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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231225BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231225BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231225BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20231225BHJP
   C09J 125/06 20060101ALI20231225BHJP
   C09J 123/06 20060101ALI20231225BHJP
   C09J 123/12 20060101ALI20231225BHJP
   C09J 167/02 20060101ALI20231225BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H01L21/78 N
B24B7/04 A
B24B41/06 L
C09J7/30
C09J125/06
C09J123/06
C09J123/12
C09J167/02
H01L21/304 622J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020005338
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021114501
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 卓
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220550(JP,A)
【文献】特開2014-075405(JP,A)
【文献】特開2019-212782(JP,A)
【文献】特開2018-060873(JP,A)
【文献】特開2008-114350(JP,A)
【文献】特開2017-054843(JP,A)
【文献】特開2018-133371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 7/04
B24B 41/06
C09J 7/30
C09J 125/06
C09J 123/06
C09J 123/12
C09J 167/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインによって区画された表面の複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハの裏面を研削又は研磨するウェーハの加工方法であって、
ウェーハを収容できる大きさの開口を有するフレームの該開口にウェーハを位置づけて該ウェーハの該表面と該フレームとに熱圧着シートを熱圧着することで、該ウェーハと該フレームとが該熱圧着シートを介して一体化されたフレームユニットを形成するフレームユニット形成工程と、
該フレームユニットを加工装置のチャックテーブルで保持する保持工程と、
該ウェーハの該裏面を該加工装置の加工ユニットで研削又は研磨する加工工程と、
該チャックテーブルから該フレームユニットを搬出して加工済みの該ウェーハを洗浄する洗浄工程と、
を含み、
該フレームユニット形成工程において、該熱圧着シートの平坦性を維持する平坦化部材を該ウェーハと該フレームとの間に配置した状態で該ウェーハと該フレームとに該熱圧着シートを熱圧着することを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
該加工工程において、砥粒を含む研磨パッドを用いて該ウェーハの該裏面を乾式で研磨することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シートであることを特徴とする請求項1又は請求項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかであることを特徴とする請求項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項5】
該ポリオレフィン系シートが該ポリエチレンシートの場合、該フレームユニット形成工程において120℃~140℃の温度で該ポリエチレンシートを熱圧着し、該ポリオレフィン系シートが該ポリプロピレンシートの場合、該フレームユニット形成工程において160℃~180℃の温度で該ポリプロピレンシートを熱圧着し、該ポリオレフィン系シートが該ポリスチレンシートの場合、該フレームユニット形成工程において220℃~240℃の温度で該ポリスチレンシートを熱圧着することを特徴とする請求項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項6】
該熱圧着シートは、ポリエステル系シートであることを特徴とする請求項1又は請求項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項7】
該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート、又はポリエチレンナフタレートシートであることを特徴とする請求項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項8】
