IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ケーブル配索構造 図1
  • 特許-ケーブル配索構造 図2
  • 特許-ケーブル配索構造 図3
  • 特許-ケーブル配索構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ケーブル配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20231222BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021509657
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014154
(87)【国際公開番号】W WO2020196861
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019062684
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥村 政宏
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-112922(JP,A)
【文献】特開2016-220518(JP,A)
【文献】特開2012-257344(JP,A)
【文献】特開2008-220150(JP,A)
【文献】特開2006-050841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00-11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対してフレキシブルフラットケーブルを配索するケーブル配索構造であって、
前記車体に固定した前記固定レールと、
該固定レールの長手方向に沿って進退可能に前記スライドシートをスライド支持する移動体と、
一端側が前記移動体に固定され、他端側が前記固定レールの前記長手方向の一方の端部側に固定された前記フレキシブルフラットケーブルとが備えられ、
前記固定レールは、
底部と、前記底部の幅方向両側から立設する外側壁部、前記外側壁部の上部から幅方向内側に延設された上壁部、及び前記上壁部の幅方向内側から前記底部に向かって延設された内壁部とを備え、
前記底部、前記外側壁部、前記上壁部、及び前記内壁部とで構成される囲み部が前記底部の幅方向両側に設けられ、
前記フレキシブルフラットケーブルが、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち第1囲み部の内部に配索され、
前記第1囲み部の内部における前記移動体に対する前記長手方向の他方の側において、前記フレキシブルフラットケーブルに曲げ返すUターン部が形成され、
前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置され、
前記移動体に、前記フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿うように前記フレキシブルフラットケーブルを前記第1囲み部の内部における幅方向外側位置に寄せる位置寄せ部が設けられ、
前記位置寄せ部は、
前記外側壁部に向かって、前記Uターン部の折り返し方向に沿う曲面が設けられた
ケーブル配索構造。
【請求項2】
前記位置寄せ部の前記折り返し方向の後方側に、
前記内壁部側に向かう面を有する戻り部が設けられた
請求項1に記載のケーブル配索構造。
【請求項3】
前記位置寄せ部は、前記外側壁部に沿って並行に配置された前記フレキシブルフラットケーブルの高さより高く形成された
請求項1又は2に記載のケーブル配索構造。
【請求項4】
前記フレキシブルフラットケーブルに対して、弾性力を有する帯状の薄片部材が重なるように設けられ、
前記薄片部材は、前記Uターン部における前記フレキシブルフラットケーブルに対して折り返し方向の内側に配置された
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のケーブル配索構造。
【請求項5】
前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち、前記フレキシブルフラットケーブルが配索された前記第1囲み部が、幅方向両側に設けられた前記囲み部の他方の第2囲み部より幅広で形成された
請求項1乃至4のうちいずれかに記載のケーブル配索構造。
【請求項6】
前記フレキシブルフラットケーブルの前記他端側は、前記固定レールの端部に設けられ、他の電気機器に接続されるジョイント部に固定された
請求項1乃至5のうちいずれかに記載のケーブル配索構造。
