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特許7408545注射デバイスのプランジャストッパ内への超音波センサの組み込み
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】注射デバイスのプランジャストッパ内への超音波センサの組み込み
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20231225BHJP
   A61M 5/168 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
A61M5/315 510
A61M5/168 514Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020526326
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2018080886
(87)【国際公開番号】W WO2019096720
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】17306574.9
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・キューン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー・ハーメン
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0312445(US,A1)
【文献】特表2013-500793(JP,A)
【文献】国際公開第2017/011599(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175256(WO,A1)
【文献】特開2016-052188(JP,A)
【文献】特開平08-206114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイス(102)であって:
薬剤リザーバ(103)と;
環状オレフィンコポリマー(COC)または環状オレフィンポリマー(COP)のうちの少なくとも1つから作られた剛性ハウジング(125)と、各超音波プローブが剛性ハウジング(125)内に埋め込まれ、個々の周波数の発信超音波信号を剛性ハウジング(125)を通って該剛性ハウジング(125)の長手方向(202)に沿って薬剤リザーバ(103)内へと送信し、発信超音波信号の少なくとも薬剤リザーバ(103)の遠位端からの反射を含む反射によって生成される超音波信号を受信するように構成された多数の超音波プローブ(122)、ここで、該発信超音波信号の周波数は、リザーバの長さ、リザーバ内の薬剤の予め測定された体積または薬剤の予測された体積の1つまたはそれ以上に対応する周波数を発信するように構成された超音波プローブを使用することによって調整可能である、とを含む、ストッパ(105、200a、200b、200c)と;
該超音波プローブ(122)に電子的に接続され注射デバイスデータを生成するように超音波信号を処理するように構成された、制御構成要素(124a)と;
該制御構成要素(124a)に電子的に接続され外部計算デバイス(104)に注射デバイスデータを送信するように構成された、アンテナ(124c)と
を含む、前記注射デバイス。
【請求項2】
発信超音波信号は、約2MHz~約12MHzの範囲内の周波数である、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項3】
少なくとも1つの超音波プローブ(122)は、ストッパ(105、200a、200b、200c)の閉端(204)の内壁内に埋め込まれている、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項4】
注射デバイスデータは、カートリッジなどの薬剤リザーバ(103)内の薬剤の量に関連するデータを含む、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項5】
少なくとも1つの超音波プローブ(122)と薬剤リザーバ(103)との間の剛性ハウジング(125)の部分は、約0.1mm~約4mmの厚さを有する、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項6】
薬剤注射システム(100)であって:
請求項1の注射デバイス(102)と;
注射デバイスデータを受信および処理し;処理した注射デバイスデータに関する情報を表示するように構成された外部計算デバイス(104)と
を含む、前記薬剤注射システム。
【請求項7】
外部計算デバイス(104)は、携帯デバイス、スマートウォッチ、タブレットおよびラップトップのうちの1つを含む、請求項6に記載の薬剤注射システム(100)。
【請求項8】
少なくとも1つの超音波プローブ(122)は、ストッパ(105、200a、200b、200c)の閉端(204)の内壁に埋め込まれている、請求項6に記載の薬剤注射システム(100)。
【請求項9】
少なくとも1つの超音波プローブ(122)および制御構成要素(124a)にエネルギーを提供するように構成されたエネルギー源(123)を含む、請求項6に記載の薬剤注射システム(100)。
【請求項10】
注射デバイスデータは、カートリッジなどの薬剤リザーバ(103)内の薬剤の量に関連するデータを含む、請求項6に記載の薬剤注射システム(100)。
【請求項11】
注射デバイス(102)内の薬剤の量を検出する方法であって:
注射デバイス(102)の動作に関連するトリガに応答して、複数の超音波プローブの中の特定の超音波プローブ(122)が、注射デバイス(102)内に含まれる薬剤リザーバ(103)の方に向けて発信超音波信号を送信し、ここで、各超音波プローブは個々の周波数の発信超音波信号を送信するように構成され、使用される特定の超音波プローブは、リザーバの長さ、リザーバ内の薬剤の予め測定された体積または薬剤の予測された体積の1つまたはそれ以上に対応する周波数を発信するように構成され、薬剤リザーバ(103)は、ストッパ(105、200a、200b、200c)の剛性部分によって該特定の超音波プローブ(122)から隔てられており、ストッパ(105、200a、200b、200c)の剛性部分は、環状オレフィンコポリマー(COC)または環状オレフィンポリマー(COP)のうちの少なくとも1つから作られ、該特定の超音波プローブは、剛性部分に埋め込まれている、発信超音波信号を送信することと;
