(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】肉様食品用組成物、肉様食品及びその製造方法並びに肉様食品の品質改良方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20231225BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20231225BHJP
A23J 3/18 20060101ALI20231225BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20231225BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20231225BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20231225BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23J3/16
A23J3/18
A23L35/00
A23L13/00 A
A23L13/60 Z
(21)【出願番号】P 2021528590
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2019024632
(87)【国際公開番号】W WO2020255366
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 歩美
(72)【発明者】
【氏名】田辺 優希
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-061592(JP,A)
【文献】特開昭58-175446(JP,A)
【文献】特開2014-143969(JP,A)
【文献】特開2013-009617(JP,A)
【文献】特開2017-018097(JP,A)
【文献】特開平07-227231(JP,A)
【文献】特開平01-235547(JP,A)
【文献】特開2004-129657(JP,A)
【文献】特開2018-130102(JP,A)
【文献】特開2008-161105(JP,A)
【文献】特開平7-8196(JP,A)
【文献】特開2016-54719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織状大豆たん白と、加工澱粉と、小麦由来たん白を含む素材と、を少なくとも含有する
肉様食品の製造に用いる組成物であり、
前記加工澱粉の含有量が、
前記製造時における吸水状態の前記組織状大豆たん白100質量部に対して3~20質量部
となる量であり、
前記小麦由来たん白を含む素材の含有量が、
前記製造時における吸水状態の前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が0.2~4.5質量部となる量であ
り、
前記加工澱粉は、α化澱粉及び/又はアセチル化澱粉であり、
対象となる肉様食品に対する使用量は、肉様食品中において、前記製造時における吸水状態の前記組織状大豆たん白の含有量が20質量%以上となる量である、肉様食品用組成物。
【請求項2】
前記加工澱粉の含有量が、前記製造時における吸水状態の前記組織状大豆たん白100質量部に対して3~16.7質量部となる量である、請求項1に記載の肉様食品用組成物。
【請求項3】
前記小麦由来たん白を含む素材が、小麦粉、小麦グルテン粉末、麩粉砕物から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
動物性食品を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物を含む、肉様食品。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物と、肉様食品原材料と、を混合する工程を含む、肉様食品の製造方法。
【請求項7】
前記小麦由来たん白を含む素材に水を加えて混練する工程を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