【請求項7】
前記フレキシブルフラットケーブルの前記一端側は、前記移動体において前記Uターン部が形成された側に固定された
請求項1乃至6のうちいずれかに記載のケーブル配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索して給電するフレキシブルフラットケーブルのケーブル配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して給電するための給電装置が多数提案されている。そのような給電装置のひとつである特許文献1に記載のスライドシート用給電装置は、一端側がスライドシート側に接続されたワイヤーハーネスをハーネス収容部に収容し、ハーネス収容部の内においてUターン状に収容されたワイヤーハーネスのUターン部がスライドシートのスライドに伴って移動することで、スライドシートのスライドにワイヤーハーネスが追従できるように構成されている。
【0003】
しかしながら、このようなUターン状に収容されたワイヤーハーネスのUターン部がスライドシートのスライドに伴って移動するため、Uターン部がスライドシートのスライドに伴って移動できるだけの空間をレール側方に確保する必要があり、スライドシートの給電装置を小型化することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-22413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述した問題を鑑み、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電できるケーブル配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、
車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対してフレキシブルフラットケーブルを配索するケーブル配索構造であって、前記車体に固定した前記固定レールと、該固定レールの長手方向に沿って進退可能に前記スライドシートをスライド支持する移動体と、一端側が前記移動体に固定され、他端側が前記固定レールの前記長手方向の一方の端部側に固定された前記フレキシブルフラットケーブルとが備えられ、前記固定レールは、底部と、前記底部の幅方向両側から立設する外側壁部、前記外側壁部の上部から幅方向内側に延設された上壁部、及び前記上壁部の幅方向内側から前記底部に向かって延設された内壁部とを備え、前記底部、前記外側壁部、前記上壁部、及び前記内壁部とで構成される囲み部が前記底部の幅方向両側に設けられ、前記フレキシブルフラットケーブルが、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち第1囲み部の内部に配索され、前記第1囲み部の内部における前記移動体に対する前記長手方向の他方の側において、前記フレキシブルフラットケーブルに曲げ返すUターン部が形成され、前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置され、前記移動体に、前記フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿うように前記フレキシブルフラットケーブルを前記第1囲み部の内部における幅方向外側位置に寄せる位置寄せ部が設けられ、前記位置寄せ部は、前記外側壁部に向かって、前記Uターン部の折り返し方向に沿う曲面が設けられたことを特徴とする。
【0007】
上記フレキシブルフラットケーブルは、一枚のフレキシブルフラットケーブルであってもよいし、複数枚のフレキシブルフラットケーブルが積層されてもよい。さらには、ダミーケーブルと呼ばれる導体を備えていないフレキシブルフラットケーブルと積層されてもよいし、フレキシブルフラットケーブルとは異なる帯状の部材と積層されてもよい。
【0008】
なお、前記移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルの一端側及び他端側は、当該配索構造における固定レール内での一端及び他端であり、それらより先に前記フレキシブルフラットケーブルが伸びていてもよい。
【0009】
上述の車体に固定した固定レールの長手方向は、一般的に車体前後方向であるため、前記進退方向は一般的に車体前後方向となる。
上述の前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置されるとは、前記フレキシブルフラットケーブルの主面と前記外側壁部とが対向する態様で略平行に配置されることをいう。
【0010】