超音波プローブ(122)が、発信超音波信号の少なくとも薬剤リザーバ(103)の遠位端からの反射を含む反射によって生成される超音波信号を受信することと;
制御構成要素(124a)が、薬剤リザーバ(103)内の薬剤の量を含む注射デバイスデータを生成するように超音波信号を処理することと;
アンテナ(124c)が、注射デバイスデータを、該注射デバイスデータを受信および処理し、処理した注射デバイスデータに関する情報を表示するように構成された外部計算デバイス(104)に送信することと
を含む、前記方法。
【請求項12】
超音波プローブは、ストッパ内に配置された多数のプローブの中の第1のプローブである、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項13】
ストッパは、多数の超音波プローブを含み、各超音波プローブは、個々の周波数で作動するように構成される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項14】
ストッパは、多数の超音波プローブを含み、各超音波プローブは、個々の周波数で作動するように構成される、請求項6に記載の薬剤注射システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子注射デバイスは、医療スタッフへの治療データの送信を可能にしながらも、医療スタッフによる定期的な管理を必要としない患者による薬剤の安全な投与を可能にする。電子注射デバイスは、カートリッジまたはシリンジのような薬剤リザーバと、センサと、電気構成要素と、駆動システムと、エネルギー供給源とを含むことができる。センサは、カートリッジまたはシリンジ内のプランジャの位置を決定するためにプランジャストッパに組み込むことができる。さらに、センサは、超音波発信/受信センサを含むことができる。
【0002】
ストッパは、典型的には、超音波信号の送信を減衰させる材料(たとえば、ブチルゴムのようなエラストマー材料)から作られる。エラストマー材料を通して送信することができる強い超音波信号には、高いエネルギーが必要となる。消費エネルギーが高いと、電池容量が問題となり得る。さらに、超音波発信/受信センサの前にあるゴム層の厚さは極薄である必要があり、その可変性は限定される必要がある。従来のゴム成形プロセスは、必要な精度が不足することがあり、薄いゴム壁は、製造プロセスに耐えるには十分に好適ではないことがある。
【0003】
特許文献1、特許文献2および特許文献3には、いくつかの既知の機械的心室補助デバイスが開示されている。これらの文献には、プローブの表面が流体(たとえば、薬剤または患者の血流)と直接接触するように様々な医用デバイスに組み込まれる超音波プローブが開示されている。流体と超音波プローブシステムの表面との接触は、化学的および医学的な課題を提起する。流体と超音波プローブの表面の接触でよくある問題としては、化学的な相互作用および流体の汚染が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】PCT国際公開WO2017/155672、2017年9月14日公開
【文献】米国特許公開第2017/0014535A1号、2017年1月19日公開
【文献】米国特許公開第2015/0174342A1号、2015年6月25日公開
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施態様は、注射デバイス内の薬剤の量を測定するように構成された機構およびシステムを含む。いくつかの実施態様では、電子式注射デバイスは、環状オレフィンコポリマー(COC)および環状オレフィンポリマー(COP)のうちの少なくとも1つから作られた剛性コア、ならびに発信超音波信号を剛性コアを通って剛性コアの長手方向に沿って薬剤リザーバ内へと送信し、発信超音波信号の少なくとも薬剤リザーバの遠位端からの反射を含む反射によって生成される超音波信号を受信するように構成された超音波プローブを含む、ストッパと、超音波プローブに電子的に接続され注射デバイスデータを生成するように超音波信号を処理するように構成された、制御構成要素と、制御構成要素に電子的に接続され外部計算デバイスに注射デバイスデータを送信するように構成された、アンテナとを含む。
【0006】
いくつかの実施態様では、超音波信号は、約2MHz~約12MHzの範囲内の周波数である。超音波プローブは、ストッパの閉端の内壁に取り付けられている。超音波プローブは、機械的な圧入または結合剤のうちの少なくとも1つによってストッパの閉端の内壁に連結されている。超音波プローブは、ストッパの閉端の内壁内に成形されている。超音波プローブは、注射デバイスに含まれるカートリッジ内の薬剤の量を検出するために、ストッパの外壁から所定の距離にある。注射デバイスは、超音波プローブおよび制御構成要素にエネルギーを提供するように構成されたエネルギー源を含むことができる。注射デバイスデータは、注射デバイスに含まれるカートリッジ内の薬剤の量に関連する電気信号を含む。剛性コアの、超音波プローブと薬剤リザーバとの間の部分は、約0.1mm~約4mmの厚さを有する。超音波プローブは、薬剤の一部分の投薬後に超音波信号を送信する。
【0007】
本発明の他の態様によれば、薬剤注射システムは:注射デバイスと、外部計算デバイスとを含む。注射デバイスは、環状オレフィンコポリマー(COC)および環状オレフィンポリマー(COP)のうちの少なくとも1つから作られた剛性コア、ならびに発信超音波信号を剛性コアを通って剛性コアの長手方向に沿って薬剤リザーバ内へと送信し、発信超音波信号の少なくとも薬剤リザーバの遠位端からの反射を含む反射によって生成される超音波信号を受信するように構成された超音波プローブを含む、ストッパと、超音波プローブに電子的に接続され注射デバイスデータを生成するように超音波信号を処理するように構成された、制御構成要素と、制御構成要素に電子的に接続され注射デバイスデータを送信するように構成された、アンテナとを含む。外部計算デバイスは、注射デバイスデータを受信、処理および表示するように構成される。
