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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】マイクロカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/14 20060101AFI20231225BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231225BHJP
【FI】
B01J13/14 ZNM
B82Y40/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021507455
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2019010790
(87)【国際公開番号】W WO2020040608
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0099491
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0103288
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100202599
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 一貴
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【弁理士】
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ワン・オ
(72)【発明者】
【氏名】キョン・オン・チャ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャンジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジー・ソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サンリョ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミョンホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミンチェ・キム
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0181254(US,A1)
【文献】国際公開第2018/054719(WO,A1)
【文献】特開平05-212272(JP,A)
【文献】WILLIAMS,Mark et al.,Inorganic/organic hybrid microcapsules: Melamine formaldehyde-coated Laponite-based Pickering emulsions,Journal of Colloid and Interface Science,Vol.460,2015年,pages71-80
【文献】ZHANG,Wei et al.,Improving Stability andd Sizing Peformance of Alkenylsuccinic Anhydride(ASA) Emulsion by Using Melamine-modified Laponite Particles as Emulsion Stabilizer,I&EC research,Vol.53,2014年,pages12330-12338
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
B01J 13/02-13/22
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性無機ナノ粒子の水分散液とメラミンの水溶液を混合して、親水性無機ナノ粒子表面にメラミンが静電気的引力によって結合された有/無機複合粒子の水分散液を製造する第1段階;
前記有/無機複合粒子の水分散液に、オイルを添加して水中油型ピッカリングエマルションを形成する第2段階;および
前記水中油型ピッカリングエマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物を添加し、縮重合反応させる第3段階;を含み、
前記親水性無機ナノ粒子は、シリカ及びチタニアからなる群より選択されるいずれか一つまたは二つを含み、
前記親水性無機ナノ粒子の水分散液とメラミンとの水溶液は、親水性無機ナノ粒子1重量部に対してメラミンの含量が1~100重量部になるようにする量で混合され、
前記メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物は、最終製造されるマイクロカプセルの総重量に対してメラミン-ホルムアルデヒド樹脂の含量が5~60重量%となるようにする量で添加され、
メラミンが静電気的引力によって表面結合された親水性無機ナノ粒子によって囲まれたオイルを含むコア;および前記コアを囲み、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含むシェル;を含むコア-シェル構造を有し、マイクロカプセルの平均粒径が5~30μmであり、シェルの平均厚さが60~500nmであり、マイクロカプセルの総重量に対して、メラミン1~4重量%含む、マイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記親水性無機ナノ粒子の水分散液のpHが4~9である、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記親水性無機ナノ粒子は、平均粒径(D50)が1~300nmである、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
前記メラミンの水溶液は、pHが4~7である、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
前記親水性無機ナノ粒子の水分散液とメラミンの水溶液との混合は、親水性無機ナノ粒子1重量部に対してメラミンの含量が2~50重量部になるようにする量で混合される、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記オイルは、香オイル、発色オイルまたはこれらの混合物である、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記香オイルは、ミネラルオイル、または植物性オイルである、請求項6に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記発色オイルは、油分散着色剤および非極性炭化水素系オイルを含む、請求項6に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記油分散着色剤は、ナイルレッド、フルオレセイン、ローダミン、ボロン-ジピロメテン、シアニン系有機化合物、量子ドットまたはこれらの混合物を含む、請求項8に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
