(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20231225BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20231225BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61F13/49 317
A61F13/49 312Z
A61F13/49 413
A61F13/15 210
A61F13/496
(21)【出願番号】P 2017153647
(22)【出願日】2017-08-08
【審査請求日】2020-05-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 敬智
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-224134(JP,A)
【文献】特開2014-233373(JP,A)
【文献】特開2016-59608(JP,A)
【文献】特開2007-75277(JP,A)
【文献】特開2005-58511(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094591(WO,A1)
【文献】特開2001-333932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 - 13/84
A61L 15/16 - 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向と左右方向と前後方向を有し、
吸収体を有する吸収性本体と、腹側胴回り部材と、背側胴回り部材とを備え、
前記左右方向の両側端部において、前記腹側胴回り部材及び前記背側胴回り部材が一対の接合部によって接合されているパンツ型吸収性物品であって、
前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記吸収性本体の前記左右方向の一方側の側端から、前記背側胴回り部材の前記左右方向の前記一方側の側端までの長さは、前記吸収性本体の前記左右方向の長さよりも長く、
前記背側胴回り部材は、前記接合部よりも下側に延出する延出部を有し、
前記延出部には、傾斜弾性部材と、横弾性部材が設けられており、
前記傾斜弾性部材は、前記延出部の前記左右方向の側端部において、前記左右方向に対して傾いて配置され、
前記横弾性部材は、前記左右方向に沿って配置され、
前記前後方向に沿って見た場合に、前記傾斜弾性部材と前記横弾性部材は重なり部を有しており、
前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記延出部のうち前記吸収性本体と重複していない領域を外側延出部としたとき、
前記パンツ型吸収性物品の自然状態において、前記傾斜弾性部材及び前記外側延出部が、前記左右方向の内側かつ肌側に折れ曲がった状態となり、
前記吸収体の後側の上端は、前記接合部の下端よりも上方に位置し、
前記延出部において、複数の前記傾斜弾性部材が前記左右方向に間隔を空けて配置されており、
前記左右方向の最も外側において、前記左右方向に隣り合う前記傾斜弾性部材の前記左右方向の間隔の最大値が、
前記左右方向の前記最も外側よりも内側において、前記左右方向に隣り合う前記傾斜弾性部材の前記左右方向の間隔の最小値よりも
小さく、
前記パンツ型吸収性物品の包装状態において、前記腹側胴回り部材及び前記背側胴回り部材が、前記上下方向に沿う折り位置にて、前記左右方向の内側に折られており、
前記前後方向に沿って見た場合に、前記傾斜弾性部材と前記折り位置は重なっていないこと、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
上下方向と左右方向と前後方向を有し、
吸収体を有する吸収性本体と、腹側胴回り部材と、背側胴回り部材とを備え、
前記左右方向の両側端部において、前記腹側胴回り部材及び前記背側胴回り部材が一対の接合部によって接合されているパンツ型吸収性物品であって、
前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記吸収性本体の前記左右方向の一方側の側端から、前記背側胴回り部材の前記左右方向の前記一方側の側端までの長さは、前記吸収性本体の前記左右方向の長さよりも長く、
前記背側胴回り部材は、前記接合部よりも下側に延出する延出部を有し、
前記延出部には、傾斜弾性部材と、横弾性部材が設けられており、
前記傾斜弾性部材は、前記延出部の前記左右方向の側端部において、前記左右方向に対して傾いて配置され、
前記横弾性部材は、前記左右方向に沿って配置され、
前記前後方向に沿って見た場合に、前記傾斜弾性部材と前記横弾性部材は重なり部を有しており、
前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記延出部のうち前記吸収性本体と重複していない領域を外側延出部としたとき、
前記パンツ型吸収性物品の自然状態において、前記傾斜弾性部材及び前記外側延出部が、前記左右方向の内側かつ肌側に折れ曲がった状態となり、
前記吸収体の後側の上端は、前記接合部の下端よりも上方に位置し、
前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
複数の前記横弾性部材の各々について、前記傾斜弾性部材から前記左右方向の外側に延出している長さが異なること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
上下方向と左右方向と前後方向を有し、
吸収体を有する吸収性本体と、腹側胴回り部材と、背側胴回り部材とを備え、
前記左右方向の両側端部において、前記腹側胴回り部材及び前記背側胴回り部材が一対の接合部によって接合されているパンツ型吸収性物品であって、
前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記吸収性本体の前記左右方向の一方側の側端から、前記背側胴回り部材の前記左右方向の前記一方側の側端までの長さは、前記吸収性本体の前記左右方向の長さよりも長く、
前記背側胴回り部材は、前記接合部よりも下側に延出する延出部を有し、
前記延出部には、傾斜弾性部材と、横弾性部材が設けられており、
前記傾斜弾性部材は、前記延出部の前記左右方向の側端部において、前記左右方向に対して傾いて配置され、
前記横弾性部材は、前記左右方向に沿って配置され、
前記前後方向に沿って見た場合に、前記傾斜弾性部材と前記横弾性部材は重なり部を有しており、
前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記延出部のうち前記吸収性本体と重複していない領域を外側延出部としたとき、
前記パンツ型吸収性物品の自然状態において、前記傾斜弾性部材及び前記外側延出部が、前記左右方向の内側かつ肌側に折れ曲がった状態となり、
前記吸収体の後側の上端は、前記接合部の下端よりも上方に位置し、
前記延出部の前記左右方向の一方側において、前記横弾性部材が前記傾斜弾性部材よりも前記左右方向の一方側に延出している長さと、
