(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】チャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231225BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231225BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231225BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20231225BHJP
B23Q 3/08 20060101ALN20231225BHJP
B23Q 3/06 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/78 N
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
B24B41/06 L
B23Q3/08 A
B23Q3/06 304E
(21)【出願番号】P 2020087502
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】安田 信哉
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-93384(JP,A)
【文献】特開2019-161055(JP,A)
【文献】特開2006-68862(JP,A)
【文献】特開昭55-120849(JP,A)
【文献】特開2006-128359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0013595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
H01L 21/304
B24B 41/06
B23Q 3/08
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面を有し、該載置面と直交する方向に沿った軸の周りに回転するテーブルベースに載置されて固定されるチャックテーブルであって、
上面が保持面となるポーラス部と、上方に露出するように該ポーラス部を囲繞する枠体と、を備え、
該枠体は、該テーブルベースの外周部に設けられ上部に爪部を有する開閉可能な複数の係合部の該爪部を受けられる突起をそれぞれ備える複数の係合溝を外周に有し、
該係合部が閉状態であるときに該爪部が該係合溝の該突起に掛かることで該テーブルベースの該載置面上に固定可能であるとともに、該係合部が開状態であるときに該爪部が該係合溝の該突起に掛からなくなることで該テーブルベースへの固定が解除可能であることを特徴とするチャックテーブル。
【請求項2】
該係合溝は、上下に貫通しており、かつ、該枠体の外周面から内側に後退しており、
該突起は、該係合溝の内部で該枠体の外側に向けて突き出ており、
該係合溝は、該係合部が該閉状態であるときに該枠体の該外周面の外側に残らないように該係合部を収容できることを特徴とする請求項1に記載のチャックテーブル。
【請求項3】
該載置面に対面する該枠体の下面には、該載置面に設けられた複数の規制突起のそれぞれに挿入される複数の規制穴が設けられており、
複数の該規制穴にそれぞれ該規制突起が挿入されることで該枠体の該テーブルベースに対する位置ずれ及び回転ずれを防止できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチャックテーブル。
【請求項4】
該載置面に対面する該枠体の下面には、該載置面に設けられた複数の規制穴のそれぞれに挿入できる複数の規制突起が設けられており、
複数の該規制突起をそれぞれ該規制穴に挿入することで該枠体の該テーブルベースに対する位置ずれ及び回転ずれを防止できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチャックテーブル。
【請求項5】
上面が保持面となるポーラス部と、上方に露出するように該ポーラス部を囲繞する枠体と、を備えるチャックテーブルを固定できるテーブルベースであって、
該チャックテーブルが載置される上方に露出した載置面を有し、
該枠体の外周に設けられた複数の係合溝にそれぞれ係合できる複数の係合部を外周面に備え、
複数の該係合部は、
該外周面に沿った固定軸と、
該固定軸に回転可能に突き通された本体と、
該固定軸よりも上方で該本体に設けられた爪部と、をそれぞれ備え、
該固定軸の周りに該本体を回転させることで、それぞれ内部に突起を備える複数の該係合溝の該突起にそれぞれの該爪部を掛けて該チャックテーブルを固定する閉状態と、該爪部を該係合溝の該突起から外して該チャックテーブルの固定を解除する開状態と、を切り替えられることを特徴とするテーブルベース。
【請求項6】
該固定軸よりも下方で該係合部の該本体に一端が固定された弾性部材をさらに備え、
該弾性部材の他端は、該外周面に固定されており、
該弾性部材は、該係合部の該本体の該固定軸よりも下方側の部分を外向きに付勢することで、該閉状態を維持することを特徴とする請求項5に記載のテーブルベース。
【請求項7】
該枠体の下面に対面する該載置面には、該枠体の該下面に設けられた複数の規制穴のそれぞれに挿入できる複数の規制突起が設けられており、
複数の該規制突起をそれぞれ該規制穴に挿入することで該枠体の該載置面に対する位置ずれ及び回転ずれを防止できることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のテーブルベース。
【請求項8】
該枠体の下面に対面する該載置面には、該枠体の該下面に設けられた複数の規制突起のそれぞれに挿入される複数の規制穴が設けられており、
複数の該規制穴にそれぞれ該規制突起が挿入されることで該枠体の該載置面に対する位置ずれ及び回転ずれを防止できることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のテーブルベース。
【請求項9】
