(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】画像形成装置及び視認困難画像の確認方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20231226BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20231226BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20231226BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20231226BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20231226BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G03G15/01 Z
G03G15/06 101
G03G15/08 220
G03G15/02
G03G15/16 103
G03G15/01 113
G03G15/01 114
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020001049
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】竹口 杏子
(72)【発明者】
【氏名】国見 敬二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慶
(72)【発明者】
【氏名】石倉 裕司
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060169(JP,A)
【文献】特開平01-225978(JP,A)
【文献】特開2008-191396(JP,A)
【文献】特開2008-197464(JP,A)
【文献】特開2003-107858(JP,A)
【文献】特開2006-221048(JP,A)
【文献】特開2011-237712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0051114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 15/06
G03G 15/08
G03G 15/02
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視画像用トナーからなる可視画像と視認困難画像用トナーからなる視認困難画像とを記録媒体上に形成する画像形成装置において、
像担持体又は記録媒体上の視認困難画像用トナーに対して前記可視画像用トナーを付着させることにより前記視認困難画像を可視化する動作の実行手段
と、
前記視認困難画像用トナーを用いて像担持体又は記録媒体上に視認困難画像用トナー像を作成する第一作像手段と、
前記可視画像用トナーを用いて前記像担持体又は前記記録媒体上に可視画像用トナー像を作成する第二作像手段とを有し、
前記実行手段は、前記第一作像手段により前記像担持体又は前記記録媒体上に形成した視認困難画像用トナー像の視認困難画像用トナーに対し、弱帯電状態又は逆帯電状態の可視画像用トナーが選択的に付着するように、前記第二作像手段を制御する動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記第二作像手段は、可視画像用トナーを正規帯電状態に帯電させるトナー帯電手段を含み、
前記実行手段は、前記トナー帯電手段の帯電能力を低下させる制御を行う動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記第二作像手段は、帯電バイアスを印加して潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電手段と、該帯電手段により帯電された潜像担持体の表面の電位を画像情報に基づいて選択的に落として静電潜像を形成する潜像形成手段と、現像領域において電位が落とされた画像部に対して正常帯電状態の可視画像用トナーが選択的に付着するように現像バイアスを印加して現像処理を行う現像手段とを含み、
前記実行手段は、現像領域において前記潜像形成手段によって電位が落とされていない地肌部に対する電位ポテンシャルが大きくなるように、前記帯電バイアス及び前記現像バイアスの少なくとも一方を制御する動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第二作像手段は、転写バイアスを印加して前記可視画像用トナー像を前記像担持体又は前記記録媒体上に転写する転写手段を含み、
前記実行手段は、前記像担持体又は前記記録媒体上の前記視認困難画像用トナーに対し、弱帯電状態又は逆帯電状態の可視画像用トナーが選択的に付着するように、前記転写バイアスを制御する動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第二作像手段は、前記第一作像手段に対し、前記像担持体又は前記記録媒体の表面移動方向下流側に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
可視画像用トナーからなる可視画像と視認困難画像用トナーからなる視認困難画像とを記録媒体上に形成する画像形成装置において、
