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特許7408378ウエーハ生成方法、及びウエーハ生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ウエーハ生成方法、及びウエーハ生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231225BHJP
   B23K 26/356 20140101ALI20231225BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/356
B28D5/04 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019234193
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103732
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-039500(JP,A)
【文献】特開2010-247284(JP,A)
【文献】特開2000-061414(JP,A)
【文献】特開2007-313549(JP,A)
【文献】特開平10-260163(JP,A)
【文献】特開2002-038222(JP,A)
【文献】特開2010-158686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/356
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成方法であって、保持手段にインゴットを保持する保持工程と、該保持手段に保持されたインゴットの内部であって生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに衝撃波の集束点を位置付けて破壊層を形成する破壊層形成工程と、
該破壊層を起点として生成すべきウエーハをインゴットから剥離する剥離工程と、を含み構成され
該破壊層形成工程は、該破壊層を形成する際に、1パルス当たりのレーザー光線を波長毎に時間差を持ったリング状に形成し、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がインゴットに照射されてインゴットの上面で衝撃波が生成される際の該時間差を調整することにより衝撃波の集束点の位置を設定するウエーハ生成方法。
【請求項2】
該剥離工程の後、インゴットの剥離面を平坦化する平坦化工程が含まれる、請求項1に記載のウエーハ生成方法。
【請求項3】
インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、
インゴットを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたインゴットの内部に生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに衝撃波の集束点を位置付けて破壊層を形成する破壊層形成手段と、を含み構成され
該破壊層形成手段は、
パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段であり、1パルス当たりのレーザー光線が波長毎に時間差を持ったリング状に形成され、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がインゴットに照射されてインゴットの上面で衝撃波が生成される際の該時間差が該第一のレーザー光線照射手段によって調整されることにより衝撃波の集束点の位置が設定されるウエーハ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成方法、及びインゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等のデバイスは、シリコン、サファイア等を素材としたウエーハの表面に機能層が積層された分割予定ラインによって区画されて形成される。
【0003】
そして、切削装置、レーザー加工装置によってウエーハの分割予定ラインに加工が施されて個々のデバイスチップに分割されて携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0004】
また、パワーデバイス、LED等は、単結晶SiCを素材としたウエーハの表面に機能層が積層され、分割予定ラインによって区画されて形成される。このようにデバイスが形成されるウエーハは、一般的にインゴットをワイヤーソーでスライスして生成され、スライスされたウエーハの表裏面を研磨して鏡面に仕上げられる(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
ところで、インゴットをワイヤーソーで切断し、表裏面を研磨してウエーハを生成する場合、インゴットの70%~80%が捨てられることになり、不経済であるという問題がある。特に、単結晶SiCは硬度が高く、ワイヤーソーでの切断が困難で生産性が悪いと共に、インゴットの単価が高いことから、より効率よくウエーハを生産することが求められる。そこで、単結晶SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をSiCインゴットの内部に位置付けて照射し切断予定面に分離層を形成し、ウエーハを分離する技術が本出願人によって提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-094221号公報
