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特許7409030ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231226BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231226BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
H01L21/52 E
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/00
C09J5/00
C09J11/06
C09J11/04
B32B27/00 M
C09J175/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019206929
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021082650
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】木村 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】森 修一
(72)【発明者】
【氏名】田澤 強
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/047610(WO,A1)
【文献】特開2012-182268(JP,A)
【文献】特開2004-134689(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220599(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/221246(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/52
C09J 7/38
C09J 201/00
C09J 133/00
C09J 5/00
C09J 11/06
C09J 11/04
B32B 27/00
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層と対面する第1の面及び前記第1の面の反対側の第2の面を有する、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤層と、
前記第2の面の中央部を覆うように設けられた接着剤層と、
を備え、
前記粘着剤層は、前記接着剤層におけるウェハの貼付け位置に対応する領域を少なくとも含む第1の領域と、前記第1の領域を囲むように位置する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、活性エネルギー線の照射により、前記第2の領域と比較して粘着力が低下した状態の領域であり、
温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度60mm/分の条件で測定される、前記接着剤層に対する前記粘着剤層の前記第1の領域の粘着力をF1(N/25mm)、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度60mm/分の条件で測定される、前記接着剤層に対する前記粘着剤層の前記第2の領域の粘着力をF2(N/25mm)としたとき、F2とF1との差(F2-F1)が、6.5~9.0N/25mmであり、
ウェハを面積0.1~9mmの複数のチップに個片化する工程を含む半導体装置の製造プロセスに適用される、
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項2】
前記F2とF1との差(F2-F1)が、7.0~9.0N/25mmである、
請求項1に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項3】
前記F1が、1.1~4.5N/25mmである、
請求項1又は2に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項4】
前記F1が、1.1~3.0N/25mmである、
請求項1~3のいずれか一項に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項5】
温度23℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定される、ステンレス基板に対する前記粘着剤層の前記第2の領域の粘着力が、0.2N/25mm以上である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項6】
前記活性エネルギー線硬化型粘着剤が、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂を含み、
前記官能基が、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(メタ)アクリル系樹脂における前記官能基の含有量が、0.1~1.2mmol/gである、
請求項1~5のいずれか一項に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化型粘着剤が、架橋剤をさらに含み、
前記活性エネルギー線硬化型粘着剤の全質量に対する前記架橋剤の含有量が、0.1~15質量%である、
請求項6に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項8】
前記架橋剤が、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと、一分子中に3つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとの反応物である、
請求項7に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項9】
前記活性エネルギー線の照射量が、10~1000mJ/cmである、
請求項1~8のいずれか一項に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項10】
前記接着剤層が、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体と、硬化促進剤と、フィラーとを含む接着剤組成物からなる、
請求項1~9のいずれか一項に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法であって、
基材層の表面上に、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤層と、前記粘着剤層の表面上に形成された前記接着剤層とを含む積層体を作製する工程と、
前記積層体に含まれる前記粘着剤層の前記第1の領域となる領域に活性エネルギー線を照射する工程と、
をこの順に備える、
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する工程と、
前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層に対してウェハを貼るとともに、前記粘着剤層の前記第2の面に対してダイシングリングを貼る工程と、
前記ウェハを複数のチップに個片化する工程と、
前記接着剤層が個片化されてなる接着剤片とともに、前記チップを前記粘着剤層からピックアップする工程と、
前記接着剤片を介して前記チップを、基板又は他のチップ上にマウントする工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は以下の工程を経て製造される。まず、ウェハにダイシング用粘着フィルムを貼付けた状態でダイシング工程が実施される。その後、エキスパンド工程、ピックアップ工程、マウンティング工程、ダイボンディング工程等が実施される。
【0003】
半導体装置の製造プロセスにおいて、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムと称されるフィルムが使用されている。このフィルムは、基材層と粘着剤層と接着剤層がこの順序で積層された構造を有し、例えば、次のように使用される。まず、ウェハに対して接着剤層側の面を貼付けるとともにダイシングリングでウェハを固定した状態でウェハをダイシングする。これにより、ウェハが複数のチップに個片化される。続いて、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射することによって接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を弱めた後、接着剤層が個片化されてなる接着剤片とともにチップを粘着剤層からピックアップする。その後、接着剤片を介してチップを基板等にマウントする工程を経て半導体装置が製造される。なお、ダイシング工程を経て得られるチップと、これに付着した接着剤片とからなる積層体はDAF(Die Attach Film)と称される。
【0004】
上述のように、活性エネルギー線の照射により粘着力が弱まる粘着剤層(ダイシングフィルム)は活性エネルギー線硬化型と称される。これに対して、半導体装置の製造プロセスにおいて活性エネルギー線が照射されることなく、粘着力が一定のままの粘着剤層は感圧型と称される。感圧型の粘着剤層を備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、ユーザー(主に半導体装置メーカー)にとって、活性エネルギー線を照射する工程を実施する必要がなく、また、このための設備が不要であるというメリットがある。特許文献1には、粘着剤層が活性エネルギー線によって硬化する成分を含有する点で活性エネルギー線硬化型であるといえる一方で、粘着剤層の所定の部分のみに予め活性エネルギー線が照射されており、ユーザーは半導体装置の製造プロセスにおいて活性エネルギー線を照射する必要がない点で感圧型であるともいえるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4443962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの粘着剤層には、粘着剤層と接着剤層との間の粘着力が低いことが求められている。粘着力が高すぎると、チップのピックアップ工程において、ピックアップエラーが発生し、歩留まりが低下するおそれがある。しかしながら、本発明者らは、ダイシングによって作製すべきチップが小さくなる(例えば、平面視における面積0.1~9mm)と、チップのピックアップ性が、粘着剤層と接着剤層との間の粘着力に必ずしも支配的でなく、チップのエッジの粘着剤層からの剥離(以下、「エッジ剥離」という。)がピックアップ性の支配的因子であることを見出した。すなわち、小さいチップのピックアップ性は、接着剤片付きチップのエッジ剥離強度に主に支配され、ピンによる突き上げによってエッジ剥離が一旦生じれば、その後、粘着剤層と接着剤層との界面剥離はスムーズに進展すると推測される。