該ポリエステル系シートが該ポリエチレンテレフタレートシートの場合、該フレームユニット形成工程において250℃~270℃の温度で該ポリエチレンテレフタレートシートを熱圧着し、該ポリエステル系シートが該ポリエチレンナフタレートシートの場合、該フレームユニット形成工程において160℃~180℃の温度で該ポリエチレンナフタレートシートを熱圧着することを特徴とする請求項に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割予定ラインによって区画された表面の複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハを加工する際に用いられるウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータ等の電子機器に組み込まれるデバイスチップの製造工程では、例えば、シリコン等の半導体やサファイア等の絶縁体でなるウェーハの表面に複数の分割予定ライン(ストリート)が設定される。また、分割予定ラインで区画された表面の各領域に、IC(Integrated Circuit)やLED(Light Emitting Diode)等のデバイスが形成される。
【0003】
表面の各領域にデバイスが形成されたウェーハは、例えば、研削や研磨等の方法によって所望の厚みになるまで裏面側を加工された後に、切削装置やレーザー加工装置等を用いて分割予定ラインで分割される。これにより、上述のようなデバイスをそれぞれが備える複数のデバイスチップが得られる。
【0004】
ところで、研削や研磨等の方法でウェーハを加工すると、ウェーハが薄くなってその強度は低下する。よって、研削や研磨等の方法で加工されたウェーハを破損させることなく単体で搬送するのは容易でない。そこで、ウェーハを加工する前に、粘着テープを用いて環状のフレームにウェーハを一体化させる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-284449号公報
【文献】特開平11-40520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粘着テープを用いて環状のフレームに一体化されたウェーハを研削や研磨等の方法で加工すると、加工の際にウェーハから発生する屑(加工屑)が、ウェーハとフレームとの間で露出する粘着テープの粘着層に付着する。例えば、ウェーハを搬送する際にこの屑が粘着テープから脱落すると、搬送経路や装置等が汚染されてしまう。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送経路や装置等の汚染を防止できるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、分割予定ラインによって区画された表面の複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハの裏面を研削又は研磨するウェーハの加工方法であって、ウェーハを収容できる大きさの開口を有するフレームの該開口にウェーハを位置づけて該ウェーハの該表面と該フレームとに熱圧着シートを熱圧着することで、該ウェーハと該フレームとが該熱圧着シートを介して一体化されたフレームユニットを形成するフレームユニット形成工程と、該フレームユニットを加工装置のチャックテーブルで保持する保持工程と、該ウェーハの該裏面を該加工装置の加工ユニットで研削又は研磨する加工工程と、該チャックテーブルから該フレームユニットを搬出して加工済みの該ウェーハを洗浄する洗浄工程と、を含み、該フレームユニット形成工程において、該熱圧着シートの平坦性を維持する平坦化部材を該ウェーハと該フレームとの間に配置した状態で該ウェーハと該フレームとに該熱圧着シートを熱圧着するウェーハの加工方法が提供される。
【0010】
また、本発明の一態様において、該加工工程では、砥粒を含む研磨パッドを用いて該ウェーハの該裏面を乾式で研磨しても良い。
【0011】
また、本発明の一態様において、該熱圧着シートは、例えば、ポリオレフィン系シートである。該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかであると好ましい。
【0012】
該ポリオレフィン系シートが該ポリエチレンシートの場合、該フレームユニット形成工程において120℃~140℃の温度で該ポリエチレンシートを熱圧着すると良い。該ポリオレフィン系シートが該ポリプロピレンシートの場合、該フレームユニット形成工程において160℃~180℃の温度で該ポリプロピレンシートを熱圧着すると良い。そして、該ポリオレフィン系シートが該ポリスチレンシートの場合、該フレームユニット形成工程において220℃~240℃の温度で該ポリスチレンシートを熱圧着すると良い。
【0013】
また、本発明の一態様において、該熱圧着シートは、例えば、ポリエステル系シートである。該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート、又はポリエチレンナフタレートシートであると好ましい。
【0014】
該ポリエステル系シートが該ポリエチレンテレフタレートシートの場合、該フレームユニット形成工程において250℃~270℃の温度で該ポリエチレンテレフタレートシートを熱圧着すると良い。そして、該ポリエステル系シートが該ポリエチレンナフタレートシートの場合、該フレームユニット形成工程において160℃~180℃の温度で該ポリエチレンナフタレートシートを熱圧着すると良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様にかかるウェーハの加工方法によれば、ウェーハとフレームとを一体化させる際に、粘着層を持つ粘着テープの代わりに粘着層を持たない熱圧着シートを用いるので、粘着テープを用いる場合のように、ウェーハとフレームとの間に粘着層が露出することはない。これにより、加工の際にウェーハから発生する屑がウェーハとフレームとの間で熱圧着シートに堆積したとしても、後の洗浄によって熱圧着シートから屑を簡単に除去できる。