この発明により、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電することができる。
詳述すると、前記車体に固定された固定レールに、底部と、前記底部の幅方向両側から立設する外側壁部、前記外側壁部の上部から幅方向内側に延設された上壁部、及び前記上壁部の幅方向内側から前記底部に向かって延設された内壁部とで構成される囲み部が前記底部の幅方向両側に設けられ、前記フレキシブルフラットケーブルが、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち第1囲み部の内部に配索され、前記第1囲み部の内部における前記移動体に対する前記長手方向の他方の側において、前記フレキシブルフラットケーブルに曲げ返すUターン部が形成されているため、前記移動体の移動に伴う前記フレキシブルフラットケーブルの移動によってUターン部が移動し、第1囲み部の内部において前記フレキシブルフラットケーブルがたるむことなく、前記移動体の移動に追従することができる。
【0011】
なお、特開2010-172116号公報にも、本発明のフレキシブルフラットケーブルに相当するフラットワイヤーハーネスをレール内に配置するハーネス巻取り式給電装置が開示されている。しかしながら、このハーネス巻取り式給電装置では、単に、上部が開口したレールの底部にフラットワイヤーハーネスが配置されているに過ぎず、レール内部に配置されているもの開口を介してフラットワイヤーハーネスが露出しており、十分にフラットワイヤーハーネスを保護することができなかった。
【0012】
これに対し、本願発明によれば、前記フレキシブルフラットケーブルが、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち第1囲み部の内部に配索されているため、フレキシブルフラットケーブルはレール外部に露出することがなく、フレキシブルフラットケーブルを保護することができる。
【0013】
また、前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置されてもよい。
【0014】
これにより、第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルを捻ることなく、Uターン部を移動させて、前記フレキシブルフラットケーブルを前記移動体の移動に追従することができる。
【0015】
さらには、前記第1囲み部の内部において、前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置されているため、つまり、レール上部の開口から幅方向にもっとも離れた位置に配置されているため、フレキシブルフラットケーブルの保護性を向上することができる。
【0016】
また、上述のようにレール底部にフレキシブルフラットケーブルが配置されると、前記スライドシートをスライド支持する前記移動体の移動性が低下するおそれがあるが、前記第1囲み部の内部において前記フレキシブルフラットケーブルは前記外側壁部に沿って並行に配置されているため、移動体の移動性が低下することを防止できる。
【0017】
さらにまた、前記移動体に、フレキシブルフラットケーブルが前記外側壁部に沿うように前記フレキシブルフラットケーブルを前記第1囲み部の内部における幅方向外側位置に寄せる位置寄せ部が設けられている。
これにより、移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルを、前記第1囲み部の内部における幅方向外側位置に、容易、且つ安定して配索することができる。
【0018】
た、前記位置寄せ部は、前記外側壁部に向かって、前記Uターン部の折り返し方向に沿う曲面が設けられている。
これにより、位置寄せ部によって第1囲み部の内部における幅方向外側位置に寄せる前記フレキシブルフラットケーブルには曲面で当接するため、位置寄せ部によって前記フレキシブルフラットケーブルが損傷することを防止できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記位置寄せ部の前記折り返し方向の後方側に、
前記内壁部側に向かう面を有する戻り部が設けられてもよい。
上述の前記折り返し方向の後方側とは、前記Uターン部の折り返し円弧部分が前方側とし、その後方側である。
【0020】
この発明により、第1囲み部の内部における幅方向外側位置に寄せられる前記フレキシブルフラットケーブルに当接する位置寄せ部の前記折り返し方向の後方側に前記内壁部側に向かう面が設けられることで、位置寄せ部が当接する前記フレキシブルフラットケーブルが損傷することをより防止できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記位置寄せ部は、前記外側壁部に沿って並行に配置された前記フレキシブルフラットケーブルの高さより高く形成されてもよい。
