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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】組成物及びそれを使用した液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/44 20060101AFI20231226BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20231226BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20231226BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C09K19/44
C09K19/12
C09K19/30
G02F1/13 500
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019214240
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084951
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宗矩
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-205982(JP,A)
【文献】特開2016-017107(JP,A)
【文献】特開2018-123296(JP,A)
【文献】特開2017-193596(JP,A)
【文献】特開2017-141424(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072243(WO,A1)
【文献】特開2015-110741(JP,A)
【文献】特開2015-108127(JP,A)
【文献】特開2014-181293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00-19/60
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(i)
【化1】
(式中Ri1およびRi2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)
で表される化合物を1種、2種または3種以上と、
下記一般式(ii)
【化2】
(式中Rii1およびRii2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)
で表される化合物を1種、2種または3種以上と、
下記一般式(iii)
【化3】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素原子数1から8のアルキル基を表し、該基中の1個又は隣接しない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていても良く、Zは、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、mは、1又は2を表す。)
で表される化合物を1種または2種以上と、
下記一般式(iv)
【化4】
(式中Riv1およびRiv2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基または炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す。)
で表される化合物を1種または2種以上を含有し、
前記一般式(i)で表される化合物および一般式(ii)で表される化合物を合計3種以上含有する液晶組成物であって、
前記一般式(iii)で表される化合物として下記一般式(iii-1)
【化5】
(式中R 21 は一般式(iii)におけるR 21 と同じ意味を表し、R 23 は炭素原子数1から4のアルコキシ基を表す。)
で表される化合物を1種または2種以上含有する、液晶組成物。
【請求項2】
更に、下記式(NU-01-1)
【化6】
で表される化合物を20質量%以上含有する請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記一般式(ii)で表される化合物を2種または3種以上含有する請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたTN、ECB、IPS、FFS、PSAまたはPSVA型液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示材料として有用な誘電率異方性(Δε)が負の値を示す液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
Δεが負の値を示す液晶組成物を用いた液晶表示素子は、液晶TV等に広く用いられており、これらの用途に使用される液晶組成物には高い特性が要求されている。例えば、高いネマチック相上限温度(Tni)、高い屈折率異方性(Δn)、大きなΔε、低い回転粘性(γ)、低温でのネマチック相安定性等の諸特性がある。特にTniに関しては高温化するべく更なる向上が求められている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-024815号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、広い温度範囲でネマチック相を呈し、Δε、γ、低温保存性等の液晶表示素子としての諸特性を悪化させることなく、使用できる温度範囲を広くすべく高いTniと高いΔnの2つの特性に関してバランスがとれた液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、種々の液晶化合物を検討し、特定の液晶化合物を用いることにより前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の液晶組成物は、一般式(i)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中Ri1およびRi2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)で表される化合物を1種、2種または3種以上と、
下記一般式(ii)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中Rii1およびRii2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)で表される化合物を1種、2種または3種以上と、
下記一般式(iii)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素原子数1から8のアルキル基を表し、該基中の1個又は隣接しない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていても良く、Zは、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、mは、1又は2を表す。)で表される化合物を1種または2種以上と、
