IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許7408910活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びコーティング剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20231226BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20231226BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20231226BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20231226BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20231226BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20231226BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08F290/00
C08G18/67 010
C08G18/75 010
C08G18/76 057
C09D175/14
C09D4/02
C09D5/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018199961
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2019085558
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2017215338
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】小西 敦子
(72)【発明者】
【氏名】酒谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐太
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-091776(JP,A)
【文献】特開2005-283849(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034030(WO,A1)
【文献】特開2015-021089(JP,A)
【文献】特開2017-165948(JP,A)
【文献】特開2016-104859(JP,A)
【文献】特開2014-141654(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043263(WO,A1)
【文献】特開2014-080585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00
C08G 18/67
C08G 18/75
C08G 18/76
C09D 175/14
C09D 4/02
C09D 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価が65~100mgKOH/gであるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基と、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及びテトラメチルキシリレンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種のキシリレンジイソシアネート系化合物(B)のイソシアネート基とが反応したウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]を含有してなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、前記フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]の含有量が、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]100重量部に対して、0.01~5重量部であり、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーの含有量が、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる全硬化成分中30重量%以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、重合禁止剤[III]を、上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]、フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]及び重合禁止剤[III]の合計に対して、重量基準で800~10,000ppm含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
上記フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]が、シロキサン結合を有することを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
上記フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]の重量平均分子量が1,000~100,000であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の重量平均分子量が、3,000~30,000であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有してなることを特徴とするコーティング剤。
【請求項7】
ハードコート用コーティング剤として用いることを特徴とする請求項6記載のコーティ
【請求項8】
光学フィルム用コーティング剤として用いることを特徴とする請求項6記載のコーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物を含有してなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びコーティング剤に関し、更に詳しくは、硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さくカールがしにくく、更に屈曲性にも優れ、また、防汚性能(耐汚染性及びその持続性)、硬化塗膜の特性(外観、硬度、耐擦傷性)に優れた塗膜を形成することができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを用いてなるコーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ごく短時間の放射線や紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化が完了するため、各種基材へのコーティング剤や接着剤、またはアンカーコート剤等として幅広く用いられており、その中の硬化成分としては、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物や多官能モノマーが使用されている。ところが、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、特にコーティング剤、とりわけハードコート用コーティング剤として用いる際に、塗膜の硬化収縮が起こり、硬化塗膜がカールし易いという問題点があり、カールしにくいものが求められている。
【0003】
また、ハードコート用コーティング剤は保護フィルムとして成型品やディスプレイ等の屈曲部にも使用されるため、硬化塗膜を形成したプラスチックフィルムを曲げてもクラック等が生じにくいといった屈曲性が求められている。
【0004】
