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特許7408342試験システム、試験方法及び試験プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】試験システム、試験方法及び試験プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20231225BHJP
   G01M 15/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
G01M17/007 K
G01M15/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019190518
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021067467
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩之
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-038929(JP,A)
【文献】特開2003-121310(JP,A)
【文献】特開2009-186377(JP,A)
【文献】特開2017-167935(JP,A)
【文献】特開2014-190950(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00-17/10
G01M 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両又はその一部を構成する第1供試体を試験するものであり、第1試験室に設けられた第1試験機器及びそれを制御する第1制御装置と、
車両又はその一部を構成する第2供試体を試験するものであり、前記第1試験室とは仕切られた第2試験室に設けられた第2試験機器及びそれを制御する第2制御装置とを備え、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、互いに通信可能に接続されており、各制御装置間で各試験機器に必要なデータの受け渡しを行うことにより、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて試験を行うとともに、
何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記制御装置間の通信を遮断し、前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、互いに独立して停止シーケンスを実行する、試験システム。
【請求項2】
前記第1供試体はバッテリを有するものであり、前記第2供試体はモータを有するものであり、
前記第1試験機器は、前記バッテリを充放電する充放電装置を有し、
前記第2試験機器は、前記モータに電力を供給する電源と、前記モータに負荷を与える第2ダイナモメータを有し、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、互いに通信可能に接続されており、信号を送受信することにより、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて、前記車両又はその一部の試験を行うとともに、
何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記第1制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記第1供試体及び前記第1試験機器の動作を停止させ、前記第2制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記第2供試体及び前記第2試験機器の動作を停止させる、請求項1記載の試験システム。
【請求項3】
車両又はその一部を構成する第1供試体を試験するものであり、第1試験室に設けられた第1試験機器及びそれを制御する第1制御装置と、
車両又はその一部を構成する第2供試体を試験するものであり、第2試験室に設けられた第2試験機器及びそれを制御する第2制御装置とを備え、
前記第1供試体はバッテリを有するものであり、前記第2供試体はモータを有するものであり、
前記第2供試体は、前記モータに加えてトランスミッションと、ハイブリッド動作を再現するハイブリッド制御装置とを有するハイブリッド車両のものであり、
前記第1試験機器は、前記バッテリを充放電する充放電装置を有し、
前記第2試験機器は、前記モータに電力を供給する電源と、前記モータに負荷を与える第2ダイナモメータと、前記トランスミッションに接続され、エンジンを模擬するエンジン模擬装置とを有し、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、互いに通信可能に接続されており、信号を送受信することにより、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて、前記車両又はその一部の試験を行うとともに、
