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特許7408683構造体に耐摩耗材料を提供するための方法、及び複合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】構造体に耐摩耗材料を提供するための方法、及び複合体
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20231225BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/68 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021560915
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2020059188
(87)【国際公開番号】W WO2020221539
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】19171823.8
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ニキペロフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート,アントニウス,フランシスカス,ヨハネス
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-158309(JP,A)
【文献】特表2011-510488(JP,A)
【文献】特表2011-517299(JP,A)
【文献】特開2019-009418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法であって、
ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を提供するステップと、
20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料を提供するステップと、
前記耐摩耗材料が提供される前記構造体の少なくとも一部をろう付け形成材料でコーティングすること、及び/又は、前記構造体に接続される前記耐摩耗材料の表面を前記ろう付け形成材料でコーティングするステップと、
前記構造体と前記耐摩耗材料との間に前記ろう付け形成材料が位置するように、前記構造体と前記耐摩耗材料を一緒にプレスするステップと、
前記ろう付け形成材料を加熱することによって前記耐摩耗材料を前記構造体にろう付けするステップと、
を含む方法。
【請求項2】
構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法であって、
ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を提供するステップと、
20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料を提供するステップと、
前記耐摩耗材料と前記構造体との間に、前記耐摩耗材料を前記構造体にろう付けするのに適したろう付け形成材料を提供するステップと、
前記ろう付け形成材料を加熱することによって前記耐摩耗材料を前記構造体にろう付けするステップと、
を含み、
前記構造体の一部及び/又は前記耐摩耗材料にコーティングされた前記ろう付け形成材料の厚さは前記耐摩耗材料の厚さ未満である、
方法。
【請求項3】
構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法であって、
ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を提供するステップと、
20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料を提供するステップと、
前記耐摩耗材料を前記構造体にレーザ溶接するステップと、
を含む方法。
【請求項4】
構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法であって、
ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を提供するステップと、
20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料を提供するステップと、
前記耐摩耗材料を前記構造体にろう付け又はレーザ溶接するステップと、
を含み、
前記耐摩耗材料を提供するステップは、
20GPaを超える硬さを有する材料の層を成長基板上で成長させることと、
前記材料の層の一部を前記成長基板からキャリア膜へ移動させることにより、前記キャリア膜上に前記耐摩耗材料を形成することと、
を含む、方法。
【請求項5】
前記方法は、物体を支持するための支持面を規定する複数のバールを含む支持構造を製造するためのものであり、
前記ろう付け又はレーザ溶接の後、前記構造体とは反対側の前記耐摩耗材料の表面は前記バールの前記遠位端面を規定する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記耐摩耗材料を前記構造体と物理的に接触させること、及び
前記耐摩耗材料と前記構造体との間の界面をpsパルスレーザ又はfsパルスレーザを用いて露光すること、
によって前記耐摩耗材料を前記構造体にレーザ溶接することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記耐摩耗材料は透明であると共に前記構造体は不透明であり、前記耐摩耗材料と前記構造体との間の前記界面は前記耐摩耗材料を介して露光される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記構造体は、本体表面を有する本体と、前記本体表面から突出している複数の未完成バールと、を含み、各未完成バールは遠位端面を有し、
複数のバールを含む支持構造を形成するように、前記耐摩耗材料は前記複数の未完成バールの各々の前記遠位端面上に提供され、前記複数のバールの前記遠位端面は物体の平坦な表面を支持するための支持面を規定する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記構造体は本体表面を有する本体を含み、ろう付け又はレーザ溶接の後、前記耐摩耗材料は前記本体表面から突出している複数のバールを形成し、前記複数のバールは物体の平坦な表面を支持するための支持面を規定する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記耐摩耗材料を提供するステップは前記耐摩耗材料をキャリア膜上に提供することを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記耐摩耗材料を提供するステップは、
20GPaを超える硬さを有する材料の層を成長基板上で成長させることと、
前記材料の層の一部を前記成長基板から前記キャリア膜へ移動させることにより、前記キャリア膜上に前記耐摩耗材料を形成することと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかの方法によって得られる複合体。
【請求項13】
ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体と、
20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料と、
前記構造体と前記耐摩耗材料を接続する相互拡散層と、
を備える複合体。
【請求項14】
前記複合体は、物体を支持するための支持面を規定する複数のバールを含む支持構造であり、
