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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ウエーハ生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231225BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/68 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020073430
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021170601
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
(72)【発明者】
【氏名】山本 涼兵
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106458(JP,A)
【文献】特開平06-183522(JP,A)
【文献】特開2002-347911(JP,A)
【文献】特開2007-150369(JP,A)
【文献】特開平04-159902(JP,A)
【文献】特開2011-144000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、
インゴットを収容するインゴット収容部とインゴットから生成されたウエーハを収容するウエーハ収容部とを備えた搬送トレーと、該搬送トレーを各加工機に搬送するベルトコンベアーユニットと、ウエーハを収容するカセットが該搬送トレーに対応して載置されるカセットラックと、該搬送トレーの該ウエーハ収容部から該カセットラックに載置された該カセットにウエーハを移し替える移し替え手段と、を含み、
該搬送トレーには識別マークが施され、該搬送トレーに対応する該カセットラックまたは該カセットには該搬送トレーに施された識別マークと同じ識別マークが施されるウエーハ生成装置。
【請求項2】
該識別マークは、色彩、記号、文字、図形、模様、絵のいずれか、または組み合わせである請求項1記載のウエーハ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等のデバイスは、Si(シリコン)やAl(サファイア)等を素材としたウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。また、パワーデバイス、LED等は単結晶SiC(炭化ケイ素)を素材としたウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。デバイスが形成されたウエーハは、切削装置、レーザー加工装置によって分割予定ラインに加工が施されて個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話やパソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
デバイスが形成されるウエーハは、一般的に円柱形状のインゴットをワイヤーソーで薄く切断することにより生成される。切断されたウエーハの表面および裏面は、研磨することにより鏡面に仕上げられる(たとえば特許文献1参照)。しかし、インゴットをワイヤーソーで切断し、切断したウエーハの表面および裏面を研磨すると、インゴットの大部分(70~80%)が捨てられることになり不経済であるという問題がある。特に単結晶SiCインゴットにおいては、硬度が高くワイヤーソーでの切断が困難であり相当の時間を要するため生産性が悪いと共に、インゴットの単価が高く効率よくウエーハを生成することに課題を有している。
【0004】
そこで、単結晶SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を単結晶SiCインゴットの内部に位置づけて単結晶SiCインゴットにレーザー光線を照射して切断予定面に剥離層を形成し、剥離層が形成された切断予定面に沿って単結晶SiCインゴットからウエーハを剥離するウエーハ生成装置が提案されている(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
また、下記特許文献2に開示されているウエーハ生成装置においては、インゴットが収容された搬送トレーをベルトコンベアーユニットに常時数個(たとえば4個)載置し、ベルトコンベアーユニットでインゴットを各加工機に搬送してインゴットからウエーハを生成し、ウエーハを生成したインゴットと同じ搬送トレーにウエーハを収容し、ウエーハ搬出領域において、インゴットに紐づけられたカセットにウエーハを収容する一連の作業を効率良く実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-94221号公報