何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記第1制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記第1供試体及び前記第1試験機器の動作を停止させ、前記第2制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記第2供試体及び前記第2試験機器の動作を停止させる、試験システム。
【請求項4】
車両又はその一部を構成する第3供試体を試験する第3試験機器及びそれを制御する第3制御装置をさらに備え、
前記第1制御装置、前記第2制御装置及び前記第3制御装置は互いに通信可能に接続されており、各制御装置間で信号を送受信することにより、前記第1供試体、前記第2供試体及び前記第3供試体を連動させて試験を行うとともに、
何れかの試験機器で問題が発生した場合に、各制御装置は、互いに独立して停止シーケンスを実行する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の試験システム。
【請求項5】
車両又はその一部を構成する第3供試体を試験する第3試験機器及びそれを制御する第3制御装置をさらに備え、
前記第3供試体は、実エンジンを含むものであり、
前記第3試験機器は、前記実エンジンに接続されるエンジンダイナモメータを有し、
前記第1制御装置、前記第2制御装置及び前記第3制御装置が互いに通信可能に接続されており、それら制御装置間で信号を送受信することにより、前記バッテリ、前記モータ及び前記実エンジンを連動させて試験を行うとともに、
何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記第1制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記充放電装置を停止させ、前記第2制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記電源を停止させ、前記第3制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記エンジンダイナモメータを停止させる、請求項3に記載の試験システム。
【請求項6】
何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記制御装置間の通信を遮断する、請求項3又は5に記載の試験システム。
【請求項7】
第1試験室に収容され、車両又はその一部を構成する第1供試体を試験する第1試験機器と、前記第1試験室とは仕切られた第2試験室に収容され、車両又はその一部を構成する第2供試体を試験する第2試験機器とを用いた試験方法であって、
前記第1試験機器を制御する第1制御装置及び前記第2試験機器を制御する第2制御装置を互いに通信可能に接続し、各制御装置間で各試験機器に必要なデータの受け渡しを行わせることにより、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて試験を行うとともに、
何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記制御装置間の通信を遮断し、各制御装置に互いに独立した停止シーケンスを実行させる、試験方法。
【請求項8】
第1試験室に収容され、車両又はその一部を構成する第1供試体を試験する第1試験機器と、前記第1試験室とは仕切られた第2試験室に収容され、車両又はその一部を構成する第2供試体を試験する第2試験機器とを用いた試験システムに用いられる試験プログラムであって、
前記第1試験機器を制御する第1制御装置及び前記第2試験機器を制御する第2制御装置を互いに通信可能にし、各制御装置間で各試験機器に必要なデータの受け渡しを行わせることにより、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて試験を行わせるとともに、
何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記制御装置間の通信を遮断し、各制御装置に互いに独立した停止シーケンスを実行させる、試験プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両又はその一部を構成する供試体の試験システム、試験方法及び試験プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両又はその一部を構成する供試体の試験システムとして、特許文献1に示すように、ハイブリッド車両試験装置が考えられている。
【0003】