前記構造体とは反対側の前記耐摩耗材料の表面は前記バールの前記遠位端面を規定する、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の複合体を含むリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2019年4月30日に出願されたEP出願第19171823.8号の優先権を主張する。これは援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、未完成の基板ホルダ又は未完成のレチクルクランプのような構造体(body)上に耐摩耗材料を提供するための方法に関する。また、本発明は、耐摩耗材料を含む基板ホルダ又はレチクルクランプのような複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] パターニングデバイスからパターンを転写する場合、基板はリソグラフィ装置内の基板ホルダにクランプされる。基板ホルダは従来、基板を支持するため複数のバールを有する。基板に接触するバールの総面積は、基板の総面積に比べて小さい。従って、基板又は基板ホルダの表面上にランダムに位置する汚染物質粒子がバールと基板との間にトラップされる可能性は低い。また、基板ホルダの製造において、複数のバールの上部は、1つの大きい表面が正確に平坦に作製され得るよりも高い精度で同一平面とすることができる。
【0005】
[0005] 露光の準備として基板を最初に基板ホルダ上にロードする場合、基板は、3か所で基板を保持するいわゆるeピン(e-pin)によって支持される。基板がeピンで保持されている間、自重によって基板は歪み、例えば、上から見た場合に凸状になる。基板を基板ホルダにロードするためには、基板が基板ホルダのバールで支持されるようにeピンを引っ込める。基板を基板ホルダのバール上へ下降させる際、基板は、例えばエッジ付近のようないくつかの場所では、例えば中央付近のような他の場所よりも先に接触する。バールと基板の下面との摩擦は、基板が完全に緩和して平坦な無応力状態になるのを妨げる可能性がある。これによって、基板の露光中にフォーカスエラー及びオーバーレイエラーが発生する恐れがある。
【0006】
[0006] 基板ホルダは一般に、シリコンカーバイド(SiC)、又はシリコンマトリックス内にSiC粒を有する材料であるSiSiC等、セラミック材料で作られる。このようなセラミック材料は、従来の製造方法を用いて容易に所望の形状に機械加工することができる。基板ホルダから基板をロード及びアンロードすると、セラミック材料はすぐに摩耗する可能性がある。また、セラミック材料の比較的高い摩擦係数は、基板が基板ホルダにロードされるときに緩和して平坦な無応力状態になるのを妨げることがある。
【0007】
[0007] 基板ホルダのバール上にダイヤモンド状炭素(DLC:diamond-like carbon)の層を提供することが提案されている。このDLCは、例えばDLC a-C:H、a-C、又はta-Cである。このような層は摩耗耐性があり、基板ホルダと基板との間の摩擦を低減する。DLCは300℃未満の温度で堆積が可能であるので、基板ホルダのバール上に直接堆積され得る。300℃を超える温度では、基板ホルダを損傷するリスクがある。
【0008】
[0008] 本発明者らは、そのようなDLCでコーティングされた基板ホルダの性能が期待に応えていないことを認識した。基板ホルダに堆積されたDLCは、望ましいレベルよりも約10倍速く摩耗するので、所望の動作期間よりもはるかに早く基板ホルダの再研磨及び再調節が必要となる。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 従って、例えば、DLCでコーティングされた構造体に比べて耐摩耗特性が向上した耐摩耗材料を構造体上に提供することが望ましい。耐摩耗材料は、DLCでコーティングされた構造体に比べて、例えば腐食耐性の向上のように、他にも望ましい特性を有し得る。
【0010】
[0010] 本発明の一態様に従って、構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法が提供される。この方法は、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を提供するステップと、20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料を提供するステップと、耐摩耗材料を構造体にろう付け(brazing)又はレーザ溶接するステップと、を含む。
【0011】
[0011] 本発明の別の態様に従って、複合体が提供される。この複合体は、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体と、20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料と、構造体と耐摩耗材料を接続する中間ろう付け層又は相互拡散層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
[0012] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【0013】
図1】[0013] リソグラフィ装置を概略的に示す。
図2】[0014] 一実施形態に従った複合体の一例である基板ホルダを平面視で示す。
図3A】[0015] 一実施形態に従って構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法を示す。
図3B】[0016] 別の実施形態に従って構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法を示す。
図4A】[0017] 一実施形態に従って構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法の一実施形態を概略的に示す。
図4B】[0017] 一実施形態に従って構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法の一実施形態を概略的に示す。
図4C】[0017] 一実施形態に従って構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法の一実施形態を概略的に示す。
図4D】[0017] 一実施形態に従って構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法の一実施形態を概略的に示し、一実施形態に従った複合体を示す。
図5A】[0018] 耐摩耗材料を提供するための方法の別の実施形態を概略的に示す。
図5B】[0018] 耐摩耗材料を提供するための方法の別の実施形態を概略的に示す。
図5C】[0018] 耐摩耗材料を提供するための方法の別の実施形態を概略的に示し、この別の実施形態に従った複合体を示す。
図6A】[0019] 耐摩耗材料を提供するための方法ステップを概略的に示す。
図6B】[0019] 耐摩耗材料を提供するための方法ステップを概略的に示す。
図6C】[0019] 耐摩耗材料を提供するための方法ステップを概略的に示す。
図6D】[0019] 耐摩耗材料を提供するための方法ステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0020] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、特に明記しない限り、紫外線(例えば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0015】
[0021] 「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0016】