上記のカールしにくいことについては、硬化収縮を抑えるために、硬化性樹脂に無機微粒子を添加した硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)や、硬化成分として高分子量化されたウレタン(メタ)アクリレートを含有させた硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、耐擦傷性を向上させるためにハードコート層をより高硬度化する手法として、例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びトリペンタエリスリトールオクタアクリレートを含有してなる樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献3参照)。この樹脂組成物を、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に膜厚12μmで塗布して硬化させて得られるフィルムは、鉛筆硬度5H程度の硬度を発現する。さらに、ガラスに代わる表面硬度と耐擦傷性を有するハードコート剤として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとN-置換アクリルアミドを主体とした硬化成分に、フッ素化合物を配合することで耐擦傷性が上げられることが示されている(特許文献4参照)。このハードコート剤を積層フィルム上に膜厚11μmに塗布して硬化させて得られるフィルムは、鉛筆硬度5H程度の硬度と、スチールウールで500g荷重をかけて500往復させても傷がつかない耐擦傷性を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-77292号公報
【文献】特開2010-180319号公報
【文献】特開2009-286924号公報
【文献】特開2017-141416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、無機微粒子と硬化性樹脂との相溶性を考慮すると使用できる有機溶剤が限られ、塗膜の表面異常が起こる可能性が高くなるという問題がある。更に一般的に無機微粒子は高価なため、それを配合した樹脂や塗料も高価となり、現実的には硬化性樹脂の使用用途が特殊な用途に限られてしまうものであった。
【0007】
また、上記特許文献2の開示技術では、硬化成分として使用するウレタン(メタ)アクリレートを高分子量化させるための製造法が多段反応となるため、反応に時間がかかり、塗膜の耐擦傷性が低下してしまうものであった。
【0008】
一方、特許文献3の開示技術では、硬化塗膜の表面硬度は高いものの、硬化時に生じるカールが大きく、また硬く脆いものであるために、塗膜を屈曲させた際に割れが生じてしまうものであった。
【0009】
さらに、特許文献4の開示技術では、硬化塗膜の表面硬度と500g荷重での耐擦傷性に優れるものの、より厳しい1kg荷重での耐擦傷性に関する記載はなく、また最小曲げ半径が大きく、屈曲性に不足するものであった。
【0010】
また、近年においては、ディスプレイやモニター、タッチパネル化された機器の画面や、携帯電話等電化製品の表面に指紋等の汚れが付着すると、画面の透明性や画面の鮮明性が低下してしまったり、美観性が損なわれたりしてしまうため、様々な汚れのふき取り方法、汚れの付着防止性や汚れ除去性を向上させるためのコーティング剤の検討、コーティング剤で上塗りを行った場合の塗膜表面の耐擦傷性の検討等の塗膜表面の防汚性能や耐擦傷性の要求も益々高まっている。
【0011】
そこで、本発明では、このような背景下において、硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さくカールがしにくく、かつ屈曲性にも優れた塗膜を形成することができ、また、防汚性能(耐汚染性及びその持続性)、硬化塗膜の特性(外観、硬度、耐擦傷性)に優れた塗膜を形成することができるウレタン(メタ)アクリレート系組成物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、及びそれを用いたコーティング剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
しかるに本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、硬化成分としてジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物と多価イソシアネートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート系組成物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、多価イソシアネートとしてキシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のキシリレンジイソシアネート系化合物を用い、ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物の水酸基価が通常よりも高い付加物を用い、更に、フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物を含有させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の製造時の反応効率に優れ、硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さくカールしにくく、かつ屈曲性にも優れ、更に防汚性能及び耐擦傷性等の塗膜物性に優れた硬化塗膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は、水酸基価が60mgKOH/g以上であるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基と、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のキシリレンジイソシアネート系化合物(B)のイソシアネート基とが反応したウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]を含有してなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を第1の要旨とするものである。
また、上記第1の要旨の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有してなるコーティング剤を第2の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、水酸基価が60mgKOH/g以上であるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基と、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のキシリレンジイソシアネート系化合物(B)のイソシアネート基とが反応したウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]を含有してなるものである。そのため、硬化収縮が小さくカールしにくく、屈曲性にも優れた硬化塗膜を形成することができ、更には、硬化塗膜とした際の防汚性能及び耐擦傷性にも優れる。また、このようなことから特に、ハードコート用コーティング剤または光学フィルム用コーティング剤の用途に優れる。
【0015】
更に、重合禁止剤[III]を、上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]、フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]及び重合禁止剤[III]の合計に対して、重量基準で800~10,000ppm含有すると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の液安定性が向上し、保存中のゲル化を抑制することができる。
【0016】
上記フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]が、シロキサン結合を有すると、より防汚性能に優れるようになる。
【0017】