このハイブリッド車両試験装置は、エンジン、モータ、バッテリ、連結装置(変速装置)の各単体が分散した環境で、エンジン、モータ、連結装置を組み合わせた試験を可能とするものであり、エンジン単体試験装置と、モータ単体試験装置と、連結装置単体試験装置と、各単体試験装置内の計測制御部と通信し、これら計測制御部に試験のための走行情報を与える、実車のモデルを内蔵した統合計測制御部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-38929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このハイブリッド車両試験装置では、何れかの単体試験装置で問題が発生した場合に、全ての単体試験装置を停止させる必要があるが、特許文献1には、その停止方法については記載されていない。また、何れかの単体試験装置で問題が発生した場合に全ての単体試験装置を適切に停止させなければ、各単体試験装置が暴走してしまう恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点を解決すべくなされたものであり、複数の試験室で行われる複数の供試体の試験を協調させるとともに、問題発生時に安全に各試験室での試験を停止することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る試験システムは、車両又はその一部を構成する第1供試体を試験するものであり、第1試験室に設けられた第1試験機器及びそれを制御する第1制御装置と、車両又はその一部を構成する第2供試体を試験するものであり、第2試験室に設けられた第2試験機器及びそれを制御する第2制御装置とを備え、前記第1制御装置及び前記第2制御装置が互いに通信可能に接続され、それら制御装置間で信号を送受信することにより、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて試験を行うとともに、何れかの試験機器で問題が発生した場合に、各制御装置は、互いに独立して停止シーケンスを実行することを特徴とする。
【0008】
この試験システムであれば、第1制御装置及び第2制御装置間で信号を送受信することにより、第1供試体及び第2供試体を連動させて試験を行うので、第1試験室で行われる第1供試体の試験と、第2試験室で行われる第2供試体の試験を協調させることができる。その結果、第1試験室の試験条件、試験機器又は試験内容と、第2試験室の試験条件、試験機器又は試験内容とを種々変更することによって、第1供試体及び第2供試体の試験のバリエーションを増やすことができる。また、何れかの試験機器で問題が発生した場合に、各制御装置は、互いに独立して停止シーケンスを実行するので、他の制御装置から送信される信号に関わらず、各試験機器を安全に停止させることができる。
【0009】
電気自動車やハイブリッド車等の車両開発を行う場合には、前記第1供試体がバッテリを含むものであり、前記第2供試体がモータを含むものであることが考えられる。
この場合、前記第1試験機器は、前記バッテリを充放電する充放電装置を有し、前記第2試験機器は、前記モータに電力を供給する直流電源を有することが考えられる。
この構成においては、前記第1制御装置及び前記第2制御装置が互いに通信可能に接続されており、それら制御装置間で信号を送受信することにより、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて試験を行うとともに、何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記第1制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記充放電装置を停止させ、前記第2制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記直流電源を停止させることが望ましい。
【0010】
前記第2供試体としては、前記モータに加えてトランスミッションと、ハイブリッド動作を再現するハイブリッド制御装置とを有するハイブリッド車両のものが考えられる。
この場合、前記第2試験機器は、前記トランスミッションに接続され、エンジンを模擬するエンジン模擬装置を有していることが望ましい。この場合、前記第2制御装置による前記直流電源の制御に応じて、ハイブリッド制御装置により前記モータ及び前記エンジン模擬装置が連動して前記第2供試体がハイブリッド動作を再現する。
【0011】
また、本発明に係る試験システムは、車両又はその一部を構成する第3供試体を試験するものであり、第3試験室に設けられた第3試験機器及びそれを制御する第3制御装置をさらに備え、前記第1制御装置、前記第2制御装置及び第3制御装置は互いに通信可能に接続されており、各制御装置間で信号を送受信することにより、前記第1供試体、前記第2供試体及び前記第3供試体を連動させて試験を行うとともに、何れかの試験機器で問題が発生した場合に、各制御装置は、互いに独立して停止シーケンスを実行することが望ましい。
【0012】
具体的に前記第3供試体が、実エンジンを含むものであることが考えられる。