肉様食品原材料に、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物を添加する工程を含む、肉様食品の品質改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉様食品用組成物、肉様食品及びその製造方法並びに肉様食品の品質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグやミートボール等、食肉を含む加工食品の原材料として、植物性たん白が使用されることがある。近年、生活習慣病予防等の健康への配慮から、動物性たん白の使用量を減らし、植物性たん白を主原料とした肉様食品が注目されている。また最近では、食生活が多様化し、ベジタリアンやヴィーガンといわれる菜食主義者の人口が増加傾向にあるため、動物性食品の含有量を少なくした又は含有しない肉様食品のニーズはさらに高まっている。
【0003】
これまでに、植物性たん白を用いた様々な肉様食品が提案されている。
例えば、特許文献1では、エマルジョンカード状フレーバー組成物、植物性蛋白質、液体材料、固体材料からなる製造原料を用いることを特徴とする加工食品の製造方法が提案されている。また、特許文献2では、蒟蒻粉と、おからと、大豆タンパクを主原料とするベジタリアン及びヴィーガン用代用肉の製造方法が提案されている。さらに、特許文献3では、(a)組織状たん白素材と、熱凝固性たん白素材を含む生地を成形し加熱凝固させる工程と、(b)加熱凝固させた後に押圧する工程とを含むことを特徴とする肉様加工食品の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-129657号公報
【文献】特開2018-130102号公報
【文献】特開2008-161105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動物性食品を主原料とする加工食品は、食肉や野菜等の主原料に、小麦粉、パン粉、片栗粉及び/又は卵等を加えて混練し、粘着力を与えることによって材料を結着させる。一方、植物性たん白を主原料とした肉様食品の場合、食肉及び卵の含有量が少ない又はこれらを含有しないため、混練成形時の結着性が悪く、操作性が良好でない場合があった。また、成形することが可能であっても、加熱後にひび割れが発生し、肉様食品の外観が好ましくないものとなってしまう場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、混練成形時の結着性がよく、操作性が良好で、加熱後の外観も良好な肉様食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、組織状大豆たん白に、加工澱粉及び小麦由来たん白を含む素材をそれぞれ特定の量配合することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、組織状大豆たん白と、加工澱粉と、小麦由来たん白を含む素材と、を少なくとも含有する組成物であり、前記加工澱粉の含有量が、前記組織状大豆たん白100質量部に対して3~20質量部であり、前記小麦由来たん白を含む素材の含有量が、前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が0.2~4.5質量部となる量である、肉様食品用組成物を提供する。
また、本発明は、上記組成物を含む肉様食品も提供する。
本発明は、上記組成物と、肉様食品原材料と、を混合する工程を含む、肉様食品の製造方法も提供する。
本発明は、肉様食品原材料に、上記組成物を添加する工程を含む、肉様食品の品質改良方法も提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、混練成形時の結着性がよく、操作性が良好で、加熱後の外観も良好な肉様食品を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く限定されることはない。
【0011】
<1.肉様食品用組成物>
まず、本発明の一実施形態に係る肉様食品用組成物について説明する。
本実施形態に係る肉様食品用組成物は、組織状大豆たん白と、加工澱粉と、小麦由来たん白を含む素材と、を必須成分として含有する。
なお、本明細書において「肉様食品」とは、植物性たん白を主原料とし、「食肉特有の食感」に近い食感を有する加工食品をいう。また、「食肉特有の食感」とは、「食肉の繊維のような適度な歯応えのある食感」をいう。「食肉」とは、牛、豚、馬、羊、鶏等の家畜や、鹿、猪、穴熊、兎、鴨等の野生鳥獣の食用肉をいう。
【0012】
(A)組織状大豆たん白
本実施形態の組織状大豆たん白は、大豆たん白を含む原料を、二軸エクストルーダー等の押出成形機を用いて組織化して得られるものである。組織状大豆たん白の形状は、粒状、フレーク状、繊維状であってもよく、粒状又はフレーク状であることが好ましい。また、粒状大豆たん白とフレーク状大豆たん白とを組み合わせて用いてもよい。
