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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】リフロー対応ダイシングテープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231222BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231222BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20231222BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J7/20
C09J133/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020537799
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047232
(87)【国際公開番号】W WO2020116448
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2018226963
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 匠
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-027960(JP,A)
【文献】特開2012-033636(JP,A)
【文献】特開2010-129701(JP,A)
【文献】特開2011-054953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 7/20
C09J 133/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と該基材層上に設けられた放射線硬化型粘着剤層を備え、
前記放射線硬化型粘着剤層にシリコンウエハを貼りあわせた後に、放射線照射してから210℃にて10分の加熱処理をし、該加熱処理後に前記放射線硬化型粘着剤層から前記シリコンウエハを剥離させた際における前記シリコンウエハの貼り合わせ面をX線光電子分光法にて測定した際の炭素量が、30mol%以下であり、
前記放射線硬化型粘着剤層が光重合開始剤を含み、前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物であるリフロー対応ダイシングテープ。
【請求項2】
前記放射線硬化型粘着剤層が、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、該エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合体並びに/またはカチオン及び/若しくはアニオンと反応する環状構造を有する化合物を含む請求項1に記載のリフロー対応ダイシングテープ。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合体が、(メタ)アクリル酸及び/または(メタ)アクリレートを含むモノマーの重合体である(メタ)アクリル系重合体を含む請求項2に記載のリフロー対応ダイシングテープ。
【請求項4】
前記光重合開始剤の分子量が、400以上である請求項乃至のいずれか1項に記載のリフロー対応ダイシングテープ。
【請求項5】
前記放射線硬化型粘着剤層が、紫外線硬化型粘着剤層である請求項1乃至のいずれか1項に記載のリフロー対応ダイシングテープ。
【請求項6】
前記放射線硬化型粘着剤層の、波長350nmの放射線を1000mJ/cm照射してから210℃にて10分の加熱処理をした後の、JIS Z0237に準拠して測定した粘着力が、0.3N/25mm幅以上2.0N/25mm幅以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載のリフロー対応ダイシングテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程に使用するリフロー対応ダイシングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の構造において性能向上に伴い、チップ及び電気的接続点の高密度化が進んでいる。以前は電気的接続にはワイヤーが用いられていたが、接続信頼性向上のために半田による接続が進んでおり、接続工程内に半田ボールを溶かす工程(リフロー工程)が用いられるようになっている。リフロー工程においては、チップに対して200℃を超える高温がかけられるため、支持体となるダイシングテープにも、200℃を超える高温に耐えうる耐熱性が必要とされる。
【0003】
200℃を超える高温にも対応できるダイシングテープとして、例えば、特許文献1では、エネルギー線を照射して架橋反応を誘導することによって硬化された耐熱性を有する粘着剤層を用いたテープが開示されている。特許文献1のように、リフロー工程前にエネルギー線を照射して粘着剤層の樹脂成分を架橋反応させることで、被着体であるシリコンウエハの貼り合わせ面に、糊(粘着剤)が残ってしまう、いわゆる糊残りが改善できる。
【0004】
しかしながら、エネルギー線を照射して粘着剤層の樹脂成分を架橋反応させると、粘着剤層に含まれる光重合開始剤が分裂して低分子化し、アウトガスの原因となる。エネルギー線照射後にリフロー工程を経てシリコンウエハを個片化するダイシング工程を実施すると、粘着剤から発生したアウトガスによる浮きのため、チップを固定できずにダイシングテープから剥がれてしまうチップ飛びという不良が発生することがある。
【0005】
上記から、リフロー工程を経たテープは、ダイシング工程の前にシリコンウエハから剥離されて、別のダイシング工程用テープがシリコンウエハに貼り合わされることも行われている。このようなテープの貼り替えは、スループットの悪化を招き、廃棄物も増えることから改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2009-538389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点に基づきなされたものであり、本発明の目的は、放射線硬化型粘着剤層からのアウトガスの発生を抑制して優れた耐汚染性を有するリフロー対応ダイシング用テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく、耐熱性粘着テープの物性、材料等について鋭意研究した。その結果、放射線硬化型粘着剤を含むテープであって、放射線硬化型粘着剤層に被着体であるシリコンウエハを貼りあわせた後に、放射線照射し、210℃、10分の加熱処理後に、前記シリコンウエハを前記放射線硬化型粘着剤層から剥離させた際における前記シリコンウエハの貼り合わせ面をX線光電子分光法にて測定した際の炭素量が、30mol%以下である放射線硬化型粘着剤層であれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]基材層と該基材層上に設けられた放射線硬化型粘着剤層を備え、
前記放射線硬化型粘着剤層にシリコンウエハを貼りあわせた後に、放射線照射してから210℃にて10分の加熱処理をし、該加熱処理後に前記放射線硬化型粘着剤層から前記シリコンウエハを剥離させた際における前記シリコンウエハの貼り合わせ面をX線光電子分光法にて測定した際の炭素量が、30mol%以下であるリフロー対応ダイシングテープ。
[2]前記放射線硬化型粘着剤層が、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、該エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合体並びに/またはカチオン及び/若しくはアニオンと反応する環状構造を有する化合物と、光重合開始剤と、を含む[1]に記載のリフロー対応ダイシングテープ。
[3]前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合体が、(メタ)アクリル酸及び/または(メタ)アクリレートを含むモノマーの重合体である(メタ)アクリル系重合体を含む[2]に記載のリフロー対応ダイシングテープ。
[4]前記光重合開始剤が、オキシムエステル化合物である[2]または[3]に記載のリフロー対応ダイシングテープ。
[5]前記光重合開始剤の分子量が、400以上である[2]乃至[4]のいずれか1つに記載のリフロー対応ダイシングテープ。
[6]前記放射線硬化型粘着剤層が、紫外線硬化型粘着剤層である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のリフロー対応ダイシングテープ。
[7]前記放射線硬化型粘着剤層の、波長350nmの放射線を1000mJ/cm照射してから210℃にて10分の加熱処理をした後の、JIS Z0237に準拠して測定した粘着力が、0.3N/25mm幅以上2.0N/25mm幅以下である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のリフロー対応ダイシングテープ。
【0010】