【0007】
エッジ剥離強度の影響因子としては、例えば、粘着剤層の硬化収縮が挙げられる。通常、ダイシング工程後には、ダイシングラインにおいて、接着剤層、粘着剤層、ウェハ等が混合して発生するバリ(切削屑)が発生する。粘着剤層が活性エネルギー線硬化型であると、活性エネルギー線の照射により、バリ(切削屑)とともに粘着剤層が硬化してエッジ剥離強度が大幅に増加してしまうおそれがある。あらかじめ、ダイシング工程前に粘着剤層を硬化した場合、活性エネルギー線を照射する工程を実施する必要がないため、そのような影響はないが、粘着剤層の硬化収縮による接着剤層界面でのアンカー効果によって、エッジ剥離強度が増加してしまうおそれがある。本発明者らが粘着剤層の硬化収縮について鋭意検討したところ、硬化収縮の大きさは、接着剤層に対する活性エネルギー線の照射前後の粘着剤層の粘着力の差が大きいほど高くなる傾向にあることを見出した。そこで、本発明者らは、活性エネルギー線の照射前の粘着剤層の粘着力と活性エネルギー線の照射後の粘着剤層の粘着力との差(言い換えると、活性エネルギー線の非照射部分の粘着剤層の粘着力と活性エネルギー線の照射部分の粘着剤層の粘着力との差)を調整することによって、エッジ剥離強度を低減することができると考え、優れたピックアップ性を有するダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの開発に取り組んだ。
【0008】
本開示は、ウェハを複数の小さいチップ(面積0.1~9mm)へと個片化する工程を含む半導体装置の製造プロセスに適用可能であり、優れたピックアップ性を有する粘着剤層を備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムに関する。このフィルムは、基材層と、基材層と対面する第1の面及び第1の面の反対側の第2の面を有する、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤層と、第2の面の中央部を覆うように設けられた接着剤層とを備え、粘着剤層は、接着剤層におけるウェハの貼付け位置に対応する領域を少なくとも含む第1の領域と、第1の領域を囲むように位置する第2の領域とを有し、第1の領域は、活性エネルギー線の照射により、第2の領域と比較して粘着力が低下した状態の領域であり、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度60mm/分の条件で測定される、接着剤層に対する粘着剤層の第1の領域の粘着力をF1(N/25mm)、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度60mm/分の条件で測定される、接着剤層に対する粘着剤層の第2の領域の粘着力をF2(N/25mm)としたとき、F2とF1との差(F2-F1)が、6.5~9.0N/25mmである。このフィルムは、ウェハを面積0.1~9mmの複数のチップに個片化する工程を含む半導体装置の製造プロセスに適用される。
【0010】
上記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムによれば、粘着剤層の硬化収縮を抑制してエッジ剥離強度を低減することができることから、ウェハを複数の小さいチップ(面積0.1~9mm)へと個片化する工程を含む半導体装置の製造プロセスに適用可能であり、粘着剤層からの優れたピックアップ性を達成することができる。
【0011】
F2とF1との差(F2-F1)は、7.0~9.0N/25mmであってよい。
【0012】
F1(温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度60mm/分の条件で測定される、接着剤層に対する第1の領域の粘着力)は、粘着剤層からのより優れたピックアップ性を達成できる観点から、1.1~4.5N/25mm又は1.1~3.0N/25mmであってよい。
【0013】
ステンレス基板に対する粘着剤層の第2の領域の粘着力は、ダイシング工程におけるリング剥がれを抑制する観点から、0.2N/25mm以上であってよい。なお、この粘着力は、温度23℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定されるピール強度を意味する。
【0014】
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂を含んでいてもよい。このような(メタ)アクリル系樹脂を含む場合、官能基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であってよく、(メタ)アクリル系樹脂における官能基の含有量は、0.1~1.2mmol/gであってよい。
【0015】
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、架橋剤をさらに含んでいてもよい。このような架橋剤をさらに含む場合、活性エネルギー線硬化型粘着剤の全質量に対する架橋剤の含有量は、0.1~15質量%であってよい。架橋剤は、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと、一分子中に3つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとの反応物であってよい。
【0016】
活性エネルギー線の照射量は、10~1000mJ/cmであってよい。
【0017】
接着剤層は、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体と、硬化促進剤と、フィラーとを含む接着剤組成物からなるものであってよい。
【0018】
本開示の一側面は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法に関する。この製造方法は、基材層の表面上に、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の表面上に形成された接着剤層とを含む積層体を作製する工程と、積層体に含まれる粘着剤層の第1の領域となる領域に活性エネルギー線を照射する工程とをこの順に備える。
【0019】
本開示の一側面は、半導体装置の製造方法に関する。この製造方法は、上記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する工程と、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの接着剤層に対してウェハを貼るとともに、粘着剤層の第2の面に対してダイシングリングを貼る工程と、ウェハを複数のチップに個片化する工程と、接着剤層が個片化されてなる接着剤片とともに、チップを粘着剤層からピックアップする工程と、接着剤片を介してチップを、基板又は他のチップ上にマウントする工程とを備える。
【0020】
すなわち、この製造方法は、基材層と、基材層と対面する第1の面及び第1の面の反対側の第2の面を有する、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の第2の面の中央部を覆うように設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する工程と、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの接着剤層に対してウェハを貼るとともに、粘着剤層の第2の面に対してダイシングリングを貼る工程と、ウェハを複数のチップに個片化する工程と、接着剤層が個片化されてなる接着剤片とともに、チップを粘着剤層からピックアップする工程と、接着剤片を介してチップを、基板又は他のチップ上にマウントする工程とを備え、粘着剤層は、接着剤層におけるウェハが貼付けられる領域に対応する第1の領域と、ダイシングリングが貼付けられる領域に対応する第2の領域とを有し、第1の領域は、活性エネルギー線の照射により、第2の領域と比較して粘着力が低下した状態の領域であり、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度60mm/分の条件で測定される、接着剤層に対する粘着剤層の第1の領域の粘着力をF1(N/25mm)、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度60mm/分の条件で測定される、接着剤層に対する粘着剤層の第2の領域の粘着力をF2(N/25mm)としたとき、F2とF1との差(F2-F1)が、6.5~9.0N/25mmである。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、ウェハを複数の小さいチップ(面積0.1~9mm)へと個片化する工程を含む半導体装置の製造プロセスに適用可能であり、優れたピックアップ性を有する粘着剤層を備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法が提供される。また、本開示によれば、このようなダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いた半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1(a)は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの一実施形態を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すB-B線に沿った模式断面図である。