【文献】特開2016-111143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、レーザー光線の集光点をインゴットの内部に位置付けて照射して分離層を形成し、ウエーハを分離する場合は、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線を使用しなければならないことから、インゴットの種類に対応した波長のレーザー光線を照射するレーザー加工装置を使用しなければならず、不経済であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、インゴットの種類を問わず効率よくインゴットからウエーハを生成することができるインゴット生成方法、及びインゴットの種類を問わず効率よくインゴットからウエーハを生成することができるインゴット生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成方法であって、保持手段にインゴットを保持する保持工程と、該保持手段に保持されたインゴットの内部であって生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに衝撃波の集束点を位置付けて破壊層を形成する破壊層形成工程と、該破壊層を起点として生成すべきウエーハをインゴットから剥離する剥離工程と、を含み構成され、該破壊層形成工程は、該破壊層を形成する際に、1パルス当たりのレーザー光線を波長毎に時間差を持ったリング状に形成し、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がインゴットに照射されてインゴットの上面で衝撃波が生成される際の該時間差を調整することにより衝撃波の集束点の位置を設定するウエーハ生成方法が提供される。
【0010】
該剥離工程の後、インゴットの剥離面を平坦化する平坦化工程が含まれるようにすることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、インゴットを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたインゴットの内部に生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに衝撃波の集束点を位置付けて破壊層を形成する破壊層形成手段と、を含み構成され、該破壊層形成手段は、パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段であり、1パルス当たりのレーザー光線が波長毎に時間差を持ったリング状に形成され、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がインゴットに照射されてインゴットの上面で衝撃波が生成される際の該時間差が該第一のレーザー光線照射手段によって調整されることにより衝撃波の集束点の位置が設定されるウエーハ生成装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウエーハ生成方法は、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成方法であって、保持手段にインゴットを保持する保持工程と、該保持手段に保持されたインゴットの内部であって生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに衝撃波の集束点を位置付けて破壊層を形成する破壊層形成工程と、該破壊層を起点として生成すべきウエーハをインゴットから剥離する剥離工程と、を含み構成され、該破壊層形成工程は、該破壊層を形成する際に、1パルス当たりのレーザー光線を波長毎に時間差を持ったリング状に形成し、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がインゴットに照射されてインゴットの上面で衝撃波が生成される際の該時間差を調整することにより衝撃波の集束点の位置を設定することにより、インゴットの素材に応じた透過性を有する波長のレーザー光線を選択することなく、インゴットの種類を問わず効率よくウエーハWを生成することができる。
【0016】
また、本発明のウエーハ生成装置は、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、インゴットを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたインゴットの内部に生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに衝撃波の集束点を位置付けて破壊層を形成する破壊層形成手段と、を含み構成され、該破壊層形成手段は、パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段であり、1パルス当たりのレーザー光線が波長毎に時間差を持ったリング状に形成され、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がインゴットに照射されてインゴットの上面で衝撃波が生成される際の該時間差が該第一のレーザー光線照射手段によって調整されることにより衝撃波の集束点の位置が設定されることにより、インゴットの素材に応じた透過性を有する波長のレーザー光線を選択することなく、インゴットの種類を問わず効率よくウエーハWを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一の実施形態に係るウエーハ生成装置の全体斜視図である。
図2図1に示すウエーハ生成装置に配設された第一のレーザー光線照射手段の光学系を示すブロック図である。
図3】インゴットに照射される複数のリング光に基づき衝撃波を発生させてインゴットの内部に破壊層を形成する態様を示す概念図である。
図4】剥離工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】平坦化工程の実施態様を示す斜視図である。
図6第一、第二の参考例に係る実施形態のウエーハ生成装置の全体斜視図である。
図7図6に示すウエーハ生成装置に配設された第二のレーザー光線照射手段の光学系を示すブロック図である。
図8】(a)第三のレーザー光線照射手段の第三の集光器を示す一部拡大断面図、(b)第三のレーザー光線照射手段の変形例に配設される第四の集光器を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハ生成方法、及び該ウエーハ生成方法を実施するのに好適なウエーハ生成装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0019】
図1には、第一の実施形態であるウエーハ生成装置2Aの全体斜視図が示されている。ウエーハ生成装置2Aは、基台3と、被加工物を保持する保持手段4と、保持手段4を移動させる移動手段5と、破壊層生成手段として配設される第一のレーザー光線照射手段6と、撮像手段12と、表示手段14と、剥離手段16と、制御手段(図示は省略)とを備える。
【0020】
