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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】半導体解析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20231222BHJP
   G01N 1/32 20060101ALI20231222BHJP
   H01J 37/317 20060101ALN20231222BHJP
   H01J 37/28 20060101ALN20231222BHJP
   H01J 37/26 20060101ALN20231222BHJP
   H01J 37/22 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
G01N1/28 G
G01N1/32 B
H01J37/317 D
H01J37/28 B
H01J37/26
H01J37/22 501Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022502721
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008056
(87)【国際公開番号】W WO2021171490
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄大
(72)【発明者】
【氏名】野間口 恒典
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛幸
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-022296(JP,A)
【文献】特開2015-038509(JP,A)
【文献】特開2017-069186(JP,A)
【文献】特開2010-009987(JP,A)
【文献】特開2018-152165(JP,A)
【文献】特開平02-132345(JP,A)
【文献】特開2002-174571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00~ 1/44
H01J 37/00~37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを加工して観察用の薄膜試料を作製する加工装置と、
前記薄膜試料の透過型電子顕微鏡像を取得する透過型電子顕微鏡装置と、
前記加工装置および前記透過型電子顕微鏡装置を制御する上位制御装置と、
を備え、
前記上位制御装置は
前記透過型電子顕微鏡像に基づく前記薄膜試料に対する評価を行い、前記薄膜試料の評価結果に基づいて加工条件を更新し、更新した加工条件を前記加工装置へ出力し、
且つ前記透過型電子顕微鏡像から前記薄膜試料のダメージ層の厚みを算出し、算出した前記ダメージ層の厚みに基づいて、加工による前記薄膜試料のダメージ量を前記評価結果として算出する、
半導体解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記透過型電子顕微鏡像のFFTパターンにおける円形状のパターンの強度と、前記ダメージ層の厚みとの関係を予め取得しておき、
前記上位制御装置は、前記FFTパターンにおける円形状のパターンの強度から前記ダメージ層の厚みを算出する、
半導体解析システム。
【請求項3】
請求項に記載の半導体解析システムにおいて、
前記上位制御装置は、前記薄膜試料の前記ダメージ量がダメージ量判定閾値以上である場合、前記加工条件を更新する、
半導体解析システム。
【請求項4】
請求項に記載の半導体解析システムにおいて、
前記上位制御装置は、加速電圧を低くするよう前記加工条件を更新する、
半導体解析システム。
【請求項5】
請求項に記載の半導体解析システムにおいて、
前記上位制御装置は、前記透過型電子顕微鏡像から前記薄膜試料における薄膜加工領域の位置を検出し、前記薄膜加工領域の検出位置と前記薄膜加工領域の設定位置とを比較し、前記設定位置に対する前記検出位置の位置ずれ量を前記薄膜試料の前記評価結果として算出する、
半導体解析システム。
【請求項6】
請求項に記載の半導体解析システムにおいて、
前記上位制御装置は、前記薄膜加工領域の前記位置ずれ量が位置ずれ量判定閾値以上である場合、前記加工条件を更新する、
半導体解析システム。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記上位制御装置は、前記透過型電子顕微鏡像から前記薄膜試料の膜厚を検出し、前記薄膜試料の検出膜厚と設定膜厚とを比較し、前記設定膜厚に対する前記検出膜厚の厚みずれ量を評価結果として算出する、
半導体解析システム。
【請求項8】
請求項に記載の半導体解析システムにおいて、
前記上位制御装置は、前記検出膜厚の前記厚みずれ量が厚みずれ量判定閾値以上である場合、前記加工条件を更新する、
半導体解析システム。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記加工装置は、走査型電子顕微鏡像を取得する走査型電子顕微鏡装置を備え、
前記上位制御装置は、前記透過型電子顕微鏡像に基づく前記薄膜試料に対する加工終点検知の第1良否判定処理を行う判定器と、前記判定器における前記加工終点検知の第1良否判定結果と前記走査型電子顕微鏡像とを対比することで前記加工終点検知を行うための学習モデルを生成する学習器と、加工制御部とを備え、
前記学習器は、前記学習モデルを用いて前記走査型電子顕微鏡像に基づく前記薄膜試料に対する前記加工終点検知の第2良否判定処理を行い、
前記加工制御部は、前記学習器における前記加工終点検知の第2良否判定結果に基づき、加工継続または加工終了の指示を前記加工装置に対して行う、
半導体解析システム。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体解析システムにおいて、
前記透過型電子顕微鏡装置は、走査型透過電子顕微鏡像を前記透過型電子顕微鏡像として取得する、
半導体解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集束イオンビーム(FIB)と走査型電子顕微鏡(SEM)とを備えたFIB-SEM装置を用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料を作製する方法が広く知られている。具体的に述べると、FIB-SEM装置では、半導体ウエハ上の所望の領域からTEM解析用の薄膜試料を観察用試料として切り出し、TEMによる観察用試料の構造解析や不良解析が行われる。また、観察用試料の解析結果を加工条件にフィードバックさせることにより、観察用試料作製の精度向上が図られる。
【0003】
例えば、特許文献1には、透過電子顕微鏡用試料の作製において、荷電粒子ビームによって加工して作製した薄片試料を試料ホルダに固定する際に、デポジションを用いないようにすることにより生産性を向上させる手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-115582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子顕微鏡を用いた半導体デバイス観察のニーズは急速に増加している。これに伴い、FIB-SEM装置による半導体ウエハに対する薄膜試料作製の自動化および電子顕微鏡による薄膜試料観察の自動化が求められている。しかしながら、近年の半導体デバイスは、微細化および構造の複雑化が進んでおり、自動化に要求されるレベルは年々高くなっている。
【0006】
そこで、本発明は、薄膜試料自動作製の精度向上および薄膜試料自動観察の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0008】