本発明では、リフロー工程前にシリコンウエハに貼り合わされているダイシングテープの放射線硬化型粘着剤層に、予め放射線を照射することにより、該放射線硬化型粘着剤層を構成する主成分の分子量は架橋反応等により上昇する。ダイシングテープ中に低分子成分が含まれていても、放射線硬化型粘着剤層を構成する主成分の分子量上昇の際に、該低分子成分は主骨格に取り込まれて揮発成分を減らすことができる。従って、本発明のリフロー対応ダイシングテープでは、アウトガス成分を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、リフロー工程後にてシリコンウエハをダイシングテープから剥離する際に、放射線硬化型粘着剤層の粘着剤がシリコンウエハに残存する、いわゆる糊残りを防止できつつ、放射線硬化型粘着剤層からのアウトガスの発生によるシリコンウエハのダイシングテープからの浮きも防止できることから、チップ飛びを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のリフロー対応ダイシングテープについて、以下に説明する。本発明のリフロー対応ダイシングテープは、基材層と該基材層上に設けられた放射線硬化型粘着剤層を備える。放射線硬化型粘着剤層は、基材層上に放射線硬化型粘着剤を塗工することで形成することができる。
【0013】
本発明のリフロー対応ダイシングテープの放射線硬化型粘着剤層は、波長350nmの放射線を1000mJ/cm照射してから210℃にて10分の加熱処理をした後の、JIS Z0237に準拠して測定した粘着力は、特に限定されないが、その下限値は、ダイシング工程中にチップを固定できずチップが飛んでしまういわゆるチップ飛びや、搬送を含む工程中で剥離することを確実に防止する点から、0.3N/25mm幅以上が好ましく、0.5N/25mm幅以上が特に好ましい。また、上記粘着力の上限値は、リフロー対応ダイシングテープの剥離の際に被着体上に放射線硬化型粘着剤層の一部が付着する、いわゆる糊残りを確実に防止する点から、2.0N/25mm以下が好ましく、1.5N/25mm幅以下が特に好ましい。
【0014】
基材層の材料としては、特に限定されない。しかし、基材層は放射線硬化型粘着剤層と共に加熱されることになるから、210℃以上まで加熱されることになる。従って、基材層は、上記加熱条件に対して十分な耐熱性を備えている必要がある。上記から、好ましい基材層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエーテルサルフオン(PES)フィルム、ポリエーテルイミド(PEI)フィルム、ポリサルフオン(PSF)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリアリレート(PAR)フィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、又は液晶ポリマー(PCP)フィルム等が挙げられる。このうち、ダイシング工程時のチャック性の点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルムが、特に好ましい。
【0015】
基材層の厚みは、使用条件等により適宜選択可能であり、例えば、5~250μmの範囲内であることが好ましい。基材層の厚みが上記数値範囲内であることにより、リフロー対応ダイシングテープの折れや裂けを防止して、優れたハンドリング性を得ることができる。
【0016】
放射線硬化型粘着剤層は、放射線硬化型粘着剤層に被着体を貼りあわせた後に、放射線照射してから210℃にて10分の加熱処理をし、該加熱処理後に前記放射線硬化型粘着剤層から前記被着体を剥離させた際における前記被着体の貼り合わせ面をX線光電子分光法にて測定した際の炭素量が、30mol%以下となっている。放射線照射の条件としては、波長350nmの放射線を1000mJ/cm照射することが挙げられる。
【0017】
放射線硬化型粘着剤層は、放射線照射してから210℃にて10分の加熱処理をしても被着体の剥離面の炭素量は30mol%以下に低減されている。従って、放射線硬化型粘着剤層の粘着剤が被着体に残存することが防止され、被着体のダイシングテープからの浮きも防止されている。被着体の剥離面の炭素量は30mol%以下であれば、特に限定されないが、25mol%以下が特に好ましい。
【0018】
なお、上記被着体の剥離面の炭素量とは、被着体の剥離面に付着している成分全量中における炭素の割合を意味する。
【0019】
放射線硬化型粘着剤層は、粘着成分として粘着剤を含む。粘着剤は、主成分としてエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合体並びに/またはカチオン及び/若しくはアニオンと反応する環状構造を有する化合物と、光重合開始剤と、を含む。
【0020】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物
粘着剤の主成分として配合されるエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、特に限定されず、従来の感光性組成物に配合されているものを用いることができる。エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等の不飽和脂肪族炭化水素;(メタ)アクリル酸、α―クロル(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、桂皮酸、ソルビン酸、メサコン酸等のエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸;コハク酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレートまたは1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和多塩基酸;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、下記化合物No.A1~No.A4、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリ[(メタ)アクリロイルエチル]イソシアヌレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリル酸とアルコール又はフェノールとのエステルである(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
また、他のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウム等の(メタ)アクリル酸の金属塩;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸-無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルハイミック酸等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド、メチレンビス-(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、α-クロロ(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸とアミン化合物とのアミド;アクロレイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン、シアン化アリル等の不飽和ニトリル;スチレン、4-メチルスチレン、4-エチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸、ビニルフェノール、ビニルスルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルベンジルグリシジルエーテル等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン、アリルアミン、N-ビニルピロリドン、ビニルピペリジン等の不飽和アミン化合物;アリルアルコール、クロチルアルコール等のビニルアルコール;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のビニルエーテル;マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類;インデン、1-メチルインデン等のインデン類;1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ジビニルスクシナート、ジアリルフタラート、トリアリルホスファート、トリアリルイソシアヌラート、ビニルチオエーテル、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、水酸基含有ビニルモノマー及びポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマー及びポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。
【0026】
また、他のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させて、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ化合物を挙げることができる。
【0027】
多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ化合物の調製に使用できるエポキシ化合物としては、例えば、上記したカチオン及び/またはアニオンと反応する環状構造を有する化合物であるエポキシ化合物を挙げることができる。また、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ化合物の調製に使用できる不飽和モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート等が挙げられる。
【0028】