【0016】
したがって、洗浄後にウェーハを搬送したとしても、熱圧着シートから屑が脱落して搬送経路や装置等が汚染されることはない。このように、本発明の一態様にかかるウェーハの加工方法によれば、搬送経路や装置等の汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、ウェーハを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、ウェーハ等がチャックテーブルに載せられる様子を示す斜視図である。
図3図3は、熱圧着シート等がチャックテーブルに載せられる様子を示す斜視図である。
図4図4は、ヒートガンを用いてウェーハとフレームとに熱圧着シートを熱圧着する様子を示す斜視図である。
図5図5は、ヒートローラーを用いてウェーハとフレームとに熱圧着シートを熱圧着する様子を示す斜視図である。
図6図6(A)は、熱圧着シートを切断する様子を模式的に示す斜視図であり、図6(B)は、完成したフレームユニットを模式的に示す斜視図である。
図7図7(A)は、フレームユニットがチャックテーブルに載せられる様子を示す斜視図であり、図7(B)は、フレームユニットがチャックテーブルによって保持された様子を示す斜視図である。
図8図8は、ウェーハの裏面側が加工される様子を示す斜視図である。
図9図9は、ウェーハが洗浄される様子を示す斜視図である。
図10図10(A)は、ウェーハに改質層が形成される様子を示す斜視図であり、図10(B)は、ウェーハに改質層が形成される様子を示す断面図である。
図11図11は、フレームユニットがエキスパンド装置に搬入される様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るウェーハの加工方法で加工されるウェーハ1を模式的に示す斜視図である。ウェーハ1は、例えば、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ヒ化ガリウム(GaAs)等の半導体や、サファイア(Al)、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス(SiO)等の絶縁体を用いて円盤状に形成されている。
【0019】
ウェーハ1の表面1aは、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)3によって複数の領域に区画されている。また、ウェーハ1の表面1aの分割予定ライン3によって区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)やLED(Light Emitting Diode)等のデバイス5が形成されている。このウェーハ1を分割予定ライン3に沿って分割することで、それぞれがデバイス5を含む複数のデバイスチップが得られる。
【0020】
本実施形態では、はじめに、熱圧着シートでウェーハ1を環状のフレームに一体化してフレームユニットを形成する(フレームユニット形成工程)。そのために、まず、ウェーハ1等をチャックテーブルで保持する。図2は、ウェーハ1等がチャックテーブル2に載せられる様子を示す斜視図である。図2に示すように、チャックテーブル2は、例えば、ステンレス等の金属によって形成される円柱状の枠体2aと、枠体2aの上面の凹部に配置される円盤状の保持板2bと、を含む。
【0021】
保持板2bは、例えば、セラミクス等の材料を用いて多孔質状に形成され、この保持板2bの上面が、ウェーハ1等を保持する保持面2cとなる。保持板2bの下面側は、枠体2aの内部に形成された排気路(不図示)や、排気路に接続されるバルブ2d等を介して、真空ポンプ等の吸引源2eに接続されている。バルブ2dを開いて保持板2bと吸引源2eとを接続することで、吸引源2eが生じる負圧を保持面2cに作用させて、この保持面2cでウェーハ1等を吸引できるようになる。
【0022】
具体的には、まず、チャックテーブル2の保持面2cの上に、ウェーハ1とフレーム7とを載せる。フレーム7は、例えば、アルミニウム等の金属を用いて形成され、その外径は保持面2cよりも小さい。また、フレーム7の中央部には、ウェーハ1よりも径の大きい開口7aが設けられている。つまり、フレーム7は、環状に形成されている。このフレーム7の開口7a内にウェーハ1が位置付けられるように、チャックテーブル2の保持面2cにウェーハ1とフレーム7とを配置して、開口7a内にウェーハ1を収容する。
【0023】
なお、チャックテーブル2の保持面2cにウェーハ1とフレーム7とを載せる際には、バルブ2dを閉じた状態にして、吸引源2eが生じる負圧を保持面2cに作用させないようにする。また、本実施形態では、表面1aが上方を向き、裏面1bが下方を向くようにウェーハ1を保持面2cに載せる。
【0024】
チャックテーブル2の保持面2cにウェーハ1とフレーム7とを載せた後には、チャックテーブル2の保持面2cに熱圧着シートを載せて、ウェーハ1の表面1aとフレーム7の上面とにこの熱圧着シートを接触させる。図3は、熱圧着シート9等がチャックテーブル2に載せられる様子を示す斜視図である。
【0025】
図3に示すように、熱圧着シート9は、柔軟性を有する樹脂等によってチャックテーブル2の保持面2cより大きい外径を持つフィルム状に形成され、概ね平坦な表面と裏面とを備えている。熱圧着シート9は、代表的には、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートであり、粘着力を持つ粘着層(糊層)を有していない。
【0026】
ポリオレフィン系シートは、アルケンをモノマーとして合成されるポリマーによって形成されたシートであり、例えば、可視光に対して透明または半透明である。このようなポリオレフィン系シートには、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシート等がある。ただし、熱圧着シート9として用いることのできるポリオレフィン系シートに特段の制限はない。例えば、ポリオレフィン系シートは不透明でもよい。