本発明の代表的な実施の形態による半導体解析システムは、半導体ウエハを加工して観察用の薄膜試料を作製する加工装置と、前記薄膜試料の透過型電子顕微鏡像を取得する透過型電子顕微鏡装置と、前記加工装置および前記透過型電子顕微鏡装置を制御する上位制御装置と、を備え、前記上位制御装置は前記透過型電子顕微鏡像に基づく前記薄膜試料に対する評価を行い、前記薄膜試料の評価結果に基づいて加工条件を更新し、更新した加工条件を前記加工装置へ出力し、且つ前記透過型電子顕微鏡像から前記薄膜試料のダメージ層の厚みを算出し、算出した前記ダメージ層の厚みに基づいて、加工による前記薄膜試料のダメージ量を前記評価結果として算出する。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0010】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、薄膜試料自動作製の精度向上および薄膜試料自動観察の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る半導体解析システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る半導体解析システムの他の例を示す概略構成図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るFIB-SEM装置の一例を示す概略構成図である。
図4図2のALTS装置の一例を示す概略構成図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るTEM装置の一例を示す概略構成図である。
図6】TEMモードで使用した場合における電子ビームカラムおよびその周辺の一例を示す概略構成図である。
図7】STEMモードで使用した場合における電子ビームカラムおよびその周辺の一例を示す概略構成図である。
図8】半導体ウエハ上に作製された薄膜試料の概念図である。
図9】TEM観察用キャリアに搭載された薄膜試料の概略図である。
図10】本発明の実施の形態1に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。
図11】FIB加工条件の更新方法を説明する図である。
図12】本発明の実施の形態2に係る半導体解析システムを説明する図である。
図13】本発明の実施の形態2に係る学習データの更新方法の一例を示すフロー図である。
図14】学習モデルを用いた加工終点検知の判定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する各実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明の技術範囲を限定するものではない。なお、実施例において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、特に必要な場合を除き省略する。
【0013】
(実施の形態1)
<半導体解析システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体解析システムの一例を示す概略構成図である。半導体解析システム100は、FIB-SEM装置(加工装置)101、TEM装置102、および上位制御装置103を含む。ここで、SEMとは走査型電子顕微鏡である。また、TEMとは透過型電子顕微鏡であり、後述するSTEMとは走査型透過電子顕微鏡である。
【0014】
FIB-SEM装置101は、半導体ウエハWAFから観察用の薄膜試料SAMを作製する(切り出す)FIB装置と、半導体ウエハWAFまたは作製された薄膜試料SAMを観察するSEM装置とを有する装置である。なお、本実施の形態では、SEM装置が含まれなくても構わない。
【0015】
TEM装置102は、薄膜試料SAMの構造解析や不良解析を行う装置である。TEM装置102は、回折コントラストや位相コントラストにより薄膜試料SAMのTEM画像(透過型電子顕微鏡像)を取得する。なお、TEM装置102は、STEM装置の構造および機能を有してもよい。この場合、TEM装置102は、薄膜試料SAMのSTEM画像(走査型透過電子顕微鏡像)としてHAADF像を取得してもよい。FIB-SEM装置101およびTEM装置102は、上位制御装置103を介して互いに通信可能である。
【0016】
上位制御装置103は、FIB-SEM装置101およびTEM装置102の制御を行う装置である。上位制御装置103は、FIB-SEM装置101およびTEM装置102に対する動作開始や停止等の基本的な制御、半導体ウエハWAFに対するFIB加工条件の出力、FIB加工により作製される薄膜試料SAMのTEM観察条件の出力等を行う。また、上位制御装置103は、TEM装置102から出力されるTEM画像(STEM画像)に基づき、作製された薄膜試料SAMの評価、評価結果に基づくFIB加工条件の更新等を行う。半導体解析システム100に含まれる各装置の構成については、後で詳しく説明する。
【0017】
半導体解析システム100における主要な処理は次の通りである。FIB-SEM装置101では、FIB装置を用いて、装置内に搬送された半導体ウエハWAFから薄膜試料SAMの作製(切り出し)が行われる。作製された薄膜試料SAMは、TEM観察用キャリアCARに載置される。薄膜試料SAMが載置されたTEM観察用キャリアCARは、FIB-SEM装置101からTEM装置102へ搬送され、TEM装置102において薄膜試料SAMの構造解析や不良解析が行われる。
【0018】
なお、本実施の形態では、上位制御装置103を独立した構成要素として記載しているが、上位制御装置103が有する機能の一部または全てをFIB-SEM装置101が担ってもよいし、TEM装置102が担ってもよい。
【0019】
なお、半導体ウエハWAFは、複数のウエハを収容可能な容器を用いて搬送されてもよいし、FIB-SEM装置101に挿入可能なカートリッジに載せて搬送されてもよい。また、TEM観察用キャリアCARは、複数のキャリアを収容可能な容器を用いて搬送されてもよいし、TEM装置102に挿入可能なカートリッジに載せて搬送されてもよい。なお、半導体ウエハWAFやTEM観察用キャリアCARの取り扱いは、一部または全部を人が行ってもよいし、搬送用ロボットが行ってもよい。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1に係る半導体解析システムの他の例を示す概略構成図である。図2の半導体解析システム200は、図1の半導体解析システム100にALTS(Auto Lamella Transfer System)装置201が追加された構成となっている。ALTS装置201は、半導体ウエハWAF上に作製された(切り出された)薄膜試料SAMをTEM観察用キャリアCARに自動で移し替える装置である。
【0021】
FIB-SEM装置101、ALTS装置201、およびTEM装置102は、上位制御装置103を介して互いに通信可能である。
【0022】
薄膜試料SAMが作製された半導体ウエハWAFは、ALTS装置201へ搬送される。ALTS装置201は、装置内で薄膜試料SAMをTEM観察用キャリアCARに移し替える。その際、ALTS装置201は、半導体ウエハWAF上の薄膜試料SAMの位置情報を参照しつつ移し替えを行う。
【0023】
なお、ALTS装置201への半導体ウエハWAFの搬送は、前述した容器やカートリッジごとに行ってもよい。また、半導体ウエハWAFやTEM観察用キャリアCARの取り扱いは、前述したように、一部または全部を人が行ってもよいし、搬送用ロボットが行ってもよい。
【0024】
図2の例では、上位制御装置を独立した構成要素として記載しているが、上位制御装置103が有する機能の一部または全てをFIB-SEM装置101、TEM装置102、ALTS装置201が担ってもよい。
【0025】
<FIB-SEM装置の構成>