保持手段4は、X軸方向において移動自在に基台3に搭載された矩形状のX軸方向可動板18と、Y軸方向において案内レール18a、18aに沿って移動自在にX軸方向可動板18に搭載された矩形状のY軸方向可動板20と、Y軸方向可動板20の上面に回転自在に搭載された円筒形状のチャックテーブル22とを含む。なお、X軸方向は図1に矢印Xで示す方向であり、Y軸方向は図1に矢印Yで示す方向であってX軸方向に直交する方向であって、XY平面は実質上水平である。
【0021】
移動手段5は、X軸方向移動手段24と、Y軸方向移動手段26とを含む。X軸方向移動手段24は、基台3上においてX軸方向に延びるボールねじ28と、ボールねじ28の片端部に連結されたモータ30とを有する。ボールねじ28のナット部(図示は省略)は、X軸方向可動板18の下面に固定されている。そしてX軸方向移動手段24は、ボールねじ28によりモータ30の回転運動を直線運動に変換してX軸方向可動板18に伝達し、基台3上の案内レール3a、3aに沿ってX軸方向可動板18をX軸方向に進退させる。Y軸方向移動手段26は、X軸方向可動板18上においてY軸方向に延びるボールねじ32と、ボールねじ32の片端部に連結されたモータ34とを有する。ボールねじ32のナット部(図示は省略)は、Y軸方向可動板20の下面に固定されている。そしてY軸方向移動手段26は、ボールねじ32によりモータ34の回転運動を直線運動に変換してY軸方向可動板20に伝達し、X軸方向可動板18上の案内レール18aに沿ってY軸方向可動板20をY軸方向に進退させる。移動手段5には、さらに、回転手段(図示は省略)が含まれ、該回転手段は、チャックテーブル22に内蔵されたモータを有し、Y軸方向可動板20に対してチャックテーブル22を回転させる。
【0022】
保持手段4の奥側には、基台3の上面から上方に延びる垂直壁部36aと、実質上水平に延びる水平壁部36bとを備える枠体36が立設されている。水平壁部36bには、本実施形態において、破壊層形成手段として機能する第一のレーザー光線照射手段6の光学系が内蔵されている。枠体36の水平壁部36bの先端下面には第一のレーザー光線照射手段6を構成する第一の集光器69が配設されている。
【0023】
撮像手段12は、水平壁部36bの先端下面であって、第一のレーザー光線照射手段6の第一の集光器69とX軸方向に間隔をおいた位置に配設されている。撮像手段12には、必要に応じて、可視光線により撮像する通常の撮像素子(CCD)、被加工物に赤外線を照射する赤外線照射手段、赤外線照射手段により照射された赤外線を捕らえる光学系、該光学系が捕らえた赤外線に対応する電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等が含まれる。撮像手段12によって撮像された画像を表示する表示手段14は、枠体36の水平壁部36bの上面に搭載される。
【0024】
剥離手段16は、基台3上の案内レール3a、3aの終端部から上方に延びる直方体状のケーシング16aと、ケーシング16aに昇降自在に支持された基端からX軸方向に延びるアーム16bとを含む。ケーシング16aには、アーム16bを昇降させる昇降手段(図示は省略)が内蔵されている。アーム16bの先端にはモータ16cが配設されている。モータ16cの下面には、上下方向に延びる軸線を中心として回転自在な円盤状の吸着片16dが連結されている。吸着片16dの下面には、複数の吸引孔(図示は省略)が形成され、吸着片16dには、流路を介して吸引手段(図示は省略)に接続されている。また吸着片16dには、吸着片16dの下面に対して超音波振動を付与する超音波振動付与手段(図示は省略)が内蔵されている。
【0025】
該制御手段は、コンピュータから構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)とを含む。そして制御手段は、移動手段5、第一のレーザー光線照射手段6、撮像手段12、表示手段14、及び剥離手段16と電気的に接続され、各手段の作動を制御する。
【0026】
本実施形態において被加工物となるのは、図1に示す略円柱形状の六方晶単結晶SiCからなるインゴット50であり、インゴット50は、略円形状の上面52と、上面52の反対側に位置する略円形状の底面54と、を有する。インゴット50の周面56には、結晶方位を把握するために異なる長さで設定された矩形状の第一のオリエンテーションフラット50a及び第二のオリエンテーションフラット50bが形成されている。
【0027】
図2を参照しながら、ウエーハ生成装置2の水平壁部36bに内蔵された第一のレーザー光線照射手段6の光学系について説明する。
【0028】
図2に示す第一のレーザー光線照射手段6は、広帯域波長(例えば355nm~1064nm)のパルスレーザー光線PL0を発振する発振器61と、発振器61が発振した1パルス毎のパルスレーザー光線PL0を波長毎に時間差を持たせてパルスレーザー光線PL1として出力する波長別遅延手段62と、パルスレーザー光線PL1を平行光とするコリメーションレンズ63と、パルスレーザー光線PL1を、リング光に生成すると共に波長毎に小リング光から大リング光に分光してパルスレーザー光線PL2を生成するリング生成手段64と、必要に応じて配設される反射ミラー66と、パルスレーザー光線PL2を、チャックテーブル22上におけるY軸方向で割り出しする、例えばガルバノスキャナーで構成される割出スキャナー67と、パルスレーザー光線PL2をチャックテーブル22上のX軸方向に走査する、例えばレゾナントスキャナーで構成される走査スキャナー68と、小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線PL2をチャックテーブル22に保持されたインゴット50の上面52の該X軸座標及び該Y軸座標で特定された位置に集光して照射するfθレンズ691を含む第一の集光器69と、を備えている。
【0029】
発振器61から発振されるパルスレーザー光線PL0は光ファイバー620を介して波長別遅延手段62に導かれる。波長別遅延手段62は、例えば、波長分散を生じさせる光ファイバーを利用することで実現可能である。より具体的に言えば、波長別遅延手段62の内部に含まれる光ファイバー(図示は省略)の中に、波長毎に反射位置が異なるように回折格子を形成して、例えば、長い波長の光の反射距離を短く、短い波長の光の反射距離が長くなるように設定したもので実現される。これにより、図2に示す波長別遅延手段62の出力側に設定される光ファイバー621を介して、1パルス毎に、波長が長い順に所定の時間差をもたせ、例えば、赤色光PL1a、黄色光PL1b、緑色光PL1c、及び青色光PL1dが時間差をもって生成されたパルスレーザー光線PL1が出力される。なお、本実施形態においては、説明の都合上、4つの波長域に対応して赤色光PL1a、黄色光PL1b、緑色光PL1c、及び青色光PL1dに分光される例について説明するが、実際は10~20の波長域に対応して分光される。
