(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20231225BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20231225BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20231225BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/00 M
B23K26/53
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2019177344
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-045418(JP,A)
【文献】特開2007-181840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339363(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/046
B23K 26/00
B23K 26/53
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向に相対的に加工送りするX軸送り手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に加工送りするY軸送り手段と、制御手段と、を少なくとも備えたレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー発振器と、該レーザー発振器が発振したレーザー光線を該保持手段に保持された被加工物にX軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向の任意の位置に集光する集光器と、該レーザー発振器と該集光器とを結ぶ第一の光路に配設されたビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分岐された第二の光路に配設された広帯域光源と、該広帯域光源と該ビームスプリッターとの間に配設され該第二の光路から第三の光路に分岐する分光器と、該分光器によって分岐された該第三の光路に配設され該広帯域光源の光が該集光器によって集光され該保持手段に保持された被加工物で反射した戻り光の波長に対応した光の強さによって被加工物のZ軸方向のZ位置を検出するZ位置検出手段と、該Z位置に応じて該集光器をZ軸方向に移動する集光器移動手段と、から少なくとも構成され
、
該第二の光路は光ファイバーで構成され、該広帯域光源からの光は該光ファイバーで導かれ、該光ファイバーの端面から照射された光はコリメートレンズを介して該光を透過する該ビームスプリッターに導かれ、該第二の光路には、該光ファイバーの端面と該コリメートレンズとの間隔を調整する間隔調整手段が配設され、該間隔調整手段により該集光器によって集光される該広帯域光源の光の集光位置が調整されるレーザー加工装置。
【請求項2】
該
レーザー発振器は、被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を発振し、該集光器は、被加工物の内部に集光点を位置付けて改質層を形成する請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該
制御手段は、該Z位置検出手段によって検出された被加工物のZ軸方向におけるZ位置を、X軸及びY軸の座標と共にZ軸の座標で記憶する座標記憶部を備え、
該制御手段は、該座標記憶部に記憶された座標に基づいて、該集光器移動手段を制御して該保持手段に保持された被加工物に加工を施す請求項1、又は2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該制御手段は、該Z位置検出手段によって検出された
Z軸方向のZ位置に追随して該集光器移動手段を制御し、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す請求項1
、又は2に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交するY軸方向に加工送りするY軸送り手段と、制御手段と、を少なくとも備えていて、ウエーハを高精度に加工することができる。
【0004】
また、レーザー加工装置を構成するレーザー光線照射手段は、被加工物に応じて吸収性を有する波長のレーザー光線を照射して被加工物の上面にアブレーション加工を施すタイプのもの(例えば特許文献1を参照)と、被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物の内部に照射して改質層を形成するタイプのもの(例えば特許文献2を参照)とが存在する。
【0005】
特に、被加工物の内部に改質層を形成するタイプのものにおいては、ウエーハの厚さばらつきやウネリによって所望の内部位置に改質層を形成できない場合があり、ウエーハの上面又は下面の高さを計測器によって計測して適正な内部位置にレーザー光線の集光点を位置付ける技術が提案されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-188475号公報
【文献】特許第3408805号公報