図3は、本発明の実施の形態1に係るFIB-SEM装置の一例を示す概略構成図である。図3に示すように、FIB-SEM装置101は、イオンビームカラム301a、イオンビームカラム301aを制御するイオンビームカラム制御器331、電子ビームカラム302a、電子ビームカラム302aを制御する電子ビームカラム制御器332、半導体ウエハWAFを載置することが可能なウエハステージ304、ウエハステージ304を制御するウエハステージ制御器334を備えている。
【0026】
また、FIB-SEM装置101は、TEM観察用キャリアCARを載置することが可能なサブステージ306、サブステージ306を制御するサブステージ制御器336、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMをピックアップするプローブユニット312、プローブユニット312を制御するプローブユニット制御器342、試料室307を備えている。
【0027】
また、FIB-SEM装置101は、イオンビーム301bまたは電子ビーム302bを半導体ウエハWAFまたはTEM観察用キャリアCAR上の薄膜試料SAMに照射した際に発生する荷電粒子を検出するための荷電粒子検出器309、310、荷電粒子検出器309を制御する検出器制御器339、荷電粒子検出器310を制御する検出器制御器340、X線検出器311、X線検出器311を制御するX線検出器制御器341、FIB-SEM装置101全体の動作を制御する統合コンピュータ330を備えている。統合コンピュータ330および各制御器は、互いに通信可能である。
【0028】
また、FIB-SEM装置101は、イオンビームや電子ビームの照射条件やウエハステージ304の位置の各種指示等をオペレータが入力するコントローラ(キーボード、マウス等)351、FIB-SEM装置101をコントロールするためのGUI画面353やFIB-SEM装置101の状態、画像を含む取得した各種情報等を表示する1つまたは複数のディスプレイ352等を備えている。なお、FIB-SEM装置101の状態や取得した情報等は、GUI画面353に含まれてもよい。
【0029】
イオンビームカラム301aは、イオンビームを発生させるためのイオン源や、イオンビームを集束させるためのレンズ、イオンビームを走査およびシフトさせるための偏向系、イオンビームをブランキングさせるブランキング偏向系等、FIBに必要な構成要素を全て含んだ系である。
【0030】
電子ビームカラム302aは、電子ビームを発生させる電子源や、電子ビームを集束させるためのレンズ、電子ビームを走査およびシフトさせるための偏向系、電子ビームをブランキングさせるブランキング偏向系等、SEMに必要な構成要素を全て含んだ系である。
【0031】
イオンビームカラム301aおよび電子ビームカラム302aは、試料室307に搭載されている。イオンビームカラム301aを通過したイオンビーム301b、および電子ビームカラム302aを通過した電子ビーム302bは、主にイオンビームカラム301aの光軸301cと電子ビームカラム302aの光軸302cとの交点(クロスポイント371)にフォーカスされる。
【0032】
なお、イオンビーム301bにはガリウムイオンが一般に使用されるが、加工する目的においてイオン種は問わない。また、イオンビーム301bは、集束イオンビームに限られず、ブロードなイオンビームにマスクを備えたものでもよい。
【0033】
なお、本実施の形態では、イオンビームカラム301aが垂直に配置され、電子ビームカラム302aが傾斜して配置されているが、このような配置に限定されるものではない。例えば、イオンビームカラム301aが傾斜して配置され、電子ビームカラム302aが垂直に配置されてもよい。また、イオンビームカラム301aおよび電子ビームカラム302aが傾斜して配置されてもよい。
【0034】
なお、本実施の形態に係るFIB-SEM装置101は、ガリウム集束イオンビームカラム、アルゴン集束イオンビームカラム、および電子ビームカラムを備えた、トリプルカラム構成でもよい。
【0035】
また、電子ビームカラムに代えて光学顕微鏡やAFMのような観察システムをFIB装置と組み合わせたものが、FIB-SEM装置101に代えて用いられてもよい。また、イオンビームカラムのみで加工および観察を行うようにしてもよい。この場合、ビームを生成するカラムを削減することができ、装置コストを低減させることが可能となる。
【0036】
ウエハステージ304およびサブステージ306は、対応するウエハステージ制御器334およびサブステージ制御器336の制御により平面移動や回転移動が可能である。また、ウエハステージ304およびサブステージ306は、半導体ウエハWAFまたは薄膜試料SAMにおけるイオンビームの加工や観察に必要な所定箇所をイオンビーム照射位置や、電子ビームによる観察位置へ移動させる。
【0037】
プローブユニット312は、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMのピックアップを行う。なお、薄膜試料SAMをピックアップする際、プローブユニット312は、プローブに代えて、図示しないピンセットが用いられてもよい。また、プローブユニット312は、半導体ウエハWAFの表面に接触して半導体ウエハへの電位供給を行ってもよい。
【0038】
検出器制御器339、340は、対応する荷電粒子検出器309、310から出力される検出信号を演算処理し画像化する機能ブロックであり、所定の回路またはプログラムを実行することでプロセッサに実現される演算処理部を備える。
【0039】
なお、荷電粒子検出器309、310は、電子やイオンの検出が可能な複合荷電粒子検出器で構成されてもよい。
【0040】
試料室307には、前述した各要素の他に、図示しないガスインジェクションユニット等が搭載される。また、FIB-SEM装置101は、ガスインジェクションユニット等を制御する図示しない各制御器を有する。ガスインジェクションションユニットは、荷電粒子ビームの照射により半導体ウエハWAFまたは薄膜試料SAMに堆積膜を形成するためのデポガスを貯蔵し、必要に応じて図示しないノズル先端から試料室307内に供給される。これにより、半導体ウエハWAF、薄膜試料SAM、TEM観察用キャリアCARの任意の場所に、保護膜やマーキングを作製することができる。
【0041】
また、試料室307には、荷電粒子ビームの照射により化学腐食や蝕刻加工するエッチングガスが貯蔵されてもよい。このエッチングガスは、半導体ウエハWAFの加工に利用されてもよい。
【0042】
さらに、試料室307には、コールドトラップや光学顕微鏡などが搭載されてもよい。また、試料室307には、荷電粒子検出器309とは別に、三次電子検出器、STEM検出器、後方散乱電子検出器、低エネルギー損失電子検出器等の検出器がされてもよい。さらに、試料室307には、X線検出器311の他に質量分析器等が搭載されてもよい。
【0043】
<ALTS装置の構成>
図4は、図2のALTS装置の一例を示す概略構成図である。図4に示すように、ALTS装置201は、第1光学顕微鏡401a、第1光学顕微鏡401aを制御するための第1光学顕微鏡制御器431、第2光学顕微鏡402a、第2光学顕微鏡402aを制御するための第2光学顕微鏡制御器432、半導体ウエハWAFを載置することが可能なウエハステージ404、ウエハステージ404を制御するウエハステージ制御器434を備えている。
【0044】
また、ALTS装置201は、TEM観察用キャリアCARを載置することが可能なサブステージ406、サブステージ406を制御するサブステージ制御器436、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMをピックアップするプローブユニット412、プローブユニット412を制御するプローブユニット制御器442、試料室407を備えている。
【0045】