[0022] 図1は、一実施形態のリソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、
放射ビームB(例えばUV放射又はDUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築されたレチクルクランプを一般的に含み、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続されたパターニングデバイス支持構造(例えばマスクテーブル)Tと、
例えば、1つ以上のセンサを支持するセンサテーブル、又は基板(例えばレジストコート製品基板)Wを保持するように構築された基板テーブルもしくはウェーハテーブルWTのような、特定のパラメータに従って、例えば基板Wのようなテーブルの表面を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された支持テーブルと、
パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを、基板Wのターゲット部分C(例えばダイの一部、1つのダイ、又は複数のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0017】
[0023] 動作中、イルミネータILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。イルミネータILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0018】
[0024] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0019】
[0025] リソグラフィ装置LAは、例えば2つ以上の支持テーブル、又は1つ以上の支持テーブルと1つ以上の洗浄テーブル、センサテーブル、もしくは測定テーブルとの組み合わせのように、2つ以上の支持テーブルを有するタイプとすることができる。例えばリソグラフィ装置LAは、投影システムPSの露光側に位置付けられた2つ以上のテーブルを備えるマルチステージ装置であり、各テーブルが1つ以上の物体を備えている及び/又は保持している。一例において、テーブルのうち1つ以上は、放射感応性基板を保持することができる。一例において、テーブルのうち1つ以上は、投影システムからの放射を測定するセンサを保持することができる。一例において、マルチステージ装置は、放射感応性基板を保持するように構成された第1のテーブル(すなわち支持テーブル)と、放射感応性基板を保持するように構成されていない第2のテーブル(以降、限定ではないが一般に、測定テーブル、センサテーブル、及び/又は洗浄テーブルと呼ぶ)とを備える。第2のテーブルは、放射感応性基板以外の1つ以上の物体を備える及び/又は保持することができる。このような1つ以上の物体には、投影システムからの放射を測定するセンサ、1つ以上のアライメントマーク、及び/又は(例えば液体閉じ込め構造を洗浄する)洗浄デバイスから選択された1つ以上のものが含まれ得る。
【0020】
[0026] 動作中、放射ビームBは、パターニングデバイス支持構造(例えばマスクテーブル)Tに保持されたパターニングデバイス(例えばマスク)MAに存在するパターン(設計レイアウト)に入射し、パターニングデバイスMAによってパターン形成される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに集束させる。第2のポジショナPW及び位置センサPMS(例えば干渉デバイス、リニアエンコーダ、2Dエンコーダ、又は容量センサ)を用いて、例えば、放射ビームBの経路内の集束され位置合わせされた位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板テーブルWを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPM及び別の位置センサ(図1には明示的に図示されていない)を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせすることができる。図示されている基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分Cを占有しているが、それらをターゲット部分C間の空間に位置付けることも可能である(これらはスクライブラインアライメントマークとして既知である)。
【0021】
[0027] 基板テーブルWTは基板ホルダ60を備えている。図2は、一実施形態に従ったリソグラフィ装置LAで用いられる基板ホルダ60を示す。基板ホルダ60は基板Wを支持するためのものである。基板ホルダ60は本体21を含む。本体21は本体表面22を有する。本体表面22から突出して複数のバール20が設けられている。各バール20の遠位端面は基板Wと係合する。バール20の遠位端面は同一平面上にある。すなわち、バール20の遠位端面は支持面SPと実質的に一致し、基板Wを支持する。本体21は、例えばSiC又はSiSiCのようなセラミックで形成することができる。バール20は、本体21と同一の材料で形成するか、又は異なる材料で形成することができる。
【0022】
[0028] バール20の高さは10μm~500μmの範囲内とすることができ、例えば約150μmである。バール20の遠位端面の直径は100μm~300μmの範囲内とすることができ、例えば約200μmである。バール20のピッチは約0.5mm~3mmの範囲内とすることができ、例えば約1.5mmである。バール20のピッチは、2つの隣接するバール20の中心間の距離である。全てのバール20の遠位端面の総面積は、基板ホルダ60の総面積の1%~3%の範囲内とすればよい。バール20は、バール側面がわずかに傾斜している円錐台状(fursto-conical)とすればよい。あるいは、バール側面は鉛直であってもよく、又は上部が張り出していてもよい。バール20は平面視で円形とすればよい。あるいは、所望の場合にはバール20を他の形状に形成してもよい。
【0023】
[0029] 本体21に複数の貫通孔89を形成してもよい。貫通孔89によって、eピンが基板ホルダ60を通って突き出て基板Wを受け止めることが可能となる。また、貫通孔89によって、基板Wと基板ホルダ60との間の空間を排気することが可能となる。基板Wと基板ホルダ60との間の空間を排気すると、基板Wの上方の空間を排気しない場合にクランプ力を提供することができる。このクランプ力は基板Wを所定位置に保持する。EUV放射を用いたリソグラフィ装置の場合のように、基板Wの上方の空間も排気される場合は、基板ホルダ60上に電極を提供して静電クランプを形成することができる。
【0024】
[0030] 例えば基板ホルダ60と基板Wとの間のガス流及び/又は熱伝導率を制御するため、他の構造も提供され得る。基板ホルダ60に電子コンポーネントを備えることができる。電子コンポーネントはヒータ及びセンサを含み得る。ヒータ及びセンサを用いて、基板ホルダ60及び基板Wの温度を制御することができる。
【0025】
[0031] バール20の摩耗及び摩擦を低減するため、基板ホルダ60のバール20の少なくとも遠位端面にDLC層を堆積することが提案されている。しかしながら、本発明者らは、そのようなDLC層が予想よりも速く摩耗することを認識した。これは、DLC内のsp2混成炭素の存在に起因する可能性がある。典型的に、DLCはsp2:sp3炭素比が10:1~1:1の範囲内であり、いわゆるH-DLC又はa-C:Hを形成するトラップされた水素を含み得る。ta-Cは炭素のみを含むので水素化されないが、より低濃度のsp2炭素も含む。sp2混成炭素はグラファイトと同様にふるまうので、機械的に弱く電気的に伝導性であり、接触摩耗、摩擦帯電によって誘発される摩耗、及び酸化が生じる可能性がある。これにより、特に液浸リソグラフィ装置のような湿潤環境では、DLCが予想よりも速く劣化する恐れがある。
