(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ケーブル配索構造
(51)【国際特許分類】
H02G 11/02 20060101AFI20231222BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H02G11/02
B60R16/02 620A
(21)【出願番号】P 2021509655
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014152
(87)【国際公開番号】W WO2020196859
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019062645
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥村 政宏
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220518(JP,A)
【文献】特開2012-257344(JP,A)
【文献】特開2015-140159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00-11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対してフレキシブルフラットケーブルを配索するケーブル配索構造であって、
前記車体に固定した前記固定レールと、
該固定レールの長手方向に沿って進退可能に前記スライドシートをスライド支持する移動体と、
一端側が前記移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルと、
前記フレキシブルフラットケーブルの他端側が内部に固定され、巻取り/繰り出し可能に前記フレキシブルフラットケーブルを巻取って収容する巻取り装置とが備えられ、
前記固定レールは、
底部と、前記底部の幅方向両側から立設する外側壁部、前記外側壁部の上部から幅方向内側に延設された上壁部、及び前記上壁部の幅方向内側から前記底部に向かって延設された内壁部とを備え、
前記底部、前記外側壁部、前記上壁部、及び前記内壁部とで構成される囲み部が前記底部の幅方向両側に設けられ、
前記フレキシブルフラットケーブルが、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち第1囲み部の内部に配索され、
前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置さ
れ、
前記移動体に、
前記第1囲み部の内部において前記フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿う並行な向きに向くように前記フレキシブルフラットケーブルを支持するケーブル支持部が設けられ、
前記ケーブル支持部において、前記フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿うように前記フレキシブルフラットケーブルを前記第1囲み部の幅方向外側位置に規制する規制部が設けられ、
前記フレキシブルフラットケーブルが前記規制部に対して弾性を有する固定テープで固定された
ケーブル配索構造。
【請求項2】
前記規制部は、
前記フレキシブルフラットケーブルに対して前記幅方向の内側及び上下方向の少なくとも一方側を規制する断面形状で構成された
請求項1に記載のケーブル配索構造。
【請求項3】
前記規制部は、
前記フレキシブルフラットケーブルより少なくとも前記幅方向外側に延出するガード部が設けられた
請求項1又は2に記載のケーブル配索構造。
【請求項4】
前記フレキシブルフラットケーブルに対して、弾性力を有する帯状の薄片部材が重なるように設けられた
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のケーブル配索構造。
【請求項5】
前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルと前記外側壁部との間に前記薄片部材が配置された
請求項4に記載のケーブル配索構造。
【請求項6】
前記巻取り装置が、前記固定レールにおける車両前方の端部に配置された
請求項1乃至5のうちいずれかに記載のケーブル配索構造。
【請求項7】
車幅方向に所定間隔を隔てて2本配置された前記固定レールによってレール組が構成され、
前記巻取り装置が、前記レール組を構成する2本の前記固定レールの間に配置された