いくつかの実施態様では、外部計算デバイスは、携帯デバイス、スマートウォッチ、タブレットおよびラップトップのうちの1つを含む。超音波信号は、約2MHz~約12MHzの範囲内の周波数である。超音波プローブは、ストッパの閉端の内壁に取り付けられている。超音波プローブは、機械的な圧入および結合剤のうちの少なくとも1つによって、ストッパの閉端の内壁に連結されている。超音波プローブは、ストッパの閉端の内壁内に成形されている。超音波プローブは、注射デバイスに含まれるカートリッジ内の薬剤の量を検出するためにストッパの外壁から所定の距離のところにある。薬剤注射システムは、超音波プローブおよび制御構成要素にエネルギーを提供するように構成されたエネルギー源をさらに含むことができる。注射デバイスデータは、注射デバイスに含まれるカートリッジ内の薬剤の量に関連する電気信号を含む。
【0008】
本発明の他の態様によれば、注射デバイス内の薬剤の量を検出する方法は、注射デバイスの動作に関連するトリガを生成することと、トリガを生成することに応答して、超音波プローブによって、注射デバイス内に含まれる薬剤リザーバの方に向けて発信超音波信号を送信することであり、薬剤リザーバは、ストッパの剛性部分によって超音波プローブから隔てられており、ストッパの剛性部分は、環状オレフィンコポリマー(COC)および環状オレフィンポリマー(COP)のうちの少なくとも1つから作られている、発信超音波信号を送信することと、超音波プローブによって、発信超音波信号の少なくとも薬剤リザーバの遠位端からの反射を含む反射によって生成される超音波信号を受信することと、注射デバイスデータを生成するように超音波信号を処理することと、注射デバイスデータを受信、処理および表示するように構成された外部計算デバイスに送信することとを含む。
【0009】
本開示によるシステムは、本明細書に記載の態様および構成の任意の組み合わせを含むことができると理解されよう。すなわち、本開示による方法は、本明細書に具体的に記載の態様および構成の組み合わせに限定されず、提供される態様および構成の任意の組み合わせも含む。
【0010】
本開示の1つまたはそれ以上の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の説明において示す。本開示のその他の構成および利点は、説明、図面および特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図1B】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図1C】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図2A】本開示の実施態様を実行することができる例示的なシステムアーキテクチャのブロック図である。
図2B】本開示の実施態様を実行することができる例示的なシステムアーキテクチャのブロック図である。
図2C】本開示の実施態様を実行することができる例示的なシステムアーキテクチャのブロック図である。
図3】本開示の動作を実施するために実行される例示的な方法の流れ図である。
図4】本開示の実施態様の実行に使用することができる例示的なコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な図面において、同じ参照符号は同じ要素を示す。
【0013】
本開示の実施態様は、一般に、注射デバイス内の薬剤の量を測定するように構成された機構およびシステムを対象とする。より詳細には、本開示の実施態様は、無線周波数(RF)信号を用いて薬剤リザーバの体積を決定する技術を対象とする。
プランジャストッパに使用されるブチルゴムなどの従来のエラストマー材料は、超音波信号の送信に影響を及ぼす。本明細書にさらに詳細に記載されるように、本開示の実施態様は、この課題に対処する。たとえば、本明細書に記載の実施態様によれば、プランジャストッパは、剛性材料に埋め込まれた超音波プローブを含むことができる。プランジャストッパの組成および構成は、複数の利点を提供する。たとえば、プランジャストッパの機能は、超音波プローブの機能性および頑強な性能を最適にする。プランジャストッパの構成は、最小エネルギー消費に関連付けられる。プランジャストッパは、その全体の幾何形状およびサイズへの影響を最小限に抑える小型化された超音波プローブを含むことができる。超音波信号振幅はプランジャストッパの厚さおよび厚さ変化に対する依存が低いので、生産工程を容易にすることができる。さらに、プランジャストッパおよび超音波プローブは、別々の要素として製造することができる(たとえば、主容器の充填/仕上作業の前または後に組み立てる)。別々の製造により、超音波プローブ内の影響を受けやすい電子構成要素の、たとえば無菌製造プロセスで使用される構成要素に必要な滅菌プロセスなどの熱処理に関連する問題を回避することができる。別々の製造により、ストッパ形成プロセスの一部として電子アセンブリを埋め込むなど、複雑なプランジャストッパ製造プロセスに関連する問題を回避することができる。
【0014】
図1A図1Cは、本開示の実施態様の実行に使用することができる例示的なシステム100を示している。たとえば、例示的なシステム100は、超音波信号の送受信を使用して注射デバイス102内の薬剤の量を決定することができる。例示的なシステム100は、1つまたはそれ以上の注射デバイス102と、外部デバイス104と、ネットワーク106と、サーバシステム108とを含む。
【0015】
図1A図1Cは、注射デバイス102の分解図、およびプランジャストッパ105の断面の拡大図である。注射デバイス102は、充填済みの使い捨て注射ペン、または再使用可能な注射ペンとすることができる。たとえば、注射デバイス102は、外部デバイス104と通信し、動作データ(たとえば、注射デバイス102の使用開始日時、およびセンサ測定値)ならびに対応する処置データ(たとえば、注射デバイス102内の薬剤の量)などのデータである;注射デバイスデータを外部デバイス104に送信するように構成することができる。いくつかの実施態様では、注射デバイス102は、注射デバイス102を一意的に識別するために外部デバイス104によって使用される識別子に関連付けられる。
【0016】
注射デバイス102は、ハウジング110(たとえば、注射デバイス102のカートリッジホルダ)と、ニードルアセンブリ115とを含むことができる。ハウジング110は、薬剤リザーバ103(クロージャを含むカートリッジの主容器システム)、プランジャストッパ105、電子モジュール107、プランジャロッド118、プランジャヘッド109、支承部111、投与量ノブ112、投与量窓114、および注射ボタン120を収容することができる。ハウジング110は、医療グレードの可塑性材料から成形することができる。薬剤リザーバ103は、ホウケイ酸塩などのガラス材料から成形することができ、または、環状オレフィンコポリマー(COC)もしくは環状オレフィンポリマー(COP)を含むポリマーなど、医療グレードの可塑性材料から作ることもできる。薬剤リザーバ103は、管状(円筒形)の形状を有することができる。