像担持体又は記録媒体上の視認困難画像用トナーに対して前記可視画像用トナーを付着させることにより前記視認困難画像を可視化する動作の実行手段を有し、
前記実行手段は、互いに異なる複数色の可視画像用トナーの中から前記視認困難画像用トナーに対して付着させる可視画像用トナーを選択し、選択した可視画像用トナーを用いて前記動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記視認困難画像用トナーは、結着樹脂及び近赤外光吸収材料を含み、ベタ画像の60度光沢度が30以上であり、かつ、ベタ画像の60度光沢度が前記可視画像用トナーのベタ画像の60度光沢度よりも10以上高いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
可視画像用トナーからなる可視画像と視認困難画像用トナーからなる視認困難画像とを記録媒体上に形成する画像形成装置における視認困難画像の確認方法であって、
像担持体又は記録媒体上の視認困難画像用トナーに対して前記可視画像用トナーを付着させる工程と、
前記視認困難画像用トナーに前記可視画像用トナーを付着させた確認対象トナー像、又は、該確認対象トナー像を記録媒体上に形成した確認対象画像を確認する工程と、
前記視認困難画像用トナーを用いて像担持体又は記録媒体上に視認困難画像用トナー像を作成する工程と、
前記像担持体又は前記記録媒体上に形成した視認困難画像用トナー像の視認困難画像用トナーに対し、弱帯電状態又は逆帯電状態の可視画像用トナーを選択的に付着させる工程と、
を有することを特徴とする視認困難画像の確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び視認困難画像の確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可視画像用トナーからなる可視画像と視認困難画像用トナーからなる視認困難画像とを記録媒体上に形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、不正コピー防止等のため、視認困難画像用トナーとして、可視光下での発色が抑制されている透明性の高い赤外光吸収トナーを用い、可視画像用トナーからなる可視画像とともに当該赤外光吸収トナーからなる視認困難画像を形成する画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
視認困難画像は、可視光下での発色が抑制されているために、意図通りに視認困難画像が形成されているかを、可視画像を検出する一般的な画像センサを用いて確認したり、人間が目視で確認したりすることが困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、可視画像用トナーからなる可視画像と視認困難画像用トナーからなる視認困難画像とを記録媒体上に形成する画像形成装置において、像担持体又は記録媒体上の視認困難画像用トナーに対して前記可視画像用トナーを付着させることにより前記視認困難画像を可視化する動作の実行手段と、前記視認困難画像用トナーを用いて像担持体又は記録媒体上に視認困難画像用トナー像を作成する第一作像手段と、前記可視画像用トナーを用いて前記像担持体又は前記記録媒体上に可視画像用トナー像を作成する第二作像手段とを有し、前記実行手段は、前記第一作像手段により前記像担持体又は前記記録媒体上に形成した視認困難画像用トナー像の視認困難画像用トナーに対し、弱帯電状態又は逆帯電状態の可視画像用トナーが選択的に付着するように、前記第二作像手段を制御する動作を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、視認困難画像の確認が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るプリンタの全体構成を示す説明図。
【
図2】実施形態のプリンタにおける主要な制御に関わるブロック図。
【
図3】実施形態における画像形成動作の流れを示すフローチャート。
【
図4】実施形態におけるIR画像確認モードの流れを示すフローチャート。
【
図5】IR画像確認モードにおいて、IRトナーに対して弱帯電状態又は逆帯電状態のトナーが付着する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、画像形成装置であるカラープリンタ(以下「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、画像形成装置としては、視認困難画像用トナーを用いて記録媒体上に視認困難画像を形成するものであれば、特に制限はない。したがって、プリンタ以外にも、複写機、ファクシミリ単体、あるいは、プリンタ、複写機、ファクシミリ、スキャナのうちの少なくとも2つの機能を備えた複合機であってもよい。
【0009】
本実施形態のプリンタが用いる視認困難画像用トナーは、主に、可視画像中に付加情報を埋め込む場合に使用される。例えば、不正コピー防止等の目的で、可視画像用トナーによる可視画像とともに、不可視パターン、地紋などと呼ばれる目視で認識しにくい視認困難画像(人間が一見しても視認できない「COPY」等の文字画像)を記録媒体に形成する場合に使用される。また、例えば、バーコードやQRコード(登録商標)等のコード画像の情報量を増やす目的で、可視画像によるコード画像と視認困難画像によるコード画像とを重ねて記録媒体に形成する場合に使用される。なお、視認困難画像用トナーは、可視画像を形成せずに視認困難画像だけを記録媒体上に形成する場合にも使用されてもよい。