【0013】
組織状大豆たん白の原料となる大豆たん白としては、脱脂大豆粉、分離大豆たん白、濃縮大豆たん白、脱脂豆乳粉末、全脂豆乳粉末、大豆粉等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、副原料として、小麦グルテン等の大豆由来以外の植物性たん白;食用油脂;澱粉;食物繊維;ゲル化剤;乳化剤;酸化防止剤;pH調整剤;増粘剤;着色料;保存料等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を適宜添加することができる。
【0014】
本実施形態の組織状大豆たん白は、市販のものを用いてもよい。例えば、日本農林規格(JAS規格)の粒状植物性たん白や、昭和産業株式会社の「昭和ソイバリュー100」、「昭和ミーテックス K-6」等が挙げられる。
【0015】
本実施形態においては、上記した市販の組織状大豆たん白をそのまま肉様食品に添加してもよいが、当該組織状大豆たん白を水に浸漬し、焙煎処理、焼成処理、油ちょう処理、蒸し処理、電子レンジ加熱処理、燻煙処理等の加熱処理を行ってから肉様食品に添加してもよい。当該加熱処理は、水分量の調節がしやすいという観点から、焙煎処理であることが好ましい。
本実施形態の組織状大豆たん白は、例えば、組織状大豆たん白に0.8~2.5倍の水、食塩水、調味液等の水を主成分とする液体を加え、焙煎処理したものを用いてもよく、組織状大豆たん白に0.8~2.5倍の水を加え、さらに油を加えて炒めたものを用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。組織状大豆たん白に0.8~2.5倍の水を加え、焙煎処理したものを用いることで、肉様食品の弾力やジューシー感を良好なものとすることができる。
【0016】
(B)加工澱粉
本実施形態の加工澱粉は、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、タピオカ、トウモロコシ、サゴ等の植物から抽出した澱粉に、物理的又は化学的加工を施したものである。本実施形態において、加工澱粉としてα化澱粉;アセチル化澱粉;ヒドロキシプロピル化澱粉;エーテル化澱粉;架橋澱粉;酸化澱粉等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。そのなかでも、混練成形時の結着性及び加熱後の外観をより良好なものとする観点から、α化澱粉及び/又はアセチル化澱粉を用いることが好ましく、α化コーンスターチ、α化馬鈴薯澱粉、α化酢酸タピオカ澱粉、アセチル化タピオカ澱粉を用いることがより好ましい。本実施形態では市販のものを用いることができ、例えば、松谷あじさい(松谷化学工業株式会社製)、SF-800(敷島スターチ株式会社製)、SF-α(敷島スターチ株式会社製)、F-800(敷島スターチ株式会社製)、S-600(Y)(敷島スターチ株式会社製)、SF-1450(昭和産業株式会社製)等を用いることができる。
【0017】
本実施形態において、加工澱粉の含有量の下限は前記組織状大豆たん白100質量部に対して3質量部以上であり、3.3質量部以上であることが好ましく、6質量部以上、又は6.7質量部以上であることがより好ましく、13質量部以上、又は13.3質量部以上であることがさらに好ましい。また、加工澱粉の含有量の上限は前記組織状大豆たん白100質量部に対して20質量部以下であり、17質量部以下、又は16.7質量部以下であることがより好ましい。
【0018】
(C)小麦由来たん白を含む素材
本実施形態の小麦由来たん白を含む素材(以下、「小麦由来たん白素材」ともいう。)は、薄力粉、中力粉、強力粉等の小麦粉;小麦グルテン粉末;麩粉砕物;乾麺粉砕物等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。そのなかでも、中力粉、強力粉、小麦グルテン粉末を用いることが好ましい。
【0019】
本実施形態の小麦由来たん白素材は、市販のものを用いてもよい。例えば、A-グルSS(グリコ栄養食品株式会社製)、B-パウダーグル(グリコ栄養食品株式会社製)が挙げられる。
【0020】