【0017】
薬剤リザーバ130は、流体薬剤を収容するように構成することができる。薬剤は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含有する医薬製剤を含むことができる。薬剤としては、インスリン類似体、インスリン誘導体、鎮静剤、ホルモン、ベータアゴニスト、コルチコステロイド、または上述した薬物の任意の組み合わせが挙げられる。薬剤リザーバ103は、薬剤、麻酔薬などの調合流体を包装するのに使用されるカートリッジまたはシリンジのような従来からの略円筒形の使い捨て容器とすることができる。薬剤リザーバ103は、一対の端部である、一方の端部が針113の内方端を液密封止係合で受ける穿孔可能膜を有し、他方がストッパ105によって変位可能である、一対の端部を備えることができる。収容されている薬剤の用量は、投与量ノブ112を回すことによって注射デバイス102から放出することができる。選択された用量は、たとえばいわゆる国際単位(IU)の倍数で、投与量窓114を介して表示され、ここで、1IUは、約45.5マイクログラムの純結晶薬剤(1/22mg)と生物学的に同等である。投与量窓114内に表示される選択用量の一例は、たとえば30IUとすることができる。投与量ノブ112を回すと、機械的クリック音が発生し、音響フィードバックを使用者に提供することができる。投与量窓114内に表示される数字は、ハウジング110内に収容されるスリーブ上に印刷することができ、スリーブは、プランジャロッド118の端部に固定されたプランジャヘッド109と機械的に相互作用し、薬剤リザーバ103のプランジャストッパ105を押す。いくつかの実施態様では、選択用量は、異なるかたちで、たとえば電子ディスプレイによって表示することができる(たとえば、投与量窓114は、電子ディスプレイの形態をとることができる)。支承部111は、プランジャロッド118の片端または両端への強固な取り付けを提供することができる。プランジャヘッド109(たとえば、プランジャの後端)は、薬剤リザーバ103に収容されているプランジャストッパ105を変位させることによって流体の一部分を排出するように構成することができ、したがって、プランジャストッパ105の位置は、注射デバイス102内の流体の量に関連付けられることになる。
【0018】
プランジャストッパ105は、電子モジュール107と、ハウジング125と、一組のエラストマーリング126a、126bと、封止栓127aと、支承部128と、充填材129とを含むことができる。プランジャストッパ105の1つまたはそれ以上の機能は、電子モジュール107の動作を最適にするように構成することができる。たとえば、ハウジング125は、表1に示されるような、ハウジング125を通る超音波信号の送信を最適にする(たとえば、相対的な減衰を約10%未満に最小化する)剛性材料から形成することができる。したがって、ハウジング125は、しばしば、剛性コアと称される。ハウジング125の剛性材料としては、COCまたはCOP(たとえば、ZEONEX(登録商標))などの医療グレードの可塑性材料が挙げられる。表1には、カートリッジの肩部および薬剤リザーバ103の針穿孔可能端によって生じる反射の指数関数的な減少(decay)の相対的な減衰の測定値の結果が挙げられている。表1の結果は、様々な厚さのエラストマーまたは剛性材料に埋め込まれた様々な直径の圧電素子を用いて出された。表1の結果は、ブチルゴムのプランジャストッパの厚さに対する超音波信号の振幅の依存性、および環状オレフィンポリマーCOP(ZEONEX(登録商標))のプランジャストッパの厚さに対する超音波信号の振幅の低い依存性(たとえば、5%未満)を示している。
【0019】
【表1】
【0020】
いくつかの実施態様では、ハウジング125の閉端での厚さは、電子モジュール107と薬剤リザーバ103との間に特定の距離を維持するように選択することができる。この距離は、電子モジュール107の1つまたはそれ以上の特性(たとえば、超音波プローブ122の近距離場)に基づいて選択することができる。たとえば、ハウジング125の閉端での厚さは、約0.1mm~約1.6mmの範囲内とすることができる。ハウジング125の好ましい厚さは、0.8mm~1.3mmであり、これは、処理(たとえば、輸送、収納、充填ラインへの送り込み、およびカートリッジへの挿入)中の機械的安定性を提供し、ストッパシェルの製造性を可能にし、超音波信号の減衰を防ぐ範囲である。たとえば、ゴム成形品の場合、厚さを約0.3mmとすることができるのに対して、COCまたはCOPの射出成形品の場合、厚さを0.1mm未満とすることができる。ハウジング125の閉端での厚さは、超音波周波数2.8MHzの場合、約1mmとすることができることが好ましい。いくつかの実施態様では、ハウジング125の横壁の厚さは、主に、ハウジングの製造性、および処理(たとえば、輸送、収納、充填ラインへの送り込み、およびカートリッジへの挿入)中の機械的安定性によって決めることができる。いくつかの実施態様では、ハウジング125の横壁の厚さは、カートリッジへのストッパシェルの挿入中に掛かる力、および薬剤の用量投与中にプランジャヘッドによって加えられる投薬力に耐えるように選択することができる。
【0021】
エラストマーリング126a、126bは、ハウジング125の径方向変位を阻止することによって薬剤リザーバ103内へのハウジング125の強固な取り付けを提供することができる。支承部128は、プランジャヘッド109に対して近位のプランジャストッパ105の端部への強固な取り付けを提供することができる。充填材129(図1Aおよび図1Cに示される)または充填材層129a、129b(図1Bに示される)は、電子モジュール107をプランジャストッパ105内の安定位置で保持するように構成することができる。封止栓127a(図1Aおよび図1Bに示される)または封止膜127b(図1Cに示される)は、場合により、電子モジュール107の頂部に嵌められ、電子モジュール107を湿気または液体によるダメージから保護するように液密封止係合をもたらすことができる。封止栓127aは、医療グレードの熱可塑性エラストマー、ゴムエラストマーおよびその組み合わせなどの材料から製造することができる。プランジャストッパ105は、プランジャヘッド109が係合したときに裂けるまたは捩じれることがないように十分な長さのものとすることができる。プランジャストッパ105に関するさらなる詳細は、図2A図2Cを参照して提供される。