この発明により、前記フレキシブルフラットケーブルが高さ方向に位置ズレしても、第1囲み部の内部における幅方向外側位置に前記フレキシブルフラットケーブルを確実に寄せることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記フレキシブルフラットケーブルに対して、弾性力を有する帯状の薄片部材が重なるように設けられ、前記薄片部材は、前記Uターン部における前記フレキシブルフラットケーブルに対して折り返し方向の内側に配置されてもよい。
【0023】
上述の弾性力を有する帯状の薄片部材は、さびにくいステンレス製バネ鋼などの所定の弾性を有する金属製の薄片部材や所定の弾性を有する樹脂製の薄片部材を含むものとする。なお、耐久性やバネ性の観点より、金属製の薄片部材がより好ましい。
【0024】
この発明により、前記移動体の移動に伴って、前記フレキシブルフラットケーブルと重ねた薄片部材は前記フレキシブルフラットケーブルとともに、前記第1囲み部内でUターン部を移動させて、前記フレキシブルフラットケーブルを前記移動体の移動に追従することとなるが、前記フレキシブルフラットケーブルが湾曲する前記Uターン部の移動に伴って、前記フレキシブルフラットケーブルは、前記フレキシブルフラットケーブルと重ねた薄片部材の弾性力によって復元することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記固定レールの幅方向両側に設けられた前記囲み部のうち、前記フレキシブルフラットケーブルが配索された前記第1囲み部が、幅方向両側に設けられた前記囲み部の他方の第2囲み部より幅広で形成されてもよい。
この発明により、第2囲み部より幅広で形成された第1囲み部の内部で前記フレキシブルフラットケーブルがたるむことなく、前記移動体の移動に追従することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記フレキシブルフラットケーブルの前記他端側は、前記固定レールの端部に設けられ、他の電気機器に接続されるジョイント部に固定されてもよい。
この発明により、前記フレキシブルフラットケーブルと他の電気機器と電気的・物理的に接続させることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記フレキシブルフラットケーブルの前記一端側は、前記移動体において前記Uターン部が形成された側に固定されてもよい。
上述の前記移動体において前記Uターン部が形成された側とは、一端側が前記移動体に固定された前記フレキシブルフラットケーブルが曲げ返したUターン部が形成された側であり、上述の前記移動体に対する他方の側と同じ側となる。
【0028】
この発明により、前記第1囲み部の内部において、前記Uターン部によって折り返され、幅方向に並ぶ前記フレキシブルフラットケーブルの並び部分と、前記移動体とが、幅方向に重ならない構造とすることができる。そのため、前記固定レールに沿って移動する前記移動体が前記フレキシブルフラットケーブルの重なり部分と支障することを防止できる。
【発明の効果】
【0029】
この発明により、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電できるケーブル配索構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】シートスライド構造の概略斜視図。
図2】フラットケーブル配索構造の平面図による説明図。
図3図2(b)のA-A矢視断面図。
図4】スライダの概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1はシートスライド構造1の概略斜視図を示し、図2はフラットケーブル配索構造10の平面図による説明図を示し、図3図2(b)のA-A矢視断面図を示し、図4はスライダ3の概略斜視図を示している。
【0032】
詳述すると、図2(a)はスライダ3が後方移動した状態のフラットケーブル配索構造10の平面図を示し、図2(b)はスライダ3が前方移動した状態のフラットケーブル配索構造10の平面図を示している。なお、図4は、固定レール2の図示を省略し、ケーブル配索体5を透過状態で図示している。
【0033】
なお、固定レール2の長手方向、つまりスライダ3の進退方向を前後方向Lとし、前後方向Lのうち手前側(図1における左手前側)を本実施形態では前進方向Lf、奥側(図1における右奥側)を後退方向Lbとする。また、水平面内において前後方向Lに直交する方向を幅方向Wとする。
【0034】