前記オイルは、最終製造されるマイクロカプセルの総重量に対して35~90重量%になるようにする含量で添加される、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項11】
前記メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物は、最終製造されるマイクロカプセルの総重量に対してメラミン-ホルムアルデヒド樹脂の含量が10~60重量%になるようにする量で添加される、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項12】
前記メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物でのメラミンに対するホルムアルデヒドのモル比(ホルムアルデヒド/メラミンのモル比)が2~8である、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項13】
前記縮重合反応は、50~90℃の温度条件で行われる、請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項14】
メラミンが静電気的引力によって表面結合された親水性無機ナノ粒子によって囲まれたオイルを含むコア;および
前記コアを囲み、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含むシェル;を含むコア-シェル構造を有する、マイクロカプセルであって、
マイクロカプセルの平均粒径が5~30μmであり、シェルの平均厚さが60~500nmであり、
前記親水性無機ナノ粒子は、シリカ及びチタニアからなる群より選択されるいずれか一つまたは二つを含み、
前記マイクロカプセルは、マイクロカプセルの総重量に対して、親水性無機ナノ粒子0.1~2重量%、メラミン1~4重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂5~60重量%およびオイル35~90重量%を含む、マイクロカプセル。
【請求項15】
前記マイクロカプセルは、平均粒径(D50)が9μm~21μmであり、シェルの平均厚さが80~200nmである、請求項14に記載のマイクロカプセル。
【請求項16】
前記マイクロカプセルは、マイクロカプセルの総重量に対して、親水性無機ナノ粒子0.5~1.8重量%、メラミン2~3.2重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂12~25重量%およびオイル70~85重量%を含む、請求項14に記載のマイクロカプセル。
【請求項17】
前記オイルは、香オイル、発色オイルまたはこれらの混合物を含む、請求項14に記載のマイクロカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2018年8月24日付韓国特許出願第10-2018-0099491号および2019年8月22日付韓国特許出願第10-2019-0103288号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、マイクロカプセルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは多様な方面に広く使用されている。例えば、色剤、触媒、接着剤、香料、燃料、農薬、生体材料、衣類、防虫剤、医薬品、食品、化粧品、生活用品、洗浄剤などに多様な用途として使用できる。この中でも、特に衣類、防虫剤、医薬品、化粧品、洗浄剤などの生活用品に使用されるオイル含みマイクロカプセルは流通過程ではオイルがカプセルから放出されず、製品使用時点にカプセル内含まれているオイルが放出されなければならない。一例として、香オイルの場合には、製品使用時点に使用者が感知できる量の香りが放出されなければならない。
【0003】
しかし、従来のマイクロカプセル製造方法の大部分は、オイルを単分子または高分子型の界面活性剤を用いてエマルション液滴として形成した後、メラミン-ホルムアルデヒド、ウレアまたはウレタンなどの樹脂をエマルションオイル液滴表面で縮重合してカプセル化している。このように製造されたオイルカプセルは、初期のオイル担持力、担持効率は優れているが、保存および流通過程中にオイルの放出を遮断しにくい。一例として、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の場合、機械的熱的安定性に優れ、製造工程が簡単であるためマイクロカプセルの製造に主に用いられている。メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を用いたマイクロカプセルの製造方法は1種以上の陰イオン性高分子乳化剤を用いてオイルを乳化させた後、酸性pHで既製造されたエマルション表面にメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー(pre-polymer)の重合/吸着を誘導してマイクロカプセルを製造することであって、前記方法では大きさの大きいカプセルを製造しにくく、カプセル内含まれるオイルの含量が低い。また、乳化剤として使用される陰イオン性高分子のためカプセル膜の物質透過度が高くてオイルを安定的に担持することができないという問題点がある。
【0004】
これに対し、無機ナノ粒子を用いて安定化されたマイクロカプセルを製造する方法が提案された。前記方法はシリカなどの無機物質の表面濡れ性を調節した後にこれを乳化剤として使用してピッカリングエマルションを製造することであって、無機物質からなるピッカリングエマルションは捕集された分子が透過できない無機物膜(membrane)を形成することができるが、カプセルの多孔性によって捕集分子の任意的流出を防止することができないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記問題点を解決して、カプセル内含まれるオイル、特に香オイルや発色オイルの保存安定性を改善して、長時間性能を維持することができ、またオイルの任意的揮発防止および選択的放出が可能なマイクロカプセルの製造方法を提供するためのことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、親水性無機ナノ粒子の水分散液とメラミン系単分子化合物の水溶液を混合して、親水性無機ナノ粒子表面にメラミンが静電気的引力によって結合された有/無機複合粒子の水分散液を製造する第1段階;
前記有/無機複合粒子の水分散液に、オイルを添加して水中油型ピッカリングエマルション(O/W Pickering emulsion)を形成する第2段階;および
前記水中油型ピッカリングエマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物(precondensate)を添加し、縮重合反応させる第3段階;を含む、マイクロカプセルの製造方法を提供する。
【0007】