前記延出部の前記左右方向の他方側において、前記横弾性部材が前記傾斜弾性部材よりも前記左右方向の他方側に延出している長さとが異なること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記横弾性部材は、前記傾斜弾性部材よりも前記左右方向の外側に延出していること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
請求項4に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記横弾性部材は、前記延出部の前記左右方向の側端まで達していること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
前記傾斜弾性部材の下端は、最も下側の前記横弾性部材よりも下側に延出していること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記傾斜弾性部材は、前記左右方向の外側から内側に向かって前記上下方向の下側に傾斜しており、
前記傾斜弾性部材は、前記吸収性本体の前記左右方向の側端まで達していないこと、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記背側胴回り部材は、前記延出部よりも上側に胴回り部を有し、
前記胴回り部には、前記左右方向に沿う胴回り弾性部材が設けられており、
前記胴回り弾性部材は、前記接合部よりも前記左右方向の内側に配置されていること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項9】
請求項8に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部において、複数の前記胴回り弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
前記上下方向に隣り合う前記胴回り弾性部材の前記上下方向の間隔が、前記上下方向に隣り合う前記横弾性部材の前記上下方向の間隔と同じであること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
請求項8に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部において、複数の前記胴回り弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
前記上下方向に隣り合う前記横弾性部材の前記上下方向の間隔は、前記上下方向に隣り合う前記胴回り弾性部材の前記上下方向の間隔よりも広いこと、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項11】
請求項8に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部において、複数の前記胴回り弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
前記上下方向に隣り合う前記横弾性部材の前記上下方向の間隔は、前記上下方向に隣り合う前記胴回り弾性部材の前記上下方向の間隔よりも狭いこと、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項12】
請求項1から
請求項11の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
自然状態の前記パンツ型吸収性物品において、
前記延出部は、前記傾斜弾性部材よりも前記左右方向の外側に張り出した部位を有すること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型吸収性物品として、例えば特許文献1には、着用者の腹側を覆う腹側外装シートの横方向両側縁と、着用者の背側を覆う背側外装シートの横方向両側縁とが接合された筒状の胴回り部、及び、吸収性本体を備えるパンツ型紙おむつが開示されている。
特許文献1のおむつでは、背側外装シートが、接合部の下側に延出する背側延出部を有している。さらに、背側延出部は、吸収性本体の横方向の両外側に延出した臀部カバー部を有しており、臀部カバー部には、横方向に沿って伸長状態で固定された弾性部材が上下方向に間隔を空けて複数設けられている。そのため、着用者の臀部を臀部カバー部で被覆でき、また、弾性部材によって臀部カバー部の膨らみや、めくれを防ぎ、臀部カバー部を着用者の臀部にフィットさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のおむつでは、吸収性本体の片側に延出する臀部カバー部の幅が吸収性本体の幅よりも小さいため、着用対象は子供となる。大人用のおむつは子供用のおむつに比べて、臀部カバー部の幅を大きくする必要がある。また、大人の臀部は湾曲度合いも大きくなる。そのため、子供用おむつに比べて、大人用おむつの方が、臀部カバー部を着用者にフィットさせることが難しい。ゆえに、特許文献1のおむつを大人用とした場合、横方向に沿う弾性部材だけでは臀部カバー部を着用者にフィットさせることが難しい。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、着用者の臀部にフィットするパンツ型吸収性物品を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
上下方向と左右方向と前後方向を有し、
吸収体を有する吸収性本体と、腹側胴回り部材と、背側胴回り部材とを備え、
前記左右方向の両側端部において、前記腹側胴回り部材及び前記背側胴回り部材が一対の接合部によって接合されているパンツ型吸収性物品であって、
前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記吸収性本体の前記左右方向の一方側の側端から、前記背側胴回り部材の前記左右方向の前記一方側の側端までの長さは、前記吸収性本体の前記左右方向の長さよりも長く、
前記背側胴回り部材は、前記接合部よりも下側に延出する延出部を有し、
前記延出部には、傾斜弾性部材と、横弾性部材が設けられており、
前記傾斜弾性部材は、前記延出部の前記左右方向の側端部において、前記左右方向に対して傾いて配置され、
前記横弾性部材は、前記左右方向に沿って配置され、
前記前後方向に沿って見た場合に、前記傾斜弾性部材と前記横弾性部材は重なり部を有しており、
前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記延出部のうち前記吸収性本体と重複していない領域を外側延出部としたとき、
前記パンツ型吸収性物品の自然状態において、前記傾斜弾性部材及び前記外側延出部が、前記左右方向の内側かつ肌側に折れ曲がった状態となり、
前記吸収体の後側の上端は、前記接合部の下端よりも上方に位置し、
前記延出部において、複数の前記傾斜弾性部材が前記左右方向に間隔を空けて配置されており、
前記左右方向の最も外側において、前記左右方向に隣り合う前記傾斜弾性部材の前記左右方向の間隔の最大値が、
前記左右方向の前記最も外側よりも内側において、前記左右方向に隣り合う前記傾斜弾性部材の前記左右方向の間隔の最小値よりも小さく、
前記パンツ型吸収性物品の包装状態において、前記腹側胴回り部材及び前記背側胴回り部材が、前記上下方向に沿う折り位置にて、前記左右方向の内側に折られており、