上面が保持面となるポーラス部と、上方に露出するように該ポーラス部を囲繞する枠体と、を備えるチャックテーブルを、上面に載置面を備えるテーブルベースに固定するチャックテーブル固定機構であって、
該テーブルベースは、それぞれ爪部を有する開閉可能な複数の係合部を外周部に有し、
該チャックテーブルの該枠体は、それぞれ該係合部の該爪部を受けられる突起を備える複数の係合溝を外周に有し、
複数の該係合部は、外周面に沿った固定軸と、該固定軸に回転可能に突き通された本体と、をそれぞれ備え、該固定軸よりも上方で該本体に該爪部が設けられ、
該固定軸の周りに該係合部の該本体を回転させることで、該係合溝の該突起に該係合部の該爪部を掛けて該チャックテーブルを該テーブルベースに固定する閉状態と、該係合部の該爪部を該係合溝の該突起から外して該チャックテーブルの該テーブルベースへの固定を解除する開状態と、を切り替えられることを特徴とするチャックテーブル固定機構。
【請求項10】
該チャックテーブルの該枠体の下面と、該テーブルベースの該載置面と、の一方には、複数の規制穴が設けられており、
該チャックテーブルの該枠体の該下面と、該テーブルベースの該載置面と、の他方には、複数の該規制穴のそれぞれに挿入できる複数の規制突起が設けられており、
複数の該規制穴のそれぞれに複数の該規制突起のいずれかが挿入されることで該枠体の該テーブルベースに対する位置ずれ及び回転ずれを防止できることを特徴とする請求項9に記載のチャックテーブル固定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する加工装置に組み込まれたスピンナ洗浄装置等で使用されるチャックテーブル、該チャックテーブルを保持するテーブルベース、及び該チャックテーブルを該テーブルベースに固定するチャックテーブル固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップは、シリコンやシリコンカーバイド等の材料からなるウェーハから製造される。まず、ウェーハの表面に互いに交差する複数の分割予定ラインを設定し、ウェーハの表面の分割予定ラインによって区画される各領域に、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを形成する。次に、ウェーハを裏面側から研削して薄化し、分割予定ラインに沿ってウェーハを分割すると個々のデバイスチップを形成できる。
【0003】
ウェーハを研削する研削装置やウェーハを分割する切削装置等の加工装置では、加工により生じた加工屑が該ウェーハに付着するため、加工後のウェーハを洗浄できるスピンナ洗浄装置が該加工装置に組み込まれる(特許文献1参照)。スピンナ洗浄装置は、ウェーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルを回転可能に保持するテーブルベースと、該チャックテーブルで保持されたウェーハに洗浄水を上方から噴射する洗浄ノズルと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピンナ洗浄装置においては、チャックテーブルは、複数の固定ネジによりテーブルベースの上端に固定される。そして、チャックテーブルは定期的に交換される。チャックテーブルを交換する際には、各固定ネジを工具で緩めて古いチャックテーブルをテーブルベースから取り外し、新しいチャックテーブルを該テーブルベースに載せて固定ネジを締める。
【0006】
このように、チャックテーブルの着脱時には、複数の固定ネジを緩める作業及び締め付ける作業が必要となり、工数がかかる。特に固定ネジを締め付ける作業においては、固定ネジを特定のトルクで締め付ける必要がある。固定ネジを締め付ける作業を所定の手順で実施しなければ、チャックテーブルを適切にテーブルベースに固定できず、チャックテーブルでウェーハを適切に保持できないおそれがあり、チャックテーブルが適切に回転できないおそれもある。
【0007】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固定ネジを使用することなくテーブルベースに固定できるチャックテーブル、該チャックテーブルを固定できるテーブルベース、及び該チャックテーブルを該テーブルベースに固定するテーブル固定機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、載置面を有し、該載置面と直交する方向に沿った軸の周りに回転するテーブルベースに載置されて固定されるチャックテーブルであって、上面が保持面となるポーラス部と、上方に露出するように該ポーラス部を囲繞する枠体と、を備え、該枠体は、該テーブルベースの外周部に設けられ上部に爪部を有する開閉可能な複数の係合部の該爪部を受けられる突起をそれぞれ備える複数の係合溝を外周に有し、該係合部が閉状態であるときに該爪部が該係合溝の該突起に掛かることで該テーブルベースの該載置面上に固定可能であるとともに、該係合部が開状態であるときに該爪部が該係合溝の該突起に掛からなくなることで該テーブルベースへの固定が解除可能であることを特徴とするチャックテーブルが提供される。
【0009】
好ましくは、該係合溝は、上下に貫通しており、かつ、該枠体の外周面から内側に後退しており、該突起は、該係合溝の内部で該枠体の外側に向けて突き出ており、該係合溝は、該係合部が該閉状態であるときに該枠体の該外周面の外側に残らないように該係合部を収容できる。
【0010】
さらに、好ましくは、該載置面に対面する該枠体の下面には、該載置面に設けられた複数の規制突起のそれぞれに挿入される複数の規制穴が設けられており、複数の該規制穴にそれぞれ該規制突起が挿入されることで該枠体の該テーブルベースに対する位置ずれ及び回転ずれを防止できる。
【0011】