【0030】
波長別遅延手段62によって波長毎に時間差が設定されたパルスレーザー光線PL1は、コリメーションレンズ63によって平行光とされ、リング生成手段64に導入される。リング生成手段64は、例えば、一対のアキシコンレンズ641、642と、ドーナツ型で半径方向に対称となっている回折格子643とを備えるアキシコンレンズ体で実現される。パルスレーザー光線PL1は、一対のアキシコンレンズ641、642を通過することでリング状の光とされ、さらに回折格子643を通過することで、波長毎に小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線PL2に生成される。上記した一対のアキシコンレンズ641、642の間隔を調整することで、パルスレーザー光線PL2を構成するリング光の大きさを調整することが可能である。なお、本実施形態においては、パルスレーザー光線PL1を波長毎に小リング光から大リング光に分光する手段として、上記したアキシコンレンズ体を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、回折光学素子(DEO)を用いてもよい。
【0031】
波長毎に小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線PL2は、反射ミラー66によって光路が変更されて、パルスレーザー光線PL2をY軸座標に割り出しする割出スキャナー67に導かれる。割出スキャナー67は、図示しない制御手段によって反射面67aの角度が制御され、チャックテーブル22上においてパルスレーザー光線PL2が照射される位置を、図面に対して垂直な割出送り方向(Y軸方向)で精密に制御する。さらに、割出スキャナー67において反射されたパルスレーザー光線PL2は、走査スキャナー68に導かれる。走査スキャナー68は、図示しない制御手段によって反射面68aの角度が制御され、チャックテーブル22上においてパルスレーザー光線PL2が照射される位置を、図面に対して左右方向に設定される走査方向(X軸方向)で精密に制御する。割出スキャナー67及び走査スキャナー68で照射方向が制御されたパルスレーザー光線PL2は、fθレンズ691に導かれて集光され、インゴット50の上面を構成する上面52の所定のX軸座標、Y軸座標位置に照射される。
【0032】
図3に示すように、上記したリング光PL2a~PL2dによって構成されるパルスレーザー光線PL2が上面52に到達することによって、各到達点からインゴット50内を伝播する衝撃波PL3が生成される。各リング光PL2a~PL2dがインゴット50の裏面10bに到達する際の時間差t1~t3を適切に設定することにより、この衝撃波PL3を、上面52に照射される各リング光PL2a~PL2dの中心Cにおけるインゴット50の厚み方向の所望の位置P1を集束点として集束させることが可能である。本実施形態においては、インゴット50から所定の厚みPzのウエーハWを生成すべく、該位置P1を上面52を基準として、Z軸方向のPzの位置に設定する。このように位置P1を設定した場合に、上記した時間差t1~t3を適切に設定する手順は、以下のとおりである。
【0033】
インゴット50の上面52上に照射されるリング光PL2a~PL2dの径は、上記したリング生成手段64に含まれる回折格子643によって設定される値であり、例えば、図3に示すように、a1~a4となるように設定される。そして、リング光PL2a~PL2dの中心Cからインゴット50の厚さ方向において、オペレータが各リング光PL2a~PL2dによって発生する衝撃波PL3を集束させたい位置P1までのZ軸座標(深さ)をPzとすると、インゴット50の上面52における各リング光PL2a~PL2dが到達する点から該位置P1までの距離H1~H4は、以下の式により演算される。
H1=(a1+Pz1/2
H2=(a2+Pz1/2
H3=(a3+Pz1/2
H4=(a4+Pz1/2
【0034】
ここで、上記したように、リング光PL2a~PL2dが時間差t1~t3をもってインゴット50の上面52に到達してインゴット50の内部を伝播する衝撃波PL3を生成する場合に、衝撃波PL3を位置P1に集束させるためには、以下の式を満たす時間差t1~t3を設定すればよい。なお、Vは、インゴット50の内部を衝撃波PL3が伝播する際の速度(m/s)であり、インゴット50の材質によって決まる速度である。
(H1-H2)/V=t1
(H2-H3)/V=t2
(H3-H4)/V=t3
【0035】
上記した時間差t1~t3は、上記した波長別遅延手段62によって調整することができ、上記した波長別遅延手段62においては、波長別遅延手段62を構成する光ファイバーの中に波長に対応して配設される回折格子(図示は省略)の位置を、上記した時間差t1~t3が生じるように設定する。
【0036】
上記した条件を満たす時間差t1~t3をもってインゴット50の上面52にリング光PL2a~PL2dが照射されることで、リング光PL2a~PL2dによって生成されインゴット50内を伝播する衝撃波PL3は、位置P1にて集束されて強い衝撃を生じさせる。
【0037】
なお、上記した第一のレーザー光線照射手段6を作動させる際のレーザー照射条件は、例えば、以下のとおりである。発振器61から照射されるパルスレーザー光線PL0の平均出力を適切に調整することによって、インゴット50の内部の位置P1を集束点として衝撃波PL3を集束させて位置P1に破壊層Sを生成することができる。
波長 :355nm~1064nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :10W~100W
パルス幅 :100ps以下
【0038】
第一の実施形態に係るウエーハ生成装置2は、概ね上記したとおりの構成を備えており、図1乃至図3を参照しながら、ウエーハ生成装置2によって実施されるウエーハ生成方法、及びウエーハ生成装置2の第一のレーザー光線照射手段6が破壊層形成手段として機能する態様について、以下に説明する。
【0039】
インゴット50から、所望の厚み(Pz)のウエーハWを生成するに際し、まず、保持手段4のチャックテーブル22にインゴット50を保持させる(保持工程)。より具体的には、チャックテーブル22の上面とインゴット50の底面54との間に接着剤(例えば、エポキシ樹脂系接着剤)を介在させて、チャックテーブル22にインゴット50を固定する。