【0026】
[0032] 従って、DLCよりも摩耗に耐えられる耐摩耗材料を基板ホルダ60に提供することが望ましい。本発明者らは、そのような耐摩耗材料はビッカース硬さ試験によって決定される硬さが20GPaを超えなければならないことを認識した。20GPa超の硬さでは、耐摩耗材料が、基板ホルダ60又はリソグラフィ装置LAの他の支持構造(例えば、基板テーブルWT以外の支持テーブルに含まれる支持構造、基板クランプ、パターニングデバイスMAを保持するためのレチクルホルダ又はレチクルクランプ)のような構造体での使用に適していることが保証される。耐摩耗材料は、好ましくは結晶性物質又は少なくともナノ結晶性物質であり、例えばダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(c-BN)、立方晶窒化ケイ素(Si)、立方晶窒化炭素(C)、AlMgB14、Al、WB、V、Ta、Zr、Nb、c-BCN、他のC-B-N三元化合物、又はこれらの任意の組み合わせ等である。あるいは、耐摩耗材料は、例えば50%以上のsp3炭素を含有するアモルファスDLCとすればよい。このようなsp3炭素含有量によってDLCに内部機械応力が生じ、アモルファスDLCが30GPa超の硬さを有することが保証される。これらの材料は、極めて低い摩耗及び摩擦特性のため、リソグラフィ装置LAで耐摩耗材料として使用するのに特に適している。これらの材料を、エンハンス蒸着(enhanced vapour deposition)(CVD、PVD、パルスレーザ堆積)を用いて成長基板上に成長させるには、成長基板を500℃~1200℃の高温にする必要がある。このような高温は、基板ホルダ60、又は耐摩耗材料を適用する他の構造体を損傷する可能性がある。従って、基板ホルダ60に耐摩耗材料を直接堆積することは、基板ホルダ60を損傷するリスクがある。
【0027】
[0033] 本発明者らは、セラミック、ガラス、又はガラスセラミックで作られた構造体上に耐摩耗材料を提供する新しい方法を確認した。このような構造体の一例は、未完成基板ホルダ60’である。しかしながら本発明は、未完成基板ホルダ60’に耐摩耗材料を適用し、これによってリソグラフィ装置LAで使用される基板ホルダ60を生成することに限定されない。本発明は、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた他の任意の構造体に耐摩耗材料を適用することに拡張される。ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体は、従来の製造方法を用いて容易に機械加工することができ、従って、リソグラフィ装置LAで使用されるようなコンポーネントの基材を形成するためには特に有用である。
【0028】
[0034] 図3Aに、構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法200の一実施形態が示されている。方法200は、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を提供することを含む(S210)。構造体は、例えばSiC又はSiSiCで作ることができる。方法200は更に、20GPa超の硬さを有する耐摩耗材料を提供することを含む(S220)。耐摩耗材料の例は、ダイヤモンド及びc-BN、並びに上述した他の耐摩耗材料である。ステップS220は、図6Aから図6Dで概略的に示されているように、成長基板上に材料層を成長させること(S221)と、材料層の一部をキャリア膜へ移動させること(S222)と、を含み得る。
【0029】
[0035] 方法200は更に、耐摩耗材料と構造体との間に、耐摩耗材料を構造体にろう付けするのに適したろう付け形成材料を提供することを含む(S230)。これは、図4A及び図4B、並びに図5A及び図5Bで概略的に示されているように、耐摩耗材料及び/又は構造体をろう付け形成材料でコーティングすること(S231)と、耐摩耗材料と構造体を一緒にプレスすること(S232)と、を含み得る。方法200は更に、ろう付け形成材料を加熱することによって耐摩耗材料を構造体にろう付けすることを含む(S240)。これは図4B及び図5Bで概略的に示されている。方法200の最後のステップS250では、キャリア膜を除去することができる。方法200によって得られる複合体は、図4D及び図5Cで概略的に示されている。
【0030】
[0036] 図3Bは、構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法201の代替的な実施形態を示す。方法201は、図3Aの方法200に関してすでに検討したように、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を提供すること(S210)と、20GPa超の硬さを有する耐摩耗材料を提供すること(S220)と、を含む。しかしながら、図3Aの方法200と比べて図3Bの方法201では、耐摩耗材料と構造体との間にろう付け形成材料は提供されず、耐摩耗材料30は構造体と直接に物理的に接触している。方法201は、耐摩耗材料を構造体にレーザ溶接する(又はレーザ誘起溶接する(laser-induced welding))こと(S260)を含む。これは、耐摩耗材料を構造体と直接に物理的に接触させること(S261)と、psパルスレーザ又はfsパルスレーザを用いて耐摩耗材料と構造体との間の界面を露光することと、を含む。耐摩耗材料及びキャリア膜はpsレーザ又はfsレーザに対して透明とすることができ、構造体はpsレーザ又はfsレーザに対して不透明とすることができる。従って、耐摩耗材料と構造体との間の界面は、耐摩耗材料及びキャリア膜を介してpsレーザ又はfsパルスレーザで露光することができる。
【0031】
[0037] 方法200及び201を用いて、耐摩耗材料を構造体上に直接成長させること(これは高温を必要とする)に頼らずに耐摩耗材料を構造体に提供できるので、構造体を損傷するリスクが低減する。耐摩耗材料は、構造体とは異なる成長基板上で最適な条件のもとに高温で成長させることができ、高品質の耐摩耗材料を得ることが可能となる。この後、耐摩耗材料を構造体にろう付け又はレーザ溶接することで、構造体と耐摩耗材料との間の強力な接続を保証する。このようなろう付けでは、構造体上に耐摩耗材料を直接成長させるよりも必要な温度が低い可能性があり、又は、ろう付け形成材料とその周りのエリアの局所的な加熱のみが必要であり得るので、構造体上に耐摩耗材料を成長させるため構造体全体が高温に加熱される状況に比べて、構造体を損傷するリスクを低減できる。同様に、レーザ溶接では、耐摩耗材料と構造体との間の界面の極めて局所的な加熱のみが必要であるので、この場合も損傷のリスクが低減する。
【0032】
[0038] 図4Aから図4Dは、構造体上に20GPa超の硬さを有する耐摩耗材料30を提供するための方法200の一実施形態を示す。この実施形態では、構造体は未完成基板ホルダ60’である。未完成基板ホルダ60’は、本体表面22を有する本体21と、本体表面22から突出している複数の未完成バール20’と、を含む。
【0033】
[0039] 図4Aに示されているように、耐摩耗材料30は層の形態で提供され得るので、耐摩耗層とすることができる。耐摩耗層は、この耐摩耗層を支持構造上に堆積した後に過剰な研摩を必要とすることなく物体を支持する支持面SPを規定するのに特に適しているので、支持構造(基板ホルダ60等)で耐摩耗材料30を使用することが簡単になる。耐摩耗材料30は、好ましくは0.1~500μmの範囲内の厚さを有する。
【0034】
[0040] 耐摩耗材料30は、複数の別個部分30’で提供することができる。別個部分30’は、直径d又は平面視の平均横寸法が2mm未満、又は好ましくは500μm未満であることが望ましい。
【0035】
