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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】融着機
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
G02B6/255
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020213428
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099584
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】細井 英昭
(72)【発明者】
【氏名】田邉 明夫
(72)【発明者】
【氏名】高岡 隆治
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-272209(JP,A)
【文献】特開昭61-029806(JP,A)
【文献】特開昭61-105513(JP,A)
【文献】特開2020-144301(JP,A)
【文献】実開昭62-016905(JP,U)
【文献】特開昭59-160113(JP,A)
【文献】中国実用新案第211236429(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36- 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ同士を接続する融着機であって、
一対の光ファイバを対向して保持する光ファイバ保持部と、
一対の前記光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向に対向配置される一対の電極と、
一対の前記光ファイバを対向して対置した際に、前記光ファイバ同士の間に移動可能な反射部材と、
一対の前記電極の対向方向をX方向、一対の前記光ファイバの軸方向をZ方向、前記X方向と前記Z方向に垂直な方向をY方向とした際に、一対の前記光ファイバの先端位置を前記Z方向に垂直な方向からそれぞれ撮像可能な第1の撮像装置及び第2の撮像装置と、
前記反射部材によって反射された像を撮像する第3の撮像装置と、
一対の前記光ファイバのうち、少なくとも一方を、前記Z方向に垂直な方向に移動させるとともに、一対の前記光ファイバの対向方向を軸として回転させることで、一対の前記光ファイバ同士を調心することが可能な調心駆動部と、
それぞれの前記光ファイバを、前記光ファイバの軸方向に対して個別に搬送可能な搬送駆動部と、
前記調心駆動部および前記搬送駆動部の動作を制御可能な制御部と、
を具備し、
前記第1の撮像装置及び前記第2の撮像装置によって、一対の前記光ファイバの先端位置を側面から撮像し、前記調心駆動部によって一対の前記光ファイバの前記X方向及び前記Y方向の調心が可能であり、
前記反射部材は、一方の前記光ファイバの端面の像を前記第3の撮像装置に向けて反射する第1反射面と、他方の前記光ファイバの端面の像を前記第3の撮像装置に向けて反射する第2反射面と、を有し、
一方の前記光ファイバの端面の像の前記第1反射面における反射方向と、他方の前記光ファイバの端面の像の前記第2反射面における反射方向とが同一方向であり、
前記第3の撮像装置によって同時にそれぞれの前記光ファイバの端面を撮像し、前記調心駆動部によって一対の前記光ファイバの前記Z方向を回転軸とした回転方向の調心が可能であり、
前記制御部は、前記第3の撮像装置が撮像した前記像に基づいて前記搬送駆動部を動作し、一対の前記光ファイバのそれぞれの撮像画像の焦点位置を個別に制御することを特徴とする融着機。
【請求項2】
前記融着機は蓋部を具備し、
前記第3の撮像装置は、前記蓋部に設けられ、
前記蓋部を閉じると、前記第3の撮像装置が一対の前記光ファイバの先端部近傍を撮像可能な位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の融着機。
【請求項3】
前記反射部材の前記電極との対向面側には、前記反射部材の移動方向に略平行な方向に溝が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の融着機。
【請求項4】