【文献】特開2012-002604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献3に記載の技術では、所定の波長領域を有する光を被加工物に照射して反射した反射光に基づいて分光干渉波形を求め、被加工物であるウエーハの高さを検出している。しかし、該分光干渉波形を用いてウエーハの高さを計測する場合、ウエーハの上面の積層物によって生じる分光干渉波形が外乱となって、計測精度が低いという問題がある。また、分光干渉波形を用いた計測は、比較的広い測定領域に光を照射する必要があり、狭い領域において、ピンポイントで精度の高い測定を実施することが困難であるという問題もある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物の高さを適正に計測し、所望の位置にレーザー加工を施すことができるレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向に相対的に加工送りするX軸送り手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に加工送りするY軸送り手段と、制御手段と、を少なくとも備えたレーザー加工装置であって、該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー発振器と、該レーザー発振器が発振したレーザー光線を該保持手段に保持された被加工物にX軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向の任意の位置に集光する集光器と、該レーザー発振器と該集光器とを結ぶ第一の光路に配設されたビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分岐された第二の光路に配設された広帯域光源と、該広帯域光源と該ビームスプリッターとの間に配設され該第二の光路から第三の光路に分岐する分光器と、該分光器によって分岐された該第三の光路に配設され該広帯域光源の光が該集光器によって集光され該保持手段に保持された被加工物で反射した戻り光の波長に対応した光の強さによって被加工物のZ軸方向のZ位置を検出するZ位置検出手段と、該Z位置に応じて該集光器をZ軸方向に移動する集光器移動手段と、から少なくとも構成され、該第二の光路は光ファイバーで構成され、該広帯域光源からの光は該光ファイバーで導かれ、該光ファイバーの端面から照射された光はコリメートレンズを介して該光を透過する該ビームスプリッターに導かれ、該第二の光路には、該光ファイバーの端面と該コリメートレンズとの間隔を調整する間隔調整手段が配設され、該間隔調整手段により該集光器によって集光される該広帯域光源の光の集光位置が調整されるレーザー加工装置が提供される。
【0011】
好ましくは、該レーザー発振器は、被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を発振し、該集光器は、被加工物の内部に集光点を位置付けて改質層を形成するようにすることができる。また、該制御手段は、該Z位置検出手段によって検出された被加工物のZ軸方向におけるZ位置を、X軸及びY軸の座標と共にZ軸の座標で記憶する座標記憶部を備え、該制御手段は、該座標記憶部に記憶された座標に基づいて、該集光器移動手段を制御して該保持手段に保持された被加工物に加工を施すようにしてもよい。さらに、該制御手段は、該Z位置検出手段によって検出されたZ軸方向のZ位置に追随して該集光器移動手段を制御し、該保持手段に保持された被加工物に加工を施すようにすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向に相対的に加工送りするX軸送り手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に加工送りするY軸送り手段と、制御手段と、を少なくとも備えたレーザー加工装置であって、該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー発振器と、該レーザー発振器が発振したレーザー光線を該保持手段に保持された被加工物にX軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向の任意の位置に集光する集光器と、該レーザー発振器と該集光器とを結ぶ第一の光路に配設されたビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分岐された第二の光路に配設された広帯域光源と、該広帯域光源と該ビームスプリッターとの間に配設され該第二の光路から第三の光路に分岐する分光器と、該分光器によって分岐された該第三の光路に配設され該広帯域光源の光が該集光器によって集光され該保持手段に保持された被加工物で反射した戻り光の波長に対応した光の強さによって被加工物のZ軸方向のZ位置を検出するZ位置検出手段と、該Z位置に応じて該集光器をZ軸方向に移動する集光器移動手段と、から少なくとも構成され、該第二の光路は光ファイバーで構成され、該広帯域光源からの光は該光ファイバーで導かれ、該光ファイバーの端面から照射された光はコリメートレンズを介して該光を透過する該ビームスプリッターに導かれ、該第二の光路には、該光ファイバーの端面と該コリメートレンズとの間隔を調整する間隔調整手段が配設され、該間隔調整手段により該集光器によって集光される該広帯域光源の光の集光位置が調整されるので、広帯域光源が発する光に含まれる複数の波長に対応する複数の集光点が被加工物に照射され、被加工物に集光点が合った波長の光の強さによって高さを計測することから、ウエーハ上面の積層物があっても、適正に高さを計測でき、分光干渉波形のように外乱が生じることなく計測精度が向上する。また、焦点が合った位置の高さが計測されるため、ストリートの如く狭い領域でのピンポイントの計測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態のレーザー加工装置の全体斜視図である。
【
図2】