[0041] 耐摩耗材料30を複数の別個部分30’で提供することにより、耐摩耗材料30を、未完成基板ホルダ60’の未完成バール20’の遠位端面上に提供することが可能となる(図4Aから図4Dに示されている)。この場合、耐摩耗材料30は好ましくは、0.1μm~10μmの厚さt(本体表面22に対して垂直な方向)を有する。耐摩耗材料30、特に耐摩耗材料30の別個部分30’で形成されるパターンは、複数の未完成バール20’で形成されるパターンと幾何学的に同様であるか又は同一であることが好ましい。あるいは、耐摩耗材料30(の別個部分30’)で形成されるパターンは、複数の未完成バール20’のサブセット、例えば1つおき又は2つおきの未完成バール20’で形成されるパターンと幾何学的に同様又は同一としてもよい。これにより、耐摩耗材料30を複数の未完成バール20’に対して2つ以上の段階で提供することができる。例えば、第1の段階で未完成バール20’の最初の半分に耐摩耗材料30を提供し、第2の段階で未完成バール20’の残りの半分に耐摩耗材料30を提供する。別個部分30’の各々の直径dは、未完成バール20’の直径以下とすることができ、例えば50μm~300μmの範囲内、例えば約200μmとすればよい。2つの隣接した別個部分30’の中心間の距離は、未完成バール20’のピッチに等しくすることができ、例えば約0.5mm~3mm、例えば約1.5mmとすればよい。別個部分30’の形状は、未完成バール20’の遠位端面の形状と幾何学的に同様とすることができ、例えば平面視で円形とすればよい。また、所望の場合には別個部分30’を他の形状に形成してもよい。
【0036】
[0042] 図4Aに示されているように、耐摩耗材料30を提供することは、キャリア膜74上に耐摩耗材料30を提供することを含むと好ましい。これによって、構造体上に耐摩耗材料を簡単かつ正確に配置することが可能となる。耐摩耗材料が複数の別個部分30’で提供される場合、キャリア膜74は、別個部分30’の相互の相対位置と、別個部分30’を提供する構造体に対する相対位置を規定するようにも機能する。キャリア膜74は、実質的に平坦であることが好ましい。キャリア膜74は、例えばろう付けに使用されるろう付けレーザ、又はレーザ溶接に使用されるpsパルスレーザもしくはfsパルスレーザに対して、透明とすることができる。好ましくはキャリア膜74は、耐摩耗材料30に比べて剛性であると共に構造体に比べて可撓性である。耐摩耗材料30に対して剛性であるキャリア膜74を提供することで、耐摩耗材料30を構造体上に配置した場合に耐摩耗材料30の別個部分30’の各々と構造体との間で良好な接触を達成できることが保証される。任意選択的に、耐摩耗材料30とキャリア膜74との間に接着層(図示せず)を提供して、キャリア膜74上で耐摩耗材料30又は耐摩耗材料30の別個部分30’を安定化させてもよい。接着層の接着特性は可逆性としてもよく、例えば、所望の場合(例えばろう付けのステップS240の後)に接着層を加熱することで耐摩耗材料30からキャリア膜74を取り外してもよい。接着層は、この接着層をレーザが貫通可能であるように透明とすることができる。
【0037】
[0043] 図4A及び図4Bは、耐摩耗材料30と構造体(未完成基板ホルダ60’)との間にろう付け形成材料80を提供するステップS220を概略的に示す。ろう付け形成材料80は、耐摩耗材料30を未完成基板ホルダ60’にろう付けするのに適している。すなわちろう付け形成材料80は、加熱されると、耐摩耗材料30を未完成基板ホルダ60’に接続する中間ろう付け層81、82を形成するように、耐摩耗材料30及び未完成基板ホルダ60’と化学的に反応する。例えば、未完成基板ホルダ60’がSiC又はSiSiCで作られている場合、ろう付け形成材料80は未完成基板ホルダ60’のSiC又はSiSiCによってカーバイド又はシリサイドを形成し得る。耐摩耗材料30がダイヤモンドで作られている場合、ろう付け形成材料80はダイヤモンドによってカーバイドを形成し得る。
【0038】
[0044] ろう付け形成材料80は、Ti、Zr、Mo、Cr、Nb、V、Ta、Ni、Fe、Co、Al、Ag、Au、C、Si、B、及びそれらの組み合わせから成るろう付け形成材料80の群から選択すればよい。適切なろう付け形成材料80の選択は、特定の耐摩耗材料と、構造体を構成する特定のガラス、セラミック、又はガラスセラミックに依存する。例えば、構造体がSiC又はSiSiCで作られ、かつ耐摩耗材料がダイヤモンドである場合、ろう付け形成材料80は好ましくは、Ti、Zr、Mo、Cr、Nb、V、Ta、C、Si、及びB、及びそれらの組み合わせから成るろう付け形成材料80の群から選択される。例えば、ろう付け形成材料80はAg-Cu-Tiとすればよい。構造体がSiC又はSiSiCで作られ、かつ耐摩耗材料がc-BNである場合、ろう付け形成材料80は好ましくは、Mo、Ni、Fe、Co、Al、Si、Ti、及びZr、及びそれらの組み合わせから成るろう付け形成材料80の群から選択される。
【0039】
[0045] 図4Aに示されているように、ろう付け形成材料80を提供するステップS230は、未完成基板ホルダ60’、特に、耐摩耗材料が提供される構造体の少なくとも一部(未完成バール20’の遠位端面等)を、ろう付け形成材料80でコーティングするステップS231を含み得る。この代わりに又はこれに加えて、構造体に接続される耐摩耗材料30の少なくとも表面をろう付け形成材料80でコーティングしてもよい。一実施形態では、耐摩耗材料30が提供されているキャリア膜74の側面もろう付け形成材料80でコーティングすることで、マスキングの必要をなくし、ろう付け形成材料80の提供を簡単にする。ろう付け形成材料80の厚さは、好ましくは耐摩耗材料30の厚さt未満であり、より好ましくは厚さtの半分未満である。これによって、ろう付けの後、未完成基板ホルダ60’とは反対側の耐摩耗材料30の表面の所望の化学的特性と構造的特性が最適に維持されることを保証する。
【0040】
[0046] 図4Bに示されているように、ろう付け形成材料80を提供するステップS230は更に、構造体(すなわち基板ホルダ60)と耐摩耗材料30(又は耐摩耗材料30の別個部分30’)との間にろう付け形成材料80が位置するように、構造体と耐摩耗材料30を一緒にプレスするステップS232を含む。図4Aに示されているように、未完成基板ホルダ60’上にろう付け形成材料80がコーティングされている場合は、ろう付け形成材料80に耐摩耗材料30をプレスする。あるいは、耐摩耗材料30上にろう付け形成材料80がコーティングされている場合は、ろう付け形成材料80に未完成基板ホルダ60’(特に、未完成基板ホルダ60’の複数の未完成バール20’)をプレスする。未完成基板ホルダ60’と耐摩耗材料30を一緒にプレスして、未完成基板ホルダ60’及び耐摩耗材料30の別個部分30’がろう付け形成材料80と接触することによる適切な濡れを保証する。
【0041】
[0047] また、図4Bは、ろう付け形成材料80を加熱することによって耐摩耗材料30を構造体にろう付けするステップS240を概略的に示す。ろう付け形成材料80は、例えば500~1500℃の範囲内の温度に加熱され得る。あるいは、例えば、比較的冷たい構造体を提供しながら10~100nsのレーザ照射加熱を用いる場合、ろう付け形成材料80はより高温に加熱され得る。ろう付け形成材料80が加熱された場合、ろう付け形成材料80は構造体及び/又は耐摩耗材料30と化学的に結合する及び/又はそれらへ拡散し、これによって中間ろう付け層81、82を形成することができる。図4Cに示されているように、中間ろう付け層81、82は、ろう付け形成材料80が耐摩耗材料30内へ拡散することで形成された第1の部分81と、ろう付け形成材料80が未完成基板ホルダ60’又は他の構造体内へ拡散することで形成された第2の部分82とを含むか、又はこれらから成ることができる。
【0042】