請求項1乃至6のうちいずれかに記載のケーブル配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索して給電するフレキシブルフラットケーブルのケーブル配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して給電するための給電装置が多数提案されている。そのような給電装置のひとつである特許文献1に記載のスライドシート用給電装置は、一端側がスライドシート側に接続されたワイヤーハーネスをハーネス収容部に収容し、ハーネス収容部の内においてUターン状に収容されたワイヤーハーネスのUターン部がスライドシートのスライドに伴って移動することで、スライドシートのスライドにワイヤーハーネスが追従できるように構成されている。
【0003】
しかしながら、このようなUターン状に収容されたワイヤーハーネスのUターン部がスライドシートのスライドに伴って移動するため、Uターン部がスライドシートのスライドに伴って移動できるだけの空間をレール側方に確保する必要があり、スライドシートの給電装置を小型化することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述した問題を鑑み、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電できるケーブル配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対してフレキシブルフラットケーブルを配索するケーブル配索構造であって、前記車体に固定した前記固定レールと、該固定レールの長手方向に沿って進退可能に前記スライドシートをスライド支持する移動体と、一端側が前記移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルと、前記フレキシブルフラットケーブルの他端側が内部に固定され、巻取り/繰り出し可能にフレキシブルフラットケーブルを巻取って収容する巻取り装置とが備えられ、前記固定レールは、底部と、前記底部の幅方向両側から立設する外側壁部、前記外側壁部の上部から幅方向内側に延設された上壁部、及び前記上壁部の幅方向内側から前記底部に向かって延設された内壁部とを備え、前記底部、前記外側壁部、前記上壁部、及び前記内壁部とで構成される囲み部が前記底部の幅方向両側に設けられ、前記フレキシブルフラットケーブルが、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち第1囲み部の内部に配索され、前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置され、前記移動体に、前記第1囲み部の内部において前記フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿う並行な向きに向くように前記フレキシブルフラットケーブルを支持するケーブル支持部が設けられ、前記ケーブル支持部において、前記フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿うように前記フレキシブルフラットケーブルを前記第1囲み部の幅方向外側位置に規制する規制部が設けられ、前記フレキシブルフラットケーブルが前記規制部に対して弾性を有する固定テープで固定されたことを特徴とする。
【0007】
上記フレキシブルフラットケーブルは、一枚のフレキシブルフラットケーブルであってもよいし、複数枚のフレキシブルフラットケーブルが積層されてもよい。さらには、ダミーケーブルと呼ばれる導体を備えていないフレキシブルフラットケーブルと積層されてもよいし、フレキシブルフラットケーブルとは異なる帯状の部材と積層されてもよい。
【0008】
なお、前記移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルの一端側は、当該配索構造における固定レール内での一端であり、それより先に前記フレキシブルフラットケーブルが伸びていてもよい。また、巻取り装置の内部に固定された前記フレキシブルフラットケーブルの他端側は、当該配索構造において固定レールから引き出されたフレキシブルフラットケーブルを巻取り/繰り出し可能に収容する巻取り装置内における他端であり、それより先に前記フレキシブルフラットケーブルが伸びていてもよい。
【0009】
上述の前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置されるとは、前記フレキシブルフラットケーブルの主面と前記外側壁部とが対向する態様で略平行に配置されることをいう。
上述の車体に固定した固定レールの長手方向は、一般的に車体前後方向であるため、前記進退方向は一般的に車体前後方向となる。
【0010】
この発明により、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電することができる。