図1に示すレーザー加工装置に備えられた光学系を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す集光器に配設された集光レンズによって波長毎の異なる位置に集光点が形成される態様を示す側面図である。
【
図4】
図2に示す間隔調整手段の原理を説明するための概念図である。
【
図5】
図2に示すZ位置検出手段によって検出される波形の遷移例を示す概念図である。
【
図6】(a)制御手段に記憶されたZ座標テーブル、(b)制御手段のZ座標記憶部に記憶された表である。
【
図7】(a)Z位置を検出しながらレーザー加工を実施する際の態様を示す側面図、(b)(a)に示すレーザー加工を実施する際にZ位置検出手段によって検出される波形の遷移例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づいて構成されるレーザー加工装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
図1には、本実施形態のレーザー加工装置2の全体斜視図が示されている。レーザー加工装置2は、基台2A上に配置され、被加工物である板状物に対してレーザー光線を照射する加工手段としてのレーザー光線照射手段4と、該板状の被加工物を保持する保持手段22と、保持手段22に保持された被加工物を撮像する撮像手段6と、レーザー光線照射手段4及び保持手段22とを相対的に加工送りし、撮像手段6及び保持手段22とを相対的に移動させる送り手段23と、基台2A上の送り手段23の側方に立設される垂直壁部261及び垂直壁部261の上端部から水平方向に延びる水平壁部262からなる枠体26とを備えている。
【0016】
枠体26の水平壁部262の内部には、レーザー光線照射手段4を含む光学系(追って詳述する)が収容される。水平壁部262の先端部下面側には、レーザー光線照射手段4の一部を構成する集光器42が配設されると共に、集光器42に対して図中矢印Xで示すX軸方向で隣接する位置に撮像手段6が配設される。水平壁部262の上方には、レーザー加工装置2の加工条件を表示したり、オペレータが加工条件を入力したりするタッチパネル機能を備えた表示手段8が配置される。なお、X軸方向及びY軸方向により規定される面は実質的に水平である。
【0017】
保持手段22は、
図1に示すように、X軸方向において移動自在に基台2Aに搭載された矩形状のX軸方向可動板30と、Y軸方向において移動自在にX軸方向可動板30に搭載された矩形状のY軸方向可動板31と、Y軸方向可動板31の上面に固定された円筒状の支柱32と、支柱32の上端に固定された矩形状のカバー板33とを含む。カバー板33にはカバー板33上に形成された長穴を通って上方に延びるチャックテーブル34が配設されている。チャックテーブル34は、円形状の板状物を保持し、支柱32内に収容された図示しない回転駆動手段により回転可能に構成される。チャックテーブル34の上面には、通気性を有する多孔質材料から形成され実質上水平に延在する円形状の吸着チャック35が配置されている。吸着チャック35は、支柱32を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されており、吸着チャック35の周囲には、間隔をおいてクランプ36が4つ配置されている。クランプ36は、環状のフレームを介して保持された板状物をチャックテーブル34に固定する際に、該フレームを掴む。
【0018】
送り手段23は、X軸送り手段50と、Y軸送り手段52と、を含む。X軸送り手段50は、モータ50aの回転運動を、ボールねじ50bを介して直線運動に変換してX軸方向可動板30に伝達し、基台2A上の案内レール27、27に沿ってX軸方向可動板30をX軸方向において進退させる。Y軸送り手段52は、モータ52aの回転運動を、ボールねじ52bを介して直線運動に変換し、Y軸方向可動板31に伝達し、X軸方向可動板30上の案内レール37、37に沿ってY軸方向可動板31をY軸方向において進退させる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置2は、チャックテーブル34のX軸方向の送り量(X座標位置)を検出するためのX軸方向送り量検出手段28を備えている。該X軸方向送り量検出手段28は、案内レール27に沿って配設されたリニアスケール28aと、X軸方向可動板30の下面側に配設されX軸方向可動板30とともにリニアスケール28aに沿って移動する読み取りヘッド(図示は省略する)とからなっている。このX軸方向送り量検出手段28の該読み取りヘッドは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を制御手段100に送る。
【0020】
さらに、レーザー加工装置2は、Y軸方向可動板31のY軸方向におけるY軸方向送り量(Y座標位置)を検出するためのY軸方向送り量検出手段38を備えている。Y軸方向送り量検出手段38は、X軸方向可動板30上に配設されY軸方向の延びる案内レール37に沿って配設されたリニアスケール38aと、Y軸方向可動板31の下面側に配設されY軸方向可動板31とともにリニアスケール38aに沿って移動する読み取りヘッド(図示は省略する)とからなっている。Y軸方向送り量検出手段38の読み取りヘッドは、上記したX軸送り量検出手段28と同様に、1μm毎に1パルスのパルス信号を制御手段100に送る。そして制御手段100は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル34のY座標位置を検出する。上記したX軸方向送り量検出手段28、及びY軸方向送り量検出手段に38よって、保持手段22のチャックテーブル34のX座標、Y座標位置を正確に検出しながら、撮像手段6、及びレーザー光線照射手段4に対してチャックテーブル34を移動して所望の位置に位置付けることができる。
【0021】