【0027】
ポリエステル系シートは、ジカルボン酸(2つのカルボキシル基を有する化合物)とジオール(2つのヒドロキシル基を有する化合物)とをモノマーとして合成されるポリマーによって形成されたシートであり、例えば、可視光に対して透明または半透明である。このようなポリエステル系シートには、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート等がある。ただし、熱圧着シート9として用いることのできるポリエステル系シートに特段の制限はない。例えば、ポリエステル系シートは不透明でもよい。
【0028】
上述したポリオレフィン系シートやポリエステル系シートは、室温で粘着性を示さないので、これらを室温でウェーハ1やフレーム7に貼付することはできない。一方で、ポリオレフィン系シートやポリエステル系シートは、熱可塑性を示すので、例えば、圧力を掛けてウェーハ1及びフレーム7に密着させた状態で、ポリオレフィン系シートやポリエステル系シートを融点の近傍の温度まで加熱すると、これらが部分的に溶融してウェーハ1及びフレーム7に接着される(熱圧着)。
【0029】
よって、この熱圧着により、ウェーハ1、フレーム7、及び熱圧着シート9を一体化してフレームユニットを形成できる。なお、本実施形態では、上述のような熱圧着シート9をチャックテーブル2の保持面2cに載せる前に、ウェーハ1とフレーム7との間に平坦化部材(平坦性維持部材)11を配置する。つまり、チャックテーブル2と熱圧着シート9との間に平坦化部材11を介在させる。
【0030】
平坦化部材11は、例えば、離型紙に代表されるフィルム状の部材や、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系の樹脂で表面を被覆されたプレート状の部材等であり、概ね平坦な表面と裏面とを備えている。このような平坦化部材11をチャックテーブル2と熱圧着シート9との間に介在させることで、熱圧着の際に、多孔質状の保持面2cの凹凸が熱圧着シート9に写らなくなる。つまり、熱圧着シート9の平坦性を維持し易くなる。
【0031】
その結果、加工の際に発生する屑が熱圧着シート9に固着し難くなるので、熱圧着シート9に屑が堆積したとしても、後の洗浄によって熱圧着シート9から屑を簡単に除去できるようになる。なお、本実施形態の平坦化部材11は、平面視でウェーハ1とフレーム7との隙間に対応する環状に形成されているが、平坦化部材11の形状は、熱圧着シート9の平坦性を適切に維持できる範囲で任意に変更され得る。
【0032】
チャックテーブル2の保持面2cに熱圧着シート9と平坦化部材11とを載せた後には、ウェーハ1の表面1aとフレーム7とに熱圧着シート9を熱圧着する。図4は、ヒートガン4を用いてウェーハ1とフレーム7とに熱圧着シート9を熱圧着する様子を示す斜視図である。なお、図4では、熱圧着シート9の下方に配置されるウェーハ1等の構造を破線で示している。
【0033】
熱圧着シート9を熱圧着する際には、まず、バルブ2dを開いた状態に切り替えて、吸引源2eによる負圧を保持面2cに作用させる。すると、熱圧着シート9は大気圧によって保持面2cに向かって押され、ウェーハ1とフレーム7とに密着する。ただし、ウェーハ1とフレーム7との間には、平坦化部材11が配置されているので、ウェーハ1とフレーム7との間の領域では、熱圧着シート9は保持面2cに密着しない。
【0034】
この状態で、熱圧着シート9を加熱する。図4に示すように、チャックテーブル2の上方には、熱圧着シート9の加熱に使用されるヒートガン4が配置されている。ヒートガン4は、電熱線等の加熱機構とファン等の送風機構とを内部に備え、空気を加熱して下方に噴射する。大気圧によって熱圧着シート9をウェーハ1とフレーム7とに密着させた状態で、ヒートガン4から下方の熱圧着シート9に熱風4aを供給し、熱圧着シート9を所定の温度に加熱すると、熱圧着シート9は、ウェーハ1とフレーム7とに熱圧着される。
【0035】
なお、熱圧着シート9の熱圧着には、ヒートガン4とは別の装置が使用されても良い。図5は、ヒートローラー6を用いてウェーハ1とフレーム7とに熱圧着シート9を熱圧着する様子を示す斜視図である。なお、図5でも、熱圧着シート9の下方に配置されるウェーハ1等の構造を破線で示している。
【0036】
ヒートローラー6を用いて熱圧着シート9を熱圧着する際にも、まず、バルブ2dを開いた状態に切り替えて、吸引源2eによる負圧を保持面2cに作用させる。すると、熱圧着シート9は大気圧によって保持面2cに向かって押され、ウェーハ1とフレーム7とに密着する。
【0037】
この状態で、熱圧着シート9を加熱する。図5に示すように、チャックテーブル2の上方には、熱圧着シート9の加熱に使用される円柱状(円筒状)のヒートローラー6が配置されている。ヒートローラー6は、内部に熱源を備えており、保持面2cに対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。
【0038】
例えば、ヒートローラー6を加熱した状態で、このヒートローラー6をチャックテーブル2上の熱圧着シート9の一端に密着させる。そして、チャックテーブル2とヒートローラー6とを、ヒートローラー6の回転軸に対して垂直な方向に相対的に移動させる。より具体的には、ウェーハ1の一端と、ウェーハ1の中心部を挟んでこの一端とは反対側に位置するウェーハ1の他端と、を通る直線状の経路に沿ってヒートローラー6が移動するように、チャックテーブル2とヒートローラー6とを相対的に移動させる。
【0039】