【0040】
上記した保持工程を実施したならば、次に破壊層形成工程を実施する。より具体的には、まず、移動手段5を作動して、チャックテーブル22を撮像手段12の直下に移動させて、撮像手段12によって、インゴット50を撮像する(アライメント工程)。インゴット50を撮像したならば、図示しない制御手段によって、インゴット50の画像から把握される第一のオリエンテーションフラット50a及び第二のオリエンテーションフラット50bに基づいて、インゴット50の向きを検出し、移動手段5によって、チャックテーブル22を回転、移動させることにより、インゴット50を所定の向きに調整すると共に、インゴット50の上面52の所定の領域を、第一の集光器69の下方に位置付ける。
【0041】
本実施形態のウエーハ生成装置2は、図3に示すように、fθレンズ691を含む第一の集光器69によって集光される波長毎のリング光PL2a~PL2dによって、インゴット50内に衝撃波PL3を生成する。インゴット50の内部を伝播する衝撃波PL3は、上記したように適切に時間差t1~t3が設定されていることにより、インゴット50の上面52からZ軸方向で見て深さPzの位置P1にて集束される。また、上記したように、本実施形態のウエーハ生成装置2は、走査スキャナー68と、割出スキャナー67を備えており、図2に示す走査スキャナー68と、割出スキャナー67とを作動して、fθレンズ691を介して、リング光PL2a~PL2dの中心CをX軸座標、Y軸座標によって規定される所定の領域全域に順次照射し、上面52からPzの深さに対して破壊層Sを形成する。さらに、移動手段5を作動して、チャックテーブル22をX軸方向、及びY軸方向で移動して、第一の集光器69からパルスレーザー光線PL2を照射可能な領域にインゴット50の各領域を順次位置付けて、上記した手順によりインゴット50の上面52からPzの深さに破壊層Sを順次形成する。このようにして、インゴット50の全域において、インゴット50の上面52からPzの深さに破壊層Sを形成する。以上により、破壊層形成工程が完了する。
【0042】
上記したように、破壊層形成工程を実施したならば、次いで、破壊層Sを起点としてウエーハWをインゴット50から剥離する剥離工程を実施する。図1、及び図4を参照しながら、以下に、この剥離工程の手順について説明する。
【0043】
剥離工程を実施する際には、まず、移動手段5によってチャックテーブル22を剥離手段16を構成する吸着片16aの下方に移動させる。次いで、ケーシング16aに内蔵された昇降手段(図示は省略)を作動して、アーム16bを下降させて、図4に示すとおり、吸着片16dの下面をインゴット50に密着させる。次いで、図示しない吸引手段を作動して、吸着片16dの下面をインゴット50の上面に吸着させ、図示を省略する超音波振動付与手段を作動して、吸着片16dの下面に対して超音波振動を付与すると共に、モータ16cを作動させて吸着片16dを回転させる。これにより、インゴット50の内部に形成された剥離層Sを界面としてインゴット50の上面側の領域を剥離することができ、所望の厚み(Pz)のウエーハWを生成することができる。以上により、剥離工程が完了する。該剥離工程を実施した後は、再びインゴット50に対して、上記した該破壊層形成工程と該剥離工程を実施することで、繰り返しウエーハWを生成することが可能である。
【0044】
上記した実施形態によれば、インゴット50の上面52にリング状に形成されたパルスレーザー光線PL2を照射して衝撃波PL3を生成し、インゴット50の内部で伝播させて所定の位置P1で集束させて破壊層Sを生成することができ、インゴット50の素材に応じた透過性を有する波長のレーザー光線を選択することなく、インゴット50の種類を問わず効率よくウエーハWを生成することができる。
【0045】
上記したように、剥離工程を実施した場合、ウエーハWが剥離された後のインゴット50の剥離面、すなわち、新たな上面52は剥離層Sの影響により粗面となっている。よって、インゴット50から繰り返しウエーハWを生成する場合には、ウエーハWが剥離された後のインゴット50の新たな上面52を平坦化する平坦化工程を実施することが好ましい。
【0046】
インゴット50の上面52を平坦化する平坦化工程を実施するためには、上面52が剥離面となったインゴット50を、別途に用意された研削装置に搬送して上面52を研削して平坦化するか、又は、上記したウエーハ生成装置2に研削手段を設置して、インゴット50の上面52を研削する。本実施形態においては、ウエーハ生成装置2の基台3上に、図5に示す研削手段7(一部のみを示している)を設置してインゴット50の上面52を平坦化する平坦化加工を実施する。
【0047】
研削手段7は、図示を省略するサーボモータを備え、該サーボモータによって駆動されるスピンドル7aと、スピンドル7aの下端に配設されるホイールマウント7bと、ホイールマウント7bに固定される研削ホイール7cと、研削ホイール7cの下面に環状に配設された複数の研削砥石7dと、を備え、図示しない昇降手段によって、研削送り方向(上下方向)における研削手段7の位置が精密に制御される。
【0048】
平坦化工程を実施する際には、インゴット50が保持されたチャックテーブル22を、図5に示すように、上記した研削手段7の下方に位置付ける。次いで、チャックテーブル22を、図示しない回転駆動手段を作動させることにより矢印で示す方向に、例えば300rpmの回転速度で回転させると共に、研削ホイール7cを、該サーボモータを作動させることにより、例えば6000rpmの回転速度で回転させる。次いで、該昇降手段を作動させることにより、研削手段7を下降させて、剥離面であるインゴット50の上面52に研削砥石7dを接触させる。インゴット50の上面52に研削砥石7dを接触させた後は、所定の研削送り速度(例えば0.1μm/秒)で研削手段7を下降させる。これにより、インゴット50の上面52が研削砥石7dによって平坦化される。このようにしてインゴット50の上面52が平坦化された後は、再び、上記した破壊層形成工程、剥離工程、及び平坦化工程を実施する。このようなウエーハ生成方法を繰り返すことで、インゴット50から複数のウエーハWが効率よく生成される。なお、上記した実施形態では、平坦化工程を研削手段7を使用して実施する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、研磨パッドを使用した研磨手段によって平坦化工程を実施してもよい。