撮像手段6は、保持手段22を構成するチャックテーブル34に保持される板状物を撮像し、レーザー光線照射手段4の集光器42と、該板状物の加工領域との位置合わせを行うためのアライメントに利用される。
【0022】
レーザー加工装置2は、制御手段100を備えている。制御手段100は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略)。なお、
図1では、制御手段100を、説明の都合上レーザー加工装置2の外部に示しているが、実際は、レーザー加工装置2の内部に収容されている。
【0023】
レーザー加工装置2によってレーザー加工が施される被加工物は、例えば、
図1に示すような半導体のウエーハ10である。ウエーハ10は、複数のデバイス14が分割予定ライン12によって区画され表面に形成されたものであり、粘着テープTを介して、環状のフレームFに保持されている。
図2を参照しながら、レーザー光線照射手段4を含む光学系について、以下に説明する。なお、説明の都合上、
図2に示す各構成の寸法比は適宜調整してあり、実際の寸法比とは異なっている。
【0024】
図2に示すように、レーザー光線照射手段4は、レーザー光線を発振するレーザー発振器44と、レーザー発振器44が発振したレーザー光線LBを保持手段22のチャックテーブル34に保持されたウエーハ10に集光する集光器42と、レーザー発振器44と集光器42とを結ぶ第一の光路S1に配設されたビームスプリッター70と、ビームスプリッター70によって分岐された第二の光路S2に配設された広帯域光源61と、広帯域光源61とビームスプリッター70との間に配設され第二の光路S2から第三の光路S3に分岐する分光器62と、分光器62によって分岐された第三の光路S3に配設され広帯域光源61の光L0が集光器42によって集光され保持手段22に保持されたウエーハ10で反射した戻り光L1の波長に対応した光の強さによってウエーハ10の表面位置であるZ軸方向のZ位置を検出するZ位置検出手段64と、Z位置検出手段64によって検出されたZ位置(Z座標)に応じて集光器42を、図中にR1又はR2で示すZ軸方向に移動する集光器移動手段43とを備えている。集光器移動手段43は、例えば、ピエゾ素子、又はボイスコイルモータ等によって構成され、制御手段100によって発せられる指示信号に基づいて精密に制御される。
【0025】
レーザー発振器44は、ウエーハ10に対して透過性を有する、例えば波長が1340nmのレーザー光線LBを発振する。第一の光路S1に配設されたビームスプリッター70は、例えばダイクロイックミラーから構成される。ビームスプリッター70は、レーザー発振器44から発せられるレーザー光線LBの波長を含む1300nm~1400nmの波長の光を反射し、それ以外の波長の光を透過するように設定されている。ビームスプリッター70で反射されたレーザー光線LBは、集光器42に導かれ、集光レンズ42aによってウエーハ10の所定の内部位置に集光点を位置付けて改質層を形成する。
【0026】
上記した第二の光路S2は、その大部分が光ファイバーFBによって構成されている。第二の光路S2の一端側には、広帯域光源61が配設されており、広帯域光源61によって発生される広帯域の光L0は、例えば、150nm~850nmの範囲の波長の光をバランスよく含む白色光とすることができる。広帯域光源61を構成する光源は、例えば、ハロゲン光源、SLD光源、LED光源、スーパーコンティニウム光源等を採用することができる。広帯域光源61から発せられる光L0を構成する光の波長の範囲は、上記した範囲に限定されず、もっと狭い範囲、或いは広い範囲とすることができ、波長の範囲については、特に限定されるものではない。
【0027】
広帯域光源61によって発生させられた光L0は、光ファイバーFB上の分光器62を直進し、光ファイバーFBの端面63から照射された光L0は、第二の光路S2上に配設されたコリメートレンズ65に導かれる。第二の光路S2上には、光ファイバーFBの端面63の近傍を支持し、該端面63とコリメートレンズ65との間隔を調整する間隔調整手段80が配設されている。間隔調整手段80は、光ファイバーFBの端面63の近傍を支持する光ファイバーホルダ82と、パルスモータ84と、パルスモータ84の回転を光ファイバーホルダ82に伝達して直線運動に変換するボールねじ86とを備えており、パルスモータ84を正転、又は逆転させることにより、光ファイバーFBの端面63の位置を矢印R3、R4で示す方向に進退させることができる。
【0028】
上記した光ファイバーFBの端面63から照射されコリメートレンズ65に導かれた光L0は、ビームスプリッター70を透過して、第一の光路S1に導かれ、集光器42に配設された集光レンズ42aに導入される。本実施形態では、集光レンズ42aは、色収差集光レンズであり、集光レンズ42aを通過した光L0は、チャックテーブル34上に保持されたウエーハ10の表面を含む光軸上の所定の範囲(約30μm)に亘り、波長毎の異なる位置に集光点を形成する。より具体的には、
図3に示すように、光L0に含まれる500nm波長の光の集光点P0をウエーハ10の表面10a上に設定した場合、500nm波長の光の集光点P0が形成された位置よりも上方側に500nmよりも短い波長の光の集光点が形成され、例えば、200nm波長の光の集光点P1は、集光点P0の位置に対して15μm上方に形成される。また、集光点P0が形成された位置よりも下方側には、500nmよりも長い波長の光の集光点が形成され、例えば800nm波長の光の集光点P2は、集光点P0の位置に対して15μm下方に形成される。すなわち、広帯域光源31によって発生させられた光L0の集光点は、ウエーハ10の上面の位置を基準とすると、集光レンズ42aの作用により、概ね-15μm~+15μmの範囲に形成されることとなる。