詳述すると、前記車体に固定された固定レールに、底部と、前記底部の幅方向両側から立設する外側壁部、前記外側壁部の上部から幅方向内側に延設された上壁部、及び前記上壁部の幅方向内側から前記底部に向かって延設された内壁部とで構成される囲み部が前記底部の幅方向両側に設けられ、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち第1囲み部の内部において前記外側壁部に沿って並行に配置された前記フレキシブルフラットケーブルを、前記移動体に移動に伴って巻取り装置が巻取り/繰り出しできるため、例えば、Uターン部を移動可能に収容するハーネス収容部のような大きな空間が不要となり、コンパクトな構造で構成することができる。
【0011】
なお、特開2010-172116号公報にも、本発明のフレキシブルフラットケーブルに相当するフラットワイヤーハーネスをレール内に配置するハーネス巻取り式給電装置が開示されている。しかしながら、このハーネス巻取り式給電装置では、単に、上部が開口したレールの底部にフラットワイヤーハーネスが配置されているに過ぎず、レール内部に配置されているもの開口を介してフラットワイヤーハーネスが露出しており、十分にフラットワイヤーハーネスを保護することができなかった。
【0012】
これに対し、本願発明によれば、前記フレキシブルフラットケーブルが、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち第1囲み部の内部に配索されているため、フレキシブルフラットケーブルはレール外部に露出することがなく、フレキシブルフラットケーブルを保護することができる。さらには、前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置されているため、つまり、レール上部の開口から幅方向にもっとも離れた位置に配置されているため、フレキシブルフラットケーブルの保護性を向上することができる。
【0013】
さらには、上述のようにレール底部にフレキシブルフラットケーブルが配置されると、前記スライドシートをスライド支持する移動体の移動性が低下するおそれがあるが、前記第1囲み部の内部において前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置されているため、移動体の移動性が低下することを防止できる。
【0014】
また、前記移動体に、前記第1囲み部の内部において前記フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿う並行な向きに向くようにフレキシブルフラットケーブルを支持するケーブル支持部が設けられている。
これにより、移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルを、前記第1囲み部の内部において前記外側壁部に沿う並行な向きに、容易、且つ安定して向けることができる。
【0015】
さらにまた、前記ケーブル支持部において、フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿うように前記フレキシブルフラットケーブルを前記第1囲み部の幅方向外側位置に規制する規制部が設けられている。
これにより、移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルを、前記第1囲み部の内部における幅方向外側位置に、容易、且つ安定して配索することができる。
【0016】
また、前記フレキシブルフラットケーブルが前記規制部に対して弾性を有する固定テープで固定されている。
これにより、前記規制部に前記フレキシブルフラットケーブルを固定する前記固定テープが弾性変形できるため、前記フレキシブルフラットケーブルに外力が作用した場合に前記固定テープが変形して前記フレキシブルフラットケーブルに負荷が作用することを防止できる。
【0017】
この発明の態様として、前記フレキシブルフラットケーブルに対して、弾性力を有する帯状の薄片部材が重なるように設けられてもよい。
上述の弾性力を有する帯状の薄片部材は、さびにくいステンレス製バネ鋼などの所定の弾性を有する金属製の薄片部材や、所定の弾性を有する樹脂製の薄片部材を含むものとする。なお、耐久性やバネ性の観点より、金属製の薄片部材がより好ましい。
【0018】
この発明により、前記移動体の移動に伴って、前記フレキシブルフラットケーブルと重ねた薄片部材は前記フレキシブルフラットケーブルとともに、前記巻取り装置に巻取り/繰り出しされることとなり、前記フレキシブルフラットケーブルと重ねた薄片部材の弾性力によって前記巻取り装置が前記フレキシブルフラットケーブルを確実に巻取り/繰り出しすることができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルと前記外側壁部との間に前記薄片部材が配置されてもよい。