また、上記フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]の重量平均分子量が1,000~100,000であると、より一層、防汚性能に優れるようになる。
【0018】
そして、上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の重量平均分子量が、3,000~30,000であると、より硬化収縮が小さくカールしにくく、屈曲性にも優れた硬化塗膜を形成することができ、更には、硬化塗膜とした際の耐擦傷性にも優れるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0020】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、水酸基価が60mgKOH/g以上であるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基と、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のキシリレンジイソシアネート系化合物(B)(以下、「キシリレンジイソシアネート系化合物(B)」と記載する場合がある。)のイソシアネート基とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]を含むものである。
【0021】
かかるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]は、水酸基価が60mgKOH/g以上であるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基と、キシリレンジイソシアネート系化合物(B)のイソシアネート基を反応させることにより、ウレタン結合が形成され、得られるものである。
【0022】
〔ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)〕
一般的に、ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)とは、その成分中に、ジペンタエリスリトールの6個の水酸基のうち、6個全てに(メタ)アクリル酸が付加されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、5個に(メタ)アクリル酸が付加されたジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、4個に(メタ)アクリル酸が付加されたジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートジオール、3個に(メタ)アクリル酸が付加されたジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリオール、2個に(メタ)アクリル酸が付加されたジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートテトラオール、1個のみに(メタ)アクリル酸が付加されたジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートペンタオールを含む混合物である。
かかるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)は、ジペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸を公知一般の方法で反応させたものであればよい。
【0023】
本発明で用いられるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)は、通常のジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物よりも水酸基価が高いことが特徴である。
また、本発明において、ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)の水酸基価とは、ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物の混合物全体での水酸基価を意味するものである。
【0024】
上記ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)の水酸基価としては、60mgKOH/g以上であることが必要であり、好ましくは63~120mgKOH/g、特に好ましくは65~100mgKOH/gである。
かかる水酸基価が小さすぎると、低分子量でエチレン性不飽和基数が多く、イソシアネートと反応しないジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの含有量が多くなるため、硬化時の硬化収縮が大きくなり、カールしやすくなり、更には屈曲性が低下し好ましくない。なお、通常、上記水酸基価が大きくなりすぎると、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートジオールやジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリオール等のポリオール成分の含有量が増えるために、得られるウレタンアクリレートの分子量が大きくなり、粘度が上昇するため、取り扱いにくくなる傾向がある。
水酸基価の調整に際しては、例えば、ジペンタエリスリトールに付加させる(メタ)アクリル酸の比率を調整することにより行われる。
また、上記水酸基価は、JIS K 1557-1に準じた方法で求めることができる。
【0025】
〔キシリレンジイソシアネート系化合物(B)〕
本発明においては、上記ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)の水酸基と反応するイソシアネートとして、キシリレンジイソシアネート系化合物(B)を用いることを特徴とするものであり、これにより硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さくカールがしにくく、かつ屈曲性にも優れた硬化塗膜が得られる。更に、水酸基価の高いジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)を用いた場合であっても、ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基とイソシアネート基の反応効率が向上し、効率よくウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]を得ることができる。
【0026】
上記キシリレンジイソシアネート系化合物(B)としては、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられるが、芳香環構造を含まず、耐黄変性に優れることから水添キシリレンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0027】
かかるキシリレンジイソシアネート系化合物(B)は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明で用いられるキシリレンジイソシアネート系化合物(B)は、具体的には、市販品の三井化学社製「タケネート500」、「タケネート600」等を用いればよい。
【0029】
また、上記キシリレンジイソシアネート系化合物(B)は、各種ポリオール、例えば、低分子量のポリオールや高分子量のポリオール、中でもポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール等のポリオールとの反応物であってもよい。
【0030】
なお、本発明の効果が阻害されない範囲で、上記キシリレンジイソシアネート系化合物(B)以外の多価イソシアネート系化合物を少量用いることは可能である。
上記キシリレンジイソシアネート系化合物(B)以外の多価イソシアネート系化合物としては、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネート、またはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物等が挙げられる。
【0031】