本実施形態において、小麦由来たん白素材の含有量の下限は、前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が0.2質量部以上となる量であり、0.26質量部以上となる量であることが好ましく、0.4質量部以上、又は0.43質量部以上となる量であることがより好ましく、0.6質量部以上、又は0.65質量部以上であることがさらに好ましく、0.8質量部以上、又は0.87質量部以上となる量であることがさらにより好ましい。また、小麦由来たん白素材の含有量の上限は、前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が4.5質量部以下となる量であり、4.33質量部以下となる量であることが好ましく、2.6質量部以下となる量であることがより好ましく、2質量部以下となる量であることがさらに好ましく、1.8質量部以下又は1.73質量部以下となる量であることがさらにより好ましい。
【0021】
本実施形態においては、上記した市販の小麦由来たん白素材をそのまま肉様食品に添加してもよいが、当該小麦由来たん白素材を水と混練してから肉様食品に添加してもよい。小麦由来たん白素材を水と混練することによって、混練成形時の結着性がよくなり、操作性をより良好なものとすることができる。また、加熱後の外観もより良好なものとすることができる。水の添加量は、肉様食品中の小麦由来たん白質含有量を1としたときに、水が5~20倍となる量であることが好ましく、10~20倍となる量であることがより好ましい。
【0022】
(D)その他の成分
本実施形態に係る肉様食品用組成物は、上記した組織状大豆たん白、加工澱粉及び小麦由来たん白素材のみで構成されていてもよいが、これらの成分以外に、任意の添加剤を含有することもできる。当該添加剤としては、調味料;香辛料;増粘剤;上記した加工澱粉以外の澱粉;小麦以外の穀粉等が挙げられる。
【0023】
(E)効果
本実施形態に係る肉様食品用組成物を用いることにより、混練成形時の結着性がよく、操作性が良好で、加熱後の外観も良好な肉様食品を提供することができる。
また、本実施形態に係る肉様食品用組成物は、食肉及び材料を結着させるための卵の含有量が少なくても、又はこれらを含有しなくても、混練成形時の結着性がよく、操作性が良好であり、かつ加熱後の外観も良好である。そのため、本実施形態に係る肉様食品用組成物は、動物性食品を含まないものとすることができ、ベジタリアンやヴィーガンと呼ばれる菜食主義者でも喫食可能な肉様食品を提供することができる。
【0024】
さらに、後述する実施例で説明するように、組織状大豆たん白を水に浸漬し、炒める等の加熱処理を行ってから肉様食品に用いると、加熱後の肉様食品のジューシーさや弾力は良好になるが、混練成形時の結着性が良好でない場合がある。しかし、本実施形態に係る肉様食品用組成物は、当該組織状大豆たん白と、加工澱粉及び小麦由来たん白素材とを特定の量で組み合わせることによって、加熱後のジューシーさや弾力を良好にしながら、混練成形時の結着性を良好にし、さらに加熱後の外観も良好なものとすることができる。
【0025】
<2.肉様食品>
次に、本発明の一実施形態に係る肉様食品について説明する。
本実施形態に係る肉様食品は、上記した肉様食品用組成物を含む。また、本実施形態の効果を損なわない範囲で、肉様食品に一般的に使用される原材料を含んでいてもよい。当該原材料としては、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉、鹿肉、猪肉、鴨肉等の肉類;鮪、鮭、鱈、エビ、カニ、タコ等の魚介類;昆虫類;野菜類;藻類;上記した組織状大豆たん白以外の大豆加工品(豆腐、おから等)及びその他の豆類;パン粉等が挙げられる。
【0026】
本実施形態における肉様食品用組成物の使用量は、当業者によって適宜設定されてよいが、肉様食品に対して30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、当該肉様食品用組成物の使用量は、肉様食品に対して70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
また、当該肉様食品用組成物の使用量の下限は、肉様食品中の組織状大豆たん白の含有量が20質量%以上となる量であることが好ましく、30質量%以上となる量であることがより好ましい。また、当該肉様食品用組成物の使用量の上限は、肉様食品中の組織状大豆たん白の含有量が60質量%以下となる量であることが好ましく、50質量%以下となる量であることがより好ましい。
【0027】
なお、本実施形態における肉様食品は、特に限定されないが、例えば、ハンバーグ、ミートボール、パティ、ソーセージ、メンチカツ、つくね、チキンナゲット等が挙げられる。このなかでも、焼成して製造される肉様食品、例えばハンバーグ、パティ、ミートボール、つくね等により好適に用いることができる。
【0028】