多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ化合物の調製に使用できる多塩基酸としては、ビフェニルテトラカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、ビフタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2,2’-3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸、トリアルキルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、トリアルキルテトラヒドロフタル酸-マレイン酸付加物、ドデセニルコハク酸、メチルハイミック酸等が挙げられる。また、多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート等が挙げられる。
【0029】
多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ化合物を調製する際における、エポキシ化合物、不飽和モノカルボン酸、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の反応モル比は、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基1個に対し、上記不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が0.1~1.0個で付加させた構造を有するエポキシ付加物において、該エポキシ付加物の水酸基1個に対し、上記多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が0.1~1.0個となる比率となるようにするのが好ましい。エポキシ化合物、不飽和モノカルボン酸、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の反応は、常法に従って行なうことができる。
【0030】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合体
粘着剤の主成分として配合されるエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合体としては、例えば、上記したエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合体や共重合体を挙げることができる。このうち、分子量の制御が容易で粘着力の調整が行いやすいという観点から、(メタ)アクリル酸及び/または上記した(メタ)アクリレートを含むモノマーの重合体である(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
【0031】
カチオン及び/またはアニオンと反応する環状構造を有する化合物
粘着剤の主成分として配合されるカチオン及び/またはアニオンと反応する環状構造を有する化合物としては、例えば、エポキシ化合物、グリシジルエーテル類等の酸素原子を有する3員環構造を有する化合物が挙げられる。エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノール型エポキシ化合物、多官能エポキシ基を有するポリフェニルメタン型エポキシ化合物等のエポキシ化合物、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ化合物;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルP-アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン類;1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ化合物;ジシクロペンタジエンジオキシド等のジオキシド化合物;ナフタレン型エポキシ化合物;トリフェニルメタン型エポキシ化合物;ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0032】
グリシジルエーテル類としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,1,1-トリ(グリシジルオキシメチル)プロパン、1,1,1-トリ(グリシジルオキシメチル)エタン、1,1,1-トリ(グリシジルオキシメチル)メタン、1,1,1,1-テトラ(グリシジルオキシメチル)メタン等が挙げられる。
【0033】
また、粘着剤の主成分として配合されるカチオン及び/またはアニオンと反応する環状構造を有する化合物としては、例えば、オキセタン等の酸素原子を有する4員環構造を有する化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
光重合開始剤
光重合開始剤は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に活性エネルギー線を照射することによりエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を光硬化させる際に、光硬化を促進させる効果を発揮する。
【0035】
光重合開始剤としては、公知の重合開始剤を適宜選択でき、例えば、α-ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアルキルフェノン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルシクロヘキサン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、1-ベンジル-1-ジメチルアミノ-1-(4'-モルホリノベンゾイル)プロパン、2-モルホリル-2-(4'-メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1-クロル-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2-ヒドロキシ-2-ベンゾイルプロパン、2-ヒドロキシ-2-(4'-イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4-ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4-フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7-ビス(9'-アクリジニル)ヘプタン、9-n-ブチル-3,6-ビス(2'-モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,2-ビス(2-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1-2’-ビイミダゾール、4、4-アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。このうち、α-ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアルキルフェノンが好ましい。
【0036】
α-アミノアルキルフェノンとしては、例えば、下記式の化合物、
【化5】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素数2~12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3~6員環の複素環を形成していてもよく、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1~4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素数2~12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3~6員環の環状アルカンを形成してもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1~8のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1~8のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基、-OR14、-O-CO-O-R15、-NR1617、-SR18を表し、かつ、R、R10、R11、R12及びR13のうち少なくとも1つは、ニトロ基、-OR14、-O-CO-O-R15、-NR1617、-SR18の群より選ばれる基であり、
14、R15、R16、R17及びR18は、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1~4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素数2~12のアルケニル基;炭素原子数2~12の複素環含有基、トリアルキルシリル基又はトリアリールシリル基を表し、 上記アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン鎖は、-O-、-S-、-NR19-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-CO-O-で置き換えられていてもよく、上記アルキル基の末端は不飽和結合であってもよく、
19は、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素数2~12のアルケニル基を表す。)
【0037】
下記式の化合物