【文献】特開2019-106458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、停電またはトラブルによってウエーハ生成装置の稼働が停止し、搬送トレーをベルトコンベアーユニットから搬出等し、その後再稼働するとインゴットに紐づけられたカセットにウエーハを収容できない場合があり、インゴットとウエーハとの親子関係が不明確になるという問題がある。
【0008】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、停電またはトラブルが発生してもインゴットとウエーハとの親子関係が崩れず常に明確になるウエーハ生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために以下のウエーハ生成装置を提供する。すなわち、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、インゴットを収容するインゴット収容部とインゴットから生成されたウエーハを収容するウエーハ収容部とを備えた搬送トレーと、該搬送トレーを各加工機に搬送するベルトコンベアーユニットと、ウエーハを収容するカセットが該搬送トレーに対応して載置されるカセットラックと、該搬送トレーの該ウエーハ収容部から該カセットラックに載置された該カセットにウエーハを移し替える移し替え手段と、を含み、該搬送トレーには識別マークが施され、該搬送トレーに対応する該カセットラックまたは該カセットには該搬送トレーに施された識別マークと同じ識別マークが施されるウエーハ生成装置を本発明は提供する。
【0010】
該識別マークは、色彩、記号、文字、図形、模様、絵のいずれか、または組み合わせであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウエーハ生成装置は、インゴットを収容するインゴット収容部とインゴットから生成されたウエーハを収容するウエーハ収容部とを備えた搬送トレーと、該搬送トレーを各加工機に搬送するベルトコンベアーユニットと、ウエーハを収容するカセットが該搬送トレーに対応して載置されるカセットラックと、該搬送トレーの該ウエーハ収容部から該カセットラックに載置された該カセットにウエーハを移し替える移し替え手段と、を含み、該搬送トレーには識別マークが施され、該搬送トレーに対応する該カセットラックまたは該カセットには該搬送トレーに施された識別マークと同じ識別マークが施されるので、停電またはトラブルが発生しウエーハ生成装置の稼働が停止した場合でも、インゴットに紐づけられたカセットにウエーハを確実に収容することができ、インゴットとウエーハとの親子関係が崩れず常に明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成されたウエーハ生成装置の斜視図。
図2図1に示す搬送トレーの斜視図。
図3図1に示すウエーハ生成装置の一部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたウエーハ生成装置の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示すウエーハ生成装置2は、インゴットおよびウエーハを収容する搬送トレー4と、搬送トレー4を各加工機に搬送するベルトコンベアーユニット6と、ウエーハを収容するカセット8が搬送トレー4に対応して載置されるカセットラック10と、搬送トレー4からカセットラック10に載置されたカセット8にウエーハを移し替える移し替え手段12とを含む。
【0015】
図2を参照して説明すると、搬送トレー4は、矩形状の上壁14と、上壁14の下方に配置された矩形状の下壁16と、上壁14と下壁16とを連結する矩形状の一対の側壁18と、上壁14と下壁16と一対の側壁18とで形成されるトンネル20とを備える。
【0016】
上壁14の上面には、インゴットを収容するインゴット収容部22が形成されている。図示の実施形態のインゴット収容部22は、上壁14の上面から下方に没入した環状の第一のインゴット収容部22aと、第一のインゴット収容部22aよりも直径が小さく第一のインゴット収容部22aよりも更に下方に没入した円形の第二のインゴット収容部22bとを有する。第一のインゴット収容部22aと第二のインゴット収容部22bとは同心状に形成されている。
【0017】
第一のインゴット収容部22aの直径は比較的大径(たとえば直径6インチ)の円柱状インゴット24よりも若干(数mm程度)大きく、第一のインゴット収容部22aには比較的大径のインゴット24が収容される。第二のインゴット収容部22bの直径は比較的小径(たとえば直径4インチ)の円柱状インゴット26よりも若干大きく、第二のインゴット収容部22bには比較的小径のインゴット26が収容される。
【0018】