または、好ましくは、該載置面に対面する該枠体の下面には、該載置面に設けられた複数の規制穴のそれぞれに挿入できる複数の規制突起が設けられており、複数の該規制突起をそれぞれ該規制穴に挿入することで該枠体の該テーブルベースに対する位置ずれ及び回転ずれを防止できる。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、上面が保持面となるポーラス部と、上方に露出するように該ポーラス部を囲繞する枠体と、を備えるチャックテーブルを固定できるテーブルベースであって、該チャックテーブルが載置される上方に露出した載置面を有し、該枠体の外周に設けられた複数の係合溝にそれぞれ係合できる複数の係合部を外周面に備え、複数の該係合部は、該外周面に沿った固定軸と、該固定軸に回転可能に突き通された本体と、該固定軸よりも上方で該本体に設けられた爪部と、をそれぞれ備え、該固定軸の周りに該本体を回転させることで、それぞれ内部に突起を備える複数の該係合溝の該突起にそれぞれの該爪部を掛けて該チャックテーブルを固定する閉状態と、該爪部を該係合溝の該突起から外して該チャックテーブルの固定を解除する開状態と、を切り替えられることを特徴とするテーブルベースが提供される。
【0013】
好ましくは、該固定軸よりも下方で該係合部の該本体に一端が固定された弾性部材をさらに備え、該弾性部材の他端は、該外周面に固定されており、該弾性部材は、該係合部の該本体の該固定軸よりも下方側の部分を外向きに付勢することで、該閉状態を維持する。
【0014】
さらに、好ましくは、該枠体の下面に対面する該載置面には、該枠体の該下面に設けられた複数の規制穴のそれぞれに挿入できる複数の規制突起が設けられており、複数の該規制突起をそれぞれ該規制穴に挿入することで該枠体の該載置面に対する位置ずれ及び回転ずれを防止できる。
【0015】
または、好ましくは、該枠体の下面に対面する該載置面には、該枠体の該下面に設けられた複数の規制突起のそれぞれに挿入される複数の規制穴が設けられており、複数の該規制穴にそれぞれ該規制突起が挿入されることで該枠体の該載置面に対する位置ずれ及び回転ずれを防止できる。
【0016】
本発明のさらに他の一態様によれば、上面が保持面となるポーラス部と、上方に露出するように該ポーラス部を囲繞する枠体と、を備えるチャックテーブルを、上面に載置面を備えるテーブルベースに固定するチャックテーブル固定機構であって、該テーブルベースは、それぞれ爪部を有する開閉可能な複数の係合部を外周部に有し、該チャックテーブルの該枠体は、それぞれ該係合部の該爪部を受けられる突起を備える複数の係合溝を外周に有し、複数の該係合部は、外周面に沿った固定軸と、該固定軸に回転可能に突き通された本体と、をそれぞれ備え、該固定軸よりも上方で該本体に該爪部が設けられ、該固定軸の周りに該係合部の該本体を回転させることで、該係合溝の該突起に該係合部の該爪部を掛けて該チャックテーブルを該テーブルベースに固定する閉状態と、該係合部の該爪部を該係合溝の該突起から外して該チャックテーブルの該テーブルベースへの固定を解除する開状態と、を切り替えられることを特徴とするチャックテーブル固定機構が提供される。
【0017】
好ましくは、該チャックテーブルの該枠体の下面と、該テーブルベースの該載置面と、の一方には、複数の規制穴が設けられており、該チャックテーブルの該枠体の該下面と、該テーブルベースの該載置面と、の他方には、複数の該規制穴のそれぞれに挿入できる複数の規制突起が設けられており、複数の該規制穴のそれぞれに複数の該規制突起のいずれかが挿入されることで該枠体の該テーブルベースに対する位置ずれ及び回転ずれを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係るチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構では、該チャックテーブルの枠体に設けられた係合溝の突起に該テーブルベースに設けられた係合部の爪部を掛けることで固定を実現する。そして、該係合部は開閉可能であり、係合部を開状態とすることで該係合部の爪部が係合溝の突起に掛からなくなり、固定が解除される。すなわち、固定ネジを使用することなくチャックテーブルをテーブルベースに着脱できる。
【0019】
そのため、チャックテーブルを交換する際に、固定ネジを緩める作業と、締め付ける作業と、が不要となり、工数を削減できる。また、固定ネジの締め付けの手順の間違いに起因する不具合も発生する余地がない。
【0020】
したがって、本発明によると、固定ネジを使用することなくテーブルベースに固定できるチャックテーブル、該チャックテーブルを固定できるテーブルベース、及び該チャックテーブルを該テーブルベースに固定するテーブル固定機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】洗浄装置を備える切削装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】チャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構を模式的に示す斜視図である。
【
図3】切断されたチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構を拡大して模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、テーブルベースの上方に配されたチャックテーブルを模式的に示す断面図であり、
図4(B)は、テーブルベースに向けて上方から押し込まれるチャックテーブルを模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5(A)は、テーブルベースに固定されたチャックテーブルを模式的に示す断面図であり、
図5(B)は、係合部が開かれることでテーブルベースへの固定が解除されたチャックテーブルを模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6(A)は、比較的大きい径のポーラス部を備えるチャックテーブルを模式的に示す断面図であり、