また、ALTS装置201は、光学顕微鏡像を取得するための第1カメラ410、第2カメラ411、第1カメラ410を制御する第1カメラ制御器440、第2カメラ411を制御する第2カメラ制御器441、薄膜試料SAMに光を照射するための光源409、光源409を制御する光源制御器439、ALTS装置201全体の動作を制御する統合コンピュータ430を備えている。統合コンピュータ430および各制御器は、互いに通信可能である。
【0046】
また、ALTS装置201は、照射条件やウエハステージ404の位置等の各種指示をオペレータが入力するコントローラ(キーボード、マウス等)451、ALTS装置201をコントロールするためのGUI画面453、ALTS装置201の状態、画像を含む取得した各種情報等を表示する1つまたは複数のディスプレイ452を備えている。なお、ALTS装置201の状態や取得した情報等は、GUI画面453に含まれてもよい。
【0047】
第1光学顕微鏡401a、第2光学顕微鏡402aは、結像するためのレンズや開口を制限するための絞りなど光学顕微鏡に必要な構成要素を全て含んだ系である。図4では、光源409が試料室407に設けられているが、このような構成に限定されるものではない。光源409は、例えば、光学顕微鏡の内部に設けられ、薄膜試料SAMが上方から照射されるようにしてもよい。
【0048】
また、ALTS装置201は、薄膜試料SAM上にフォーカスされた光を走査する機構を備え、走査像を取得することができるように構成されてもよい。また、観察対象である薄膜試料SAMは、主に、第1光学顕微鏡401aの光軸401cと、第2光学顕微鏡402aの光軸402cとが交差する位置(クロスポイント471)にて観察される。これにより、観察対象の3次元的な位置関係を把握することが可能となる。例えば、半導体ウエハWAF上の薄膜試料SAMと、プローブユニット412やピンセット(図示は省略)との位置関係を正確に把握することが可能となる。また、図4では、試料室407が設けられているが、大気中で観察する場合には密閉された空間は必要ではないので、試料室407を省略することが可能である。
【0049】
ウエハステージ404およびサブステージ406は、対応するウエハステージ制御器434およびサブステージ制御器436の制御により平面移動や回転移動が可能である。また、プローブユニット412は、半導体ウエハWAF上に作製された薄膜試料SAMをピックアップするだけでなく、ウエハ表面の接触検知センサーや応力センサー等の機能を備えていてもよい。また、薄膜試料SAMをピックアップするため、プローブの代わりにピンセットが用いられてもよい。
【0050】
なお、図4では、第1光学顕微鏡401a、第2光学顕微鏡402aを試料室407に配置したが、薄膜試料SAMを観察する目的において顕微鏡の種類は特に限定されない。例えば、一部またはすべての顕微鏡にSEM装置が用いられてもよい。この場合には、図3と類似の構成が考えられる。例えば、図3のイオンビームカラム301aの代わりに第2電子ビームカラムが試料室307に搭載されるような構成が考えられる。また、この場合、ALTS装置201で用いられる電子ビームカラムの電子源は電界放出型、ショットキー型、熱電子型のいずれが用いられてもよい。
【0051】
<TEM装置の構成>
図5は、本発明の実施の形態1に係るTEM装置の一例を示す概略構成図である。図5のTEM装置102は、TEMモードで使用することが可能であるし、モードを切り替えることによりSTEMモードで使用することも可能である。
【0052】
図5に示すように、TEM装置102は、電子ビームカラム501、電子ビームカラム501を制御する電子ビームカラム制御器521、TEM観察用キャリアCARが載置される試料ホルダ503、試料ホルダ503を駆動する試料ホルダステージ504、試料ホルダステージ504を制御するホルダステージ制御器524を備えている。
【0053】
また、TEM装置102は、薄膜試料SAMから放出される電子を検出する二次電子検出器505、二次電子検出器505を制御する検出器制御器525、透過型電子顕微鏡像を投影する蛍光板506、蛍光板506を撮像するカメラ507、カメラ507を制御するカメラ制御器527、薄膜試料SAMから放出されたX線を検出するX線検出器508、X線検出器508を制御するX線検出器制御器528、TEM装置102全体の動作を制御する統合コンピュータ530を備えている。統合コンピュータ530および各制御器は、互いに通信可能である。
【0054】
また、TEM装置102は、照射条件やホルダステージ504の位置等の各種指示を入力するコントローラ(キーボード、マウス等)531、TEM装置102をコントロールするためのGUI画面533やTEM装置102の状態、画像を含む取得した取得した各種情報等を表示する1つまたは複数のディスプレイ532を備えている。なお、TEM装置102の状態や取得した情報等は、GUI画面533に含まれてもよい。
【0055】
図6は、TEMモードで使用した場合における電子ビームカラムおよびその周辺の一例を示す概略構成図である。電子ビームカラム501は、図6に示すように、電子ビームを発生するための電子源601、電子ビームを薄膜試料SAMに照射するための照射レンズ群602、対物レンズ603、薄膜試料SAMを通過後の電子ビームを投影する投影レンズ群604等を備えている。また、電子ビームカラム501の下方には、電子エネルギー損失分光器(EELS)609、EELS用検出器610等が配置されている。
【0056】
このように、電子ビームカラム501およびその周辺にはTEM装置102を用いた解析に必要な要素が全て搭載されている。TEMモードの場合には、図6に示すように、電子ビームが薄膜試料SAM上の観察領域全面に広がって照射され、投影像や干渉像、回折パターン等により試料情報が取得される。
【0057】
図7は、STEMモードで使用した場合における電子ビームカラムおよびその周辺の一例を示す概略構成図である。STEMモードの電子ビームカラム501は、図7に示すように、図6の主要な各要素に、電子ビームを走査およびシフトするための偏向系605、電子ビームの開き角を制御するための絞り611が追加された構成となっている。また、図6の蛍光板506に代えて、広角に散乱された透過電子を検出するための円環状検出器606、薄膜試料SAMを透過した電子を検出する透過電子検出器607が設けられている。STEMモードの場合、図7に示すように、電子ビームが薄膜試料SAM上にフォーカスされ、観察領域を走査することで試料情報が取得される。
【0058】
なお、TEMモードおよびSTEMモードにおいて、薄膜試料SAMの近傍には、コールドトラップが配置されてもよいし、試料ホルダ503には、冷却機構や加熱機構、ガス導入機構などが設けられてもよい。
【0059】
<上位制御装置の構成>
上位制御装置103は、図1に示すように、メモリ103a、薄膜試料SAMを作製された薄膜加工領域の位置を検出する位置検出部103b、薄膜試料SAMの厚みを検出する厚み検出部103c、薄膜試料SAM作製によるダメージ量を検出するダメージ量検出部103d、FIB制御部103eを備えている。
【0060】
メモリ103aは、不揮発性メモリやハードディスク等で構成される記憶装置である。メモリ103aには、半導体ウエハWAFや後述するTEM観察用キャリアCARに付与れる各IDに対応するFIB加工条件が保存されている。FIB加工条件には、例えば、イオンビームの加速電圧、ビーム電流、半導体ウエハWAF上の加工領域、加工順序等が含まれる。
【0061】
また、メモリ103aには、各IDに対応するTEM観察条件が保存されている。TEM観察条件には、複数の項目が含まれる。TEMモードの場合、TEM観察条件には、例えば、観察モード(TEM画像観察、回折パターン観察、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)、電子エネルギー損失分光分析(EELS分析)等)、TEM倍率、カメラ長、プローブ電流量(照射系の絞り径の大きさ)等が含まれる。また、STEMモードの場合、STEM観察条件には、例えば、観察倍率、プローブ径(光学系の縮小率)、試料への照射角、検出器の選択(透過電子検出器、円環状検出器、二次電子検出器等)、検出器の取り込み角等が含まれる。