このように図示の実施形態のインゴット収容部22は、2種類の大きさのインゴット24、26に対応した同心状の第一・第二のインゴット収容部22a、22bを備える。なお、インゴット収容部22は、1種類の大きさのインゴットに対応した単一の円形収容凹部であってもよく、あるいは、3種類以上の大きさのインゴットに対応した同心状の複数の収容凹部を備えていてもよい。
【0019】
図2に示すとおり、下壁16の上面には、インゴットから生成されたウエーハを収容するウエーハ収容部28が形成されている。図示の実施形態のウエーハ収容部28は、下壁16の上面から下方に没入した環状の第一のウエーハ収容部28aと、第一のウエーハ収容部28aよりも直径が小さく第一のウエーハ収容部28aよりも更に下方に没入した円形の第二のウエーハ収容部28bとを有する。第一のウエーハ収容部28aと第二のウエーハ収容部28bとは同心状に形成されている。
【0020】
第一のウエーハ収容部28aの直径は比較的大径(たとえば直径6インチ)の円板状ウエーハ30よりも若干大きく、第一のウエーハ収容部28aには比較的大径のウエーハ30が収容される。第二のウエーハ収容部28bの直径は比較的小径(たとえば直径4インチ)の円板状ウエーハ32よりも若干大きく、第二のウエーハ収容部28bには比較的小径のウエーハ32が収容される。
【0021】
このように図示の実施形態のウエーハ収容部28は、2種類の大きさのウエーハ30、32に対応した同心状の第一・第二のウエーハ収容部28a、28bを備える。なお、ウエーハ収容部28は、1種類の大きさのウエーハに対応した単一の円形収容凹部であってもよく、あるいは、3種類以上の大きさのウエーハに対応した同心状の複数の収容凹部を備えていてもよい。なお、図示の実施形態とは逆に、上壁14の上面にウエーハ収容部28が形成され、下壁16の上面にインゴット収容部22が形成されていてもよい。
【0022】
図1および図2に示すとおり、搬送トレー4には識別マーク34が施されている。識別マーク34は、色彩、記号、文字、図形、模様、絵のいずれかでよく、または色彩、記号、文字、図形、模様、絵の2個以上の組み合わせでもよい。図示の実施形態では、識別マーク34として文字A、B、C、Dが搬送トレー4の側壁18の外面に施されているが、識別マーク34として、赤色、青色、緑色、黄色等の色彩が施されていてもよく、○、△、□、☆等の図形が施されていてもよく、あるいは絵が描かれていてもよい。
【0023】
図1に示すとおり、インゴット(図示の実施形態では比較的大径のインゴット24)を収容した搬送トレー4は搬送トレーラック36に収容される。図示の実施形態の搬送トレーラック36は、図1に矢印Xで示すX軸方向に貫通した4個の収容部38を有する。搬送トレーラック36においては、図1においてX軸方向手前側から収容部38に搬送トレー4を収容可能であり、かつ図1においてX軸方向奥側から収容部38内の搬送トレー4を搬出可能となっている。なお、図1に矢印Yで示すY軸方向はX軸方向に直交する方向であり、図1に矢印Zで示すZ軸方向はX軸方向およびY軸方向に直交する上下方向である。X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0024】
図1および図3を参照して、インゴットを収容した搬送トレー4が搬送される各加工機について説明する。図示の実施形態のウエーハ生成装置2は、加工機として、インゴット研削ユニット40と、レーザー照射ユニット42と、ウエーハ剥離ユニット44とを備える。
【0025】
図3に示すとおり、インゴット研削ユニット40は、インゴットを吸引保持する回転可能な保持テーブル46と、保持テーブル46に吸引保持されたインゴットの上面を研削して平坦化する研削手段48とを含む。研削手段48は、研削砥石(図示していない。)を有する回転可能な研削ホイール50を有する。そして、インゴット研削ユニット40は、インゴットを吸引保持した保持テーブル46を回転させると共に研削ホイール50を回転させながら、研削砥石をインゴットの上面に接触させることにより、インゴットの上面を研削して平坦化する。
【0026】
レーザー照射ユニット42は、インゴットを吸引保持しX軸方向に移動可能かつ回転可能な保持テーブル52と、保持テーブル52に吸引保持されたインゴットにレーザー光線を照射するレーザー照射手段54とを含む。レーザー照射手段54は、レーザー発振器(図示していない。)が発振したパルスレーザー光線を集光してインゴットに照射すると共にY軸方向に移動可能な集光器56を有する。
【0027】
レーザー照射ユニット42は、インゴットを吸引保持した保持テーブル52をX軸方向に移動させながら、あるいは集光器56をY軸方向に移動させながら、インゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけてレーザー光線をインゴットに照射することにより、インゴットの内部に強度が低下した剥離層を形成する。
【0028】