前記前後方向に沿って見た場合に、前記傾斜弾性部材と前記折り位置は重なっていないこと、を特徴とする。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着用者の臀部にフィットするパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】パンツ型使い捨ておむつ1(以下「おむつ」)を前側から見た概略正面図である。
【
図2】展開且つ伸長状態のおむつ1を非肌側から見た概略平面図である。
【
図4】おむつ1の外側延出部322における傾斜弾性部材37及び横弾性部材38の配置について説明する図である。
【
図5】背側胴回り部材30における胴回り弾性部材36及び横弾性部材38の配置について説明する図である。
【
図6】第1変形例のおむつ1を展開且つ伸長させた状態について、肌側から見た概略平面図である。
【
図7】第2変形例のおむつ1を展開且つ伸長させた状態について、肌側から見た概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
上下方向と左右方向と前後方向を有し、吸収性本体と、腹側胴回り部材と、背側胴回り部材とを備え、前記左右方向の両側端部において、前記腹側胴回り部材及び前記背側胴回り部材が一対の接合部によって接合されているパンツ型吸収性物品であって、前記パンツ型吸収性物品を前記左右方向に伸長させた状態において、前記吸収性本体の前記左右方向の一方側の側端から、前記背側胴回り部材の前記左右方向の前記一方側の側端までの長さは、前記吸収性本体の前記左右方向の長さよりも長く、前記背側胴回り部材は、前記接合部よりも下側に延出する延出部を有し、前記延出部には、傾斜弾性部材と、横弾性部材が設けられており、前記傾斜弾性部材は、前記延出部の前記左右方向の側端部において、前記左右方向に対して傾いて配置され、前記横弾性部材は、前記左右方向に沿って配置され、前記前後方向に沿って見た場合に、前記傾斜弾性部材と前記横弾性部材は重なり部を有していることを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0010】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、延出部の左右方向の長さが長く、延出部の面積が広いため、臀部の大きい着用者の臀部も被覆できる。換言すると、吸収性本体に比べて剛性が低く柔らかい延出部によって、着用者の臀部の広い部分を被覆できるので、着け心地が良い。また、傾斜弾性部材によって、延出部の左右方向の側端部が着用者の臀部の輪郭に沿ってフィットするため、つまり臀部の頂点部よりも外側に弾性部材が位置するため、延出部の面積が広くとも延出部がめくれたりすることなく、延出部で着用者の臀部を包むことができる。特に、傾斜弾性部材と横弾性部材の重なり部によって、延出部の左右方向の側端部の剛性が高まり、延出部の側端部が着用者の臀部の輪郭に沿ってフィットした状態が維持されやすい。よって、着用者が動いても延出部がめくれたり位置ずれしたりしにくい。また、延出部の面積が広くとも、横弾性部材によって延出部は浮くことなく着用者の臀部に沿って密着する。
【0011】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記横弾性部材は、前記傾斜弾性部材よりも前記左右方向の外側に延出している、ことが望ましい。
【0012】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、傾斜弾性部材と横弾性部材の重なり部によって、延出部の左右方向の側端部の剛性が高まり、延出部の側端部が着用者の臀部の輪郭に沿ってフィットした状態がより維持されやすくなる。また、傾斜弾性部材よりも左右方向の外側の部位が横弾性部材によって収縮するため、延出部の左右方向の側端部がフリル形状となる。よって、延出部の側端縁の肌当たりが良くなる。また、視覚的にも柔らかい印象をユーザーに付与できる。
【0013】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記横弾性部材は、前記延出部の前記左右方向の側端まで達している、ことが望ましい。
【0014】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、傾斜弾性部材よりも左右方向の外側の領域において、横弾性部材の伸縮力がより大きく作用するようになり、フリルの凹凸が大きくなる。これにより、着用時における肌あたりがより良好となり、また、大きなフリルによってユーザーの視覚的印象をより向上させることができる。
【0015】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、前記傾斜弾性部材の下端は、最も下側の前記横弾性部材よりも下側に延出している、ことが望ましい。
【0016】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、傾斜弾性部材が下側まで延びているので、延出部の下側部分のめくれや位置ずれを抑制しやすく、延出部の下側部分を着用者の臀部にフィットさせることができる。
【0017】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記傾斜弾性部材は、前記左右方向の外側から内側に向かって前記上下方向の下側に傾斜しており、前記傾斜弾性部材は、前記吸収性本体の前記左右方向の側端まで達していない、ことが望ましい。
【0018】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、延出部の下端部において、傾斜弾性部材が配置されていない領域が存在することにより、吸収性本体に対して傾斜弾性部材による伸縮力が直接作用しにくくなり、着用時において吸収性本体が引っ張られて位置ずれが生じることを抑制できる。また、着用者が脚を動かした場合であっても、臀部に配置した傾斜弾性部材のラインがよれて延出部が捲れ上がってしまうことを抑制できる。
【0019】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記パンツ型吸収性物品の包装状態において、前記腹側胴回り部材及び前記背側胴回り部材が、前記上下方向に沿う折り位置にて、前記左右方向の内側に折られており、前記前後方向に沿って見た場合に、前記傾斜弾性部材と前記折り位置は重なっていない、ことが望ましい。
【0020】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、傾斜弾性部材に上下方向に沿う折り癖が付いてしまうことが抑制され、外側延出部に適切な伸縮性を付与することができる。したがって、傾斜弾性部材によって、延出部の側端部を着用者の臀部の輪郭に沿ってフィットさせやすくすることができる。
【0021】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記背側胴回り部材は、前記延出部よりも上側に胴回り部を有し、前記胴回り部には、前記左右方向に沿う胴回り弾性部材が設けられており、前記胴回り弾性部材は、前記接合部よりも前記左右方向の内側に配置されている、ことが望ましい。