【0022】
ニードルアセンブリ115は、針113を含み、ハウジング110に固着させることができる。針113は、内側ニードルキャップ116および外側ニードルキャップ117により覆われ、外側ニードルキャップ117はキャップ118によって覆うことができる。針113を患者の皮下または筋肉内に挿入して注射ボタン120を押すと、表示窓114に表示される薬剤用量が注射デバイス102から放出される。注射ボタン120を押した後に注射デバイス102の針113を数秒間患者に挿入したままにすると、用量の大部分(たとえば、約100%)が患者の体内に注射される。薬剤用量の放出によって、投薬量ノブ112の使用時に発生する音とは異なり得る機械的なクリック音が発生することができる。
【0023】
注射デバイス102は、薬剤リザーバ103が空になるまで、または注射デバイス102の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に達するまで、数回の注射プロセスに使用することができる。注射デバイス102を最初に使用する前、プランジャヘッド109または支承部111をストッパに接触させ薬剤リザーバ103および針113から空気を除去するために、プライミング操作を実行する必要がある。たとえば、プライミング操作は、薬剤の2単位を選択し、針113を上向きにして注射デバイス102を保持しながら注射ボタン120を押すことを含むことができる。薬剤を2単位選択する、または注射ボタン120を押すことによって生じる衝突により、電子モジュール107の動作および/または注射デバイス102と外部デバイス104との間の通信が開始される。
電子モジュール107は、注射デバイス102の1つまたはそれ以上の機能(たとえば、薬剤の排出)を実施および/または支援するように構成することができる。電子モジュール107は、注射デバイス102のプランジャストッパ105内に成形、嵌合または溶接することができる。電子モジュール107は、ハウジング121と、超音波プローブ122と、電池123と/または補助構成要素124とを含むことができる。補助構成要素124は、制御構成要素124aと、センサ124bと、アンテナ124cとを含むことができる。
【0024】
ハウジング121は、プランジャストッパ105内に形成されたキャビティに嵌合するように構成された密閉可能な構造とすることができる。ハウジング121は、プランジャストッパ105内への電子モジュール107のすべての構成要素の同時の挿入を可能にすることができる。ハウジング121は、COCまたはCOPなどの医療グレードの可塑性材料を含む剛性材料から形成することができる。いくつかの実施態様では、ハウジング121の厚さとプランジャストッパ105のハウジングの底部125の厚さは、実質的に超音波プローブ122の近距離場の長さ以上となるように選択することができる。たとえば、ハウジング121の厚さとプランジャストッパ105のハウジングの底部125の厚さを合わせて、約1mm超とすることができる。
【0025】
超音波プローブ122は、圧電素子を含む1つまたはそれ以上の低電力単一素子超音波トランスデューサとすることができる。超音波プローブ122は、電池123によって電力供給され、超音波信号を生成し、その超音波信号の反射を検出することができる。超音波プローブ122の直径は、生成される超音波信号の強度に比例することができ、したがって、超音波プローブ122の直径が増加すると、生成される超音波信号の強度も増加する(表1参照)。超音波プローブ122は、約4mm~約8mmの直径を有することができる。超音波プローブ122は、2~12MHzの周波数の非侵襲的な超音波信号を生成するように構成することができる。いくつかの実施態様では、測定の精度を上げるために、薬剤の予め測定した体積に基づいて超音波信号の周波数が変えられるように、特定の周波数をそれぞれ有する多数の超音波プローブ122を使用することができる。超音波信号は、薬剤リザーバ103の方に向けることができる。超音波信号の反射は、薬剤リザーバ103内の薬剤の量に関連付けられる。超音波信号の反射は、薬剤リザーバ103の境界を含む、超音波信号が横切る各材料の遷移領域によって生成される反射を示す。超音波プローブ122は、薬剤体積を決定するために超音波信号を制御構成要素124aに送信することができる。たとえば、カートリッジ内のストッパ位置は、ストッパが第1の位置から第2の位置に動いたときの飛行時間の変化を評価することで決定される。変位(第1の位置と第2の位置との間の距離)は、投薬された薬剤体積、したがって投薬された用量に相関させることができる。センサ124bは、温度センサ、湿度センサ、空気質センサ、光強度センサまたは他の環境センサのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。センサ124bは、電池123によって電力供給され、センサデータを生成し、そのセンサデータを制御構成要素124aに送信することができる。
【0026】
ストッパシェルへの超音波プローブの連結は、超音波プローブとストッパシェルとの間で形状嵌めおよび機械的に圧力を掛けることによって行うことができる。さらなる一方法として、液状または半液状の材料(たとえば、様々な粘度のシリコーン油、またはシリコーンゲル、ワックス、炭化水素およびパラフィンなど)のような結合剤を、ストッパシェルと超音波プローブとの間の空間への充填に使用することができる。いくつかの実施態様では、超音波プローブとストッパシェルとの間の強固な接着の生成に接着剤またはグルーを使用することができる。
【0027】
制御構成要素124aは、超低電力(μW)プラットフォームチップとすることができ、電子モジュール107の動作を制御するように構成することができる。たとえば、制御構成要素124aは、電池123が超音波プローブに電力供給するとき、センサ124bおよびアンテナ124cを制御することができる。制御構成要素124aは、電池123からエネルギーを取り、超音波信号およびセンサデータを処理して注射デバイスデータを生成することができる。注射デバイスデータは、薬剤リザーバ103内の流体の量、センサ124bによって測定される追加の環境の値、および注射デバイス102の識別子を含むことができる。制御構成要素124aは、注射デバイスデータをアンテナ124cに送信することができ、アンテナ124cは、注射デバイスデータを外部デバイス104に送信することができる。アンテナ124cは、無線周波数(RF)アンテナ、bluetoothアンテナ、ミリ波アンテナ、または通信フィールド130内での近距離通信用に構成された任意の他のタイプのアンテナとすることができる。通信フィールド130は、注射デバイス102と外部デバイス104との間の通信を有効にすることができる。