〔ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の製造方法〕
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]は、水酸基価が60mgKOH/g以上であるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基と、キシリレンジイソシアネート系化合物(B)のイソシアネート基とを反応させて得られるものであり、上記のキシリレンジイソシアネート系化合物(B)のイソシアネート基とジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基との官能基モル比を調整し、必要に応じてジブチル錫ジラウレート等の触媒を用いて、キシリレンジイソシアネート系化合物(B)とジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)とを反応させて得ることができる。
【0032】
かかるキシリレンジイソシアネート系化合物(B)とジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)との仕込みの反応モル比は、キシリレンジイソシアネート系化合物(B):ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)=1:2~1:5程度である。
【0033】
かかるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)の割合が多すぎると、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、キシリレンジイソシアネート系化合物(B)と反応しない低分子量モノマーの含有量が多くなり、硬化収縮が大きくなるためカールが大きくなる傾向があり、ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)の割合が少なすぎると、未反応のキシリレンジイソシアネート系化合物(B)が残存し、硬化塗膜の安定性や安全性が低下する傾向がある。
【0034】
ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)とキシリレンジイソシアネート系化合物(B)の反応は、通常、上記ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)、キシリレンジイソシアネート系化合物(B)を、反応器に一括または別々に仕込み反応させればよい。
【0035】
上記反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物、オクチル酸錫、オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0036】
<重合禁止剤[III]’>
また、上記反応においては、更に重合禁止剤[III]’を用いることが好ましい。なお、上記反応で重合禁止剤[III]’を用いる場合は、後述する重合禁止剤[III]の含有量に含めるものとする。
【0037】
上記重合禁止剤[III]’としては、重合禁止剤として使われている公知一般のものを使用することができ、例えば、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール、p-t-ブチルカテコール等のフェノール類を挙げることができる。なかでもフェノール類が好ましく、特に好ましくは、2,6-ジ-t-ブチルクレゾールである。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0038】
上記反応における重合禁止剤[III]’の含有量は、ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)及びキシリレンジイソシアネート系化合物(B)の合計100重量部に対して、0.01~0.2重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.02~0.1重量部である。かかる重合禁止剤[III]’の含有量が少なすぎると、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の液安定性が低下する傾向があり、また、保存中にゲル化しやすくなる傾向がある。また、重合禁止剤[III]’の含有量が多すぎると、活性エネルギー線を照射しても硬化しにくくなる傾向がある。
【0039】
また、上記反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。
【0040】
反応温度は、通常30~90℃、好ましくは40~80℃であり、反応時間は、通常2~30時間、好ましくは3~20時間である。
【0041】
かくして、本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]が得られる。
上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]は、複数種のウレタン(メタ)アクリレートを含有し、更に、ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)であるジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、上記以外のポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等を含有することがある。
【0042】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の重量平均分子量としては3,000~30,000であることが好ましく、更に好ましくは3,200~20,000、特に好ましくは3,500~10,000である。
かかる重量平均分子量が小さすぎると硬化塗膜が脆くなる傾向があり、大きすぎると高粘度となり取り扱いにくくなる傾向がある。
【0043】
なお、本発明において重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450×1本、ACQUITY APC XT 200×1本、ACQUITY APC XT 45×2本の4本を直列にして用いることにより測定される。
【0044】
また、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の60℃における粘度は、1,000~300,000mPa・sであることが好ましく、特には3,000~200,000mPa・s、更には5,000~150,000mPa・sであることが好ましい。かかる粘度が上記範囲外では塗工性が低下する傾向がある。
なお、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0045】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上、殊に好ましくは70重量%以上である。
【0046】
<フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]>
本発明で用いられるフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]とは、(メタ)アクリロイル基及びフッ素原子を有する化合物である。また、(メタ)アクリロイル基及びフッ素原子以外の構造も特に限定されず、更には酸素、窒素、ケイ素、硫黄等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0047】
上記フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基にフッ素原子が結合した化合物であることが好ましく、例えば、ダイキン工業社製「オプツールDAC」、「オプツールDAC-HP」、DIC社製「メガファックRS-75」、「メガファックRS-76」、「メガファックRS-91C」、「ディフェンサTF3028」、「ディフェンサTF3001」、「ディフェンサTF3000」、新中村化学社製「SUA1900L10」、「SUA1900L6」、日本合成化学工業社製「UT3971」、信越化学社製「KNS5300」、「KY-1203」、大阪有機化学工業社製「ビスコート3F」、「ビスコート4F」、「ビスコート8F」、「ビスコート8FM」、「ビスコート13F」等が挙げられる。これらのフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0048】