【0062】
位置検出部103b、厚み検出部103c、ダメージ量検出部103d、およびFIB制御部103eは、ハードウェアにより構成されてもよいし、ソフトウェアの実行によりプロセッサ上に実現されるものでもよいし、ハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせて構成されたものでもよい。
【0063】
<薄膜試料およびTEM観察用キャリアの構成>
図8は、半導体ウエハ上に作製された薄膜試料の概念図である。FIB-SEM装置101内において、半導体ウエハWAF上には1つ又は複数の薄膜試料SAMが作製される。本実施の形態では、薄膜試料SAMは、半導体ウエハWAFと1つの支持部803とで連結されているが、支持部803の個数は2つ以上でも構わない。
【0064】
いずれの場合においても、薄膜試料SAMをピックアップする際、支持部803は半導体ウエハWAFから切断される。支持部803の切断は、FIBにより行われてもよいし、ピンセットなどを用いた割断により行われてもよい。また、TEM観察領域804は周囲よりもさらに薄片化されているが、TEM観察が可能な厚さであれば、必ずしも周囲より薄くなくても構わない。
【0065】
半導体ウエハWAFのサイズは一般に100mm~300mm、薄膜試料SAMのサイズは数μm~数10μm、薄膜試料SAMの厚みは数μm、TEM観察領域804の厚みは数nm~数10nmである。
【0066】
図9は、TEM観察用キャリアに搭載された薄膜試料の概略図である。図9(a)は、ピラー911を有するTEM観察用キャリアCARa(CAR)に薄膜試料SAMが支持されたときの例を示している。薄膜試料SAMとピラー911の固定は、例えばデポジションガスなどを用いて行われる。図9(a)では、1つのピラー911に1つの薄膜試料SAMが支持された場合が示されているが、1つのピラー911に、複数の薄膜試料SAMが支持されてもよい。
【0067】
図9(b)は、クリップ形状を有するTEM観察用キャリアCARb(CAR)に、薄膜試料SAMが把持されたときの例を示している。図9(b)では、複数のピラーで構成されるクリップ912により薄膜試料SAMの両端が把持されているが、薄膜試料SAMは、一方の端部のみで把持されても構わない。また、クリップ912は、縦方向に積み上げられた複数の薄膜試料SAMを把持しても構わない。
【0068】
図9(c)は、格子状に構成されたTEM観察用キャリアCARcに薄膜試料SAMが支持されたときの例を示している。具体的に述べると、TEM観察用キャリアCARcに、例えばラメラ構造を有するカーボン膜や高分子膜等の膜が張られ、この膜上に1つまたは複数の薄膜試料SAMが支持される。この膜は、均一な膜ではなくてもよいし、多数の孔が空いた膜でも構わない。また、一つの格子に複数の薄膜試料が支持されてもよい。
【0069】
<半導体解析方法>
次に半導体解析システム100を用いた半導体解析方法について説明する。図10は、本発明の実施の形態1に係る半導体解析方法の一例を示すフロー図である。図10では、各工程がFIB-SEM装置101、上位制御装置103、TEM装置102と対応して示されている。
【0070】
上位制御装置103からFIB-SEM装置101およびTEM装置102へ指示を送ることで、半導体解析処理が開始される。半導体解析処理が開始されると、まず、半導体ウエハWAFおよびTEM観察キャリアCARがFIB-SEM装置101内に搬送される(ステップS1001)。
【0071】
そして、FIB-SEM装置101は、搬送された半導体ウエハWAFのIDおよびTEM観察キャリアCARのIDを読み取る(ステップS1002)。これらのIDは、例えばバーコードや二次元コード等で構成される。これらのIDは、半導体ウエハWAFやTEM観察キャリアCARの一部分にレーザ加工等で形成される。そして、FIB-SEM装置101は、読み取ったIDを出力することで、対応するFIB加工条件を上位制御装置103へ問い合わせる(ステップS1003)。
【0072】
上位制御装置103は、FIB-SEM装置101から出力されるIDに基づいてメモリ103aからFIB加工条件を読み出し(ステップS1004)、読み出したFIB加工条件をFIB-SEM装置101へ出力する(ステップS1005)。
【0073】
FIB-SEM装置101は、上位制御装置から出力されるFIB加工条件に基づき、薄膜試料作製条件を設定し(ステップS1006)、設定した薄膜試料作製条件に従い薄膜試料SAMを作製する(ステップS1007)。
【0074】
FIB-SEM装置101は、薄膜試料SAMの作製後、薄膜試料SAMをピックアップし、TEM観察用キャリアCARへ搬送する(ステップS1008)。薄膜試料SAMのピックアップには、例えばプローブユニット312が用いられてもよいし、ピンセットが用いられてもよい。
【0075】
その後、FIB-SEM装置101から、TEM観察用キャリアCARが取り出される(ステップS1009)。TEM観察用キャリアCARは、FIB-SEM装置101内で専用のケースに格納された状態で取り出されてもよいし、TEM装置102に取り付け可能なカートリッジに載置された状態で取り出されてもよい。
【0076】
FIB-SEM装置101から取り出されたTEM観察用キャリアCARは、TEM装置102に搬送される(ステップS1010)。なお、TEM観察用キャリアCARの搬送、一部または全部を人が行ってもよいし、ロボットが行ってもよい。
【0077】
次に、TEM装置102は、搬送されたTEM観察キャリアCARのIDを読み取る(ステップS1011)。そして、TEM装置102は、読み取ったIDを出力することで、対応するTEM観察条件を上位制御装置103へ問い合わせる(ステップS1012)。
【0078】
上位制御装置103は、TEM装置102から出力されるIDに基づいてメモリ103aからTEM観察条件を読み出し(ステップS1013)、読み出したTEM観察条件をTEM装置102へ出力する(ステップS1014)。
【0079】
TEM装置102は、上位制御装置103から出力されるTEM観察条件に基づき、薄膜試料SAMの観察条件を設定し(ステップS1015)、TEM観察用キャリアCARを所定の観察位置まで移動させる(ステップS1016)。そして、TEM装置102は、設定された観察条件で薄膜試料SAMの観察を行う(ステップS1017)。なお、ステップS1015およびステップS1016は、処理を行う順序が入れ換わってもよいし、並行して実行されてもよい。TEM装置102は、薄膜試料SAMの観察結果を上位制御装置103へ出力する(ステップS1018)。観察結果には、TEM画像や各検出器における検出データ等が含まれる。
【0080】
≪薄膜試料に対する評価≫
上位制御装置103は、TEM装置102から出力された観察結果に基づき薄膜試料SAMに対する評価を行う(ステップS1019)。以下、薄膜試料SAMに対する測定方法について詳しく説明する。薄膜試料SAMに対する評価項目には、例えば薄膜加工領域の位置ずれ量、膜厚の厚みずれ量、FIB加工によるダメージ量等が含まれる。
【0081】
まず、薄膜加工領域の位置ずれ量の評価について説明する。薄膜加工領域の位置の測定を行うため、観察領域のCADデータまたは三次元再構成データを作製し、CADデータまたは三次元再構成データに基づいて観察領域の複数箇所における薄膜試料SAMの形状を参照像として予め作製しておく。なお、三次元再構成データは、TEM画像の電子線トモグラフィー法を用いて作製されたものでもよいし、FIB加工とSEM観察とを繰り返し行ながら作製されたものでもよい。
【0082】