図6(B)は、比較的小さい径のポーラス部を備えるチャックテーブルを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して本実施形態に係るチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構について説明する。本実施形態に係るチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構は、例えば、被加工物を切削する切削装置に組み込まれたスピンナ洗浄装置(洗浄ユニット)で使用される。まず、洗浄ユニットを備える切削装置について説明する。ただし、該洗浄ユニットは、切削装置以外の装置に組み込まれてもよく、独立していてもよい。
図1は、切削装置2を模式的に示す斜視図である。
【0023】
切削装置2で切削される被加工物(不図示)は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体材料から形成される略円板状のウェーハである。または、被加工物は、サファイア、石英、ガラス、セラミックス等の材料からなる板状の基板等である。該ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等である。
【0024】
被加工物の表面には互いに交差する複数の分割予定ラインが設定され、被加工物の表面の分割予定ラインによって区画される各領域には、IC、LSI等のデバイスが形成される。該被加工物を裏面側から研削して薄化し、分割予定ラインに沿って該被加工物を切削して分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。
【0025】
被加工物は、例えば、環状フレームに貼られたテープ上に貼着され、環状フレームと一体で取り扱われる。環状フレームとテープとを用いて被加工物を取り扱うと、被加工物を搬送する際に生じる衝撃等から該被加工物を保護できる。さらに、該テープを拡張すると、被加工物が分割されて形成された各チップの間隔を広げられるため、チップのピックアップが容易となる。
【0026】
切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の前方の角部には開口が形成されており、この開口内には昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台6が設けられている。カセット支持台6の上面には、複数の被加工物を収容するカセット8が配設される。なお、
図1では説明の便宜上、カセット8の輪郭のみを示している。
【0027】
カセット支持台6の側方には、長手方向がX軸方向(加工送り方向)に沿うように矩形の開口4aが形成されている。開口4a内には、ボールネジ式のX軸移動機構(不図示)と、X軸移動機構の上部を覆うテーブルカバー10及び蛇腹状の防塵防滴カバー12と、が配置されている。X軸移動機構は、テーブルカバー10によって覆われたX軸移動テーブル(不図示)を備えており、このX軸移動テーブルをX軸方向に移動させる。
【0028】
X軸移動テーブルの上面にはテーブルカバー10から露出するようにチャックテーブル14が配設されている。チャックテーブル14は、上方に露出した保持面14aに載せられた被加工物を吸引保持する機能を有する。チャックテーブル14はモータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14はX軸移動機構によってX軸移動テーブルやテーブルカバー10とともにX軸方向に移動する。
【0029】
被加工物を吸引保持するチャックテーブル14は、被加工物と同様の径のポーラス部を上面に備える。そして、該ポーラス部の上面が被加工物を吸引保持する保持面14aとなる。チャックテーブル14の内部には、チャックテーブル14の外部に設けられたエジェクタ等の吸引源に一端が接続された吸引路が形成されている。吸引路の他端は、該ポーラス部に達している。さらに、チャックテーブル14の周囲には、被加工物を支持する環状フレームを四方から固定するためのクランプ14bが設けられている。
【0030】
切削装置2は、開口4aに隣接する領域に、カセット8からチャックテーブル14等へと被加工物を搬送する搬送ユニット(不図示)を備える。チャックテーブル14の上方には、環状の切削ブレード44によってウェーハ1を切削する切削ユニット38が配設される。基台4の上面には、切削ユニット38を支持するための支持構造16が配置されている。支持構造16は、開口4aの上方に該開口4aを渡るように伸長した腕部18を上部に備える。
【0031】
支持構造16の前面上部には、切削ユニット38をY軸方向(割り出し送り方向)に移動させる割り出し送りユニット20が設けられている。割り出し送りユニット20は、支持構造16の前面にY軸方向に沿って伸長した一対のY軸ガイドレール22を備える。一対のY軸ガイドレール22には、Y軸移動プレート24がスライド可能に装着されている。Y軸移動プレート24の裏面側(後面側)にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはY軸ガイドレール22に平行なY軸ボールネジ26が螺合されている。
【0032】
Y軸ボールネジ26の一端部には、Y軸パルスモータ(不図示)が連結されている。Y軸パルスモータによってY軸ボールネジ26を回転させることにより、Y軸移動プレート24がY軸ガイドレール22に沿ってY軸方向に移動する。
【0033】
Y軸移動プレート24の表面(前面)には、切削ユニット38をZ軸方向(上下方向)に沿って昇降させる昇降ユニット28が設けられる。昇降ユニット28は、Z軸方向に沿った一対のZ軸ガイドレール30をY軸移動プレート24の表面に備える。一対のZ軸ガイドレール30にはZ軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。
【0034】
Z軸移動プレート32の裏面側(後面側)にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはZ軸ガイドレール30に平行な方向に沿うように設けられたZ軸ボールネジ34が螺合されている。Z軸ボールネジ34の一端部にはZ軸パルスモータ36が連結されており、このZ軸パルスモータ36によってZ軸ボールネジ34を回転させることにより、Z軸移動プレート32がZ軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。