<3.肉様食品の製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係る肉様食品の製造方法について説明する。
本実施形態に係る肉様食品の製造方法は、上記した肉様食品用組成物と、肉様食品原材料と、を混合する工程を含む。本実施形態に係る肉様食品の製造方法において、前記組織状大豆たん白、加工澱粉及び小麦由来たん白素材の使用態様は特に限定されないが、好ましい使用態様は上記した肉様食品用組成物と同様である。
【0029】
本実施形態に係る肉様食品の製造方法は特に限定されず、一般的な肉様食品の製造方法を採用することができる。例えば、上記した肉様食品用組成物混合し、それと同時又は別々に任意の肉様食品原材料を添加し、混練した具材を所定の形状に成形して加熱調理を行うことで、肉様食品を得ることができる。
上記混練は、ミキサー等の機械を用いて行ってもよく、手で行ってもよい。また、混練は、上記した具材が均一に混ざればよく、混練時間は特に限定されない。
上記所定の形状は、特に限定されず、任意の形状に成形してよい。
上記加熱調理は、特に限定されないが、例えば、焼き、炒め、蒸し、油ちょう、電子レンジ調理、燻製等を挙げることができる。
【0030】
なお、本実施形態に係る肉様食品の製造方法は、肉様食品用組成物と、肉様食品原材料と、を混合する工程に加えて、例えば、組織状大豆たん白を水に浸漬する工程、組織状大豆たん白に加熱処理を行う工程、小麦由来たん白素材に水を加えて混練する工程等を含んでいてもよい。
【0031】
本実施形態に係る肉様食品の製造方法によれば、混練成形時の結着性がよく、操作性が良好であり、かつ加熱後の外観も良好な肉様食品を得ることができる。
【0032】
<4.肉様食品の品質改良方法>
最後に、本発明の一実施形態に係る肉様食品の品質改良方法について説明する。なお、本明細書において「品質改良」とは、肉様食品の加熱後の外観及び/又は食感を良好なものとすることであり、例えば、加熱後の肉様食品の表面にひび割れが生じることを抑制したり、加熱後の肉様食品の食感を良好にしたりすること等である。
【0033】
本実施形態に係る品質改良方法は、肉様食品原材料に、上記した肉様食品用組成物を添加する工程を含む。本実施形態に係る肉様食品の品質改良方法において、前記組織状大豆たん白、加工澱粉及び小麦由来たん白素材の使用態様は特に限定されないが、好ましい使用態様は上記した肉様食品用組成物と同様である。
【0034】
なお、本実施形態に係る品質改良方法は、肉様食品原材料に、上記した肉様食品用組成物を添加する工程に加えて、例えば、組織状大豆たん白を水に浸漬する工程、組織状大豆たん白に加熱処理を行う工程、小麦由来たん白素材に水を加えて混練する工程等を含んでいてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く限定されることはない。
【0036】
<参考例1>
表1に記載の配合で、以下の手順にてハンバーグ(焼成製品)を製造した。
組織状大豆たん白A及び組織状大豆たん白Bは1.2倍量の水に5分間浸漬し、吸水させた。玉ねぎはみじん切りにして炒めた。全ての材料をミキサーで混練したあと、1個あたり50gに分割し、厚さ約1.5cm、直径約5~6cmの円盤型に成形した。
成形後、ハンバーグ生地を予め180℃に予熱したスチームオーブン(直本工業株式会社の「350スチームDCオーブン(小型コンベアタイプ)」)で10分間焼成し、ハンバーグを得た。
【0037】
<実施例1>
表1に記載の配合で、以下の手順にてハンバーグ(焼成製品)を製造した。
組織状大豆たん白A及び組織状大豆たん白Bは1.2倍量の水に5分間浸漬し、吸水させたあと、IH調理器の中火で、フライパンの表面温度が170℃に達してから3分間炒めた。玉ねぎはみじん切りにして炒めた。これら全ての材料をミキサーで混練したあと、1個あたり50gに分割し、厚さ約1.5cm、直径約5~6cmの円盤型に成形した。
成形後、ハンバーグ生地を予め180℃に予熱したスチームオーブン(直本工業株式会社の「350スチームDCオーブン(小型コンベアタイプ)」)で10分間焼成し、ハンバーグを得た。
【0038】
<実施例2>
加工澱粉A(アセチル化タピオカ澱粉)の代わりに加工澱粉B(α化酢酸タピオカ澱粉)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハンバーグを得た。
【0039】
<実施例3>
加工澱粉A(アセチル化タピオカ澱粉)の代わりに加工澱粉C(α化馬鈴薯澱粉)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハンバーグを得た。
【0040】
<実施例4>