[0048] 耐摩耗材料30を構造体に接続するように機能するろう付け形成材料80の部分は、好ましくは局所的に加熱される。すなわち、ろう付け形成材料80のこれらの部分と、ろう付け形成材料80のこれらの部分に隣接した構造体及び耐摩耗材料30の領域のみが加熱される。未完成基板ホルダ60’の全体が加熱されるわけではないので、未完成基板ホルダ60’を損傷するリスクを低減できる。
【0043】
[0049] 好ましくは、ろう付け形成材料80はろう付けレーザ94により加熱され、これによって耐摩耗材料と構造体との間に位置するろう付け形成材料80の部分をレーザろう付けする。これは図4Bに示されている。ろう付けレーザ94は、キャリア膜72及び耐摩耗材料30を介してろう付け形成材料80を照射及び加熱することができる(例えば、ダイヤモンド等の耐摩耗材料30が透明である場合)。この代わりに又はこれに加えて、ろう付けレーザ94は構造体を介してろう付け形成材料80を照射及び加熱することができる(図示せず)。ろう付けレーザ94は、1又は複数のレーザパルスでろう付け形成材料80の部分を照射できる。ろう付けレーザ94の波長は、ろう付けレーザ94のパワーの50%未満、好ましくは5%未満が耐摩耗材料30で吸収される(レーザビームが耐摩耗材料を介して伝送される場合)か、又は構造体で吸収される(レーザビームが構造体を介して伝送される場合)ように選択すればよい。これにより、ろう付けレーザ94のパワーのほとんどがろう付け形成材料で吸収されることを保証する。通例、各レーザパルスは1~100nsのパルス長を有し、0.05~5J/cmのフルエンス(fluence)を有し得る。あるいは、各レーザパルスは1ns未満のパルス長を有し、0.01~1J/cmの小さいフルエンスを有し得る。ろう付けレーザ94を用いることで、ろう付け形成材料80の照射される部分の迅速な加熱が可能となるので、照射部分の周囲のエリアに対する加熱の影響が軽減し、従って未完成基板ホルダ60’を損傷するリスクが低減する。
【0044】
[0050] また、例えば耐摩耗材料がc-BN(1500℃超の温度では不安定である)である場合、ろう付けレーザ94を用いて耐摩耗材料を加熱してもよい。耐摩耗材料はろう付け形成材料80と物理的に接触しているので、この加熱は伝導性熱伝達によってろう付け形成材料を加熱し、これによって耐摩耗材料を構造体にろう付けする。
【0045】
[0051] また、ろう付けレーザ94以外の加熱デバイスを用いてろう付け形成材料80を局所的に加熱してもよい。例えば、ろう付け形成材料80と加熱デバイスを直接接触させることで、伝導性熱伝達によってろう付け形成材料80を局所的に加熱することができる(例えば、キャリア膜72の加熱、及び耐摩耗材料30の別個部分30’の接触加熱によって)。あるいは、ろう付け形成材料80が300℃未満の温度で未完成基板ホルダ60’及び耐摩耗材料30と化学的に反応する及び/又はそれらへ拡散することができる場合は、未完成基板ホルダ60’の全体を加熱してもよい。これは、未完成基板ホルダ60’がそのような低温に耐えられるからである。
【0046】
[0052] ろう付けステップS240の後、キャリア膜72を耐摩耗材料30から分離すればよい。キャリア膜72に任意選択的な接着層が設けられている場合、この接着層を加熱して、キャリア膜72からの耐摩耗材料30の分離を容易にすることができる。耐摩耗材料30が提供されていない未完成基板ホルダ60’の部分に設けられたろう付け形成材料80のような、過剰なろう付け形成材料80を除去することができる。ろう付けの後、未完成基板ホルダ60’とは反対側の耐摩耗材料30の表面は、支持される物体(基板W等)の平坦な表面を支持するための支持面SPを規定する。任意選択的に、ろう付けの後に耐摩耗材料30を研摩及び平坦化して、耐摩耗材料30で規定された支持面SPがリソグラフィ装置LAで用いるために必要な仕様を満たすことを保証してもよい。
【0047】
[0053] 図4Dは、図4Aから図4Dに示されている方法200で得られる最終複合体を示す。最終複合体は基板ホルダ60である。未完成バール20’と中間ろう付け層81、82及び耐摩耗材料30との組み合わせが、基板ホルダ60のバール20を構成する。
【0048】
[0054] 図5Aから図5Cは、耐摩耗材料を構造体上に提供するための方法200の別の実施形態を示す。この実施形態が図4Aから図4Dの実施形態と異なる点は、耐摩耗材料30が未完成基板ホルダ60’の予め作製された未完成バール20’の上に提供されないことである。耐摩耗材料30は、基板ホルダブランク又はテンプレートの本体21の本体表面22から突出する複数のバール20を形成する。
【0049】
[0055] 図5Aから図5Cの実施形態において、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体は、基板ホルダブランクである。基板ホルダブランクはSiC又はSiSiCで作ることができる。基板ホルダブランクは、本体表面22を有する本体21を含む。本体表面21は実質的に平坦である。基板ホルダブランクは複数のバール20を含まない。
【0050】
[0056] 図5Aから図5Cの実施形態において、耐摩耗材料を提供するステップS220は図4Aから図4Dに関して記載したものと同様である。耐摩耗材料30を複数の別個領域30’で提供することにより、耐摩耗材料30は基板ホルダブランク上に複数のバール20を形成し、これによって基板ホルダ60を形成することができる。耐摩耗材料30を用いて複数のバール20を形成する場合、耐摩耗材料30の厚さt(本体表面22に対して垂直な方向)は、所望のバール20の高さhと等しく、好ましくは10μm~500μmである。別個領域30’の直径dは、50μm~300μmの範囲内とすることができ、例えば約200μmである。2つの隣接した別個領域30’の中心間の距離は、約0.5mm~3mmの範囲内とすることができ、例えば約1.5mmである。別個領域30’の形状は、円形バール20を形成するように平面視で円形とすればよい。また、所望の場合には別個領域30’を他の形状に形成してもよい。
【0051】
[0057] 図5Aから図5Cの実施形態において、ろう付け形成材料80は図4Aから図4Dに関して記載したものと同様である。基板ホルダブランクの本体表面22の全体、又は耐摩耗材料30が提供される本体表面22の少なくとも一部を、ろう付け形成材料80でコーティングする。この代わりに又はこれに加えて、基板ホルダブランクに接続される耐摩耗材料30の表面をろう付け形成材料80でコーティングしてもよい。次いで、例えば図4Aから図4Dに関してすでに記載した通り、耐摩耗材料30を基板ホルダブランクに接続する中間ろう付け層81、82を形成するように、ろう付け形成材料80を(局所的に)加熱する。キャリア膜74及び過剰なろう付け形成材料80を除去し、任意選択的にろう付け形成材料30を研摩及び平坦化して、図5Cに示されている複合体を形成することができる。
【0052】
[0058] 図5Cは、図5Aから図5Cに示されている方法200で得られる最終複合体を示す。最終複合体は基板ホルダ60である。中間ろう付け層の第1の部分81及び耐摩耗材料30が、基板ホルダ60のバール20を構成する。
【0053】