上位制御装置103の位置検出部103bは、TEM装置102から出力されるTEM画像またはSTEM画像(観察結果)と複数の参照像のそれぞれとのマッチングを行い、最も相関値が高い参照像を特定することで薄膜加工領域の位置(薄膜試料SAMが作製された位置)を検出する。なお、画像マッチングのアルゴリズムは、エッジを強調する方法でもよいし、特徴点を抽出する方法でもよいし、形状情報を用いる方法でもよい。そして、位置検出部103bは、薄膜加工領域の検出位置と薄膜加工領域の設定位置とを比較し、薄膜加工領域の位置ずれ量を評価結果として算出する。
【0083】
次に、薄膜試料SAMの膜厚の厚みずれ量の評価について説明する。薄膜試料SAMの膜厚が厚い場合、観察対象の構造物より奥側に存在する構造物も同時にTEM画像またはSTEM画像に現れるため、上位制御装置103の厚み検出部103cは、TEM装置102から出力されるTEM画像またはSTEM画像内の構造物の個数を数えることで薄膜試料SAMの膜厚を算出することができる。なお、構造物が重なる場合も想定されるが、薄膜試料SAMを傾斜させることでこのような重なりが解消され、薄膜試料SAMの膜厚を検出することが可能となる。
【0084】
また、HAADF-STEM画像を用いる場合、HAADF-STEM画像のコントラストは、薄膜試料SAMの膜厚、および薄膜試料SAMの構成原子に依存するが、観察対象の構成原子は薄膜試料SAM内で概ね同様である。このため、厚み検出部103cは、HAADF-STEM画像の信号強度を算出することで薄膜試料SAMの膜厚を検出することが可能である。
【0085】
例えば、膜厚と信号強度との関係を予め測定または算出しておき、膜厚と信号強度とを関係付ける膜厚-信号強度情報を、テーブルや関数等にしてメモリ103aに格納しておく。そして、厚み検出部103cは、膜厚-信号強度情報に基づき、算出した信号強度に対応する薄膜試料SAMの膜厚を検出する。そして、厚み検出部103cは、薄膜試料SAMの検出膜厚と設定膜厚とを比較し、膜厚の厚みずれ量を評価結果として算出する。
【0086】
次に、FIB加工によるダメージ量の評価について説明する。FIB加工が行われると、薄膜試料SAMの端部にダメージ層が形成され、結晶部分が非晶質(アモルファス)化してしまう。TEM画像またはSTEM画像のFFT(高速フーリエ変換)パターンを観察すると、一般的に、結晶部分がスポットとなり、アモルファス部分が円形状のパターンとなる。このため、円形状のパターンの強度が弱いほどダメージ層が少なく、円形状のパターンの強度が強いほどダメージ層が多いと評価することができる。
【0087】
そこで、例えば、TEM画像またはSTEM画像のFFTパターンにおける円形状のパターンの強度と、ダメージ層の厚みとの関係を予め測定または算出しておき、円形状のパターンの強度とダメージ層の厚みとを関係付ける円形状パターン強度-ダメージ層情報を、テーブルや関数等にしてメモリ103aに格納しておく。また、メモリ103aには、ダメージ層の厚みとダメージ量とを関係付けるダメージ層厚み-ダメージ量情報が格納される。
【0088】
ダメージ量検出部103dは、円形状パターン強度-ダメージ層情報に基づき、算出した円形状パターン強度からダメージ層の厚みを算出する。そして、ダメージ量検出部103dは、ダメージ層厚み-ダメージ量情報に基づき、算出したダメージ層の厚みからダメージ量を算出する。
【0089】
なお、メモリ103aには、円形状のパターンの強度とダメージ量とを関係付けるパターン強度-ダメージ量情報が格納されてもよい。この場合、ダメージ量検出部103dは、パターン強度-ダメージ量情報に基づき、円形状のパターンの強度からダメージ量を直接算出することができる。
【0090】
次に、ステップS1020について説明する。ステップS1020では、ステップS1019における評価結果に基づき、FIB加工条件の更新が行われる。
【0091】
《FIB加工条件の更新》
ステップS1020では、ステップS1019の評価結果に基づきFIB加工条件の更新を行う。図11は、FIB加工条件の更新方法を説明する図である。図11(a)は、薄膜加工領域の位置ずれ量に基づくFIB加工条件の更新方法を説明する図である。図11(b)は、薄膜試料の膜厚に基づくFIB加工条件の更新方法を説明する図である。図11(c)および図11(d)は、FIB加工によるダメージ量に基づくFIB加工条件の更新方法を説明する図である。
【0092】
まず、薄膜加工領域の位置ずれ量に基づくFIB加工条件の更新方法について説明する。薄膜加工領域の位置ずれ量が所定の位置ずれ量判定閾値より小さい場合、FIB制御部103eは、薄膜加工領域の位置を修正する必要はないと判断し、FIB加工条件の更新は行わない。一方、薄膜加工領域の位置ずれ量が所定の位置ずれ量判定閾値以上である場合、FIB制御部103eは、薄膜加工領域の位置を修正する必要があると判断し、FIB加工条件の更新を行う。
【0093】
図11(a)に示す薄膜試料SAMでは、薄膜加工領域ARE1、ARE2でFIB加工が行われている。一方、薄膜加工領域ARE1、ARE2に対応するそれぞれの設定された薄膜加工領域はARE11、ARE12である。
【0094】
FIB制御部103eは、例えば、設定された薄膜加工領域ARE11に対する薄膜加工領域ARE1の位置ずれ量が位置ずれ量判定閾値以上である場合、後続の半導体ウエハWAFにおいて、薄膜加工領域ARE1が設定された薄膜加工領域はARE11となるよう、FIB加工条件を更新する。すなわち、位置検出部103bは、薄膜加工領域ARE1を算出した位置ずれ量の分シフトさせるようFIB加工条件を更新する。
【0095】
また、薄膜加工領域ARE12についても同様であり、FIB制御部103eは、例えば、設定された薄膜加工領域ARE12に対する薄膜加工領域ARE2の位置ずれ量が位置ずれ量判定閾値以上である場合、後続の半導体ウエハWAFにおいて、薄膜加工領域ARE2が設定された薄膜加工領域ARE12となるようFIB加工条件を更新する。
【0096】
また、1つの薄膜試料SAMの複数の薄膜加工領域(例えばARE1、ARE2)において位置ずれ量の判定が行われる場合、FIB制御部103eは、図11(a)のように、同じ方向に各薄膜加工領域をシフトさせるようにFIB加工条件を更新してもよいし、互いに異なる方向に薄膜加工領域をシフトさせるようにFIB加工条件を更新してもよい。
【0097】
なお、同じ方向にそれぞれの薄膜加工領域をシフトさせる場合、すべての薄膜加工領域のシフト量を同じにしてもよい。例えば、すべての薄膜加工領域の位置ずれ量の平均値を位置検出部103bまたはFIB制御部103eにおいて算出し、この平均値をシフト量としてもよいし、すべての薄膜加工領域の位置ずれ量の最大値または最小値をシフト量としてもよい。なお、図11(a)では、2つの薄膜加工領域ARE1、ARE2のみが示されているが、加工領域の個数は特に制限されない。
【0098】
次に、薄膜試料SAMの膜厚の厚みずれ量に基づくFIB加工条件の更新方法について説明する。厚み検出部103cで算出された薄膜試料SAMの膜厚の厚みずれ量が所定の厚みずれ量判定閾値より小さい場合、FIB制御部103eは、薄膜試料SAMの膜厚を修正する必要はない判断し、FIB加工条件の更新を行わない。一方、薄膜試料SAMの膜厚の厚みずれ量が厚みずれ量判定閾値以上である場合、FIB制御部103eは、薄膜試料SAMの膜厚を修正する必要があると判断し、FIB加工条件の更新を行う。
【0099】
図11(b)に示す薄膜試料SAMでは、薄膜加工領域ARE3、ARE4でFIB加工が行われている。一方、薄膜試料SAMが設定された膜厚に加工されるときの設定された薄膜加工領域は、例えばARE13、ARE14あるいはその付近である。図11(b)では、薄膜加工領域ARE3、ARE4が、設定された薄膜加工領域ARE13、ARE14よりも外側にずれている。このため、厚み検出部103cにおいて算出される薄膜試料SAMの膜厚の厚みずれ量は、厚みずれ量判定閾値以上となっている。
【0100】