【化6】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素原子数2~12のアルケニル基を表し、RとRは、それぞれ連結して3~6員環の複素環を形成していてもよく、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1~4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素原子数2~12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3~6員環の環状アルカンを形成してもよく、
、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1~8のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
Xは、単結合又はn価の有機基、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、
nは、2~6の数であり、n個の基は互いに同じである。)
【0038】
下記式の化合物が挙げられる。
【化7】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素原子数2~12のアルケニル基を表し、RとRは、それぞれ連結して3~6員環の複素環を形成していてもよく、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1~4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素原子数2~12のアルケニル基;RとRは、連結して3~6員環の環状アルカンを形成してもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1~8のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子または炭素原子数1~4のアルキル基を表し、nが2以上の場合は同じか又は異なり、
nは、1~12の数を表し、
Xは、二価の有機基であり、
Yは、下記式(I-1)又は(I-2)で表される構造であり、
上記アルキル基及びアリールアルキル基、ならびにアルキレン基中のメチレン鎖は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-CO-O-で置き換えられていてもよい。)
【化8】
(式中、R1’及びR2’は、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素原子数2~12のアルケニル基を表し、R1’とR2’は、それぞれ連結して3~6員環の複素環を形成していてもよく、
3’及びR4’は、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1~12のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1~4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基;炭素原子数2~12のアルケニル基を表し、R3’とR4’は、連結して3~6員環の環状アルカンを形成してもよく、
5’、R6’、R7’及びR8’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1~8のアルキル基;炭素原子数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
上記アルキル基及びアリールアルキル基、ならびにアルキレン基中のメチレン鎖は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-CO-O-で置き換えられていてもよい。)
【化9】
(式中、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
14、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、R22、OR23、SR24、NR2526、COR27、SOR28、SO29又はCONR3031を表し、R16及びR18は、互いに結合して環を形成していてもよく、
22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30及びR31は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
X2は、単結合又はCOを表し、
X3は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR3233、CO、NR34又はPR35を表し、
32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
12、R13、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34及びR35中の炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基中のメチレン基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基又は複素環基で置換されていてもよく、該アルキル基又はアリールアルキル基中のメチレン鎖は-O-で中断されていてもよい。)
【0039】
また、光重合開始剤として、オキシムエステル化合物を使用してもよい。光重合開始剤がオキシムエステル化合物であることにより、アウトガスの発生を確実に低減できる。
【0040】
オキシムエステル化合物としては、例えば、下記式の化合物、
【化10】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、
11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
11、R12及びR13で表わされる置換基の水素原子は、更にOR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-NCOR22-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよく、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
21、R22及びR23で表される置換基の水素原子は、更にCN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよく、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されていてもよく、
24は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R12とR13及びR22とR23はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、SR11、COR11、CONR1213、NR12COR11、OCOR11、COOR11、SCOR11、OCSR11、COSR11、CSOR11、CN又はハロゲン原子を表し、
a及びbは、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、
Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR3132、CO、NR33又はPR34を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
31、R32、R33及びR34で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよく、
はOH、COOH又は下記一般式(II)で表される基を表す。
【化11】
(式中、Zは、結合手であって、-O-、-S-、-NR22-、-NR22CO-、-SO-、-CS-、-OCO-又は-COO-を表し、
は、結合手であって、1~3のRで置換された炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
で表される結合手のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR22-、-NR22COO-、-OCONR22-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されていてもよく、Zで表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキレンであってもよく、
は、OR41、SR41、CONR4243、NR42COR43、OCOR41、COOR41、SCOR41、OCSR41、COSR41、CSOR41、CN又はハロゲン原子を表し、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R41、R42及びR43表される置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R42とR43は、一緒になって環を形成していてもよく、
cは1~3の整数を表す。))
【0041】
下記式の化合物、