下記一般式(iv)
【0013】
【化4】
【0014】
(式中Riv1およびRiv2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基または炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物を1種または2種以上を含有し、前記一般式(i)で表される化合物および一般式(ii)で表される化合物を合計3種以上含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液晶組成物は、液晶温度範囲が広く、粘性が低く、熱や光に対する比抵抗や電圧保持率の変化が極めて小さいため、製品の実用性が高い。また、当該組成物を用いた液晶表示素子は動作温度範囲が広く、高速応答性、信頼性に優れ、保存安定性が良好である。特にFFS型又はIPS型の表示素子に用いた場合に、透過率が高く黒輝度が低減されるため高いコントラストを発揮し、更に焼付きの発生を抑制することができるため非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前述の通り、本願発明は、特定の化合物を含有する液晶組成物、該液晶組成物を使用した液晶表示素子、該液晶組成物を使用したTN、ECB、IPS、FFS、PSAまたはPSVA型液晶表示素子に関する。以下、まず、本発明に係る液晶組成物の実施の態様について説明する。
【0017】
本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物を1種、2種または3種以上含有する。
【0018】
【化5】
【0019】
(式中Ri1およびRi2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)
一般式(i)で表される化合物において、Ri1は炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、直鎖であることが好ましい。
【0020】
一般式(i)で表される化合物において、Ri2は炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~2のアルキル基が好ましく、直鎖であることが好ましい。
【0021】
一般式(i)で表される化合物は単独で使用することもできるが、2種以上の化合物を組み合わせて使用することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折等の求められる性能に応じて適宜組み合わせて使用する。使用する化合物の種類は、例えば本発明の一つの実施形態としては1種であり、2種であり、2種以上であり、3種であり、3種以上である。
【0022】
本発明の液晶組成物において、一般式(i)で表される化合物を1種又は2種以上用いることにより、ΔnとΔεを高めることができる。また、一般式(i)で表される化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物を用いることにより低電圧かつ高速応答の液晶表示素子を得ることができる。得られる液晶表示素子の高速応答性を向上するには一般式(i)で表される化合物の含有量を高めに設定することが好ましく、低温での保存性を重視する場合は含有量を低めに設定すると効果が高い。
【0023】
本発明の液晶組成物の総量に対しての一般式(i)で表される化合物、より具体的には、下記式(i-1)~式(i-10)で表わされる化合物の好ましい合計含有量の下限値は、1%であり、3%であり、4%であり、5%である。また、好ましい合計含有量の上限値は、本発明の液晶組成物の総量に対して、23%であり、21%であり、19%であり、17%である。
【0024】
なお、本願においては、特別な断りがない限り%は質量%を意味する。
【0025】
さらに、式(i)で表される化合物としては、一般式(i-1)~(i-10)で表される化合物が好ましく、式(i-1)、(i-3)、(i-6)及び(i-8)で表される化合物が好ましく、式(i-1)、(i-3)及び(i-8)で表される化合物が好ましい。
【0026】
【化6】
【0027】
本発明の液晶組成物は、一般式(ii)で表される化合物を1種、2種または3種以上含有する。
【0028】
【化7】
【0029】
(式中Rii1およびRii2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)
一般式(ii)で表される化合物において、Rii1は炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、直鎖であることが好ましい。
【0030】
一般式(ii)で表される化合物において、Rii2は炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、直鎖であることが好ましい。
【0031】
一般式(ii)で表される化合物は単独で使用することもできるが、2種以上の化合物を組み合わせて使用することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折等の求められる性能に応じて適宜組み合わせて使用する。使用する化合物の種類は、例えば本発明の一つの実施形態としては1種であり、2種であり、2種以上であり、3種であり、3種以上である。
【0032】
本発明の液晶組成物において、一般式(ii)で表される化合物を1種又は2種以上用いることにより、液晶組成物のTni、ΔnおよびΔεを高めることができ、また、低温での保存性を高めることができる。また、一般式(ii)で表される化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物を用いることにより低電圧かつ高速応答の液晶表示素子を得ることができる。液晶組成物のΔεを重視する場合は含有量を高めに設定することが好ましく、低温での保存性を重視する場合は含有量を低めに設定すると効果が高い。一般式(ii)で表される化合物を2種または2種以上用いることにより低温での溶解性が向上するため好ましい。
【0033】
本発明の液晶組成物の総量に対しての一般式(ii)で表される化合物、より具体的には、下記式(ii-1)~式(ii-10)で表わされる化合物の好ましい合計含有量の下限値は、1%であり、3%であり、5%である。また、好ましい合計含有量の上限値は、本発明の液晶組成物の総量に対して、23%であり、20%であり、18%であり、16%である。
【0034】
さらに、式(ii)で表される化合物としては、一般式(ii-1)~(ii-10)で表される化合物が好ましく、式(ii-1)、(ii-3)、(ii-5)及び(ii-7)で表される化合物が好ましく、式(ii-1)、(ii-3)、及び(ii-5)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化8】