図2図2は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの粘着剤層の周縁部にダイシングリングが貼り付けられるとともに、接着剤層の表面にウェハが貼り付けられた状態を示す模式図である。
図3図3は、接着剤層に対する粘着剤層の30°ピール強度を測定している様子を模式的に示す断面図である。
図4図4は、半導体装置の一実施形態の模式断面図である。
図5図5(a)、図5(b)、図5(c)、及び図5(d)は、DAF(チップと接着剤片の積層体)を製造する過程を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図4に示す半導体装置を製造する過程を模式的に示す断面図である。
図7図7は、図4に示す半導体装置を製造する過程を模式的に示す断面図である。
図8図8は、図4に示す半導体装置を製造する過程を模式的に示す断面図である。
図9図9は、図9(a)、図9(b)、及び図9(c)は、エッジ剥離強度を測定する工程を模式的に示す断面図である。
図10図10は、押し込みによる変位(mm)と押し込み力(N)との関係の一例を示すグラフである。
図11図11は、測定対象のチップの中央部に相当する位置にマークを付した状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレート等の他の類似表現も同様である。
【0024】
<ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム>
図1(a)は、本実施形態に係るダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを示す平面図であり、図1(b)は、図1のB-B線に沿った模式断面図である。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10(以下、場合により、単に「フィルム10」という。)は、ウェハWを面積0.1~9mmの複数のチップに個片化する工程(及びその後のピックアップする工程)を含む半導体装置の製造プロセスに用いることができる(図5(c)及び図5(d)参照)。
【0025】
フィルム10は、基材層1と、基材層1と対面する第1の面F1及び第1の面F1の反対側の第2の面F2を有する粘着剤層3と、粘着剤層3の第2の面F2の中央部を覆うように設けられた接着剤層5とをこの順序で備える。本実施形態においては、正方形の基材層1の上に、粘着剤層3及び接着剤層5の積層体が一つ形成された態様を例示しているが、基材層1が所定の長さ(例えば、100m以上)を有し、その長手方向に並ぶように、粘着剤層3及び接着剤層5の積層体が所定の間隔で配置された態様であってもよい。
【0026】
(粘着剤層)
粘着剤層3は、接着剤層5におけるウェハWの貼付け位置に対応する領域Rwを少なくとも含む第1の領域3aと、第1の領域3aを囲むように位置する第2の領域3bとを有する。図1(a)及び図1(b)における破線は第1の領域3aと第2の領域3bの境界を示す。第1の領域3a及び第2の領域3bは、活性エネルギー線の照射前において同一の組成物(活性エネルギー線硬化型粘着剤)からなる。第1の領域3aは、活性エネルギー線が照射されることによって、第2の領域3bと比較して粘着力が低下した状態の領域である。第2の領域3bは、ダイシングリングDRが貼り付けられる領域である(図2参照)。第2の領域3bは、活性エネルギー線が照射されていない領域であり、ダイシングリングDRに対する高い粘着力を有する。活性エネルギー線は、紫外線、電子線、及び可視光線から選ばれる少なくとも1種であってよく、紫外線であってよい。活性エネルギー線の照射量は、例えば、10~1000mJ/cm、100~700mJ/cm、又は200~500mJ/cmであってよい。
【0027】
接着剤層5に対する粘着剤層3の第2の領域3bの粘着力をF2(N/25mm)、接着剤層5に対する粘着剤層3の第1の領域3aの粘着力をF1(N/25mm)としたとき、F2とF1との差(F2-F1)が、6.5~9.0N/25mmであり、7.0~9.0N/25mmであってもよい。ここで、F1及びF2は、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度60mm/分の条件で測定される30°ピール強度である。図3は、支持板80に測定試料(幅25mm×長さ100mm)の接着剤層5を固定した状態で、粘着剤層3の30°ピール強度を測定している様子を模式的に示す断面図である。図3は、F1を測定している様子であり得る。粘着剤層3の第2の領域3bは、活性エネルギー線の照射前の粘着剤層と同様の状態の領域であり、活性エネルギー線非照射領域ともいえる。そのため、F2は、図3における粘着剤層3を、第1の領域3aを有しない粘着剤層3に置き換えて測定されるものであり得る。第1の領域3aを有しない粘着剤層3の状態は、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射する前の状態であることから、F2は、例えば、基材層1の表面上に、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の表面上に形成された接着剤層5とを含む積層体を用いて、活性エネルギー線の照射前に、接着剤層5に対する粘着剤層(第1の領域3aを有しない粘着剤層3)の粘着力を測定することによって求めることができる。(F2-F1)をこのような範囲にすることによって、粘着剤層の硬化収縮を抑制してエッジ剥離強度を低減することができることから、ウェハを複数の小さいチップ(面積0.1~9mm)へと個片化する工程を含む半導体装置の製造プロセスに適用可能であり、粘着剤層3からの優れたピックアップ性を達成することができる。(F2-F1)は、6.6N/25mm以上、6.8N/25mm以上、7.0N/25mm以上、又は7.2N/25mm以上であってもよく、8.8N/25mm以下、8.6N/25mm以下、8.4N/25mm以下、又は8.2N/25mm以下であってもよい。
【0028】
上述のとおり、フィルム10は、ウェハを面積0.1~9mmの複数の小チップに個片化する工程(及びその後のピックアップする工程)を含む半導体装置の製造プロセスにも好適に用いることができる。本発明者らは、サイズが3mm×3mm以下(面積9mm以下)の小チップのピックアップ挙動と、例えば、サイズ8mm×6mm程度の大チップのピックアップ挙動とが異なることを着目して検討を行った結果、接着剤層5に対する粘着剤層3の第2の領域3bの粘着力と接着剤層5に対する粘着剤層3の第1の領域3aの粘着力との差(F2-F1)を6.5~9.0N/25mmに特定した。本発明者らは、これまでに、小チップではエッジ剥離がピックアップ性の支配的因子であること、及びエッジ剥離強度の増加の主原因が硬化収縮であることを見出し、(F2-F1)を6.5~9.0N/25mmにすることによって、硬化収縮を抑えることができ、粘着剤層3からの優れたピックアップ性を達成することができることをさらに見出した。これによって、フィルム10を用いることによって、充分に高い歩留まりで半導体装置を製造することが可能となる。
【0029】
接着剤層5に対する粘着剤層3の第1の領域3aの粘着力(F1)は、例えば、1.1~4.5N/25mm又は1.1~3.0N/25mmであってよい。F1は、1.2N/25mm以上、1.5N/25mm以上、又は2.0N/25mm以上であってもよく、4.0N/25mm以下、3.7N/25mm以下、3.5N/25mm以下、3.2N/25mm以下、又は3.0N/25mm以下であってもよい。
【0030】
接着剤層5に対して上記範囲の粘着力を有する第1の領域3aは、活性エネルギー線の照射によって形成されるものであり、活性エネルギー線照射領域ともいえる。本発明者らは、活性エネルギー線の照射によって粘着剤層の粘着力を低下させることが、DAFのエッジ部分の剥離に影響を与えることも見出した。すなわち、第1の領域3aの粘着力が活性エネルギー線の照射によって過度に低下したものであると、接着剤層5に対する第1の領域3aの30°ピール強度は低くなる一方、ピックアップ対象が小チップである場合、DAFのエッジ部分が剥離しにくくなる傾向にあり、チップが過度に変形して割れ又はピックアップミスが生じ易くなる。接着剤層5に対する第1の領域3aの粘着力の下限(例えば、1.1N/25mm)は、活性エネルギー線を照射する前の粘着力を過度に低下させていないものであるともいうことができ、これにより、小チップであってもDAFのエッジ部分の剥離が生じ易くしている。一方で、接着剤層5に対する第1の領域3aの粘着力が過度に高いものであると、ピックアップ性が低下する傾向にある。接着剤層5に対する第1の領域3aの粘着力の上限(例えば、4.5N/25mm)は、活性エネルギー線を照射する前の粘着力を優れたピックアップ性が発現する程度に低下させているものであるといえる。
【0031】
接着剤層5に対する粘着剤層3の第2の領域3bの粘着力(F2)は、例えば、8.0~11.5N/25mmであってよい。F2は、8.5N/25mm以上、9.0N/25mm以上、又は9.5N/25mm以上であってもよく、11.0N/25mm以下、10.8N/25mm以下、又は10.5N/25mm以下であってもよい。
【0032】
本実施形態においては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂における連鎖重合可能な官能基の含有量(官能基導入化合物の含有量)、粘着剤層における架橋剤の含有量、活性エネルギー線の照射量を調整することによって、又は、例えば、その他の樹脂(アクリルモノマー又はオリゴマー、ウレタンモノマー又はオリゴマー等)若しくは粘着性付与剤(タッキファイヤ等)を添加することによって、F1、F2、及び(F2-F1)を調整することができる。
【0033】
ステンレス基板に対する粘着剤層3の第2の領域3bの粘着力は、0.2N/25mm以上であってよい。この粘着力は、温度23℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定される90°ピール強度である。この粘着力が0.2N/25mm以上であることで、ダイシング時におけるリング剥がれを充分に抑制することができる。ステンレス基板に対する粘着剤層3の第2の領域3bの粘着力は、0.25N/25mm以上又は0.3N/25mm以上であってもよく、2.0N/25mm以下、1.0N/25mm以下、0.8N/25mm以下、又は0.6N/25mm以下であってよい。
【0034】