また発明の他の一実施形態によれば、前記製造方法によって製造され、メラミンが静電気的引力によって表面結合された親水性無機ナノ粒子によって囲まれたオイルを含むコア;および前記コアを囲み、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含むシェル;を含むコア-シェル構造を有する、マイクロカプセルを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によってカプセル内含まれるオイルの保存安定性を改善して、長時間性能を維持することができ、またオイルの任意的揮発防止および選択的放出が可能なマイクロカプセルを製造することができる。特に、マイクロカプセル内含まれるオイルが揮発性香オイルである場合には香オイルの任意的揮発防止および選択的放出が可能であり、また発色オイルである場合には水分散状態でも発色オイルの反応が遮断されて長期間その性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で製造したマイクロカプセルに対する光学顕微鏡観察写真である(観察倍率:×200)。
図2】実施例1での水中油型ピッカリングエマルションに対する光学顕微鏡観察写真である。
図3】実施例3での水中油型ピッカリングエマルションに対する光学顕微鏡観察写真である。
図4】比較例3での水中油型ピッカリングエマルションに対する光学顕微鏡観察写真である。
図5】実施例1で製造したマイクロカプセルに対する電子顕微鏡写真である。
図6】実施例2で製造したマイクロカプセルに対する電子顕微鏡写真である。
図7】実施例3で製造したマイクロカプセルに対する電子顕微鏡写真である。
図8】比較例1で製造したマイクロカプセルに対する電子顕微鏡写真である。
図9】比較例2で製造したマイクロカプセルに対する電子顕微鏡写真である。
図10】比較例3で製造したマイクロカプセルに対する電子顕微鏡写真である。
図11】比較例4で製造したマイクロカプセルに対する電子顕微鏡写真である。
図12】参考例1で製造したマイクロカプセルに対する電子顕微鏡写真である。
図13】実施例4で製造した水中油型ピッカリングエマルションに対する光学顕微鏡観察写真である。
図14】実施例4で製造したマイクロカプセルの水分散液の写真である。
図15】実施例4で製造したマイクロカプセルに対する蛍光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で、本発明をさらに具体的に説明する。また、本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0011】
また、本発明の明細書で使用される“含む”の意味は特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外するのではない。
【0012】
以下、発明の具体的な実施形態によるマイクロカプセルの製造方法と、これを用いて製造したマイクロカプセルについて説明する。
【0013】
発明の一実施形態によるマイクロカプセルの製造方法は、親水性無機ナノ粒子の水分散液とメラミン系単分子化合物の水溶液を混合して、親水性無機ナノ粒子表面にメラミンが静電気的引力によって結合された有/無機複合粒子の水分散液を製造する第1段階;
【0014】
前記有/無機複合粒子の水分散液に、オイルを添加して水中油型ピッカリングエマルション(O/W Pickering emulsion)を形成する第2段階;および
前記水中油型ピッカリングエマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物(precondensate)を添加し、縮重合反応させる第3段階を含む。
【0015】
前記のように、発明の一実施形態によるマイクロカプセルの製造方法は、多官能性のアミン基を有するメラミン系単分子化合物を用いて親水性無機ナノ粒子表面の濡れ特性を改善し、またこれを用いてピッカリングエマルション方式で安定的な水中油型(オイルインウォーター)エマルションを作った後、メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物を縮重合反応させてメラミン-ホルムアルデヒド樹脂の殻層(シェル)を形成することによって、コア-シェル構造のマイクロカプセルを製造することができる。
【0016】
具体的に、発明の一実施形態によるマイクロカプセルの製造方法において、段階1は、pHが制御された親水性無機ナノ粒子の水分散液とメラミン系単分子化合物の水溶液を混合して、親水性無機ナノ粒子の表面にメラミン分子を吸着、具体的には静電気的引力によって結合させることにより、表面濡れ特性が改善された親水性無機ナノ粒子を製造する段階である。
【0017】
前記親水性無機ナノ粒子の水分散液は、親水性無機ナノ粒子を水中に分散させることによって製造できる。
【0018】
この時製造される親水性無機ナノ粒子の水分散液のpHは4~9、より具体的にはpH4~7であってもよい。前記pH範囲内である時、親水性無機ナノ粒子の表面が負電荷を帯びながら分散媒中に均一分散でき、その結果としてメラミンが効率良く静電気的引力によって結合できる。もし親水性無機ナノ粒子の水分散液のpHが前記範囲を逸脱してpHが9を超過すればメラミン分子の溶解度および陽イオン性が低くなって粒子表面改質効率が低くなる恐れがあり、pH4未満であればメラミン分子の溶解度が大きく増加して改質されたナノ粒子がエマルションを安定的に形成しない恐れがある。これにより、必要な場合には親水性無機ナノ粒子の水分散液のpHが前記範囲になるように硫酸、硝酸、塩酸などのような酸性水溶液や、または水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムのようなアルカリ性水溶液の投入を通じてpHを4~9に調節するのが好ましいことがある。
【0019】
一方、前記親水性無機ナノ粒子は、1nm以上1μm未満のナノ水準の粒子大きさ(または粒径)を有する球形の親水性無機粒子であって、具体的には体積基準平均粒径(D50)が1~300nmであってもよい。親水性無機ナノ粒子の平均粒径(D50)が過度に小さい場合、粒子同士の過度な凝集によって分散性が低下する恐れがあり、また過度に大きい場合、粒子自体で分散性が低下する恐れがある。これにより、前記範囲内の粒子大きさを有する時、優れた分散性を安定的に示すことができる。より具体的には、pH4~9で平均粒径(D50)が5~200nmであるものが、優れた分散性および分散安定性によって製造したカプセル大きさが適切に制御され、オイルが安定的に担持され得る。
本発明において、平均粒径(D50)は、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
【0020】
前記親水性無機ナノ粒子としては、具体的にシリカ、チタニア、金属酸化物、貴金属、燐灰石または石灰石などが挙げられ、マイクロカプセルの用途およびオイルの種類によって前記物質のうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。この中でも前記親水性無機ナノ粒子は、粒子全体にかけて同一な表面電荷を有するシリカであり得る。一部無機粒子の場合、粒子表面によって負電荷または正電荷で帯電でき、この場合、1種の単分子化合物の静電気的引力による結合を誘導する場合、特定の部分のみ改質され、残りはそのまま静電気的性質を維持することによって斥力(repulsion)が発生することがあり、その結果、製造されるカプセルの膜緻密度が低下することがある。これに反し、シリカは同一な表面電荷を有することによって静電気的引力によるメラミンの均質な結合が可能であり、その結果、増加された膜緻密度を示すことができる。