【0028】
外部デバイス104は、通信フィールド130を介して注射デバイス102と通信することができ、ネットワーク106を介してサーバデバイス108のうちの1つまたはそれ以上と通信することができる。いくつかの実施態様では、外部デバイス104は、任意の適切なタイプの計算デバイス、たとえばデスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、手持ち式コンピュータ、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、セルラー電話、ネットワーク機器、カメラ、スマートフォン、拡張型汎用パケット無線サービス(EGPRS)携帯電話、メディアプレーヤ、ナビゲーションデバイス、電子メールデバイス、ゲームコンソールもしくはこれらのデバイスのうちの任意の2つ以上の適切な組み合わせ、または他のデータ処理デバイスを含むことができる。
外部デバイス104は、トランシーバ132と、プロセッサ134と、ディスプレイ136とを含むことができる。トランシーバ132は、注射デバイス102を起動および/または注射デバイス102に電力供給するように信号を送信し、注射デバイス102からの信号を受信するように構成することができる。トランシーバ132は、予め設定された時間間隔の間、予め設定された周波数で自発的に信号を注射デバイス102に送信するように構成することができる。プロセッサ134は、注射デバイス102によって送信されるデータを処理するように構成することができる。外部デバイス104は、外部デバイス104と注射デバイス102との間における通信を開始する(たとえば、処置を開始し薬剤用量を選択するようにトリガ信号を生成する)ように、使用者がディスプレイ136と(たとえばグラフィカルユーザインターフェースを介して)相互に作用することを可能にするように構成することができる。ディスプレイ136は、注射デバイス102から受信されてプロセッサ135によって処理されたデータを表示するように構成することができる。
【0029】
いくつかの実施態様では、サーバデバイス108は、少なくとも1つのサーバ138と、少なくとも1つのデータストア(data store)140とを含む。図1の例では、サーバデバイス108は、これらに限定されないが、ウェブサーバ、アプリケーションサーバ、プロキシサーバ、ネットワークサーバ、および/またはサーバプールを含む様々な形態のサーバを表すものとする。一般に、サーバシステムは、アプリケーションサービスのリクエストを受け付け、そのようなサービスをネットワーク106を介して任意の数のクライアントデバイス(たとえば、外部デバイス104)に提供し、注射デバイス102の使用の監視をサポートする。いくつかの実施態様では、使用者(たとえば、患者またはヘルスケア提供者)は、注射デバイス102の使用に関する過去および現在のデータを分析するために、アプリケーションサービスにアクセスすることができる。注射デバイス102の使用に関する過去および現在のデータは、薬剤注射の日付、1日当たりに排出された投与量、および注射デバイス102内に残っている薬剤の量を含むことができる。
【0030】
図2A図2Cは、本開示の実施態様で使用することができるストッパ200a、200b、200cの例を示している。たとえば、ストッパ200a、200b、200cは、図1A図1Cを参照して述べたプランジャストッパ105の例とすることができる。例示的なストッパ200a、200b、200cは、薬剤リザーバ103の軸方向と心合わせされた長手方向202にハウジング125の閉端204を横切る、超音波プローブ122からおよび超音波プローブ122へのRF信号の送信を最適化するように構成することができる。さらに、超音波プローブ122は、ストッパ200a、200b、200cの閉端204の内壁に取り付けることができる。
【0031】
たとえば、ハウジング125は、ハウジング125を介した超音波信号の送信を最適にする剛性材料から形成することができる。ハウジング125は、閉端204および開端206を含む円筒形形状または円錐台(flat cone)形状を有することができる。ハウジング125の直径は、たとえば公称充填容量が3mLまたは1.5mLの標準的なカートリッジである薬剤リザーバ103の内径に適用され、ハウジング125と薬剤リザーバ103との間のインターフェースへの封止リングの配置に対応するように適用される。したがって、ハウジング125の外径は、典型的には、薬剤リザーバ103の内径より小さい。図示の例では、ハウジング125は、一組のエラストマーリング126a、126bによって円周方向に囲繞される。エラストマーリング126a、126bは、約0.8mm~2mmの直径を有することができる。たとえば、図2Aに示されるように、エラストマーリング126a、126bはともに、約1mm、1.5mmまたは2mmの同一直径を有することができる。図2Bおよび図2Cに示されるように、エラストマーリング126aは、約1.5mmまたは2mmの直径を有することができ、エラストマーリング126bの直径(たとえば、約1mm)より大きくてもよい。
【0032】
封止栓127a(図2Aおよび図2Bに示される)または封止膜127b(図2Cに示される)は、湿気およびガスの汚染から超音波プローブ122を保護するようにハウジング125の開端206を封止するように構成することができる。封止栓127a(図2Aおよび図2Bに示される)は、ハウジング125の開端206内に嵌合または溶接されるように構成することができる。嵌合は、形状嵌め、ポジティブフィット(positive fit)、スナップ嵌め、圧力閉鎖(force closure)、閉リンク機構、接着またはその任意の組み合わせとすることができる。封止栓127aは、ハウジング125に使用されるものと同じ材料または異なる材料(たとえば、エラストマー材料)であるハウジング125の開端206を封止することができる。封止膜127b(図2Cに示される)は、1つまたはそれ以上の保護層を含む封止フィルムとすることができる。封止膜127bの保護層は、セラミス(ceramis)層、ポリマー層および酸化ケイ素コーティングを含むことができる。封止膜127bは、約50μm~約100μm、たとえば約86μmの厚さを有することができる。封止膜127bは、接着剤または取付構成を用いてハウジング125の開端206に取り付けることができる。