この場合、前記第3試験機器は、前記実エンジンに接続されるエンジンダイナモメータを備えることが考えられる。
この構成においては、前記第1制御装置、前記第2制御装置及び前記第3制御装置が互いに通信可能に接続されており、それら制御装置間で信号を送受信することにより、前記バッテリ、前記モータ及び前記実エンジンを連動させて試験を行うとともに、何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記第1制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記充放電装置を停止させ、前記第2制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記直流電源を停止させ、前記第3制御装置は、所定の停止シーケンスにより前記エンジンダイナモメータを停止させることが望ましい。
【0013】
各制御装置による停止シーケンスを確実に実行するためには、何れかの試験機器で問題が発生した場合に、前記制御装置間の通信を遮断することが望ましい。
【0014】
また本発明に係る試験方法は、第1試験室に収容され、車両又はその一部を構成する第1供試体を試験する第1試験機器及びそれを制御する第1制御装置と、第2試験室に収容され、車両又はその一部を構成する第2供試体を試験する第2試験機器及びそれを制御する第2制御装置とを用いた試験方法であって、前記第1制御装置及び前記第2制御装置を互いに通信可能に接続し、それら制御装置間で信号を送受信することにより、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて試験を行うとともに、何れかの試験機器で問題が発生した場合に、各制御装置に互いに独立した停止シーケンスを実行させることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明に係る試験プログラムは、第1試験室に収容され、車両又はその一部を構成する第1供試体を試験する第1試験機器と、第2試験室に収容され、車両又はその一部を構成する第2供試体を試験する第2試験機器とを用いた試験システムに用いられる試験プログラムであって、前記第1制御装置及び前記第2制御装置を互いに通信可能にし、それら制御装置間で信号を送受信させて、前記第1供試体及び前記第2供試体を連動させて試験を行わせるとともに、何れかの試験機器で問題が発生した場合に、各制御装置に互いに独立した停止シーケンスを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上に述べた本発明によれば、複数の試験室で行われる複数の供試体の試験を協調させるとともに、問題発生時に安全に各試験室での試験を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る試験システムの全体模式図である。
図2】同実施形態の通常試験時及び問題発生時の動作内容を示す模式図である。
図3】停止シーケンスを実行するまでの流れを示す図である。
図4】変形実施形態に係る試験システムの模式図である。
図5】変形実施形態に係る試験システムの模式図である。
図6】変形実施形態に係る試験システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る試験システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態の試験システム100は、例えばハイブリッド車などの車両又はその一部を構成する3つの供試体(第1供試体X1、第2供試体X2、第3供試体X3)を試験するものである。本実施形態では、第1供試体X1はハイブリッド車の実バッテリBATであり、第2供試体X2はハイブリッド車の実インバータINV、実モータM及び実トランスミッションTMであり、第3供試体X3はハイブリッド車の実エンジンE/Gである。なお、第2供試体X2において、実モータMは実トランスミッションTMに内蔵された例を示したが、実モータMと実トランスミッションTMとは別体であってもよい。
【0020】
具体的に試験システム100は、図1に示すように、第1供試体X1を試験するための第1試験室C1に設けられた第1試験機器10及びそれを制御する第1制御装置12と、第2供試体X2を試験するための第2試験室C2に設けられた第2試験機器20及びそれを制御する第2制御装置24と、第3供試体X3を試験するための第3試験室C3に設けられた第3試験機器30及びそれを制御する第3制御装置32とを備えている。
【0021】
なお、第1試験室C1、第2試験室C2及び第3試験室C3は、互いに離れた位置にあれば良く、例えば互いに仕切られた部屋であっても良いし、仕切りのない同じ空間に設けられたものであってもよい。また、第1試験室C1、第2試験室C2及び第3試験室C3は、同じ建屋に設けられたものであっても良いし、別々の建屋に設けられたものであっても良い。これらの試験室C1~C3はそれぞれ、試験位置C1~C3と言い換えることができる。この場合は、第1試験位置C1と、第2試験位置C2と、第3試験位置C3とは、互いに離れた位置となる。