前記反射部材が前記光ファイバの対向位置から退避した状態において、前記反射部材と前記光ファイバとの間には遮蔽部材が配置され、前記反射部材が前記光ファイバの対向位置へ移動する際には、前記遮蔽部材が開くとともに前記反射部材が移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の融着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調心作業性に優れた融着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ同士の接続には、融着機が用いられる。融着機は、一対のホルダに保持された光ファイバ同士を突き合わせて、電極間に配置し、アークによって光ファイバ同士の先端を融着して、光ファイバ同士を接続するものである。
【0003】
光ファイバ同士の融着時には、光ファイバの先端位置を合わせる調心作業が必要である。このため、従来は、光ファイバ同士を対向して配置した状態で、側方(光ファイバの軸方向に対して垂直な方向)から、撮像装置によって光ファイバの先端位置を撮像して調心を行っていた。
【0004】
一方、一般的な単心の光ファイバではなく、いわゆる偏波保持ファイバやマルチコアファイバのように、断面形態に対して周方向の方向性を有する場合、先端位置のみではなく、回転方向の調心も必要である。すなわち、いわゆる光ファイバのX-Y方向の調心のみではなく、光ファイバの軸方向を中心軸とした周方向の調心が必要となる。
【0005】
このような光ファイバの回転調心を行うためには、例えば、光ファイバの対向部の間に反射部材を配置し、光ファイバの端面を撮像装置に反射させて撮像し、端面観察によって回転調心を行う方法がある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-53625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10(a)は、対向して配置される光ファイバ101の間に、反射部材103を配置した状態を示す概念図である。図示した例では、光ファイバ101の下方に、撮像装置105a、105bが配置される。この際、一方の光ファイバ101(図中右側)の端面を反射部材103によって撮像装置105aへ反射させることができる(図中矢印O方向)。このため、撮像装置105aによって、一方の光ファイバ101の端面を撮像することができる。
【0008】
次に、図10(b)に示すように、反射部材103を180度回転させることで、他方の光ファイバ101(図中左側)の端面を反射部材103によって撮像装置105bへ反射させることができる(図中矢印P方向)。このため、撮像装置105bによって、他方の光ファイバ101の端面を撮像することができる。
【0009】
以上により、それぞれの光ファイバ101の端面を確認し、それぞれの所定の回転方向に回転調心することができるため、両者の端面における周方向の位置を合わせることができる。
【0010】
しかし、従来の方法では、個々の光ファイバを別々に撮像する必要があることから時間を要する。また、反射部材103の回転機構が必要であるため、機構が複雑となる。また、それぞれの光ファイバ101の端面を撮像する撮像装置が異なるため、それぞれの撮像装置の取付け精度や機差によって調心精度に影響が出る恐れがある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、調心作業性が良好であり、精度の高い調心が可能な融着機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するために本発明は、光ファイバ同士を接続する融着機であって、一対の光ファイバを対向して保持する光ファイバ保持部と、一対の前記光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向に対向配置される一対の電極と、一対の前記光ファイバを対向して対置した際に、前記光ファイバ同士の間に移動可能な反射部材と、一対の前記電極の対向方向をX方向、一対の前記光ファイバの軸方向をZ方向、前記X方向と前記Z方向に垂直な方向をY方向とした際に、一対の前記光ファイバの先端位置を前記Z方向に垂直な方向からそれぞれ撮像可能な第1の撮像装置及び第2の撮像装置と、前記反射部材によって反射された像を撮像する第3の撮像装置と、一対の前記光ファイバのうち、少なくとも一方を、前記Z方向に垂直な方向に移動させるとともに、一対の前記光ファイバの対向方向を軸として回転させることで、一対の前記光ファイバ同士を調心することが可能な調心駆動部と、それぞれの前記光ファイバを、前記光ファイバの軸方向に対して個別に搬送可能な搬送駆動部と、前記調心駆動部および前記搬送駆動部の動作を制御可能な制御部と、を具備し、前記第1の撮像装置及び前記第2の撮像装置によって、一対の前記光ファイバの先端位置を側面から撮像し、前記調心駆動部によって一対の前記光ファイバの前記X方向及び前記Y方向の調心が可能であり、