【0029】
上記した間隔調整手段80の原理について、
図4を参照しながら説明する。なお、
図4は、間隔調整手段80の作用を説明するための概念図であり、ビームスプリッター70や集光器42、光ファイバーホルダ82等の構成は省略されている。光ファイバーFBの端面63から照射される光L0が、コリメートレンズ65によって平行光とされる焦点位置を基準位置Bとする。光ファイバーFBの端面63が、この基準位置Bにある場合は、コリメートレンズ65、集光レンズ42aを経て、図中PBで示す位置に集光点を形成する。
【0030】
上記した基準位置Bに対して矢印R3で示す方向に光ファイバーFBの端面63を移動させた場合、光L0は、端面63から点線で示すように進行して、集光レンズ42aによって形成される集光点Paの位置が、端面63が基準位置Bにある場合に集光点を形成する集光点PBに対して上方に移動する。逆に、光ファイバーFBの端面63を、この基準位置Bに対して矢印R4で示す方向に移動させると、光L0は、端面63から実線で示すように進行して、集光レンズ42aによって形成される集光点Pbの位置が、上記した集光点PBに対して下方に移動する。このような間隔調整手段80の作用により調整される第一の光路S1を進行して照射されるレーザー光線LBの集光点位置とは独立して光L0の集光点位置を任意の位置に調整することが可能になる。なお、上記したように集光レンズ42aは色収差集光レンズであることから、間隔調整手段80によって光ファイバーFBの端面63を上下方向に移動させることで、光L0に含まれる光の波長毎に集光点が形成される所定の範囲全体が上下方向に移動することになる。
【0031】
図3に示すように、光L0の集光点が形成される所定の範囲をウエーハ10の表面10a近傍に位置付けると、集光点を形成した所定の波長の光がウエーハ10の表面10aで反射して戻り光L1を生成する。戻り光L1は、広帯域の光ではなく、上記したように、ウエーハ10の表面10aに位置付けられた集光点を形成した所定の波長を主として含む光である。
【0032】
ウエーハ10の表面10aで反射した戻り光L1は、
図2によって理解されるように、広帯域光源61から照射された光L0が辿った光路、すなわちビームスプリッター70、コリメートレンズ65、光ファイバーFBを遡って分光器62に達し、図に示すように、分光器62によって広帯域光源61が配設された第二の光路S2とは別の第三の光路S3に分岐されて、Z位置検出手段64に導入される。分光器62は、光ファイバーFBを通過する光を分岐させる構成であり、例えば、周知の光サーキュレータを採用することができる。
【0033】
Z位置検出手段64は、例えば、導入された戻り光L1を波長毎に分離して分散させる回折格子64aと、回折格子64aによって分散された光L2を受光してその受光した位置に応じた波長毎の光強度を検出するラインセンサ64bとから構成される。ラインセンサ64bは、CCD等の複数の受光素子が所定の方向に一列に並んで構成されたセンサであり、各受光素子にて光強度を検出する。ラインセンサ64bによって検出された信号は、制御手段100に送信され、このZ位置検出手段64によって検出された信号に基づいて、戻り光L1の波長及び光強度が検出される。
【0034】
本実施形態の制御手段100は、Z位置検出手段64によってZ位置を検出する際に使用するZ座標テーブル110と、検出されたウエーハ10の表面10aのZ軸方向におけるZ位置(Z座標)を、X軸送り量検出手段28、Y軸送り量検出手段38によって検出されるX軸の座標、Y軸の座標に関連付けて記憶する座標記憶部120とを備え、座標記憶部120に記憶されたZ位置に追随して集光器42の集光点位置を移動させるための集光器移動手段43を制御し、保持手段22に保持されたウエーハ10にレーザー加工を施す機能を奏する。
【0035】
本実施形態のレーザー加工装置2は、概ね上記したとおりの構成を備えており、以下に上記したレーザー加工装置2を使用して、被加工物であるウエーハ10に対してレーザー加工を施す手順について説明する。
【0036】
図1に示すレーザー加工装置2によってレーザー加工を実施するに際し、上記したように、粘着テープTを介して環状のフレームFに支持されたウエーハ10を用意して、チャックテーブル34上に載置し、図示しない吸引手段を作動して、吸引保持する。
【0037】
次いで、送り手段23を作動して、チャックテーブル34を撮像手段6の直下に位置付けて、ウエーハ10の表面を撮像し、パターンマッチング等の画像処理を実施することにより、ウエーハ10上においてレーザー光線LBを照射すべき分割予定ライン12の位置を検出する(アライメント)。該アライメントを実施した後、チャックテーブル34をさらに移動して、集光器42の直下にウエーハ10上のレーザー加工を開始する分割予定ライン12の端部を位置付ける。
【0038】
集光器42の直下にウエーハ10上の加工開始位置を位置付けたならば、制御手段100からの制御信号に基づき、集光器移動手段43を作動して、集光器42の集光レンズ42aによって集光される光L0の集光点のうち、波長500nmの光によって形成される集光点P0が、設計情報に基づくウエーハ10の表面10aの高さに形成されるようにする(
図3を参照)。この際、間隔調整手段80では、光ファイバーFBの端面63から照射される光L0が、コリメートレンズ65によって平行光とされる基準位置に位置付けられており、ウエーハ10の設計上の厚みに応じた位置に正確に位置付けられる。なお、上記した加工開始位置のX座標、Y座標は、X軸方向送り量検出手段28、及びY軸方向送り量検出手段38によって特定され、例えば(X
1、Y
1)である。
【0039】