【0022】
第1試験機器10は、第1供試体X1である実バッテリBATを試験するものであり、実バッテリBATを充放電する充放電装置11を有している。この充放電装置11は、第1制御装置12により制御される。その他、第1試験機器10は、実バッテリBATを収容して、実バッテリBATの周囲温度を調整する恒温槽13を有していてもよい。
【0023】
この実施形態では、第1供試体X1には、実バッテリBATの総電圧、残容量、入出力電流、各セルの電圧及び温度等を監視して実バッテリBATを管理するバッテリマネジメントシステム(BMS)が設けられている。なお、バッテリマネジメントシステム(BMS)に相当する機能が、充放電装置11又は第1制御装置12側に設けられていてもよい。
【0024】
そして、第1制御装置12は、バッテリマネジメントシステム(BMS)から取得した実バッテリBATの情報を用いて、例えば実バッテリBATの入出力電流が所定値となるように、充放電装置11を制御する。
【0025】
第2試験機器20は、第2供試体X2である実モータMに電力を供給する電源21と、実トランスミッションTMに接続され、エンジンの挙動を模擬するエンジン模擬装置22と、実トランスミッションTMに接続された駆動軸に負荷を与える1又は複数の負荷用ダイナモメータ23とを有している。電源21、エンジン模擬装置22及び負荷用ダイナモメータ23は、第2制御装置24により制御される。
【0026】
この実施形態では、第2供試体X2には、実インバータINVを制御するためのインバータ制御装置(MCU)、及び実インバータINV及び実トランスミッションTMを制御して、エンジン及び実モータMによるハイブリッド運転を行うためのハイブリッド制御装置(HVCOM)が設けられている。その他、実インバータINVには、当該実インバータINVを制御するためのインバータ制御装置(MCU)が設けられており、実トランスミッションTMには、当該実トランスミッションTMを制御するためのトランスミッション制御装置(TCU)が設けられている。なお、インバータ制御装置(MCU)、ハイブリッド制御装置(HVCOM)、トランスミッション制御装置(TCU)に相当する機能が、第2制御装置24側に設けられていてもよい。
【0027】
電源21は、第2供試体X2である実インバータINVを介して実モータMに電力を供給するものである。また、エンジン模擬装置22は、例えば、バーチャルエンジン用ダイナモメータであり、トルクメータ25を介して実トランスミッションTMに接続されている。また、負荷用ダイナモメータ23は、トルクメータ26を介して実トランスミッションTMに接続された駆動軸に接続されている。
【0028】
そして、第2制御装置24は、ハイブリッド制御装置(HVCOM)にアクセル開度信号を入力する。ハイブリッド制御装置(HVCOM)は、インバータ制御装置(MCU)に出力指令又は回生指令等を送信し、これにより、実インバータINV及び実モータMが制御される。また、ハイブリッド制御装置(HVCOM)は、トランスミッション制御装置(TCU)に、変速指令及びクラッチ制御指令等を送信し、これにより、実トランスミッションTMが制御される。その他、第2制御装置24は、エンジン模擬装置22及び負荷用ダイナモメータ23を所定のトルクとなるように制御する。
【0029】
第3試験機器30は、トルクメータ33を介して実エンジンE/Gに接続されるエンジンダイナモメータ31を有している。エンジンダイナモメータ31は、第3制御装置32により制御される。
【0030】
この実施形態では、第3供試体X3には、実エンジンE/Gのスロットル等を制御するエンジン制御装置(ECU)が設けられている。なお、エンジン制御装置(ECU)に相当する機能が、第3制御装置32側に設けられていてもよい。
【0031】
そして、第3制御装置32は、所定の試験条件に基づいて、エンジン制御装置(ECU)に出力指令等を送信し、これにより、実エンジンE/Gが制御される。
【0032】
しかして、本実施形態の試験システム100では、第1制御装置12、第2制御装置24及び第3制御装置32が互いに通信可能に接続されており、各制御装置12、24、32間で信号を送受信することにより、第1供試体X1、第2供試体X2及び第3供試体X3を連動させて試験するように構成されている。本実施形態では、第1制御装置12と第2制御装置24とが有線又は無線により接続されており、第2制御装置24と第3制御装置32とが有線又は無線により接続されている。なお、第1制御装置12と第3制御装置32とが有線又は無線により接続されていても良い。また、各制御装置12、24、32の制御動作は、試験プログラムにより実行される。
【0033】
第1制御装置12から第2制御装置24に送信される信号は、例えば、実バッテリBATの残容量(SOC)データ、実バッテリBATの入出力電流データ、実バッテリBATの出力電圧データ等である。さらに、前記信号は、実バッテリBATの温度データを含んでもよい。これらのデータは、バッテリマネジメントシステム(BMS)により取得することができる。