【0036】
本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物および一般式(ii)で表される化合物を合計3種以上含有することを特徴とする。より具体的には、本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物を1種、1種以上、2種、2種以上、3種、又は3種以上含有し、一般式(ii)で表される化合物を1種、1種以上、2種、2種以上、3種、又は3種以上含有し、一般式(i)で表される化合物および一般式(ii)で表される化合物を合計3種以上含有することを特徴とする。特に、一般式(i)で表される化合物を1種または1種以上含有し、かつ、一般式(ii)で表される化合物を2種または3種以上含有する液晶組成物は、Tni、Δnを大きくなるのに加えて、低温での溶解性が良く、また、低温での保存性が良好となるため好ましい。
【0037】
本発明の液晶組成物は、一般式(iii)で表される化合物を1種または2種以上含有する。
【0038】
【化9】
【0039】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素原子数1から8のアルキル基を表し、該基中の1個又は隣接しない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていても良く、Zは、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、mは、1又は2を表す。)
一般式(iii)中、R21及びR22の取りうる基としては、炭素原子数1から8のアルキル基炭素原子数1から8のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基、炭素原子数2から8のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
【0040】
一般式(iii)中、R21は、炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数2から8のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数2から5のアルケニル基がより好ましく、炭素原子数1から4のアルキル基、炭素原子数2から4のアルケニル基が更に好ましい。
【0041】
一般式(iii)中、R22は、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数1から8のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1から4のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルコキシ基が更に好ましい。
【0042】
一般式(iii)中、Zは、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表すが、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-が好ましく、単結合又は-CHO-がより好ましい。
【0043】
一般式(iii)中、mは1又は2を表すが、mが1のとき、Zは単結合であることが好ましい。また、mが2のとき、Zは-CHCH-、-CHO-、であることが好ましい。
【0044】
本発明の液晶組成物において、一般式(iii)で表される化合物を1種又は2種以上用いることにより、液晶組成物のTniおよびΔεを高めることができ、また、低温での保存性を高めることができる。また、一般式(ii)で表される化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物を用いることにより低電圧かつ高速応答の液晶表示素子を得ることができる。液晶組成物のΔεを重視する場合は含有量を高めに設定することが好ましく、低温での保存性を重視する場合は含有量を低めに設定すると効果が高い。一般式(iii)で表される化合物を2種または2種以上用いることにより低温での溶解性が向上するため好ましい。
【0045】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(iii)で表される化合物、より具体的には下記一般式(iii-1)~一般式(iii-4)で表される化合物の好ましい合計含有量の下限値は、1%であり、3%であり、5%であり、10%であり、13%である。また、好ましい合計含有量の上限値は、本発明の液晶組成物の総量に対して、37%であり、35%であり、32%であり、30%である。
【0046】
一般式(iii)で表される化合物として、一般式(iii-1)、一般式(iii-2)、一般式(iii-3)及び一般式(iii-4)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0047】
【化10】
【0048】
(式中、R21は先述と同じ意味を表し、R23は、それぞれ独立して、炭素原子数1から4のアルコキシ基を表す。)
本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、後述する一般式(iv)で表される化合物の他に、一般式(iii-1)で表される化合物を含有することが好ましく、一般式(iii-1)で表される化合物及び一般式(iii-2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0049】
高い信頼性を必要とする場合、さらに言い換えると、表示不良がない液晶表示素子を得ることを重視する場合は、一般式(iii-4)で表される化合物を含まないことが好ましい。
【0050】
本発明の液晶組成物には、更に、一般式(N-03)、一般式(N-04)及び一般式(N-05)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。これら化合物は誘電的に負の異方性を有する化合物に該当する。これらの化合物は、Δεの符号が負で、その絶対値が2より大きい値を示す。なお、化合物のΔεは、25℃において誘電的にほぼ中性の組成物に該化合物を添加した組成物の誘電率異方性の測定値から外挿した値である。
【0051】
【化11】
【0052】
一般式(N-03)~一般式(N-05)中、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素原子数1から8のアルキル基を表し、該基中の1個又は隣接しない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていても良く、ZおよびZは、それぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表す。R21及びR22の取りうる基としては、炭素原子数1から8のアルキル基炭素原子数1から8のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基、炭素原子数2から8のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
