実行されるとして説明されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、単一のプロセッサ501で実行されてもよいし、複数のプロセッサにより分散して実行されてもよい。また、プロセッサ501によって実行されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、複数の仮想プロセッサにより実行されてもよい。
【0082】
このようにして、評価プログラムをコンピュータ500,600で実行することにより、基準環境に配置された第1試験片の試験結果を基準にして、評価環境に配置された第2試験片の試験結果を相対的に比較することによって、相対的に評価環境を評価することができる。また、電力送電線が敷設されている環境の評価を相対的に行うことにより、評価環境に敷設されている電力伝送線の寿命(耐用期間)を基準環境に敷設されている電力伝送線の寿命(耐用期間)に基づいて相対的に示すことができる。
【0083】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 評価装置
2 外部サーバ
11 第1試験部
12 第2試験部
13 評価部
14 生成部
15 第1受付部
16 第2受付部
17 第1取得部
18 第2取得部
100 評価システム