【0049】
6乃至図8を参照しながら、本発明のウエーハ生成方法に関連するウエーハ生成装置の第一、第二の参考例について説明する。
【0050】
図6には、第一、第二の参考例に係る実施形態のウエーハ生成装置2Bの全体斜視図が示されている。ウエーハ生成装置2Bは、図1、及び図2を参照しながら説明したウエーハ生成装置2Aにおいて、破壊層形成手段として配設された第一のレーザー光線照射手段6に替えて、破壊層形成手段として機能する他のレーザー光線照射手段8A~8Cを配設した点で相違している。なお、以下の説明において、図1図2に示す第一の実施形態と同一の番号が付された同一の構成についての詳細な説明は適宜省略する。
【0051】
図6に示すウエーハ生成装置2bにおいては、ウエーハ生成装置2B内、又は近傍に、被加工物であるインゴット50に液体L(例えば水)を供給するための液体供給手段90が配設される。液体供給手段90は、液体Lを貯留するタンクと、該タンクから液体Lを外部に吐出するための圧送ポンプとを備えている(いずれも図示は省略する)。液体供給手段90から吐出された液体Lは、配管92を介して、液体供給手段90と共に本実施形態の破壊層形成手段を構成するレーザー光線照射手段8A~8Cの集光器84a~84cに供給される。レーザー光線照射手段8A~8Cの光学系は、基台3上に配設された枠体36の水平壁部36bの内部に収容されている。図7を参照しながら、第参考例、及び第二のレーザー光線照射手段8Aの光学系について説明する。
【0052】
図7に示すように、第二のレーザー光線照射手段8Aは、広帯域波長のパルスレーザー光線PL0を発振する発振器81と、パルスレーザー光線PL0を平行光とするコリメーションレンズ82と、コリメーションレンズ82によって平行光にされたパルスレーザー光線PL0の光路を必要に応じて変更する反射ミラー83と、該反射ミラー83によって反射されたパルスレーザー光線PL0が導入される第二の集光器84aとを備えている。なお、図示は省略するが、該光学系には、発振器81から発振されるパルスレーザー光線PL0の出力を調整するためのアッテネータ等も含まれる。
【0053】
第二の集光器84aの内部には、図7に示すように、パルスレーザー光線PL0が導入される側(図中上方側)からみて、集光レンズ841a、ガラス板842a、レーザー光線導入部843a、楕円ドーム85aが配設されている。楕円ドーム85aは、縦断面が楕円で構成される楕円体の一部により形成され、楕円ドーム85aとレーザー光線導入部843aとは、開口部845aを介して接続されている。レーザー光線導入部843aには、液体供給手段90と共に液体層形成手段を構成する液体導入口844aが側方から接続されている。ガラス板842aは、パルスレーザー光線PL0を透過しつつ、第二の集光器84aの内部を上下に仕切っている。
【0054】
第二の集光器84a内に形成された楕円ドーム85aは、上記したように、楕円体の一部により構成されている。該楕円体を形成する楕円は、該楕円の基準となる第一の焦点P2、第二の焦点P3により規定される。第一の焦点P2は、楕円ドーム85a内のレーザー光線導入部843a側にあり。また、第二の焦点P3は、第二の集光器84aの下端86aよりも下方側であって、楕円ドーム85aの外側にある。
【0055】
上記した第二のレーザー光線照射手段8Aを使用して、本実施形態のウエーハ生成方法を実施するに際しては、まず、上記した保持工程を実施することにより、チャックテーブル22上にインゴット50を保持する。次いで、チャックテーブル22に保持されたインゴット50を撮像手段12の直下に移動させて、撮像手段12によって、インゴット50を撮像し、アライメント工程を実施する。該アライメント工程を実施したならば、図示しない制御手段によって、インゴット50の画像から把握される第一のオリエンテーションフラット50a及び第二のオリエンテーションフラット50bに基づいて、インゴット50の向きを検出し、移動手段5によって、チャックテーブル22を回転、移動させて、インゴット50を所定の向きに調整すると共に、インゴット50の上面52の所定の領域を、第二のレーザー光線照射手段8Aの第二の集光器84aの下方に位置付ける。
【0056】
インゴット50を、第二のレーザー光線照射手段8Aの第二の集光器84aの下方に位置付けたならば、図示しない高さ調整手段を作動して、第二のレーザー光線照射手段8Aの高さを調整し、上記した楕円ドーム85aの第二の焦点P3を、インゴット50の内部であって、インゴット50の上面52から生成すべきウエーハWの厚みに相当する所定の深さの位置(Pz)に位置付ける。
【0057】
上記したように、インゴット50を、第二の集光器84aの下方に位置付け、第二のレーザー光線照射手段8Aの高さを調整したならば、液体供給手段90を作動して、配管92を介して液体導入口844aから液体Lを導入する。液体導入口844aから導入された液体Lは、レーザー光線導入部843aを介して楕円ドーム85aに導入され、第二の集光器84aの下端86aと、インゴット50の上面52との隙間から外部に排出される。このようにして、第二の集光器84aに導入された液体Lによって、インゴット50上には液体の層851aが形成され、液体の層851aに楕円ドーム85aが浸漬された状態となる。
【0058】
上記したように、楕円ドーム85aを形成する楕円の第二の焦点P3を、インゴット50の上面52からPz下方に位置付け、移動手段5によってX軸方向にインゴット50を移動させながら、第二のレーザー光線照射手段8Aを作動して、パルスレーザー光線PL0を照射する。ここで、図7に示すように、集光レンズ841aは、パルスレーザー光線PL0を液体の層851a内にある第一の焦点P2に集光するように設定されている。そして、レーザー光線PL0が第一の焦点P2に集光されると、第一の焦点P2において衝撃波PL3aを生成する。第一の焦点P2において生成された衝撃波PL3aは、液体の層851aを構成する液体Lを伝播して、楕円ドーム85aの内壁の各所で反射する。楕円ドーム85aの内壁の各所にて反射した衝撃波PL3aは、インゴット50の上面52に達し、さらに、インゴット50内を伝播して、インゴット50の上面52からZ軸方向の深さPzに位置付けられた第二の焦点P3を集束点として集束されて、該集束点に破壊層Sを形成する。
【0059】