加工澱粉A(アセチル化タピオカ澱粉)の代わりに加工澱粉D(α化コーンスターチ)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハンバーグを得た。
【0041】
<実施例5~7>
加工澱粉D(α化コーンスターチ)の含有量を変えたこと以外は、実施例4と同様にしてハンバーグを得た。
【0042】
<実施例8>
小麦由来たん白素材として、強力粉の代わりに小麦グルテン粉末を用い、さらに水を添加したこと以外は、実施例1と同様にしてハンバーグを得た。
【0043】
<実施例9>
小麦グルテン粉末と水を混練したものを、他の材料と混合したこと以外は、実施例8と同様にしてハンバーグを得た。
【0044】
<実施例10>
強力粉の含有量を変え、さらに、強力粉と水を混練したものを、他の材料と混合したこと以外は、実施例1と同様にしてハンバーグを得た。
【0045】
<実施例11~15>
強力粉及び混練する水の含有量を変えたこと以外は、実施例10と同様にしてハンバーグを得た。
【0046】
<比較例1>
組織状大豆たん白A及び組織状大豆たん白Bを1.2倍量の水に5分間浸漬し、吸水させたあと、IH調理器の中火で、フライパンの表面温度が170℃に達してから3分間炒めたものを用いたこと以外は、参考例1と同様にしてハンバーグを得た。
【0047】
<比較例2>
澱粉として加工澱粉A(アセチル化タピオカ澱粉)の代わりにコーンスターチを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハンバーグを得た。
【0048】
<比較例3>
加工澱粉D(α化コーンスターチ)の含有量を変えたこと以外は、実施例4と同様にしてハンバーグを得た。
【0049】
<ハンバーグの評価>
以下の評価基準に従って、各ハンバーグの混練成形時の結着性及び加熱後の外観を評価した。評点は、訓練を受けた専門のパネル6人で合議して決定した。なお、混練成形時の結着性が3点以上であり、かつ加熱後の外観が2点以上の評価であるものを、本発明の効果が発揮されていると判断した。
【0050】
<評価項目>
混練成形時の結着性:参考例1を基準とし、全ての材料を混練した際のまとまりの程度を、以下に記載した5段階の評価基準に則って0.5点刻みで評価した。
5:非常に良好(参考例1と比べて、非常にまとまりやすい)
4:良好(参考例1と比べて、まとまりやすい)
3:やや良好(参考例1と比べて、ややまとまりやすい)
2:やや不良(参考例1と比べて、ややまとまりにくい)
1:不良(参考例1と比べて、まとまりにくい)
【0051】
加熱後の外観:加熱後の外観を以下に記載した3段階の評価基準に則って0.5点刻みで評価した。
3:非常に良好(加熱直後の表面にひび割れがない)
2:良好(加熱直後の表面に軽微なひび割れがある)
1:不良(加熱直後の表面全体にわたってひび割れがある)
【0052】
参考例1、実施例1~15及び比較例1~3の結果を以下の表1~表3に示す。なお、本実施例で使用した材料は、以下のとおりである。
組織状大豆たん白A:昭和ミーテックス K-6(昭和産業株式会社製)
組織状大豆たん白B:ソイバリュー HA-10(昭和産業株式会社製)
コーンスターチ:昭和コーンスターチ(敷島スターチ株式会社製)
加工澱粉A:アセチル化タピオカ澱粉 SF-800(敷島スターチ株式会社製)
加工澱粉B:α化酢酸タピオカ澱粉 SF-α(敷島スターチ株式会社製)
加工澱粉C:α化馬鈴薯澱粉 F-800(敷島スターチ株式会社製)
加工澱粉D:α化コーンスターチ S-600(Y)(敷島スターチ株式会社製)
強力粉(たん白量13%):クオリテ(昭和産業株式会社製)
小麦グルテン粉末(たん白量76.7%):B-パウダーグル(グリコ栄養食品株式会社)
【0053】
表1~表3中の「組織状大豆たん白A及びBの炒め処理の有無」は、全ての材料を混練する前に組織状大豆たん白A及びBの炒め処理を行ったものを○、当該炒め処理を行っていないものを-と記載した。また、表1~表3中の「小麦由来たん白素材と水との混練の有無」は、全ての材料を混練する前に小麦由来たん白素材と水との混練を行ったものを○、当該混練を行っていないものを-と記載した。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
参考例1、実施例1~4、比較例1及び2の結果から、組織状大豆たん白と、加工澱粉と、小麦由来たん白素材を組み合わせて用いることで、肉様食品の混練成形時の結着性及び加熱後の外観が良好になることがわかった。