これにより、熱圧着シート9に密着した状態でヒートローラー6が熱圧着シート9上を転がり、熱圧着シート9は、ウェーハ1とフレーム7とに熱圧着される。なお、ヒートローラー6から熱圧着シート9に対して下向きの圧力を掛けながらチャックテーブル2とヒートローラー6とを相対的に移動させると、大気圧より大きい圧力で熱圧着シート9をウェーハ1とフレーム7とに熱圧着できる。また、ヒートローラー6の表面は、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素系の樹脂等によって被覆されても良い。
【0040】
もちろん、ヒートガン4やヒートローラー6とは別の装置を用いて熱圧着シート9を熱圧着することもできる。例えば、概ね平坦な下面を有するアイロンのような部材を加熱して熱圧着シート9に密着させても良い。また、熱圧着シート9に吸収される波長の光を放射する光源を用いて熱圧着シート9を加熱しても良い。このような光源としては、代表的には、赤外線ランプがある。
【0041】
なお、上述のような熱圧着の際には、熱圧着シート9を融点以下の温度に加熱することが望ましい。融点を超える温度まで熱圧着シート9を加熱してしまうと、熱圧着シート9が溶解してシートの形状を維持できなくなる場合があるためである。また、熱圧着の際には、熱圧着シート9を軟化点以上の温度に加熱することが望ましい。熱圧着シート9の温度が軟化点に達しない場合には、熱圧着を適切に実施できないことがあるためである。すなわち、熱圧着シート9は、軟化点以上で融点以下の温度に加熱されるのが望ましい。
【0042】
ところで、熱圧着シート9は、明確な軟化点を有しないことがある。そのような場合には、熱圧着シート9は、融点よりも20℃低い温度以上かつ融点以下の温度に加熱されることが望ましい。熱圧着シート9をこのような温度に加熱することで、適切な熱圧着が実現される。
【0043】
具体的には、熱圧着シート9がポリエチレンシートの場合、120℃~140℃の温度で熱圧着シート9を熱圧着すると良い。また、熱圧着シート9がポリプロピレンシートの場合、160℃~180℃の温度で熱圧着シート9を熱圧着すると良い。そして、熱圧着シート9がポリスチレンシートの場合、220℃~240℃の温度で熱圧着シート9を熱圧着すると良い。
【0044】
また、熱圧着シート9がポリエチレンテレフタレートシートの場合、250℃~270℃の温度で熱圧着シート9を熱圧着すると良い。また、熱圧着シート9がポリエチレンナフタレートシートの場合、160℃~180℃の温度で熱圧着シート9を熱圧着すると良い。
【0045】
なお、上述した熱圧着の際の温度は、熱圧着シート9の温度であって、熱圧着シート9を熱圧着する際に用いられる装置(ヒートガン4、ヒートローラー6等)に設定される温度ではない。熱圧着シート9を熱圧着する際に用いられる装置には、熱圧着シート9の融点を超える温度が設定され得る。
【0046】
ウェーハ1とフレーム7とに熱圧着シート9が熱圧着されると、例えば、バルブ2dを閉じた状態に切り替えて、吸引源2eによる負圧を遮断する。その後、熱圧着シート9をフレーム7に沿って切断し、熱圧着シート9のフレーム7から外側にはみ出した部分を除去する。図6(A)は、熱圧着シート9を切断する様子を模式的に示す斜視図である。なお、熱圧着シート9の切断は、バルブ2dを開いた状態で行われても良い。
【0047】
熱圧着シート9の切断には、例えば、図6(A)に示す円環状のカッター10が使用される。カッター10の中央の開口には、例えば、チャックテーブル2の保持面2cに対して概ね平行な軸心を持つ回転軸が挿入されており、この回転軸によって、カッター10は回転できる状態で支持される。
【0048】
熱圧着シート9を切断する際には、まず、カッター10をフレーム7の上方に位置付ける。このとき、カッター10の回転軸の軸心を、例えば、チャックテーブル2の保持面2cの中心を通り、この保持面2cに対して平行な直線の上方に位置付ける。次に、カッター10を下降させて、熱圧着シート9にカッター10を押し当てる。そして、この状態でフレーム7に沿ってカッター10を移動させる。これにより、熱圧着シート9を切断する切断痕9aが熱圧着シート9に形成される。
【0049】
なお、熱圧着シート9を切断する際には、カッター10に超音波振動(超音波帯の周波数の振動)を付与しても良い。また、熱圧着シート9を切断する際には、この熱圧着シート9を冷却して硬化させても良い。このようにすれば、熱圧着シート9をより容易に切断できるようになる。
【0050】
カッター10を移動させて、開口7aを囲む切断痕9aを形成することで、熱圧着シート9は、切断痕9aを境にフレーム7からはみ出した外側の部分と内側の部分とに分離される。その後、熱圧着シート9の外側の部分を除去することで、ウェーハ1とフレーム7とが熱圧着シート9を介して一体化されたフレームユニット13が完成する。
【0051】
図6(B)は、完成したフレームユニット13を模式的に示す斜視図である。なお、熱圧着シート9の外側の部分を除去する際には、この除去すべき熱圧着シート9の外側の部分を加熱しても良い。また、除去すべき熱圧着シート9の外側の部分に超音波振動を付与しても良い。このようにすれば、熱圧着シート9の外側の部分をより容易に除去できるようになる。
【0052】
フレームユニット13を形成した後には、ウェーハ1の裏面1bを適切に加工できるように、ウェーハ1の加工に使用される加工装置のチャックテーブルでフレームユニット13を保持する(保持工程)。図7(A)は、フレームユニット13がチャックテーブル12に載せられる様子を示す斜視図である。
【0053】
図7(A)に示すように、加工装置が備えるチャックテーブル12は、例えば、ステンレス等の金属によって形成される円柱状の枠体12aと、枠体12aの上部に配置される円盤状の保持板12bと、を含む。枠体12aは、上面が概ね平坦な外周部12cと、外周部12cより内側で上方に突出する円錐台状の中央部12dと、を有しており、中央部12dの上端部に保持板12bが配置される。