上記のフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]のなかでも、より防汚性能に優れる点で、構造中にシロキサン結合を有するフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、KY-1203が特に好ましい。
【0049】
また、フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]の重量平均分子量は、通常1,000~100,000、好ましくは5,000~70,000、特に好ましくは10,000~50,000、殊に好ましくは15,000~40,000である。フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]の重量平均分子量が小さすぎると充分な耐擦傷性や防汚性能が得られなくなる傾向があり、重量平均分子量が大きすぎるとウレタンアクリレート系組成物[I]や溶剤との相溶性が低下する傾向がある。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における上記フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]100重量部に対して、通常0.01~5重量部であり、好ましくは0.05~3重量部であり、特に好ましくは0.1~1重量部である。フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]の含有量が少なすぎると、耐擦傷性と防汚性能が充分に得られない傾向があり、含有量が多すぎると、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]との相溶性が低下する傾向がある。
【0051】
〔その他の任意成分〕
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]を含有してなるものであり、かかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、更に、重合禁止剤[III]を含有することが好ましく、更に、光重合開始剤を含有することが特に好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマー、アクリル樹脂、表面調整剤、レベリング剤等を添加することができ、更にはフィラー、染顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、補強剤、艶消し剤、架橋剤、シリカ、水分散または溶剤分散されたシリカ、ジルコニウム化合物、防腐剤、着色防止剤等を配合することも可能である。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0052】
上記重合禁止剤[III]としては、前述の重合禁止剤[III]’と同じものを用いることができる。また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に配合する重合禁止剤[III]は、前記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の製造で用いた重合禁止剤[III]’と同じ化合物を用いることが好ましいが、互いに異なる化合物を用いてもよい。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、一般的な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物よりも多く重合禁止剤[III]を含有することが好ましい。通常、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物においては、重合禁止剤[III]を多く含有させることにより活性エネルギー線硬化性を低下させてしまったり、着色してしまう等の理由から、必要以上に重合禁止剤[III]を含有させないものであり、重合禁止剤[III]の含有量は、上述のウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の製造時に通常用いられる程度の量である。しかし、本発明では、通常、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に用いられている重合禁止剤量よりも多い含有量とすることで、液安定性が向上し、保存中のゲル化を抑制する効果を奏するものである。
【0054】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における重合禁止剤[III]の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]、フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]及び重合禁止剤[III]の合計に対して、重量基準で、通常800~10,000ppmであり、好ましくは1,000~7,500ppm、特に好ましくは1,500~5,000ppm、更に好ましくは2,000~4,500ppm、殊更に好ましくは2,500~4,000ppmである。かかる重合禁止剤[III]の含有量が少なすぎると、硬化前の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の液安定性が充分ではなくなり、保存中にゲル化しやすくなる傾向がある。また、重合禁止剤[III]の含有量が多すぎると、活性エネルギー線を照射しても硬化しにくくなる傾向がある。なお、前記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の製造で重合禁止剤[III]’を用いた場合は、この重合禁止剤[III]’の含有量も、本発明の重合禁止剤[III]の含有量に含む。
【0055】
上記光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類等が挙げられる。
なお、これら光重合開始剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインイソプロピルエーテル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを用いることが好ましい。
【0057】
光重合開始剤の含有量としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる硬化成分100重量部に対して、0.1~20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.5~10重量部、更に好ましくは1~10重量部である。
光重合開始剤の含有量が少なすぎると、硬化不良となり膜形成がなされにくい傾向があり、多すぎると硬化塗膜の黄変の原因となり、着色の問題が起こりやすい傾向がある。
【0058】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
【0059】
上記ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上の多官能モノマー等が挙げられる。これらのエチレン性不飽和モノマーは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0060】
かかる単官能モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリルレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル)-メチル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ポリオキシエチレン第2級アルキルエーテルアクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0061】