活性エネルギー線の照射前の粘着剤層は、例えば、(メタ)アクリル系樹脂と、光重合開始剤と、架橋剤とを含む活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる。活性エネルギー線が照射されない第2の領域3bは、活性エネルギー線照射前の粘着剤層と同じ組成であり得る。以下、活性エネルギー線硬化型粘着剤の含有成分について詳細に説明する。
【0035】
[(メタ)アクリル系樹脂]
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂を含んでいてもよい。このような(メタ)アクリル系樹脂を含む場合、官能基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であってよい。(メタ)アクリル系樹脂における官能基の含有量は、0.1~1.2mmol/gであってよい。(メタ)アクリル系樹脂における官能基の含有量は、0.2mmol/g以上又は0.3mmol/g以上であってもよく、1.0mmol/g以下、0.8mmol/g以下、0.7mmol/g以下、0.6mmol/g以下、又は0.5mmol/g以下であってもよい。官能基の含有量が0.1mmol/g以上であることで、活性エネルギー線の照射によって粘着力が適度に低下した領域(第1の領域3a)を形成し易い傾向にあり、他方、1.2mmol/g以下であることで、優れたピックアップ性を達成し易い傾向にある。
【0036】
(メタ)アクリル系樹脂は、既知の方法で合成することで得ることができる。合成方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、析出重合法、気相重合法、プラズマ重合法、超臨界重合法が挙げられる。また、重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合、イモーダル重合等の他、ATRP(原子移動ラジカル重合)及びRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動重合)といった手法も挙げられる。この中でも、溶液重合法を用いてラジカル重合により合成することは、経済性の良さ、反応率の高さ、重合制御の容易さなどの他、重合で得られた樹脂溶液をそのまま用いて配合できる等の利点を有する。
【0037】
ここで、溶液重合法を用いてラジカル重合によって、(メタ)アクリル系樹脂を得る方法を例に、(メタ)アクリル系樹脂の合成法について詳細に説明する。
【0038】
(メタ)アクリル系樹脂を合成する際に用いられるモノマーとしては、一分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するものであれば特に制限はない。その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-N-カルバゾール等の複素環式(メタ)アクリレート、これらのカプロラクトン変性体、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物;(2-エチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-メチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、3-(2-エチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(2-メチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とオキセタニル基とを有する化合物;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のエチレン性不飽和基とイソシアネート基とを有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基とを有する化合物が挙げられる。これらを適宜組み合わせて目的とする(メタ)アクリル系樹脂を得ることができる。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂は、後述する官能基導入化合物又は架橋剤との反応点として、水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂を合成するためのモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基とを有する化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系樹脂を合成するためのモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
これらのモノマーから合成される(メタ)アクリル系樹脂は、連鎖重合可能な官能基を含む。連鎖重合可能な官能基は、例えば、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種である。連鎖重合可能な官能基は、例えば、上述のように合成された水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂に、以下の化合物(官能基導入化合物)を反応させることにより、当該(メタ)アクリル系樹脂中に導入することができる。官能基導入化合物の具体例として、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は4-ヒドロキシブチルエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、官能基導入化合物は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであってよい。
【0042】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、活性エネルギー線を照射することで連鎖重合可能な活性種を発生するものであれば、特に制限はない。活性エネルギー線は、紫外線、電子線、及び可視光線から選ばれる少なくとも1種であってよく、紫外線であってよい。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。ここで連鎖重合可能な活性種とは、連鎖重合可能な官能基と反応することで重合反応が開始されるものを意味する。
【0043】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾインケタール;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のα-アミノケトン;1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタジオン-2-(ベンゾイル)オキシム等のオキシムエステル;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9、9’-アクリジニルヘプタン)等のアクリジン化合物;N-フェニルグリシン、クマリンなどが挙げられる。
【0044】
活性エネルギー線硬化型粘着剤における光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して、0.1~30質量部、0.3~10質量部、又は、0.5~5質量部であってよい。光重合開始剤の含有量が0.1質量部以上であると、粘着剤層が活性エネルギー線照射後に硬化が充分となり、ピックアップ不良が起こり難い傾向にある。光重合開始剤の含有量が30質量部以下であると、接着剤層への汚染(光重合開始剤の接着剤層への転写)を防ぐことができる傾向にある。
【0045】
[架橋剤]
架橋剤は、例えば、粘着剤層の弾性率及び/又は粘着性の制御を目的に用いられる。架橋剤は、(メタ)アクリル系樹脂が有する水酸基、グリシジル基、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基と反応し得る官能基を一分子中に2つ以上有する化合物であればよい。架橋剤と(メタ)アクリル系樹脂との反応によって形成される結合としては、例えば、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
【0046】
本実施形態においては、架橋剤は、例えば、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートであってよい。このような多官能イソシアネートを用いると、(メタ)アクリル系樹脂が有する水酸基、グリシジル基、アミノ基等と容易に反応し、強固な架橋構造を形成することができる。
【0047】
一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等のイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0048】
架橋剤は、多官能イソシアネートと、一分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとの反応物(イソシアナート基含有オリゴマー)であってもよい。一分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、架橋剤は、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと、一分子中に3つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとの反応物(イソシアナート基含有オリゴマー)であってもよい。このようなイソシアネート基含有オリゴマーを架橋剤として用いることで、粘着剤層3が緻密な架橋構造を形成し、これにより、ピックアップ工程において接着剤層5に粘着剤が付着することを充分に抑制することができる傾向にある。
【0050】
活性エネルギー線硬化型粘着剤における架橋剤の含有量は、粘着剤層に対して求められる凝集力、破断伸び率、接着剤層との密着性等に応じて適宜設定することができる。具体的には、架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して、例えば、3~30質量部、4~15質量部、又は7~10質量部であってよい。架橋剤の含有量を上記範囲とすることで、ダイシング工程において粘着剤層に求められる特性と、ダイボンディング工程において粘着剤層に求められる特性とをバランスよく両立することが可能であるとともに、優れたピックアップ性も達成し得る。