【0021】
また、前記親水性無機ナノ粒子の水分散液中の親水性無機ナノ粒子の含量は特に限定されず、工程性などを考慮して、水分散液総重量に対して親水性無機ナノ粒子を0.01~1.0重量%で含むのが好ましいことがある。
【0022】
前記親水性無機ナノ粒子は、最終製造されるマイクロカプセル総重量に対して0.1重量%以上2重量%以下になるようにする含量で使用できる。親水性無機ナノ粒子の使用量が0.1重量%未満であればエマルションが形成されない恐れがあり、2重量%を超過すればエマルションの直径が非常に小さく分散安定性が低下する恐れがある。親水性無機ナノ粒子の含量制御による改善効果の顕著さを考慮する時、最終製造されるマイクロカプセル総重量に対して0.3重量%以上、または0.4重量%以上、または0.5重量%以上であり、2.0重量%以下、または1.8重量%以下、または1.5重量%以下になるようにする含量で使用されるのがより好ましいことがある。
【0023】
一方、メラミン系単分子化合物の水溶液はメラミン(melamine)またはその誘導体を水に溶解させて製造したものであって、必要な場合、前記メラミン系単分子化合物の水溶液に対して塩酸、硫酸または酢酸などの酸性水溶液を投入してpHを4~7に制御することができる。前記pH範囲の水溶液中でメラミンは正電荷性分子として存在するようになる。
【0024】
本発明で使用されるメラミン系単分子化合物はメラミンまたはその誘導体の単分子化合物であって、具体的には重量平均分子量が70~200g/mol、より具体的に100~150g/molであってもよい。
【0025】
このように、本発明ではピッカリングエマルションの実現のための有/無機複合粒子の製造時、高分子に比べて小さい分子量を有するメラミンまたはその誘導体の単分子化合物を使用することによって、親水性無機ナノ粒子の表面に対して静電気的引力によってメラミンを均一に結合させることができ、その結果として親水性無機ナノ粒子の表面濡れ性が均質に改質され得る。また、高分子を使用する場合、粒子間の凝集(aggregation)が起こりやすく、したがってカプセル化以前のエマルションの分散安定性が低くなる恐れがある。
【0026】
前記メラミン系単分子化合物の水溶液中のメラミン系単分子化合物の含量は、特に限定されるのではないが、メラミンの溶解度を考慮してメラミン系単分子化合物の水溶液総重量に対して0.1~40重量%であるのが好ましいことがある。
【0027】
前記親水性無機ナノ粒子の水分散液とメラミン系単分子化合物の水溶液との混合は通常の混合方法によって行うことができ、この時、混合効率および静電気的引力による結合効率を高めるために機械的攪拌などの処理を選択的にさらに行うことができる。
【0028】
また、前記親水性無機ナノ粒子の水分散液と、メラミン系単分子化合物の水溶液との混合は、親水性無機ナノ粒子1重量部に対してメラミン系単分子化合物1~100重量部の含量で混合できる。メラミン系単分子化合物の含量が過度に小さい場合、親水性無機ナノ粒子表面に静電気的引力によって結合されるメラミン分子の量が小さくて十分な効果を得にくく、反面、メラミン系単分子化合物の含量が過度に多い場合、親水性無機ナノ粒子表面に静電気的引力によって結合されず残留するメラミン系単分子化合物が副反応を起こす恐れがある。前記含量範囲で混合時、メラミン系単分子化合物残留による副反応の恐れなくメラミン分子が親水性無機ナノ粒子表面に静電気的引力によって結合されて本発明の効果を十分に実現することができる。メラミン系単分子化合物の含量制御による改善効果の顕著さを考慮する時、より具体的には親水性無機ナノ粒子1重量部に対してメラミン系単分子化合物2~50重量部の含量で混合できる。
【0029】
前記メラミンは、最終製造されるマイクロカプセル総重量に対して1重量%以上、4重量%以下になるようにする含量で含まれ得る。前記含量範囲内では親水性無機ナノ粒子表面に静電気的引力によって十分に結合されて、無機ナノ粒子表面の濡れ特性を改善することによって本発明の効果を実現することができる。メラミン含量制御による前記改善効果の増進面で、より具体的にはマイクロカプセル総重量に対してメラミンの含量が1.5重量%以上、または2重量%以上であり、3.5重量%以下、または3.2重量%以下、または3重量%以下であってもよい。
【0030】
前記混合工程の結果として、負電荷を帯びる親水性無機ナノ粒子表面に正電荷性メラミン分子が静電気的引力によって結合されて、有/無機複合粒子を形成し、これは水中に分散したナノ構造体形態に得られる。
【0031】
その次に、段階2は、前記第1段階の結果としてメラミンが静電気的引力によって表面結合されたシリカナノ複合体分散液にオイルを添加して水中油型ピッカリングエマルション(O/W Pickering emulsion)を形成する段階である。
【0032】
前記オイルはカプセルの内部コア物質として使用されるものであって、具体的には香オイルまたは発色オイル(oil for color formation)を含むことができる。
【0033】
前記香オイルの具体的な例としては、タイム(thyme)、レモングラス、ラベンダー、シトロネラ、ユーカリ、ゼラニオールなどのエッセンシャルオイル、ミネラルオイル、または植物性オイルなどが挙げられるが、前記オイルの種類はこれらに限定されず、この分野によく知られた液体形態のエマルション化が可能な物質であれば全て使用可能である。
【0034】
また、前記発色オイルは、自体で発色するオイルであるか、または着色剤などを含んで発色するオイルであってもよい。具体的に、着色剤などを含む発色オイルの場合、油分酸着色剤および非極性炭化水素系オイルを含むことができる。具体的に、前記油分酸着色剤としては、ナイルレッド(Nile red)、フルオレセイン(fluorescein)、ローダミン(rhodamine)、ボロン-ジピロメテン(boron-dipyrromethene;BODIPY)、シアニン(cyanine)系有機化合物、または量子ドット(quantum dot)のような無機化合物が挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。また、前記非極性炭化水素系オイルとしてはn-デカン(n-decane)、n-ドデカン(n-dodecane)、n-テトラデカン(n-tetradecane)、n-ヘキサデカン(n-hexadecane)、ペンタデカン(Pentadecane)、ヘプタデカン(Heptadecane)、またはオクタデカン(Octadecane)などのような炭素数10~20の非極性炭化水素系オイル(nonpolar hydrocarbon oil)が挙げられ、前記化合物のうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0035】
前記オイルは、最終製造されるマイクロカプセル総重量に対して35重量%以上、90重量%以下になるようにする含量で含まれ得る。オイル添加量が過度に低ければ粒子の大きさが小さくなり含まれているオイルによる効果を得にくいだけでなく、相対的にカプセルの厚さが厚くなって有効成分の放出が容易でない恐れがある。反面、オイル添加量が過度に高ければエマルションの安定性低下によってカプセルの性能が低下する恐れがある。よって、前記含量範囲内でオイルを投入する場合、前記のような恐れなくオイルを安定的に捕集することができる。オイル含量制御による粒子大きさ制御効果の顕著さを考慮する時、より具体的に前記オイルは、最終製造されるマイクロカプセル総重量に対して35重量%以上、または50重量%以上、または70重量%以上であり、88重量%以下、または85重量%以下になるようにする含量で含まれ得る。