さらに、幅方向Wに所定間隔を隔てて配置した2本の固定レール2(2a,2b)同士が対向する方向を対向方向内側Wiとし、その反対側を対向方向外側Woとする。また、図1における上下方向を高さ方向Hとし、高さ方向Hにおける上向きを上方向Hu、下向きを下方向Hdとする。
【0035】
図1に示すように、車両の車室内においてスライドシート(図示省略)を前後方向Lにスライド可能に構成するシートスライド構造1は、幅方向Wに所定の間隔を隔てて車室フロア4の下方のフロアパネル41(図3)に固定される、前後方向Lに長い2本の固定レール2(2a,2b)と、各固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能に装着されるスライダ3と、幅方向Wの両側のスライダ3によってスライド支持されるスライドシート(図示省略)とが備えられている。なお、車室フロア4は図3において破線で図示される高さ方向Hの位置に配置される。
【0036】
なお、前後方向Lに長い2本の固定レール2のうち一本をケーブル配索体5が配索され、スライドシートに対して給電する給電レール2aとし、他方を単にスライダ3を前後方向Lに進退自在にスライド支持する一般固定レール2bとしている。
【0037】
このようにシートスライド構造1を構成する固定レール2は、図3に示すように、車室フロア4より下方に配置される断面溝状のレール本体20(20a,20b)と、レール本体20のレール底面部201に取り付けられ、レール本体20を車室フロア4の下方のフロアパネル41に固定する固定クランプ22とで構成している。レール本体20の断面形状を保持する形状保持部材を設けてもよい。
【0038】
レール本体20は、断面逆ハット状のレール底面部201と、レール底面部201の幅方向Wの両側に設けられた側壁部202と、各側壁部202の上端から対向する方向に伸びる上面部203と、上面部203の対向する内側端部から下方向Hdに伸びる内壁部204とで断面溝形状を形成している。
【0039】
なお、内壁部204同士は幅方向Wに所定間隔を隔てて設けられている。また、図示省略するが、幅方向Wの両側の上面部203を跨いで、断面溝形状のレール本体20の内部への異物の侵入を防止するレールモールを設けている。なお、レールモールは、変形可能なシート材であり、幅方向Wの中央に前後方向Lのスリットを設けている。
【0040】
さらに、逆ハット状のレール底面部201のうち幅方向Wの両側の部分を上部底面部201aとし、幅方向Wの中央において上部底面部201aより低い部分を中央底面部201bとしている。なお、中央底面部201bは、上方向Huにおいて幅方向Wに所定間隔を隔てて配置された内壁部204同士の間隔より広い幅で形成している。
【0041】
なお、図3に示すように、レール底面部201における幅方向Wの両側において、レール底面部201の上部底面部201aと側壁部202と上面部203と内壁部204とで断面方向において略矩形状の囲み空間24,25を構成し、囲み空間24,25をレール底面部201の幅方向Wの両側において対向する向きで設けている。
【0042】
また、図1に図示するように、2本の固定レール2のうち一般固定レール2bは、レール底面部201の両側に配置された囲み空間24,25は対称形状であるが、給電レール2aは、図3に示すように、内部にケーブル配索体5が配索される囲み空間24が囲み空間25より幅方向Wに広く形成されている。
【0043】
固定クランプ22は、断面溝形状のレール本体20におけるレール底面部201の中央底面部201bを貫通してフロアパネル41に固定し、下面側に挿入固定部222が突出するように装着している。なお、固定クランプ22は前後方向Lに所定間隔を隔てて配置している。
【0044】
このように構成された固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能に装着されたスライダ3は、固定レール2のレール本体20の上面部203より上方向Huに突出し、スライドシート(図示省略)を支持する上部支持部31と、レール本体20の内部で配置された内部走行部32と、内部走行部32における後退方向Lbに配置され、ケーブル配索体5の一端側を固定支持するケーブル固定部33とで構成している。
【0045】
上部支持部31は、レール本体20のレール底面部201より上方向Huに突出し、図示省略する取付け金具を介してスライドシート(図示省略)を取付けることができる。
内部走行部32は、レール本体20における囲み空間24,25に配置され、幅方向Wの両側に、上面部203と上部底面部201aとに高さ方向Hが規制された状態で前後方向Lに転動するローラ321を備えている。
【0046】