【0051】
架橋剤の含有量が(メタ)アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して3質量部以上であると、架橋構造の形成が不充分となり難く、ピックアップ工程において、接着剤層との界面密着力が充分に低下してピックアップ時に不良が発生し難い傾向にある。他方、架橋剤の含有量が(メタ)アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して30質量部以下であると、粘着剤層が過度に硬くなり難く、エキスパンド工程においてチップが剥離し難い傾向にある。
【0052】
活性エネルギー線硬化型粘着剤の全質量に対する架橋剤の含有量は、例えば、0.1~15質量%、3~15質量%、又は5~15質量%であってよい。架橋剤の含有量が0.1質量%以上であることで、活性エネルギー線の照射によって粘着力が適度に低下した領域(第1の領域3a)を形成し易く、他方、15質量%以下であることで、優れたピックアップ性を達成し易い傾向にある。
【0053】
粘着剤層3の厚さは、エキスパンド工程の条件(温度、張力等)に応じて適宜設定すればよく、例えば、1~200μm、5~50μm、又は10~20μmであってよい。粘着剤層3の厚さが1μm以上であると、粘着性が不十分となり難く、200μm以下であると、エキスパンド時にカーフ幅が広くなり(ピン突き上げ時に応力を緩和せずに)、ピックアップが不充分になり難い傾向にある。
【0054】
粘着剤層3は、基材層1上に形成されている。粘着剤層3の形成方法としては、既知の手法を採用できる。例えば、基材層1と粘着剤層3との積層体を二層押し出し法で形成してもよいし、活性エネルギー線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)を調製し、これを基材層1の表面に塗工する、あるいは、離型処理されたフィルム上に粘着剤層3を形成し、これを基材層1に転写してもよい。
【0055】
活性エネルギー線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)は、(メタ)アクリル系樹脂、光重合開始剤、及び架橋剤を溶解し得る有機溶剤であって加熱により揮発するものであってよい。有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらの中で、有機溶剤は、溶解性及び沸点の観点から、例えば、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。ワニスの固形分濃度は、通常、10~60質量%である。
【0057】
(基材層)
基材層1は、既知のポリマーシート又はフィルムを用いることができ、低温条件下において、エキスパンド工程を実施可能なものであれば、特に制限されない。基材層1の具体例としては、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、又は、これらに可塑剤を混合した混合物、あるいは、電子線照射により架橋を施した硬化物が挙げられる。
【0058】
基材層1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリプロピレンランダム共重合体、及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を主成分とする表面を有し、この表面と粘着剤層3とが接しているものであってよい。これらの樹脂は、ヤング率、応力緩和性、融点等の特性、価格面、使用後の廃材リサイクルなどの観点からも良好な基材となり得る。基材層1は、単層であってよく、必要に応じて、異なる材質からなる層が積層された多層構造を有していてもよい。粘着剤層3との密着性を制御する観点から、基材層1は、その表面に対して、マット処理、コロナ処理等の表面粗化処理を施してもよい。
【0059】
(接着剤層)
接着剤層5には、既知のダイボンディングフィルムを構成する接着剤組成物を適用できる。具体的には、接着剤層5を構成する接着剤組成物は、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体と、硬化促進剤と、フィラーとを含んでいてもよい。これらの成分を含む接着剤層5によれば、チップ/基板間、チップ/チップ間の接着性に優れ、また、電極埋め込み性、ワイヤ埋め込み性等も付与可能で、かつダイボンディング工程では低温で接着でき、短時間で優れた硬化が得られる、封止剤でモールド後は優れた信頼性を有する等の特徴を有する傾向にある。
【0060】
反応性基含有(メタ)アクリル共重合体は、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体であってよい。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、原料としてグリシジル(メタ)アクリレートを、得られる共重合体に対し0.5~6質量%となる量用いて得られる共重合体であってよい。グリシジル(メタ)アクリレートの含有量が0.5質量%以上であると、高い接着力を得易くなり、他方、6質量%以下であることでゲル化を抑制できる傾向にある。反応性基含有(メタ)アクリル共重合体の残部を構成するモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート等の炭素数1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリル等であってよい。これらの中でも、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体の残部を構成するモノマーは、エチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートであってよい。混合比率は、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体のTgを考慮して調整することができる。Tgが-10℃以上であるとBステージ状態での接着剤層5のタック性が大きくなり過ぎることを抑制できる傾向にあり、取り扱い性に優れる傾向にある。なお、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体のガラス転移点(Tg)は、例えば、30℃以下であってよい。重合方法は、特に制限されないが、例えば、パール重合、溶液重合等が挙げられる。市販のエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、HTR-860P-3(商品名、ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0061】
エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、接着性及び耐熱性の観点から、10万以上であってよく、30万~300万又は50万~200万であってもよい。重量平均分子量が300万以下であると、チップと、これを支持する基板との間の充填性が低下することを抑制できる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0062】
硬化促進剤としては、例えば、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類等が挙げられる。硬化促進剤の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテートが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
フィラーは、無機フィラーであってよい。無機フィラーの具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
接着剤組成物は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤をさらに含んでいてもよい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等の二官能エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂等の一般に知られているその他のエポキシ樹脂を適用してもよい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、特性を損なわない範囲でエポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0065】
エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール化合物と2価の連結基であるキシリレン化合物とを、無触媒又は酸触媒の存在下に反応させて得ることができるフェノール樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-n-プロピルフェノール、m-n-プロピルフェノール、p-n-プロピルフェノール、o-イソプロピルフェノール、m-イソプロピルフェノール、p-イソプロピルフェノール、o-n-ブチルフェノール、m-n-ブチルフェノール、p-n-ブチルフェノール、o-イソブチルフェノール、m-イソブチルフェノール、p-イソブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,4-キシレノール、2,6-キシレノール、3,5-キシレノール、2,4,6-トリメチルフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、4-メトキシフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、o-アリルフェノール、p-アリルフェノール、o-ベンジルフェノール、p-ベンジルフェノール、o-クロロフェノール、p-クロロフェノール、o-ブロモフェノール、p-ブロモフェノール、o-ヨードフェノール、p-ヨードフェノール、o-フルオロフェノール、m-フルオロフェノール、p-フルオロフェノール等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。