【0033】
図3は、たとえば図1A図1Cおよび図2A図2Cを参照して述べたデバイスおよびシステムによって実施される例示的な方法300を示す流れ図である。方法300はトリガ信号を受信することによって開始する(302)。トリガ信号は、剛性プランジャストッパに挿入された超音波プローブを有する注射デバイスのプライミング操作を含むことができる。プライミング操作は、注射デバイスの使用者または注射デバイスと通信する外部デバイスの使用者によって開始することができる。注射デバイスで実施するプライミング操作の例は、薬剤の特定の単位量(たとえば、1または2)を選択し、針を上向きにして注射デバイスを保持しながら注射ボタンを押すことを含むことができる。注射デバイスで実施するプライミング操作の他の例は、電気スイッチとして構成される注射デバイスのプライミングボタンを押すことを含むことができる。いくつかの実施態様では、トリガ信号は、外部デバイスによって生成される質問信号を含むことができる。質問信号は、1つまたはそれ以上の条件に基づいて外部デバイスによって自動的に生成される。条件には、送信周波数、送信時間および/または時間間隔が含まれる。たとえば、薬剤処置は、外部デバイスが所与の周波数で質問信号を生成することができる特定の時間間隔内で実施されるようにスケジューリングすることができる。信号は、外部デバイスの使用者入力に応答して外部デバイスによって生成される。たとえば、使用者は、薬剤投薬サービスを開始するために外部デバイスと相互に作用することができる。トリガ信号は、機械信号、音響信号および電気信号のうちの少なくとも1つを含むことができる。トリガ信号は、超音波信号を生成する命令を含むことができる。
【0034】
トリガ信号の受信に応答して、注射デバイスの剛性プランジャストッパ内に配置された超音波プローブによって超音波信号が生成される(304)。いくつかの実施態様では、発信超音波信号の周波数は、薬剤リザーバの長さまたは薬剤の予め測定されたもしくは予測の体積に基づいて選択される。たとえば、低周波数(たとえば、2MHz)の超音波信号は、大きい薬剤体積に対して使用され、高周波数(たとえば、10MHz)の超音波信号は、小さい薬剤体積に対して使用される。発信超音波信号は、ストッパおよび注射デバイスの長手方向中心軸に平行な方向に、剛性材料から形成されたストッパの閉端の方に向けて送信される。発信超音波信号の送信は、ストッパの剛性材料を通る送信および薬剤リザーバ内に収納されている薬剤を通る送信を含むことができる。
【0035】
超音波プローブによって反射超音波信号が受信される(306)。反射超音波信号は、ストッパの剛性材料からの反射、薬剤リザーバに収納されている薬剤からの反射、および薬剤リザーバの遠位端からの反射を含むことができる。用語「遠位の」、「遠位に」および「遠位端」は、カートリッジまたはシリンジのショルダ領域も含む、針が設けられる方の注射デバイスの端部を指す。用語「近位の」、「近位に」および「近位端」は、注射ボタンまたは投与量ノブが設けられる方の注射デバイスの反対端部を指す。反射超音波信号の1つまたはそれ以上の構成は、薬剤リザーバに収容されている薬剤の量および気泡の存在を示すことができる。たとえば、薬剤リザーバ内に収納されている薬剤からの反射および薬剤リザーバの遠位端(たとえば、針穿孔可能端)からの反射は、薬剤リザーバによって収容されている薬剤の量を示している。
【0036】
反射超音波信号の受信に応答して、電気信号が超音波プローブによって生成される(308)。プロセッサが電気信号を用いて注射デバイスデータを生成することができる(310)。注射デバイスデータは、電気信号、注射デバイスについての一意的な識別子、センサ測定値(たとえば、測定温度)、内部クロック測定値(たとえば、超音波信号の受信のタイムスタンプ)、ロケーション、および/または注射デバイスの状況固有データを含むことができる。
【0037】
注射デバイスデータは、薬剤の投与および注射デバイスの動作状況に関する1つまたはそれ以上のパラメータの分析のために外部デバイスへ送信される(312)。注射デバイスデータは、無線周波数(RF)通信、Bluetooth通信、ミリ波通信、または任意の他の適切なタイプの近距離通信を用いて送信される。注射デバイスデータは、結果データの生成のために外部デバイスのプロセッサによって処理される(314)。結果データの取得に応答して、結果データは、将来の参照のために記憶され、外部デバイスのグラフィカルユーザインターフェースによって表示される(316)。いくつかの実施態様では、方法300は、薬剤が注射デバイスによって排出される前に実行され、薬剤が注射デバイスによって排出された後に繰り返される。
【0038】
図4は、例示的な計算システム400の概略図である。システム400は、本明細書に記載の実施態様に関連して説明した動作に使用することができる。たとえば、システム400は、本明細書で論じるサーバ構成要素(たとえば、図1のサーバデバイス108)のいずれかまたはすべてに含むことができる。システム400は、プロセッサ410と、メモリ420と、記憶デバイス430と、入/出力デバイス440とを含む。各構成要素410、420、430および440は、システムバス450を用いて相互接続されている。プロセッサ410は、システム400内で実行するための命令を処理することが可能である。1つの実施態様では、プロセッサ410は、シングルスレッドプロセッサである。他の実施態様では、プロセッサ410は、マルチスレッドプロセッサである。プロセッサ410は、入/出力デバイス440のユーザインターフェースのためのグラフィカル情報を表示するために、メモリ420または記憶デバイス430に記憶されている命令を処理することが可能である。
【0039】
