(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20231226BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20231226BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20231226BHJP
C08G 64/06 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/11
C08K5/12
C08G64/06
(21)【出願番号】P 2018194539
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐野 真由
(72)【発明者】
【氏名】田島 寛之
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-068375(JP,A)
【文献】特開2013-064046(JP,A)
【文献】特開2017-110180(JP,A)
【文献】特開2008-308606(JP,A)
【文献】特開2009-292962(JP,A)
【文献】特開2014-156507(JP,A)
【文献】特開2014-118415(JP,A)
【文献】特許第5815061(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)テトラエステル化合物を0.
4~10.0質量部含み、
前記(A)ポリカーボネート樹脂が、全構造単位中、下記式(1)で表される構造単位を5モル%以上含み、
前記(B)テトラエステル化合物が、多価カルボン酸と炭素数20以上の1価アルコールとから得られるテトラエステル化合物、多価アルコールと炭素数20以上の1価カルボン酸とから得られるテトラエステル化合物、または、その混合物
であって、下記式(B1)で表される部分構造を含む、樹脂組成物
であって、
前記樹脂組成物が、前記(A)ポリカーボネート樹脂を80質量%以上の割合で含む、樹脂組成物;
式(1)
【化1】
式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。
式(B1)
【化3】
上記式中、波線は結合手を表す。
【請求項2】
前記(B)テトラエステル化合物が、4価カルボン酸と炭素数20以上の1価アルコールとから得られるテトラエステル化合物、または、4価アルコールと炭素数20以上の1価カルボン酸とから得られるテトラエステル化合物、またはその混合物
であって、前記式(B1)で表される部分構造を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリカーボネート樹脂は、さらに、下記式(2)で表される構造単位を含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物;
式(2)
【化4】
式(2)中、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化5】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。
【請求項4】
前記(A)ポリカーボネート樹脂は、全構造単位中、前記式(1)で表される構造単位を5~95モル%と、前記式(2)で表される構造単位95~5モル%を含む、請求項
3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
厚さ2mmの成形品に成形した時のヘイズが5.0%以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成される成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および成形品に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を用いた透明性および耐擦傷性に優れ、表面硬度に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、電気的特性、透明性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして、電気電子機器分野、自動車分野等の様々な分野において幅広く利用されている。近年、これらの分野においては、成形加工品の薄肉化、低コスト化、小型化、軽量化が進展し、成形素材のさらなる性能向上が要求され、いくつかの提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定の構造を有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、ポリエチレン系重合体を主鎖とし、ビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(B)0.1~12質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。同文献には、前記ポリカーボネート樹脂組成物が爪での傷付き耐性に優れることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、ビスフェノールC由来の構造単位を含むポリカーボネート樹脂は、鉛筆硬度が高い傾向にあることが知られている。ここで、ビスフェノールC由来の構造単位を含むポリカーボネート樹脂から成形される成形品上に塗装等の処理(以下、「塗装レス」ということがある)を施さずに製品として使用する場合がある。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、このような成形品は、鉛筆硬度が高いにもかかわらず、爪傷付き耐性にやや問題があることがわかった。上記特許文献1に記載の樹脂組成物は、爪傷付き耐性に優れた樹脂組成物であるが、同文献の実施例では漆黒性などを追及している。すなわち、透明性を求める用途については、新たな材料の開発が求められる。また、塗装レスの製品などでは、指紋などをクリーナーなどでふき取る場合がある。そこで、溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性も求められる。
さらに、ポリカーボネート樹脂に適切な添加剤を配合して、樹脂組成物の透明性および爪傷つき耐性が向上しても、添加剤の種類によっては、押出性や透明性が劣ってしまう場合がある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、表面硬度および透明性に優れ、耐擦傷性に優れ、また初期および溶媒拭き取り後の爪傷つき耐性に優れ、特に摩耗試験後の透明性の維持率が高く、押出性に優れた樹脂組成物、および、前記樹脂組成物を用いた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に、特定の多価カルボン酸と1価アルコールより得られるテトラエステル化合物、および/または多価アルコールと1価カルボン酸より得られるテトラエステル化合物を配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<9>により、上記課題は解決された。