かかる2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート等が挙げられる。
【0062】
かかる3官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化15グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0063】
また、ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸のミカエル付加物あるいは2-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも併用可能である。かかるアクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等が挙げられる。上記2-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、特定の置換基をもつカルボン酸であり、例えば2-アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、その他オリゴエステルアクリレート等を挙げることができる。
【0064】
ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーの含有量としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる全硬化成分中、70重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。
【0065】
上記表面調整剤としては特に限定されず、例えば、セルロース樹脂やアルキッド樹脂等を挙げることができる。かかるセルロース樹脂は、塗膜の表面平滑性を向上させる作用が有り、アルキッド樹脂は、塗布時の造膜性を付与する作用を有する。
【0066】
上記レベリング剤としては、塗液の基材への濡れ性付与作用、表面張力の低下作用を有するものであれば、公知一般のレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン変性樹脂、フッ素変性樹脂、アルキル変性の樹脂等を用いることができる。
【0067】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、塗工時の粘度を適正なものにするために、希釈のための有機溶剤を使用することも好ましい。かかる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類、1-メトキシ-2-プロパノール(別名:プロピレングリコールモノメチルエーテル)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これら上記の有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]とフッ素含有(メタ)アクリレート[II]との相溶性に優れることから沸点が80℃以上、特には100℃以上、更には120~170℃の高沸点溶剤が好ましく、より好ましくは、アルコール類、グリコールエーテル類であり、特に好ましくは1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0068】
また、上記有機溶剤を2種以上併用する場合は、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類とメチルエチルケトン等のケトン類やメタノール等のアルコール類との組み合わせや、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類と酢酸ブチル等のエステル類の組み合わせ、メチルエチルケトン等のケトン類とメタノール等のアルコール類の組み合わせ等を用いることができる。
【0069】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]、好ましくは更に重合禁止剤[III]、必要に応じてその他の任意成分を混合することにより得ることができる。なお、混合方法については、特に限定されるものではなく、各成分を一括で混合する方法や、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法等、種々の方法を採用することができる。
【0070】
かくして得られる本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、水酸基価が60mgKOH/g以上であるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基と、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のキシリレンジイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]を含有してなるものである。そのため、硬化収縮が小さくカールしにくく、屈曲性にも優れた硬化塗膜を形成することができ、更には、硬化塗膜とした際の耐擦傷性及び擦傷後の防汚性にも優れるものである。
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種基材へのトップコート剤やアンカーコート剤等、塗膜形成用の硬化性組成物として有効に用いられるものであり、かかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を基材に塗工した後(有機溶剤で希釈した組成物を塗工した場合には、更に乾燥させた後)、活性エネルギー線を照射することにより硬化される。
【0072】
上記本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する対象である基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等やそれらの成型品(フィルム、シート、カップ等)等のプラスチック基材、また、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンフィルム等の光学フィルム、それらの複合基材、またはガラス繊維や無機物を混合した上記材料の複合基材等、金属(アルミニウム、銅、鉄、SUS、亜鉛、マグネシウム、これらの合金等)やガラス、または、これらの基材上にプライマー層を設けた基材等が挙げられる。
【0073】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗工方法としては、例えば、スプレー、シャワー、グラビア、ディッピング、ロール、スピン、スクリーン印刷等のようなウェットコーティング法が挙げられ、通常は常温の条件下で、基材に塗工すればよい。
【0074】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、有機溶剤で希釈して塗工してもよい。希釈する場合には、前記有機溶剤を用いて、固形分濃度を、通常3~60重量%(好ましくは5~40重量%)とすることが好ましい。
【0075】
上記有機溶剤による希釈を行なった際の乾燥条件としては、温度が、通常40~120℃(好ましくは50~100℃)で、乾燥時間が、通常1~20分間(好ましくは2~10分間)であればよい。
【0076】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の20℃での粘度は、5~50,000mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは10~10,000mPa・s、更に好ましくは50~5,000mPa・sである。かかる粘度が上記範囲外では塗工性が低下する傾向がある。
なお、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0077】
基材上に塗工された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線または電子線が好ましい。
なお、電子線の照射により硬化を行う場合は、光重合開始剤を用いなくても硬化し得る。
【0078】
