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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】隙間ゲージ
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/30 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01B3/30
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019186845
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021063666
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大段 佑貴
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-005302(JP,U)
【文献】特開平10-103943(JP,A)
【文献】特開平03-108701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間を計測する隙間ゲージであって、
底部及び該底部と所定の角度をもって傾斜した斜面とからなる楔体と、該楔体の斜面に配設され押圧する位置によって抵抗値が変化する可変抵抗シートとを備えた測定部と、
該可変抵抗シートに電気を流す電源と、
該可変抵抗シートを経由した電圧又は電流を検出する検出器と、
該可変抵抗シートを押圧する位置と、該検出器によって検出された電圧値又は電流値との相関関係に従って該可変抵抗シートが押圧された位置の斜面の高さを算出する算出部と、
該算出部で算出された該斜面の高さの値を表示する表示部と、
を備え
該可変抵抗シートは、導電体からなる導電板と、抵抗体と、該可変抵抗シートに外力が働いていない定常状態で該導電体と該抵抗体とにより挟まれる領域に空洞を形成する絶縁体からなるスペーサと、を備え、
該検出器は、該可変抵抗シートに外力が働き該導電体と該抵抗体とが接した点を経由した回路の電圧又は電流を検出する隙間ゲージ。
【請求項2】
該算出部によって算出された値を記録する記録部と、該記録部に記録された値を消去する消去部と、をさらに備える請求項1に記載の隙間ゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所定の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【背景技術】
【0002】
研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削砥石を環状に配設した研削ホイールを回転可能に備えた研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに接近及び離反させる移動手段と、から概ね構成されていて、ウエーハを高精度に研削することができる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、ウエーハを研削する前に、チャックテーブルの保持面と研削砥石との隙間を、隙間ゲージを用いて計測して、該研削手段を作動する際の基準値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-246491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した隙間ゲージとしては、例えば、シクネスゲージが知られており、リーフと呼ばれる薄い金属板を隙間に応じて複数枚重ねて挿入し、挿入可能なリーフの枚数を調整しながら挿入可能な該金属板の総数に基づいて、その隙間の寸法を計測する。また、隙間ゲージの他の例としては、厚み方向、又は幅方向に形成されたテーパーを隙間に挿入して隙間を測定するテーパーゲージも知られている。
【0006】
上記したシクネスゲージでは、実際に計測を実施する作業者が、薄い金属板の枚数を調整して該隙間に挿入される枚数を決定し手作業により挿入して隙間寸法を計測する。その際、挿入される枚数の調整を作業者が行い、その限界を決定するため、作業が煩雑である上、作業者に応じた誤差が生じやすい。また、テーパーゲージを使用する場合、隙間の計測を実施するチャックテーブルと研削砥石が対向する領域に、必ずしも上記したテーパーゲージのメモリを目視するための十分なスペースがあるとはいえず、該隙間にテーパーゲージを挿入し、どの位置まで挿入されたのかを確認することが困難である場合がある。よって、上記したシクネスゲージ、テーパーゲージを用いた計測では、計測を行う作業者の個人差に応じた計測値のばらつき(誤差)が生じ、研削加工を実施する際の隙間の基準値が正しく設定されず、研削加工が精度よく実施されないという問題がある。
【0007】