ウエーハ剥離ユニット44は、インゴットを吸引保持しX軸方向に移動可能な保持テーブル58と、保持テーブル58と協働して液体収容空間を形成する液槽体60と、保持テーブル58に吸引保持されたインゴットに超音波振動を付与すると共にインゴットから剥離したウエーハを吸引保持する超音波振動生成部材62とを含む。
【0029】
ウエーハ剥離ユニット56は、インゴットを吸引保持した保持テーブル58と液槽体60とによって形成した液体収容空間に液体を収容した後、超音波振動生成部材62を作動させてインゴットに超音波振動を付与することにより、剥離層を起点としてインゴットからウエーハを剥離する。
【0030】
図示の実施形態では、インゴット研削ユニット40とレーザー照射ユニット42とウエーハ剥離ユニット44とに搬送トレー4をベルトコンベアーユニット6が搬送するようになっている。
【0031】
ベルトコンベアーユニット6は、Y1方向に搬送トレー4を搬送する往路ベルトコンベアー64と、Y2方向(Y1の反対方向)に搬送トレー4を搬送する復路ベルトコンベアー66と、往路ベルトコンベアー64の終点から復路ベルトコンベアー66の始点に搬送トレー4を搬送すると共に往路ベルトコンベアー64で搬送されている搬送トレー4をウエーハ剥離ユニット44に対面する位置で停止させる第一の搬送手段68と、復路ベルトコンベアー66の終点から往路ベルトコンベアー64の始点に搬送トレー4を搬送する第二の搬送手段70とを含む。
【0032】
また、ベルトコンベアーユニット6は、往路ベルトコンベアー64で搬送されている搬送トレー4をインゴット研削ユニット40に対面する位置で停止させる昇降可能な第一の搬送トレーストッパー72と、往路ベルトコンベアー64で搬送されている搬送トレー4をレーザー照射ユニット42に対面する位置で停止させる昇降可能な第二の搬送トレーストッパー74とを含む。
【0033】
さらに、ベルトコンベアーユニット6は、第一の搬送トレーストッパー72で停止された搬送トレー4とインゴット研削ユニット40との間でインゴットを移動させる第一の移動手段76と、第二の搬送トレーストッパー74で停止された搬送トレー4とレーザー照射ユニット42との間でインゴットを移動させる第二の移動手段78と、第一の搬送手段68で停止された搬送トレー4とウエーハ剥離ユニット44との間でインゴットを移動させると共にインゴットから剥離されたウエーハをウエーハ剥離ユニット44から搬送トレー4に移動させる第三の移動手段80とを含む。
【0034】
共通の構成でよい第一・第二・第三の移動手段76、78、80のそれぞれは、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能な多関節アーム82と、多関節アーム82の先端に上下反転自在に装着された吸着片84とを含む。吸着片84の片面には、吸引手段(図示していない。)に接続された複数の吸引孔(図示していない。)が形成されている。
【0035】
図1に示すとおり、図示の実施形態のカセットラック10は、Y軸方向に貫通した16個の収容部86を有する。各収容部86には、インゴットから剥離されたウエーハを収容するカセット8が収容される。カセットラック10においては、図1においてY軸方向手前側から収容部86にカセット8を収容可能であり、かつ図1においてY軸方向奥側から収容部86内のカセット8にウエーハを収容可能となっている。
【0036】
搬送トレー4に対応するカセットラック10には搬送トレー4に施された識別マーク34と同じ識別マーク34’が施され、または搬送トレー4に対応するカセット8には搬送トレー4に施された識別マーク34と同じ識別マーク34”が施されているのが重要である。図示の実施形態では、搬送トレー4の識別マーク34と同じ文字A、B、C、Dが識別マーク34’としてカセットラック10の収容部86に施されていると共に、搬送トレー4の識別マーク34と同じ文字A、B、C、Dが識別マーク34”としてカセット8の外面に施されている。カセットラック10の収容部86には、各収容部86の識別マーク34’と同じ識別マーク34”が施されているカセット8が載置される。なお、図1においては、カセットラック10の最上段の収容部86のみに識別マーク34’が施されているが、他の収容部86にも識別マーク34’が施されていてもよい。
【0037】
図3を参照して説明すると、移し替え手段12は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能な多関節アーム88と、多関節アーム88の先端に上下反転自在に装着された吸着片90とを含む。吸着片90の片面には、吸引手段(図示していない。)に接続された複数の吸引孔(図示していない。)が形成されている。移し替え手段12は、搬送トレーラック36内の搬送トレー4をベルトコンベアーユニット6まで搬送すると共に、搬送トレー4のウエーハ収容部28からカセットラック10に載置されたカセット8にウエーハを移し替える。
【0038】