メモリ420は、システム400内に情報を記憶する。1つの実施態様では、メモリ420は、コンピュータ可読媒体である。1つの実施態様では、メモリ420は、揮発性メモリユニットである。他の実施態様では、メモリ420は、不揮発性メモリユニットである。記憶デバイス430は、システム400のための大容量記憶を提供することが可能である。1つの実施態様では、記憶デバイス430は、コンピュータ可読媒体である。様々な異なる実施態様では、記憶デバイス430は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、またはテープデバイスとすることができる。入/出力デバイス440は、システム400のための入/出力動作を提供する。1つの実施態様では、入/出力デバイス440は、キーボードおよび/またはポインティングデバイスを含む。他の実施態様では、入/出力デバイス440は、図1図3を参照して述べたように、使用者が収集、記憶、および問合せされる物品に関係するデータにアクセスすることを有効にするグラフィカルユーザインターフェースを表示する表示ユニットを含む。
【0040】
記載した構成は、デジタル電子回路内、もしくはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア内、またはこれらの組み合わせで実施することができる。この装置は、プログラム可能プロセッサによる実行のために、情報キャリア内で実体的に具現化されるコンピュータプログラム製品内、たとえば機械可読記憶デバイス内で実施することができ;方法工程は、プログラム可能プロセッサが、入力データ上の動作および出力の生成によって、記載の実施態様の機能を実行するための命令のプログラムを実行することによって、実施することができる。記載の構成は、有利には、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受け取り、それらにデータおよび命令を送信するように接続された少なくとも1つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能システム上で実行可能な1つまたはそれ以上のコンピュータプログラム内で実施することができる。コンピュータプログラムは、あるアクティビティを実行しまたはある結果をもたらすために、コンピュータ内で直接的または間接的に使用することができる一組の命令である。コンピュータプログラムは、コンパイルまたは解釈された言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書き込むことができ、計算環境での使用に好適なスタンドアロンプログラムまたはモジュール、構成要素、サブルーチン、もしくは他のユニットを含む任意の形態で導入することができる。
【0041】
命令のプログラムの実行に好適なプロセッサとしては、例として、汎用および特殊目的両方のマイクロプロセッサ、ならびに任意の種類のコンピュータの単独のプロセッサまたは複数のプロセッサのうちの1つが挙げられる。概して、プロセッサは、読取り専用メモリもしくはランダムアクセスメモリ、または両方から、命令およびデータを受け取る。コンピュータの不可欠な要素は、命令を実行するプロセッサ、ならびに命令およびデータを記憶する1つまたはそれ以上のメモリである。概して、コンピュータはまた、データファイルを記憶する1つもしくはそれ以上の大容量記憶デバイスを含み、またはそのような大容量記憶デバイスと通信するように動作可能に接続され;そのようなデバイスとしては、内部ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;磁石光学ディスク;ならびに光ディスクが挙げられる。コンピュータプログラム命令およびデータを実体的に具現化するのに好適な記憶デバイスには、例としてEPROM、EEPROM、およびフラッシュ記憶デバイスなどの半導体記憶デバイス;内部ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;磁石光学ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む、すべての形態の不揮発性メモリが挙げられる。プロセッサおよびメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補足することができ、またはその中に一体化することができる。
【0042】
使用者との対話を提供するために、これらの構成は、使用者に情報を表示するCRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどの表示デバイス、ならびに使用者がコンピュータに入力を提供することができるキーボードおよびマウスまたはトラックボールなどのポインティングデバイスを有するコンピュータ上で実施することができる。
これらの構成は、データサーバなどのバックエンド構成要素を含むコンピュータシステム、またはアプリケーションサーバもしくはインターネットサーバなどのミドルウェア構成要素を含むコンピュータシステム、またはグラフィカルユーザインターフェースもしくはインターネットブラウザを有するクライアントコンピュータなどのフロントエンド構成要素を含むコンピュータシステム、またはこれらの任意の組み合わせを含むコンピュータシステム内で実施することができる。システムの構成要素は、通信ネットワークなどの任意の形態または媒体のデジタルデータ通信によって接続することができる。通信ネットワークの例としては、たとえばLAN、WAN、ならびにインターネットを形成するコンピュータおよびネットワークが挙げられる。
【0043】
コンピュータシステムは、クライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは、概して互いから遠隔に位置し、典型的には記載したようなネットワークを介して相互作用する。クライアントおよびサーバの関係は、コンピュータプログラムがそれぞれのコンピュータ上で実行され、互いに対してクライアントとサーバの関係を有することによって生じる。
加えて、図面に示した論理フローは、望ましい結果を実現するために、図示の特定の順序または順番を必要としない。加えて、他の工程を提供することができ、または記載したフローから工程を削除することができ、他の構成要素を記載したシステムに追加することができ、または記載したシステムから除去することもできる。したがって、他の実施態様も以下の特許請求の範囲の範囲内になる。
【0044】
本開示の複数の実施態様について記載した。それにもかかわらず、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができることが理解されよう。したがって、他の実施態様も以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4