IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特許7409068湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、積層体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20231226BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20231226BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20231226BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20231226BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20231226BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20231226BHJP
   C09J 7/32 20180101ALI20231226BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/40 009
C08G18/48 037
C08G18/48 079
C08G18/42 002
C08G18/44
B32B27/40
C09J175/06
C09J175/08
C09J7/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019230239
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021098775
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 公恵
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-163707(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056478(WO,A1)
【文献】特開2017-222758(JP,A)
【文献】国際公開第2005/097933(WO,A1)
【文献】特開2014-201635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/30
C08G 18/10
C08G 18/40
C08G 18/48
C08G 18/42
C08G 18/44
B32B 27/40
C09J 175/06
C09J 175/08
C09J 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有する
ウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物
であって、
前記ポリオール(A)が、ポリエーテルポリオール(a1)、ポリアクリルポリオール(a2)、結晶性ポリエステルポリオール(a3)、ポリカーボネートポリオール(a4)、及び、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を原料とする非晶性ポリエステルポリオール(a5)を含有し、
前記ポリエーテルポリオール(a1)が、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールであり、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールにおける、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とのモル比[EO/PO]が、5/95~90/10の範囲であり、
前記非晶性ポリエステルポリオール(a5)のガラス転移温度(Tmg)が、-70~-10℃の範囲であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールの数平均分子量が、500~10,000の範囲である請求項記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a5)のアルキレンオキサイドの付加モル数が、2~10モルの範囲である請求項1又は2記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
少なくとも、基材(i)、及び、請求項1~のいずれか1項記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層を有することを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、無溶剤であることから環境対応型接着剤として、繊維ボンディング・建材ラミネーションを中心に様々な研究が今日までなされており、産業界でも広く利用されている。
【0003】
中でも、近年では、耐落下衝撃性等の向上を目的に、その原料としてポリアクリルポリオールを用いる検討が種々なされている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、前記ポリアクリルポリオールは、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の分野において、よく使用される結晶性ポリエステルポリオール等の他のポリオールとの相溶性が悪く、皮膜強度等の低下を招くことが危惧されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-163663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ポリアクリルポリオールを原料として用いても、相溶性に優れ、かつ、接着性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(A)が、ポリエーテルポリオール(a1)、ポリアクリルポリオール(a2)、結晶性ポリエステルポリオール(a3)、ポリカーボネートポリオール(a4)、及び、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を原料とする非晶性ポリエステルポリオール(a5)を含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、ポリアクリルポリオールを原料として用いても、相溶性に優れるものであり、優れた皮膜強度を有するものである。また、本集め委の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた接着性も有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定のポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有するものである。
【0009】
前記ポリオール(A)としては、優れた接着性を有するうえで、ポリエーテルポリオール(a1)、ポリアクリルポリオール(a2)、結晶性ポリエステルポリオール(a3)、及び、ポリカーボネートポリオール(a4)を含有するものであり、優れた相溶性を得るうえで、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を原料とする非晶性ポリエステルポリオール(a5)を含有することが必須である。
【0010】
前記ポリエーテルポリオール(a1)は、接着剤皮膜を柔軟化し、あらゆる基材への接着性を向上し得るものであり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレンポリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着剤皮膜がより一層柔軟化し、難接着基材に対しても優れた接着性を得ることができる点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。