【0035】
Z軸移動プレート32の下部には切削ユニット38が固定されている。切削ユニット38に隣接する位置には、チャックテーブル14によって吸引保持された被加工物を撮像し、分割予定ラインの位置を検出するための撮像ユニット40が設けられている。割り出し送りユニット20により切削ユニット38及び撮像ユニット40のY軸方向における位置が制御され、昇降ユニット28により切削ユニット38及び撮像ユニット40のZ軸方向における位置が制御される。
【0036】
切削ユニット38には、環状の切削ブレード44が回転可能に装着されている。切削ブレード44は、ダイヤモンド等の無数の砥粒と、該砥粒を分散保持する結合材と、を備える。切削ブレード44を回転させて被加工物に切り込ませると、結合材の表面に露出した砥粒が被加工物に当たり、該被加工物が切削される。
【0037】
チャックテーブル14に保持された被加工物を切削する際には、チャックテーブル14と、切削ユニット38と、を相対的に移動させて、被加工物の分割予定ラインに切削ブレード44を合わせる。次に、切削ブレード44を回転させた状態で切削ユニット38を所定の高さまで下降させ、チャックテーブル14をX軸方向に沿って加工送りする。回転する切削ブレード44の切刃が被加工物に接触すると、被加工物が切削されて分割される。
【0038】
開口4aに対してカセット支持台6と反対側の位置には、開口4bが形成されている。開口4b内には切削後の被加工物を洗浄するための洗浄ユニット(スピンナ洗浄装置)42が配置されている。洗浄ユニット42は、被加工物を保持しながら回転するチャックテーブル48と、チャックテーブル48に保持された被加工物に上方から洗浄水を噴射する噴射ノズル46と、を備える。洗浄ユニット42で洗浄された被加工物は、再びカセット8に収納される。
【0039】
洗浄ユニット42は、チャックテーブル48を固定できる回転可能なテーブルベースを備える。
図2は、チャックテーブル48と、テーブルベース60と、を模式的に示す斜視図である。チャックテーブル48及びテーブルベース60は、例えば、ステンレス鋼等の部材で形成される。
【0040】
チャックテーブル48は、上面が被加工物の保持面50aとなるポーラス部50と、上方に露出するようにポーラス部50を囲繞する枠体52と、を備える。テーブルベース60の上面は、チャックテーブル48が載る載置面60b(
図3等参照)となる。テーブルベース60は、載置面60bと直交する方向に沿った軸の周りに回転可能である。テーブルベース60の底部には、該テーブルベース60を回転させる回転駆動源となるモータ(不図示)が接続される。
【0041】
チャックテーブル48の枠体52の内部には、一端がポーラス部50に達し、他端が枠体52の下面に達した第1の吸引路(不図示)が設けられている。テーブルベース60の内部には、チャックテーブル48が該テーブルベース60に固定される際に該枠体52の第1の吸引路と接続される第2の吸引路(不図示)が設けられている。すなわち、該第2の吸引路の一端は、テーブルベース60の載置面60bに達している。そして、該第2の吸引路の他端には、図示しない吸引源が接続されている。
【0042】
チャックテーブル48をテーブルベース60に固定し、チャックテーブル48の保持面50aに被加工物を載せ、該吸引源を作動させると、第2の吸引路、第1の吸引路、及びポーラス部を介して被加工物に負圧が作用し、該被加工物が吸引保持される。この状態において、テーブルベース60を回転させることでチャックテーブル48を回転させ、噴射ノズル46から被加工物に洗浄液を噴射させると、被加工物が洗浄される。
【0043】
テープを介して環状フレームに支持された被加工物を洗浄ユニット42で洗浄する場合、チャックテーブル48の枠体52の外周部には、テープを介して被加工物を支持する環状フレームを押さえるフレーム保持部88が設けられているとよい。フレーム保持部88は、一端が枠体52の固定部92で固定された支持部90と、支持部90の他端に回転可能に設けられたフレーム押さえ94と、を備える。
【0044】
フレーム押さえ94は、上部に設けられた爪部96と、下部に設けられた錘部98と、を備える。支持部90に環状フレームを載せ、テープを介してチャックテーブル48で被加工物を吸引保持し、テーブルベース60を高速で回転させると、遠心力により錘部98が外方向に移動して爪部96が内方向に倒れ込む。すると、爪部96が上方から環状フレームを押さえる。
【0045】
ここで、被加工物を洗浄する際には、チャックテーブル48を高速で回転させるため、チャックテーブル48はテーブルベース60に強固に固定する必要がある。従来、チャックテーブル48をテーブルベース60に固定する際には、複数の固定ネジが使用されていた。すなわち、チャックテーブル48の枠体52には複数の貫通孔が設けられており、テーブルベース60の載置面60bには、該貫通孔に対応する位置に複数のネジ穴が設けられていた。
【0046】
チャックテーブル48は、定期的に交換する必要がある。チャックテーブル48を交換する際には、工具で複数の固定ネジを緩め、古いチャックテーブル48をテーブルベース60から取り外し、新しいチャックテーブル48をテーブルベース60の載置面60bに載せる。そして、複数の固定ネジを枠体52に設けられた貫通孔に通し、テーブルベース60に設けられたそれぞれのネジ穴に該固定ネジを工具で締め込む。このように、チャックテーブル48の着脱には工具による作業が必要であり工数がかかっていた。
【0047】
特に、チャックテーブル48をテーブルベース60に固定する際には、固定ネジを所定のトルクで締め込む必要がある。固定ネジの締め込む手順を誤ると、チャックテーブル48が適切にテーブルベース60に固定されず、例えば、枠体52及びテーブルベース60に設けられたそれぞれの吸引路を適切に連通できず、被加工物を吸引保持できないおそれがある。また、チャックテーブル48が傾いてチャックテーブル48を適切に回転できないおそれがある。