【0053】
一般式(N-03)~(N-05)中、R21は、炭素原子数1から8のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1から4のアルキル基が更に好ましい。
【0054】
一般式(N-03)~(N-05)中、R22は、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数1から8のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1から4のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルコキシ基が更に好ましい。
【0055】
一般式(N-03)~(N-05)中、R21及びR22は、アルケニル基であることもでき、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)から選ばれることが好ましく、式(R1)又は式(R2)が好ましいが、R21及びR22がアルケニル基である化合物の含有量はできる限り少ない方が良く、含有しない方が好ましい場合が多い。
【0056】
【化12】
【0057】
一般式(N-03)~(N-05)で表される化合物のフッ素原子は、同じハロゲン族である塩素原子で置換されていても良い。但し、塩素原子で置換された化合物の含有量はできる限り少ない方が良く、含有しない方が好ましい。
【0058】
一般式(N-03)~(N-05)で表される化合物の環上に存在する水素原子は、更にフッ素原子又は塩素原子で置換されていても良い。但し、塩素原子で置換された化合物の含有量はできる限り少ない方が良く、含有しない方が好ましい。
【0059】
一般式(N-03)~(N-05)で表される化合物は、Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物であることが好ましい。具体的には、R22は、炭素原子数1から8のアルコキシ基又は炭素原子数2から8のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
【0060】
一般式(N-03)で表される化合物として、一般式(N-03-1)
【0061】
【化13】
【0062】
(式中、R21は先述と同じ意味を表し、R23は、炭素原子数1から4のアルコキシ基を表す。)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0063】
本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、一般式(iii)で表される化合物、後述する一般式(iv)で表される化合物及び一般式(N-03-1)で表される化合物を組み合わせて用いることが低温での溶解性及び低温での保存安定性の観点から好ましい。
【0064】
本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、一般式(iii-1)で表される化合物、後述する一般式(iv)で表される化合物及び一般式(N-03-1)で表される化合物を組み合わせて用いることが低温での溶解性及び低温での保存安定性と高いTniの両立の観点からより好ましい。
【0065】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(N-03)で表される化合物、より具体的には一般式(N-03-1)で表される化合物の好ましい合計含有量の下限値は、0%であり、1%であり、5%であり、10%であり、20%である。また、好ましい合計含有量の上限値は、35%であり、25%であり、20%であり、15%であり、10%である。
【0066】
一般式(N-04)で表される化合物として、一般式(N-04-1)
【0067】
【化14】
【0068】
(式中、R21は先述と同じ意味を表し、R23は、炭素原子数1から4のアルコキシ基を表す。)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0069】
本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、一般式(iii-1)で表される化合物、後述する一般式(iv)で表される化合物及び一般式(N-04-1)で表される化合物を組み合わせて用いることが低温での溶解性及び低温での保存安定性の観点からより好ましい。
【0070】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(N-04)で表される化合物、より具体的には一般式(N-04-1)で表される化合物の好ましい合計含有量の下限値は、0%であり、1%であり、5%であり、10%である。また、好ましい合計含有量の上限値は、25%であり、20%であり、15%であり、10%である。
【0071】
一般式(N-05)で表される化合物は、式(N-05-1)から式(N-05-3)で表される化合物群から選ばれる化合物であることが好ましい。
【0072】
【化15】
【0073】
本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、一般式(iii-1)で表される化合物、後述する一般式(iv)で表される化合物と共に、一般式(N-05-1)~式(N-05-3)から選択される化合物を1種以上組み合わせて用いることが低温での溶解性及び低温での保存安定性と大きなΔnを両立する観点からより好ましい。
【0074】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(N-05)で表される化合物、より具体的には、式(N-05-1)~式(N-05-3)から選択される化合物の好ましい合計含有量の下限値は、0%であり、2%であり、5%であり、8%であり、10%であり、13%であり、15%であり、17%であり、20%である。また、好ましい合計含有量の上限値は、30%であり、28%であり、25%であり、23%であり、20%であり、18%であり、15%であり、13%である。
【0075】
本発明の液晶組成物は、更に、一般式(N-06)で表される化合物を1種又は2種以上含有しても良い。
【0076】
【化16】
【0077】
(式中、R21及びR22は先述と同じ意味を表す。)
一般式(N-06)で表される化合物は、種々の物性を調整したい場合に有効であるが、大きな屈折率異方性(Δn)、高いTni、大きなΔεを得るために使用することができる。
【0078】
本発明の液晶組成物の総量に対して、式(N-06)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0%であり、2%であり、5%であり、8%であり、10%であり、13%であり、15%であり、17%であり、20%である。好ましい含有量の上限値は、30%であり、28%であり、25%であり、23%であり、20%であり、18%であり、15%であり、13%であり、10%であり、5%である。