この発明により、前記移動体の移動に伴って前記フレキシブルフラットケーブルと前記外側壁部との間にともに巻取り/繰り出しされる薄片部材が介在するため、前記フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部と直接摺動することなく、前記フレキシブルフラットケーブルの耐久性を向上することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記規制部は、前記フレキシブルフラットケーブルに対して前記幅方向の内側及び上下方向の少なくとも一方側を規制する断面形状で構成されてもよい。
この発明により、簡易且つコンパクトな構造で、移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルを、前記第1囲み部の内部における幅方向外側位置に、容易、且つ安定して配索することができる。なお、幅方向の内側及び上下方向の少なくとも一方側を規制する断面形状は、幅方向の内側及び上下方向の一方とで構成する断面L型形状、あるいは、幅方向の内側及び上下方向の両方とで構成する断面角コ字型あるいは横向きH型となる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記規制部は、前記フレキシブルフラットケーブルより少なくとも前記幅方向外側に延出するガード部が設けられてもよい。
この発明により、前記フレキシブルフラットケーブルが前記第1囲み部において前記幅方向外側に配置されるものの、前記外側壁部に押付けられることなく、前記外側壁部に対する摩擦を低減し、スムーズに摺動させることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記巻取り装置が、前記固定レールにおける車両前方の端部に配置されてもよい。
この発明により、前記固定レールの前記第1囲み部の内部に配索され、前記固定レールから延びる前記フレキシブルフラットケーブルが露出することなく、直接前記巻取り装置で巻取り/繰り出しすることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、車幅方向に所定間隔を隔てて2本配置された前記固定レールによってレール組が構成され、前記巻取り装置が、前記レール組を構成する2本の前記固定レールの間に配置されてもよい。
この発明により、レール組の間に配置された前記巻取り装置がレール組から幅方向外側に突出することがなく、小型化することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明により、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電できるケーブル配索構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1はシートスライド構造1の平面図を示し、
図2はシートスライド構造1の概略斜視図を示し、
図3はフラットケーブル配索構造10の概略斜視図を示し、
図4は
図1のA-A矢視断面図を示し、
図5はケーブル支持部33の概略斜視図を示している。
【0027】
なお、
図2において、前方移動したスライダ3を破線で示し、
図3において固定レール2を透過状態で図示している。また、
図5において、ケーブル支持部33で支持されたケーブル配索体5のうち、ケーブル支持部33から延出する部分については破線で示している。
【0028】
なお、固定レール2の長手方向、つまりスライダ3の進退方向を前後方向Lとし、前後方向Lのうち手前側(
図2における左手前側)を本実施形態では前進方向Lf、奥側(
図2における右奥側)を後退方向Lbとする。また、水平面内において前後方向Lに直交する方向を幅方向Wとする。
【0029】
さらに、幅方向Wに所定間隔を隔てて配置した2本の固定レール2(2a,2b)同士が対向する方向を対向方向内側Wiとし、その反対側を対向方向外側Woとする。また、
図2における上下方向を高さ方向Hとし、高さ方向Hにおける上向きを上方向Hu、下向きを下方向Hdとする。
【0030】
図1に示すように、車両の車室内においてスライドシート(図示省略)を前後方向Lにスライド可能に構成するシートスライド構造1は、幅方向Wに所定の間隔を隔てて車室フロア4の下方のフロアパネル41(
図4)に固定される、前後方向Lに長い2本の固定レール2と、各固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能に装着されるスライダ3と、幅方向Wの両側のスライダ3によってスライド支持されるスライドシート(図示省略)と、ケーブル配索体5を巻取り/繰り出しするケーブル巻取り装置6とが備えられている。なお、車室フロア4は
図4において破線で図示される高さ方向Hの位置に配置される。
【0031】
なお、前後方向Lに長い2本の固定レール2のうち一本をケーブル配索体5が配索され、スライドシートに対して給電する給電レール2aとし、他方を単にスライダ3を前後方向Lに進退自在にスライド支持する一般固定レール2bとしている。
【0032】
このようにシートスライド構造1を構成する固定レール2は、