<1> (A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)テトラエステル化合物を0.3~10.0質量部含み、
前記(A)ポリカーボネート樹脂が、全構造単位中、下記式(1)で表される構造単位を5モル%以上含み、
前記(B)テトラエステル化合物が、多価カルボン酸と炭素数20以上の1価アルコールとから得られるテトラエステル化合物、または多価アルコールと炭素数20以上の1価カルボン酸とから得られるテトラエステル化合物、またはその混合物である、
樹脂組成物;
式(1)
【化1】
式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。
<2> 前記(B)テトラエステル化合物が、4価カルボン酸と炭素数20以上の1価アルコールとから得られるテトラエステル化合物、または、4価アルコールと炭素数20以上の1価カルボン酸とから得られるテトラエステル化合物、またはその混合物である<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記(B)テトラエステル化合物が、下記式(B1)で表される部分構造を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物;
式(B1)
【化3】
上記式中、波線は結合手を表す。
<4> 前記(A)ポリカーボネート樹脂は、さらに、下記式(2)で表される構造単位を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の樹脂組成物;
式(2)
【化4】
式(2)中、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化5】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。
<5> 前記(A)ポリカーボネート樹脂は、全構造単位中、前記式(1)で表される構造単位を5~95モル%と、前記式(2)で表される構造単位95~5モル%を含む、<4>に記載の樹脂組成物。
<6> 厚さ2mmの成形品に成形した時のヘイズが5.0%以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<7> <1>~<6>のいずれかに記載の樹脂組成物から形成される成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、表面硬度が高く、耐擦傷性および押出性に優れ、透明性が高く、かつ、初期および溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性に優れ、特に摩耗試験後の透明性の維持率が高い樹脂組成物、および、前記樹脂組成物を用いた成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)テトラエステル化合物を0.3~10.0質量部含み、
前記(A)ポリカーボネート樹脂が、全構造単位中、後述する式(1)で表される構造単位を5モル%以上含み、
前記(B)テトラエステル化合物が、多価カルボン酸と炭素数20以上の1価アルコールとから得られるテトラエステル化合物、または多価アルコールと炭素数20以上の1価カルボン酸とから得られるテトラエステル化合物、またはその混合物であることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすることにより、表面硬度が高く、押出性に優れ、透明性が高く、かつ、初期および溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性に優れた樹脂組成物を提供可能になる。以下、本発明の詳細について説明する。
【0011】
<(A)ポリカーボネート樹脂>
本発明の樹脂組成物に用いられる(A)ポリカーボネート樹脂は、全構造単位中、式(1)で表される構造単位を5モル%以上含む。
式(1)
【化6】
式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化7】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。
【0012】
式(1)中の2つのR2は、それぞれ同一でも、異なっていてもよく、好ましくは同一である。R2は水素原子であることが好ましい。
【0013】
式(1)中、X
1は、
【化8】
である場合、R
3およびR
4は、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
またX
1が、
【化9】
の場合、Zは、上記式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
式(1)中、X
1は下記構造が好ましい。
【化10】
【0014】
本発明における(A)ポリカーボネート樹脂は、全構造単位中、式(1)で表される構造単位を、5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、一層好ましくは50モル%以上、より一層好ましくは60モル%以上、さらに一層好ましくは65モル%以上含む。また、上限値は限定されるものではないが、全構造単位中、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下、一層好ましくは80モル%以下、より一層好ましくは76モル%以下含む。また、(A)ポリカーボネート樹脂における式(1)で表される構造単位の含有量は、全構造単位中、40モル%以下であってもよい。
【0015】
本発明では、(A)ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構造単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0016】
上記式(1)の好ましい構造単位の具体例としては、以下のi)~iv)が挙げられる。
i)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンから構成される構造単位、すなわち、R1がメチル基、R2が水素原子、X1が-C(CH3)2-である構造単位、
ii)2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンから構成される構造単位、すなわち、R1がメチル基、R2がメチル基、X1が-C(CH3)2-である構造単位、
iii)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから構成される構造単位、すなわち、R1がメチル基、R2が水素原子、X1がシクロヘキシリデン基である構造単位、