前記反射部材は、一方の前記光ファイバの端面の像を前記第3の撮像装置に向けて反射する第1反射面と、他方の前記光ファイバの端面の像を前記第3の撮像装置に向けて反射する第2反射面と、を有し、一方の前記光ファイバの端面の像の前記第1反射面における反射方向と、他方の前記光ファイバの端面の像の前記第2反射面における反射方向とが同一方向であり、前記第3の撮像装置によって同時にそれぞれの前記光ファイバの端面を撮像し、前記調心駆動部によって一対の前記光ファイバの前記Z方向を回転軸とした回転方向の調心が可能であり、前記制御部は、前記第3の撮像装置が撮像した前記像に基づいて前記搬送駆動部を動作し、一対の前記光ファイバのそれぞれの撮像画像の焦点位置を個別に制御することを特徴とする融着機である。
【0013】
前記融着機は蓋部を具備し、前記第3の撮像装置は、前記蓋部に設けられ、前記蓋部を閉じると、前記第3の撮像装置が一対の前記光ファイバの先端部近傍を撮像可能な位置に配置されてもよい。
【0015】
前記反射部材の前記電極との対向面側には、前記反射部材の移動方向に略平行な方向に溝が形成されることが望ましい。
【0016】
前記反射部材が、前記光ファイバの対向位置から退避した状態において、前記反射部材と前記光ファイバとの間には遮蔽部材が配置され、前記反射部材が光ファイバの対向位置へ移動する際には、前記遮蔽部材が開くとともに前記反射部材が移動可能であることが望ましい。
【0017】
本発明によれば、対向する光ファイバの間に、二つの反射面を有する反射部材を配置させて、二つの光ファイバの端面を同時に撮像して確認することができる。このため、短時間に光ファイバの端面を確認することができる。また、反射部材の反転機構が不要であるため、機構が簡易である。また、それぞれの光ファイバを軸方向に対して個別に搬送可能な搬送駆動部を有すれば、搬送駆動部によって光ファイバの軸方向の位置調整が可能であるため、制御部によって、光ファイバの焦点位置を調整することができる。このため、撮像装置側に焦点調整を行うための機構が不要である。
【0018】
特に、第1の撮像装置及び第2の撮像装置によって、X方向及びY方向の調心を行い、第3の撮像装置によって、二つの光ファイバの端面を同時に撮像することで、撮像装置の取付け精度や機差による調心精度への影響を抑制することができる。
【0020】
また、反射部材の電極との対向面側に、反射部材の移動方向に略平行な方向に溝を形成することで、反射部材を小さくすることなく、反射部材と電極との干渉を避けることができる。このため、反射面を十分に確保することができるとともに、反射部材の強度低下を抑制することができる。
【0021】
また、反射部材が光ファイバの対向位置から退避した状態において、反射部材と光ファイバとの間に遮蔽部材を配置することで、アークによって光ファイバ同士を融着する際に生じるガス等によって、反射面が汚れることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、調心作業性が良好であり、精度の高い調心が可能な融着機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】融着機1を示す斜視図。
図2】融着部近傍の拡大概略図。
図3】(a)は光ファイバ21の軸方向から見た図、(b)は電極棒7の軸方向から見た図。
図4】融着機1の構成図。
図5】(a)は、反射部材23の退避状態を示す図、(b)は、反射部材23を光ファイバ21同士の間に移動させた状態を示す図。
図6】(a)は、反射部材23を光ファイバ21同士の間に移動させた状態を示す平面図、(b)は、(a)のF部拡大図。
図7】(a)は、焦点調整を行う工程を示す図、(b)は、回転調心を行う工程を示す図。
図8】(a)は、反射部材23の退避状態を示す図、(b)は、光ファイバ21同士を融着する工程を示す図。
図9】他の実施形態を示す図で、(a)は、平面図、(b)は、側面図。
図10】(a)、(b)は、従来の端面撮像方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、融着機1を示す斜視図である。融着機1は、光ファイバを保持するホルダが載置されるホルダ載置部11と、光ファイバの先端および電極棒7が配置される保持部5と、蓋部3と、融着機1の操作を行う操作部15と、各種情報を表示する表示部17等を具備する。なお、表示部17をタッチパネルとすることで、操作部15と表示部17とを一体化してもよい。
【0025】