[0059] 図4及び図5は、構造体上に耐摩耗材料を提供するための図3Aの方法200のステップを概略的に示す。図3Bの方法201は、図4及び図5に関して記載したものと同様に実行され得るが、耐摩耗材料30と構造体との間にろう付け形成材料80が提供されない点が異なる。ろう付け形成レーザ94の代わりに、psパルスレーザ又はfsパルスレーザを用いて、耐摩耗材料30又は耐摩耗材料30の別個部分30’の各々を構造体にレーザ溶接することができる。好ましくは、耐摩耗材料30は(psパルスレーザ又はfsパルスレーザに対して)透明であり、構造体は(psパルスレーザ又はfsパルスレーザに対して)不透明であり、psパルスレーザ又はfsパルスレーザは耐摩耗材料30を介して構造体と耐摩耗材料30との間の界面を露光する。psパルスレーザ又はfsパルスレーザは、100ps未満、好ましくは10ps未満のパルス長を有するレーザパルスを放出し得る。各レーザパルスは、焦点において0.01J/cmより大きい、好ましくは0.1~1J/cmのフルエンスを有し得る。psパルスレーザ又はfsパルスレーザを、耐摩耗材料30の別個領域30’の各々と構造体との間の界面の少なくとも一部で集束させることで、この界面で1000K超の温度までの極めて局所的な加熱を達成できる。このような極めて局所的な加熱によって、構造体のガラス、セラミック、又はガラスセラミック材料内への耐摩耗材料30の拡散、及び/又はその逆の拡散が生じる。これにより、耐摩耗材料30を構造体に接続する相互拡散層が生成され、結果として耐摩耗材料30と構造体との間の強力な結合が得られる。
【0054】
[0060] 方法200を用いて、本発明の一実施形態に従った複合体を得ることができる。図4D及び図5Cは、そのような複合体の2つの実施形態を概略的に示す。図4D及び図5Cの実施形態において、複合体はリソグラフィ装置LAで用いられる基板ホルダ60である。あるいは、複合体は他の任意の支持構造であってもよく、例えば、リソグラフィ装置LAで用いられるレチクルクランプもしくはレチクルホルダ、基板クランプ、又はリソグラフィ装置LAで用いられる他の任意の支持テーブル等である。また、複合体は、例えばメトロロジ装置や他の基板処理デバイス等、リソグラフィ装置LA以外の用途で用いられる支持構造であってもよい。また、複合体は、物体を支持するためのものでなく、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックの構造体に極めて耐摩耗性の高い材料を提供することから利益を得る他の任意の用途のためのものであってもよい。
【0055】
[0061] 複合体は、未完成基板ホルダ60’(図4Dに示されている)、基板ホルダブランク(図5Cに示されている)、レチクルクランプブランク、又は他の任意の支持構造ブランクのような、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を含む。複合体は、20GPa超の硬さを有する、例えば耐摩耗層の形態の耐摩耗材料30も含む。複合体は更に中間ろう付け層81、82を含む。中間ろう付け層81、82は、ろう付けによって構造体と耐摩耗材料を接続する。中間ろう付け層81、82は、構造体内へ及び耐摩耗材料内へ拡散したろう付け形成材料80を含み得る。透過電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)の集束イオンビーム(FIB:focused ion beam)システム、ラマン分光法、又は光学顕微鏡を用いた視覚的検査によって複合体を検査する場合、中間ろう付け81、82は容易に検出することができる。
【0056】
[0062] 従って複合体は、リソグラフィ装置LA又は他の用途において基板ホルダ60又は他の支持構造として使用され得る。例えば、基板W、マスクMA、又は複合体からの他の物体の所定数のロード/アンロードサイクルの後に、複合体の中間ろう付け81、82が疲労した場合、中間ろう付け層81、82を修理することができる。これは中間ろう付け層81、82を加熱することによって実施できる。このような加熱は、最初のろう付けステップと同様の又はより低レベルの照射を用いたろう付けレーザ94によって実行され得る。
【0057】
[0063] 方法201を用いて、本発明の一実施形態に従った複合体を得ることができる。この複合体は上述したものと同様であり得るが、中間ろう付け層81、82でなく相互拡散層が提供される点が異なる。相互拡散層は、耐摩耗材料30を構造体にレーザ溶接することによって形成される。相互拡散層は、構造体のガラス、セラミック、又はガラスセラミック材料から耐摩耗材料までの(元素)組成の勾配を含む。相互拡散層は、中間ろう付け層81、82と同様に検出及び/又は修理することができる。
【0058】
[0064] 図6Aから図6Dは、耐摩耗材料を提供するステップS220の好適な実施形態を概略的に示す。ステップS220は好ましくは、ダイヤモンド、c-BN、C、Si、AlMgB14、Al、WB、V、Ta、Zr、Nb、c-BCN、他のC-B-N三元化合物、又はこれらの任意の組み合わせの層のような、20GPa超の硬さを有する材料層31を、成長基板72上に成長させること(S221)を含む。成長基板は例えば、単結晶又は多結晶のSiC、Si、又はサファイヤで作ることができる。材料層31は、例えば500℃~1200℃の成長基板温度でエンハンス蒸着を用いた最適な条件下で成長させればよい。最適な成長条件は、成長させる材料に依存する。また、高圧高温焼結/ホットプレス等、結晶硬質膜を成長させるか又は生成する他の方法を用いて材料層31を提供してもよい。次いで、材料層31の少なくとも一部を成長基板72からキャリア膜74へ移動させ(S222)、これによってキャリア膜74上に耐摩耗材料30を形成することができる。キャリア膜74へ移動させる材料層31の部分は、構造体に適用される耐摩耗材料30の別個部分30’に対応する。このため、移動させる材料層31の部分のパターンは、構造体に適用される耐摩耗材料30のパターンと等しい。
【0059】
[0065] 図6A及び図6Bに示されているように、材料層31の一部をキャリア膜へ移動させるためにレーザ誘起剥離(laser induced delamination)を用いることができる。剥離レーザ92は、例えばフェムト秒(fs)パルスレーザビームを用いて、移動させる材料層31の部分を照射できる。剥離レーザ92は、500fs未満、好ましくは100fs未満のパルス長を有するレーザパルスを放出し得る。これらのレーザパルスのフルエンスは0.1J/cmより大きく、好ましくは1J/cmより大きくすることができる。これにより、成長基板72と材料層31との間の界面の照射領域にアブレーションが生じるので、材料層31の一部が剥離し、キャリア膜74の方へ又はキャリア膜74上の任意選択的な接着層の方へ送出される。任意選択的な接着層は、剥離部分がキャリア膜74に接着せずにキャリア膜74に当たって跳ね返るリスクを低減するという追加の利点を有する。
【0060】
[0066] 剥離レーザ92は、キャリア膜74を介して材料層31の一部を照射して(図6Aに示されているように)、材料層31の一部のキャリア膜74への、いわゆる逆方向移動(backward transfer)を可能とする。あるいは、剥離レーザ92は成長基板72を介して材料層31の一部(例えばc-BN)を照射して(図6Bに示されているように)、材料層31の一部のキャリア膜74への、いわゆる順方向移動(forward transfer)を可能とする。移動ステップは、好ましくは低圧で又は真空下で実行されるべきである。移動ステップの間、キャリア膜74と材料層31との間の距離Hは、好ましくは1mm未満、より好ましくは100μmとして、キャリア膜74上での別個部分30’の正確な位置決めを保証する。
【0061】
[0067] 任意選択として、レーザ誘起剥離の前に、材料層31の一部のキャリア膜74への移動を促進するように成長基板72上の材料層を予めパターン形成してもよい。これは図6C及び図6Dに概略的に示されている。このように予めパターン形成することは、10μm超の厚さの材料層31のような、比較的厚い材料層31の部分を移動させるには特に有用である。例えば図6Cに示されているように、移動させる部分を取り囲む材料層31の部分、又は移動させない材料層31の部分全体を、レーザ誘起剥離の前にエッチングすることができる。これによって、より精密な剥離プロセスが保証され、移動部分の損傷が抑えられる。あるいは図6Dに示されているように、第1のステップでレーザ誘起剥離を用いて、移動させる部分を取り囲む材料層31の部分を剥離及び除去することができる。次いで第2のステップでレーザ誘起剥離を用いて、移動させる部分を剥離してキャリア膜74へ移動させることができる。