【0054】
保持板12bは、例えば、セラミクス等の材料を用いて多孔質状に形成され、この保持板12bの上面が、フレームユニット13のウェーハ1の部分を保持する保持面12eとなる。一方で、枠体12aの外周部12cの上面には、複数の吸引口12fが設けられており、フレームユニット13のフレーム7の部分は、この外周部12cによって保持される。
【0055】
保持板12bの下面側及び複数の吸引口12fは、枠体12aの内部に形成された排気路(不図示)や、排気路に接続されるバルブ12g等を介して、真空ポンプ等の吸引源12hに接続されている。バルブ12gを開いて保持板12b及び吸引口12fと吸引源12hとを接続することで、吸引源12hが生じる負圧を保持面12e及び吸引口12fに作用させて、フレームユニット13を吸引できるようになる。
【0056】
なお、チャックテーブル12の下部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。このチャックテーブル12は、例えば、上述した保持面12eに対して概ね垂直な回転軸の周りに回転する。
【0057】
チャックテーブル12でフレームユニット13を保持する際には、まず、ウェーハ1を保持板12bの上方に位置付け、フレーム7を外周部12cの上方に位置付けるように、チャックテーブル12の上にフレームユニット13を載せる。この際には、バルブ12gを閉じた状態にして、吸引源12hが生じる負圧を保持面12e及び吸引口12fに作用させないようにする。また、本実施形態では、裏面1bが上方を向き、表面1aが下方を向くように、フレームユニット13をチャックテーブル12に載せる。
【0058】
チャックテーブル12にフレームユニット13を載せた後には、バルブ12gを開いた状態に切り替えて、吸引源12hが生じる負圧を保持面12e及び吸引口12fに作用させる。これにより、フレームユニット13は、保持面12e及び吸引口12fに作用する負圧でチャックテーブル12に保持される。
【0059】
図7(B)は、フレームユニット13がチャックテーブル12によって保持された様子を示す斜視図である。上述のように、チャックテーブル12の中央部12dは、外周部12cよりも上方に突出しているので、ウェーハ1は、フレーム7よりも上方に位置付けられる。よって、ウェーハ1を加工する際の工具とフレーム7との干渉を防止できる。
【0060】
フレームユニット13をチャックテーブル12で保持した後には、ウェーハ1の裏面1b側を加工装置の加工ユニットで加工する(加工工程)。より具体的には、砥粒を含む研磨パッドが装着された加工ユニットを用いて、ウェーハ1の裏面1bを乾式で研磨する。図8は、ウェーハ1の裏面1b側が加工される様子を示す斜視図である。
【0061】
図8に示すように、チャックテーブル12の上方には、加工ユニット(研磨ユニット)14が配置されている。加工ユニット14は、例えば、チャックテーブル12の保持面12eに対して概ね垂直な軸心を持つスピンドル16を備えている。スピンドル16は、昇降機構(不図示)によって支持されており、上下方向に移動する。また、スピンドル16の上端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0062】
スピンドル16の下端部には、円盤状のマウンタ18が固定されている。マウンタ18の下面には、マウンタ18と概ね同じ大きさの円盤状に構成された研磨工具20が装着されている。研磨工具20は、金属や樹脂等の材料で形成されマウンタ18に接する円盤状の基台20aと、基台20aの下面に接着された円盤状の研磨パッド20bと、を含む。研磨パッド20bは、例えば、ポリウレタン等の樹脂にダイヤモンドやシリカ等の砥粒を混合することによって形成される。ただし、研磨パッド20bの材質等に制限はない。
【0063】
ウェーハ1の裏面1bを研磨する際には、チャックテーブル12とスピンドル16とを相互に回転させながら、例えば、スピンドル16を任意の速度で下降させて、ウェーハ1の裏面1bに研磨パッド20bの下面を接触させる。これにより、研磨パッド20bは、スピンドル16の下降の速度に応じた圧力でウェーハ1に押し当てられ、ウェーハ1の裏面1bが研磨される。なお、本実施形態では、ウェーハ1を乾式で研磨するので、ウェーハ1の裏面1bにスラリー(研磨液)等を供給する必要はない。
【0064】
ウェーハ1の加工が完了した後には、上述のチャックテーブル12からフレームユニット13を搬出して加工済みのウェーハ1を洗浄する(洗浄工程)。すなわち、バルブ12gを閉じた状態に切り替えて、吸引源12hが生じる負圧を保持面12e及び吸引口12fに作用させないようにした上で、チャックテーブル12からフレームユニット13を搬出する。
【0065】
図9は、ウェーハ1が洗浄される様子を示す斜視図である。チャックテーブル12からフレームユニット13を搬出した後には、図9に示すように、例えば、裏面1bが上方に露出するように、チャックテーブル12に類似する構造のスピンナテーブル22でウェーハ1を保持する。そして、スピンナテーブル22の上方に配置された洗浄用のノズル24から下方のウェーハ1に向けて洗浄用の流体を噴射させる。
【0066】
洗浄用の流体としては、例えば、水等の液体と空気等の気体とを混合してなる混合流体(二流体)を用いることができる。もちろん、水等の液体だけをノズル24から噴射させてウェーハ1を洗浄しても良い。なお、ノズル24から流体を噴射させる際には、図9に示すように、スピンナテーブル22を回転させることが望ましい。また、例えば、ウェーハ1の径方向にノズル24を揺動させながら流体を噴射させても良い。