上記したように、所定の深さ(Pz)の位置のX軸方向に破壊層Sを形成したならば、移動手段5を作動して、チャックテーブル22をY軸方向において適宜割出し送りして、第二の焦点P3を先に生成した破壊層Sに隣接した位置に位置付け、チャックテーブル22をX軸方向に沿って移動してさらに破壊層Sを形成する。このような加工を繰り返すことにより、インゴット50の全域において、インゴット50の上面52からPzの深さに破壊層Sを形成する(破壊層形成工程)。
【0060】
なお、本実施形態における破壊層形成工程において、第二のレーザー光線照射手段8Aによって実施されるレーザー照射条件は、例えば、以下のように設定される。
波長 :355nm~1064nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :10W~100W
パルス幅 :100ps以下
【0061】
上記のように破壊層形成工程が実施され、インゴット50全域に破壊層Sを形成したならば、上記した第一の実施形態において実施したのと同様な剥離工程を実施し、破壊層Sを界面としてインゴット50からウエーハWを剥離する。該剥離工程を実施したならば、必要に応じて、インゴット50の剥離面を平坦化する平坦化工程を実施する。
【0062】
上記した実施形態によっても、インゴット50に衝撃波PL3aを生成してインゴット50の内部で伝播させて、インゴット50の全域において所定の深さ位置に設定された集束点(第二の焦点P3)で集束させて破壊層Sを生成することができ、インゴット50の種類に応じた透過性を有する波長のレーザー光線を選択することなく、インゴット50の種類を問わず効率よくウエーハWを生成することができる。
【0063】
らに、図8を参照しながら、第参考例、及び第参考例の変形例について説明する。
【0064】
図8(a)に示す第参考例は、図6、及び図7に基づいて説明した第参考例に対し、第二のレーザー光線照射手段8Aの第二の集光器84aに替えて、第三の集光器84bを配設した点のみが相違している。よって、図8(a)では、第三の集光器84bの構成のみを示し、その他の構成については省略する。
【0065】
図8(a)に示すように、第三の集光器84bは、その内部に、上方からみて、集光レンズ841bと、ガラス板842bとを備え、ガラス板842bによって区切られた下部空間852に、本発明の衝撃波生成手段として機能する中空の半球面からなるドーム部材85bが配設されている。下部空間852の側方には、液体供給手段90と共に液体層形成手段を構成する液体導入口844bが形成され、液体導入口844bには上記した液体供給手段90から液体Lを導く配管92が接続されている。上記したドーム部材85bの頂点には、開口穴Hが形成されており、ドーム部材85bの上方側と、中空の内部とを連通している。なお、ドーム部材85bは、例えば、パルスレーザー光線PL0を透過しない部材で形成され、金属、ガラス等で形成される。このように形成された第三の集光器84bの作用について、以下に説明する。
【0066】
上記した第三のレーザー光線照射手段8Bを使用して、本実施形態のウエーハ生成方法を実施するに際しては、上記した保持工程、アライメント工程を実施した後、移動手段5によって、チャックテーブル22を回転、移動させて、インゴット50を所定の向きに調整すると共に、インゴット50の上面52の所定の領域を、第三のレーザー光線照射手段8Bの第三の集光器84bの下方に位置付ける。インゴット50を、第三のレーザー光線照射手段8Bの第三の集光器84bの下方に位置付ける際には、図示しない高さ調整手段を作動して、第三のレーザー光線照射手段8Bの高さを所定の高さに調整する。該所定の高さについては、後述する。
【0067】
上記したように、インゴット50を、第三の集光器84bの下方に位置付け、第三のレーザー光線照射手段8Bを所定の高さに位置付けたならば、液体供給手段90を作動して、液体Lを配管92、液体導入口844bを介して下部空間852に導入する。液体導入口844bから導入された液体Lは、第三の集光器84b内の下部空間852を満たし、ドーム部材85bの頂点に形成された開口穴Hを介してドーム部材85bの内側の中空領域に導入され液体の層851bを形成する。液体の層851bを形成した液体Lは、第三の集光器84bの下端86bと、インゴット50の上面52との隙間から外部に排出される。このようにして、第三の集光器84bの下部空間852に導入された液体Lによって、インゴット50上に液体の層851bが形成され、液体の層851bにドーム部材85bが浸漬された状態となる。
【0068】
上記したドーム部材85bを備えた第三の集光器84bを含む第三のレーザー光線照射手段8Bを、インゴット50の上面52に対して所定の高さに位置付けたならば、移動手段5によってX軸方向にインゴット50を移動させながら、第三のレーザー光線照射手段8Bを作動して、例えば、上記した第参考例と同様のレーザー照射条件によりパルスレーザー光線PL0を照射する。パルスレーザー光線PL0は、図8(a)に示すように、第三の集光器84bの集光レンズ841bに導かれて集光され、ガラス板842bを介してドーム部材85bに照射される。ドーム部材85bは、上記したようにパルスレーザー光線PL0を透過しないが、振動を伝達する硬質の部材(金属、ガラス等)で形成されており、パルスレーザー光線PL0がドーム部材85bの上面に照射されることで衝撃波PL3bが液体の層851bに生成される。衝撃波PL3bがドーム部材85bの内部に形成された液体の層851bで伝播してインゴット50の上面52に達し、さらにインゴット50において伝播する。本実施形態においては、上記したように、第三のレーザー光線照射手段8Bの高さを所定の高さに調整するが、この所定の高さとは、ドーム部材85bによって生成された衝撃波PL3bが、生成すべきウエーハWの厚み(Pz)となる所定の深さの位置P4を集束点として集束させられ、破壊層Sを形成する高さである。
【0069】
上記したように、図8(a)に示す第三のレーザー光線照射手段8Bによっても、インゴット50の上面52から生成すべきウエーハWの厚みPzに相当する深さの位置に破壊層Sを形成することができる。
【0070】
さらに、図8(b)を参照しながら、第参考例に配設された第三のレーザー光線照射手段8Bの変形例について説明する。図8(b)に示す変形例を構成するレーザー光線照射手段8Cは、図8(a)に基づいて説明した第三のレーザー光線照射手段8Bの第三の集光器84bに替えて、第四の集光器84cが配設された点のみが相違している。よって、図8(b)では、第四の集光器84cのみを示し、その他の構成については省略する。
【0071】