【化12】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環基の水素原子は、更にOR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-NCOR22-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、-CR21=CR2223、-CO-CR21=CR2223、カルボキシル基、エポキシ基で置換されていてもよく、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、上記R11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合又はウレタン結合により1~5回中断されていてもよく、上記置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよく、また、R12とR13及びR22とR23は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよく、Rは、隣接するベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、SR11、COR11、CONR1213、NR12COR11、OCOR11、COOR11、SCOR11、OCSR11、COSR11、CSOR11、CN、ハロゲン原子又は水酸基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0~3である。)
【0042】
下記式の化合物
【化13】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環基の水素原子は、更にOR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-NCOR22-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、-CR21=CR2223、-CO-CR21=CR2223、カルボキシル基、エポキシ基で置換されていてもよく、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、上記R11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合又はウレタン結合により1~5回中断されていてもよく、上記置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよく、また、R12とR13及びR22とR23は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、SR11、COR11、CONR1213、NR12COR11、OCOR11、COOR11、SCOR11、OCSR11、COSR11、CSOR11、CN、ハロゲン原子又は水酸基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0~4である。Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR3132、CO、NR33又はPR34を表し、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、Rは、-X-を介して隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して環構造を形成していてもよく、あるいはRとRが一緒になって環を形成していてもよく、R31、R33及びR34は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。)
【0043】
下記式の化合物、
【化14】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、
11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
11、R12及びR13で表わされる基の水素原子は、更にR21、OR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-NCOR22-OCOR23、NR22COR21、OCOR21、COOR21、SCOR21、OCSR21、COSR21、CSOR21、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよく、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
21、R22及びR23で表される基の水素原子は、更に水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよく、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24CO-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により酸素原子が隣り合わない条件で1~5回中断されていてもよく、
24は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、
は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、Rで表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、RとR、RとR、RとR、RとR及びRとRはそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
で表わされる基の水素原子は、更にR21、OR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-NCOR22-OCOR23、NR22COR21、OCOR21、COOR21、SCOR21、OCSR21、COSR21、CSOR21、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、SR11、COR14、CONR1516、NR12COR11、OCOR11、COOR14、SCOR11、OCSR11、COSR14、CSOR11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、RとR、RとR及びRとRはそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
14、R15及びR16は、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基を表し、R14、R15及びR16で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、Rは、R11、OR11、SR11、COR11、CONR1213、NR12COR11、OCOR11、COOR11、SCOR11、OCSR11、COSR11、CSOR11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、
nは、0又は1を表す。)
【0044】
下記式の化合物、
【化15】
(式中、R及びRは、R、OR、COR、SR、CONR’R’ ’又はCNを表し、R、R’及びR’ ’は、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表し、これらはハロゲン原子又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合又はエステル結合により中断されていてもよく、また、R’及びR’ ’は一緒になって環を形成してもよい。R及びRは、それぞれ、独立に、R、OR、SR、シアノ基、ハロゲン原子又は水酸基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0~4である。Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、炭素原子、N-R又はP-R12を表し、R及びR12は、アルキル基を表し、該アルキル基は-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-CO-S-又は-S-CO-で中断されていてもよく、Xが炭素原子であるとき、R及びRが一緒になって環を形成しているか、あるいはRが、-X-を介して隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して環構造を形成しており、Xが酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はP-R12であるとき、Rは、-X-を介して隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して環構造を形成してもよく、R及びRは一緒になって環を形成してもよく、R及びR12は、それぞれ独立に、隣接するベンゼン環と一緒になって環を形成してもよい。)
【0045】
下記式の化合物、
【化16】
(式中、Xはハロゲン原子又はアルキル基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、R、OR、COR、SR、CONRR’又はCNを表し、R及びR’は、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表し、これらはハロゲン原子及び/又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよく、また、R及びR’は一緒になって環を形成していてもよい。Yは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、Aは複素環基を表し、mは0~4の整数を表し、pは0~5の整数を表し、qは0又は1を表す。)
【0046】
下記式の化合物、