ウエーハ生成装置2によってインゴットからウエーハを生成する際は、図1に示すとおり、まず、1個以上のインゴット(図示の実施形態では4個の大径のインゴット24)を準備する。次いで、それぞれのインゴット24を搬送トレー4の第一のインゴット収容部22aに収容し、インゴット24を収容した搬送トレー4を搬送トレーラック36に収容する。
【0039】
次いで、搬送トレーラック36からレーザー照射ユニット42にインゴット24を搬送する第一の搬送工程を実施する。通常、インゴットは、後述の剥離層形成工程におけるレーザー光線の入射を妨げない程度に端面が平坦化されているため、図示の実施形態では、第一の搬送工程において搬送トレーラック36からレーザー照射ユニット42にインゴット24を搬送する例を説明するが、インゴット24の端面が剥離層形成工程におけるレーザー光線の入射を妨げない程度に平坦化されていない場合には、第一の搬送工程において搬送トレーラック36からインゴット研削ユニット40にインゴット24を搬送してもよい。
【0040】
第一の搬送工程では、まず、移し替え手段12の多関節アーム88を駆動させ、吸引孔を上に向けた吸着片90を搬送トレー4のトンネル20に挿入する。次いで、トンネル20内において吸着片90を若干上昇させて搬送トレー4の上壁14の下面を吸着片90で吸引保持する。次いで、吸着片90で吸引保持した搬送トレー4を搬送トレーラック36から往路ベルトコンベアー64に搬送する。
【0041】
搬送トレー4を往路ベルトコンベアー64に載せた後、レーザー照射ユニット42に対面する位置まで往路ベルトコンベアー64でY1方向に搬送トレー4を搬送する。この際には、第一の搬送トレーストッパー72を下降させると共に、第二の搬送トレーストッパー74を上昇させることにより、レーザー照射ユニット42に対面する位置で搬送トレー4を停止させる。次いで、第二の移動手段78の多関節アーム82を駆動させ、搬送トレー4上のインゴット24を吸着片84で吸引保持する。次いで、吸着片84で吸引保持したインゴット24を搬送トレー4からレーザー照射ユニット42の保持テーブル52に移動させる。
【0042】
第一の搬送工程を実施した後、保持テーブル52でインゴット24を吸引保持すると共に、保持テーブル52で吸引保持したインゴット24の上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、インゴット24に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけて、レーザー光線をインゴット24に照射し剥離層を形成する剥離層形成工程をレーザー照射ユニット42において実施する。
【0043】
剥離層形成工程を実施した後、剥離層が形成されたインゴット24をレーザー照射ユニット42からウエーハ剥離ユニット44に搬送する第二の搬送工程を実施する。
【0044】
第二の搬送工程では、まず、第二の移動手段78の多関節アーム82を駆動させ、保持テーブル52上のインゴット24を吸着片84で吸引保持すると共に、保持テーブル52の吸引力を解除する。次いで、吸着片84で吸引保持したインゴット24を保持テーブル52から搬送トレー4の第一のインゴット収容部22aに移動させる。
【0045】
次いで、ウエーハ剥離ユニット44に対面する位置まで往路ベルトコンベアー64でY1方向に搬送トレー4を搬送する。この際には、第一の搬送手段68によって搬送トレー4をウエーハ剥離ユニット44に対面する位置で停止させる。次いで、第三の移動手段80の多関節アーム82を駆動させ、搬送トレー4上のインゴット24を吸着片84で吸引保持する。次いで、吸着片84で吸引保持したインゴット24を搬送トレー4からウエーハ剥離ユニット44の保持テーブル58に移動させる。
【0046】
第二の搬送工程を実施した後、剥離層が形成されたインゴット24を保持テーブル58で吸引保持すると共に、保持テーブル58で吸引保持したインゴット24の上面を保持し剥離層を起点としてインゴット24からウエーハ30を剥離するウエーハ剥離工程をウエーハ剥離ユニット44において実施する。
【0047】
ウエーハ剥離工程を実施した後、インゴット24から剥離されたウエーハ30(図2参照。)をウエーハ剥離ユニット44からカセットラック10のカセット8に搬送すると共に、ウエーハ30が剥離されたインゴット24をウエーハ剥離ユニット44からインゴット研削ユニット40に搬送する第三の搬送工程を実施する。
【0048】
第三の搬送工程では、まず、第三の移動手段80の多関節アーム82を駆動させ、インゴット24から剥離されたウエーハ30を吸着片84で吸引保持する。次いで、吸着片84で吸引保持したウエーハ30をウエーハ剥離ユニット44から搬送トレー4の第一のウエーハ収容部28aに移動させる。
【0049】
次いで、第三の移動手段80の多関節アーム82を駆動させ、保持テーブル58上のインゴット24を吸着片84で吸引保持すると共に、保持テーブル58の吸引力を解除する。次いで、吸着片84で吸引保持したインゴット24を保持テーブル58から搬送トレー4の第一のインゴット収容部22aに移動させる。
【0050】