【0079】
本発明の液晶組成物は、下記一般式(iv)で表される化合物を1種または2種以上含有する。
【0080】
【化17】
【0081】
(式中Riv1およびRiv2は互いに独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基または炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す。)
一般式(iv)において、Riv1は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基または炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数1から5のアルコキシ基が好ましく、低い粘性のためには炭素原子数2から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数3のアルキル基(プロピル基)又は炭素原子数2のアルケニル基(ビニル基)が特に好ましい。炭素数2から5のアルケニル基としては、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましく、式(R1)又は式(R2)が特に好ましい。
【0082】
【化18】
【0083】
一般式(iv)において、Riv2は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基または炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1から8のアルキル基、原子数1から8のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数1から5のアルコキシ基が好ましく、低い粘性のためには炭素原子数1から3のアルキル基が更に好ましく、炭素原子数1のアルキル基(メチル基)が特に好ましい。大きいΔnのためには炭素原子数1から3のアルコキシ基が更に好ましく、炭素原子数1のアルコキシ基(メトキシ基)が特に好ましい。
【0084】
一般式(iv)としては下記式(iv-1)~(iv-5)で表される化合物群から選ばれる化合物であることが好ましい。
【0085】
【化19】
【0086】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(iv)で表される化合物、より具体的には、式(iv-1)~式(iv-5)から選択される化合物の好ましい合計含有量の下限値は、1%であり、2%であり、3%である。好ましい合計含有量の上限値は、30%であり、25%であり、20%であり、15%であり、13%である。
【0087】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)から一般式(NU-06)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0088】
【化20】
【0089】
(式中、RNU11、RNU12、RNU21、RNU22、RNU31、RNU32、RNU41、RNU42、RNU61及びRNU62は、それぞれ独立して、炭素原子数1から8のアルキル基を表し、該基中の1個又は隣接しない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていても良い。)
更に詳述すると、一般式(NU-01)~一般式(NU-06)において、RNU11、RNU12、RNU21、RNU22、RNU31、RNU32、RNU41、RNU42、RNU61及びRNU62の取りうる基としては、炭素原子数1から8のアルキル基炭素原子数1から8のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基、炭素原子数2から8のアルケニルオキシ基等が挙げられ、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数1から5のアルコキシ基又は炭素原子数2から3のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から3のアルケニル基が更に好ましい。応答速度を重視する場合には、少なくとも1個のRNU11、RNU21、RNU31及びRNU41は、炭素原子数2から3のアルケニル基であることが好ましく、このようなアルケニル基を有する化合物は、本発明の液晶組成物の総量に対して、10%以上が好ましく、20%以上が好ましく、25%以上が好ましく、30%以上が好ましい。
【0090】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物として、少なくとも式(NU-01-1)~式(NU-01-4)から選択される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0091】
【化21】
【0092】
本発明の液晶組成物は、前述の一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、一般式(iii)で表される化合物、一般式(iv)で表される化合物と共に、式(NU-01-1)~式(NU-01-4)から選択される化合物を1種又は2種以上組み合わせて用いることが好ましく、式(NU-01-1)で表される化合物を用いることがより好ましく、式(NU-01-1)で表される化合物及び式(NU-01-2)で表される化合物を組み合わせて用いることが液晶組成物の粘性を低くし、当該液晶組成物を用いて得られる液晶表示素子の高速応答性が向上することからより好ましい。
【0093】
本発明の液晶組成物において、一般式(NU-01)で表される化合物、より具体的には、式(NU-01-1)~式(NU-01-4)で表される化合物の合計含有量は、5~60%であることが好ましく、10~50%であることがより好ましく、25~45%であることが更に好ましい。特に、本発明の液晶組成物において、式(NU-01-1)で表される化合物を20%以上用いることが好ましく、22%以上用いることが好ましく、24%以上用いることが好ましく、26%以上用いることが好ましく、30%以上用いることが好ましく、35%以上用いることが好ましい。
【0094】
本発明の液晶組成物において、一般式(NU-02)で表される化合物の合計含有量は、3~30%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、5~20%であることが更に好ましい。
【0095】
本発明の液晶組成物において、一般式(NU-03)で表される化合物の合計含有量は、0~20%であることが好ましく、0~15%であることがより好ましく、0~10%であることが更に好ましい。
【0096】
本発明の液晶組成物において、一般式(NU-04)で表される化合物の合計含有量は、3~30%であることが好ましく、3~20%であることがより好ましく、3~10%であることが更に好ましい。
【0097】