【0036】
前記段階1でのメラミンが静電気的引力によって表面結合された親水性無機ナノ粒子のエマルションにオイルを添加すれば、前記親水性無機ナノ粒子によってオイルが囲まれた水中油型ピッカリングエマルション(O/W Pickering emulsion)が形成される。この時、段階1での処理で静電気的引力によって表面に結合されたメラミンによって親水性無機ナノ粒子の表面濡れ特性が改善されることによってより安定的にオイルを捕集することができる。
【0037】
一方、前記オイルの添加は滴加など通常の方法で投入でき、オイル添加後、混合効率およびピッカリングエマルション形成効率を高めるために超音波分散や均質化分散処理を選択的に行うこともできる。
【0038】
その次に、段階3は、前記段階2で製造した水中油型ピッカリングエマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物を添加し縮重合反応させて、外部メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の殻層を形成する段階である。
【0039】
具体的には、前記段階2で製造した水中油型ピッカリングエマルションに、最終製造されるマイクロカプセルの総重量に対してメラミン-ホルムアルデヒド樹脂の含量が5重量%以上、60重量%以下になるようにする量でメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物を添加し、縮重合反応を行う。
【0040】
前記メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物は、イミン官能基(imine functional group)を含んでいて、ヒドロキシ基やアミノ基と急速に反応して高分子量のメラミンホルムアルデヒド樹脂を容易に合成することができる。
【0041】
前記メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物の投入量が過度に低ければ、メラミン-ホルムアルデヒド縮合物を含む殻層の形成が容易でなく、また投入量が過度に高ければ過度に厚い殻層が形成されるか単独で粒子あるいはフィルム層が合成されてカプセルの分散性が低下する恐れがある。よって、最終製造されるマイクロカプセルでのメラミン-ホルムアルデヒドの含量を考慮した、前記含量範囲内でメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物の添加時、副反応に対する恐れなく適切な厚さのメラミン殻層が形成されることによって優れたオイル捕集および機械的強度実現効果を示すことができる。メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物の含量制御によるカプセル厚さおよび機械的強度実現効果の顕著さを考慮する時、前記メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物は、より具体的に、最終製造されるマイクロカプセル総重量に対してメラミン-ホルムアルデヒド樹脂の含量が10重量%以上、または12重量%以上、または14重量%以上であり、60重量%以下、または40重量%以下、または30重量%以下、または25重量%以下になるようにする量で添加できる。
【0042】
一方、前記メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物は、プレ縮合物内メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比(ホルムアルデヒド/メラミンのモル比)が2~8であってもよい。前記重量比範囲で制御されたメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物の使用時、優れた保存安定性と共に界面活性剤の投入なくても分散媒である水に対して優れた相溶性を示すことができる。
【0043】
前記縮重合反応は50~90℃の温度条件で行うことができ、前記温度実現のために加熱工程を行うことができる。縮重合反応時の温度が前記範囲内である時、未反応または副反応発生に対する恐れなく、高い反応効率を示すことができる。
【0044】
また、前記縮重合反応時、重合反応の効率を高めるために攪拌工程を同時に行うことができる。前記攪拌工程は、300~1000rpm、好ましく500~600rpmの攪拌速度で行うことができる。
【0045】
前記メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物の縮合重合反応を通じて製造される高分子樹脂がエマルション表面に継続して結合されながら外部殻層(シェル)が形成される。
【0046】
前記第3段階の重合後、必要によって濃縮または/および乾燥過程を追加的に行うことができ、その条件が制限されない。
【0047】
前記方法によって製造されたマイクロカプセルは、コア-シェル構造を有し、前記コアは、メラミンが静電気的引力によって表面結合された親水性無機ナノ粒子によって囲まれたオイルを含み、前記シェルは1層以上の多層構造を有し、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含む。これにより、表面メラミン-ホルムアルデヒド樹脂カプセルが有している硬度(hardness)、繊維付着能のような特性をそのまま示しながらも有/無機複合乳化剤によって物理的により安定化されたコロイドシステムを提供することができる。また、多重層からなるカプセルは内部に捕集されたオイル分子の非意図的溶出を防止することができる。
【0048】
また、前記製造方法によって製造されたマイクロカプセルは、平均粒径(D50)が5μm以上、50μm以下であり、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含むシェルの平均厚さが50nm以上であってもよい。このようにカプセル粒子の大きさが大きく、シェルの厚さが厚いためカプセル内含まれるオイルの含量を増加させることができ、また、シェルの物質透過度が低くなってオイルを安定的に担持することができる。より具体的には、マイクロカプセルの平均粒径(D50)が5μm以上、または6μm以上、または9μm以上であり、30μm以下、または15μm以下であり、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含むシェルの平均厚さが60nm以上、または80nm以上であってもよく、厚さが厚いほど効果がさらに増進できる。また、シェルの厚さは1000nm以下、または800nm以下、または500nm以下であってもよい。
【0049】
本発明において、マイクロカプセルの平均粒径(D50)はレーザー光回折散乱式粒度分析計で測定後、体積積算値から計算することができ、カプセル厚さは電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0050】