【0022】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、溶着等により剛性が高くなっている接合部に胴回りの弾性部材が重なることで接合部の剛性がさらに高まってしまうことを抑制でき、着け心地の低下を防止できる。
【0023】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部において、複数の前記胴回り弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、前記上下方向に隣り合う前記胴回り弾性部材の前記上下方向の間隔が、前記上下方向に隣り合う前記横弾性部材の前記上下方向の間隔と同じである、ことが望ましい。
【0024】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、異なる2種類の弾性部材を等ピッチで配置することが可能なため、製造工程において、各弾性部材を配置する際の位置調整を単純化することができる。したがって、背側胴回り部材の製造が容易になり、また、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0025】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部において、複数の前記胴回り弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、前記上下方向に隣り合う前記横弾性部材の前記上下方向の間隔は、前記上下方向に隣り合う前記胴回り弾性部材の前記上下方向の間隔よりも広い,ことが望ましい。
【0026】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、横弾性部材の上下方向のピッチが広くなるため、延出部の単位面積当たりに作用する横弾性部材による伸縮力が小さくなる。したがって、着用時において、延出部による締め付け力が小さくなり、臀部の締め付けが強くなりすぎず、着用者に適度なフィット感を与えることができる。
【0027】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部において、複数の前記胴回り弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、前記上下方向に隣り合う前記横弾性部材の前記上下方向の間隔は、前記上下方向に隣り合う前記胴回り弾性部材の前記上下方向の間隔よりも狭い、ことが望ましい。
【0028】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、横弾性部材の上下方向のピッチが狭くなるため、延出部の全体に横弾性部材による伸縮力が作用しやすくなる。したがって、延出部が着用者の臀部に沿って面でフィットしやすくなり、着用時における延出部の浮き上がりを抑制しやすくなる。
【0029】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記延出部において、複数の前記傾斜弾性部材が前記左右方向に間隔を空けて配置されており、前記左右方向の最も外側において、前記左右方向に隣り合う前記傾斜弾性部材の前記左右方向の間隔の最大値が、前記左右方向の前記最も外側よりも内側において、前記左右方向に隣り合う前記傾斜弾性部材の前記左右方向の間隔の最小値よりも小さい、ことが望ましい。
【0030】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、延出部の左右方向の最も外側の外縁部付近に配置されている傾斜弾性部材の間隔が狭くなっていることにより、外縁部において傾斜弾性部材の伸縮力が集中して作用しやすくなる。したがって、側端部が着用者の臀部の輪郭にフィットしやすくなり、フィット性をより向上させることができる。
【0031】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記延出部において、複数の前記横弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて配置されており、
複数の前記横弾性部の各々について、前記傾斜弾性部材から前記左右方向の外側に延出している長さが異なる、ことが望ましい。
【0032】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、横弾性部材の伸縮力によって、背側胴回り部材の外縁部が左右方向の内側に引っ張られる力が一様ではなくなるため、当該外縁部に形成されるフリルの形状や凹凸の大きさが不規則になる。これにより、デザイン性が高まり、また、フリルが柔軟であることを着用者に印象付け、実際に着用時の肌当たりを柔らかなものとすることができる。
【0033】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記延出部の前記左右方向の一方側において、前記横弾性部材が前記傾斜弾性部材よりも前記左右方向の一方側に延出している長さと、前記延出部の前記左右方向の他方側において、前記横弾性部材が前記傾斜弾性部材よりも前記左右方向の他方側に延出している長さとが異なる、ことが望ましい。
【0034】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、延出部の左側外縁部と右側外縁部とで、横弾性部材が傾斜弾性部材よりも左右方向の外側に延出している長さが異なることにより、左右のフリルの形状や大きさが不規則に形成される。これにより、フリルを含めた延出部の全体的なデザイン性が高まり、また、着用時における肌当たりの柔らかさを着用者に想起させやすくなる。
【0035】
かかるパンツ型吸収性物品であって、自然状態の前記パンツ型吸収性物品において、前記延出部は、前記傾斜弾性部材よりも前記左右方向の外側に張り出した部位を有する、ことが望ましい。
【0036】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、延出部の一部が傾斜弾性部材よりも左右方向の外側に張り出していることにより、延出部の面積が大きく見え、かつ、臀部が包み込まれるように見える。これにより、着用時において着用者の臀部がはみ出すことなくしっかりと被覆されるという安心感をユーザーに与えることができる。
【0037】
===実施形態===
以下、本発明に係るパンツ型吸収性物品として、大人向けのパンツ型使い捨ておむつを例に挙げて実施形態を説明する。但し、本発明に係るパンツ型吸収性物品はおむつに限定されず、例えばショーツ型の生理用ナプキン等としても利用可能である。
【0038】
<<パンツ型使い捨ておむつの基本構成>>
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1(以下「おむつ」)を前側から見た概略正面図である。
図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1を非肌側から見た概略平面図である。
図3は、
図2のAA線の概略断面図である。
【0039】
なお、おむつ1の伸長状態とは、おむつ1に生じていた皺が実質的に視認されなくなる程におむつ1を伸長させた状態である。具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば後述する肌側シート21,31等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長させた状態である。