【化17】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、R11、R12及びR13で表わされる置換基の水素原子は、OR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-NCOR22-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換される場合もあり、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、R21、R22及びR23で表される置換基の水素原子は、CN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換される場合もあり、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断される場合もあり、R24は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、R11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖がある場合や環状アルキルである場合があり、また、R12とR13及びR22とR23はそれぞれ一緒になって環を形成する場合もあり、
、L、L及びLは、R11、OR11、SR11、COR14、CONR1516、NR12COR11、OCOR11、COOR14、SCOR11、OCSR11、COSR14、CSOR11、水酸基、ニトロ基、CN又はハロゲン原子を表し、LとR、RとL及びLとLはそれぞれ一緒になって環を形成する場合もあり、R14、R15及びR16は、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、Rは、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、Rで表される基のアルキル部分は、分岐側鎖がある場合や環状アルキルである場合があり、Rで表わされる基の水素原子は、更にR21、OR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-NCOR22-OCOR23、NR22COR21、OCOR21、COOR21、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、SCOR21、OCSR21、COSR21、CSOR21、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換される場合もあり、Xは、直接結合、COまたは下記一般式(I-A)で表される基を表す。
【化18】
(式中、Z及びZは、結合手であって、単結合、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
及びZで表される結合手のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断される場合もあり、Zで表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖がある場合や環状アルキレンである場合もある。
は、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、R11、R12及びR13は、上記一般式(I)と同じである。))
【化19】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、R11、R12及びR13は、上記一般式(I)と同じであり、
は、OH、COOH又は下記一般式(II-A)で表される基を表し、
Yは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR3132、CO、NR33又はPR34を表し、
αは1~10の整数を表し、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
31、R32、R33及びR34で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖がある場合や環状アルキレンである場合もあり、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成する場合もある。
【化20】
(式中、Zは、結合手であって、-O-、-S-、-NR22-、-NR22CO-、-SO-、-CS-、-OCO-又は-COO-を表し、
は、結合手であって、1~3のR10で置換される炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
で表される結合手のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO、-NR24-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断される場合もあり、Zで表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖がある場合や環状アルキレンである場合もあり、R10は、OR41、SR41、CONR4243、NR42COR43、OCOR41、COOR41、SCOR41、OCSR41、COSR41、CSOR41、CN又はハロゲン原子を表し、R41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R41、R42及びR43で表される置換基のアルキル部分は分岐側鎖がある場合や環状アルキレンである場合もあり、R42とR43は、一緒になって環を形成する場合もあり、aは1~3の整数を表す。R22及びR24は、上記一般式(I)と同じである。))
【0047】
下記式の化合物、
【化21】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
、R、R、R、R、R及びR(以下、R~Rとも記載)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、R10、OR10、SR10、NR1112、COR10、SOR10、SO10又はCONR1112を表し、
10、R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、R11とR12は、結合して環を形成する場合もあり、
、R、R10、R11及びR12で表される炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基の水素原子はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、NR1112、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、カルボキシル基又は複素環含有基で置換される場合があり、炭素原子数2~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR13-、-NR13CO-、-S-、-SO-、-SCO-又は-COS-により置換される場合もあり、
13は、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR及びRとRは結合して環を形成する場合もある。)
【0048】
下記式の化合物、
【化22】
(式中、R、R及びRは、R、OR、COR、SR、CONRR’又はCNを表し、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R及びR’は、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表し、これらはハロゲン原子又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合又はエステル結合により中断されていてもよく、また、R及びR’は一緒になって環を形成していてもよい。Xは、同一又は異なってハロゲン原子又はアルキル基を表し、Yは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、Yは、アルカンイジル基を表し、該アルカンイジル基の主鎖の炭素原子は、酸素原子で置換されていてもよく、aは0~4の整数を表し、qは0又は1を表す。)
【0049】
下記式の化合物、
【化23】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表し、
11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
11、R12及びR13で表わされる置換基の水素原子は、更にOR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-NCOR22-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されている場合もあり、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
21、R22及びR23で表される置換基の水素原子は、更にCN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されている場合もあり、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されている場合もあり、
24は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖がある場合があり、環状アルキルである場合があり、また、R12とR13及びR22とR23はそれぞれ一緒になって環を形成する場合があり、
は、結合手であって、単結合、-O-、-S-、-NR22-、-NR22CO-、-SO-、-CS-、-OCO-又は-COO-を表し、
は、結合手であって、単結合、炭素原子数1~20のアルカンジイル基、炭素原子数6~30のアリールジイル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルジイル基又は炭素原子数2~20の2価の複素環基を表し、