【0034】
第2制御装置24から第1制御装置12に送信される信号は、例えば、実インバータINVの挙動データであり、例えば実インバータINVに入力される電流指令値データ又は実インバータINVに流れる実電流値データ等である。
【0035】
第3制御装置32から第2制御装置24に送信される信号は、例えば、エンジンダイナモメータ31により得られたトルク計測値データ又は当該トルク計測値データから生成されたトルク指令値データである。その他、前記信号は、実エンジンE/Gの回転数データ、実エンジンE/Gを冷却するための冷却水の温度データ等を含んでもよい。
【0036】
第2制御装置24から第3制御装置32に送信される信号は、例えば、バーチャルエンジン用ダイナモメータ22の実回転数データである。また、前記信号は、ハイブリッド制御装置(HVCOM)からトランスミッション制御装置(TCU)に送信されるエンジン出力指令値データを含んでもよい。その他、前記信号は、負荷用ダイナモメータ23の回転数データ、等を含んでもよい。
【0037】
そして、第1制御装置12は、第2制御装置24から送信された上記の信号とバッテリマネジメントシステム(BMS)から取得した実バッテリBATの情報とを用いて、例えば実バッテリBATの入出力電流が所定値となるように、充放電装置11を制御する。
【0038】
また、第2制御装置24は、第1制御装置12から送信された上記の信号及び第3制御装置32から送信された上記の信号を用いて、ハイブリッド制御装置(HVCOM)を介して、直流電源21、エンジン模擬装置22、負荷用ダイナモメータ23等を制御する。具体的には第2制御装置24は、直流電源21を制御して、実バッテリBATの挙動を模擬し、エンジン模擬装置22を制御して、実エンジンE/Gのエンジントルクを模擬する。なお、第2制御装置24は、所定の負荷パターンにより負荷用ダイナモメータ23を制御する。
【0039】
さらに、第3制御装置32は、第2制御装置24から送信された上記の信号を用いて、所定の走行速度パターン(例えばJC08モードやWTLCモードなど)によりエンジン制御装置(ECU)を介して実エンジンE/Gを動作させる。
【0040】
以上の通り、本実施形態の試験システム100は、図2に示すように、各制御装置12、24、32間で、各試験機器10~30に必要な測定値データ及び指令値データ等の受け渡しをリアルタイムに行い、各供試体X1~X3を連動させて、車両の模擬走行試験を行うことができる。
【0041】
次に、試験システム100において問題が発生した場合について説明する。
【0042】
本実施形態の試験システム100は、何れかの試験機器10~30で問題が発生した場合に、試験室C1~C3毎において、互いに独立して停止シーケンスを実行する(図2参照)。
【0043】
具体的には、何れかの試験機器10~30又は試験室C1~C3で問題が発生すると、各制御装置12、24、32は、試験室C1~C3毎に独立して停止シーケンスを実行する。つまり、第1制御装置12は、他の制御装置24、32とは独立して、第1試験機器10に独自の停止シーケンスを実行させる。第2制御装置24は、他の制御装置12、32とは独立して、第2試験機器20に独自の停止シーケンスを実行させる。第3制御装置32は、他の制御装置12、24とは独立して、第3試験機器30に独自の停止シーケンスを実行させる。また、その際、各制御装置12、24、32は、他の試験室の制御装置12、24、32からの信号を受信しない又は受信しても従わない設定とすることができる。各試験室C1~C3で確実に停止シーケンスを実行するためである。
【0044】
ここで、第1試験室C1(第1試験機器10)で発生しうる問題としては、充放電装置11の暴走などの充放電装置11の異常、実バッテリBATが予定よりも高温になる等の実バッテリBATの異常(第1供試体X1の異常)等である。
【0045】
第2試験室C2(第2試験機器20)で発生しうる問題としては、実モータM、実インバータINV又は実トランスミッションTM等の異常(第2供試体X2の異常)、直流電源21の異常、各ダイナモメータ22、23の異常、車軸の破損、油温・油圧の異常等である。
【0046】
第3試験室C3(第3試験機器30)で発生しうる問題としては、実エンジンE/Gの異常(第3供試体X3の異常)、エンジンダイナモメータ31の異常、油温・油圧の異常、燃圧の異常等である。
【0047】
その他の問題としては、火災、排ガスの漏れ、又は、非常停止スイッチが押された場合等を含む。また、信号が所定時間以上停止した場合や通信回線の物理的な破損等の通信回線で発生する問題も含む。
【0048】
そして、上記の問題が発生して各制御装置12、24、32が停止シーケンスを実行するまでの流れとしては、図3に示すように、以下の(1)~(7)が考えられる。
【0049】
(1)問題発生→緊急停止信号送信→各制御装置12、24、32が独立した停止シーケンス