図4に示すように、車室フロア4より下方に配置される断面溝状のレール本体20と、レール本体20の断面形状を保持する形状保持部材21と、レール本体20のレール底面部201に取り付けられ、レール本体20を車室フロア4の下方のフロアパネル41に固定する固定クランプ22とで構成している。
【0033】
レール本体20は、断面逆ハット状のレール底面部201と、レール底面部201の幅方向Wの両側に設けられた側壁部202と、各側壁部202の上端から対向する方向に伸びる上面部203と、上面部203の対向する内側端部から下方向Hdに伸びる内壁部204とで断面溝形状を形成している。
【0034】
なお、内壁部204同士は幅方向Wに所定間隔を隔てて設けられている。また、図示省略するが、幅方向Wの両側の上面部203を跨いで、断面溝形状のレール本体20の内部への異物の侵入を防止するレールモールを設けている。なお、レールモールは、変形可能なシート材であり、幅方向Wの中央に前後方向Lのスリットを設けている。
【0035】
さらに、逆ハット状のレール底面部201のうち幅方向Wの両側の部分を上部底面部201aとし、幅方向Wの中央において上部底面部201aより低い部分を中央底面部201bとしている。なお、中央底面部201bは、上方向Huにおいて幅方向Wに所定間隔を隔てて配置された内壁部204同士の間隔より広い幅で形成している。
【0036】
なお、レール底面部201における幅方向Wの両側において、レール底面部201の上部底面部201aと側壁部202と上面部203と内壁部204とで断面方向において略矩形状の囲み空間24,25を構成し、囲み空間24,25をレール底面部201の幅方向Wの両側において対向する向きで設けている。
【0037】
レール本体20の断面形状を保持する形状保持部材21は、レール本体20のレール底面部201と幅方向Wの両側の側壁部202に沿う、上方向Huが開放された幅方向Wに広い断面凹形状であり、複数の形状保持部材21が所定間隔を隔ててレール本体20に装着している。
【0038】
固定クランプ22は、断面溝形状のレール本体20におけるレール底面部201の中央底面部201bを貫通してフロアパネル41に固定し、下面側に挿入固定部222が突出するように装着している。なお、固定クランプ22は前後方向Lに所定間隔を隔てて配置している。
【0039】
このように構成された固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能に装着されたスライダ3は、固定レール2のレール本体20の上面部203より上方向Huに突出し、スライドシート(図示省略)を支持する上部支持部31と、レール本体20の内部で配置された内部走行部32と、ケーブル配索体5の一端側を固定支持するケーブル支持部33とで構成している。
【0040】
上部支持部31は、レール本体20のレール底面部201より上方向Huに突出し、図示省略する取付け金具を介してスライドシート(図示省略)を取付けることができる。
内部走行部32は、レール本体20における囲み空間24,25に配置され、幅方向Wの両側に、上面部203と上部底面部201aとに高さ方向Hが規制された状態で前後方向Lに転動するローラ321を備えている。
【0041】
このように構成されたシートスライド構造1では、前後方向Lに沿って配置された固定レール2のレール本体20の内部において、ローラ321が前後方向Lに転動することで、固定レール2に対してスライダ3が前後方向Lにスライドすることができる。そのため、スライダ3の上部支持部31に支持されたスライドシート(図示省略)は、固定レール2に対して前後方向Lにスライドすることができる。
【0042】
シートスライド構造1において、固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能なスライドシート(図示省略)に対して給電するためのフラットケーブル配索構造10として、シートスライド構造1における幅方向Wに所定間隔を隔てて配置した2本の固定レール2のうち給電レール2aに対して、前後方向Lに沿って配索されるケーブル配索体5と、ケーブル配索体5を巻取り/繰り出し可能に収容するケーブル巻取り装置6とを備えている。
【0043】
ケーブル配索体5は、複数の平角導体を絶縁性のラミネートシートで挟み込んだ薄板状の帯状導電体である複数枚のフレキシブルフラットケーブル51(以下においてFLFC51という)と、FLFC51より硬く、かつ厚み方向に積層される薄片部材52とで構成している。
【0044】
薄片部材52は、さびにくいステンレス製バネ鋼材であり、ケーブル配索体5としてFLFC51とともに、ケーブル巻取り装置6に巻取り/繰り出し可能に収容されるため、0.2mm以下の厚みで構成されている。
【0045】
また、薄片部材52は、複数積層したFLFC51の一方側に積層される。また、FLFC51と薄片部材52とで構成するケーブル配索体5は固定レール2の前後方向Lの長さより長く形成している。
【0046】