【0040】
おむつ1は、
図1のパンツ型の状態において、互いに直交する上下方向と左右方向と前後方向とを有する。上下方向において、着用者の胴側を上側とし、着用者の股下側を下側とする。前後方向において、着用者の腹側を前側とし、着用者の背側を後側とする。また、
図3に示すように、おむつ1を構成する各部材が積層された方向を厚さ方向とする。厚さ方向において、着用者に接する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0041】
おむつ1は、吸収性本体10と、着用者の腹側を覆う腹側胴回り部材20と、着用者の背側を覆う背側胴回り部材30の3つの部材から構成された3ピースタイプのおむつである。
【0042】
図2の展開状態のおむつ1において、腹側胴回り部材20及び背側胴回り部材30は、それらの長手方向がおむつ1の左右方向に沿うように配置されている。また、吸収性本体10の長手方向の一方側の端部に、腹側胴回り部材20の横方向の中央部が配置され、吸収性本体10の長手方向の他方側の端部に、背側胴回り部材30の横方向の中央部が配置されている。
【0043】
おむつ1は、
図2の展開状態から、吸収性本体10の長手方向の略中央で二つ折りされ、左右方向の両側端部において、腹側胴回り部材20及び背側胴回り部材30が一対の接合部2によって接合されることにより、
図1のパンツ型となる。パンツ型のおむつ1には、胴回り開口部BH、及び、一対の脚回り開口部LHが形成されている。
【0044】
吸収性本体10は、吸収体40と、吸収体40よりも厚さ方向の肌側に配されたトップシート11と、吸収体40よりも厚さ方向の非肌側に配されたバックシート12、及び、外装シート13とを有する。
【0045】
トップシート11は、液透過性シートであり、親水性のスパンボンド不織布や親水性のエアスルー不織布等を例示できる。バックシート12は、液不透過性シートであり、ポリエチレンフィルム等を例示できる。外装シート13としては、疎水性のSMS不織布等を例示できる。なお、図示しないが、例えば、外装シート13を肌側に折り返して糸状弾性部材を配する等して、吸収性本体10の横方向の両側部に、肌側に起立可能な立体ギャザー部を設けても良い。
【0046】
吸収体40は、尿等の排泄物を吸収して保持する吸収性コアを有する。吸収性コアとしては、高吸収性ポリマー(SAP)を含むパルプ等の液体吸収性繊維が所定の形状(ここでは砂時計形状)に成形されたものを例示できる。なお、ティッシュペーパー等の液透過性のコアラップシートによって吸収性コアを覆っても良い。
【0047】
腹側胴回り部材20は、
図2の伸長状態において長方形状の部材である。背側胴回り部材30は、
図2の伸長状態において長方形の下方に略逆台形を組み合わせた形状の部材であり、腹側胴回り部材20に比べて平面形状が大きい。
【0048】
具体的には、背側胴回り部材30は、上下方向において接合部2と重複する長方形状の「胴回り部31」(
図2に示すa,b,c,dで囲まれた部位)と、上下方向において接合部2の下端2aよりも下側に延出する略逆台形状の「延出部32」(
図2に示すc,d,e,fで囲まれた部位)とを有する。そのため、3ピースタイプのおむつ1であっても、延出部32によって着用者の臀部を被覆できる。
【0049】
さらに、背側胴回り部材30の延出部32は、吸収性本体10と前後方向(厚さ方向)に重複する「中央延出部321」と、吸収性本体10よりも横方向の両外側に延出する一対の「外側延出部322」とを有する。
【0050】
また、延出部32の下方の外縁32aは、左右方向の中央部において、左右方向に沿う「直線部32a1」と、左右方向の両端部において、下方に向かって左右方向の内側に傾斜した「傾斜部32a2」とを有する。なお、直線部32a1は、吸収性本体10よりも横方向の両外側に延出している。
【0051】
そして、腹側胴回り部材20は、
図3に示すように、肌側シート21と、非肌側シート22と、カバーシート23とを有し、複数の胴回り弾性部材24がそれぞれ左右方向に沿って配置されている。複数の胴回り弾性部材24は、腹側胴回り部材20において、上下方向に間隔を空けて並んで配置されている。
【0052】
背側胴回り部材30は、肌側シート33と、非肌側シート34と、カバーシート35とを有する。また、背側胴回り部材30の胴回り部31には、複数の胴回り弾性部材36がそれぞれ左右方向に沿って配置されている。延出部32には、複数の傾斜弾性部材37がそれぞれ左右方向に対して傾いて配置されており、複数の横弾性部材38がそれぞれ左右方向に沿って配置されている。
【0053】
詳しくは、複数の胴回り弾性部材36は、胴回り部31において、上下方向に間隔を空けて並んで配置されている。複数の傾斜弾性部材37(
図2では3本)は、延出部32の左右方向の側端部において、延出部32の外縁32aの傾斜部32a2に沿って、左右方向に間隔を空けて並んで配置されている。つまり、傾斜弾性部材37は、下方に向かって左右方向の内側に傾斜して配置されている。複数の横弾性部材38(
図2では5本)は、延出部32において、上下方向に間隔を空けて並んで配置されている。
【0054】
そして、肌側シート21,33、及び、非肌側シート22,34は、吸収性本体10よりも厚さ方向の非肌側に配置されている。カバーシート23,35は、肌側シート21,33及び非肌側シート22,34よりも縦方向の長さが短く、吸収性本体10よりも厚さ方向の肌側に配置され、吸収性本体10の長手方向の端部を覆っている。これらのシート21~23,33~35としては、SMS不織布等の柔軟なシートを例示できる。
【0055】
また、胴回り弾性部材24,36及び横弾性部材38は、左右方向に伸縮可能なように、左右方向に伸長した状態で、肌側シート21,33と非肌側シート22,34の間に接着剤(例えばホットメルト接着剤等)で固定されている。傾斜弾性部材37も、左右方向に対して傾いた方向に伸縮可能なように、その傾いた方向に伸長した状態で、肌側シート21,33と非肌側シート22,34の間に接着剤で固定されている
【0056】
図には、各弾性部材24,36~38の伸縮部(伸長状態でシートに固定された有効長部分)のみを示し、図示しない部分に、各弾性部材24,36~38の非伸縮部が存在していても良い。
【0057】
図2では、上下方向に吸収体40と重複する背側の胴回り弾性部材36及び横弾性部材38は、左右方向の中央部において弾性部材36,38の伸縮部が非存在となっている。このように、前後方向(厚さ方向)に吸収性本体10と重複する部位において、弾性部材36,38の伸縮部が非存在であることにより、吸収性本体10の左右方向の収縮を抑制できる。
【0058】
なお、各弾性部材24,36~38としては、ゴムやスパンデックス等の糸状の弾性部材を例示できるが、これに限らず、伸縮性不織布や伸縮性フィルム等のシート状の弾性部材であっても良い。
【0059】
<<背側胴回り部材の延出部について>>