光ファイバは保持部5上のV溝に保持される。また、一対の光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向に形成された保持部5のV溝には、一対の電極が対向配置される。蓋部3は回転軸9を中心に回動可能である。蓋部3の裏面には、クランプ13が設けられ、蓋部3を閉じた際に、クランプ13の先端は、保持部5上の光ファイバの位置に対応する部位に位置する。すなわち、蓋部3の裏面に設けられたクランプ13によって、一対の光ファイバを、保持部5において対向して保持することができる。また、クランプ13の間には、後述する撮像装置が内蔵され、蓋部3を閉じると、一対の光ファイバの先端部近傍を撮像可能な位置に配置される。
【0026】
融着機1は、一対の光ファイバを融着によって接続するものである。図示を省略した一対のホルダによって光ファイバを保持し、ホルダをホルダ載置部11に載置する。この状態で蓋部3を閉じ、光ファイバの先端を突き合わせた状態で、一対の電極棒7の間にアークを発生させることで、光ファイバの先端部を溶融して接合することができる。
【0027】
図2は、光ファイバを設置した状態における、融着部近傍の概略図であり、図3(a)は、光ファイバ21の軸方向(図2のZ方向)から見た側面図、図3(b)は、電極棒7の軸方向(図2のX方向)から見た側面図である。なお、図2図3(a)、図3(b)は、反射部材23が退避した状態である。また、説明に不要な構成については、図示を省略する。
【0028】
図2に示すように、以下の説明において、電極棒7の対向方向をX方向とし、X方向に垂直な方向であって、光ファイバ21同士の対向方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に対して垂直な方向(図中上下方向)をY方向とする。また、Z方向を回転軸とした回転方向をR方向とする。
【0029】
前述したように、一対の光ファイバ21同士が互いに対向して配置される。また、一対の電極棒7が光ファイバ21の対向方向とは垂直な方向(X方向と平行な方向)に対向配置される。光ファイバ21の先端位置を合わせて、電極棒7同士の間にアークを発生させることで、光ファイバ同士を融着することができる。
【0030】
撮像装置19a、19b、19cは、光ファイバ21の対向方向に対して略垂直な方向(側面)から一対の光ファイバ21の先端位置の撮像が可能である。また、撮像装置19bと撮像装置19cは、例えば互いに直交する2方向から光ファイバ21の先端位置を撮像することができる。
【0031】
反射部材23と撮像装置19aは、互いに対向するように、光ファイバ21の上下方向(図2のY方向)にそれぞれ配置される。なお、図示した例では、反射部材23が下方(撮像装置19b、19c側)に配置され、撮像装置19aは、上方(図示を省略した蓋部3側)に配置される例を示すが、逆であってもよい。また、撮像装置19aと反射部材23は、互いに対向した位置でなくてもよい。
【0032】
図3(b)に示すように、反射部材23は、反射面27a、27bを有する。反射面27a、27bは、互いに反対方向に向けて配置され、それぞれ、例えばZ方向から入射する光を、90度の方向(Y方向上方)に向けて反射させることが可能である。反射部材23は、一対の光ファイバ21を対向して対置した際に、駆動部によって、光ファイバ21同士の間に移動可能である(図中Y方向)。撮像装置19aは、反射部材23によって反射された像を撮像可能である。
【0033】
反射部材23が退避した状態では、反射部材23は、遮蔽部材25によって覆われる。すなわち、遮蔽部材25は、反射部材23が退避状態において、反射部材23と光ファイバ21(融着部)側との間を遮蔽するものである。遮蔽部材25は、反射部材23の上下動作に伴い開閉可能である。なお、反射部材23及び遮蔽部材25等の動作については詳細を後述する。
【0034】
次に、融着機1の構成について説明する。図4に示すように、融着機1は、撮像装置19(撮像装置19a、19b、19cを総称して撮像装置19とする)、調心駆動部31、搬送駆動部33及び、反射部材駆動部35と、これらを制御する制御部30、操作部15、表示部17等からなる。なお、本実施形態の説明に不要な放電制御等の構成は省略する。
【0035】