iv)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカンから構成される構造単位、すなわち、R1がメチル基、R2が水素原子、X1がシクロドデシリデン基である構造単位である。
これらの中で、上記i)、ii)およびiii)が好ましく、上記i)およびiii)がより好ましく、上記i)がさらに好ましい。
【0017】
本発明において、(A)ポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位を有していてもよい。他の構造単位としては、下記式(2)で表される構造単位が好ましい。
式(2)
【化11】
式(2)中、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化12】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。
ZがCと結合して形成される脂環式炭化水素としては、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。ZがCと結合して形成される置換基を有する脂環式炭化水素としては、上述した脂環式炭化水素基のメチル置換体、エチル置換体などが挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
【0018】
式(2)のX
2の好ましい範囲は、式(1)のX
1の好ましい範囲と同義である。すなわち、式(2)中、X
2は下記構造が好ましい。
【化13】
R
3およびR
4は、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
【0019】
上記式(2)で表される構造単位の好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノール-Aから構成される構造単位(カーボネート構造単位)である。
本発明では、式(2)で表される構造単位を、全構造単位中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上、一層好ましくは20モル%以上、より一層好ましくは24モル%以上含む。また、式(2)で表される構造単位を、全構造単位中、60モル%以上含んでいてもよい。また、式(2)で表される構造単位を、全構造単位中、95モル%以下含むことが好ましく、90モル%以下含むことがより好ましく、80モル%以下含むことがさらに好ましく、60モル%以下含むことが一層好ましく、50モル%以下含むことがより一層好ましく、40モル%以下含むことがさらに一層好ましく、35モル%以下含むことが特に一層好ましい。
本発明において、(A)ポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構造単位を含まなくてもよいし、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0020】
本発明において、(A)ポリカーボネート樹脂は、他の構造単位として以下に示すジヒドロキシ化合物由来の構造単位を含んでいてもよい。
【0021】
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4'-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4'-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-6-メチル-3-tert-ブチルフェニル)ブタン。
【0022】
また、他の構造単位の一実施形態として、WO2017/099226号パンフレットの段落0008に記載の式(1)で表される構造単位も例示され、さらに、WO2017/099226号パンフレットの段落0043~0052の記載も参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0023】
さらにまた、他の構造単位の他の一実施形態として、下記式(3)で表される構造単位も例示される。
【化14】
式(3)中、R
15~R
18は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~9のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数2~5のアルケニル基または炭素数7~17のアラルキル基を表す;n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
式(3)で表される構造単位の詳細は、特開2011-046769号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0024】
(A)ポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表される構造単位および式(2)で表される構造単位以外の構造単位の含有量は、全構造単位中、30モル%以下であるのが好ましく、より好ましくは20%モル以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、5モル%以下であってもよく、1モル%以下であってもよい。
【0025】
以下に、本発明における(A)ポリカーボネート樹脂の好ましい実施形態について説明する。
(1)全構造単位のうち、式(1)で表される構造単位を95モル%超で含むポリカーボネート樹脂。
(2)全構造単位のうち、式(1)で表される構造単位を5~95モル%と、式(1)で表される構造単位以外の構造単位(好ましくは式(2)で表される構造単位)を95~5モル%以上を含むポリカーボネート樹脂。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂が、式(1)で表される構造単位以外の構造単位(好ましくは式(2)で表される構造単位)を含む場合、以下のブレンド形態が例示される。
・全構造単位の50モル%超(好ましくは、70モル%以上、95モル%以上)が式(1)で表される構造単位からなるポリカーボネート樹脂(A1)と、全構造単位の95モル%超が式(2)で表される構造単位からなるポリカーボネート樹脂(A2)の混合物:
・式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位の合計が全構造単位の95モル%超を占める共重合ポリカーボネート樹脂(A3):
・上記ポリカーボネート樹脂(A1)と、上記ポリカーボネート樹脂(A2)と、上記共重合ポリカーボネート樹脂(A3)の混合物:
・上記ポリカーボネート樹脂(A1)と上記共重合ポリカーボネート樹脂(A3)の混合物;
・上記共重合ポリカーボネート樹脂(A3)と上記ポリカーボネート樹脂(A2)の混合物;
・上記のいずれかの態様において、ポリカーボネート樹脂(A1)、ポリカーボネート樹脂(A2)および共重合ポリカーボネート樹脂(A3)の少なくとも1つについて、2種以上含む混合物;