これにより、本発明の他の一実施形態によれば、前記製造方法によって製造されるマイクロカプセルを提供する。
【0051】
前記マイクロカプセルは前述のように、メラミンが静電気的引力によって表面結合された親水性無機ナノ粒子によって囲まれたオイルを含むコア;および前記コアを囲み、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含むシェル;を含むコア-シェル構造を有し、この時、前記メラミン、親水性無機ナノ粒子、オイルおよびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂は先に説明したものと同一である。
【0052】
また、前記マイクロカプセルは、平均粒径(D50)が5μm~50μmであり、シェルの平均厚さが50nm以上、あるいは60~1000nmであってもよく、前記シェルは多層構造を有することができる。
【0053】
また、前記マイクロカプセルは、マイクロカプセルの総重量に対して親水性無機ナノ粒子0.1~2重量%、メラミン1~4重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂5~60重量%、およびオイル35~90重量%を含むことができ、より具体的にはマイクロカプセルの総重量に対して親水性無機ナノ粒子0.3~2重量%、メラミン1.5~3.5重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂10~60重量%およびオイル35~88重量%を含むことができ、よりさらに具体的にはマイクロカプセルの総重量に対して親水性無機ナノ粒子0.5~1.8重量%、メラミン2~3.2重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂12~25重量%およびオイル70~85重量%を含むことができる。
【0054】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。但し、これは発明の例示として提示されたものであって、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されるのではない。
【実施例
【0055】
実施例1:マイクロカプセルの製造
親水性無機ナノ粒子としてシリカナノ粒子を水に分散させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを5.0に調節してシリカナノ粒子の水分散液を準備した(分散したシリカナノ粒子の平均粒径(D50):25nm、水分散液中のシリカナノ粒子の含量:0.1重量%)。これと別途に、メラミンを水中に溶解させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを5.0に調節してメラミン水溶液を準備した(メラミン水溶液中のメラミン含量:1.0重量%)。前記で準備したシリカナノ粒子の水分散液とメラミン水溶液を、シリカナノ粒子:メラミンの重量比=1:5になるようにシリカナノ粒子0.02gとメラミン0.10gを混合して、シリカナノ粒子の表面にメラミン分子が静電気的引力によって結合された有/無機ナノ複合体含み分散液を製造した。前記有/無機ナノ複合体含み分散液25mlに、香オイルとしてゼラニオールを3.0g添加し混合して、水中油型ピッカリングエマルションを製造した。
【0056】
結果の水中油型ピッカリングエマルションに、メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物(MF)1.0g(水中油型ピッカリングエマルションでのメラミン:メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物の重量比1:10、メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物でのホルムアルデヒド/メラミンのモル比=6)を水に希釈した溶液10.0g(pH6.0)を徐々に入れて、50℃および600rpmの条件で加熱攪拌してマイクロカプセルを製造した。この時、マイクロカプセル総重量に対して、シリカナノ粒子の含量は0.5重量%、メラミン含量は2.4重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の含量は24重量%、そして香オイル含量は73.1重量%であった。
【0057】
実施例2:マイクロカプセルの製造
シリカナノ粒子を水に分散させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを5.0に調節してシリカナノ粒子の水分散液を準備した(分散したシリカナノ粒子の平均粒径(D50):25nm、水分散液中のシリカナノ粒子の含量:0.1重量%)。これと別途に、メラミンを水中に溶解させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを5.0に調節してメラミン水溶液を準備した(メラミン水溶液中のメラミン含量:1.0重量%)。実施例1と同様な方法でシリカナノ複合体含み分散液を製造した。前記で有/無機複合シリカナノ複合体含み分散液25mlに、香オイルとしてゼラニオールを3.0g添加し混合して、水中油型ピッカリングエマルションを製造した。結果の水中油型ピッカリングエマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物(MF)0.5g(水中油型ピッカリングエマルションでのメラミン:メラミンホルムアルデヒドプレ縮合物の重量比1:5、メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物でのホルムアルデヒド/メラミンのモル比=6)を水に希釈した溶液10.0g(pH6.0)を徐々に入れて、50℃および600rpmの条件で加熱攪拌してマイクロカプセルを製造した。マイクロカプセル総重量に対して、シリカナノ粒子含量が0.55重量%、メラミン含量が2.8重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の含量が14重量%、そして香オイル含量が82.65重量%であった。
【0058】
実施例3.マイクロカプセルの製造
チタニアナノ粒子を水に分散させた後、希水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)を投入してpHを7.0に調節してチタニアナノ粒子の水分散液を準備した(分散したTiOナノ粒子の平均粒径(D50):20nm、水分散液中のチタニアナノ粒子の含量:1.0重量%)。これと別途に、メラミンを水中に溶解させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを5.0に調節してメラミン水溶液を準備した(メラミン水溶液中のメラミン含量:1.0重量%)。実施例1と同様な方法でチタニアナノ複合体含み分散液を製造した。前記で有/無機複合チタニアナノ複合体含み分散液25mlに、香オイルとしてゼラニオールを5.0g添加し混合して、水中油型ピッカリングエマルションを製造した。結果の水中油型ピッカリングエマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物(MF)0.5g(水中油型ピッカリングエマルションでのメラミン:メラミンホルムアルデヒドプレ縮合物の重量比1:5、メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物でのホルムアルデヒド/メラミンのモル比=6)を水に希釈した溶液10.0g(pH6.0)を徐々に入れて、50℃および600rpmの条件で加熱攪拌してマイクロカプセルを製造した。マイクロカプセル総重量に対して、チタニアナノ粒子含量が1.67重量%、メラミン含量が2.5重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の含量が12.5重量%、そして香オイル含量が83.33重量%であった。