フェノール樹脂の製造に用いられる2価の連結基であるキシリレン化合物としては、次に示すキシリレンジハライド、キシリレンジグリコール及びその誘導体が用いることができる。すなわち、キシリレン化合物の具体例としては、α,α’-ジクロロ-p-キシレン、α,α’-ジクロロ-m-キシレン、α,α’-ジクロロ-o-キシレン、α,α’-ジブロモ-p-キシレン、α,α’-ジブロモ-m-キシレン、α,α’-ジブロモ-o-キシレン、α,α’-ジヨード-p-キシレン、α,α’-ジヨード-m-キシレン、α,α’-ジヨード-o-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-p-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-m-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-o-キシレン、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、α,α’-ジメトキシ-m-キシレン、α,α’-ジメトキシ-o-キシレン、α,α’-ジエトキシ-p-キシレン、α,α’-ジエトキシ-m-キシレン、α,α’-ジエトキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-o-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-p-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-m-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-o-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-o-キシレン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0066】
フェノール化合物とキシリレン化合物とを反応させる際には、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸類;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機カルボン酸類;トリフロロメタンスルホン酸等の超強酸類;アルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の強酸性イオン交換樹脂類;パーフルオロアルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の超強酸性イオン交換樹脂類(商品名:ナフィオン、Nafion、Du Pont社製、「ナフィオン」は登録商標);天然及び合成ゼオライト類;活性白土(酸性白土)類等の酸性触媒を用い、50~250℃において実質的に原料であるキシリレン化合物が消失し、かつ反応組成が一定になるまで反応させることによってフェノール樹脂をえることができる。反応時間は、原料及び反応温度によって適宜設定することができ、例えば、1時間~15時間程度とすることでき、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)等により反応組成を追跡しながら決定することができる。
【0067】
接着剤層5の厚さは、例えば、1~300μm、5~150μm、又は10~100μmであってよい。接着剤層5の厚さが1μm以上であると、接着性がより優れ、他方、300μm以下であると、エキスパンド時の分断性及びピックアップ性がより優れる傾向にある。
【0068】
<ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法>
フィルム10の製造方法は、基材層1の表面上に、活性エネルギー線が照射されることによって粘着力が低下する活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の表面上に形成された接着剤層5とを含む積層体を作製する工程と、積層体に含まれる粘着剤層の第1の領域3aとなる領域に活性エネルギー線を照射する工程とをこの順序で備える。第1の領域3aとなる領域に対する活性エネルギー線の照射量は、例えば、10~1000mJ/cmであり、100~700mJ/cm、又は200~500mJ/cmであってよい。当該製造方法は、粘着剤層と接着剤層5の積層体を先に作製し、その後、粘着剤層の特定の領域に活性エネルギー線を照射するものである。
【0069】
<半導体装置及びその製造方法>
図4は、本実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。この図に示す半導体装置100は、基板70と、基板70の表面上に積層された四つのチップS1,S2,S3,S4と、基板70の表面上の電極(不図示)と、四つのチップS1,S2,S3,S4とを電気的に接続するワイヤW1,W2,W3,W4と、これらを封止している封止層50とを備える。
【0070】
基板70は、例えば、有機基板であり、リードフレーム等の金属基板であってもよい。基板70の厚さは、半導体装置100の反りを抑制する観点から、例えば、70~140μm又は80~100μmであってよい。
【0071】
四つのチップS1,S2,S3,S4は、接着剤片5Pの硬化物5Cを介して積層されている。平面視におけるチップS1,S2,S3,S4の形状は、例えば、正方形又は長方形である。チップS1,S2,S3,S4の面積は、0.1~9mmであり、0.1~4mm又は0.1~2mmであってよい。チップS1,S2,S3,S4の一辺の長さは、例えば、0.1~3mm、0.1~2mm、又0.1~1mmであってよい。チップS1,S2,S3,S4の厚さは、例えば、10~170μm又は25~100μmであってよい。なお、四つのチップS1,S2,S3,S4の一辺の長さは同じであっても、互いに異なっていてもよく、厚さについても同様である。
【0072】
半導体装置100の製造方法は、上述のフィルム10を準備する工程と、フィルム10の接着剤層5に対してウェハWを貼るとともに、粘着剤層3の第2の面F2に対してダイシングリングDRを貼る工程と、ウェハWを複数のチップSに個片化する工程(ダイシング工程)と、DAF8(チップS1と接着剤片5Pとの積層体、図5(d)参照)を粘着剤層3の第1の領域3aからピックアップする工程と、接着剤片5Pを介してチップS1を、基板70上にマウントする工程とを備える。
【0073】
図5(a)、図5(b)、図5(c)、及び図5(d)を参照しながら、DAF8の作製方法の一例について説明する。まず、上述のフィルム10を準備する。図5(a)及び図5(b)に示すように、ウェハWの一方の面に接着剤層5が接するようにフィルム10を貼り付ける。また、粘着剤層3の第2の面F2に対してダイシングリングDRを貼り付ける。
【0074】
ウェハW、接着剤層5、及び粘着剤層3をダイシングする。これにより、図5(c)に示すように、ウェハWが個片化されてチップSとなる。接着剤層5も個片化されて接着剤片5Pとなる。ダイシング方法としては、ダイシングブレード又はレーザを用いる方法が挙げられる。なお、ウェハWのダイシングに先立ってウェハWを研削することによって薄膜化してもよい。
【0075】
ダイシング後、粘着剤層3に対して活性エネルギー線を照射することなく、図5(d)に示されるように、常温又は冷却条件下において基材層1をエキスパンドすることによってチップSを互いに離間させつつ、ピン42で突き上げることによって粘着剤層3から接着剤片5Pを剥離させるとともに、DAF8を吸引コレット44で吸引してピックアップする。
【0076】
図6図7、及び図8を参照しながら、半導体装置100の製造方法について具体的に説明する。まず、図6に示すように、接着剤片5Pを介して一段目のチップS1(チップS)を基板70の所定の位置に圧着する。次に、加熱によって接着剤片5Pを硬化させる。これにより、接着剤片5Pが硬化して硬化物5Cとなる。接着剤片5Pの硬化処理は、ボイドの低減の観点から、加圧雰囲気下で実施してもよい。
【0077】
基板70に対するチップS1のマウントと同様にして、チップS1の表面上に二段目のチップS2をマウントする。更に、三段目及び四段目のチップS3,S4をマウントすることによって図7に示す構造体60が作製される。チップS1,S2,S3,S4と基板70とをワイヤW1,W2,W3,W4で電気的に接続した後(図8参照)、封止層50によって半導体素子及びワイヤを封止することによって図4に示す半導体装置100が完成する。
【0078】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、基材層1と、粘着剤層3と、接着剤層5とをこの順序で備えるフィルム10を例示したが、接着剤層5を備えない態様であってもよい。また、フィルム10は、接着剤層5を覆うカバーフィルム(不図示)を更に備えてもよい。
【実施例
【0079】
以下、本開示について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に記述がない限り、薬品は全て試薬を使用した。
【0080】
<製造例1>
[アクリル系樹脂(A-1)の合成]
スリーワンモータ、撹拌翼、及び窒素導入管が備え付けられた容量2000mLのフラスコに以下の成分を入れた。
・酢酸エチル(溶剤):635質量部
・2-エチルヘキシルアクリレート:395質量部
・2-ヒドロキシエチルアクリレート:100質量部
・メタクリル酸:5質量部
・アゾビスイソブチロニトリル:0.08質量部
【0081】
充分に均一になるまで内容物を撹拌した後、流量500mL/分にて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて78℃まで昇温し、昇温後6時間重合させた。次に、スリーワンモータ、撹拌翼、及び窒素導入管が備え付けられた容量2000mLの加圧釜に反応溶液を移し、120℃、0.28MPaの条件にて4.5時間加温後、室温(25℃、以下同様)に冷却した。
【0082】
次に酢酸エチルを490質量部加えて撹拌し、内容物を希釈した。これに、ウレタン化触媒として、ジオクチルスズジラウレートを0.10質量部添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI(商品名))を48.6質量部加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。次いで、酢酸エチルをさらに加え、アクリル系樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、製造例1の連鎖重合可能な官能基を有するアクリル系樹脂(A-1)を含む溶液を得た。