FLFC51と薄片部材52とを積層し、囲み空間24の内部に配索されるケーブル配索体5の前方端部53は、後述するようにケーブル巻取り装置6の内部に固定され、後方端部54はスライダ3に固定されている。
【0047】
ケーブル配索体5を巻取り/繰り出し可能に収容するケーブル巻取り装置6は、ケーブル配索体5が配索される給電レール2aのレール本体20の前進方向Lfの端部に配置されている。ケーブル巻取り装置6は、平面視方向において角部が円弧状に面取りされた略正方形状であり、後退方向Lbにおける幅方向Wの一方にケーブル出入口61(
図3)を設けている。
【0048】
なお、ケーブル巻取り装置6においてケーブル配索体5が出入するケーブル出入口61は、ケーブル配索体5が配索される側壁部202の前進方向Lfに配置されており、平面視方向において角部が円弧状に面取りされた略正方形状のケーブル巻取り装置6は、対向方向内側Wiに突出するような態様となる。
【0049】
また、ケーブル巻取り装置6の内部には、ケーブル配索体5の前方端部53を固定する巻取り軸62を設けている。巻取り軸62は図示省略するゼンマイバネによって前方端部53を巻き取り可能に回転する軸である。
【0050】
また、本実施形態では、巻取り軸62を反時計回りに回転させてケーブル配索体5を巻き取り、巻取り軸62を時計回りに回転させて巻取りケーブル57を巻き解いてケーブル巻取り装置6からケーブル配索体5を繰り出すように構成している。
【0051】
また、巻取り軸62は、幅方向Wから視て角部が円弧状に面取りされた略正方形状であるケーブル巻取り装置6の内部において、上述の略正方形状の平面視中心より前進方向Lf及び対向方向外側Woに偏心した位置に配置している。
【0052】
このように構成されたケーブル巻取り装置6には、車体側の給電コネクタと嵌合接続する車体側コネクタ56が延出しており、ケーブル巻取り装置6の内部で、ケーブル配索体5を構成するFLFC51の前方端部53と車体側コネクタ56とが導電可能に接続している。
【0053】
なお、
図3及び
図5に示すように、ケーブル配索体5の後方端部54は、スライダ3における上部支持部31の前進方向Lfに設けたケーブル支持部33によって支持されている。
ケーブル配索体5の後方端部54を支持するケーブル支持部33は、
図4及び
図5に図示するように、ケーブル配索体5の後方端部54を固定し、後方端部54の配索位置を規制する規制部34、底部35、規制部34の側方においてケーブル配索体5を立ち上げる立設部36で正面視略L型に構成している。なお、スライダ3の移動によってケーブル支持部33に支持されたケーブル配索体5の後方端部54も移動することとなる。
【0054】
なお、後方端部54を固定する規制部34は、高さ方向Hに向く後方端部54の主面に沿う縦壁341と、縦壁341の上端から幅方向Wに延びる上面部342とで、前進方向Lfから視て正面視逆L型状に構成している。
【0055】
このように構成した逆L字状の規制部34で、後方端部54の上方Huと側方(対向方向外側Wo)とを規制するように後方端部54を固定する。このとき、規制部34と後方端部54は弾性及び絶縁性を有する弾性テープ37を巻き付けて固定している。
【0056】
また、規制部34の後退方向Lbの底部35の上部には、規制部34に固定した後方端部54より幅方向Wの外側(つまり対向方向内側Wi)に突出するガード部38を設けている。
なお、上部にガード部38を設けた、規制部34の奥側の底部35も、ガード部38と同様に後方端部54より幅方向Wの外側(つまり対向方向内側Wi)に突出するとともに、ガード部38より前進方向Lfに突出している。このように構成した底部35とガード部38によって、前進方向Lfから視て、幅方向Wにおいて逆向きのL字型を形成している。
【0057】
このようにしてスライダ3の内部走行部32に設けたケーブル支持部33に後方端部54が支持されたケーブル配索体5は、囲み空間24に配索された状態で、囲み空間24の内部における幅方向外側位置(対向方向内側Wiの位置)、つまり側壁部202に沿う位置に配索される。
【0058】
しかしながら、規制部34に固定された後方端部54よりガード部38が幅方向外側(つまり対向方向内側Wi)に突出するため、ケーブル配索体5が規制部34によって側壁部202に押付けられることを防止できる。
【0059】
このように構成されたケーブル支持部33において後方端部54は、規制部34に固定され、折り曲げられて底部35に沿い、さらに折り曲げられて立設部36に沿って上方向Huに延び、立設部36の上方向Huでシート側コネクタ39が接続され、スライドするスライドシート(図示省略)に設けられた電気機器とシート側コネクタ39を介してより確実に電気的に接続することができる。
【0060】
上述のように構成されたスライダ3に後方端部54が支持され、内壁部204の内部において側壁部202に主面が対向するように幅方向外側に配置されたケーブル配索体5は、ケーブル巻取り装置6のケーブル出入口61を通るとともに、前方端部53がケーブル巻取り装置6の内部において巻取り軸62に固定されているため、