次いで、インゴット24およびウエーハ30を収容した搬送トレー4を第一の搬送手段68によって往路ベルトコンベアー64から復路ベルトコンベアー66に搬送する。次いで、復路ベルトコンベアー66によって搬送トレー4をY2方向に搬送して第二の搬送手段70に搬送トレー4を受け渡す。次いで、第二の搬送手段70によって往路ベルトコンベアー64に向かって搬送トレー4を搬送する。
【0051】
第二の搬送手段70から往路ベルトコンベアー64に搬送トレー4が受け渡される前に第二の搬送手段70を一旦停止させる。次いで、移し替え手段12の多関節アーム88を駆動させ、第二の搬送手段70上の搬送トレー4に収容されたウエーハ30を吸着片90で吸引保持する。そして、吸着片90で吸引保持したウエーハ30を搬送トレー4から搬出して、カセットラック10のカセット8内にウエーハ30を移し替える。この際は、搬送トレー4の識別マーク34と同じ識別マーク34”が施されたカセット8にウエーハ30を移し替える。
【0052】
次いで、第二の搬送手段70を作動させ、第二の搬送手段70から往路ベルトコンベアー64に搬送トレー4を受け渡した後、インゴット研削ユニット40に対面する位置まで往路ベルトコンベアー64でY1方向に搬送トレー4を搬送する。この際には、第一の搬送トレーストッパー72を上昇させることにより、インゴット研削ユニット40に対面する位置で搬送トレー4を停止させる。次いで、第一の移動手段76の多関節アーム82を駆動させ、搬送トレー4上のインゴット24を吸着片84で吸引保持する。次いで、吸着片84で吸引保持したインゴット24を搬送トレー4からインゴット研削ユニット40の保持テーブル46に移動させる。
【0053】
第三の搬送工程を実施した後、ウエーハ30が剥離されたインゴット24を保持テーブル46で吸引保持すると共に、保持テーブル46で吸引保持したインゴット24の上面(剥離面)を研削して平坦化するインゴット研削工程をインゴット研削ユニット40において実施する。
【0054】
インゴット研削工程を実施した後、上面が平坦化されたインゴット24をインゴット研削ユニット40からレーザー照射ユニット42に搬送する第四の搬送工程を実施する。
【0055】
第四の搬送工程では、まず、第一の移動手段76の多関節アーム82を駆動させ、保持テーブル46上のインゴット24を吸着片84で吸引保持すると共に、保持テーブル46の吸引力を解除する。次いで、吸着片84で吸引保持したインゴット24を保持テーブル46から搬送トレー4の第一のインゴット収容部22aに移動させる。
【0056】
次いで、レーザー照射ユニット42に対面する位置まで往路ベルトコンベアー64でY1方向に搬送トレー4を搬送する。次いで、第二の移動手段78の多関節アーム82を駆動させ、搬送トレー4上のインゴット24を吸着片84で吸引保持する。次いで、吸着片84で吸引保持したインゴット24を搬送トレー4からレーザー照射ユニット42の保持テーブル52に移動させる。
【0057】
第四の搬送工程を実施した後、上述の剥離層形成工程をレーザー照射ユニット42において実施する。そして、剥離層形成工程と、ウエーハ剥離工程と、インゴット研削工程と、第二から第四までの搬送工程とを繰り返し実施することにより、インゴット24から生成可能な数量のウエーハ30を生成し、搬送トレー4に施された識別マーク34と同じ識別マーク34”が施されたカセット8にウエーハ30を収容する。
【0058】
図示の実施形態では、ウエーハ生成装置2で実施する各工程を1個のインゴット24に着目して説明したが、搬送トレーラック36からレーザー照射ユニット42にインゴット24を搬送する第一の搬送工程を実施した後、適宜の間隔をおいて、第一の搬送工程を繰り返し実施すると共に、剥離層形成工程と、ウエーハ剥離工程と、インゴット研削工程と、第二から第四までの搬送工程とを並行して複数のインゴット24に対して繰り返し実施することにより、複数のインゴット24から生成可能な数量のウエーハ30を生成することができる。
【0059】
また、ウエーハ生成装置2では、搬送トレー4に識別マーク34が施され、搬送トレー4に対応するカセットラック10またはカセット8に搬送トレー4の識別マーク34と同じ識別マーク34’、34”が施されるので、停電またはトラブルが発生しウエーハ生成装置2の稼働が停止した場合でも、インゴット24に紐づけられたカセット8にウエーハ30を確実に収容することができ、インゴット24とウエーハ30との親子関係が崩れず常に明確になる。
【符号の説明】
【0060】
2:ウエーハ生成装置
4:搬送トレー
6:ベルトコンベアーユニット
8:カセット
10:カセットラック
12:移し替え手段
22:インゴット収容部
22a:第一のインゴット収容部
22b:第二のインゴット収容部
28:ウエーハ収容部
28a:第一のウエーハ収容部
28b:第二のウエーハ収容部
34:搬送トレーの識別マーク
34’:カセットラックの識別マーク
34”:カセットの識別マーク
図1
図2
図3