【0083】
上記のようにして得たアクリル系樹脂(A-1)を含む溶液を60℃で一晩真空乾燥した。これによって得られた固形分を全自動元素分析装置(エレメンタール社製、商品名:varioEL)にて元素分析し、導入された2-メタクリロキシエチルイソシアネートに由来する官能基の含有量を窒素含有量から算出したところ、0.50mmol/gであった。
【0084】
また、以下の装置を使用して、アクリル系樹脂(A-1)のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。すなわち、東ソー株式会社製SD-8022/DP-8020/RI-8020を使用し、カラムには日立化成株式会社製Gelpack GL-A150-S/GL-A160-Sを用い、溶離液にテトラヒドロフランを用いてGPC測定を行った。その結果、ポリスチレン換算の重量平均分子量は80万であった。JIS K0070に記載の方法に準拠して測定した水酸基価及び酸価は56.1mgKOH/g及び6.5mgKOH/gであった。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0085】
<製造例2>
[アクリル系樹脂(A-2)の合成]
表1の製造例1に示す原料モノマー組成を、表1の製造例2に示す原料モノマー組成に変更した以外は、製造例1と同様の手法で製造例2のアクリル系樹脂(A-2)を含む溶液を得た。製造例2のアクリル系樹脂(A-2)の性状の測定結果を表1に示す。
【0086】
<製造例3>
[アクリル系樹脂(A-3)の合成]
表1の製造例1に示す原料モノマー組成を、表1の製造例3に示す原料モノマー組成に変更した以外は、製造例1と同様の手法で製造例3のアクリル系樹脂(A-3)を含む溶液を得た。製造例3のアクリル系樹脂(A-3)の性状の測定結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
<実施例1>
[ダイシングフィルム(粘着剤層)の作製]
以下の成分を混合することで、活性エネルギー線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)を調製した(表2参照)。酢酸エチル(溶剤)の量は、ワニスの総固形分含有量が25質量%となるように調整した。
・製造例1のアクリル系樹脂(A-1)を含む溶液:100質量部(固形分)
・光重合開始剤(B-1)(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製、イルガキュア184、「イルガキュア」は登録商標):1.0質量部
・架橋剤(C-1)(多官能イソシアネート(トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応物)、日本ポリウレタン工業株式会社製、コロネートL、固形分:75%):8.0質量部(固形分)
・酢酸エチル(溶剤)
【0089】
一方の面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(幅450mm、長さ500mm、厚さ38μm)を準備した。離型処理が施された面に、アプリケータを用いて活性エネルギー線硬化型粘着剤のワニスを塗布した後、80℃で5分間乾燥した。これによって、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、その上に形成された厚さ30μmの粘着剤層とからなる積層体(ダイシングフィルム)を得た。
【0090】
一方の面にコロナ処理が施されたポリオレフィンフィルム(幅450mm、長さ500mm、厚さ80μm)を準備した。コロナ処理が施された面と、上記積層体の粘着剤層とを室温にて貼り合わせた。次いで、ゴムロールで押圧することで粘着剤層をポリオレフィンフィルム(カバーフィルム)に転写した。その後、室温で3日間放置することでカバーフィルム付きのダイシングフィルムを得た。
【0091】
[ダイボンディングフィルム(接着剤層)の作製]
以下の成分を混合することで、接着剤層形成用のワニスを調製した。まず、以下の成分を含む混合物に対して、シクロヘキサノン(溶剤)を加えて撹拌混合した後、更にビーズミルを用いて90分混練した。
・エポキシ樹脂(YDCN-700-10(商品名)、新日鉄住金化学株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:210、分子量:1200、軟化点:80℃):14質量部
・フェノール樹脂(ミレックスXLC-LL(商品名)、三井化学株式会社製、フェノール樹脂、水酸基当量:175、吸水率:1.8%、350℃における加熱重量減少率:4%):23質量部
・シランカップリング剤(NUC A-189(商品名)株式会社NUC製、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン):0.2質量部
・シランカップリング剤(NUCA-1160(商品名)、日本ユニカー株式会社製、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン):0.1質量部
・フィラー(SC2050-HLG(商品名)、アドマテックス株式会社製、シリカ、平均粒径0.500μm):32質量部
【0092】
上記のようにして得られた混合物に以下の成分をさらに加えた後、撹拌混合及び真空脱気の工程を経て接着剤層形成用のワニス(少なくとも反応性基含有(メタ)アクリル共重合体と、硬化促進剤と、フィラーとを含む接着剤組成物のワニス)を得た。
・エポキシ基含有アクリル共重合体(HTR-860P-3(商品名)、ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量80万):16質量部
・硬化促進剤(キュアゾール2PZ-CN(商品名)、四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、「キュアゾール」は登録商標)0.1質量部
【0093】
一方の面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ35μm)を準備した。離型処理が施された面に、アプリケータを用いて接着剤層形成用のワニスを塗布した後、140℃で5分間加熱乾燥した。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(キャリアフィルム)と、その上に形成された厚さ25μmの接着剤層(Bステージ状態)とからなる積層体(ダイボンディングフィルム)を得た。
【0094】
[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製]
接着剤層とキャリアフィルムとからなるダイボンディングフィルムを、キャリアフィルムごと直径335mmの円形にカットした。カットしたダイボンディングフィルムに、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離したダイシングフィルムを室温で貼付け後、室温で1日放置した。その後、直径370mmの円形にダイシングフィルムをカットし、積層体を得た。このようにして得た積層体の接着剤層におけるウェハの貼付け位置に対応する領域(粘着剤層の第1の領域)に以下のようにして紫外線を照射した。すなわち、パルスドキセノンランプを用いて70W、300mJ/cmの照射量で部分的に紫外線を照射した。なお、紫外線の照射は、暗幕を用いてフィルムの中心から内径318mmの部分に対して行った。このようにして、後述の種々の評価試験に供するための複数の実施例1のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得た。
【0095】
<実施例2>
紫外線の照射量を300mJ/cmから200mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして、複数の実施例2のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得た。
【0096】
<実施例3>
紫外線の照射量を300mJ/cmから500mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして、複数の実施例3のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得た。
【0097】
<実施例4>
ダイシングフィルムを作製する際に用いた光重合開始剤(B-1)を、光重合開始剤(B-2)(2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製、イルガキュア127、「イルガキュア」は登録商標))に変更した以外は、実施例1と同様にして、複数の実施例4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得た。
【0098】
<実施例5>
ダイシングフィルムを作製する際に用いたアクリル系樹脂(A-1)を、アクリル系樹脂(A-2)に変更した以外は、実施例3と同様にして、複数の実施例5のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得た。
【0099】
<比較例1>
ダイシングフィルムを作製する際に用いたアクリル系樹脂(A-1)を、アクリル系樹脂(A-3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、複数の比較例1のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得た。
【0100】
[評価試験]
(1)接着剤層に対する粘着剤層の粘着力(30°ピール強度)の測定