【0048】
そこで、本実施形態に係るチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構では、固定ネジを使用することなくチャックテーブルの固定を実現する。以下、本実施形態に係るチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構について説明する。該チャックテーブル固定機構は、固定ネジを使用することなくチャックテーブルをテーブルベースに固定できる機構であり、チャックテーブルを固定できるテーブルベースと、該テーブルベースに固定されるチャックテーブルと、に設けられる。
【0049】
図3は、テーブルベース60に固定されたチャックテーブル48を保持面50aに垂直な面で切断した状態を模式的に示す斜視図である。
図3では、外部に表出した切断面にハッチングを付している。チャックテーブル48は、テーブルベース60の外周部に設けられた開閉可能な係合部62によりテーブルベース60に固定される。
【0050】
係合部62は、本体64の上部に設けられた爪部66を備え、チャックテーブル48の外周部に形成された係合溝54に設けられた突起56に該爪部66を掛けることでチャックテーブル48をテーブルベース60に固定する。テーブルベース60の係合部62と、チャックテーブル48の枠体52の係合溝54と、は互いに対応する位置に設けられる。
【0051】
すなわち、チャックテーブル48の枠体52は、テーブルベース60の外周部に設けられ複数の係合部62の爪部66を受けられる突起56をそれぞれ備える複数の係合溝54を外周に有する。ここで、係合溝54は、上下に貫通しており、かつ、枠体52の外周面48aから内側に後退している。そして、突起56は、係合溝54の内部で枠体52の外側に向けて突き出ている。
【0052】
また、テーブルベース60の外周面60aに設けられた複数の係合部62は、外周面60aに沿った固定軸68と、固定軸68に回転可能に突き通された本体64と、固定軸68よりも上方で本体64に設けられた爪部66と、をそれぞれ備える。係合部62は、さらに、固定軸68よりも下方で本体64に一端が固定された弾性部材70をさらに備える。該弾性部材70は、例えば、コイルばね、ゴム等である。弾性部材70の他端は、テーブルベース60の外周面60aに固定されている。
【0053】
係合部62の本体64は、固定軸68の周りに回転可能である。そして、本体64を回転させることで、枠体52の係合溝54の突起56に爪部66を掛けてチャックテーブル48を固定する閉状態と、爪部66を係合溝54の突起56から外してチャックテーブル48の固定を解除する開状態と、を切り替えられる。
【0054】
係合部62を閉状態とするには、爪部66がテーブルベース60の中心に近づくように倒れ込むように本体64を回転させる。また、係合部62を開状態とするには、爪部66がテーブルベース60の中心から離れるように本体64を回転させる。弾性部材70は、係合部62の本体64の固定軸68よりも下方側を外向きに付勢することで、該閉状態を維持する。
【0055】
係合部62の本体64の最上部である頭部72をテーブルベース60の外側に向けて移動させるように作業者が指で該頭部72を押すと、係合部62が開状態となるように本体64を固定軸68の周りに回転できる。そして、作業者が指を頭部72から離すと、弾性部材70により本体64が逆方向に回り、係合部62が閉状態に戻る。
【0056】
また、係合部62の本体64には、固定軸68よりも上方側で、かつ、爪部66よりも下方側に、突起状のストッパ部74が設けられている。さらに、テーブルベース60の外周面60aの該ストッパ部74に対面する位置には、該ストッパ部74が当たるストッパ受け部76が形成されている。
【0057】
閉状態において係合部62の本体64が必要以上に傾いている場合、後述の通り、チャックテーブル48をテーブルベース60に固定する際、チャックテーブル48に本体64が当たるときに係合部62が開状態とならない場合がある。ストッパ部74及びストッパ受け部76が設けられていると、本体64が閉状態となるように回転するとき、ストッパ部74がストッパ受け部76に当たることで本体64の所定以上の傾きが防止される。
【0058】
次に、チャックテーブル48をテーブルベース60に固定する際の係合部62の動作について説明する。チャックテーブル48をテーブルベース60に固定する際には、
図4(A)に示す通り、テーブルベース60の上方にチャックテーブル48を位置付ける。このとき、チャックテーブル48の下面48bをテーブルベース60の載置面60bに対面させ、各係合溝54と各係合部62とが重なるようにチャックテーブル48の向きを調整する。
【0059】
その後、チャックテーブル48をテーブルベース60に向けて下降させる。
図4(B)は、係合溝54の突起56が係合部62の爪部66に当たった状態のチャックテーブル48及びテーブルベース60を模式的に示す断面図である。係合部62の爪部66に係合溝54の突起56が当たると、係合部62の本体64がチャックテーブル48の枠体52により押され、係合部62が開状態となるように本体64が回る。
【0060】
このとき、枠体52から係合部62の本体64に円滑に力が伝わるように、爪部66の先端と、突起56の先端と、にテーパー形状または曲面が形成されているとよい。すなわち、爪部66の先端には、該先端の下端から上端にかけてテーブルベース60の外方向に徐々に後退した形状の接触面66aが形成されているとよい。また、突起56の先端には、該先端の上端から下端にかけて枠体52の中心方向に徐々に後退した形状の接触面56aが設けられているとよい。
【0061】
この場合、チャックテーブル48をテーブルベース60に向けて下降させたとき、突起56の先端の接触面56aと、爪部66の先端の接触面66aと、によりチャックテーブル48を下降させる力の一部が係合部62を開く力に変換される。すると、
図4(B)に示す通り、弾性部材70に抗して本体64が徐々に回る。
【0062】