【0059】
実施例4.マイクロカプセルの製造
シリカナノ粒子を水に分散させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを5.0に調節してシリカナノ粒子の水分散液を準備した(分散したシリカナノ粒子の平均粒径(D50):25nm、水分散液中のシリカナノ粒子の含量:0.1重量%)。これと別途に、メラミンを水中に溶解させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを5.0に調節してメラミン水溶液を準備した(メラミン水溶液中のメラミン含量:1.0重量%)。実施例1と同様な方法でシリカナノ複合体含み分散液を製造した。前記で有/無機複合シリカナノ複合体含み分散液25mlに、1%ナイルレッド(Nile red)が分散したn-hexadecaneを3.0g添加し混合して、水中油型ピッカリングエマルションを製造した。結果の水中油型ピッカリングエマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物(MF)0.5g(水中油型ピッカリングエマルションでのメラミン:メラミンホルムアルデヒドプレ縮合物の重量比1:5、メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物でのホルムアルデヒド/メラミンのモル比=6)を水に希釈した溶液10.0g(pH6.0)を徐々に入れて、50℃および600rpmの条件で加熱攪拌してマイクロカプセルを製造した。マイクロカプセル総重量に対して、シリカナノ粒子含量が0.55重量%、メラミン含量が2.8重量%、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の含量が14重量%、そして発色オイル含量が82.65重量%であった。
【0060】
比較例1:メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の単層マイクロカプセルの製造
SMA(styrene maleic anhydride)1.6gを含む水溶液100mLに、香オイルとしてゼラニオール20gを入れ混合してエマルションを製造した。前記エマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物5.0gを入れて50~70℃の温度範囲で600rpmの攪拌速度で加熱攪拌してマイクロカプセルを製造した。
【0061】
比較例2:シリカナノ粒子で安定化されたマイクロカプセルの製造
シリカナノ粒子を含む水分散液(シリカナノ粒子の平均粒径(D50):25nm、水分散液中のシリカナノ粒子の含量:0.1重量%)100mLに、香オイルとしてゼラニオール20gを入れ混合してオイル相のピッカリングエマルションを製造した。前記エマルションに界面活性剤としてSMA(styrene maleic anhydride copolymer)1.6gを添加し混合して安定なコロイド溶液を準備した。
【0062】
比較例3:シリカ-(メラミン-ホルムアルデヒド樹脂)ナノ複合体エマルション製造
シリカナノ粒子を水に分散させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを5.0に調節してシリカナノ粒子の水分散液を準備した(分散したシリカナノ粒子の平均粒径(D50):25nm、水分散液中のシリカナノ粒子の含量:0.1重量%)。これと別途に、メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物(メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物でのホルムアルデヒド/メラミンのモル比=6)を水中に溶解させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを6.0に調節して水溶液を準備した(メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物含量:0.2重量%)。前記で準備したシリカナノ粒子の水分散液とメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物水溶液を、シリカナノ粒子:メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物の重量比=1:2.5になるようにシリカナノ粒子0.02gとメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物0.05gを混合して、シリカナノ粒子の表面にメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物が静電気的引力によって結合された有/無機複合シリカナノ複合体含み分散液を製造した。前記で有/無機複合シリカナノ複合体含み分散液25mlに、香オイルとしてゼラニオール3.0gを添加して混合し、水中油型ピッカリングエマルションを製造した。
【0063】
前記で製造した水中油型ピッカリングエマルションを使用することを除いては実施例1と同様な方法でマイクロカプセル製造工程を行ったが、粒子が形成されなかった。
【0064】
比較例4
シリカナノ粒子を水に分散させた後、希塩酸水溶液(0.1N)を投入してpHを7.0に調節してシリカナノ粒子の水分散液を準備した(分散したシリカナノ粒子の平均粒径(D50):25nm、水分散液中のシリカナノ粒子の含量:0.1重量%)。この溶液にホルムアルデヒド(formaldehyde)を追加して(シリカ:ホルムアルデヒド水溶液=1:25)シリカ粒子の表面反応性を確保した。これと別途に、メラミンを水中に溶解させた後(メラミン水溶液中のメラミン含量:1.0重量%)。混合液に投与して改質されたシリカ粒子の表面とメラミン分子の反応を誘導して、シリカ粒子表面にメラミンが化学結合されたメラミン層を形成した。前記で有/無機複合シリカナノ複合体含み分散液25mlに、香オイルとしてゼラニオールを3.0g添加し混合して、水中油型ピッカリングエマルションを製造した。結果の水中油型ピッカリングエマルションにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物(MF)0.5g(水中油型ピッカリングエマルションでのメラミン:メラミンホルムアルデヒドプレ縮合物の重量比1:5、メラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物でのホルムアルデヒド/メラミンのモル比=6)を水に希釈した溶液10.0g(pH6.0)を追加的に徐々に入れて、50℃および600rpmの条件で加熱攪拌してマイクロカプセル製造工程を行った。しかし、粒子が形成されず、無定形の凝集体(amorphous aggregation)が形成された。