おむつ1は、背側胴回り部材30の上下方向の下側(股下側)の領域に延出部32を有しており、おむつ1の着用時には該延出部32によって着用者の臀部が覆われる。そして、おむつ1を左右方向に伸長させた状態において、延出部32のうち吸収性本体10と重複していない領域である外側延出部322の左右方向の幅は、吸収性本体10と重複している領域である中央延出部321の左右方向の幅よりも長い。言い換えると、
図2のようにおむつ1を左右方向に伸長させた状態において、吸収性本体10の左側端10elと背側胴回り部材30の左側端30elとの間の左右方向における距離W322lは、吸収性本体10の左側端10elと右側端10erとの間の距離W10よりも長い(W322l>W10)。同様に、吸収性本体10の右側端10erと背側胴回り部材30の右側端30erとの間の左右方向における距離W322rは、吸収性本体10の左側端10elと右側端10erとの間の距離W10よりも長い。(W322r>W10)。したがって、おむつ1の着用対象者である大人の広い臀部であってもしっかりと被覆することができる。
【0060】
また、外側延出部322の外縁32aのうち傾斜部32a2に沿った領域には、傾斜弾性部材37が設けられており、当該傾斜弾性部材37によって付与される伸縮性により、外縁32aが着用者の臀部の輪郭に沿ってフィットしやすくなっている。つまり、本実施形態のおむつ1では、着用時において、傾斜弾性部材37が着用者の臀部の頂点よりも外側に位置するため、外側延出部322の面積が広くても(左右方向の距離W322l,W322rが長くても)、外側延出部322がめくれることなく、着用者の臀部を包み込むことができる。
【0061】
さらに、前後方向(厚さ方向)に見た場合に、傾斜弾性部材37と横弾性部材38とが外側延出部322の左右方向の側端部において重複しており(
図4参照)、両弾性部材37,38が重複する両側端部における外側延出部322の剛性が高くなっている。これにより、外側延出部322の外縁32aが着用者の臀部の輪郭に沿ってフィットした状態が維持されやすくなり、着用者が身体を動かした場合であっても、外側延出部322がめくれたり位置ずれしたりしにくい。
【0062】
おむつ1では、延出部32がこのような構成を有していることにより、着用者の臀部を広く覆いつつも、良好なフィット性を実現することが可能である。
【0063】
また、おむつ1の延出部32において、横弾性部材38は、傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側に延出している。
図4は、おむつ1の外側延出部322における傾斜弾性部材37及び横弾性部材38の配置について説明する図である。同
図4では、左右方向右側の外側延出部322の外縁32a付近を拡大して表している。
図4に示されるように、横弾性部材38は傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側に延出した部分を有している。
【0064】
傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側の領域では、背側胴回り部材30の肌側シート33と非肌側シート34とがホットメルト式接着剤等により厚さ方向に接合され、その間に横弾性部材38の延出した部分が配置されている。そのため、外側延出部322のうち傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側の領域では、横弾性部材38の伸縮力の作用により、該横弾性部材38が配置されている部分が左右方向の内側に引っ張られる。したがって、外側延出部322(延出部32)における傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側の領域(すなわち外縁部)のうち、横弾性部材38が配置されている部分は左右方向の内側に収縮しやすく、横弾性部材38が配置されていない領域は左右方向の内側に収縮しにくくなる。その結果、外側延出部322の外縁32aは、
図4に示されるように左右方向に凹凸を有するフリル状に変形する。外縁32aがフリル形状となることにより、おむつ1着用時における外縁32aの肌あたりが良くなり、着用者に不快感を与えにくくなる。また、脚回り開口部LHに沿って形成されるフリル形状により、視覚的にも柔らかい印象をユーザーに感じさせることができる。
【0065】
そして、本実施形態のおむつ1では、傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側に延出した横弾性部材38が、延出部32の左右方向の外側の端(外側延出部322の外縁32a)まで達している。これにより、傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側の領域において、横弾性部材38の伸縮力をより大きく作用させると共に、該伸縮力によって外側延出部322の外縁32aが左右方向の内側に引っ張られやすくなるため、フリルの凹凸が大きくなる。したがって、着用時における肌当たりがより良好となり、また、大きなフリルによってユーザーの視覚的印象をより向上させることができる。
【0066】
なお、外側延出部322の左右方向の全体に亘って横弾性部材38による伸縮力が作用することにより、おむつ1の自然状態においては、傾斜弾性部材37及びフリル全体が、
図1のように左右方向の内側かつ厚さ方向の肌側に折れ曲がった状態となる。そして、外側延出部322(延出部32)のうち一部の領域が傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側に張り出した状態となる。すなわち、おむつ1の自然状態において、延出部32は傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側に張り出した張り出し部32оhを有し、外観上、張り出し部32оhが延出部32の左右方向の外側端を形成する(
図1参照)。この張り出し部32оhが傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側に張り出していることにより、延出部32(外側延出部322)の面積が大きく見え、また、臀部が包み込まれるように見える。これにより、おむつ1の着用時に着用者の臀部がはみ出すことなくしっかりと被覆されるという安心感をユーザーに与えることができる。
【0067】
ここで、おむつ1の「自然状態」とは、おむつ1を所定時間放置した時の状態である。例えば、おむつ1の腹側胴回り部材20及び背側胴回り部材30を左右方向の両外側に引っ張り、胴回り部材20,30を「伸長した状態」として、この伸長状態を30秒間程度継続させた後、おむつ1の引っ張りを解除して机等の平面に置く。そして、このような平面平置きで5分間経過させた状態を自然状態とする。
【0068】
また、
図4に示されるように、外側延出部322(延出部32)において、横弾性部材38は上下方向に間隔を空けて複数配置されているが、このうち最も下側に配置されている横弾性部材38の位置は、傾斜弾性部材37の下端位置よりも高い。言い換えると、上下方向において、傾斜弾性部材37は、最も下側の横弾性部材38よりも下側に延出している。傾斜弾性部材37が横弾性部材38よりも下側まで延出していることにより、外側延出部322のより下方まで傾斜弾性部材37による伸縮力が作用しやすく、おむつ1着用時において外側延出部322の下側部分のめくれや位置ずれが抑制されやすくなる。また、傾斜弾性部材37が着用者の臀部の輪郭に沿って下側まで配置されることにより、着用者の臀部におけるフィット性をより向上させることができる。