紫外線照射により硬化させる際には、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LEDランプ等を用いて、通常30~3,000mJ/cm2(好ましくは100~1,500mJ/cm2)の紫外線を照射すればよい。
紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0079】
塗工膜厚(硬化後の膜厚)としては、通常、活性エネルギー線硬化型の塗膜として光重合開始剤が均一に反応するべく光線透過を鑑みると1~1,000μmであればよく、好ましくは2~500μmであり、特に好ましくは3~200μmである。
【0080】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、コーティング剤として用いることが好ましく、特にはハードコート用コーティング剤や光学フィルム用コーティング剤として用いることが好ましい。
【0081】
また、本発明においては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、厚み125μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルムに、5μmの厚みで塗工し、温度90℃で3分間乾燥させた後、高さ18cmの位置から80Wの高圧水銀灯を用い、5.1m/minの速度で積算照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射することにより、得られる硬化塗膜を10cm×10cmの大きさになるように切り出した時の、四隅の跳ね上がり高さの平均値が10mm以下、更には7mm以下である硬化塗膜となるコーティング剤とすることが好ましい。
【0082】
また、本発明においては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、厚み125μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルムに、5μmの厚みで塗工し、温度90℃で3分間乾燥させた後、高さ18cmの位置から80Wの高圧水銀灯を用い、5.1m/minの速度で積算照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射することにより、得られる硬化塗膜において、JIS K 5600-5-1に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて屈曲性の評価を行い、評価用硬化塗膜を試験棒に巻き付けた際に、割れまたは剥がれが生じる最大の径(整数値、mm)が12mm以下、更には8mm以下である硬化塗膜となるコーティング剤とすることが好ましい。
【0083】
本発明においては、水酸基価が60mgKOH/g以上であるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物(A)中の水酸基と、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のキシリレンジイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]及びフッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]を含有してなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化収縮が小さくカールしにくく、更に屈曲性にも優れた硬化塗膜を形成することができ、更には、硬化塗膜とした際の耐擦傷性及び擦傷後の防汚性にも優れるものであり、特にコーティング剤(更にはハードコート用コーティング剤や光学フィルム用コーティング剤)として有用であり、また、塗料、インク等としても有用である。
【実施例
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0085】
ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]として、以下のものを調製した(表1参照。)。
【0086】
<製造例1>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I-1]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、1,3-水添キシリレンジイソシアネート(B-1)139.5g(0.72モル)と水酸基価96mgKOH/gのジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物(A-1)860.5g(1.47モル)、重合禁止剤[III-1]’として2,6-ジ-t-ブチルクレゾール0.6g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I-1]を得た(樹脂分濃度100%)。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I-1]の重量平均分子量は5,600、60℃での粘度は33,000mPa・sであった。
【0087】
<製造例2>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I’-1]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、1,3-水添キシリレンジイソシアネート(B-1)80.7g(0.42モル)と水酸基価52mgKOH/gのジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物(A’-1)919.3g(0.85モル)、重合禁止剤[III-1]’として2,6-ジ-t-ブチルクレゾール0.6g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I’-1]を製造した。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-1]の重量平均分子量は2,000、60℃での粘度は1,900mPa・sであった。
【0088】
<製造例3>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I’-2]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(B’-1)156.0g(0.70モル)と水酸基価96mgKOH/gのジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物(A-1)844.0g(1.47モル)、重合禁止剤[III-1]’として2,6-ジ-t-ブチルクレゾール0.6g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I’-2]を製造した。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-2]の重量平均分子量は5,700、60℃での粘度は63,000mPa・sであった。
【0089】
〔ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]反応時のイソシアネート消費率〕
上記で得られたウレタンアクリレート系組成物[I-1]、[I’-1]、[I’-2]の製造時に、原料をすべて仕込んで内温が60℃になった時を基準とし、一定時間経過後ごとにフラスコの内容物をサンプリングして残存イソシアネート基量(%)を測定し、初期仕込みのイソシアネート基量を100%とした際の、イソシアネートの消費率(%)を下記表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1からわかるように、水酸基価が本発明の規定を満たすジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物(A-1)を用いた場合であっても、本発明で規定する特定のキシリレンジイソシアネート系化合物(B)を用いなかった製造例[I’-2]では、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の製造において、残存イソシアネート基が0.1%以下となるまでに30時間と製造例1の2倍もの時間がかかり、反応効率に非常に劣るものであり、生産性に劣るものであった。