ところで、ウエーハ10の厚みには、その位置に応じて僅かなばらつきがあったり、ウネリがあったりして、上記したように、設計上のウエーハ10の厚みに応じた位置に集光器42によって集光される集光点P0を位置付けても、必ずしも実際のウエーハ10の表面10aに、集光点P0が位置付けられるとは限らない。
【0040】
ここで、本実施形態においては、広帯域光源61を作動すると共に集光器移動手段43作動して、白色光である光L0を照射する。上記したように、広帯域光源61から照射された光L0は、第二の光路S2、ビームスプリッター70、及び第一の光路S1を経て、集光レンズ42aに導かれ、ウエーハ10の表面10aの近傍に集光点を形成する。この光L0は、集光レンズ42aが色収差集光レンズであることにより、チャックテーブル34の表面10aを含む所定の範囲に亘って光L0を構成する各波長の長さに応じて光軸上の所定幅に亘って異なる位置に集光点を形成する。そこで、
図3に示すように、ウエーハ10の表面10aが存在する位置に正確に集光点P0を位置付けるために、P0で示す位置に集光点を形成した波長(500nm)の光が最も強く反射するように集光器移動手段43を調整する。
【0041】
上記したP0で示す位置で反射した戻り光L1は、第一の光路S1、第二の光路S2を経て分光器62に導かれ、第三の光路S3に分岐し、Z位置検出手段64に導かれた戻り光L1は、Z位置検出手段64の回折格子64aを経ることで、波長の長さに応じて分散された分散光L2となり、ラインセンサ64bに照射される。ここで、上記した分散光L2を位置検出手段64に導いた場合、分散光L2は広帯域の光ではなく、上記したP0で示す位置に集光点を形成した波長(500nm)の光を強く反射したものであることから、ラインセンサ64bに照射された分散光L2の光強度信号は、制御手段100に送信されて、
図5に(a)で示す波形(実線で示す)を形成する。
【0042】
上記したように、分散光L2によって、波長500nmに対応する位置にピークが形成されたならば、制御手段100に予め記憶した、
図6(a)に示すZ座標テーブル110を参照する。Z座標テーブル110は、ラインセンサ64bによって検出された波形のピークが発現した波長と、その波長に対応したZ座標を記録したものである。上記したように(X
1,Y
1)で反射した戻り光L1により形成された波形のピークが発現した波長が500nmである場合、Z座標テーブル110を参照することでZ座標(Z
11)が「0.0μm」であることが検出される。このようにして、Z
11の値が検出されたならば、制御手段100に用意された
図6(b)に示す座標記憶部120の(X
1,Y
1,Z
11)に各値を記憶する。
【0043】
次いで、X軸送り手段50を作動して、チャックテーブル34をX軸方向に所定の間隔だけ送り、次のZ位置計測点(X
2,Y
1)を集光器42の直下に位置付ける。この際、(X
2,Y
1)で反射した戻り光L1がZ位置検出手段64に導入されて、分散光L2がラインセンサ64bに導入される。このときラインセンサ64bによって形成される波形が、
図5に(b)で示すような波形(点線で示す)であった場合、ウエーハ10の表面10aに波長700nmによって形成される集光点が位置付けられたことが検出され、
図6(a)に示すZ座標テーブル110を参照することで、(X
2,Y
1)におけるZ座標値(Z
21)は、「-10.0μm」であることが検出される。このようにして、Z
21の値が検出されたならば、制御手段100の座標記憶部120の(X
2,Y
1,Z
21)に各値を記憶する。さらに、X軸送り手段50を作動して、チャックテーブル34をX軸方向に所定の間隔だけ送り、次のZ位置計測点(X
3,Y
1)を集光器42aに位置付ける。この際、(X
3,Y
1)で反射した戻り光L1がZ位置検出手段64に導入されて、分散光L2がラインセンサ64bに導入される。このときラインセンサ64bによって形成される波形が、
図5に(c)で示すような波形(点線で示す)であった場合、ウエーハ10の表面10aに波長300nmによって形成される集光点が位置付けられたことが検出され、
図6(a)に示すZ座標テーブル110を参照することで、(X
3,Y
1)におけるZ座標値(Z
31)は、「+10.0μm」であることが検出される。このようにして、Z
31の値が検出されたならば、制御手段100の座標記憶部120の(X
3,Y
1,Z
31)に各座標値を記憶する。
【0044】
以上のようにして、チャックテーブル34をX軸方向に所定の間隔だけ送りながら、Z位置を検出し、X座標、Y座標に関連付けて、Z位置を座標記憶部120に記憶する。一の分割予定ライン12の全域に沿ってZ位置を検出して記憶したならば、Y軸送り手段52を作動して、集光器42の直下に、隣接する分割予定ライン12を位置付け、上記と同様にして、X座標、Y座標に対応するZ位置を検出し、
図6(b)に示すように、座標記憶部120に記憶する。このような計測を、ウエーハ10の全域に亘って実施し、ウエーハ10の表面10aの全域のZ座標、すなわち厚みを検出することができる。なお、一般的にウエーハ10の厚みのばらつきは急激に変動するものではないため、Z位置を検出する所定の間隔は、例えば、隣接する分割予定ライン12の幅とし、隣接する分割予定ライン12の間におけるZ位置については、補間演算等を実施して推定値を用いることができる。
【0045】
上記した構成を備えていることにより、ウエーハ10に厚みばらつき、ウネリがあったり、また、ウエーハ10の表面10aに積層物があったりしても、適正にウエーハ10の表面10aの高さを計測でき、分光干渉波形を用いた場合のように、外乱に影響されることなく、計測精度が向上する。さらに、集光点が形成された位置の戻り光L1によって高さ位置を計測するため、分割予定ライン12の高さ位置を計測するときのように、狭い領域の高さを計測する場合であっても良好に計測が可能である。
【0046】