いずれの実施形態においても、(A)ポリカーボネート樹脂中の式(1)で表される構造単位を5モル%以上の割合で含んでいればよく、さらには、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位が全構造単位中に、上述の好ましい範囲を満たす割合で含まれていることが好ましい。
【0026】
本発明において、上記に例示したブレンド形態において、特に(A1)ポリカーボネート樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂を含む形態が好ましい。(A1)ポリカーボネート樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂を含む場合、両者の混合比は、質量比で、5:95~95:5であることが好ましく、10:90~95:5であることがより好ましく、15:85~95:5であることがさらに好ましく、15:85~90:10であることが一層好ましく、50:50~90:10であることがより一層好ましく、60:40~85:15であることがさらに一層好ましく、65:35~85:15であることが特に一層好ましく、60:40~80:20であることがより特に一層好ましく、70:30~80:20であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、(A1)ポリカーボネート樹脂および(A2)ポリカーボネート樹脂を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。このような構成とすることにより、鉛筆硬度を高くすることができる。
【0027】
本発明において、(A)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、下限値が9,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、12,000以上であることがさらに好ましい。また、Mvの上限値は、32,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、28,000以下であることがさらに好ましい。
粘度平均分子量を上記下限値以上とすることにより、成形性が向上し、かつ、機械的強度の大きい成形品が得られる。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の流動性が向上し、薄肉の成形品なども効率的に製造することができる。
粘度平均分子量(Mv)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される(以下、Mvについて同じ)。2種以上の(A)ポリカーボネート樹脂を含む場合は、各ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量に質量分率をかけた値の合計とする。以下、粘度平均分子量について同様に考える。
【0028】
上記(A)ポリカーボネート樹脂は、ISO 15184に従って測定した鉛筆硬度が3B~2Hであることが例示され、B~2Hであることが好ましく、HB~2Hであることがより好ましい。鉛筆硬度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される(以下、鉛筆硬度について同じ)。2種以上の(A)ポリカーボネート樹脂を含む場合は、混合物の鉛筆硬度が上記範囲であることが好ましい。
【0029】
上記(A)ポリカーボネート樹脂を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法およびプレポリマーの固相エステル交換法を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法および溶融エステル交換法が好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂を組成物の80質量%以上の割合で含むことが好ましく、85質量%以上の割合で含むことがより好ましく、90質量%以上の割合で含むことがさらに好ましく、93質量%以上の割合で含むことが一層好ましい。(A)ポリカーボネート樹脂の上限は特に定めるものではないが、例えば、99.4質量%以下とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
<(B)テトラエステル化合物>
本発明の樹脂組成物は、(B)テトラエステル化合物を含む。
本発明で用いる(B)テトラエステル化合物は、多価カルボン酸と炭素数20以上(好ましくは炭素数20~50)の1価アルコールとから得られるテトラエステル化合物、多価アルコールと炭素数20以上(好ましくは炭素数20~50)の1価カルボン酸とから得られるテトラエステル化合物、または、その両方の混合物である。
本発明の樹脂組成物がこのようなテトラエステル化合物(B)を含有することにより、ポリカーボネート樹脂の分解が抑制され、成形時等のガスの発生を効果的に抑制でき、さらにポリカーボネート樹脂との相溶性が優れる。このため、押出性に優れ、透明性が高く、かつ、初期および溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性に優れた成形品を形成できる樹脂組成物とすることができる。
【0032】
前記テトラエステル化合物(B)は、4価カルボン酸と1価アルコールとからなるテトラエステル化合物、1価カルボン酸と4価アルコールとからなるテトラエステル化合物、またはその混合物が好ましい。
前記1価アルコールおよび1価カルボン酸は、それぞれ、脂肪族構造、脂環式構造および芳香族構造の少なくとも1つを含んでいてもよく、それぞれ、脂肪族構造および/または脂環式構造を含むことが好ましい。前記1価アルコールおよび1価カルボン酸は、それぞれ、直鎖または分岐の脂肪族構造あるいは脂環式構造と、カルボキシル基または水酸基とから構成されることが好ましい。
1価アルコールおよび1価カルボン酸は、それぞれ、炭素数20以上であり、炭素数21以上であることが好ましく、また、炭素数の上限は50以下が好ましく、40以下がより好ましく、32以下がさらに好ましく、30以下が一層好ましい。
前記4価カルボン酸および前記4価アルコールは、それぞれ、脂肪族構造、脂環式構造、および、芳香族構造の少なくとも1つを含んでいてもよく、それぞれ、脂肪族構造および/または脂環式構造を含むことが好ましい。
前記4価カルボン酸および前記4価アルコールは、それぞれ、直鎖または分岐の脂肪族構造あるいは脂環式構造と、カルボキシル基または水酸基とから構成されることが好ましい。前記4価カルボン酸および前記4価アルコールの炭素数は、それぞれ、3以上であることが好ましく、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。また、前記4価カルボン酸および前記4価アルコールの炭素数は、それぞれ、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