図1に示すように、スライダ3が後退方向Lbに配置されている場合は、ケーブル巻取り装置6からケーブル配索体5が繰り出され、囲み空間24の内部において、ケーブル支持部33により、主面が側壁部202に対向する向きで側壁部202に沿って配索される。
逆に、
図1において破線で示すように、スライダ3が前進方向Lfに移動すると、スライダ3の前進方向Lfへの移動に伴ってケーブル巻取り装置6でケーブル配索体5を巻取り収容することができる。
【0061】
上述のように、車体に固定した固定レール2の前後方向Lに沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対してケーブル配索体5を配索するフラットケーブル配索構造10は、車体に固定した固定レール2と、固定レール2の前後方向Lに沿って進退可能にスライドシートをスライド支持するスライダ3と、後方端部54がスライダ3に固定されたケーブル配索体5と、ケーブル配索体5の前方端部53が内部に固定され、巻取り/繰り出し可能にケーブル配索体5を巻取って収容するケーブル巻取り装置6とが備えられ、固定レール2は、上部底面部201aと、上部底面部201aの幅方向Wの両側から立設する側壁部202、側壁部202の上部から幅方向Wの内側に延設された上面部203、及び上面部203の幅方向Wの内側から上部底面部201aに向かって延設された内壁部204とを備え、上部底面部201a、側壁部202、上面部203、及び内壁部204とで構成される囲み空間24,25が上部底面部201aの幅方向Wの両側に設けられ、ケーブル配索体5が、固定レール2の幅方向Wの両側に設けられた囲み空間24,25のうち囲み空間24の内部に配索され、囲み空間24の内部において、ケーブル配索体5は側壁部202に沿って並行に配置されたことにより、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電することができる。
【0062】
詳述すると、車体に固定された固定レール2に、上部底面部201aと、上部底面部201aの幅方向Wの両側から立設する側壁部202、側壁部202の上部から幅方向Wの内側に延設された上面部203、及び上面部203の幅方向Wの内側から上部底面部201aに向かって延設された内壁部204とで構成される囲み空間24,25が上部底面部201aの幅方向Wの両側に設けられ、ケーブル配索体5が、固定レール2の幅方向Wの両側に設けられた囲み空間24,25のうち囲み空間24の内部において側壁部202に沿って並行に配置されたケーブル配索体5を、スライダ3に移動に伴ってケーブル巻取り装置6が巻取り/繰り出しできるため、例えば、Uターン部を移動可能に収容するハーネス収容部のような大きな空間が不要となり、コンパクトな構造で構成することができる。
【0063】
また、FLFC51が囲み空間24の内部に配索されているため、FLFC51はレール本体20の外部に露出することがなく、FLFC51の保護することができる。さらには、囲み空間24の内部において、FLFC51は側壁部202に沿って並行に配置されているため、つまり、レール本体20における上部の開口から幅方向Wにもっとも離れた位置にFLFC51が配置されているため、FLFC51の保護性を向上することができる。
【0064】
さらには、上述のようにレール底面部201にFLFC51が配置されると、スライドシートをスライド支持するスライダ3の移動性が低下するおそれがあるが、囲み空間24の内部においてFLFC51は側壁部202に沿って並行に配置されているため、スライダ3の移動性が低下することを防止できる。
【0065】
また、ケーブル配索体5を構成するFLFC51に対して、弾性力を有する帯状の薄片部材52が重なるように設けられることにより、スライダ3の移動に伴って、FLFC51と重ねた薄片部材52はFLFC51とともに、ケーブル巻取り装置6に巻取り/繰り出しされることとなり、FLFC51と重ねた薄片部材52の弾性力によってケーブル巻取り装置6がケーブル配索体5を確実に巻取り/繰り出しすることができる。
【0066】
また、囲み空間24の内部において、FLFC51と側壁部202との間に薄片部材52が配置されることにより、スライダ3の移動に伴ってFLFC51と側壁部202との間にともに巻取り/繰り出しされる薄片部材52が介在するため、FLFC51が側壁部202と直接摺動することなく、FLFC51の耐久性を向上することができる。
【0067】
また、スライダ3に、囲み空間24の内部における所定の向きに向くようにケーブル配索体5を支持するケーブル支持部33が設けられることにより、スライダ3に固定されたケーブル配索体5を、囲み空間24の内部において側壁部202に沿う並行な向きに、容易、且つ安定して向けることができる。
【0068】