【0065】
参考例1:シリカナノ粒子とアクリレート複合体からなるマイクロカプセルの製造
シリカナノ粒子(平均粒径(D50):25nm)0.4gを水50mLに分散させてシリカコロイダル溶液を製造した後、水に対する溶解度が25g/L程度であるジエチレングリコールジアクリレート3gを添加して氷槽で20分間超音波分散処理して、シリカ表面にアクリレートモノマーを静電気的引力で結合させた。
【0066】
結果として得られた溶液100mLに、油溶性開始剤を溶かした香オイルとしてゼラニオール20gを入れ、氷槽で再び20分間超音波分散処理しながら、ピッカリングエマルションを製造した。これを丸底フラスコに入れて密閉させた後、Nバブリング(bubbling)後60℃でラジカル重合反応を20時間行ってマイクロカプセルを製造した。
【0067】
実験例1
前記実施例1で製造したマイクロカプセルを光学顕微鏡で観察し、その結果を図1に示した。
【0068】
その結果、実施例1で製造したマイクロカプセルは、メラミンが静電気的引力によって表面結合されたシリカナノ粒子によって囲まれたオイルがコアを形成しており、また前記コアを囲みながら、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂がシェルを形成したコア-シェル構造を有するのを確認することができる。
【0069】
実験例2
前記実施例1、3および比較例3で製造した水中油型ピッカリングエマルションを光学顕微鏡で観察し、その結果を図2~4にそれぞれ示した。
【0070】
その結果、実施例1および3で製造した水中油型ピッカリングエマルションの場合、メラミン分子がシリカナノ粒子表面に静電気的引力によって結合された有/無機複合粒子の大きさが均一な反面、前記実施例1でメラミン単分子化合物の代わりにメラミン-ホルムアルデヒドプレ縮合物を使用した比較例3の水中油型ピッカリングエマルションは有/無機複合粒子の大きさが小さくて不均一であった。
【0071】
実験例3
前記実施例、比較例および参考例で製造したマイクロカプセルに対して下記方法によって粒子特性を評価した。
(1)形状:電子顕微鏡を用いてカプセル形状を観察し、その結果を図5図12にそれぞれ示した。
(2)平均粒径(D50):レーザー光回折散乱式粒度分析計で2回以上測定し、体積積算値から計算した。その結果を平均±標準偏差(standard deviation)で示した。
(3)圧搾形態:1N/cm力を垂直に加え圧搾してカプセルの壊れる程度と形態(HITACHI社製のS-4800)を観察し、下記のように分類した。
ア:破れる
イ:裂ける
ウ:押される
(4)シェル厚さ:電子顕微鏡(HITACHI S-4800)を用いて測定した。
また下記のような方法で、下記のような残香評価方法で洗濯耐久性を評価した。
(5)粒子繊維付着能評価:
各香りカプセルの香り担持量と担持効率が同一であると仮定した時、洗濯後繊維での残香評価で香りカプセルの繊維付置力を評価した。
【0072】
<試験条件(一般洗濯機評価)>
試験試片は市販される100%綿タオル(30×20cm)、混紡残香評価布(30×20cm)試片を準備した後、一般洗濯洗剤を標準使用量使用し洗濯機で5回反復洗濯した後に脱水したものを使用した。
【0073】
前記実施例、比較例および参考例で製造したそれぞれのマイクロカプセルを1%水溶液に作った後、攪拌式洗濯機に標準使用量(0.67ml/1リットル洗濯水)を基準にして使用したそれぞれの濯ぎ水(20℃)に濯ぎコースで処理し、脱水後に試験片を取り出した。そして、試験片を伸張されるか捩れないようにして20℃、60%RH条件で24時間網乾燥(flat dry)した。熟練したpanelistの官能評価試験によって香りの強度程度を点数として最低1点から最高5点まで付与するようにして、これを3回以上繰り返してその平均値として残香効果を評価した。その他細部試験条件は韓国環境産業技術院の環境標識認証基準のうちのEL306(繊維柔軟剤)内試験方法に準ずる。
【0074】
(6)乾燥後残香性:
カプセル当りローディング(loading)された香オイル量が多ければ、繊維付着能が優れていなくても残香性が優れることがある。よって、マイクロカプセル内にローディングされた香オイル量の比較のために、乾燥後に残香性評価を行った。
【0075】
前記実施例、比較例および参考例で製造したそれぞれのマイクロカプセルを1%水溶液に作った後、前記で準備した試験試片を入れて1時間含浸後、取り出して乾燥した。乾燥後試験試片での残香評価で香りカプセルの残香性を評価した。評価は前記と同様に、熟練したpanelistの官能評価試験によって香りの強度程度を点数として最低1点から最高5点まで付与するようにし、これを3回以上繰り返してその平均値として残香効果を評価した。但し、比較例3および比較例4は粒子を形成しなかったため性能評価から除外した。
【0076】
【表1】
【0077】
実験結果、本発明によって製造された実施例1~3のマイクロカプセルは平均粒径が5μm以上であり、シェルの平均厚さが80~200nmであって、従来の方法で製造された比較例1と2のマイクロカプセル、そしてシリカナノ粒子とアクリレート複合体からなる参考例1のカプセルに比べて、カプセルの大きさが大きく膜の厚さが厚く、より高い硬度特性を示した。このような結果から実施例1~3のマイクロカプセルは比較例1と2、および参考例1と比較してカプセル内により高い含量で香オイルを含むことができ、カプセル膜を通した物質透過度がさらに減少でき、高い耐久性によって香オイルを安定的に担持することができるのが分かり、これによる改善効果は繊維付着能および乾燥後残香性評価から確認することができた。
【0078】
また、前記実施例4で製造した水中油型ピッカリングエマルションと、最終製造されたマイクロカプセルおよび前記カプセルが分散した水分散液をそれぞれ観察し、その結果を図13図15に示した。
【0079】
図13は、実施例4で製造した水中油型ピッカリングエマルションに対する光学顕微鏡観察写真である。
図13に示されているように、香オイルの代わりに発色オイルを含む場合にも実施例1および3と同様に、水中油型ピッカリングエマルションが形成され、メラミン分子がシリカナノ粒子表面に静電気的引力によって結合された有/無機複合粒子の大きさが均一であった。
【0080】
また、図14は実施例4で製造したマイクロカプセルの水分散液の写真であり、図15は実施例4で製造したマイクロカプセルに対する蛍光顕微鏡写真である。
【0081】
観察結果、実施例4で製造したマイクロカプセルもメラミンが静電気的引力によって表面結合されたシリカナノ粒子によって囲まれたオイルがコアを形成しており、また前記コアを囲みながら、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂がシェルを形成したコア-シェル構造を有し、またコア内オイル中に含まれているナイルレッド(nile red)によって赤色を帯びた。マイクロカプセルの構造から水分散状態でも発色オイルの反応が遮断され長期間その性能を維持できるのを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15