そして、爪部66の最先端部が突起56の最先端部に達し、さらにチャックテーブル48が押し下げられて互いの接触面56a,66aが離れたとき、係合部62を開く該力が該係合部62にかからなくなる。そして、弾性部材70により本体64が逆方向に回り、係合部62が再び閉状態となる。すると、
図3及び
図5(A)に示す通り、突起56の上面に爪部66の下面が接触し、突起56が爪部66により上方から押さえ込まれる。このとき、係合部62によりチャックテーブル48がテーブルベース60に固定される。
【0063】
なお、チャックテーブル48がテーブルベース60に固定されたときに、係合部62の爪部66が枠体52の係合溝54に収容されるように、係合溝54は、突起56の上に爪部66を収容できる大きさの凹部が形成されているとよい。また、係合溝54に設けられた突起56が係合部62の本体64に収容されるように、係合部62の本体64には、爪部66の下に突起56を収容できる大きさの凹部が形成されているとよい。
【0064】
以上に説明するように、本実施形態に係るチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構では、工具で固定ネジを締めることなくチャックテーブルをテーブルベースに固定できる。作業者は、単にチャックテーブル48をテーブルベース60に向けて押し下げるだけで極めて容易にチャックテーブル48をテーブルベース60に固定できる。
【0065】
すなわち、固定ネジを所定のトルクで締めるような複雑な作業が不要であり、チャックテーブル48をテーブルベース60に固定する工数を大幅に削減できる。そして、固定を実現する手順に特別な手順を要さず、固定に失敗することもない。
【0066】
チャックテーブル48をテーブルベース60に固定したあと、洗浄ユニット42では被加工物の洗浄が実施される。このとき、テーブルベース60及びチャックテーブル48を高速に回転させる。ここで、チャックテーブル48をテーブルベース60に固定させる係合部62がチャックテーブル48及びテーブルベース60の外側にはみ出ていると、係合部62に空気抵抗がかかり、テーブルベース60の回転を妨げてしまう。
【0067】
そこで、
図3等に示す通り、チャックテーブル48の枠体52の係合溝54は、係合部62が閉状態であるときに枠体52の外周面48aの外側に残らないように該係合部62を収容できる形状とされることが好ましい。特に、係合部62を閉状態として係合部62を係合溝54に収容したときに、枠体52の外周面48aと、係合部62の本体64の外周面と、が連続することが好ましい。
【0068】
また、テーブルベース60を回転させたとき、チャックテーブル48の枠体52のテーブルベース60に対する位置ずれや回転ずれ生じないように、チャックテーブル48及びテーブルベース60にずれを防止する機構が設けられてもよい。
【0069】
例えば、テーブルベース60の載置面60bに対面する枠体52の下面48bには複数の規制穴58が設けられていてもよく、テーブルベース60の載置面60bには複数の規制突起78が設けられてもよい。チャックテーブル48を適切な向きでテーブルベース60に固定する際に複数の該規制突起78が複数の該規制穴58のそれぞれに挿入されるように、該規制突起78及び該規制穴58は、互いに対応した位置に配置される。
【0070】
この場合、
図5(A)に示される通り、係合部62でテーブルベース60にチャックテーブル48を固定した際、複数の規制突起78が複数の規制穴58のそれぞれに挿入される。すると、載置面60bに平行な方向へのチャックテーブル48(枠体52)の位置ずれや載置面60bに平行な面内でのチャックテーブル48(枠体52)の回転ずれを防止できる。
【0071】
なお、規制突起78は、チャックテーブル48の枠体52の下面48bに設けられてもよく、規制穴58は、テーブルベース60の載置面60bに設けられてもよい。すなわち、チャックテーブル48の枠体52の下面48bと、テーブルベース60の載置面60bと、の一方には、複数の規制穴58が設けられ、他方には、複数の規制穴58のそれぞれに挿入できる複数の規制突起78が設けられる。
【0072】
次に、係合部62によるチャックテーブル48の固定の解除について説明する。チャックテーブル48の固定の解除は、係合部62を開状態にすることで実施される。すなわち、作業者は、係合部62の本体64の頭部72と、枠体52と、の間で係合溝54に上方から指を差し入れる。そして、作業者は、頭部72をテーブルベース60の中心とは離れる向き(外向き)に押し、本体64を固定軸68の周りに回す。
【0073】
図5(B)は、作業者により係合部62の本体64の頭部72が外向きに押された状態におけるチャックテーブル48及びテーブルベース60を模式的に示す断面図である。係合部62が開状態になると、係合部62の爪部66が係合溝54の突起56に掛からなくなり、チャックテーブル48のテーブルベース60への固定が解除される。
【0074】
このとき、係合部62のストッパ部74の上面がチャックテーブル48の枠体52の下面48bに当たり、枠体52を下方から押し上げる。ここで、ストッパ部74の上面は、枠体52を押し上げやすいように凸状とするとよい。
【0075】
そして、係合部62の爪部66よりも係合溝54の突起56が高い位置となったときに作業者が本体64の頭部72に掛けられた指を離すと、弾性部材70により本体64が回されて係合部62が閉状態となる。そして、爪部66に突起56が載り、テーブルベース60の載置面60bからチャックテーブル48が浮く。すると、作業者がチャックテーブル48を持ち上げやすくなる。
【0076】
このように、本実施形態に係るチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構は、チャックテーブルの固定を解除してテーブルベースから外す際に固定ネジを工具で緩める作業が不要である。すなわち、係合部62の本体64の頭部72を指で押し係合部62を開状態とするだけでチャックテーブル48の固定を解除できる。そのため、固定の解除に要する工数も大幅に削減できる。
【0077】