そこで、FIB制御部103eは、2つの薄膜加工領域ARE3、ARE4が互いに接近するように薄膜加工領域をシフトさせるようにFIB加工条件を更新する。このとき、それぞれの薄膜加工領域ARE3、ARE4のシフト量は、例えば算出した厚みずれ量の半分ずつとしてもよい。
【0101】
一方、薄膜試料SAMの膜厚の厚みが薄い(小さい)ために厚みずれ量が厚みずれ量判定閾値より大きくなった場合、FIB制御部103eは、2つの薄膜加工領域ARE3、ARE4が互いに遠ざかるようにFIB加工条件を更新すればよい。この場合も、薄膜加工領域ARE3、ARE4のシフト量を、例えば算出した厚みずれ量の半分ずつとしてもよい。なお、図11(b)では、2つの薄膜加工領域ARE3、ARE4のみが示されているが、加工領域の個数は特に制限されない。
【0102】
次に、FIB加工によるダメージ量に基づくFIB加工条件の更新方法について説明する。ダメージ量検出部103dで算出されたダメージ量が所定のダメージ量判定閾値より小さい場合、FIB制御部103eは、FIB加工条件を更新する必要はない判断する。一方、ダメージ量がダメージ量判定閾値以上である場合、FIB制御部103eは、薄膜加工領域の位置を修正する必要があると判断し、FIB加工条件の更新を行う。
【0103】
FIB加工による薄膜試料SAMへのダメージを少なくするためには加速電圧を低くして仕上げ加工を行うことが有効である。このため、FIB制御部103eは、薄膜試料SAMに対する仕上げ加工領域を、図11(c)に示すようなARE5、ARE6に設定し、これらの仕上げ加工領域ARE5、ARE6に対する加速電圧を低くするようFIB加工条件を更新する。
【0104】
あるいは、FIB制御部103eは、図11(d)に示すように、仕上げ加工前の2つの薄膜加工領域ARE7、ARE8が予め設定された距離だけ遠ざかるよう、それぞれの薄膜加工領域ARE7、ARE8を薄膜加工領域ARE17、ARE18へシフトさせるようFIB加工条件を変更する。さらに、FIB制御部103eは、図11(c)に示すような低加速電圧で仕上げ加工を行うようFIB加工条件を変更する。低加速電圧に対応する仕上げ加工領域は、例えば、薄膜加工領域ARE17、ARE18を覆うように設定されてもよいし、少なくとも薄膜試料SAMの表面や裏面を覆うように設定されてもよい。
【0105】
低加速電圧で仕上げ加工される領域を増やすことで、加工ダメージ量を小さくすることができる。図11(c)、図11(d)には2つの加工領域のみが示されているが、加工領域の個数は特に制限されない。
【0106】
上位制御装置103は、メモリ103aに格納されたFIB加工条件を、更新したFIB加工条件に書き換え。また、上位制御装置103は、更新したFIB加工条件をFIB-SEM装置101へ出力する。FIB-SEM装置101は、FIB加工条件を上位制御装置103から出力されたFIB加工条件に変更する。
【0107】
なお、本実施の形態では、例えば図2図4で説明したALTS装置201を用いて半導体ウエハWAFからTEM観察用キャリアCARへの薄膜試料SAMの移し替えや、薄膜試料SAMの観察を行ってもよい。上位制御装置103は、ALTS装置201およびTEM装置102の観察結果に基づいてFIB加工条件の更新を行うことが可能である。
【0108】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM画像に基づく薄膜試料SAMに対する評価を行い、薄膜試料SAMの評価結果に基づいて加工条件を更新する。この構成によれば、TEM装置102による薄膜試料SAMの観察結果をFIB-SEM装置101へフィードバックしてFIB加工条件を変更することができるので、後続の半導体ウエハWAFにおける薄膜試料自動作製の精度向上および薄膜試料自動観察の精度を向上させることが可能となる。
【0109】
具体的に述べると、薄膜試料の作製位置に位置ずれが生じていた場合、TEM観察領域を探索するのに時間を要して目的時間内に自動観察が完了しない場合や、観察対象そのものが失われてしまうことで自動観察が失敗してしまうことがあった。また、同一の半導体ウエハ上に作製された薄膜試料にも、同様の位置ずれが生じていると考えられる。そのような場合、先行の薄膜試料において得られた位置ずれ量を、後続の薄膜試料のFIB加工にフィードバックすることで、観察領域の探索時間短縮や、正常に観察対象を薄膜化できることにより自動観察の成功率を向上させることができる。
【0110】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM画像から薄膜試料SAMにおける薄膜加工領域の位置を検出し、薄膜加工領域の検出位置と薄膜加工領域の設定位置とを比較し、設定位置に対する検出位置の位置ずれ量を薄膜試料の評価結果として算出する。この構成によれば、評価結果に基づき加工領域の修正を行うことが可能となる。
【0111】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、薄膜加工領域の位置ずれ量が位置ずれ量判定閾値以上である場合、加工条件を更新する。この構成によれば、FIB加工条件の更新回数を低減することができる。
【0112】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM画像から薄膜試料SAMの膜厚を検出し、薄膜試料SAMの検出膜厚と設定膜厚とを比較し、設定膜厚に対する検出膜厚の厚みずれ量を評価結果として算出する。この構成によれば、評価結果に基づき加工領域ひいては膜厚の修正を行うことが可能となる。
【0113】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、検出膜厚の厚みずれ量が厚みずれ量判定閾値以上である場合、加工条件を更新する。この構成によれば、FIB加工条件の更新回数を低減することができる。
【0114】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、TEM画像から加工よる薄膜試料SAMのダメージ量を評価結果として算出する。この構成によれば、評価結果に基づき加速電圧の修正等を行うことが可能となる。
【0115】
また、本実施の形態によれば、上位制御装置103は、薄膜試料SAMのダメージ量がダメージ量判定閾値以上である場合、加工条件を更新する。例えば、上位制御装置103は、加速電圧を低くするよう加工条件を更新する。この構成によれば、FIB加工条件の更新回数を低減することができる。
【0116】
また、本実施の形態によれば、TEM装置102は、STEM画像を取得する。この構成によれば、TEM画像では取得できない画像を取得することができ、薄膜試料SAMに対するより正確な評価が可能となる。
【0117】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。なお、以下では、前述の実施の形態と重複する箇所については原則として説明を省略する。
【0118】
薄膜加工時はSEM画像を用いて終点検知が行われるが、デバイスの微細化に伴いFIB薄膜加工後、実際にTEM装置を用いて観察を行うまで加工終点の検知が上手くいったかどうかを判断することが難しい。そこで、本実施の形態では、TEM画像を用いて薄膜試料の良否判定を行い、TEM画像(またはSTEM画像)と加工終点でのSEM画像とを対応させて学習器で学習させることで加工終点の検知精度を向上させる。
【0119】
図12は、本発明の実施の形態2に係る半導体解析システムを説明する図である。本実施の形態の上位制御装置103は、図1の構成に加え判定器1201、学習器1202、加工制御部1203を備えている。
【0120】
判定器1201は、TEM装置102から出力されるFIB加工後(すなわち薄膜試料SAM作製後)のTEM画像(STEM画像)に基づき薄膜試料SAM対するFIB加工の加工終点検知の良否判定処理(第1良否判定処理)を行う機能ブロックである。図12に示すように、判定器1201は、それぞれの薄膜試料SAMのTEM画像(STEM画像)に基づき、それぞれの薄膜試料SAMに対する加工終点検知の良否判定結果(第1良否判定結果)を学習器1202へ出力する。判定器1201は、ハードウェアやソフトウェアで構成されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせて構成されてもよい。