本発明の液晶組成物において、一般式(NU-06)で表される化合物の合計含有量は、1~30%であることが好ましく、3~20%であることがより好ましく、3~10%であることが更に好ましい。
【0098】
本発明の液晶組成物は、重合性化合物を1種又は2種以上含有しても良い。
【0099】
本発明の液晶組成物は、重合性化合物として、一般式(RM)で表される重合性化合物を1種又は2種以上含有しても良い。
【0100】
【化22】
【0101】
(式中、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107及びR108は、それぞれ独立して、P13-S13-、フッ素原子に置換されてもよい炭素原子数1から18のアルキル基、フッ素原子に置換されてもよい炭素原子数1から18のアルコキシ基、フッ素原子又は水素原子のいずれかを表し、P11、P12及びP13は、それぞれ独立して、式(Re-1)から式(Re-9)
【0102】
【化23】
【0103】
(式中、R11、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ独立して、炭素原子数1から5のアルキル基、フッ素原子又は水素原子のいずれかを表し、mr5、mr7、nr5及びnr7は、それぞれ独立して、0、1、又は2を表すが、mr5、mr7、nr5及び/又はnr7が0を表す場合には単結合を表す。)
で表される重合性基を表し、S11、S12及びS13は、それぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~15のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は、-O-、-OCO-又は-COO-で置換されても良く、P13及びS13が複数存在する場合は、それぞれ、同一であっても異なっていても良い。)
上記一般式(RM)で表される重合性化合物を含む液晶組成物は、PSA型またはPSVA型の液晶表示素子を作製する場合に好適である。NPS型の液晶表示素子を作製する場合にも好適である。また、配向膜を有さないことを特徴とするPI-less型液晶表示素子を作成する場合にも好適である。
【0104】
上記一般式(RM)で表される重合性化合物を含む液晶組成物は、適度に速い重合速度であるため、短い紫外線照射時間で目的のプレチルト角を付与することができる。更に、重合後の重合性化合物の残留量を少なくできる。これにより、PSA型またはPSVA型の液晶表示素子製造の生産効率を向上できる。また、プレチルト角の変化による表示不良(例えば、焼き付きなどの不具合)が生じないか、又は極めて少ないといった効果を奏する。なお、本明細書における表示不良は、プレチルト角が経時的に変化することによる表示不良、未反応の重合性化合物の残留量に起因する表示不良、電圧保持率の低下による表示不良を意味している。
【0105】
上記一般式(RM)において、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107及びR108は、それぞれ独立して、P13-S13-、フッ素原子に置換されてもよい炭素原子数1から18のアルキル基、フッ素原子に置換されてもよい炭素原子数1から18のアルコキシ基、フッ素原子又は水素原子のいずれかを表すが、アルキル基およびアルコキシ基である場合の好ましい炭素原子数は、1~16であり、より好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1~8であり、よりさらに好ましくは1~6であり、さらにより好ましくは1~3である。また、前記アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状または分岐状であってもよいが、直鎖状が特に好ましい。
【0106】
上記一般式(RM)において、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107及びR108は、P13-S13-、フッ素原子に置換されてもよい炭素原子数1から3のアルコキシ基、フッ素原子又は水素原子のいずれかを表すことが好ましく、P13-S13-、炭素原子数1から3のアルコキシ基、フッ素原子又は水素原子のいずれかを表すことが更に好ましい。このアルコキシ基は、炭素原子数が1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0107】
また、P11、P12及びP13は、全て同一の重合性基(式(Re-1)~式(Re-9))であっても、異なる重合性基でもよい。
【0108】
上記一般式(RM)において、P11、P12及びP13は、それぞれ独立して、式(Re-1)、式(Re-2)、式(Re-3)、式(Re-4)、式(Re-5)または式(Re-7)であることが好ましく、式(Re-1)、式(Re-2)、式(Re-3)または式(Re-4)であることがより好ましく、式(Re-1)であることがより好ましく、アクリル基またはメタクリル基であることが更に好ましい。
【0109】
11及びP12の少なくとも一方が、式(Re-1)であることが好ましく、アクリル基又はメタクリル基であることがより好ましく、メタクリル基であることがさらに好ましく、P11及びP12がメタクリル基であることが特に好ましい。
【0110】
上記一般式(RM)において、S11、S12及びS13は、それぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~5のアルキレン基であることが好ましく、単結合であることが特に好ましい。S11、S12及びS13が単結合である場合、紫外線照射後の重合性化合物の残留量が十分に少なく、プレチルト角の変化による表示不良が発生しにくくなり、PSA型またはPSVA型の液晶表示素子の表示不良が発生しないか、または、極めて少なくなる。S11、S12及びS13が炭素原子数1から3である場合、NPS型の液晶表示素子に好適である。
【0111】
本発明の液晶組成物における一般式(RM)で表される重合性化合物の合計含有量の下限は、0.01質量%が好ましく、0.02質量%が好ましく、0.03質量%が好ましく、0.04質量%が好ましく、0.05質量%が好ましく、0.06質量%が好ましく、0.07質量%が好ましく、0.08質量%が好ましく、0.09質量%が好ましく、0.1質量%が好ましく、0.12質量%が好ましく、0.15質量%が好ましく、0.17質量%が好ましく、0.2質量%が好ましく、0.22質量%が好ましく、0.25質量%が好ましく、0.27質量%が好ましく、0.3質量%が好ましく、0.32質量%が好ましく、0.35質量%が好ましく、0.37質量%が好ましく、0.4質量%が好ましく、0.42質量%が好ましく、0.45質量%が好ましく、0.5質量%が好ましく、0.55質量%が好ましい。本発明の液晶組成物における一般式(RM)で表される重合性化合物の合計含有量の上限は、5質量%が好ましく、4.5質量%が好ましく、4質量%が好ましく、3.5質量%が好ましく、3質量%が好ましく、2.5質量%が好ましく、2質量%が好ましく、1.5質量%が好ましく、1質量%が好ましく、0.95質量%が好ましく、0.9質量%が好ましく、0.85質量%が好ましく、0.8質量%が好ましく、0.75質量%が好ましく、0.7質量%が好ましく、0.65質量%が好ましく、0.6質量%が好ましく、0.55質量%が好ましく、0.5質量%が好ましく、0.45質量%が好ましく、0.4質量%が好ましい。