上記したように、ウエーハ10の表面10aの全域におけるZ位置を、X座標、Y座標に関連付けて記憶したならば、レーザー加工照射手段4によってウエーハ10に対してレーザー光線LBを照射してレーザー加工を実施する。その際、集光器移動手段43を予め座標記憶部120に記憶されたZ位置に基づいて作動させ、集光器42をZ軸方向において進退させる。より具体的には、本実施形態のレーザー加工装置2は、X軸送り手段50、及びY軸送り手段52を作動させてチャックテーブル34を移動し、ウエーハ10の表面10aから所定の深さ(例えば50μm)の位置に、ウエーハ10に対して透過性を有する波長(1340nm)のレーザー光線LBの集光点を位置付けて、改質層を形成するものであって、X軸方向送り量検出手段28、Y軸方向送り量検出手段38によって、レーザー光線LBの照射位置のX座標、Y座標を検出しながら、該改質層を形成する際に基準となるウエーハ10の表面10aの高さを、座標記憶部120に記憶されているX座標、Y座標に関連付けられたZ位置とする。これにより、レーザー光線LBの集光点を、ウエーハ10の全域においてウエーハ10の表面10aから所定の深さ(50μm)位置に、正確に位置付けることが可能になる。
【0047】
本発明は、上記した実施形態に限定されず、本発明によって、種々の変形例が提供される。上記した実施形態では、ウエーハ10に対するレーザー加工を実施する前に、予めウエーハ10の表面10aの各計測点におけるZ位置(Z座標)を検出し、該Z位置を、X座標、Y座標に関連付けて制御手段100の座標記憶部120に記憶し、座標記憶部120に記憶されたZ位置に基づいて、集光器移動手段43を作動させながら、レーザー加工を実施する例について説明した。しかし、本発明に基づいて実施されるレーザー加工の手順はこれに限定されない。以下に、
図7も併せて参照しながら、上記したレーザー加工装置2を使用したレーザー加工の他の実施形態について説明する。
【0048】
図2に示すように、レーザー加工装置2を構成する光学系には、ビームスプリッター70が配設されており、ビームスプリッター70は、波長1340nmのレーザー光線LBを反射しつつ、それ以外(1300nm~1400nm以外)の波長で構成される光L0は透過する。ここで、ウエーハ10の内部に改質層を形成するレーザー光線LBをウエーハ10に対して照射しても、ウエーハ10の表面からはレーザー光線LBの反射光以外の波長の光が発光することはないことから、レーザー光線LBを照射してレーザー加工を実施しつつ、広帯域光源61から広帯域の光L0を同時に照射しても、ウエーハ10の高さを検出することが可能である。これを利用することにより、制御手段100は、Z位置検出手段64によって検出されたZ軸方向の位置に追随して集光器移動手段42を制御し、保持手段22のチャックテーブル34に保持されたウエーハ10に加工を施すことが可能である。以下にその手順をより具体的に説明する。
【0049】
本実施形態によって、ウエーハ10の内部に改質層を形成するレーザー加工を実施する場合、まず、集光器移動手段43を作動して、
図7(a)に示すように、レーザー光線LBの集光点位置PSをウエーハ10の表面10aから所定の深さ位置、例えば、表面10aから50μmの深さ位置に位置付ける。さらに、間隔調整手段80を作動させることにより、広帯域光源61によって照射される光L0によって集光点が形成される光軸上の所定の範囲の中心位置P0を、レーザー光線LBの集光点位置PSから50μm上方になるように調整する。光L0によって集光点が形成される範囲の中心は、波長が500nmの光によって形成される集光点である。なお、改質層を形成する位置が上記したようにウエーハ10の表面10aから50μmの深さ位置でない場合は、その深さ位置に合わせて間隔調整手段80を作動し、光L0によって集光点が形成される光軸上の所定の範囲の中心位置P0を調整する。
【0050】
間隔調整手段80を作動させて集光点P0の位置を調整したならば、X軸送り手段50、Y軸送り手段52を作動して、チャックテーブル34を移動して、ウエーハ10を撮像手段6の直下に位置付けて、ウエーハ10の表面を撮像し、パターンマッチング等の画像処理を実施することにより、ウエーハ10上の被加工位置(分割予定ライン12)とレーザー光線照射手段4の集光器42から照射されるレーザー光線照射位置との位置合わせ(アライメント)を実施する。該アライメントを実施した後、チャックテーブル34をさらに移動して、集光器42の直下にウエーハ10上のレーザー加工を開始する分割予定ラインの端部を位置付ける。
【0051】
レーザー加工を開始する位置を集光器42の直下に位置付けたならば、広帯域光源61を作動して、白色光である光L0を照射する。広帯域光源61から照射された光L0は、第二の光路S2、ビームスプリッター70、及び第一の光路S1を経て、集光レンズ42aに導かれ、ウエーハ10の表面10aの近傍に集光点を形成する。この光L0は、集光レンズ42aが色収差集光レンズであることにより、チャックテーブル34の表面10aを含む所定の範囲に、光L0を構成する各波長の長さに応じて光軸上の所定幅に亘って異なる位置に集光点を形成する。
【0052】
本実施形態のレーザー加工は、X軸送り手段50、及びY軸送り手段52を作動させてチャックテーブル34を移動し、ウエーハ10の表面10aから50μmの深さ位置に、ウエーハ10に対して透過性を有する波長(1340nm)のレーザー光線LBの集光点を位置付けて、改質層を形成する。この際、X軸方向送り量検出手段28、Y軸方向送り量検出手段38によって、レーザー光線LBの照射位置のX座標、Y座標を検出しながら、該改質層を形成する位置に集光点PSを位置付ける。ここで、