図8(b)に示すように、第四の集光器84cは、その内部に、上方からみて、集光レンズ841cと、本発明の衝撃波生成手段として機能する中実の半球体85cが配設されている。第四の集光器84cを構成する壁部88には、液体供給手段90と共に液体層形成手段を構成する液体導入口844cが形成され、液体導入口844cから導かれる液体Lを第四の集光器84cの下端86c側に導く通路89が壁部88の内部に形成されている。液体導入口844cには、液体供給手段90から液体Lを導く配管92が接続されている。半球体85cは、第四の集光器84cの下方側に配置され、半球体85cの球面85dが、集光レンズ841cが配設された上方側に向けられ、平坦面85eが、第四の集光器84cの下端86cと面一になるように配設される。半球体85cは、パルスレーザー光線PL0を透過しない硬質の部材で形成され、例えば、金属、ガラス等で形成される。第四の集光器84cの下端86c側は、半球体85cによって閉塞されている。このように形成された第四の集光器84cの作用について、以下に説明する。
【0072】
上記した第四の集光器84cを使用して、本実施形態のウエーハ生成方法を実施するに際しては、上記した保持工程、アライメント工程を実施し、移動手段5によって、チャックテーブル22を移動、回転させて、インゴット50を所定の向きに調整すると共に、インゴット50の上面52の所定の領域を、第四の集光器84cの下方に位置付ける。上記した第参考例と同様に、インゴット50を、第四の集光器84cの下方に位置付ける際には、図示しない高さ調整手段を作動して、レーザー光線照射手段8Cの高さを所定の高さに調整する。
【0073】
上記したように、インゴット50を、第四の集光器84cの下方に位置付け、第四の集光器84cを所定の高さに位置付けたならば、液体供給手段90を作動して、配管92を介して液体導入口844cから液体Lを導入する。液体導入口844cから導入された液体Lは、第四の集光器84cを構成する壁部88内の通路89をとおり、第四の集光器84cの下端86c側に液体Lを供給する。第四の集光器84cの下端86c側に供給された液体Lによって、インゴット50の上面52と半球体85cの平坦面85eとによって形成される空間が満たされ、液体の層851cが形成される。このようにして、液体の層851cに半球体85cが浸漬した状態となる。
【0074】
上記した半球体85cを含む第四の集光器84cを、インゴット50の上面52に対して所定の高さに位置付け、液体の層851cを形成したならば、移動手段5によってX軸方向にインゴット50を移動させながら、レーザー光線照射手段8Cを作動して、上記した第参考例と同様のレーザー照射条件によりパルスレーザー光線PL0を照射する。パルスレーザー光線PL0は、図8(b)に示すように、第四の集光器84cの集光レンズ841cに導かれて集光され、半球体85cの球面85dに照射される。半球体85cは、上記したようにパルスレーザー光線PL0を透過しないが、振動を伝達する硬質の部材(金属、ガラス等)で形成されており、パルスレーザー光線PL0が半球体85cの球面85dに照射されることで衝撃波PL3cを生成する。
【0075】
半球体85cにて生成された衝撃波PL3cは、半球体85c内を伝播して平坦面85dに至り、液体の層851cに衝撃波PL3cを生成する。そして、衝撃波PL3cは、インゴット50の上面52に達し、さらに、インゴット50を伝播する衝撃波PL3cを形成する。この際、インゴット50を伝播する衝撃波PL3cは、半球体85cの上面を形成する球面85dの作用によって、インゴット50の内部の所定の深さの位置P5に集束させられ、破壊層Sを形成する。本実施形態においては、上記したように、インゴット50をレーザー光線照射手段8Cの第四の集光器84cの下方に位置付ける際に、レーザー光線照射手段8Cの高さを所定の高さに調整するが、この所定の高さとは、半球体85cによって生成された衝撃波PL3cが、生成すべきウエーハWの厚み(Pz)となる所定の深さの位置P5を集束点として集束させられる高さである。
【0076】
上記した図8(b)に示す第三のレーザー光線照射手段の変形例によっても、インゴット50の上面52から生成すべきウエーハWの厚みPzに相当する深さの位置P5に破壊層Sを形成することができ、インゴット50の種類に応じた透過性を有する波長のレーザー光線を選択する必要がなく、インゴット50の種類を問わず効率よくウエーハWを生成することができる。
【0077】
なお、上記した説明では、衝撃波生成手段として機能するドーム部材85b、半球体85cに関し、パルスレーザー光線が照射される部分の形状について、便宜上「球面」、「球体」と称したが、パルスレーザー光線によって生成される衝撃波を所望の位置に集束させるべくその表面の曲率は適宜調整されるものであり、完全な球面、球体となる形状に限定されるわけではない。
【符号の説明】
【0078】
2A、2B:ウエーハ生成装置
3:基台
4:保持手段
18:X軸方向可動板
20:Y軸方向可動板
22:チャックテーブル
5:移動手段
24:X軸方向移動手段
26:Y軸方向移動手段
6:第一のレーザー光線照射手段
61:発振器
62:波長別遅延手段
64:リング生成手段
641、642:アキシコンレンズ
643:回折格子
67:割出スキャナー
68:走査スキャナー
69:第一の集光器
691:fθレンズ
7:研削手段
7c:研削ホイール
7d:研削砥石
8A:第二のレーザー光線照射手段
81:発振器
84a:第二の集光器
841a:集光レンズ
842a:ガラス板
843a:レーザー光線導入部
844a:液体導入口
845a:開口部
85a:楕円ドーム
851a:液体の層
P2:第一の焦点
P3:第二の焦点
87:開放部
8B:第三のレーザー光線照射手段
84b:第三の集光器
841b:集光レンズ
842b:ガラス板
85b:ドーム部材
851b:液体の層
852:下部空間
844b:液体導入口
8C:レーザー光線照射手段
84c:第四の集光器
844c:液体導入口
85c:半球体
85d:球面
85e:平坦面
851c:液体の層
12:撮像手段
14:表示手段
16:剥離手段
16a:ケーシング
16b:アーム
16c:モータ
16d:吸着片
36:枠体
36a:垂直壁部
36b:水平壁部
50:インゴット
52:第一の面(上面)
54:第二の面
67:割出スキャナー
68:走査スキャナー
90:液体供給手段
92:配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8