【0033】
特に、本発明で用いるテトラエステル化合物は、炭素数3~10の4価カルボン酸と炭素数20~40の1価アルコールとから得られるテトラエステル化合物、または炭素数3~10の4価アルコールと炭素数20~40の1価カルボン酸ととから得られるテトラエステル化合物、またはその混合物であることが好ましく、炭素数3~10の4価カルボン酸と炭素数20~30の1価アルコールとから得られるテトラエステル化合物、または炭素数3~10の4価アルコールと炭素数20~30の1価カルボン酸とから得られるテトラエステル化合物、またはその混合物であることがより好ましく、炭素数3~10の4価アルコールと炭素数20~30の1価カルボン酸とから得られるテトラエステル化合物またはその混合物であることがさらに好ましい。
さらに、本発明で用いる4価アルコールと1価カルボン酸とからなるテトラエステル化合物は、1価カルボン酸の炭素数が、4価アルコールの炭素数よりも、10以上大きいことが好ましく、10~20大きいことがより好ましい。このような構成とすることにより、押出時や成形時にガスが発生しにくくなり、成形品の外観や物性がより向上する傾向にある。
上記4価のカルボン酸は、置換基を有していてもよいし有していなくてもよいが、有していない方が好ましい。置換基を有さない方が得られる成形品の透明性がより向上する傾向にある。カルボン酸は、酸素原子、炭素原子、水素原子のみから構成されることが好ましい。
【0034】
炭素数20以上の1価カルボン酸(カッコ内は炭素数)の具体例としては、ベヘン酸(22)、リグノセリシン酸(24)、セロチン酸(26)、モンタン酸(28)、メリシン酸(30)などが挙げられる。
【0035】
炭素数20以上の1価アルコール(カッコ内は炭素数)の具体例としては、ベヘニルアルコール(22)およびモンタニルアルコール(28)等が挙げられる。
【0036】
4価カルボン酸(カッコ内は炭素数)の具体例としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸(10)、1,2,3,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸(10)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(10)、1,2,3,5-ベンゼンテトラカルボン酸(10)等が挙げられる。
【0037】
4価アルコール(カッコ内は炭素数)の具体例としては、エリトリトール(4)、ペンタエリトリトール(5)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラオール(6)、1,2,3,5-シクロヘキサンテトラオール(6)、1,2,4,5-ベンゼンテトラオール(6)、1,2,3,5-ベンゼンテトラオール(6)等が挙げられる。
【0038】
本発明で用いるテトラエステル化合物(B)は、下記式(B1)で表される部分構造を含むことが好ましい。
式(B1)
【化15】
上記式中、波線は結合手を表す。
【0039】
なかでも、本発明で用いるテトラエステル化合物(B)は、下記式(B10)で表される化合物であることが好ましい。
式(B10)
【化16】
【0040】
上記式中、RB1~RB4は、それぞれ独立して炭素数1以上の脂肪族炭化水素基を表し、RB1~RB4の少なくとも一つが炭素数20以上の脂肪族炭化水素基を表す。RB1~RB4が表す脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。RB1~RB4が表す脂肪族炭化水素基の炭素数は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましく、20以上であることが特に好ましい。上限は、45以下が好ましく、40以下がより好ましく、36以下が更に好ましい。RB1~RB4が表す脂肪族炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立して20以上であることが好ましい。
【0041】
前記(B)テトラエステル化合物の水酸基価は、100mgKOH/g以下であることが好ましく、70mgKOH/g以下であることがより好ましく、50mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、10mgKOH/g以下であることが一層好ましい。前記(B)テトラエステル化合物の水酸基価の下限値は、特に定めるものではないが、例えば、1mgKOH/g以上である。(B)テトラエステル化合物の水酸基価を100mgKOH/g以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂の分解の促進を効果的に抑制し、押出時や成形時等にガスが発生しにくくなり、成形品の外観や物性が向上する傾向にあり、好ましい。
この態様によれば、本発明の組成物から得られた成形品は、エタノールを浸み込ませたコットンにて拭き取り後の爪傷付き耐性にも優れる。
【0042】
本発明で用いるテトラエステル化合物(B)の分子量は、2200以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1800以下であることがさらに好ましい。下限は、1400以上であることが好ましい。テトラエステル化合物(B)の分子量が上記範囲であれば、高透明性と高爪傷付き耐性のバランスにより優れた成形品を得ることができる。
【0043】
本発明で用いるテトラエステル化合物は、炭素数の異なる複数の化合物の混合物であることが多いが、本発明においては、主成分(好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上)として含有するエステル化合物をさすこととする。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)テトラエステル化合物を0.3~10.0質量部含む。(B)テトラエステル化合物の配合量の下限値は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.4質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、0.6質量部以上であることが更に好ましく、0.8質量部以上であることが一層好ましく、1.0質量部以上であることがより一層好ましく、1.5質量部以上であることがさらに一層好ましく、1.8質量部以上であることが特に一層好ましく、さらには、2.0質量部以上であるのが好ましい。上記範囲とすることにより、爪傷付き耐性をより向上させることができる。(B)テトラエステル化合物の配合量の上限値は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、9.0質量部以下であることが好ましく、8.0質量部以下、7.0質量部以下、6.0質量部以下、5.0質量部以下、4.0質量部以下、3.0質量部以下、2.5質量部以下であってもよい。