接着剤層に対する粘着剤層の第1の領域の粘着力(F1)及び接着剤層に対する粘着剤層の第2の領域の粘着力(F2)を、30°ピール強度を測定することによって評価した。なお、F1は、接着剤層に対する紫外線の照射後の粘着剤層の第1の領域の粘着力に相当し、F2は、接着剤層に対する紫外線の照射前の粘着剤層の第1の領域となる領域の粘着力に相当する。そのため、F1は、[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製]における紫外線の照射後のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いて、F2は、紫外線の照射前の積層体を用いて、粘着力(30°ピール強度)の測定を行った。測定試料は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及び積層体を準備し、これらを幅25mm及び長さ100mmにそれぞれ切り出すことによって得た。引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ「AGS-1000」)を用いて、それぞれの測定試料から接着剤層に対する紫外線の照射後の粘着剤層の第1の領域のピール強度及び接着剤層に対する紫外線の照射前の粘着剤層の第1の領域となる領域のピール強度(接着剤層に対する粘着剤層の第2の領域のピール強度)を測定した。測定条件は、剥離角度30°、剥離速度60mm/分とした。なお、試料の保存及びピール強度の測定は、温度23℃、相対湿度40%の環境下で行った。結果を表2に示す。
【0101】
(2)ステンレス基板に対する粘着剤層の粘着力(90°ピール強度)の測定
ステンレス基板に対する粘着剤層の第2の領域の粘着力を90°ピール強度を測定することによって評価した。なお、当該粘着力は、ステンレス基板に対する紫外線の照射前の粘着剤層の粘着力に相当する。そのため、当該粘着力は、[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製]における紫外線の照射前の積層体を用いて、粘着力(90°ピール強度)の測定を行った。測定試料は、積層体を準備し、これを幅25mm及び長さ100mmに切り出し、粘着剤層側の面をステンレス基板(SUS430BA)に貼り付けることによって得た。引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ「AGS-1000」)を用いて、測定試料からステンレス基板に対する粘着剤層のピール強度を測定した。測定条件は、剥離角度90°、剥離速度50mm/分とした。結果を表2に示す。
【0102】
(3)粘着剤層の硬化収縮率の測定
一方の面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(幅450mm、長さ500mm、厚さ38μm)を2枚準備した。1枚のポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理が施された面に、アプリケータを用いて活性エネルギー線硬化型粘着剤のワニスを塗布した後、80℃で5分間乾燥し、粘着剤層を形成した。次いで、もう1枚のポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理が施された面と、粘着剤層とを室温にて貼り合わせ、ゴムロールで押圧することによって、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、厚さ30μmの粘着剤層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムとからなる積層体を得た。このような積層体を複数作製した。次に、積層体のポリエチレンテレフタレートフィルムを片面剥離し、粘着剤層同士をボイドが入らないようにラミネートし、これを粘着剤層の厚さが約1mmとなるまで他の積層体を用いて粘着剤層をラミネートすることを繰り返すことで、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムと、これらに挟まれた厚さ約1mmの粘着剤層とからなる積層体を得た。
【0103】
得られた積層体を10mmφに打ち抜き、ポリエチレンテレフタレートフィルムを両面剥離し、ボイドが入らないようにスライドガラス上に配置した。次いで、片面が黒色のアルミホイルを同様に10mmφに打ち抜き、スライドガラスとは反対側の粘着剤層の上面に配置することによってサンプルを得た。得られたサンプルに対して、[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製]と同様の条件で紫外線の照射を行い、樹脂硬化収縮測定装置(株式会社アクロエッジ製、Custron)を用いて、紫外線の照射前後のスライドガラス及びアルミホイルを除いた厚みの差から硬化収縮率を測定した。結果を表2に示す。
【0104】
(4)チップのエッジ剥離強度の測定
エッジ剥離強度は、以下の工程を経て測定される。図9(a)、図9(b)、及び図9(c)は、エッジ剥離強度を測定する工程を模式的に示す断面図である。
・接着剤層5に対して厚さ50μmのシリコンウェハWsを貼るとともに、粘着剤層3の第2の面F2に対してダイシングリングDRを貼る工程(図9(a)参照)
・シリコンウェハWs及び接着剤層5を複数の接着剤片付きチップTa(チップTsと接着剤片5pの積層体)に個片化する工程(図9(b)参照)
・温度23℃において基材層1側から接着剤片付きチップTaの中央部を速度60mm/分で押し込み(図9(c)参照)、接着剤片付きチップTaのエッジが粘着剤層3から剥離するときのエッジ剥離強度を測定する工程
【0105】
まず、シリコンウェハ(直径:12インチ、厚さ:50μm)及びダイシングリングにダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを以下条件で貼付けた(図9(a)参照)。シリコンウェハ及びダイシングリングを貼付けた後のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムのMD方向の伸びは、1.0~1.3%程度であった。
【0106】
<貼付条件>
・貼付装置:DFM2800(株式会社ディスコ製)
・貼付温度:70℃
・貼付速度:10mm/s
・貼付テンションレベル:レベル6
【0107】
次いで、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム付きシリコンウェハをブレードダイシングによって複数の接着剤片付きチップ(サイズ2mm×2mm)に個片化した(図9(b)参照)。
【0108】
<ダイシング条件>
・ダイサー:DFD6361(株式会社ディスコ製)
・ブレード:ZH05-SD4000-N1-70-BB(株式会社ディスコ製)
・ブレード回転数:40000rpm
・ダイシング速度:30mm/秒
・ブレードハイト:90μm
・粘着剤層の表面から基材層への切り込み深さ:20μm
・ダイシング時の水量
ブレードクーラー:1.5L/分
シャワー:1.0L/分、
スプレー:1.0L/分
【0109】
ダイシングしてから1日後、以下の測定条件で、基材層側から接着剤片付きチップを押し込み冶具Pで押し込み、接着剤片付きチップのエッジ剥離強度を測定した(図9(c)参照)。図10は、押し込みによる変位(mm)と押し込み力(N)との関係の一例を示すグラフである。チップのエッジが剥離した時、図10に示すように、一時的に押し込み力が低下し、グラフに変化点が生じる。この変化点における押し込み力の値をエッジ剥離強度と定義する。なお、測定前に、チップの中央部に相当する基材層の表面に、油性ペンでマーキングを行った。図11は、測定対象のチップの中央部に相当する位置にマークを付した状態を模式的に示す平面図である。チップの中央部のマークMは定規で計測して特定した。測定はN=10で行った。一つのチップについて測定した後、間隔をチップ3個分空けて次の測定を行った(図11参照)。結果を表2に示す。
【0110】
<測定条件>
・測定装置:小型卓上試験機EZ-SX(株式会社島津製作所製)
・ロードセル:50N
・押し込み冶具:ZTSシリーズ付属アタッチメント(形状:円錐型、株式会社イマダ製)
・押し込み速度:60mm/分
・温度:23℃
・湿度:45±10%
【0111】
(5)ピックアップ性の評価
上記のエッジ剥離強度の測定後、以下の条件で100個の接着剤片付きチップをピックアップした。
【0112】
<ピックアップ条件>
・ダイボンダ装置:DB800-HSD(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
・突上げピン:EJECTOR NEEDLE SEN2-83-05(直径:0.7mm、先端形状:半径350μmの半球、マイクロメカニクス社製)
・突き上げ高さ:200μm
・突き上げ速度:1mm/秒、
なお、突上げピンは、チップの中央部に1本配置した。ピックアップの成功率が100%であったものを「A」、70%以上100%未満であったものを「B」、70%未満であったものを「C」とした。結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2に示すように、実施例1~5のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、比較例1のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムよりもピックアップ性が良好であった。具体的には、比較例1は、(F1-F2)の差が実施例1~5よりも大きいことから、硬化収縮率及びエッジ剥離強度も実施例1~5よりも高く、ピックアップ性が充分ではなかった。以上の結果から、本開示のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムが、ウェハを複数の小さいチップ(面積0.1~9mm)へと個片化する工程を含む半導体装置の製造プロセスに適用可能であり、優れたピックアップ性を有する粘着剤層を備えていることが確認された。
【符号の説明】
【0115】
1…基材層、3…粘着剤層、3a…第1の領域、3b…第2の領域、5…接着剤層、5P,5p…接着剤片、5C…硬化物、8…DAF、10…ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム(フィルム)、42…ピン、44…吸引コレット、50…封止層、60…構造体、70…基板、80…支持板、100…半導体装置、DR…ダイシングリング、F1…第1の面、F2…第2の面、M…マーク、P…押し込み冶具、Rw…領域、S1,S2,S3,S4,S,Ts…チップ、Ta…接着剤片付きチップ、W…ウェハ、Ws…シリコンウェハ、W1,W2,W3,W4…ワイヤ。
図1
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