【0010】
視認困難画像とは、後述するように、可視光下で通常の可視画像用トナーよりも透明性が高いトナーによって形成される画像であって、本実施形態ではさらに赤外光等を照射するなどの処理によって、発光、発色等が行われ、視認が容易になるようにされている。
【0011】
視認困難画像用トナーとしては、透明性を有する赤外光吸収トナーや、紫外線を当てると蛍光する透明性の蛍光トナーなど、可視光領域外の光を吸収したり、可視光領域外の光によって可視光領域の光を発光したりするものが挙げられる。本実施形態は、視認困難画像用トナーとして、赤外光吸収トナーを用いる例で説明する。
【0012】
以下の説明において、各部材のトナー別符号として、可視画像用トナーであるイエロートナー(Yトナー)は「Y」、可視画像用トナーであるマゼンタトナー(Mトナー)は「M」、可視画像用トナーであるシアントナー(Cトナー)は「C」、視認困難画像用トナーである赤外光吸収トナー(IRトナー)は「IR」を用いる。視認困難画像用トナーとしては、可視光下で発色を抑制されているような透明トナー(透明性トナー)が望ましい。また、通常の可視画像用トナーよりも色素含有量が少ない。
【0013】
まず、本実施形態に係るプリンタの全体構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの全体構成を示す説明図である。
本実施形態のプリンタは、画像形成部1と、転写部2と、記録媒体供給部3と、定着部4と、記録媒体排出部5と、制御部30と、画像形成制御部40とから、主に構成されている。
【0014】
画像形成部1には、作像ユニットとしての4つのプロセスユニット6Y,6M,6C,6IRが設けられている。各プロセスユニット6Y,6M,6C,6IRは、使用するトナーの種類が異なる以外は同様の構成となっている。なお、本実施形態では、黒(K)のトナーを用いるプロセスユニットを備えていないので、カラー画像やモノクロ画像はY、M、Cのカラートナーのみを用いてを形成する。Kのプロセスユニットを追加してもよいが、その場合、装置が大型化するという欠点がある。
【0015】
また、IRのプロセスユニット6IRを着脱可能な構成とし、IRのプロセスユニットに代えて、Kのプロセスユニットを装着できるように構成してもよい。この場合、IRトナーを用いずに画像形成を行う場合には、Kのプロセスユニットを装着することで、Y、M、CのカラートナーとKトナーとを用いて、カラー画像やモノクロ画像を形成することができる。
【0016】
また、すべてのプロセスユニットを着脱可能とし、プロセスユニットを装着する位置を互いに入れ替えることができるようにしてもよい。この場合、IRのプロセスユニットの位置を入れ替えることで、記録媒体上におけるIRトナー像と各カラートナー像との位置関係(トナー像積層方向における位置関係)を適宜入れ替えることが可能となる。
【0017】
本実施形態において、各プロセスユニット6Y,6M,6C,6IRは、潜像を担持する潜像担持体としての感光体7と、感光体7の表面を帯電させる帯電手段としての帯電装置8と、感光体7上の潜像を現像する現像手段としての現像装置9と、感光体7の表面をクリーニングする潜像担持体クリーニング手段としての感光体クリーニング装置10などで構成されている。各感光体7に対向した位置には、それぞれ、感光体7の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置11が設けられている。本実施形態では、露光装置11としてLEDユニットを用いているが、レーザダイオードを用いたレーザビームスキャン方式のものを用いてもよい。
【0018】
転写部2には、感光体7上のトナー像が転写される像担持体としての中間転写体である無端状の中間転写ベルト12と、感光体7上の画像を中間転写ベルト12に一次転写する一次転写手段としての複数の一次転写装置13と、中間転写ベルト12に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段としての二次転写ローラ14と、中間転写ベルト12の表面(外周面)をクリーニングする中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置17とが配置されている。
【0019】
中間転写ベルト12は、駆動ローラ15と従動ローラ16とに張架されており、駆動ローラ15が回転することで周回走行(回転)する。各一次転写装置13の一次転写ローラは、中間転写ベルト12を各感光体7に押し当てるように配置されている。これにより、中間転写ベルト12と各感光体7との接触箇所には、各感光体7上の画像が中間転写ベルト12に転写される一次転写ニップが形成される。一方、二次転写ローラ14は、駆動ローラ15に巻き付いた中間転写ベルト12の部分に接触するように配置されている。この二次転写ローラ14と中間転写ベルト12とが接触する箇所には、中間転写ベルト12上の画像が記録媒体に転写される二次転写ニップが形成される。
【0020】