【0069】
また、おむつ1において、傾斜弾性部材37は、左右方向の外側から内側に向かって上下方向の下側に傾斜するように配置されているが、該傾斜弾性部材37は吸収性本体10の左右方向の両側端10el,10erまで達していない。すなわち、傾斜弾性部材37の左右方向内側の端37eiと吸収性本体10の左右方向の外側端10el(10er)との間には所定の間隔が設けられている(
図2参照)。このように、傾斜弾性部材37が厚さ方向において吸収性本体10と重複していないことにより、吸収性本体10に対して傾斜弾性部材37による伸縮力が作用しにくくなる。仮に、吸収性本体10と傾斜弾性部材37とが重複していたとすると、吸収性本体10が傾斜弾性部材37の傾斜に沿って斜め方向に引っ張られ、おむつ1の着用時において吸収性本体10が着用者の股下部からずれやすくなるおそれがある。また、延出部32も吸収性本体10に沿って引き上げられ、臀部が延出部32によって被覆されにくくなる場合がある。これに対して、本実施形態のおむつ1では、吸収性本体10に対して傾斜弾性部材37による引っ張り力が作用しにくく、おむつ1の着用時に吸収性本体10の位置ずれを抑制できる。また、着用者の臀部が延出部32によって被覆されやすくなり、着用者が脚を動かした場合であっても、臀部に配置された傾斜弾性部材37のラインがよれて延出部32がめくれ上がってしまうことを抑制することができる。
【0070】
ところで、おむつ1は、工場等で製造された後に包装され、所定の包装状態で市場に流通する。具体的に、おむつ1を包装する際には、自然状態(パンツ型)のおむつ1について、上下方向(
図2の長手方向)に沿った折り位置FLにて腹側胴回り部材20及び背側胴回り部材30を左右方向の外側から内側に折り込んだ後、左右方向に沿った折り位置FL2(
図2参照)にて上下方向に約半分の高さとなるように折り畳み、パッケージングする。このように折り畳まれた状態のおむつ1を前後方向に沿って見た場合に、傾斜弾性部材37と折り位置FL(及びFL2)とが重ならないように、傾斜弾性部材37が配置されている。これにより、折り位置FLによって傾斜弾性部材37が折り曲げられることなくおむつ1を市場に流通させることができる。仮に、傾斜弾性部材37が折り位置FLと重複していた場合、傾斜弾性部材37は折り位置FLにて折り曲げられた状態で市場に流通することとなる。この場合、傾斜弾性部材37に折り癖が付きやすくなり、そのように折り癖が付いた傾斜弾性部材37では、外側延出部322(延出部32)に適切な伸縮性を付与することができなくなるおそれがある。これに対して、本実施形態のおむつ1では、傾斜弾性部材37が折り位置FLからずれて配置されているため、折り癖が付くことが抑制され、外側延出部322(延出部32)に適切な伸縮性を付与することができる。したがって、傾斜弾性部材37によって、外側延出部322の側端部を着用者の臀部の輪郭に沿ってフィットさせやすくすることができる。
【0071】
次に、
図5は、背側胴回り部材30における胴回り弾性部材36及び横弾性部材38の配置について説明する図である。同
図5は、左右方向及び上下方向に伸長させた状態の背側胴回り部材30(胴回り部31及び延出部32)の右側の領域について表している。
図5に示されるように、背側胴回り部材30のうち胴回り部31には、複数の胴回り弾性部材36が、上下方向に間隔を空けて配置されているが、これらの胴回り弾性部材36は、接合部2よりも左右方向の内側に配置されている。すなわち、胴回り弾性部材36の左右方向の外側端36eоは、接合部2よりも左右方向の内側に位置しており、胴回り弾性部材36と接合部2とは互いに重複していない。この接合部2は溶着等の接合手段によって剛性が高くなっているため、仮に、胴回り弾性部材36が接合部2と重複していた場合、接合部2の剛性がより高くなり、おむつ1の着用時において着用者に不快感を与えやすくなる。これに対して、本実施形態では、接合部2と重複しないように胴回り弾性部材36が配置されているため、接合部2の剛性が高まってしまうことが抑制され、おむつ1の着け心地の低下を防止することができる。
【0072】
また、
図5で、上下方向に隣り合う2つの胴回り弾性部材36,36の上下方向における間隔をd36とし、上下方向に隣り合う2つの横弾性部材38,38の上下方向における間隔をd38とすると、間隔d36と間隔d38とが等しくなっている(d36=d38)。つまり、おむつ1では、胴回り弾性部材36と横弾性部材38とが上下方向に等ピッチで配置されている。このように2種類の弾性部材を等ピッチで配置することが可能なため、おむつ1(背側胴回り部材30)の製造工程において、各弾性部材36,38を配置する際の位置調整を単純化することができる。したがって、背側胴回り部材30の製造が容易になり、また、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0073】
一方、背側胴回り部材30において、横弾性部材38,38の上下方向における間隔d38が、胴回り弾性部材36,36の上下方向における間隔d36よりも大きくなるようにしても良い(d38>d36)。この場合、背側胴回り部材30のうち延出部32(外側延出部322)において横弾性部材38の上下方向のピッチが広くなるため、該延出部32の単位面積当たりに作用する横弾性部材38による伸縮力が小さくなる。したがって、おむつ1の着用時において、着用者の臀部を覆う外側延出部322による締め付け力が小さくなる。これにより、臀部における締め付けが強くなりすぎず、おむつ1の着け心地の低下を抑制すると共に、着用者に適度なフィット感を与えることができる。
【0074】
逆に、背側胴回り部材30において、横弾性部材38,38の上下方向における間隔d38が、胴回り弾性部材36,36の上下方向における間隔d36よりも小さくなるようにしても良い(d38<d36)。上述のように横弾性部材38の上下方向のピッチを広くすると、締め付け力を弱くすることができる一方で、着用者の身体(臀部)が小さい場合等には、外側延出部322が着用者の臀部から浮き上がったり、めくれが生じたりする場合がある。この場合、横弾性部材38の上下方向のピッチを狭くして外側延出部322の全体に横弾性部材38による伸縮力を作用させやすくすることで外側延出部322が着用者の臀部に沿って面でフィットしやすくなり、おむつ1着用時における外側延出部322の浮き上がりを抑制しやすくなる。
【0075】
このように、おむつ1では、着用対象者の身体(臀部)の大きさや使用態様等に応じて、胴回り弾性部材36及び横弾性部材38の上下方向ピッチをそれぞれ調整することにより、最適なフィット性を実現することができる。例えば、着用者がおむつ1を着用したまま長時間ベッドで寝ているような使用態様であれば、横弾性部材38のピッチが広いおむつ1を選択することにより、臀部における過度な締め付けが抑制され、着用者に不快感を生じさせ難くすることができる。一方、着用者がおむつ1を着用した状態で通常の生活を送るような使用態様であれば、横弾性部材38のピッチが狭いおむつ1を選択することにより、着用者が身体を動かした場合であっても外側延出部322の位置ずれやめくれが生じ難くなり、着用者に良好なフィット性を感じさせることができる。
【0076】