【0092】
〔活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造〕
<実施例1>
上記で得られたウレタンアクリレート系組成物[I-1]100部を1-メトキシ-2-プロパノール100部に溶解させた溶液を撹拌しながら、フッ素含有アクリレート系化合物[II-1]としてKY-1203(有効成分20%、信越化学社製、重量平均分子量(測定値)27,000)を有効成分量で0.2部(溶剤成分込みで1部)、重合禁止剤[III-1]として2,6-ジ-t-ブチルクレゾールを0.3部(ウレタンアクリレート系組成物[I-1]、フッ素含有アクリレート系化合物[II-1]及び重合禁止剤[III-1]の合計に対して2,990ppm)、着色防止剤としてCSP(精工化学社製)を0.1部、更に光重合開始剤として、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(IGM社製、「オムニラッド184」)を4部配合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
上記において、重合禁止剤[III]の含有量(ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の製造で用いた重合禁止剤[III]’を含む)は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]、フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]及び重合禁止剤[III]の合計に対して、3,580ppmであった。
【0093】
<参考例1>
実施例1において、フッ素含有アクリレート系化合物[II-1]を加えないこと以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
上記において、重合禁止剤[III]の含有量(ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の製造で用いた重合禁止剤[III]’を含む)は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]、フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]及び重合禁止剤[III]の合計に対して、3,590ppmであった。
【0094】
<比較例1>
実施例1において、ウレタンアクリレート系組成物[I-1]に代えて上記で得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-1]を用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
上記において、重合禁止剤[III]の含有量(ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の製造で用いた重合禁止剤[III]’を含む)は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]、フッ素含有(メタ)アクリレート系化合物[II]及び重合禁止剤[III]の合計に対して、3,580ppmであった。
【0095】
上記で得られたウレタンアクリレート系組成物[I-1]、[I’-1]を用いて得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物について、下記の通り硬化塗膜を形成し、塗膜物性(カール値、屈曲性、耐擦傷性、硬度)を評価した。評価結果は表2の通りである。
【0096】
〔評価用サンプルの製造方法〕
上記で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、易接着PETフィルム(東洋紡社製、「コスモシャインA4300」、厚み125μm)基材上にバーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥した後、80Wの高圧水銀灯、1灯を用いて、18cmの高さから5.1m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量500mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成した。
【0097】
[カール値(四隅の跳ね上がり高さ)]
易接着PETフィルム上に塗工した上記硬化塗膜を10cm×10cmの大きさとなるように切り出し、四隅の跳ね上がり高さの平均値(mm)をカール値として測定した。値が小さいほどカールが小さく、カールしにくい塗膜であることを意味する。
【0098】
[屈曲性]
易接着PETフィルム上に塗工した上記硬化塗膜について、JIS K 5600-5-1に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて屈曲性の評価を行った。評価用硬化塗膜を、塗膜面が外側になるように試験棒に巻き付けた際に、割れまたは剥がれが生じる最大の径(整数値、mm)を測定した。値が小さいほど屈曲性の高い塗膜であることを意味する。
【0099】
[耐擦傷性]
易接着PETフィルム上に塗工した上記硬化塗膜について、スチールウール(日本スチールウール社製、ボンスター#0000)を用い、1kgの荷重をかけながら硬化塗膜表面を往復させた後、目視で表面に傷が発生するまでの往復回数を示した。
(評価)
○・・・1,000回往復しても傷が無かった
△・・・600回以上1,000回未満で傷が発生した
×・・・600回未満で傷が発生した
【0100】
[鉛筆硬度]
易接着PETフィルム上に塗工した上記硬化塗膜について、JIS K 5600に準じて試験を行ない、鉛筆硬度を測定した。
【0101】
[防汚性(マジックインキ(登録商標)拭き取り性)]
硬化塗膜面に、黒マジックインキで線を1往復引いて、24時間放置した後、ウエスにより、拭き取った後の塗膜を観察し、以下のように評価した。また、上記耐擦傷性試験後の硬化塗膜についても同様に評価を行った。
(評価)
○・・・きれいに拭き取れる
×・・・拭き取れない
【0102】
【表2】
【0103】
上記評価結果より、実施例1のウレタンアクリレート系組成物[I-1]及びフッ素含有アクリレート系化合物[II-1]を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜は、カール値が小さくカールしにくいものであり、かつ屈曲性と鉛筆硬度にも優れ、また耐擦傷性試験において1kg荷重で1,000回往復させても傷がつかず、更に耐擦傷性試験後の塗膜も優れた防汚性能を維持するものであることがわかる。また、実施例1のウレタンアクリレート系組成物[I-1]の製造において、残存イソシアネート基が0.1%以下となるまでの時間が15時間以内であり、反応効率がよく、生産性に優れるものであることがわかる。
【0104】
一方、フッ素含有アクリレート系化合物[II-1]を含有しない参考例1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜は、耐擦傷性試験で実施例1に劣り、また防汚性能は発現しなかった。
また、水酸基価が本発明の規定値よりも低いジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物(A’-1)を用いてなるウレタンアクリレート系組成物である比較例1のウレタンアクリレート系組成物[I’-1]とフッ素含有アクリレート系化合物[II-1]から得られる硬化塗膜は、カール値が大きくカールしやすいものであり、更に、屈曲性も実施例と比べて劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜とした際に、硬化収縮が小さくカールしにくく、かつ屈曲性にも優れた硬化塗膜を形成することができ、更には、硬化塗膜とした際の耐擦傷性及び擦傷後の防汚性にも優れるものであり、コーティング剤、とりわけハードコート用コーティング剤や光学フィルム用コーティング剤として有用である。また、塗料、インク等としても有用である。