なお、切削装置2では、様々な大きさの被加工物を切削できる。そして、切削し洗浄する被加工物の大きさを変更する際には、新たな被加工物を吸引保持できるように洗浄ユニット42のチャックテーブル48を交換する必要がある。
図6(A)は、比較的大きな径の被加工物を吸引保持できるチャックテーブル48を模式的に示す断面図であり、
図6(B)は、比較的小さな径の被加工物を吸引保持できるチャックテーブル80を模式的に示す断面図である。
【0078】
図6(B)に示すチャックテーブル80は、
図6(A)に示すチャックテーブル48の枠体52の径と同じ径の枠体84を有する。そして、枠体84には、係合溝54と同様に構成される係合溝86が形成されている。また、チャックテーブル80は、チャックテーブル48のポーラス部50とは異なる径のポーラス部82を有する。そして、ポーラス部82の上面の保持面82aの径は、ポーラス部50の保持面50aの径と異なる。
【0079】
チャックテーブル80をこのような構成とすることで、チャックテーブル48と同様にチャックテーブル80をテーブルベース60に固定できる。すなわち、チャックテーブル48,80の枠体52,84の径を変更することなくポーラス部50,82の径を変更することで様々な径の被加工物に対応できる。
【0080】
ただし、枠体52,84の径は一定でなくてもよく、被加工物の大きさに対応して変更してもよい。この場合において、係合部62によるチャックテーブル48,80の固定が可能となるように、少なくとも係合溝54,86が設けられる部分において枠体52,84の径が維持されていればよい。すなわち、係合溝54,86が設けられる部分以外の部分においてチャックテーブル48,80の枠体52,84の径が変更されてもよい。
【0081】
被加工物の径が変更される場合、テープを介して被加工物を支持する環状フレームの径も変更される場合が多い。環状フレームの径が変更される場合、環状フレームを押さえるフレーム保持部88(
図2参照)の位置も変更する必要がある。例えば、係合部62が設けられる部分で枠体52,84の径を維持しつつ、フレーム保持部88が固定される部分で環状フレームの径に合わせて枠体52,84の径を変更するとよい。
【0082】
この場合においてフレーム保持部88の位置の変更が許容されるように、テーブルベース60にはフレーム押さえ収容溝100が形成されているとよい。テーブルベース60にフレーム押さえ収容溝100が形成されていると、フレーム保持部88の位置がチャックテーブル48の中心に近づくように変更される場合においても、フレーム保持部88のフレーム押さえ94がテーブルベース60に当たることがない。
【0083】
以上に説明するとおり、本実施形態に係るチャックテーブル、テーブルベース、及びチャックテーブル固定機構は、係合部でチャックテーブルをテーブルベースに固定できるため、固定ネジが不要である。すなわち、係合部62が閉状態であるときに爪部66が係合溝54の突起56に掛かることでテーブルベース60の載置面60b上にチャックテーブル48を固定可能である。そして、係合部62が開状態であるときに爪部66が係合溝54の突起56に掛からなくなることでテーブルベース60への固定が解除可能である。
【0084】
なお、上記実施形態では、係合部62がテーブルベース60に設けられ、係合溝54がチャックテーブル48の枠体52に形成される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、テーブルベース60に係合溝54が形成され、チャックテーブル48の枠体52に係合部62が形成されてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、3つの係合部62がテーブルベース60に設けられ、3つの係合溝54がチャックテーブル48の枠体52に形成される場合について主に説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、係合部62及び係合溝54の数はこれに限定されない。
【0086】
チャックテーブル48及びテーブルベース60を円滑に回転させるために、複数の係合部62及び複数の係合溝54は、テーブルベース60の載置面60bの中心に対して互いに点対称に配置されるとよい。すなわち、係合部62及び係合溝54は、チャックテーブル48及びテーブルベース60の重心を移動させない限り、数及び位置を任意に変更できる。
【0087】
さらに上記実施形態では、係合部62を備えるテーブルベース60が切削装置2の洗浄ユニット42に設けられており、係合溝54が形成されたチャックテーブル48が該テーブルベース60に固定される場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、切削ユニット38の下方に係合部62を備えるテーブルベース60が設けられてもよく、該係合溝54が形成されたチャックテーブル48が該テーブルベース60に固定されてもよい。
【0088】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0089】
2 切削装置
4 基台
4a,4b 開口
6 カセット支持台
8 カセット
10 テーブルカバー
12 防塵防滴カバー
14 チャックテーブル
14a 保持面
14b クランプ
16 支持構造
18 腕部
20 割り出し送りユニット
22,30 ガイドレール
24,32 移動プレート
26,34 ボールネジ
28 昇降ユニット
36 パルスモータ
38 切削ユニット
40 撮像ユニット
42 洗浄ユニット
44 切削ブレード
46 噴射ノズル
48,80 チャックテーブル
48a,60a 外周面
48b 下面
50,82 ポーラス部
50a,82a 保持面
52,84 枠体
54,86 係合溝
56 突起
56a,66a 接触面
58 規制穴
60 テーブルベース
60b 載置面
62 係合部
64 本体
66 爪部
68 固定軸
70 弾性部材
72 頭部
74 ストッパ部
76 ストッパ受け部
78 規制突起
88 フレーム保持部
90 支持部
92 固定部
94 フレーム押さえ
96 爪部
98 錘部
100 フレーム押さえ収容溝