ここで、緊急停止信号は、問題発生を検知した制御装置(例えば第1制御装置12)から、他の制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)に送信される。
【0050】
なお、緊急停止信号を送信した制御装置(例えば第1制御装置12)及び緊急停止信号を受信した制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)は、それ以降、他の制御装置12、24、32からの信号を受信しても従わない機能を備えていてもよい。
【0051】
(2)問題発生→緊急停止信号送信→通信遮断→各制御装置12、24、32が独立した停止シーケンス
上記(1)に加えて、緊急停止信号を送信した制御装置(例えば第1制御装置12)及び緊急停止信号を受信した制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)は、それ以降、通信を遮断するようにしても良い。
【0052】
(3)問題発生→通信遮断→各制御装置12、24、32が独立した停止シーケンス
ここで、問題発生を検知した制御装置(例えば第1制御装置12)は、他の制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)との通信を遮断する。そして、問題発生を検知した制御装置(例えば第1制御装置12)は、他の制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)とは独立して停止シーケンスを実行する。また、他の制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)では次の(4)~(7)が適用される。
【0053】
(4)他の制御装置からの信号が所定時間以上停止→各制御装置12、24、32が独立した停止シーケンス
ある制御装置(例えば第1制御装置12)は、他の制御装置(例えば第2制御装置24)からの信号が所定時間以上停止した場合、つまり、第2制御装置24から所定時間信号を受信しない場合には、第1制御装置12は、他の制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)とは独立して停止シーケンスを実行する。
【0054】
なお、上記(3)の場合においては、第2制御装置24は、第1制御装置12からの信号が所定時間以上停止した場合に、第2制御装置24は、他の制御装置(例えば第1制御装置12及び第3制御装置32)とは独立して停止シーケンスを実行する。また、第3制御装置32は、第2制御装置24からの信号が所定時間以上停止した場合に、第3制御装置32は、他の制御装置(例えば第1制御装置12及び第2制御装置24)とは独立して停止シーケンスを実行する。なお、停止シーケンスを開始した各制御装置12、24、32は、それ以降、他の制御装置12、24、32からの信号を受信しても従わない機能を備えてもよい。
【0055】
(5)他の制御装置からの信号が所定時間以上停止→通信遮断→各制御装置12、24、32が独立した停止シーケンス
上記の(4)に加えて、他の制御装置からの信号が所定時間以上停止した場合に、それ以降、通信を遮断するようにしても良い。
【0056】
(6)他の制御装置からの信号が所定時間以上停止→緊急停止信号送信→各制御装置12、24、32が独立した停止シーケンス
上記の(4)に加えて、他の制御装置からの信号が所定時間以上停止した場合に、その停止を検知した制御装置(例えば第1制御装置12)から、他の制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)に緊急停止信号を送信しても良い。また、各制御装置12、24、32を管理する上位制御装置がある場合には、その上位制御装置から各制御装置12、24、32に送信することもできる。なお、緊急停止信号を送信した制御装置(例えば第1制御装置12)及び緊急停止信号を受信した制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)は、それ以降、他の制御装置12、24、32からの信号を受信しても従わない機能を備えていてもよい。
【0057】
(7)他の制御装置からの信号が所定時間以上停止→緊急停止信号送信→通信遮断→各制御装置12、24、32が独立した停止シーケンス
上記の(6)に加えて、緊急停止信号を送信した制御装置(例えば第1制御装置12)及び緊急停止信号を受信した制御装置(例えば第2制御装置24及び第3制御装置32)は、それ以降、通信を遮断するようにしても良い。
【0058】
<停止シーケンス>
各制御装置12、24、32の停止シーケンスは、試験機器10~30の種類ごとに予め設定されている。
例えば、第1試験室C1において行われる停止シーケンスでは、第1制御装置12が、第1試験機器10のうち、充放電装置11に優先的に(最初に)停止信号を送信する。
また、第2試験室C2において行われる停止シーケンスでは、第2制御装置24が、第2供試体X2に優先的に(最初に)停止信号を送信し、次に第2試験機器20に停止信号を送信する。