で表される結合手のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR22-、-NR22COO-、-OCONR22-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されている場合があり、Zで表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖がある場合があり、環状アルキレンである場合があり、
Xは下記化学式(I-A)又は(I-B)で表される結合手を表す。)
【化24】
(式(I-A)及び(I-B)中、*は結合手を表す。)
【0050】
下記式の化合物、
【化25】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~20の炭化水素基又は複素環を含有する炭素原子数2~20の基を表し、
及びRで表される炭素原子数1~20の炭化水素基又はR及びRで表される複素環を含有する炭素原子数2~20の基の水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、CH=CH-O-、メルカプト基、イソシアネート基又は複素環含有基で置換される場合があり、R及びRで表される炭素原子数1~20の炭化水素基又はR及びRで表される複素環を含有する炭素原子数2~20の基中のメチレン基は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-S-、-CS-、-SO-、-SCO-、-COS-、-OCS-又はCSO-で置換される場合もあり、
は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、
nは0又は1を表す。式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0051】
下記式の化合物、
【化26】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12(以下、R~R12とも記載)は、それぞれ独立に、下記一般式(II)で表される基、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、R13、OR13、SR13、NR1415、COR13、SOR13、SO13又はCONR1415を表し、
13、R14及びR15は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
13、R14及びR15で表される、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基の水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は複素環含有基で置換される場合があり、R13、R14及びR15で表される、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR16-、-NR16CO-、-S-、-CS-、-SO-、-SCO-、-COS-、-OCS-又はCSO-で置換される場合もあり、
16は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、
環A及び環Aは、縮合して炭素原子数30以下の芳香環を形成し、
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10(以下、R~R10とも記載)のうち少なくとも一つが、下記一般式(II)で表される基であり、
mは、Aが取り得る置換基の数以下の正の整数であり、
m≧2の場合は、複数存在するR11が各々異なる場合があり、
nは、Aが取り得る置換基の数以下の正の整数であり、
n≧2の場合は、複数存在するR12が各々異なる場合があり、
とR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R11とR12が結合して環を形成する場合もあり、m≧2の場合はR11とR11が結合して環を形成する場合もあり、n≧2の場合はR12とR12が結合して環を形成する場合もある。
【化27】
(式中、R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
17及びR18で表される、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基の水素原子はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は複素環含有基で置換される場合があり、R17及びR18で表される、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR19-、-NR19CO-、-S-、-CS-、-SO-、-SCO-、-COS-、-OCS-又はCSO-で置換される場合もあり、
19は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、
kは0又は1を表す。))
【0052】
下記式の化合物等が挙げられる。
【化28】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10(以下、R~R10とも記載)は、それぞれ独立に、下記一般式(II)で表される基、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、ホルミル基、スルホ基、R13、OR13、SR13、NR1415、COR13、SOR13、SO13又はCONR1415を表し、
13、R14及びR15は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
13、R14及びR15で表される炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基の水素原子は、下記一般式(II)で表される基、ニトリル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は複素環含有基で置換される場合があり、R13、R14及びR15で表される炭素原子数2~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR16-、-NR16CO-、-S-、-SO-、-SCO-又は-COS-で置換される場合もあり、
16は、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、
11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
11及びR12で表される炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基の水素原子はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は複素環含有基で置換される場合があり、R11及びR12で表される炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR17-、-NR17CO-、-S-、-SO-、-SCO-又は-COS-で置換される場合もあり、
17は、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、
~R10のうち少なくとも一つが、下記一般式(II)で表される基であり、
とR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR及びRとR10が結合して環を形成する場合もあり、
mは0又は1を表す。
【化29】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
21及びR22で表される炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基の水素原子はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は複素環含有基で置換される場合があり、R21及びR22で表される炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR23-、-NR23CO-、-S-、-SO-、-SCO-又は-COS-で置換される場合もあり、
23は、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、
nは0又は1を表す。))
【0053】
上記した光重合開始剤のうち、光重合開始剤が分裂してもアウトガスの原因となることを防止することによりアウトガスの発生を確実に抑制する点から、分子量が高い光重合開始剤が好ましく、具体的には分子量が400以上の光重合開始剤が好ましく、分子量が500以上の光重合開始剤が特に好ましい。光重合開始剤の分子量の上限値は、特に限定されないが、例えば、10000以下が挙げられる。
【0054】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されず、適宜選択可能であるが、例えば、粘着剤100質量%中に0.1~10質量%が好ましく、1~5重量%が特に好ましい。
【0055】
粘着剤には、必要に応じて、任意成分として、可塑剤、顔料、染料、老化防止剤、帯電防止剤、弾性率等の粘着剤層の物性改善のために加えられる充填剤等の各種添加剤を添加することもできる。
【0056】
放射線硬化型粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~50μmであることが好ましく、5~25μmであることが特に好ましい。放射線硬化型粘着剤層の厚さが1μm未満では、被着体への追従性が損なわれてリフロー工程後のダイシングでの固着力が低下することがある。一方で、放射線硬化型粘着剤層の厚さが50μm超では、粘着剤自体が破壊して被着体に欠けた粘着剤が付着する糊残りが生じることがある。