好ましい範囲とすることにより、耐加水分解性が向上し、金型汚染をより効果的に抑制できる。本発明では、テトラエステル化合物の配合量が少なくても、爪傷付き耐性に優れる構成とできる。本発明の樹脂組成物は、(B)テトラエステル化合物を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0045】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記したポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(例えば、アクリル樹脂等)、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、また、無機充填材を含まないことが好ましいが、無機充填材を含んでいてもよい。無機充填材を含むことにより、得られる成形品の機械的強度をより向上させることができる。本発明の樹脂組成物の一実施形態として、無機充填材を含まないか、前記(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、無機充填材を8質量部以下(好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下)の割合で含む樹脂組成物が例示される。無機充填材を含まないか、上記配合量の範囲とすることにより、得られる成形品の透明性をより向上させることができる。無機充填材としては、特開2017-110180号公報の段落0075~0079の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
本発明の樹脂組成物は、上記(B)テトラエステル化合物以外の他の離型剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、前記他の離型剤が0.5質量部未満であることをいい、0.3質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以下であることがさらに好ましく、0.001質量部以下であることが一層好ましく、0.0001質量部以下であることがより一層好ましい。
【0046】
<<アクリル樹脂>>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂を含んでいてもよい。アクリル樹脂は、好ましくは、下記式(X)で表される構造単位を有するアクリル樹脂である。
式(X)
【化17】
式(X)中、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、R
9は置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、または、置換基を有していてもよい炭素数6~17の芳香族炭化水素基で置換された炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表す。
【0047】
本発明で用いられるアクリル樹脂は、上述の他、WO2014/038500号公報、WO2013/094898号公報、特開2006-199774号公報、特開2010-116501号公報に記載のものを採用することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
アクリル樹脂を配合する場合、配合量は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の1~30質量%の範囲であることが好ましく、1~10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0048】
<<安定剤>>
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
熱安定剤としては、リン系安定剤が好ましく用いられる。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0049】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
【0050】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0051】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0052】
本発明の樹脂組成物における安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
【0053】
<<紫外線吸収剤>>
紫外線吸収剤としては、特開2016-216534号公報の段落0059~0062の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0054】
<<帯電防止剤>>
帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0055】
<<難燃剤>>
難燃剤としては、特開2016-216534号公報の段落0068~0075の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0056】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、低いヘイズを達成できる。例えば、本発明の樹脂組成物を2mm厚さに成形した成形品のヘイズを5.0%以下とすることができ、さらには3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.5%以下、0.4%以下とすることもできる。ヘイズの下限値としては、0%が理想であるが、0.01%以上、さらには0.07%以上でも実用レベルである。ヘイズの測定方法は、後述する実施例の記載に従う。
【0057】
本発明の樹脂組成物から形成される厚み2mmの試験片(好ましくは長さ150mm×幅100mm×厚み2mmの試験片)は、サラシ(綿100%、20×20番手)を使用した初期往復摩耗試験前後のヘイズの差であるΔヘイズが5.00%以下であることが好ましく、4.50%以下であることがより好ましく、4.00以下であることがさらに好ましく、3.50%以下であることが一層好ましく、3.00%以下であることがより一層好ましく、2.00%以下であることがさらに一層好ましい。初期往復摩耗試験前後のΔヘイズの下限値としては、0%が理想であるが、0.01%以上、さらには0.07%以上でも実用レベルである。初期往復摩耗試験前後のΔヘイズの測定方法は、後述する実施例の記載に従う。
【0058】