【0121】
学習器1202は、判定器1201における加工終点検知の良否判定結果と、FIB-SEM装置101におけるSEM画像とを対比することで加工終点検知を行うための学習モデルを生成する機能ブロックである。なお、図12には第3薄膜試料までの入力データを用いた学習が例示されているが、入力データの個数はこれに限定されない。学習器は、ハードウェアやソフトウェアで構成されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせて構成されてもよい。また、学習器1202は、例えばAI(Artificial Intelligence)で構成されてもよい。AIにより、ディープラーニングなどを利用した機械学習が実現される。
【0122】
加工制御部1203は、FIB加工に関わる処理を行う機能ブロックである。加工制御部1203は、例えば上位制御装置103の制御を行う制御部(図示は省略)に含まれてもよいし、制御部とは別体で設けられてもよい。
【0123】
<学習モデルの更新方法>
図13は、本発明の実施の形態2に係る学習データの更新方法の一例を示すフロー図である。図13においても、各工程がFIB-SEM装置101、上位制御装置103、TEM装置102と対応して示されている。
【0124】
ステップS1001~S1006は、図10と同様である。ステップS1006の後はステップS1301が実行される。ステップS1306では、ステップS1006において設定された加工条件により薄膜加工(すなわち薄膜試料作製)が行われる。
【0125】
ステップS1302において、FIB-SEM装置101は、ステップS1301における薄膜加工を行いつつ、薄膜加工が行われている領域のSEM画像を取得し(ステップS1302)、取得したSEM画像を上位制御装置103へ出力する(ステップS1303)。
【0126】
ステップS1304において、上位制御装置103の加工制御部1203は、FIB-SEM装置101から出力されたSEM画像に基づき加工終点の判定を行う。加工終点の判定は、SEM画像と予め準備された参照画像とのマッチングにより行われる。これらの画像がマッチしない場合(NO)、加工制御部1203は、薄膜加工が不十分であると判断し、加工位置をシフトさせて加工を継続するようFIB-SEM装置101へ指示する。そして、ステップS1301~S1303が再度実行される。
【0127】
一方、ステップS1304において、これらの画像がマッチする場合(YES)、加工制御部1203は、薄膜加工が十分であると判断し薄膜加工を終了させる。また、加工制御部1203は、このときのSEM画像を加工終点画像としてメモリ103aに格納する(ステップS1305)。また、加工制御部1203は、加工終点画像(SEM画像)をFIB-SEM装置101へ出力する(ステップS1306)。
【0128】
ステップS1008~S1019は、図10同様である。ステップS1018において、TEM装置102は、薄膜加工後の複数の薄膜試料SAMのTEM画像(STEM画像)を入力データとして上位制御装置103へ出力する。そして、ステップS1019において、上位制御装置103は、TEM画像(STEM画像)に基づく、複数の薄膜試料SAMに対する評価を行う。ステップS1019の後は、ステップS1307が実行される。
【0129】
ステップS1307において、上位制御装置103、ステップS1019における評価結果に基づき、TEM画像ごとに加工終点検知の良否を判定し、学習データの更新を行う。なお、ステップS1019における評価項目は、例えば薄膜加工領域の位置(位置ずれ量)、薄膜試料SAMの膜厚の厚みずれ量、薄膜加工によるダメージ量等である。
【0130】
まず、判定器1201は、TEM装置102から出力されるTEM画像を用いて薄膜試料SAMごとに加工終点検知の良否判定処理(第1良否判定処理)を行い、良否判定結果(第1良否判定結果)を学習器1202へ出力する。また、学習器1202には、各TEM画像に対応するSEM画像が入力される。ただし、このSEM画像は、参照画像とマッチしたSEM画像であり、メモリ103aに格納されているので、学習器1202は、メモリ103aから良否判定が行われたTEM画像に対応するSEM画像を必要に応じて読み出してもよい。
【0131】
学習器1202は、入力されたTEM画像とSEM画像とを対応させ、加工終点検知が良好であると判定されたTEM画像とSEM画像とを対応させることで、加工終点の検知が成功した場合の状態を学習する。一方、学習器1202は、加工終点検知が良好ではないと判定されたTEM画像とSEM画像とを対応させることで、加工終点の検知が失敗した場合の状態を学習する。このような学習を繰り返し行うことで、学習器1202は、学習モデルを更新する。
【0132】
<学習モデルを用いた加工終点検知の判定>
図14は、学習モデルを用いた加工終点検知の判定方法を説明する図である。図14には、説明の便宜上、FIB-SEM装置101および上位制御装置103のみが示されている。
【0133】
薄膜加工(薄膜試料SAMの作製)を行う際、FIB-SEM装置101は、薄膜加工時のSEM画像を、学習モデルを持つ学習器1202へ出力する。
【0134】
例えば、ステップS1304において、学習器1202は、学習モデルを用い、FIB-SEM装置101から出力されたSEM画像に対する加工終点検知の良否判定処理(第2良否判定処理)を行う。そして、学習器1202は、このSEM画像に基づく薄膜試料SAMに対する加工終点検知の良否判定結果(第2良否判定結果)を加工制御部1203へ出力する。そして、加工制御部1203は、加工終点検知の良否判定結果に基づき、加工継続または加工終了の指示をFIB-SEM装置101に対して行う。具体的には、良否判定結果が否定的な内容の場合、加工制御部1203は、FIB-SEM装置101にFIB加工を継続させる。一方、良否判定結果が肯定的な内容の場合、加工制御部1203は、FIB-SEM装置101にFIB加工を終了させる。
【0135】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態では、前述の実施の形態における効果に加え、以下の効果が得られる。本実施の形態によれば、学習器1202は、学習モデルを用いてSEM画像に基づく薄膜試料SAMに対する加工終点検知の良否判定処理(第2良否判定処理)を行い、加工制御部1203は、学習器1202における加工終点検知の良否判定結果に基づき、加工継続または加工終了の指示を前記加工装置に対して行う。
【0136】
薄膜加工時に通常行われているSEM画像による終点検知では、デバイスの微細化に伴い、実際にTEM装置102で観察を行うまで加工終点検知が上手くいったかどうか判断することが難しいが、TEM観察の結果を学習データとして学習器1202に学習させることで、薄膜加工時のSEM画像による終点検知精度を向上させることが可能となる。
【0137】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。
【0138】
また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる場合がある。
【符号の説明】
【0139】
100、200…半導体解析システム、101…FIB-SEM装置、102…TEM装置、103…上位制御装置、201…ALTS装置、1201…判定器、1202…学習器、1203…加工制御部、CAR…TEM観察用キャリア、SAM…薄膜試料、WAF…半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14