【0057】
放射線の種類としては、放射線硬化型粘着剤層に含まれる粘着剤の種類に応じて適宜設定される。放射線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。本発明のリフロー対応ダイシングテープでは、これらの放射線のうち、紫外線が特に好ましい。すなわち、放射線硬化型粘着剤層としては、紫外線硬化型粘着剤層が特に好ましく、粘着剤としては、紫外線硬化型粘着剤が特に好ましい。
【0058】
紫外線の発生方式は、特に限定はされず、従来公知の発生方式を適宜採用することができる。具体的な紫外線の発生方式としては、例えば、放電ランプ方式(アークランプ)、フラッシュ方式、レーザー方式等が挙げられる。これらの方式のうち、工業的な生産の点から、放電ランプ方式が好ましく、放電ランプ方式の中でも高圧水銀ランプやメタルハライドランプを使用した照射方法が、紫外線の照射効率の点から特に好ましい。
【0059】
紫外線の波長について、紫外領域の波長は、特に限定されないが、一般的な光硬化に用いられる波長及び前記照射方法にて使用する紫外線発生源の波長の点から、250nm~400nmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
紫外線の照射量は、紫外線による光重合開始剤の効果を生じさせることができる照射量であれば、特に限定されない。具体的には、例えば10~3000mJ/cmが好ましく、50~2000mJ/cmが特に好ましい。紫外線の照射量が10mJ/cm未満の場合には、粘着剤が十分に硬化しない場合がある。また、紫外線の照射量が3000mJ/cm超の場合には、粘着剤の光硬化が進行し過ぎて、放射線硬化型粘着剤層が割れるおそれがある。
【0061】
本発明のリフロー対応ダイシングテープの被着体としては、例えば、シリコンウエハを挙げることができる。
【実施例
【0062】
以下に、本発明の実施例を説明するが、実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0063】
実施例1
光重合開始剤として、α-ヒドロキシアセトフェノン(Irugacure 184、BASF社製)を用いた。α-ヒドロキシアセトフェノンと、ブチル(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して(メタ)アクリル酸モノマーを5質量部配合して合成したアクリル系共重合体(Mw=70万)とを、α-ヒドロキシアセトフェノン:アクリル系共重合体の質量比5:100にて混合して、放射線硬化型の粘着剤を調製した。この粘着剤を50μmのPEEKフィルムに塗布し、粘着剤中の溶媒を120℃で揮発させて放射線硬化型粘着剤層(厚さ20um)としたリフロー対応ダイシングテープを作製した。
【0064】
実施例2
光重合開始剤として、オキシムエステル化合物を用いた。オキシムエステル化合物としては、下記化合物(分子量355)を使用した。
【化30】
【0065】
実施例2で使用したオキシムエステル化合物は以下のようにして調製した。
ジクロロエタン92gと塩化アルミ21.7g(163 mmol)の溶液に、下記アルコール20.73g(6.5mmol)を加え、次いで、6℃以下でプロピオニルクロライド9.0g(97mmol)を滴下した。1時間攪拌後、反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルを加え油水分離し、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、脱溶媒しアシル体aを17.5g得た。
【化31】
【0066】
オキシム化
得られたアシル体aの13.0g(35mmol)と濃塩酸3.6g(35mmol)とジメチルホルムアミド30gの溶液に、亜硝酸イソブチル5.4g(52mmol)を加え、室温で3.5時間攪拌した。攪拌後、反応液に、酢酸エチルと水を加え油水分離し、有機層を水で洗浄した。固体の析出した有機層にヘキサンを加え、ろ過した。得られた固体を減圧乾燥し、オキシム体aを7.8g得た。
【化32】
【0067】
オキシムエステル化
得られたオキシム体aの5.0g(13mmol)と、ピリジン2.1g(27mmol)とジメチルホルムアミド12gの溶液を、-10℃以下の状態にし、無水酢酸1.6g(15mmol)を滴下し、滴下後5℃で2時間攪拌した。攪拌後、反応液に、酢酸エチルと水を加え油水分離し、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、脱溶媒し、上記のオキシムエステル化合物を3.5g得た。
【0068】
上記のようにして得られたオキシムエステル化合物と、ブチル(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して(メタ)アクリル酸モノマーを5質量部配合して合成したアクリル系共重合体(Mw=70万)とを、オキシムエステル化合物:アクリル系共重合体の質量比5:100にて混合して、放射線硬化型の粘着剤を調製した。この粘着剤を50μmのPEEKフィルムに塗布し、粘着剤中の溶媒を120℃で揮発させて放射線硬化型粘着剤層(厚さ20um)としたリフロー対応ダイシングテープを作製した。
【0069】
実施例3
光重合開始剤として配合した実施例2のオキシムエステル化合物を、下記のオキシムエステル化合物(分子量445、Irugacure OXE01、BASF社製)に変更した以外は、実施例2と同様にしてリフロー対応ダイシングテープを作製した。
【化33】
【0070】
実施例4
光重合開始剤として配合した実施例2のオキシムエステル化合物を、下記のオキシムエステル化合物(分子量515)に変更した以外は、実施例2と同様にしてリフロー対応ダイシングテープを作製した。なお、実施例4のオキシムエステル化合物は、窒素雰囲気下、塩化アルミニウム10.4g(78ミリモル)及び二塩化エタン33.0gを仕込み、氷冷下で酸クロリド36ミリモル、続いてニトロカルバゾール化合物30ミリモル及び二塩化エタン33.0gを徐々に滴下し、5℃で30分間撹拌した。反応液を氷水にあけ、油水分離を行った。脱溶媒して、アシル体を得た。窒素気流下、得られたアシル体の20ミリモル、塩酸ヒドロキシルアミン2.1g(30ミリモル)、及びジメチルホルムアミド16.9gを仕込み、80℃で1時間撹拌した。室温に冷却して油水分離を行った。溶媒を留去して、残さに酢酸ブチル25.4g、続いて無水酢酸2.45g(24ミリモル)を加えて90℃で1時間撹拌し、室温に冷却した。5%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、油水分離、脱溶媒、酢酸エチルからの再結晶を経て、目的物である下記のオキシムエステル化合物を得た。
【化34】
【0071】
比較例1
光重合開始剤として配合した実施例1のα-ヒドロキシアセトフェノンの配合量を、α-ヒドロキシアセトフェノン:アクリル系共重合体の質量比10:100とした以外は、実施例1と同様にしてダイシングテープを作製した。
【0072】
(1)X線光電子分光法(XPS)にて測定した炭素量
作製したリフロー対応ダイシングテープをシリコンウエハに貼り合わせて紫外線(波長365nm)を1000mJ/cm照射した後、210℃にて10分の熱処理を行った。次に、リフロー対応ダイシングテープをシリコンウエハから剥離後、シリコンウエハのリフロー対応ダイシングテープが貼られていた面について、付着している成分全量中における炭素量をX線光電子分光法(XPS)にて測定し、以下のように評価した。なお、XPSの装置はPHI Quantes(アルバック・ファイ社製)を使用し、励起X線は単色化Al-Kα線で脱出角度は45°、wide scan方式で1350~0eVの範囲で測定を行った。分析領域は100μmφとした。
○:炭素量30mol%以下
×:炭素量30mol%超
【0073】
(2)アウトガス低減性
上記した210℃にて10分の熱処理を行った際におけるアウトガスの発生の有無を、上記熱処理後における放射線硬化型粘着剤層に生じた気泡を目視及び光学顕微鏡にて観察することで評価した。
○:気泡の発生ほとんどなし
△:若干の気泡あり
×:著しく気泡あり
【0074】
(3)チップ飛び防止性
上記した210℃にて10分の熱処理を行った後、シリコンウエハを個片化するダイシング工程時においてダイシングテープから剥離したチップの個数を測定し、以下のように評価した。
◎:ダイシングテープから剥離したチップなし
○:ダイシングテープから剥離したチップがあるが、その割合は1%以下
△:ダイシングテープから剥離したチップの割合が1%超5%以下
×:ダイシングテープから剥離したチップの割合が5%超
【0075】
評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
表1から、X線光電子分光法にて測定した際の炭素量が30mol%以下である実施例1~4では、アウトガス低減性が得られ、ダイシングテープから剥離したチップの割合を5%以下に低減できた。特に、実施例1と実施例2~4の比較から、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を使用すると、アウトガスをさらに低減することができた。また、実施例2と実施例3、4の比較から、分子量が400以上と、光重合開始剤であるオキシムエステル化合物の分子量が大きいと、ダイシングテープから剥離するチップの割合をさらに低減できた。
【0077】
一方で、X線光電子分光法にて測定した際の炭素量が30mol%超である比較例1では、アウトガス低減性が得られず、ダイシングテープから剥離したチップの割合が5%超となってしまった。