ここで、参考例1及び比較例1を比べると、組織状大豆たん白を水に浸漬し、吸水させたあと、炒める処理を行ってから用いると、肉様食品のジューシーさや弾力は良好になったが、混練成形時の結着性がやや不良となった。しかしながら、実施例1~4に示すように、上記処理を行った組織状大豆たん白と、加工澱粉及び小麦由来たん白素材を組み合わせることによって、肉様食品のジューシーさや弾力を良好にしつつも、混練成形時の結着性及び加熱後の外観を良好にすることができることがわかった。
【0058】
また、実施例4~7及び比較例3の結果から、加工澱粉の含有量が、組織状大豆たん白100質量部に対して3~20質量部である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観が良好になることが示唆された。
また、加工澱粉の含有量の下限が組織状大豆たん白100質量部に対して3.3質量部以上、より好ましくは6.7質量部以上、さらに好ましくは13.3質量部以上である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることがわかった。よって、加工澱粉の含有量の下限が組織状大豆たん白100質量部に対して3.3質量部以上、より好ましくは6質量部以上、又は6.7質量部以上、さらに好ましくは13質量部以上、又は13.3質量部以上である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることが示唆された。
そして、加工澱粉の含有量の上限が組織状大豆たん白100質量部に対して16.7質量部以下である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることがわかった。よって、加工澱粉の含有量の上限が組織状大豆たん白100質量部に対して20質量部以下、より好ましくは17質量部以下、又は16.7質量部以下である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることが示唆された。
【0059】
そして、実施例8~15の結果から、小麦由来たん白素材の含有量が、組織状大豆たん白100質量部に対して肉様食品用組成物中の小麦由来たん白質含有量が0.2~4.5質量部となる量である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観が良好になることが示唆された。
また、小麦由来たん白素材の含有量の下限が、前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が0.26質量部以上となる量、より好ましくは0.43質量部以上となる量、さらに好ましくは0.65質量部以上となる量、さらにより好ましくは0.87質量部以上となる量である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることがわかった。よって、小麦由来たん白素材の含有量の下限が、前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が0.26質量部以上となる量、より好ましくは0.4質量部以上、又は0.43質量部以上となる量、さらに好ましくは0.6質量部以上、又は0.65質量部以上となる量、さらにより好ましくは0.8質量部以上、又は0.87質量部以上となる量である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることが示唆された。
そして、小麦由来たん白素材の含有量の上限が、前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が4.33質量部以下となる量、より好ましくは2.6質量部以下となる量、さらに好ましくは1.73質量部以下となる量である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることがわかった。よって、小麦由来たん白素材の含有量の上限が、前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が4.33質量部以下となる量、より好ましくは2.6質量部以下となる量、さらに好ましくは2質量部以下、さらにより好ましくは1.8質量部以下又は1.73質量部以下となる量である場合に、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることが示唆された。
さらに、実施例8~12の結果から、小麦由来たん白素材を水と混練してから肉様食品用組成物に添加することによって、混練成形時の結着性及び加熱後の外観がより良好になることがわかった。