このように構成されたシートスライド構造1では、前後方向Lに沿って配置された固定レール2のレール本体20の内部において、ローラ321が前後方向Lに転動することで、固定レール2に対してスライダ3が前後方向Lにスライドすることができる。そのため、スライダ3の上部支持部31に支持されたスライドシート(図示省略)は、固定レール2に対して前後方向Lにスライドすることができる。
【0047】
シートスライド構造1において、固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能なスライドシート(図示省略)に対して給電するためのフラットケーブル配索構造10として、シートスライド構造1における幅方向Wに所定間隔を隔てて配置した2本の固定レール2のうち給電レール2aに対して、前後方向Lに沿って配索されるケーブル配索体5を備えている。
【0048】
ケーブル配索体5は、複数の平角導体を絶縁性のラミネートシートで挟み込んだ薄板状の帯状導電体である複数枚のフレキシブルフラットケーブル51(以下においてFLFC51という)と、FLFC51より硬く、かつ上下方向に積層される薄片部材52とで構成している。
【0049】
薄片部材52は、さびにくいステンレス製バネ鋼材であり、ケーブル配索体5としてFLFC51とともに、後述するようにUターン部56を構成するため、0.2mm以下の厚みで構成されている。
【0050】
また、薄片部材52は、複数積層したFLFC51の一方側に積層される。また、FLFC51と薄片部材52とで構成するケーブル配索体5は固定レール2の前後方向Lの長さより長く形成している。
【0051】
FLFC51と薄片部材52とを積層し、囲み空間24の内部に配索されるケーブル配索体5の前方端部は、後述するように固定レール2の前進方向Lfの端部に嵌合する嵌合固定部55に固定され、後方端部54はスライダ3に固定されている。
【0052】
FLFC51と薄片部材52とを積層し、囲み空間24の内部に配索されるとともに、前方端部(図示省略)が固定レール2の前進方向Lfの端部に嵌合する嵌合固定部55に固定され、後方端部54がスライダ3に固定されるケーブル配索体5は、囲み空間24の内部において、前進方向Lfの前方端部から後退方向Lbに向かって延び、Uターン状に曲げ返してUターン部56を形成し、スライダ3に向かって前進方向Lfに延びている。
【0053】
なお、囲み空間24の内部において、前進方向Lfの前方端部から後退方向Lbに向かって延びるケーブル配索体5は側壁部202に沿って配置され、Uターン状に曲げ返して、スライダ3に向かって前進方向Lfに延びているケーブル配索体5は内壁部204側に配置される。Uターン状に曲げ返した部分をUターン部56としており、Uターン部56において、薄片部材52が曲げ返し方向内側となる向きでケーブル配索体5を配置している。
【0054】
また、上述のように、囲み空間24の内部において前進方向Lfの前方端部から後退方向Lbに向かって延びるとともにUターン部56によって曲げ返して前進方向Lfに延びるケーブル配索体5は、スライダ3より後退方向LbでUターン部56までの間において、幅方向Wに並ぶ並び部5a(図2(b)参照)が形成される。
【0055】
嵌合固定部55からは車体側の給電コネクタと嵌合接続する車体側コネクタ57が延出しており、嵌合固定部55の内部で、ケーブル配索体5を構成するFLFC51と車体側コネクタ57とが導電可能に接続している。
【0056】
なお、図2及び図3に示すように、囲み空間24に配索されたケーブル配索体5の後方端部54が固定されるスライダ3には、内部走行部32の後退方向Lbに、後方端部54を固定するケーブル固定部33が設けられている。
【0057】
また、ケーブル固定部33の後退方向Lbには、囲み空間24における幅方向側方において側壁部202に対向する向きでケーブル配索体5が配索されるように規制する位置寄せ部34と、後方端部を上方向Huに向ける縦壁部35とが設けられている。
【0058】
詳しくは、ケーブル配索体5の後方端部54を規制するケーブル固定部33は、図4に図示するように、レール本体20の内部に配置されるスライダ3の内部走行部32の後退方向Lbにおいて、後退方向Lbに延びるように設けられ、その先端に、平面視円弧状の側面を有する位置寄せ部34を設けている。
【0059】
位置寄せ部34は、内壁部204の幅方向Wの中心より側壁部202の側且つ後退方向Lbの側に突出する平面視半円弧状の半円弧状部分34aと、半円弧状部分34aの先端、つまりもっとも側壁部202に近い側から前進方向Lf且つ内壁部204側に向かう、つまり対向方向外側Woに向かう1/4円弧状の面である戻り部34bとが備えられ、高さ方向Hにおいてケーブル配索体5の幅より高い高さで形成している。