【0112】
更に詳述すると、十分なプレチルト角又は重合性化合物の少ない残留量又は高い電圧保持率(VHR)を得るには、その含有量は0.2から0.6質量%が好ましいが、低温における析出の抑制を重視する場合にはその含有量は0.01から0.4質量%が好ましい。特別に速い応答速度を得る場合には、その含有量を2質量%まで増量することも好ましい。
【0113】
また、一般式(RM)で表される重合性化合物を複数含有する場合は、それぞれの含有量が0.01から0.4質量%であることが好ましい。従って、これら全ての課題を解決するためには、一般式(RM)で表される重合性化合物を0.1から0.6質量%の範囲で調整することが特に好ましい。
【0114】
本発明に係る一般式(RM)で表される重合性化合物として、具体的には、一般式(RM-1)から(RM-10)で表される化合物が好ましく、これらを用いたPSA型液晶表示素子は、重合性化合物の残留量が少なく、十分なプレチルト角を有し、プレチルトの変化等に起因した配向不良や表示不良といった不具合が無いか、あるいは極めて少ない。
【0115】
【化24】
【0116】
【化25】
【0117】
式中、RM1及びRM2は、それぞれ独立して、炭素原子数1から5のアルキル基、フッ素原子又は水素原子のいずれかを表すが、炭素原子数1のアルキル基又は水素原子を表すことがより好ましい。
【0118】
本発明の液晶組成物は、ターフェニル構造又はテトラフェニル構造を有し、誘電率異方性Δεが+2より大きい化合物、すなわち、誘電率異方性が正の化合物を1種類又は2種類以上含有することができる。なお、化合物のΔεは、25℃において誘電的にほぼ中性の組成物に該化合物を添加した組成物の誘電率異方性の測定値から外挿した値である。該化合物は、例えば、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、屈折率異方性などの所望の性能に応じて組み合わせて使用するが、特に、重合性化合物を含有された液晶組成物中の重合性化合物の反応性を加速させることができる。
【0119】
ターフェニル構造又はテトラフェニル構造を有し、誘電率異方性Δεが+2より大きい化合物は、本発明の液晶組成物の総量に対して、好ましい含有量の下限値は、0.1%であり、0.5%であり、1%であり、1.5%であり、2%であり、2.5%であり、3%であり、4%であり、5%であり、10%である。好ましい含有量の上限値は、本発明の液晶組成物の総量に対して、例えば本発明の一つの形態では20%であり、15%であり、10%であり、9%であり、8%であり、7%であり、6%であり、5%であり、4%であり、3%である。
【0120】
本発明の液晶組成物に用いることができるターフェニル構造又はテトラフェニル構造を有し、誘電率異方性が+2より大きい化合物として、例えば、式(M-8.51)から式(M-8.54)で表される化合物、式(M-7.1)から式(M-7.4)で表される化合物、式(M-7.11)から式(M-7.14)で表される化合物、式(M-7.21)から式(M-7.24)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0121】
【化26】
【0122】
【化27】
【0123】
【化28】
【0124】
【化29】
【0125】
本発明の液晶組成物は、液晶組成物のTniを高くするために、式(L-7.1)から式(L-7.4)、式(L-7.11)から式(L-7.13)、式(L-7.21)から式(L-7.23)、式(L-7.31)から式(L-7.34)、式(L-7.41)から式(L-7.44)、式(L-7.51)から式(L-7.53)の4環の誘電的にほぼゼロ(概ね、-2から+2の範囲)の化合物を含有しても良い。
【0126】
【化30】
【0127】
【化31】
【0128】
【化32】
【0129】
【化33】
【0130】
【化34】
【0131】
【化35】
【0132】
本発明の液晶組成物は、上述の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤又は赤外線吸収剤等を含有しても良い。
【0133】
酸化防止剤として、一般式(H-1)から一般式(H-4)で表されるヒンダードフェノールが挙げられる。
【0134】
【化36】
【0135】
一般式(H-1)から一般式(H-3)中、RH1は、それぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシ基、炭素原子数2から10のアルケニル基又は炭素原子数2から10のアルケニルオキシ基を表すが、基中に存在する1個の-CH-又は非隣接の2個以上の-CH-はそれぞれ独立的に-O-又は-S-に置換されても良く、また、基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されても良い。更に具体的には、炭素原子数2から7のアルキル基、炭素原子数2から7のアルコキシ基、炭素原子数2から7のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基であることが好ましく、炭素原子数3から7のアルキル基又は炭素原子数2から7のアルケニル基であることが更に好ましい。
【0136】
一般式(H-4)中、MH4は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ又は2つ以上の-CH-は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-に置換されていても良い。)、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CFCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-C≡C-、単結合、1,4-フェニレン基(1,4-フェニレン基中の任意の水素原子はフッ素原子により置換されていても良い。)又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表すが、炭素原子数1から14のアルキレン基であることが好ましく、揮発性を考慮すると炭素原子数は大きい数値が好ましいが、粘度を考慮すると炭素原子数は大き過ぎない方が好ましいことから、炭素原子数2から12が更に好ましく、炭素原子数3から10が更に好ましく、炭素原子数4から10が更に好ましく、炭素原子数5から10が更に好ましく、炭素原子数6から10が更に好ましい。
【0137】