【0067】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、ウェーハ1とフレーム7とを一体化させる際に、粘着層を持つ粘着テープの代わりに粘着層を持たない熱圧着シート9を用いるので、粘着層を持つ粘着テープを用いる場合のように、ウェーハ1とフレーム7との間に粘着層が露出することはない。よって、ウェーハ1を加工する際に発生する屑(加工屑)がウェーハ1とフレーム7との間で熱圧着シート9に堆積したとしても、この洗浄によって熱圧着シート9から屑を簡単に除去できる。
【0068】
また、本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、ウェーハ1とフレーム7とに熱圧着シート9を熱圧着する際に、平坦化部材11をチャックテーブル2と熱圧着シート9との間に介在させているので、チャックテーブル2の多孔質状の保持面2cの凹凸は熱圧着シート9に写らない。つまり、熱圧着シート9の平坦性が維持され、加工の際に発生する屑が熱圧着シート9に固着し難くなるので、熱圧着シート9に屑が堆積したとしても、この洗浄によって熱圧着シート9から屑を簡単に除去できる。
【0069】
ウェーハ1を洗浄した後には、ウェーハ1等に対して更に任意の処理を行うことができる。本実施形態では、分割予定ライン3に沿ってウェーハ1の内部を改質して分割の起点となる改質層を形成した上で、この改質層に沿ってウェーハ1を分割する(分割工程)。図10(A)は、ウェーハ1に改質層3aが形成される様子を示す斜視図であり、図10(B)は、ウェーハ1に改質層3aが形成される様子を示す断面図である。
【0070】
図10(A)及び図10(B)に示すように、ウェーハ1に改質層3aを形成する際には、例えば、ウェーハ1を保持するチャックテーブル(不図示)と、チャックテーブルの上方に配置されるレーザー加工ユニット26と、を備えたレーザー加工装置が使用される。
【0071】
チャックテーブルは、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、その上面に対して概ね垂直な回転軸の周りに回転できる。また、チャックテーブルは、移動機構(不図示)によって支持されており、その上面に対して概ね平行で互いに概ね垂直な加工送り方向と割り出し送り方向とに移動できる。
【0072】
レーザー加工ユニット26は、例えば、ウェーハ1を透過する波長のレーザービーム26aを発生させるレーザー発振器(不図示)と、レーザー発振器で発生したレーザービーム26aを下方に照射して任意の高さの位置に集光させる加工ヘッド26bと、備える。チャックテーブルによって保持されたウェーハ1の内部で集光させるように、レーザー加工ユニット26からウェーハ1にレーザービーム26aを照射することで、このウェーハ1の内部を改質して改質層3aを形成できる。
【0073】
ウェーハ1に改質層3aを形成する際には、例えば、ウェーハ1の裏面1bが上方に露出するように、フレームユニット13をチャックテーブルで保持する。次に、チャックテーブルを回転させて、任意の分割予定ライン3を加工送り方向に対して平行にする。また、この分割予定ライン3の延長線の上方に加工ヘッド26bを位置付けるように、チャックテーブルを加工送り方向や割り出し送り方向に移動させる。
【0074】
そして、ウェーハ1の表面1aより高く、ウェーハ1の裏面1bよりも低い位置にレーザービーム26aの集光点26cを位置付けるように、加工ヘッド26bを調整する。この状態で、レーザー加工ユニット26からレーザービーム26aを照射しながら、チャックテーブルを加工送り方向に移動させる(加工送り)。これにより、対象の分割予定ライン3に沿ってウェーハ1の内部にレーザービーム26aを照射して、ウェーハ1の内部に改質層3aを形成できる。なお、図10(A)では、改質層3aを破線で示している。
【0075】
ウェーハ1に対してレーザービーム26aを照射する際に適用される条件は、例えば、次の通りである。ただし、レーザービーム26aの照射にかかる条件は、これに限定されず、ウェーハ1の材質等に合わせて任意に変更され得る。
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :1W
加工送りの速度 :200mm/秒
【0076】
対象の分割予定ライン3に沿ってウェーハ1の内部に改質層3aを形成した後には、チャックテーブルを割り出し送り方向に移動させて、別の分割予定ライン3に沿って同様にレーザービーム26aを照射する。このような手順を繰り返し、例えば、同じ方向に沿う全ての分割予定ライン3に改質層3aを形成した後には、チャックテーブルを回転させて、他の方向に沿う分割予定ライン3に同様の手順で改質層3aを形成する。上述のような手順は、全ての分割予定ライン3に沿って改質層3aが形成されるまで繰り返される。
【0077】
本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、粘着層を持たない熱圧着シート9を用いてフレームユニット13を形成しており、ウェーハ1を加工する際に発生する屑が洗浄によって適切に除去されている。よって、ウェーハ1とフレーム7との間で露出する熱圧着シート9にレーザービーム26aが照射されても、熱圧着シート9に付着する屑が蒸発して加工ヘッド26bやウェーハ1等を汚すことがない。
【0078】
また、本実施形態にかかるウェーハの加工方法では、粘着層を持たない熱圧着シート9を用いているので、粘着層を持つ粘着テープを用いる場合のように、ウェーハ1を透過したレーザービーム26a(漏れ光)によって粘着層が溶融し、ウェーハ1の表面1a側に粘着層が固着することはない。よって、ウェーハ1を分割して得られるデバイスチップの品質を良好に保つことができる。
【0079】