また、おむつ1では、複数の傾斜弾性部材37が左右方向に間隔を空けて配置されているが、左右方向に隣り合う2つの傾斜弾性部材37の間隔は一定ではない。
図5では、左右方向の外側から内側に向かって3本の傾斜弾性部材37a,37b,37cが設けられているが、傾斜弾性部材37aと37bとの左右方向の間隔w37abは一定ではなく、傾斜弾性部材37bと37cとの左右方向の間隔w37bcも一定ではない。すなわち、傾斜弾性部材37a~37cは、各々外側延出部322の傾斜部32a2(外縁32a)に沿って配置されつつも、厳密に傾斜部32a2と平行に配置されているのではなく、傾斜部32a2の傾斜方向に対して蛇行するように配置されている。
【0077】
そして、おむつ1では、
図5における間隔w37abの最大値が、間隔w37bcの最小値よりも小さくなっている。すなわち、左右方向に隣り合う傾斜弾性部材37の左右方向の間隔のうち、最も外側の間隔の最大値が、他の位置における間隔の最小値よりも小さくなっている。このように、傾斜部32a2の左右方向の外側端(外縁部)に最も近い位置に配置されている傾斜弾性部材37aと37bとの間隔が狭くなっていることにより、当該側端部において傾斜弾性部材37(37a,及び37b)の伸縮力が集中して作用しやすくなる。つまり、延出部32の外縁部において、単位面積あたりに作用する収縮力が大きくなる。したがって、おむつ1の着用時において、外縁部が着用者の臀部の輪郭にフィットしやすくなり、フィット性をより向上させることができる。
【0078】
また、おむつ1では、左右方向の最も外側に配置されている傾斜弾性部材37aが傾斜部32a2の傾斜方向に対して蛇行して配置されていることにより、傾斜弾性部材37aと傾斜部32a2(外側延出部322の外縁32a)との間の左右方向における距離も一定ではない。したがって、傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側に延出している横弾性部材38の長さW38eも一定ではない。すなわち、横弾性部材38が傾斜弾性部材37から左右方向の外側に延出している長さは、複数の横弾性部材38の各々について異なっている。したがって、横弾性部材38の伸縮力によって、傾斜部32a2の外縁部が左右方向の内側に引っ張られる力が一様ではなくなるため、当該外縁部に形成されるフリルの形状や凹凸の大きさが不規則になる。これにより、外側延出部322のデザイン性が高まり、また、フリルが柔軟な素材で形成されていることを着用者に印象付け、実際に着用時における肌当たりを柔らかなものとすることができる。
【0079】
<おむつ1の変形例>
おむつ1は以下に説明する第1変形例及び第2変形例のように変形することも可能である。
図6は、第1変形例のおむつ1を展開且つ伸長させた状態について、肌側から見た概略平面図である。
図7は、第2変形例のおむつ1を展開且つ伸長させた状態について、肌側から見た概略平面図である。
【0080】
第1変形例のおむつ1では、背側胴回り部材30の形状が上述の実施形態とは異なる。具体的には、
図6に示されるように、背側胴回り部材30の外縁32aにおいて、直線部32a1と傾斜部32a2とが湾曲部32a3によって連続的に接続されている。すなわち、背側胴回り部材30(外側延出部322)の下側において外縁32aの一部が曲線的に形成されている。その他の構成は、上述したおむつ1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
この変形例1では、外側延出部322の外縁32aに角が形成されていないため、おむつ1を着用する際に、外側延出部322の外縁32aが着用者の臀部に滑らかに当接するようになり、着用者にソフトな付心地を感じさせることができる。また、傾斜弾性部材37が湾曲部32a3に沿ってカーブしながら、一部が直線部32a1に沿って、左右方向と平行に配置されている。すなわち、外側延出部322の外縁32aの下端部(直線部32a1)において、左右方向の伸縮性が作用するようになる。これにより、おむつ1着用時において、外側延出部322が着用者の臀部の輪郭に沿いやすくなり、臀部におけるフィット性をより向上させることができる。
【0082】
また、第2変形例のおむつ1では、傾斜弾性部材37の配置が左右で非対称となっている。すなわち、背側胴回り部材30の左右方向の一方側に配置されている傾斜弾性部材37が、左右方向の他方側に配置されている傾斜弾性部材37よりも左右方向の内側寄り(すなわち吸収性本体10の近く)に位置している。その他の構成は、上述したおむつ1と同様である。
【0083】
図7の例では、吸収性本体10よりも右側の外側延出部322において、横弾性部材38が傾斜弾性部材37よりも右側(左右方向の外側)に延出している長さW38erと、吸収性本体10よりも左側の外側延出部322において、横弾性部材38が傾斜弾性部材37よりも左側(左右方向の外側)に延出している長さW38elとの長さが異なっている。つまり、外側延出部322の左側外縁部と右側外縁部とで、横弾性部材38が傾斜弾性部材37よりも左右方向の外側に延出している長さが異なっている。これにより、左右のフリルの形状や大きさが不規則に形成される。したがって、外側延出部322の全体的なデザイン性が高まり、また、着用時における肌当たりの柔らかさを着用者に想起させることができる。
===その他の実施の形態===
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0085】
上述の実施形態では、外装シート13及び腹側胴回り部材20、背側胴回り部材30の素材の一例としてそれぞれ不織布が挙げられていたが、何等不織布に限らない。例えば、織布でも構わないし、織布以外のシート部材でも構わない。ちなみに、外装シート13については省略しても良く、その場合には、バックシート12が吸収性本体10の外装をなすことになる。
【0086】
上述の実施形態では、背側胴回り部材30の左右方向の中央領域、具体的には、背側胴回り部材30のうち吸収性本体10と重複する領域の一部で胴回り弾性部材36及び、横弾性部材38が切断され、当該中央領域において弾性部材36,38による伸縮性が発現しないようになっていたが、これには限らない。例えば、弾性部材36,38が左右方向の中央の領域において連続して配置されることにより、当該領域で伸縮性を発現しているのであっても良い。逆に、腹側胴回り部材20では、左右方向の中央の領域において、胴回り弾性部材24が左右方向に連続して配置されているが、当該中央領域において胴回り弾性部材24が非連続部を有していても良い。
【符号の説明】
【0087】
1 おむつ(パンツ型吸収性物品)、
2 接合部、
10 吸収性本体、
11 トップシート、12 バックシート、13 外装シート、
20 腹側胴回り部材、
21 肌側シート、22 非肌側シート、23 カバーシート、24 胴回り弾性部材、
30 背側胴回り部材、
31 胴回り部、
32 延出部、321 中央延出部、322 外側延出部、
32a 外縁、32a1 直線部、32a2 傾斜部、32a2 湾曲部、
32oh 張り出し部、
33 肌側シート、34 非肌側シート、35 カバーシート、
36 胴回り弾性部材、
37 傾斜弾性部材、37a,37b,37c 傾斜弾性部材、38 横弾性部材、
40 吸収体、
BH 胴回り開口部、LH 脚回り開口部