図7(a)に示すように、ウエーハ10の表面10aが存在する位置に集光点P0が位置付けられた場合、P0で示す位置に集光点を形成した波長(500nm)の光を最も強く反射して戻り光L1を形成する。この戻り光L1が第一の光路S1、ビームスプリッター70、第二の光路S2を遡り、分光器62によって分光されてZ位置検出手段64に導かれることにより、例えば、
図7(b)に示すように、戻り光L1によって、波長が500nmの位置にピーク値を形成する波形(図中(ア)を参照)が検出される。
【0053】
波長が500nmによって集光点P0が形成される位置と、レーザー光線LBの集光点PSが形成される位置は、上記したように、間隔調整手段80によって50μmになるように調整されていることから、集光点P0がウエーハ10の表面10aに位置付けられている上記した状態においてレーザー光線LBを照射すれば、所望の位置、すなわち、ウエーハ10の表面10aから50μmの深さ位置に改質層を形成することが可能になる。
【0054】
分割予定ライン12に沿って、レーザー加工を進めていくと、ウエーハ10には、厚みばらつき、ウネリ等があることから、表面10aの高さが変化する場合がある。表面10aの高さが、例えば、低い方に変化した場合、Z位置検出手段64によって検出される波形のピークは、
図7(b)に点線(イ)で示すように、波長の長い側へと移動していく。仮に、該波形のピーク位置が、波長600nmの位置まで変化してしまうと、
図6(a)のZ座標テーブル110を参照することで理解されるように、ウエーハ10の表面10aの高さが、-5.0μm(下方側に5.0μm)ずれたことになり、そのままレーザー加工を継続すると、改質層を形成するレーザー光線LBの集光点PSは、ウエーハ10の表面10aからみて、45μmの位置に形成されることとなり、所望の位置に改質層が形成されないこととなる。ここで、制御手段100は、Z位置検出手段64によって検出される波形のピーク位置が波長600nmの位置に変化したことを検出したならば、集光器移動手段43を作動して、集光器42の位置を、5μm下降させる。そうすることで、集光器42によって光L0、レーザー光線LBが集光される位置が全体的に5μm下降し、Z位置検出手段64によって検出される波形のピーク位置が、
図7(b)に矢印で示すように、(イ)で示す位置から、(ア)で示す位置に戻される。すなわち、Z位置検出手段64によって検出されたウエーハ10の表面10aのZ位置に追随して、レーザー光線LBの集光点PSが制御されて、改質層が形成される位置が、ウエーハ10の表面10aから50μmの深さ位置に継続して形成される。
【0055】
また、上記したレーザー加工を実施している際に、Z位置検出手段64によって検出される波形のピークが、
図7(b)に点線(ウ)で示すように、波長の短い側へと移動し、該波形のピーク位置が、波長400nmの位置まで変化してしまうと、
図6(a)のZ座標テーブル110を参照することで理解されるように、ウエーハ10の表面10aの高さが、+5.0μmずれたことになる。よって、そのままレーザー加工を継続すると、改質層を形成するレーザー光線LBの集光点PSは、ウエーハ10の表面10aからみて、55μmの深さ位置に形成されることになる。ここで、制御手段100は、Z位置検出手段64によって検出される波形のピーク位置が波長400nmの位置に変化したことを検出したならば、集光器移動手段43を作動して、集光器42の位置を、5μm上昇させる。そうすることで、集光器42によって光L0、レーザー光線LBが集光される位置が全体的に5μm上昇し、Z位置検出手段64によって検出される波形のピーク位置が、
図7(b)で(ウ)で示す位置から、(ア)で示す位置に戻される。すなわち、Z位置検出手段64によって検出されたウエーハ10の表面10aのZ軸方向の位置に追随して、レーザー光線LBの集光点PSが制御されて、改質層が形成される位置が、ウエーハ10の表面10aから50μmの深さ位置に継続して形成される。
【0056】
以上のように、ウエーハ10の表面10aのZ位置を検出し、集光器移動手段43を作動して、Z位置検出手段64によって検出される波形のピークが常に実線(ア)で示す位置にくるように制御することで、改質層を形成する集光点PSの位置を正確に表面10aから50μmの深さ位置に位置付けることができ、所望の位置に改質層を形成することができる。
【0057】
なお、上記した実施形態では、本発明をウエーハ10の内部に改質層を形成するレーザー加工装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、ウエーハ10の表面10aにウエーハ10に対して吸収性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置付けて、ウエーハ10に対してアブレーション加工を実施するレーザー加工装置にも適用することができる。その場合は、本発明を適用して、予めウエーハ10の表面10aのZ位置を検出して制御手段100のZ座標記憶部120に記憶しておき、Z座標記憶部120に記憶されたZ位置に基づいて、レーザー加工を施すことが好ましい。
【符号の説明】
【0058】
2:レーザー加工装置
2A:基台
4:レーザー光線照射手段
6:撮像手段
8:表示手段
10:ウエーハ
12:分割予定ライン
14:デバイス
22:保持手段
23:送り手段
26:枠体
28:X軸方向送り量検出手段
34:チャックテーブル
38:Y軸方向送り量検出手段
42:集光器
42a:集光レンズ(色収差集光レンズ)
43:集光器移動手段
44:レーザー発振器
50:X軸送り手段
52:Y軸送り手段
61:広帯域光源
62:分光器
63:端面
64:Z軸位置検出手段
70:ビームスプリッター(ダイクロイックミラー)
80:間隔調整手段
82:光ファイバーホルダ
84:パルスモータ
100:制御手段
110:Z座標テーブル
120:座標記憶部
S1:第一の光路
S2:第二の光路
S3:第三の光路