操作部15は、制御部30が行う各種制御内容及び設定条件等を入力することができる。表示部17は、撮像装置19で撮像した画像や、融着条件等の情報を表示することができる。調心駆動部31は、図2に示したX、Y、R方向に光ファイバ21をそれぞれ動かすことができる。すなわち、調心駆動部31は、調心駆動部31は、一対の光ファイバのうち、少なくとも一方を、X方向及びY方向に移動させて、一対の光ファイバ同士の軸心位置を調心することができる。また、さらに、調心駆動部31は、一対の光ファイバのうち、少なくとも一方を、一対の光ファイバの対向方向を軸として回転させることで、一対の光ファイバ同士を調心することができる。また、搬送駆動部33は、それぞれの光ファイバ21を、光ファイバ21の軸方向(Z方向)に対して個別に搬送可能である。反射部材駆動部35は、反射部材23を上下方向(Y方向)に対して移動可能である。なお、各駆動部は、例えばモータ等によって動作する。
【0036】
次に、光ファイバ21の調心方法について説明する。光ファイバ21の先端位置(X-Y方向)の調心作業は、従来の方法で行うことができる。例えば、撮像装置19b、19cによって、各方向から光ファイバ21の先端位置を撮像して表示部17に表示し、両者の位置が合うように、操作部15を用いて調心駆動部31を動作させ(ホルダ載置部11の位置や向きを動作させ)、互いのX-Y位置を合わせることで光ファイバ21のX方向及びY方向の調心が可能である。
【0037】
単心の光ファイバ同士の接続であれば、X-Y調心のみで調心作業が完了する。一方、断面におけるコア等の配置に対して周方向に対する方向性があるようなマルチコアファイバや偏波保持ファイバ等の調心においては、光ファイバ21のX-Y方向の調心のみではなく、回転方向Rの調心も必要となる。このため、本発明では、光ファイバ21の端面を観察可能な反射部材23と撮像装置19aが用いられる。
【0038】
以下、回転方向Rの調心方法について説明する。なお、以下の各部の動作の制御は、操作部15からの入力又は自動で、制御部30によって行われる。図5(a)は、反射部材23が退避状態を示す図である。また、光ファイバ21同士の間には、反射部材23が挿入可能な程度に隙間が形成される。この隙間は、搬送駆動部33によって光ファイバ21を軸方向に移動させることで形成することができる。
【0039】
前述したように、反射部材23が光ファイバ21の対向位置から退避した状態において、反射部材23の上方(反射部材23と光ファイバ21との間)には遮蔽部材25が配置される。一対の遮蔽部材25は、例えば弾性部材によって、互いに先端を突き合せた状態で閉じた状態を維持する。遮蔽部材25は、それぞれ回転部29によって回動することで開閉可能である。なお、遮蔽部材25の下部において、先端に行くにつれて(回転部29から離れるにつれて)徐々に互いに距離が狭くなるようにテーパ形状が形成される。また、反射部材23の下部にも、下方に行くにつれて(反射部材23から遠ざかるにつれて)徐々に幅が広くなるテーパ形状が形成される。
【0040】
図5(b)に示すように、反射部材23を光ファイバ21同士の間に向けて上昇させると(図中矢印A)、反射部材23の下部のテーパ部が、遮蔽部材25のテーパ部に接触し、遮蔽部材25が押し広げられる(図中矢印B)。すなわち、遮蔽部材25は、回転部29を回転軸として互いに逆方向に回転して、上部が開くため、上昇する反射部材23と干渉することがない。
【0041】
図5(b)に示すように、反射部材23が光ファイバ21の対向部の間まで上昇すると、反射部材23の上昇動作が停止する。このように、反射部材23が光ファイバ21の対向位置へ移動する際には、遮蔽部材25が開くとともに反射部材23が移動可能となる。なお、遮蔽部材25の開閉機構はこの例には限定されず、反射部材23の上昇時に開き、退避状態で閉じることができれば、いかなる機構であってもよい。
【0042】
図6(a)は、図5(b)の状態を、撮像装置19a側から見た図であり、図6(b)は、図6(a)のC部拡大図である。前述したように、反射部材23は、それぞれの光ファイバ21の方向に、反射面27a、27bを有する。また、反射部材23の電極棒7との対向面側には、反射部材23の移動方向に略平行な方向に溝24が形成される。溝24は、電極棒7の先端位置に対応する部位に形成される。
【0043】
電極棒7は、例えば間隔を変化させるための駆動機構を有さず、融着に適した間隔で配置される。反射部材23を光ファイバ21同士の間に移動させる際には、反射部材23と電極棒7との干渉を避ける必要があるが、反射部材23を高い加工精度で設計することは困難である場合がある。このため、反射部材23は、電極棒7との干渉しない程度のサイズとする必要がある。
【0044】