【0011】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物からなる開始剤と、エチレンオキサイド、及び、プロピレンオキサイドを含むアルキレンオキサイド等とを付加重合することによって製造することができる。具体的には、前記開始剤の存在下に、前記アルキレンオキサイド等を一括混合、またはそれぞれ別々に供給、混合し、反応させることによって製造することができる。
【0012】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等を用いることができる。また、前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの他に、必要に応じてブチレンオキサイドを併用することができる。
【0013】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールにおける、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とのモル比[EO/PO]としては、より一層優れた難接着基材への接着性が得られる点から、5/95~90/10の範囲が好ましく、5/95~50/50の範囲がより好ましい。
【0014】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールの平均官能基(水酸基)数としては、より一層優れた難接着基材への接着性が得られる点から、1.5~3の範囲が好ましく、1.5~2.5の範囲がより好ましい。
【0015】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールの数平均分子量としては、より一層優れた難接着基材への接着性が得られる点から、500~10,000の範囲が好ましく、700~7,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0016】
前記ポリエーテルポリオール(a1)の使用量としては、より一層優れた接着性が得られる点から、ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料中5~50質量%の範囲が好ましく、10~40質量%の範囲がより好ましい。
【0017】
前記ポリアクリルポリオール(a2)は、優れた耐落下衝撃性を担保するものであり、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を必須として含有する(メタ)アクリル化合物の重合物を用いることができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル化合物」とは、メタクリル化合物とアクリル化合物の一方又は両方を示し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方を示す。
【0018】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する(メタ)アクリル化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シジクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル化合物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する(メタ)アクリル化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-メチル-[1,3]-ジオキソラン-4-イル-メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた接着性、及び、耐落下衝撃性が得られる点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、及び/又は、n-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0020】
前記アクリルポリオール(a2)の数平均分子量としては、より一層優れた耐落下晶析性、及び、接着性が得られる点から、5,000~100,000の範囲が好ましく、10,000~30,000の範囲がより好ましい。なお、前記アクリルポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0021】
前記アクリルポリオール(a2)のガラス転移温度としては、より一層優れた耐落下衝撃性、及び、接着性が得られる点から、-50~120℃の範囲が好ましく、-35~80℃の範囲がより好ましい。なお、前記アクリルポリオール(a2)のガラス転移温度は、JIS K 7121-1987に準拠し、DSCにより測定した値を示し、具体的には、示差走査型熱量計装置内に前記ポリアクリルポリオール(a2)を入れ、(Tg+50℃)まで昇温速度10℃/分で昇温した後、3分間保持し、その後急冷し、得られた示差熱曲線から読み取った中間点ガラス転移温度(Tmg)を示す。
【0022】
前記アクリルポリオール(a2)の使用量としては、より一層優れた耐落下衝撃性、及び、接着性が得られる点から、ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料中5~40質量%の範囲が好ましく、10~30質量%の範囲がより好ましい。
【0023】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a3)は、その凝集力により優れた接着性を得るうえで必須の成分であり、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0024】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、より一層優れた接着性が得られる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及び、デカンジオールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0025】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a3)の数平均分子量としては、より一層優れた接着性が得られる点から、500~10,000の範囲が好ましく、1,000~4,000の範囲がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a3)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0027】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a3)の使用量としては、より一層優れた接着性が得られる点から、ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料中5~40質量%の範囲が好ましく、10~30質量%の範囲がより好ましい。
【0028】
前記ポリカーボネートポリオール(a4)は優れた接着性を担保するものであり、例えば、2個以上の水酸基を有する化合物と炭酸エステル及び/又はホスゲンとの反応物を用いることができる。
【0029】
アクリルポリオール(a2)のガラス転移温度ル、デカンジオール、カプロラクトン、シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソソルビド等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ポリカーボネートポリオール(a4)としては、より一層優れた耐落下衝撃性が得られる点から、常温で液状のものが好ましい。なお、本発明において、前記「常温で液状である」とは、前記ポリカーボネートポリオール(a4)が、23℃にて流動性を示す、液状または粘稠状のものを示す。
【0032】