なお、上記したような計測時の誤差が生じるという問題は、研削装置のチャックテーブルと研削砥石との隙間を計測して基準値を設定する際の問題に限らず、隙間寸法を計測する場合には、いずれの隙間であっても生じ得る。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、個人差によって計測値にばらつきが生じない、又は目視による計測が容易な隙間ゲージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、隙間を計測する隙間ゲージであって、底部及び該底部と所定の角度をもって傾斜した斜面とからなる楔体と、該楔体の斜面に配設され押圧する位置によって抵抗値が変化する可変抵抗シートとを備えた測定部と、該可変抵抗シートに電気を流す電源と、該可変抵抗シートを経由した電圧又は電流を検出する検出器と、該可変抵抗シートを押圧する位置と、該検出器によって検出された電圧値又は電流値との相関関係に従って該可変抵抗シートが押圧された位置の斜面の高さを算出する算出部と、該算出部で算出された該斜面の高さの値を表示する表示部と、を備え、該可変抵抗シートは、導電体からなる導電板と、抵抗体と、該可変抵抗シートに外力が働いていない定常状態で該導電体と該抵抗体とにより挟まれる領域に空洞を形成する絶縁体からなるスペーサと、を備え、該検出器は、該可変抵抗シートに外力が働き該導電体と該抵抗体とが接した点を経由した回路の電圧又は電流を検出する隙間ゲージが提供される。
【0010】
該算出部によって算出された値を記録する記録部と、該記録部に記録された値を消去する消去部と、をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の隙間ゲージは、隙間を計測する隙間ゲージであって、底部及び該底部と所定の角度をもって傾斜した斜面とからなる楔体と、該楔体の斜面に配設され押圧する位置によって抵抗値が変化する可変抵抗シートとを備えた測定部と、 該可変抵抗シートに電気を流す電源と、該可変抵抗シートを経由した電圧又は電流を検出する検出器と、該可変抵抗シートを押圧する位置と、該検出器によって検出された電圧値又は電流値との相関関係に従って該可変抵抗シートが押圧された位置の斜面の高さを算出する算出部と、該算出部で算出された該斜面の高さの値を表示する表示部と、を備え、該可変抵抗シートは、導電体からなる導電板と、抵抗体と、該可変抵抗シートに外力が働いていない定常状態で該導電体と該抵抗体とにより挟まれる領域に空洞を形成する絶縁体からなるスペーサと、を備え、該検出器は、該可変抵抗シートに外力が働き該導電体と該抵抗体とが接した点を経由した回路の電圧又は電流を検出することから、隙間に楔体を挿入するだけで、隙間を計測することができ、個人差によって計測誤差が生じるという問題、又は目視による計測が困難であるという問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)本実施形態の隙間ゲージの一例を示す斜視図、(b)隙間ゲージの他の例を示す斜視図である。
図2】(a)図1に示す可変抵抗シートの断面図、及び図1に示す表示ツールの構成の概略を示すブロック図、(b)(a)に示す可変抵抗シートの位置Pに外力Fを付与して押圧する状態を示す断面図、及び表示ツールの構成の概略を示すブロック図、(c)(a)に示す実施形態とは別の実施形態である可変抵抗シートの断面図及び表示ツールの構成の概略を示すブロック図である。
図3】可変抵抗シートを押圧する位置と可変抵抗を経由した電圧値、又は電流値との相関関係を示す相関関係テーブル、又は相関関係図である。
図4】本実施形態の隙間ゲージによって隙間を計測する際の態様を側方からみた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成される隙間ゲージの実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図1(a)には、本発明に基づいて構成された第一の実施形態の隙間ゲージ1Aが示されている。隙間ゲージ1Aは、測定部10Aと、表示ツール100Aとを含み構成される。
【0015】
測定部10Aは、楔体30Aと、可変抵抗シート20とを備えている。楔体30Aは、底部32Aと、底部32Aと所定の角度θをもって傾斜した斜面34Aとを備える。可変抵抗シート20は、図1(a)に示すように、表面20aを上方に向け、裏面20bを下方にして、先端20cを、楔体30Aの先端36Aに一致させて斜面34A上に取り付けられる。
【0016】
可変抵抗シート20の内部には、押圧する位置によって抵抗値が変化するセンサー回路40が収容されている。センサー回路40は、配線22、24によって表示ツール100Aに接続され、後述する電源によって電気が流される。表示ツール100Aは、可変抵抗シート20のセンサー回路40の抵抗値が、長手方向において押圧された位置に応じて変化することに基づき、可変抵抗シート20に配設されたセンサー回路40を経由した電圧、又は電流を検出し、可変抵抗シート20を押圧する位置と電圧値又は電流値との相関関係に従って押圧された位置を検出する。そして、該押圧された位置に基づいて、可変抵抗シート20が押圧された位置の斜面の高さを算出し、算出された値を表示部110Aに表示する。なお、表示ツール100Aには、電源をオンオフしたり、後述する所定の処理を実行したりするためのボタン50Aが配設される。