本発明の樹脂組成物から形成される厚み2mmの試験片(好ましくは長さ150mm×幅100mm×厚み2mmの試験片)の、溶媒拭き取り後の往復摩耗試験前後のΔヘイズの値と上記の初期往復摩耗試験前後のΔヘイズの値の差(溶媒拭き取り後の往復摩耗試験前後のΔヘイズ-初期往復摩耗試験前後のΔヘイズ)が、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることがさらに好ましく、1.0以下であることが一層好ましく、0.9以下であることがより一層好ましい。上記溶媒拭き取り後の往復摩耗試験前後のΔヘイズ-初期往復摩耗試験前後のΔヘイズの下限値は、0%が理想であるが、0.01%以上、さらには0.07%以上でも実用レベルである。
上記溶媒拭き取り後の往復摩耗試験前後のΔヘイズ-初期往復摩耗試験前後のΔヘイズは、後述する実施例の記載に従う。
【0059】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記ポリカーボネート樹脂およびテトラエステル化合物、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0060】
<成形品>
上記した樹脂組成物(例えば、ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。すなわち、本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物から成形される。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。中でも、フィルム状、枠状、パネル状、ボタン状のものが好ましく、厚さは例えば、枠状、パネル状の場合1mm~5mm程度である。
【0061】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本発明の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本発明の樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0062】
本発明の成形品は、電気電子機器、OA機器、携帯情報端末、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器等の部品等に好適に用いられる。これらの中でも、特に、電気電子機器、OA機器、情報端末機器および家電製品の筐体、照明機器および車輌部品(特に、車輌内装部品)に用いられ、中でも車輌内装部品が好適である。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0064】
1.原料
<製造例1:ポリカーボネート樹脂A1の製造>
ビスフェノールC(BPC)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および留出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3)を、BPC1モルに対し1.5×10-6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを留出させた。
次に、反応器内の温度を60分かけて284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の撹拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、撹拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を二軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp-トルエンスルホン酸ブチルを二軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を二軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂A1のペレットを得た。
【0065】
本発明の樹脂組成物の製造には、下記表1に示す材料を用いた。
【表1】
【0066】
<ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の測定>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位:dL/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出した。
η=1.23×10-4Mv0.83
【0067】
<ポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度の測定>
ポリカーボネート樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(ファナック株式会社製「α-2000i-150B」)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度70℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度30mm/秒の条件下にて、平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)を作製した。この平板状試験片について、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機製作所社製を用いた。
【0068】
<テトラエステル化合物およびその代替物の水酸基価の測定>
水酸基価は試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、エステル化合物の原料であるアルコールがカルボン酸化合物とエステル化したときに、未反応で残った水酸基の数を示す指標である。
水酸基価は、JIS K 0070に規定された方法に従って測定した。
【0069】
2.実施例1~実施例6、比較例1~比較例17
<樹脂組成物ペレットの製造>
上記表1に記載した各成分を、下記の表2または表3に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α)を用いて、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量30kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た(但し、比較例11は、押出ができなかった)。
【0070】
<ポリカーボネート樹脂のモル比率>
後述する表2、表3におけるモル比率(モル%)は、樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂中の式(1)で表される構造単位の含有量を示す指標であり、用いた樹脂の混合比率および式(1)で表される構造単位の分子量を用いて、粘度平均分子量より、算出した。
【0071】
<押出可否>
上記樹脂組成物ペレットの製造において、押出の可否を目視により確認し、以下の通り評価した。
a:押出可能
b:押出不安定
c:押出不可能(ポリカーボネート樹脂が分解)
【0072】