前記ポリカーボネートジオール(a4)の数平均分子量としては、より一層優れた接着性が得られる点から、500~10,000の範囲が好ましく、700~4,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオール(a4)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0033】
前記ポリカーボネートジオール(a4)の使用量としては、より一層優れた接着性が得られる点から、ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料中1~15質量%の範囲が好ましく、3~10質量%の範囲がより好ましい。
【0034】
前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を原料とする非晶性ポリエステルポリオール(a5)は、前記ポリアクリルポリオール(a2)を用いても、その他のポリオールとの相溶性を向上する相溶化剤としての役割を有する。よって、この原料を用いることにより、緻密で強靭な接着剤皮膜を形成することができる。
【0035】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a5)は、具体的には、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含む、水酸基を2個以上有する化合物と、多塩基酸との反応物が挙げられる。
【0036】
前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物における前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を用いることができる。これらのアルキレンオキサイドは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、相溶化剤としての役割がより一層向上する点から、プロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドの付加モル数としては、2~10モルの範囲が好ましく、4~8の範囲がより好ましい。
【0037】
前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物には、必要に応じて、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等を併用してもよい。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a5)の数平均分子量としては、相溶化剤としての役割がより一層向上する点から、500~10,000の範囲が好ましく、1,000~4,000の範囲がより好ましく、1,000~3,000の範囲が更に好ましい。
【0040】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a5)のガラス転移温度としては、相溶化剤としての役割がより一層向上する点から、-70~-10℃の範囲が好ましい。なお、前記非晶性ポリエステルポリオール(a5)のガラス転移温度は、前記アクリルポリオール(a2)のガラス転移温度の測定方法と同様である。
【0041】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a5)の使用量としては、相溶化剤としての役割がより一層向上する点から、ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料中0.5~10質量%の範囲が好ましく、1~7質量%の範囲がより好ましい。
【0042】
前記ポリオール(A)は、前記した(a1)~(a5)成分を必須原料として用いるが、必要に応じてその他のポリオールを併用してもよい。
【0043】
前記その他のポリオールとしては、例えば、前記(a3)及び(a5)以外のポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ダイマージオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いてもよい。
【0044】
前記ポリイソシアネート(B)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた反応性および接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0045】
また、前記ポリイソシアネート(B)の使用量としては、より一層優れた接着性が得られる点から、ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料中1~25質量%の範囲が好ましく、5~15質量%の範囲がより好ましい。
【0046】
前記ウレタンプレポリマー(i)は、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される筐体や被着体中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有するものである。
【0047】
前記ウレタンプレポリマー(i)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(B)の入った反応容器に、前記ポリオール(A)を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0048】
前記ウレタンプレポリマー(i)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた接着性、及び、耐落下衝撃性が得られる点から、1~3質量%の範囲が好ましく、1.3~2質量%の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(i)のNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0049】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(i)を必須成分とするが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0050】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
次に、本発明の積層体について説明する。
【0052】
前記積層体は、少なくとも、基材(i)、及び、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層を有するものである。
【0053】
前記基材(i)としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、シクロオレフィン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、乳酸ポリマー、ABS樹脂、AS樹脂等の樹脂フィルム;MDF、合板、パーチクルボード等の木質基材;不織布、織布、編み物等の繊維基材;ステンレス、アルミニウム、銅、鉄鋼、クロム、亜鉛、ジェラルミン、ダイカスト、これらの合金などの金属基材などを用いることができる。前記基材は、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等が施されていてもよい。
【0054】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化皮膜を得る方法としては、例えば、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を50~130℃で溶融した後に基材(i)に塗工し、湿気硬化させる方法が挙げられる。
【0055】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、スプレーコーター、T-ダイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0056】