【0017】
図2を参照しながら、楔体30Aの斜面34A上に配設される可変抵抗シート20と表示ツール100Aについて、より具体的に説明する。図2(a)は、可変抵抗シート20の中心を長手方向に切った縦断面図と、表示ツール100Aの概略構成を示す回路図である。
【0018】
図2(a)に示すように、可変抵抗シート20は、薄い導電体からなる導電板42と、抵抗体44(抵抗値=R)とを備えるセンサー回路40を備えている。導電板42と、抵抗体44とにより挟まれる領域の外周には、絶縁体からなるスペーサ46が配設されており、可変抵抗シート20に外力が働いていない定常状態では、導電板42と抵抗体44との間に空洞が形成され、導電板42と抵抗体44とが離反されている。センサー回路40は、センサー回路40を保護するための薄膜シートによって被覆され、該薄膜シートは、表面20aと、裏面20bと、先端20cとにより構成される。なお、本実施形態の可変抵抗シート20の厚みは、例えば0.5mm以下で構成されるが、図2は、説明の都合上、実際の寸法比に沿って記載したものではない。また、導電板42の表面には必ずしも該薄膜シート(20a)を被覆させる必要はなく、導電板42を表面に露出させてもよい。
【0019】
図2(a)に示すように、表示ツール100Aは、可変抵抗シート20に電気を流す出力電圧がVの電源102、可変抵抗シート20を経由した電圧(V)を検出する検出器104、検出器104の検出位置を挟んで抵抗体44とは反対側の接地側に配設された抵抗器106を備えている。なお、本実施形態においては、抵抗器106の抵抗値は抵抗体44全体で実現される抵抗値と同一(=R)である。また、表示ツール110Aは、さらに、可変抵抗シート20が押圧される位置と、検出器104によって検出される電圧値との相関関係に従って可変抵抗シート20が押圧された斜面の高さを算出する算出部122と、算出部122で算出された値を記録する記録部124と、記録部124に記録された値を必要に応じて消去する消去部126とを備え、算出部122で算出された値、又は算出部122で算出された値を記録する記録部124の値を表示する表示部110Aとを備えている。なお、上記した算出部122、消去部126は、制御プログラムによって実現され、該制御プログラムを実行するためのマイコン120によって実現される。また、記録部124は、マイコン120に備えられた演算結果等を一時的に格納するためのランダムアクセスメモリ(RAM)によって構成される。
【0020】
センサー回路40を構成する抵抗体44は、例えば長さLが100mmであり、全体としての抵抗値Rは例えば10kΩであり、したがって、抵抗器106の抵抗値も10kΩである。また、電源102は、出力電圧がV=10Vである。図2(b)に示すように、可変抵抗シート20が外力Fによって押圧された際の位置Pを算出する手順について以下に説明する。
【0021】
図2(b)に示すように、可変抵抗シート20の任意の位置Pに外力Fが付与されることにより、定常状態で離反された状態で維持されている導電板42と抵抗体44とが、点Qで接する。導電板42と抵抗体44とが点Qにおいて接することにより、導電板42に接続された配線22を介して電源102に接続された側と、抵抗体44に接続され抵抗器106が配設された配線24の接地側とにおいて電気回路が形成される。ここで、可変抵抗シート20の先端20cから該位置Pまでの距離をxとすると、抵抗体44は、点Qから接地側における(L-x)mmの長さで規定される領域において抵抗器として機能することから、当該領域において形成される抵抗値Rは、抵抗体44全体の抵抗値をRとした場合に、以下の如く計算される。
=((L-x)/L)・R・・・(1)
【0022】
上記した位置Pにおいて可変抵抗シート20が押圧された場合に、図2(b)に示される検出器104によって検出される電圧Vは、上記式(1)、及び分圧の計算式から、以下の如く計算される。
=(R/(R+R))・V
=((L-x)/(2L-x))・V ・・・(2)
【0023】
上記したように、V=10Vであることから、式(2)に基づけば、xは、以下の如く算出される。
x=(2LV-10L)/(V-10) ・・・(3)
【0024】
上記した式(3)は、可変抵抗シート20を押圧する位置Pと可変抵抗シート20を経由した位置の電圧値との相関関係を表すものであり、上記したように、L=100mmであることから、検出器104によって検出する電圧Vと、前記L=100mmを上記した式(3)に適用することで、先端20cから位置Pまでの距離x、すなわち押圧された位置Pが算出される。
【0025】