なお、位置寄せ部34は円弧状のみならず、楕円弧状、曲率が変化する湾曲状など様々な弧状で形成してもよい。
【0060】
このように構成されたケーブル固定部33において後方端部54は、縦壁部35に沿って上方向Huに延び、縦壁部35の上方向Huでシート側コネクタ39が接続され、スライドするスライドシート(図示省略)に設けられた電気機器とシート側コネクタ39を介してより確実に電気的に接続することができる。
【0061】
上述のように構成されたスライダ3に後方端部54が支持され、前方端部が固定レール2の前進方向Lfの端部に嵌合する嵌合固定部55に固定されたケーブル配索体5は、図2(a)に示すように、囲み空間24において、ケーブル固定部33によってケーブル配索体5が側壁部202に主面が対向する向きとされ、位置寄せ部34によって、囲み空間24の内部において幅方向外側に寄せられ、側壁部202に沿って配索される。
【0062】
そして、スライダ3は前進方向Lfに移動すると、Uターン部56は位置寄せ部34から徐々に離間しながら前進方向Lfに移動し、囲み空間24の内部においてケーブル配索体5が幅方向外側に寄せられ、側壁部202に沿う長さが短くなる。
【0063】
上述のように、車体に固定した固定レール2の前後方向Lに沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対してケーブル配索体5を配索するフラットケーブル配索構造10は、車体に固定した固定レール2と、固定レール2の前後方向Lに沿って進退可能にスライドシートをスライド支持するスライダ3と、後方端部54がスライダ3に固定され、前方端部が固定レール2の一方の端部側に固定されたケーブル配索体5とが備えられ、固定レール2は、上部底面部201aと、上部底面部201aの幅方向Wの両側から立設する側壁部202、側壁部202の上部から幅方向Wの内側に延設された上面部203、及び上面部203の幅方向Wの内側から上部底面部201aに向かって延設された内壁部204とを備え、上部底面部201a、側壁部202、上面部203、及び内壁部204とで構成される囲み空間24,25が上部底面部201aの幅方向Wの両側に設けられ、ケーブル配索体5が、固定レール2の幅方向Wの両側に設けられた囲み空間24,25のうち囲み空間24の内部に配索され、囲み空間24の内部におけるスライダ3より後退方向Lbにおいて、ケーブル配索体5に曲げ返すUターン部56が形成されたことにより、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電することができる。
【0064】
詳述すると、車体に固定された固定レール2に、上部底面部201aと、上部底面部201aの幅方向Wの両側から立設する側壁部202、側壁部202の上部から幅方向Wの内側に延設された上面部203、及び上面部203の幅方向Wの内側から上部底面部201aに向かって延設された内壁部204とで構成される囲み空間24,25が上部底面部201aの幅方向Wの両側に設けられ、ケーブル配索体5が、固定レール2の幅方向Wの両側に設けられた囲み空間24,25のうち囲み空間24の内部に配索され、囲み空間24の内部におけるスライダ3より後退方向Lbにおいて、ケーブル配索体5に曲げ返すUターン部56が形成されているため、スライダ3の移動に伴うケーブル配索体5の移動によってUターン部56が移動し、囲み空間24の内部においてケーブル配索体5がたるむことなく、スライダ3の移動に追従することができる。
また、FLFC51が囲み空間24の内部に配索されているため、FLFC51はレール本体20の外部に露出することがなく、FLFC51を保護することができる。
【0065】
また、囲み空間24の内部において、ケーブル配索体5は側壁部202に沿って並行に配置されることにより、囲み空間24の内部において、ケーブル配索体5を捻ることなく、Uターン部56を移動させて、ケーブル配索体5をスライダ3の移動に追従することができる。
【0066】
さらには、囲み空間24の内部において、FLFC51は側壁部202に沿って並行に配置されているため、つまり、レール本体20における上部の開口から幅方向Wにもっとも離れた位置にFLFC51が配置されているため、FLFC51の保護性を向上することができる。
【0067】
また、上述のようにレール底面部201にFLFC51が配置されると、スライドシートをスライド支持するスライダ3の移動性が低下するおそれがあるが、囲み空間24の内部においてFLFC51は側壁部202に沿って並行に配置されているため、スライダ3の移動性が低下することを防止できる。
【0068】
また、スライダ3に、ケーブル配索体5が側壁部202に沿うようにケーブル配索体5を幅方向Wの外側位置に寄せる位置寄せ部34が設けられることにより、スライダ3に固定されたケーブル配索体5を、囲み空間24の内部における幅方向Wの外側位置に、容易、且つ安定して配索することができる。