【0062】
[0068] 本発明は、図6Aから図6Dのレーザ誘起剥離プロセスを用いてキャリア膜74上に耐摩耗材料を提供することに限定されない。材料層31を成長させ、次いでこの材料層31の一部をキャリア膜74へ移動させて耐摩耗材料を生成するのではなく、例えば成長基板72上でのエンハンス蒸着中にマスクを用いて、耐摩耗材料を複数の別個部分30’で成長させてもよい。また、耐摩耗材料を直接キャリア膜74の上に成長させること、又は成長基板72から構造体へ直接に移動させることも可能である。
【0063】
[0069] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。更に基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0064】
以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
【0065】
[0070] 本発明は、以下の番号を付けた条項から更に明らかにすることができる。
1.構造体上に耐摩耗材料を提供するための方法であって、
ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体を提供するステップと、20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料を提供するステップと、耐摩耗材料を構造体にろう付け又はレーザ溶接するステップと、を含む方法。
2.この方法は、物体を支持するための支持面を規定する複数のバールを含む支持構造を製造するためのものであり、ろう付け又はレーザ溶接の後、構造体とは反対側の耐摩耗材料の表面はバールの遠位端面を規定する、条項1に記載の方法。
3.耐摩耗材料と構造体との間に、耐摩耗材料を構造体にろう付けするのに適したろう付け形成材料を提供することと、ろう付け形成材料を加熱することによって耐摩耗材料を構造体にろう付けすることと、を含む、条項1又は2に記載の方法。
4.ろう付け形成材料は、Ti、Zr、Mo、Cr、Nb、V、Ta、Ni、Fe、Co、Al、Ag、Au、C、Si、B、又はこれらの任意の組み合わせから成るろう付け形成材料の群から選択される、条項3に記載の方法。
5.ろう付け形成材料を提供するステップは、耐摩耗材料が提供される構造体の少なくとも一部をろう付け形成材料でコーティングすること、及び/又は、構造体に接続される耐摩耗材料の表面をろう付け形成材料でコーティングすることと、構造体と耐摩耗材料との間にろう付け形成材料が位置するように、構造体と耐摩耗材料を一緒にプレスすることと、を含む、条項3又は4に記載の方法。
6.耐摩耗材料を構造体にろう付けするステップはろう付け形成材料を局所的に加熱することを含む、条項3から5のいずれか1項に記載の方法。
7.ろう付け形成材料及び/又はろう付け形成材料に隣接した耐摩耗材料の少なくとも一部を局所的に加熱するためにろう付けレーザが用いられる、条項6に記載の方法。
8.ろう付けレーザは耐摩耗材料を介して又は構造体を介してろう付け形成材料を照射する、条項7に記載の方法。
9.構造体の一部及び/又は耐摩耗材料にコーティングされたろう付け形成材料の厚さは耐摩耗材料の厚さ未満である、条項3から8のいずれか1項に記載の方法。
10.耐摩耗材料を構造体と物理的に接触させること、及び、耐摩耗材料と構造体との間の界面をpsパルスレーザ又はfsパルスレーザを用いて露光すること、によって耐摩耗材料を構造体にレーザ溶接することを含む、条項1又は2に記載の方法。
11.耐摩耗材料は透明であると共に構造体は不透明であり、耐摩耗材料と構造体との間の界面は耐摩耗材料を介して露光される、条項10に記載の方法。
12.構造体はSiC又はSiSiCで作られている、条項1から11のいずれかに記載の方法。
13.構造体は、本体表面を有する本体と、本体表面から突出している複数の未完成バールと、を含み、各未完成バールは遠位端面を有し、複数のバールを含む支持構造を形成するように耐摩耗材料は複数の未完成バールの各々の遠位端面上に提供され、複数のバールの遠位端面は物体の平坦な表面を支持するための支持面を規定する、条項1から12のいずれかに記載の方法。
14.耐摩耗材料は0.1μmから10μmの厚さを有する、条項13に記載の方法。
15.構造体は本体表面を有する本体を含み、ろう付け又はレーザ溶接の後、耐摩耗材料は本体表面から突出している複数のバールを形成し、複数のバールは物体の平坦な表面を支持するための支持面を規定する、条項1から12のいずれか1項に記載の方法。
16.耐摩耗材料は10μmから500μmの厚さを有する、条項15に記載の方法。
17.耐摩耗材料は、ダイヤモンド、c-BN、Si、C、AlMgB14、Al、WB、V、Ta、Zr、Nb、c-BCN、他のC-B-N三元化合物、又はこれらの任意の組み合わせのうち1つである、条項1から16のいずれかに記載の方法。
18.耐摩耗材料は複数の分離部分で提供される、条項1から17のいずれかに記載の方法。
19.耐摩耗材料を提供するステップは耐摩耗材料をキャリア膜上に提供することを含む、条項1から18のいずれかに記載の方法。
20.ろう付けステップの後、耐摩耗材料からキャリア膜を分離させるステップを更に含む、条項19に記載の方法。
21.耐摩耗材料を提供するステップは、20GPaを超える硬さを有する材料の層を成長基板上で成長させることと、材料の層の一部を成長基板からキャリア膜へ移動させることにより、キャリア膜上に耐摩耗材料を形成することと、を含む、条項19又は20に記載の方法。
22.材料の層の一部をキャリア膜へ移動させるためにレーザ誘起剥離が用いられる、条項21に記載の方法。
23.レーザ誘起剥離の前に、成長基板上の材料の層の一部の移動を促進するように材料の層を予めパターン形成する、条項22に記載の方法。
24.条項項1から23のいずれかの方法によって得られる複合体。
25.ガラス、セラミック、又はガラスセラミックで作られた構造体と、20GPaを超える硬さを有する耐摩耗材料と、構造体と耐摩耗材料を接続する中間ろう付け層又は相互拡散層と、を備える複合体。
26.複合体は、物体を支持するための支持面を規定する複数のバールを含む支持構造であり、構造体とは反対側の耐摩耗材料の表面はバールの遠位端面を規定する、条項24又は25に記載の複合体。
27.支持構造はリソグラフィ装置で用いられる基板ホルダである、条項24から26のいずれか1項に記載の複合体。
28.構造体は、本体表面を有する本体と、本体表面から突出している複数の未完成バールと、を含む未完成基板ホルダであり、各未完成バールは遠位端面を有し、耐摩耗材料は複数の未完成バールの各々の遠位端面上に提供され、これによって基板を支持するための支持面を規定する、条項27に記載の複合体。
29.構造体は、本体表面を有する本体を含む基板ホルダブランクであり、耐摩耗材料は本体表面から突出している複数のバールを形成し、複数のバールは基板を支持するための支持面を規定する、条項27に記載の複合体。
30.支持構造はリソグラフィ装置で用いられるレチクルクランプであり、耐摩耗材料はパターニングデバイスを支持するための支持面を規定する、条項24から26のいずれか1項に記載の複合体。
31.中間ろう付け層を含み、この中間ろう付け層は、構造体内へ及び耐摩耗材料内へ拡散されたろう付け形成材料を含む、条項24から30のいずれか1項に記載の複合体。
32.相互拡散層を含み、この相互拡散層は、構造体のガラス、セラミック、又はガラスセラミック材料から耐摩耗材料までの組成の勾配を含む、条項25から31のいずれか1項に記載の複合体。
33.条項24から32のいずれか1項に記載の複合体を含むリソグラフィ装置。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D