なお、可変抵抗シート20が押圧された位置P(先端20cからの距離x[mm])と可変抵抗シート20を経由した位置の電圧値Vとの相関関係を表すものとしては、上記した式(3)に限定されず、例えば、図3に示すように、可変抵抗シート20の位置P(x[mm])と、検出器104によって検出される電圧値Vとの相関関係を示す相関テーブル130、又は、前記相関テーブル130に基づいて作成、又は実験的に作成した相関関係図140であってもよい。検出器104によって検出した電圧値Vを上記式(3)に適用することに代えて、相関テーブル130、又は相関関係図140を使用する場合は、マイコン120のメモリに相関テーブル130、又は相関関係図140を記憶しておき、検出器104によって検出される電圧Vに基づいて、相関テーブル130、又は相関関係図140を参照することで、可変抵抗シート20が押圧された位置P(x[mm])を算出することができる。なお、図3に示す相関関係テーブル130を使用する際には、Vの各値間において適宜補間演算等を実施することにより、より細かい間隔で可変抵抗シート20が押圧された位置P(x[mm])を求めることができる。
【0026】
本実施形態の表示ツール100Aの算出部122は、さらに、上記した位置Pを示すx[mm]を用いて、隙間ゲージ1Aを任意の隙間に対して測定部10Aを挿入した場合の可変抵抗シート20が押圧された位置Pにおける斜面の高さHを算出する。以下に、図4を参照しながら、隙間ゲージ1Aを使用して、隙間Wの寸法を測定すべく、可変抵抗シート20が押圧された位置Pの斜面の高さHを算出する手順について説明する。
【0027】
図4に示す実施形態では、チャックテーブルTの表面Taと、表面Taの上方に、隙間Wを挟んで、研削砥石Sが位置付けられている。隙間Wの計測を実施する際には、図4(a)に示すように、この隙間Wに対して、隙間ゲージ1Aの測定部10Aを矢印Rで示す方向に移動して側方から挿入する。この際、測定部10Aを構成する楔体30Aの底部32AをチャックテーブルTの表面Taに密着させる。
【0028】
図4(b)に示すように、測定部10Aを隙間Wに挿入して、研削砥石Sの角部Scに可変抵抗シート20の表面20aを当接させる。研削砥石Sの角部Scが可変抵抗シート20の表面20aに当接して押圧すると、図2(b)に基づいて説明したように、センサー回路40の導電板42と抵抗体44とが、位置Pの直下(点Q)で接触して回路を形成し、電源102からの電流が可変抵抗シート20に流れ、検出器104において電圧値Vが検出される。上記したように、電圧値Vが検出されることで、可変抵抗シート20を押圧する位置Pと電圧値Vとの相関関係を示す上記した式(3)に基づいて、可変抵抗シート20の先端20cから位置Pまでの距離x[mm]が算出される。ところで、図4(b)に示すように、研削砥石Sの角部Scと、測定部10Aの楔体30Aとの間には、可変抵抗シート20が介在しており、楔体30Aの底部32Aに対して垂直な方向であって、位置Pを通る位置において、一定の厚み(=H)を有している。そして、位置Pを通り楔体30Aの底部32Aに対して垂直な方向における楔体30Aの高さをHとすると、チャックテーブルTの表面Taと研削砥石Sとで形成される隙間Wの寸法である高さHは、以下のように算出される。
H=H+H=x・sinθ+H ・・・(4)
【0029】
ここで、本実施形態においては、楔体30Aの底部32Aと斜面34Aとにより形成される角度θを11.5°として、sinθ=2.0として演算する。また、Hの値は、押圧した際の厚みを実際に計測することにより求められ、本実施形態においてはH=0.1mmとする。よって、上記した式(4)は、以下のような式になる。
H=2.0x+0.1 [mm] ・・・(5)
【0030】
上記したように、表示ツール100Aに備えられるマイコン120の算出部122に、可変抵抗シート20を押圧する位置Pと電圧値Vとの相関関係を示す情報(上記した式(3)、又は、図3に示す相関テーブル130及び相関関係図140のいずれか)と、上記した式(5)を記憶しておき、検出器104によって電圧値Vを検出することで、可変抵抗シート20を押圧する位置Pと電圧値Vとの相関関係に従って、可変抵抗シート20が押圧された位置Pの斜面の高さH、すなわち隙間Wの寸法を算出することができる。
【0031】
上記したように、マイコン120の算出部122において、可変抵抗シート20が押圧された位置Pの斜面の高さHを算出したならば、マイコン120に接続された表示部110Aに該高さHを表示する。この際、算出部122によって算出された値をそのまま表示してもよいが、本実施形態においては、マイコン120を構成する記録部124に記録し、記録部124に記録された高さHの値を表示部110Aに表示するようにする。記録部124に一旦記録された高さHの値は、記録部124の情報を消去するための操作(例えば、ボタン50Aの長押し等)が行われない限り保持される。記録部124の情報を消去するための操作が指示された場合は、マイコン120に設定された制御プログラムによって構成された消去部126が実行されて記録部124の情報が消去される。
【0032】