さらに、第3試験室C3において行われる停止シーケンスでは、第3制御装置32が、第3供試体X3に優先的に(最初に)停止信号を送信する。
【0059】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の試験システム100によれば、各制御装置12、24、32間で信号を送受信することにより、各供試体X1~X3を連動させて試験を行うので、第1試験室C1で行われる第1供試体X1の試験と、第2試験室C2で行われる第2供試体X2と、第3試験室C3で行われる第3供試体X3の試験とを協調させることができる。その結果、各試験室C1~C3の試験条件、試験機器10~30又は試験内容を種々変更することによって、各供試体X1~X3の試験のバリエーションを増やすことができる。また、何れかの試験機器10~30で問題が発生した場合に、各制御装置12、24、32は、互いに独立して停止シーケンスを実行するので、他の制御装置12、24、32から送信される信号に関わらず、各試験機器10~30を安全に停止させることができる。
【0060】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0061】
例えば、前記実施形態では、3つの供試体の試験を協調する構成であったが、2つの供試体の試験を協調するものであっても良いし、4つ以上の供試体の試験を協調するものであっても良い。
【0062】
例えば電気自動車を試験する場合には、図4に示すように、2つの供試体の試験を協調することが考えられる。この場合、第1試験室C1は、第1供試体X1である実バッテリBATを試験する構成とし、第2試験室C2は、第2供試体である実インバータINV及び実モータMを試験する構成とすることが考えられる。図4における第1試験室C1の第1試験機器10は前記実施形態と同様であり、第2試験室C2の第2試験機器20は、直流電源21、及び、1又は複数の負荷用ダイナモメータ23を有している。
【0063】
また、ハイブリッド車の試験をする場合であっても、図5に示すように、2つの供試体に分けて、それらの試験を協調することが考えられる。この場合、第1試験室C1は、第1供試体X1である実バッテリBATを試験する構成とし、第2試験室C2は、第2供試体である実インバータINV、実モータM、実トランスミッションTM及び実エンジンE/Gを試験する構成とすることが考えられる。図5における第1試験室C1の第1試験機器10は前記実施形態と同様であり、第2試験室C2の第2試験機器20は、直流電源21、及び、1又は複数の負荷用ダイナモメータ23を有している。
【0064】
その他、完成車両を実バッテリとそれ以外とに分けて、それらの試験を協調するようにしても良い。この場合、実バッテリを高温又は低温としたときの実バッテリの挙動を用いて、実バッテリが取り除かれた車両において、高温バッテリ又は低温バッテリを模擬した試験を行うことができる。また、ハイブリッド車を実バッテリ、実モータ、実トランスミッション及び実エンジンの4つに分けることにより、4つの供試体を協調して試験することもできる。
【0065】
また、図6に示すように、複数の試験室(試験機器)の内から接続する2以上の試験室(試験機器)を切り替え可能に構成しても良い。なお、図6では、4つの試験室A~Dを接続するパターンの一例を示している。
【0066】
さらに、複数の試験室の少なくとも1つの試験室で複数の供試体(例えば排気量の異なる実エンジン等)を試験可能に構成しておき、その1つの試験室において試験する供試体(例えば排気量の異なる実エンジン等)を切り替え可能に構成しても良い。
【0067】
前記試験システムにおける各試験機器は、互いに協調することなく、個別に供試体を試験することもできる。
【0068】
その上、試験システムにおける試験機器の組み合わせは、前記実施形態に限られず、シャシダイナモメータ、ブレーキダイナモメータ等の種々の試験機器を用いることができる。
【0069】
加えて、前記実施形態ではハイブリッド車の試験システムであったが、電気自動車の試験システムであっても良いし、ガソリン車の試験システムであっても良いし、燃料電池車の試験システムであっても良い。
【0070】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0071】
100・・・試験システム
C1・・・第1試験室
X1・・・第1供試体
10・・・第1試験機器
11・・・充放電装置
12・・・第1制御装置
C2・・・第2試験室
X2・・・第2供試体
BAT・・・バッテリ
M・・・モータ
TM・・・トランスミッション
HVCOM・・・ハイブリッド制御装置
20・・・第2試験機器
21・・・直流電源
22・・・エンジン模擬装置
24・・・第2制御装置
C3・・・第3試験室
X3・・・第3供試体
E/G・・・実エンジン
30・・・第3試験機器
31・・・エンジンダイナモメータ
32・・・第3制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6