一方、反射部材23の幅をあまり狭くすると、反射部材23の強度低下や、反射面27a、27bの反射面積が減少する。このため、電極棒7との干渉を避けつつ、できるだけ反射部材23の厚みを確保し、反射面27a、27bを広くとることが望ましい。そこで、図6(b)に示す様に、反射部材23のうち、電極棒7と対向する位置に干渉防止用の溝24を形成することで、電極棒7と反射部材23との干渉を避けつつ、反射部材23のサイズを十分に確保することができる。なお、反射部材23のサイズを十分確保した状態で、電極棒7との干渉の恐れがない場合には、溝24を設けなくともよい。
【0045】
次に、図7(a)に示すように、反射部材23によって得られる光ファイバ21の像を撮像装置19aによって撮像する。なお、この際、光ファイバ21の逆の端面又は側面から、光を照射することで、端面におけるコア等の配置を明確に撮像することができる。
【0046】
前述したように、反射部材23は、一方の光ファイバ21の端面の像を撮像装置19aに向けて反射する第1の反射面27aと(図中矢印E)、他方の光ファイバ21の端面の像を撮像装置19aに向けて反射する第2の反射面27bとを有する(図中矢印D)。このため、一方の光ファイバ21の端面と他方の光ファイバ21の端面とを、撮像装置19aによって同時に撮像することが可能である。
【0047】
なお、本実施形態では、一方の光ファイバ21の端面の像の反射面27aにおける反射方向と、他方の光ファイバ21の端面の像の反射面27bにおける反射方向とが同一方向である。このため、一つの撮像装置19aによって同時にそれぞれの光ファイバ21の端面を撮像可能である。この際、撮像装置19aの撮像可能範囲としては、光ファイバ21の外径の2倍以上(光ファイバ21の端面から撮像装置19aまでの像の広がりも考慮して、一対の光ファイバ21の端面を並べて撮像可能な範囲)とすることができる。
【0048】
これに対し、一方の光ファイバ21の端面の像の反射面27aにおける反射方向と、他方の光ファイバ21の端面の像の反射面27bにおける反射方向とを別方向として、複数の撮像装置19aによって、それぞれの光ファイバ21の端面を同時に撮像可能としてもよい。この場合には、それぞれの撮像装置19aの撮像範囲を小さくすることができる。すなわち、反射部材23によって反射された像を撮像可能な一つ又は複数の撮像装置19aを有すればよい。
【0049】
ここで、各光ファイバ21の端面の焦点調整は、それぞれの光ファイバ21を軸方向に移動させることで行われる(図中矢印F、G)。前述したように、光ファイバ21の融着時には、光ファイバ21同士の突合せや、融着後のスクリーニングなどを行うため、光ファイバ21を軸方向へ移動させるための搬送駆動部33が設けられる。このため、本実施形態では、各端面の焦点調整を、この搬送駆動部33による光ファイバ21の動作によって行うことができる。
【0050】
より詳細には、制御部30によって、自動又は手動で、それぞれの光ファイバ21に対応する搬送駆動部33を動作させることで、それぞれの光ファイバ21の撮像画像の焦点調整が可能である。撮像装置19aで焦点調整を行う場合、それぞれの光ファイバ21の端面画像の焦点が同時に合うように、例えば撮像装置19a自体の位置や図示しないレンズの位置を調整する必要があるが、制御部30による搬送駆動部33の制御によって、撮像装置19aにおける撮像画像の焦点位置を制御することで、撮像装置19aによって、それぞれの光ファイバ21の端面画像を同時にリアルタイムで取得可能であるため、それぞれの光ファイバ21に対して、同時にかつ個別に焦点調整を行うことができる。
【0051】
図7(b)に示すように、焦点調整が終了後、得られた画像によって回転方向Rの調心を行う(図中矢印H、I方向)。前述したように、撮像装置19aによって、それぞれの光ファイバ21の端面画像を同時にリアルタイムで取得可能である。このため、制御部30は、自動又は手動で、それぞれの光ファイバ21に対応する調心駆動部31を、個別に動作を制御することで、それぞれの光ファイバ21の回転方向Rの調心を行うことができる。さらに、それぞれの光ファイバ21の回転方向Rの調心を同時に行うことも可能である。また、制御部30は、一又は複数の撮像装置が撮像した像に基づいて、調心駆動部31による光ファイバ21の回転量を自動で制御することもできる。
【0052】
回転方向Rの調心が完了した後、図8(a)に示すように、反射部材23を下方に下げる(図中矢印J)。すなわち、反射部材23を退避状態とする。この際、反射部材23の退避動作に伴い、図示を省略した弾性部材等によって遮蔽部材25が閉じられる。
【0053】
調心作業が完了した後、図8(b)に示すように、搬送駆動部33を動作させることで、光ファイバ21同士の先端部を突き合わせる。その後、所定の条件によって電極棒7間にアークを発生させて融着作業が行われる。以上により、光ファイバ21同士を調心して接続することができる。