また、ケーブル支持部33において、ケーブル配索体5が側壁部202に沿うようにケーブル配索体5を囲み空間24の内部における幅方向Wの外側位置に規制する規制部34が設けられることにより、スライダ3に固定されたケーブル配索体5を、囲み空間24の内部における幅方向Wの外側位置に、容易、且つ安定して配索することができる。
【0069】
また、規制部34は、ケーブル配索体5に対して、縦壁341及び上面部342により幅方向Wの内側及び下側を規制する断面L型で構成されることにより、簡易且つコンパクトな構造で、スライダ3に固定されたケーブル配索体5を、囲み空間24の内部における幅方向Wの外側位置に、容易、且つ安定して配索することができる。
【0070】
また、規制部34は、ケーブル配索体5より幅方向Wの外側に延出するガード部38が設けられることにより、ケーブル配索体5が囲み空間24において幅方向Wの外側に配置されるものの、側壁部202に押付けられることなく、側壁部202に対する摩擦を低減し、スムーズに摺動させることができる。
【0071】
また、ケーブル配索体5が規制部34に対して弾性を有する弾性テープ37で固定されることにより、規制部34にケーブル配索体5を固定する弾性テープ37が弾性変形できるため、ケーブル配索体5に外力が作用した場合に弾性テープ37が変形してケーブル配索体5に負荷が作用することを防止できる。
【0072】
また、ケーブル巻取り装置6が、固定レール2における前進方向Lfの端部に配置されることにより、固定レール2の囲み空間24の内部に配索され、固定レール2から延びるケーブル配索体5が露出することなく、直接ケーブル巻取り装置6で巻取り/繰り出しすることができる。
【0073】
また、幅方向Wに所定間隔を隔てて配置した固定レール2(2a,2b)によってレール組が構成され、ケーブル巻取り装置6が、レール組を構成する固定レール2(2a,2b)の間に配置されることにより、レール組の間に配置されたケーブル巻取り装置6がレール組から対向方向外側Woに突出することがなく、小型化することができる。
【0074】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の固定レールは固定レール2に対応し、
以下同様に、
長手方向は前後方向Lに対応し、
フレキシブルフラットケーブルはFLFC51に対応し、
ケーブル配索構造はフラットケーブル配索構造10に対応し、
移動体はスライダ3に対応し、
巻取り装置はケーブル巻取り装置6に対応し、
底部は上部底面部201aに対応し、
幅方向は幅方向Wに対応し、
外側壁部は側壁部202に対応し、
上壁部は上面部203に対応し、
内壁部は内壁部204に対応し、
一端側は前方端部53に対応し、
他端側は後方端部54に対応し、
囲み部は囲み空間24,25に対応し、
第1囲み部は囲み空間24に対応し、
薄片部材は薄片部材52に対応し、
ケーブル支持部はケーブル支持部33に対応し、
規制部は規制部34に対応し、
ガード部はガード部38に対応し、
固定テープは弾性テープ37に対応し、
車両前方は前進方向Lfに対応し、
2本配置された固定レールは固定レール2(2a,2b)に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述の説明では、薄片部材52は、さびにくいステンレス製バネ鋼などの所定の弾性を有する金属製であったが、所定の弾性を有する樹脂製であってもよい。
【0075】
また、FLFC51と薄片部材52とを積層してケーブル配索体5を構成したが、FLFC51の両側に薄片部材52を配置してケーブル配索体5を構成してもよいし、FLFC51のみでケーブル配索体5を構成してもよい。さらには、薄片部材52の代わりに、導体を備えていないダミーケーブルをFLFC51と積層してもよい。
【0076】
上述の説明では、後方端部54を固定する規制部34を、高さ方向Hに向く後方端部54の主面に沿う縦壁341と、縦壁341の上端から幅方向Wに延びる上面部342とで正面視逆L型状に構成し、逆L字状の規制部34で、後方端部54の上方Huと側方(対向方向外側Wo)とを規制するように後方端部54を固定したが、規制部34を縦壁341と、縦壁341の下端から幅方向Wに延びる下面部とで構成し、後方端部54の下方向Hdと側方(対向方向外側Wo)とを規制するように後方端部54を固定してもよいし、縦壁341、上面部342及び下面部とで規制部34を構成して、後方端部54の上方向Hu、下方向Hd及び側方(対向方向外側Wo)を規制するように後方端部54を固定してもよい。
【符号の説明】
【0077】
2…固定レール
3…スライダ
5…ケーブル配索体
6…ケーブル巻取り装置
10…フラットケーブル配索構造
24…囲み空間
25…囲み空間
33…ケーブル支持部
34…規制部
37…弾性テープ
38…ガード部
51…FLFC
52…薄片部材
53…前方端部
54…後方端部
201a…上部底面部
202…側壁部
203…上面部
204…内壁部
L…前後方向
Lf…前進方向
W…幅方向