一般式(H-1)から一般式(H-4)中、1,4-フェニレン基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH=は-N=によって置換されていても良い。また、1,4-フェニレン基中の水素原子はそれぞれ独立的に、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良い。
【0138】
一般式(H-2)および一般式(H-4)の中の、1,4-シクロヘキシレン基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-は-O-又は-S-によって置換されていても良い。また、1,4-シクロヘキシレン基中の水素原子はそれぞれ独立的に、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良い。
【0139】
更に具体的には、例えば、式(H-11)から式(H-15)が挙げられる。
【0140】
【化37】
【0141】
本発明の液晶組成物に酸化防止剤が含有する場合、10質量ppm以上が好ましく、20質量ppm以上が好ましく、50質量ppm以上が好ましい。酸化防止剤の含有する場合の上限は10000質量ppmであるが、1000質量ppmが好ましく、500質量ppmが好ましく、100質量ppmが好ましい。
【0142】
本発明の液晶組成物は、ネマチック相-等方性液体相転移温度(Tni)が76℃から100℃であるが、78℃から95℃がより好ましい。なお、本発明においては、76℃以上をTniが高いと表現している。
【0143】
本発明の液晶組成物は、25℃における屈折率異方性(Δn)が0.08から0.14であるが、0.09から0.13がより好ましく、0.09から0.12が特に好ましい。更に詳述すると、薄いセルギャップに対応する場合は0.10から0.13であることが好ましく、厚いセルギャップに対応する場合は0.08から0.10であることが好ましい。なお、本発明においては、0.09以上をΔnが大きいと表現している。
【0144】
本発明の液晶組成物は、25℃における回転粘性(γ)が50から160mPa・sであるが、55から160mPa・sであることが好ましく、60から160mPa・sであることが好ましく、70から150mPa・sであることが好ましく、70から130mPa・sであることが好ましく、70から120mPa・sであることが好ましく、70から110mPa・sであることが好ましい。
【0145】
本発明の液晶組成物は、25℃における誘電率異方性(Δε)が-2.0から-8.0であるが、-2.0から-6.0が好ましく、-2.5から-5.0がより好ましく、-3.0から-4.5がより好ましく、-3.5から-4.0が特に好ましい。
【0146】
本発明の液晶組成物を用いた液晶表示素子は、特に、TN、ECB、IPS、FFS、VA、PSA、PSVA、NPS又はPI-less等の液晶表示素子に適宜用いることができる。
【実施例
【0147】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
【0148】
各物性値は、特別の記載がない限り、電子情報技術産業協会規格 JEITA ED-2521B 2009年3月改正 社団法人 電子情報技術産業協会発行 に記載の方法に基き測定した。
【0149】
実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。なお、nは自然数を表す。
(側鎖)
-n -C2n+1 炭素原子数nの直鎖状のアルキル基
n- C2n+1- 炭素原子数nの直鎖状のアルキル基
-On -OC2n+1 炭素原子数nの直鎖状のアルコキシル基
nO- C2n+1O- 炭素原子数nの直鎖状のアルコキシル基
-V -CH=CH
V- CH=CH-
-V1 -CH=CH-CH
1V- CH-CH=CH-
-2V -CH-CH-CH=CH
V2- CH=CH-CH-CH
-2V1 -CH-CH-CH=CH-CH
1V2- CH-CH=CH-CH-CH
(連結基)
-n- -C2n
-nO- -C2n-O-
-On- -O-C2n
-COO- -C(=O)-O-
-OCO- -O-C(=O)-
-CF2O- -CF-O-
-OCF2- -O-CF
(環構造)
【0150】
【化38】
【0151】
実施例において測定した特性は以下の通りである。
【0152】
ni :ネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)
Δn :25℃における屈折率異方性
Δε :25℃における誘電率異方性
γ :25℃における回転粘度(mPa・s)
11:25℃におけるスプレイの弾性定数(pN)
33:25℃におけるベンドの弾性定数(pN)
低温保存性:約0.5gの液晶組成物をバイアル瓶に入れ、温度-25℃で保管した。保管した結果、10日経過時点で析出が確認されない場合は「A」、1週間経過時点で析出が確認された場合は「B」、3日経過時点で析出が確認された場合は「C」とした。
(実施例1~9及び比較例1~4)
実施例及び比較例として以下の組成物を調製した。各組成物は表中に記載した各化合物を含有し、各化合物は表中に記載した質量%含有する。これら組成物を用い、VAセル、FFSセルを作成した。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
実施例及び比較例において、VAセルの応答速度は表中γ/K33の値が小さければ小さいほど速くなるという近似により求めている。また、FFSセルの応答速度は表中γ/((K11+K33)/2)の値が小さければ小さいほど速くなるという近似により求めている。
【0157】
実施例1~実施例11の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物、一般式(ii)で表される化合物、一般式(iii)で表される化合物、および一般式(iv)で表される化合物を含有する液晶組成物である。
【0158】
比較例1では本発明で必須成分である一般式(ii)で表される化合物が使用されておらず、本発明の実施例と比較してTni、Δεが目標値に到達しておらず、応答速度は同等で、低温保存性も悪いという結果となった。
【0159】
比較例2では本発明で必須成分である一般式(i)で表される化合物と一般式(ii)で表される化合物を含有するものの合わせて2種しか使用されておらず、本発明の実施例と比較してΔn、Δεが目標値に到達しておらず、応答速度も遅く、低温保存性も悪いという結果となった。
【0160】
比較例3では本発明で必須成分である一般式(i)で表される化合物が使用されておらず、本発明の実施例と比較して応答速度が遅く、低温保存性も悪いという結果となった。
【0161】
比較例4では本発明で必須成分である一般式(iv)で表される化合物が使用されておらず、実施例と比較してTniが低い分応答速度は速いものの、Tni、Δn、Δεが目標値に到達しておらず、低温保存性も悪いという結果となった。
【0162】
一方、実施例1~実施例11の液晶組成物は、高いΔεを維持しつつ、目標とする高いTni、及び高いΔnを実現し、さらに低温保存性も良好であった。また、本発明の実施例の液晶組成物を用いた液晶表示素子は、十分な応答速度を有することが確認できた。