【0054】
以上、本実施の形態によれば、一対の光ファイバ21の端面を同時に撮像可能であるため、調心作業が容易である。また、それぞれの端面の画像を同一方向に反射させることで、同一の撮像装置19aによって一対の光ファイバ21の端面を撮像することができる。また、一つの撮像装置19aを用いることで、機差等の影響を受けずに、精度よく光ファイバ21の端面を撮像し調心することができる。
【0055】
また、光ファイバ21の端面の焦点調整を、光ファイバ21の軸方向の動作で行うことで、撮像装置19aの焦点調整を行うための機構を用いずに、光ファイバ21の軸方向の移動を個別に行うことができる。このため、それぞれの光ファイバ21の焦点調整を同時に行うことができる。
【0056】
また、反射部材23の側面に溝24を形成することで、電極棒7と反射部材23との干渉を抑制することができる。この際、反射部材23全体の幅を狭くする必要がないため、反射部材23の強度低下を抑制し、反射面27a、27bの面積を小さくする必要がない。
【0057】
また、反射部材23の退避状態において、反射部材23と光ファイバ21との間に遮蔽部材25を配置することで、光ファイバ21を融着する際に生じる熱から反射部材23を保護することができるとともに、ガスや異物が反射部材23の反射面27a、27bに付着することを抑制することができる。
【0058】
次に、第2の実施形態について説明する。図9(a)は、第2の実施形態にかかる光ファイバ21の先端近傍のレイアウトを示す平面図(Y方向矢視図)、図9(b)は、電極棒7側から見た側面図(X方向矢視図)である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を奏する構成については、図1図8と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図9(a)、図9(b)においては、電極棒7の図示を省略する。
【0059】
第2の実施形態は、第1の実施形態と略同様の構成であるが、光ファイバ21の端面の撮像を行う撮像装置として、側面観察用の撮像装置19b、19cを用いる点で異なる。図示した例では、一方の光ファイバ21の端面を反射面27aで撮像装置19cへ反射させ、他方の光ファイバ21の端面を反射面27bで撮像装置19bへ反射させる。なお、反射面27a、27bが、下方(図9(b)の下方であって、反射部材23の退避方向)に向けて像を反射させることができるため、撮像装置を光ファイバ21の上方(蓋部等)に配置する必要がない。
【0060】
このように、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、撮像装置19b、19cで撮像された画像中の光ファイバ21の端面の位置を把握することで、撮像装置19b、19cによる端面観察のみで、X-Y方向の調心を行うこともできる。すなわち、撮像された画像中の光ファイバ21の端面の位置から、X-Y方向の位置と回転方向Rの方向を知ることができるため、全ての調心作業を端面観察によって行うこともできる。
【0061】
また、光ファイバ21の端面観察においては、光ファイバ21の端面の状態を把握可能としてもよい。例えば、端面の画像から、端面の一部に掛けやクラックなどがないかを把握することができる。特に、端面の各部における焦点深度や真円度を把握することで、切断面が斜めになっている場合や、凹み形状になっている場合など、光ファイバ21の端面形状、または光ファイバ21の端面形状の異常を把握することができる。さらに、干渉顕微鏡等の撮像装置を用いて、端面の干渉縞を把握することで、切断面の形態を画像化することもできる。
【0062】
なお、回転方向の調心を行う際には、機差等の影響を低減するため、一つの撮像装置で一対の光ファイバ21の端面を同時に撮像することが望ましい。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………融着機
3………蓋部
5………保持部
7………電極棒
9………回転軸
11………ホルダ載置部
13………クランプ
15………操作部
17………表示部
19、19a、19b、19c………撮像装置
21………光ファイバ
23………反射部材
24………溝
25………遮蔽部材
27a、27b………反射面
29………回転部
30………制御部
31………調心駆動部
33………搬送駆動部
35………反射部材駆動部
101………光ファイバ
103………反射部材
105a、105b………撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10