【0069】
また、位置寄せ部34は、側壁部202に向かって、Uターン部56の折り返し方向に沿う曲面が設けられることにより、位置寄せ部34によって囲み空間24の内部における幅方向Wの外側位置に寄せるケーブル配索体5には曲面で当接するため、位置寄せ部34によってケーブル配索体5が損傷することを防止できる。
【0070】
また、位置寄せ部34の折り返し方向の後方側に、内壁部204に向かう、つまり対向方向外側Woに向かう面である戻り部34bが設けられることにより、位置寄せ部34が当接するケーブル配索体5が損傷することをより防止できる。
【0071】
また、位置寄せ部34は、側壁部202に沿って並行に配置されたケーブル配索体5の高さより高く形成されることにより、ケーブル配索体5が高さ方向に位置ズレしても、囲み空間24の内部における幅方向Wの外側位置にケーブル配索体5を確実に寄せることができる。
【0072】
また、ケーブル配索体5を構成するFLFC51に対して、弾性力を有する帯状の薄片部材52が重なるように設けられ、薄片部材52は、Uターン部56におけるFLFC51に対して折り返し方向の内側に配置されることにより、スライダ3の移動に伴って、FLFC51と重ねた薄片部材52はFLFC51とともに、囲み空間24の内部でUターン部56を移動させて、FLFC51をスライダ3の移動に追従することとなるが、FLFC51が湾曲するUターン部56の移動に伴って、FLFC51は、FLFC51と重ねた薄片部材52の弾性力によって復元することができる。
【0073】
また、固定レール2の幅方向Wの両側に設けられた囲み空間24,25のうち、ケーブル配索体5が配索された囲み空間24が、他方の囲み空間25より幅広で形成されることにより、囲み空間25より幅広で形成された囲み空間24の内部でケーブル配索体5がたるむことなく、スライダ3の移動に追従することができる。
【0074】
また、ケーブル配索体5の前方端部は、固定レール2の端部に設けられ、他の電気機器に接続される車体側コネクタ57に固定されることにより、ケーブル配索体5と他の電気機器と電気的・物理的に接続させることができる。
【0075】
また、ケーブル配索体5の前方端部は、スライダ3においてUターン部56が形成された側に固定されているため、囲み空間24の内部において、Uターン部56によって折り返され、幅方向Wにケーブル配索体5が並ぶ並び部5aとスライダ3とが、幅方向Wに重ならない構造とすることができる。そのため、レール本体20に沿って移動するスライダ3がケーブル配索体5の並び部5aと支障することを防止できる。
【0076】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の固定レールは固定レール2に対応し、
以下同様に、
長手方向は前後方向Lに対応し、
フレキシブルフラットケーブルはFLFC51に対応し、
ケーブル配索構造はフラットケーブル配索構造10に対応し、
移動体はスライダ3に対応し、
底部は上部底面部201aに対応し、
幅方向は幅方向Wに対応し、
外側壁部は側壁部202に対応し、
上壁部は上面部203に対応し、
内壁部は内壁部204に対応し、
一端側は前方端部に対応し、
他端側は後方端部54に対応し、
囲み部は囲み空間24,25に対応し、
第1囲み部は囲み空間24に対応し、
薄片部材は薄片部材52に対応し、
Uターン部は固定レール2に対応し、
位置寄せ部は位置寄せ部34に対応し、
戻り部は戻り部34bに対応し、
第2囲み部は囲み空間25に対応し、
ジョイント部は車体側コネクタ57に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述の説明では、薄片部材52は、さびにくいステンレス製バネ鋼などの所定の弾性を有する金属製であったが、所定の弾性を有する樹脂製であってもよい。
【0077】
また、FLFC51と薄片部材52とを積層してケーブル配索体5を構成したが、FLFC51の両側に薄片部材52を配置してケーブル配索体5を構成してもよいし、FLFC51のみでケーブル配索体5を構成してもよい。さらには、薄片部材52の代わりに、導体を備えていないダミーケーブルをFLFC51と積層してもよい。
【符号の説明】
【0078】
2…固定レール
3…スライダ
5…ケーブル配索体
10…フラットケーブル配索構造
24,25…囲み空間
34…位置寄せ部
34b…戻り部
51…FLFC
52…薄片部材
53…前方端部
54…後方端部
56…Uターン部
201a…上部底面部
202…側壁部
203…上面部
204…内壁部
L…前後方向
W…幅方向
図1
図2
図3
図4