ウェーハ1に改質層3aを形成した後には、例えば、拡張装置で熱圧着シート9を径方向に拡張してウェーハ1を分割する。図11は、フレームユニット13が拡張装置28に搬入される様子を示す斜視図である。拡張装置28は、円筒状のドラム30と、ドラム30を囲むように配置されたフレーム保持ユニット32と、を備えている。
【0080】
フレーム保持ユニット32は、ドラム30の外径よりも大きい円形の開口を有する支持テーブル34を含んでいる。この支持テーブル34の上面に、フレームユニット13のフレーム7の部分が載せられる。また、支持テーブル34の外周部には、フレーム7を固定するための複数のクランプ36が設けられている。
【0081】
支持テーブル34は、フレーム保持ユニット32を昇降させるための昇降機構38によって支持されている。昇降機構38は、例えば、下方の基台40に固定されたシリンダケース42と、下方の一部がシリンダケース42に挿入されたピストンロッド44と、を備えるエアシリンダである。ピストンロッド44の上端部には、支持テーブル34が固定されており、昇降機構38は、ピストンロッド44を上下に移動させることでフレーム保持ユニット32を昇降させる。
【0082】
支持テーブル34の開口内には、ドラム30が配置されている。このドラム30の下部は、基台40に固定されている。ドラム30の内径は、ウェーハ1の径よりも大きく、ドラム30の外径は、フレーム7の内径や、支持テーブル34の開口の径よりも小さい。ドラム30の内側の領域には、フレーム保持ユニット32によって保持されるフレームユニット13の熱圧着シート9を下方から突き上げることのできる突き上げ機構46が設けられている。
【0083】
熱圧着シート9を拡張する際には、まず、図11に示すように、支持テーブル34の上面の高さをドラム30の上端の高さに合わせ、支持テーブル34の上面にフレームユニット13のフレーム7の部分を載せた後に、このフレーム7をクランプ36で固定する。これにより、ドラム30の上端は、ウェーハ1とフレーム7との間で熱圧着シート9の下面に接触する。
【0084】
次に、昇降機構38でフレーム保持ユニット32を下降させて、支持テーブル34の上面をドラム30の上端よりも下方に移動させる。その結果、支持テーブル34に対してドラム30が上昇し、熱圧着シート9はドラム30で押し上げられて放射状に拡張される。熱圧着シート9が拡張されると、ウェーハ1には、径方向で外向きの力が作用する。これにより、ウェーハ1は、改質層3aを起点に複数のデバイスチップへと分割される。
【0085】
ウェーハ1を分割した後には、形成された複数のデバイスチップをそれぞれピックアップすれば良い。例えば、ピックアップの対象となるデバイスチップの下方に突き上げ機構46を位置付け、突き上げ機構46でデバイスチップを突き上げながら、上方に配置したコレット(不図示)等でこのデバイスチップをピックアップする。
【0086】
以上のように、本実施形態にかかるウェーハの加工方法によれば、ウェーハ1とフレーム7とを一体化させる際に、粘着層を持つ粘着テープの代わりに粘着層を持たない熱圧着シート9を用いるので、粘着テープを用いる場合のように、ウェーハ1とフレーム7との間に粘着層が露出することはない。
【0087】
これにより、加工の際にウェーハ1から発生する屑がウェーハ1とフレーム7との間で熱圧着シート9に堆積したとしても、後の洗浄によって熱圧着シート9から屑を簡単に除去できる。したがって、洗浄後にウェーハ1を搬送したとしても、熱圧着シート9から脱落する屑によってウェーハ1の搬送経路や次の処理で使用される装置等が汚染されることはない。このように、本実施形態にかかるウェーハの加工方法によれば、搬送経路や装置等の汚染を防止できる。
【0088】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、ウェーハ1の裏面1bを乾式で研磨しているが、ウェーハ1の裏面1bを研削したり、湿式で研磨したりしても良い。これらの場合にも、熱圧着シート9に堆積する屑を洗浄によって簡単に除去できる。
【0089】
また、上述した実施形態では、ウェーハ1の内部に改質層3aを形成する前に、ウェーハ1を乾式で研磨しているが、ウェーハ1の内部に改質層3aを形成した後に、ウェーハ1を研削又は研磨することもできる。また、ウェーハ1を分割する際の起点となる改質層3aに代えて、結合剤に砥粒を分散させてなる切削ブレードを用いて分割予定ライン3に沿う溝等を形成しても良い。
【0090】
その他、上述した実施形態や変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施できる。
【符号の説明】
【0091】
1 :ウェーハ
1a :表面
1b :裏面
3 :分割予定ライン
3a :改質層
5 :デバイス
7 :フレーム
7a :開口
9 :熱圧着シート
9a :切断痕
11 :平坦化部材(平坦性維持部材)
13 :フレームユニット
2 :チャックテーブル
2a :枠体
2b :保持板
2c :保持面
2d :バルブ
2e :吸引源
4 :ヒートガン
4a :熱風
6 :ヒートローラー
10 :カッター
12 :チャックテーブル
12a :枠体
12b :保持板
12c :外周部
12d :中央部
12e :保持面
12f :吸引口
12g :バルブ
12h :吸引源
14 :加工ユニット
16 :スピンドル
18 :マウンタ
20 :研磨工具
20a :基台
20b :研磨パッド
22 :スピンナテーブル
24 :ノズル
26 :レーザー加工ユニット
26a :レーザービーム
26b :加工ヘッド
26c :集光点
28 :拡張装置
30 :ドラム
32 :フレーム保持ユニット
34 :支持テーブル
36 :クランプ
38 :昇降機構
40 :基台
42 :シリンダケース
44 :ピストンロッド
46 :突き上げ機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11