本発明によれば、上記した実施形態に限定されず、種々の変形例が提供される。例えば、図1(a)に示す実施形態では、表示ツール100Aが測定部10Aの外部に構成され、測定部10Aとは配線22、24によって接続されていたが、本発明はこれに限定されず、図1(b)に示すように、底部32B及び底部32Bと所定の角度θをもって傾斜した斜面34Bとからなる楔体30Bと、楔体30Bの斜面34Bに配設される可変抵抗シート20とを備えた測定部10Bの内部に、上記した表示ツール100Aと同等の機能を有する表示ツール100Bを内蔵し、表示ツール100Bによって算出した隙間Wとして算出される斜面の高さHを、測定部10Bに配設された表示部110Bに表示する隙間ゲージ1Bとすることもできる。なお、その際は、配線22、24は、楔体30Bの内部に収容され、測定部10Bの楔体30Bにスイッチ50Bを配設し、表示ツール100Bの電源のオン、オフ、及び消去部126の実行等を指示できるようにしてもよい。
【0033】
また、例えば、上記した実施形態では、表示ツール100A、100Bに配設された検出器104によって可変抵抗シート20を経由した電圧(V)を検出し、可変抵抗シート20を押圧する位置Pと電圧値Vとの相関関係に従って可変抵抗シート20が押圧された位置Pの斜面の高さHを算出したが、本発明はこれに限定されない。図2(c)に示す他の実施形態では、上記した表示ツール100A、100Bに配設された検出器104に替えて、可変抵抗シート20を経由した電流(A)を検出する電流計として機能する検出器108を配設し、算出部122によって、可変抵抗シート20を押圧する位置Pと電流値Aとの相関関係に従って可変抵抗シート20が押圧された位置Pの斜面の高さHを算出する表示ツール100A’、100B’とすることもできる。なお、表示ツール100A’、100B’の構成は、検出器108を除き上記した表示ツール100A,100Bと同一である。以下に、検出器108によって検出される電流値Aに基づいて高さHを算出する手順について、より具体的に説明する。
【0034】
表示ツール100A’、100B’に配設される電源102の出力電圧はVであり、押圧される位置Pに応じて変化する抵抗体44の抵抗値(R)は上記した式(1)に記載したとおりである。ここで、図2(c)に示すように、可変抵抗シート20が位置Pにおいて外力Fによって押圧された際に、検出器108において検出される電流値Aは、以下のように計算される。
=V/(R+R
=V/(((L-x)/L)・R+R
=(L/(2L-x))・(V/R) ・・・(6)
【0035】
さらに、本実施形態では、V=10V、R=10kΩであることから、上記した式(6)に基づけば、上記した位置Pの位置を示すxは、以下に示す演算式によって算出される。
x=(2AL-10-3L)/A・・・(7)
【0036】
上記した式(7)は、可変抵抗シート20が押圧される位置Pと、可変抵抗シート20を経由した位置の電流値Aとの相関関係を表すものであり、L=100mmと、検出器108によって検出される電流Aとを、上記した式(7)に適用することで、先端20cから位置Pまでの距離xが算出される。
【0037】
そして、上記したように、可変シート20において押圧された位置Pが算出されたならば、図4に基づいて説明した式(4)、式(5)によって、チャックテーブルTの表面Taと研削砥石Sとで形成される隙間Wにおける高さHが算出される。なお、本実施形態においても、先に説明した実施形態と同様に、xを算出する方法は、必ずしも上記した式(7)に基づいて算出することに限定されず、図3に示すように、可変抵抗シート20の位置P(x[mm])と、検出器108によって検出される電流値Aとの相関関係を示す相関テーブル130、又は、前記相関テーブル130基づいて作成、又は実験的に作成した相関関係図140を使用して、可変抵抗シート20が押圧された位置P(x[mm])を算出することもできる。なお、図3に示す相関関係テーブル130を使用する際には、適宜補間演算等を実施することにより、より細かい単位で可変抵抗シート20が押圧された位置P(x[mm])を求めることができる。
【0038】
上記したように、マイコン120の算出部122において、可変抵抗シート20が押圧された位置Pの斜面の高さHを算出したならば、マイコン120に接続された表示部110A’(又は110B’)に該高さHを表示する。この際、算出部122によって算出された値をそのまま表示してもよいが、本実施形態においては、マイコン120を構成する演算結果等を一時的に格納するための記録部124(ランダムアクセスメモリ:RAM)に記録し、記録部124に記録された高さHの値を表示部110A’(又は110B’)に表示するようにしてもよい。記録部124に一旦記録された高さHの値は、記録部124の情報を消去するための操作が行われない限り保持される。記録部124の情報を消去するための操作が指示された場合は、マイコン120に設定された制御プログラムによって構成された消去部126が実行されて記録部124の情報が消去される。
【符号の説明】
【0039】
1A、1B:隙間ゲージ
10A、10B:測定部
30A、30B:楔体
32A、32B:底部
34A、34B:斜面
40:センサー回路
42:導電板
44:抵抗体
100A、100B、100A’、100B’:表示ツール
102:電源
104:検出器
106:抵抗器
108:検出器
110A、110B、110A’、110B’:表示部
120:マイコン
122:算出部
124:記録部
126:消去部
図1
図2
図3
図4