<押出ガス発生量>
上記樹脂組成物ペレットの製造において、比較例2で発生したガス量を基 準として、それと同等もしくは同等以下の発生量の時をガス発生量標準(a)と評価し、基準量と比較した押出ガス発生量を目視により以下の通り評価した。
a:ガス発生量標準
b:やや多い
c:多い
【0073】
<押出性総合評価>
上記押出可否とガス発生量の結果に基づき、以下の通り評価した。
A:押出可否とガス発生量の両方がaである。
B:上記Aおよび下記C以外である。
C:押出可否とガス発生量の少なくとも一方がcである。
【0074】
<成形体としての評価用試験片の製造>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(ファナック株式会社製「α-2000i-150B」)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度70℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度30mm/秒の条件下にて、150mm×100mm×2mm厚の平板状試験片を射出成形した。
尚、表中「成形不可」とは、押出が不可能または非常に不安定であったため、評価用試験片が成形できなかったことを意味する。
【0075】
<樹脂組成物の鉛筆硬度の測定>
上記で得られた平板状試験片について、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、1kg荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機製作所社製を用いた。
【0076】
<ヘイズ(Haze)の測定>
上記で得られた平板状試験片について、ヘイズメーターを用いてヘイズ(単位:%)を測定した。
ヘイズメーターは、日本電色工業(株)製のNDH-2000型ヘイズメーターを用いた。
【0077】
<動摩擦係数(30N)>
上記で得られた平板状試験片について、ISO 19252に準拠し、スクラッチテスターを用いて、1mmφの球状の端子にて、試験速度100mm/秒、試験距離100mmの間を垂直荷重1Nから50Nまで可変させながら走査し、荷重30Nの地点にて、水平荷重と垂直荷重を測定し、動摩擦係数(水平荷重/垂直荷重)を求めた。動摩擦係数は小さい方が好ましい。
スクラッチテスターは、カトーテック(株)製のものを用いた。
【0078】
<爪傷付き耐性(初期)>
上記で製造した平板状試験片について、爪で10往復こすり、官能評価を行った。
a:傷が付かず、滑りがよい。
b:少し傷は付くが滑りはよい。
c:dより傷は少ないが、傷つく。
d:傷つく。
【0079】
<溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性>
上記で製造した平板状試験片表面を、エタノールを浸み込ませたコットンで拭き取り、上記の爪傷付き耐性と同様に、官能評価を行った。
【0080】
<初期往復摩耗試験前後のΔヘイズ>
上記で得られた平板状試験片について、上記と同様にヘイズを測定した(この時のヘイズをヘイズaとする)。
一方、上記で得られた同様の平板状試験片について、平面摩耗試験機を用い、サラシ(15cm×33cmにカットした、綿100%、20×20番手のサラシ)を18重に畳み、平面摩耗試験機の治具に取り付け、往復サイクル40回/分、荷重1kg、往復回数500回にて、試験した。往復摩耗試験後の平板状試験片について、上記と同様にヘイズを測定した(この時のヘイズをヘイズbとする)。「ヘイズb-ヘイズa」を初期往復摩耗試験前後のΔヘイズとした。
平面摩耗試験機は、大栄科学精機製作所製を用いた。
サラシは、南海(株)製のサラシを用いた。
【0081】
<溶媒拭き取り後の往復摩耗試験前後のΔヘイズ-初期往復摩耗試験前後のΔヘイズ>
上記で得られた平板状試験片表面を、エタノールを浸み込ませたガーゼで拭き取った後、上記と同様にヘイズを測定した(この時のヘイズをヘイズcとする)。
次いで、上記と同様、平面摩耗試験機を用い、サラシ(15cm×33cmにカットした、綿100%、20×20番手のサラシ)を18重に畳み、平面摩耗試験機の治具に取り付け、往復サイクル40回/分、荷重1kg、往復回数500回にて、試験した。往復摩耗試験後の平板状試験片について、上記と同様にヘイズを測定した(この時のヘイズをヘイズdとする)。「ヘイズd-ヘイズc-初期往復摩耗試験前後のΔヘイズ」を、「溶媒拭き取り後の往復摩耗試験前後のΔヘイズ-初期往復摩耗試験前後のΔヘイズ」とした。
平面摩耗試験機は、大栄科学精機製作所製を用いた。
サラシは、南海(株)製のサラシを用いた。
【0082】
<総合評価(押出性、ヘイズ、爪傷付き耐性)>
押出性、ヘイズ、爪傷付き耐性に基づき総合的に評価した。
1:押出性総合評価がA、ヘイズが5.0%以下、かつ、爪傷付き性(初期)および溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性がaである。
2:上記1および下記3以外である。
3:以下の1つ以上を満たす。
押出性総合評価がCである。
ヘイズが5.0%超である。
爪傷付き耐性がcまたはdである。
溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性がcまたはdである。
【0083】
結果を下記表2および表3に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
上記表において、「式(1)の比率」とは、ポリカーボネート樹脂を構成する全構造単位のうち、式(1)で表される構造単位の割合(モル%)である。
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、表面硬度が高く、押出性に優れ、ヘイズが低く、初期および溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性に優れており、さらには初期往復摩耗試験前後のΔヘイズや、溶媒拭き取り後の往復摩耗試験前後のΔヘイズと初期往復摩耗試験前後のΔヘイズの差も小さい傾向が認められた(実施例1~実施例6)。
これに対し、式(1)で表される構造単位を含まない場合(比較例1、比較例14、比較例16、17)、初期および溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性が劣っていたり、ヘイズが高かったり、押出性が劣っていた。
また、本発明の請求項で規定するテトラエステル化合物以外のエステル化合物およびそのエステル化合物の代替物(上記B2~B8)しか配合しなかった場合(比較例1~12、16、17)では、押出性が劣ったり、ヘイズが高くなったり、初期および溶媒拭き取り後の傷付き耐性が劣る傾向にあった。
また、本発明の請求項で規定される所定のテトラエステル化合物を含んでいても、その配合量が本発明の範囲を外れる場合(比較例13、比較例15)、初期および溶媒拭き取り後の爪傷付き耐性が劣ったり、押出性が劣った。