前記塗工後は、他の基材(i)を更に貼り合わせ、例えば、温度20~80℃、相対湿度50~90%にて0.5~3日間エージングし、最終接着強度を得ることができる。
【0057】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレートへの接着性に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、電子材料の組み立てに用いられる接着剤として特に好適に用いることができる。
【実施例
【0058】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0059】
[実施例1]
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(旭硝子株式会社製「プレミノールPML-5001」、数平均分子量;4,000、EO/POモル比=10/90、平均官能基数;2、以下「EOPO(1)」と略記する。)を20質量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(三井化学株式会社製「アクトコールED-56」、数平均分子量;2,000、EO/POモル比=8/92、平均官能基数;2、以下「EOPO(2)」と略記する。)13質量部、ポリアクリルポリオール(メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートの反応物、数平均分子量;20,000、ガラス転移温度;70℃、以下「Ac(1)」と略記する。)を18質量部、結晶性ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000、以下「HG/AA」と略記する。)を26質量部、ポリカーボネートポリオール(旭化成株式会社製「デュラノールT5652」、数平均分子量;2,000、以下「PC(1)」と略記する。)5質量部、非晶性ポリエステルポリオール(ビスフェノールAのプロプレンオキサイド6モル付加物、イソフタル酸、及び、セバシン酸の反応物、数平均分子量;2,000、以下「BISA6PO」と略記する。)5質量部を仕込み、90℃で加熱することにより、水分含有量が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度を60℃に冷却後、ジフェニルメタンジジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)13質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-1)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0060】
[実施例2]
実施例1において、Ac(1)に代えて、ポリアクリルポリオール(n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートの反応物、数平均分子量;7000、ガラス転移温度;-28.5℃、以下「Ac(2)」と略記する。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-2)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0061】
[実施例3]
実施例1において、HG/AAに代えて、結晶性ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール及びセバシン酸の反応物、数平均分子量;3,500、以下「HG/SEBA」と略記する。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-3)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0062】
[比較例1]
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、EOPO(1)を20質量部、EOPO(2)を13質量部、Ac(1)を18質量部、HG/AAを31質量部、PC(1)を5質量部を仕込み、90℃で加熱することにより、水分含有量が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度を60℃に冷却後、MDI13質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(iR-1)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0063】
[数平均分子量の測定方法]
実施例および比較例において用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0064】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0065】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0066】
[積層体の作製方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ホットメルトウレタン組成物を110℃に加熱溶融させて、110℃に加熱された直径0.35mmの内径を有するディスペンサーニードル(武蔵エンジニアリング株式会社製ディスペンサー「VAVE MASTER ME-5000VT」)を用いて、吐出圧力:0.3MPa、加工速度50mm/秒にて、中央部に1cm径の穴の開いたPC板(5cm×9cm)上に、1インチの円形で0.15mm厚さになるように塗布して、その上からPBT板(5cm×5cm)を貼り合せた後、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿槽中に2時間、及び、24時間放置することにより、初期接着強度、最終接着強度、耐落下衝撃性の測定に用いる積層体を得た。
【0067】
[接着性の評価方法]
(1)初期接着強度、及び、最終接着強度
得られた積層体のプッシュ強度(N/cm)を、テンシロン(オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機「RTC-1210A」)を使用して、クロスヘッド速度:10mm/分の条件で測定し、初期接着強度(2時間放置後のもの)、及び、最終接着強度(24時間放置後のもの)とした。
(2)耐落下衝撃性
得られた積層体を、デュポン式落下衝撃試験機にてPBT板から撃芯を介して、荷重:100g、高さ:5cmで衝撃を各3回与えPC板の剥がれの発生がなければ+5cmで衝撃を与える条件で、剥がれの有無を目視観察し、剥がれが発生する高さを判断した。
【0068】
[接着剤皮膜の作製方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ホットメルトウレタン組成物を110℃に加熱溶融させた後、離型紙上に、硬化後の膜厚が100μmとなるように、ロールコーターを使用して塗工し、23℃、湿度50%の環境下で2日間放置することにより、接着剤の硬化皮膜を得た。
【0069】
[相溶性の評価方法]
相溶性の評価は、皮膜最大点応力により行った。具体的には、得られた硬化皮膜を離型紙から剥離し、2号ダンベルで打ち抜き加工したものを試験片とした。これをテンシロン引張試験機(オリエンテック株式会社製「RTM-100」)を使用して、25℃の雰囲気下でJISK-7311:1995に準拠して、クロスヘッドスピード;300mm/分にて引張試験を行った際の最大手応力の値を基準に以下のように評価した。
「A」;15MPa以上
「B」;10MPa以上15MPa未満
「C」;10MPa未満
【0070】
【表1】
【0071】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた相溶性、及び、接着性を有することが分かった。
【0072】
一方、比較例1は、非晶性ポリエステルポリオール(a5)を用いない態様であるが、相溶性であった。