記録媒体供給部3には、記録媒体としての用紙Pを収容する記録媒体収容部としての給紙カセット18と、給紙カセット18から用紙Pを給送する記録媒体給送手段としての給紙ローラ19と、給紙ローラ19によって給送された用紙Pを所定のタイミングで前記二次転写ニップへ搬送する記録媒体搬送手段としてのタイミングローラ20が配置されている。なお、記録媒体としては、用紙以外に、OHPシートやOHPフィルム、布等であってもよい。また、用紙には、普通紙のほか、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、和紙等の凹凸紙、トレーシングペーパ等が含まれる。
【0021】
定着部4には、用紙Pに画像を定着する定着手段としての定着装置21が配置されている。定着装置21は、ヒータ等の加熱源によって加熱される定着部材としての定着ローラ22と、定着ローラ22に対して所定の圧力で接触して定着ニップを形成する加圧部材としての加圧ローラ23とから主に構成されている。
【0022】
記録媒体排出部5には、定着装置21から送り出された用紙Pを装置外に排出する記録媒体排出手段としての排紙ローラ24と、排紙ローラ24によって排出された用紙Pを載置する記録媒体載置部としての排紙トレイ25とが配置されている。
【0023】
制御部30は、読取装置(スキャナ)やパソコン等からの入力画像情報に対する画像処理を行い、また、プリンタ全体の制御を担うものである。
また、画像形成制御部40は、制御部30の制御の下、プリンタの各部(画像形成部1、転写部2、記録媒体供給部3、定着部4、記録媒体排出部5等)における画像形成動作を制御するものである。
【0024】
また、本実施形態のプリンタには、上述の各構成要素に加え、画像形成に用いられる粉体であるトナーを収容する粉体収容容器としての複数のトナーカートリッジ26が装着されている。各トナーカートリッジ26は、対応する現像装置9内のトナーと同じ種類のトナーが収容されており、現像装置9内のトナーが所定量を下回ると、トナーカートリッジ26からトナーが補給される。さらに、プリンタには、トナーカートリッジ26とは別の粉体収容容器として、廃トナー収容容器27が装着されている。この廃トナー収容容器27には、ベルトクリーニング装置17あるいは感光体クリーニング装置10によって回収された廃トナーが収容される。
【0025】
また、
図1に示すように、本実施形態のプリンタは、装置本体(画像形成装置本体)100の上部を開閉するためのカバー部材101を備える。カバー部材101は、装置本体100に設けられた回動軸103を中心に上下に回動可能となっている。また、カバー部材101の下方には、4つのトナーカートリッジ26を着脱可能に保持する容器保持部材102が配置されている。容器保持部材102は、装置本体100に設けられた別の回動軸104を中心に上下に回動可能となっている。
【0026】
本実施形態において、プロセスユニット6Y,6M,6C,6IRは、IRトナーからなるIRトナー像(視認困難画像用トナー像)よりも、記録媒体上で、Y、M、Cのカラートナー(可視画像用トナー)からなるカラートナー像が記録媒体側に形成されるように、IRのプロセスユニット6IRが中間転写ベルト12の走行方向最上流側に配置され、その下流側にカラーのプロセスユニット6Y,6M,6Cが配置されている。つまり、中間転写ベルト12上では、ベルト側から順に、IRトナー像、Yトナー像、Mトナー像、Cトナー像が積層されるが、これを二次転写した後の記録媒体上においては、記録媒体側から順に、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像、IRトナー像の順となる。
【0027】
なお、カラーのプロセスユニット6Y,6M,6Cに対してIRのプロセスユニット6IRをどこに配置するかは、適宜設定可能であるが、最下流ではなく、IRのプロセスユニット6IRの下流側に少なくとも1つのカラーのプロセスユニット6Y,6M,6Cが配置されるのが好ましい。これは、後述するIR画像確認モードにおいて、IRのプロセスユニット6IRで中間転写ベルト12上にIRトナーを転写した後すぐに(中間転写ベルトを空回りさせることなく)、当該IRトナーに対してカラートナーを付着させることができるためである。上述したように、プロセスユニット6Y,6M,6C,6IRの装着位置を互いに入れ替えることができる構成とした場合には、IRのプロセスユニットの位置を自由に入れ替えることができる。
【0028】
また、本実施形態のプリンタでは、Y、M、C、IRの各トナーの付着量(単位面積当たりのトナー付着量)を調整して各トナーによる画像濃度の調整を行う。詳しくは、中間転写ベルト12上に形成されるY、M、C、IRの各トナーのテスト像(異なる目標濃度となるように作像された複数のトナーパッチ)のトナー付着量を検知するトナー付着量検知センサが設けられている。このトナー付着量検知センサで検知した結果から、所望の濃度に対して所望のトナーが付着するように、Y、M、C、IRの各プロセスユニットにおける作像条件(画像形成条件)等が調整される。
【0029】
本実施形態のトナー付着量検知センサは、Y、M、C、IRの各テスト像に対して共通に使用されるものでもよいし、Y、M、C、IRの各テスト像に対して個別に使用されるものでもよい。また、本実施形態のトナー付着量検知センサは、光学式の画像濃度センサであり、正反射光および拡散反射光の両方を取得することによって各テスト像のトナー付着量(テスト像の画像濃度)を検知する。本実施形態のIRトナーは、定着処理後は不可視画像(目視しにくい画像、あるいは、可視光領域内に吸収ピークを実質的に持たない画像)となるが、定着処理前の中間転写ベルト12上では、目視できる画像、あるいは、可視光領域内に吸収ピークを実質的に持つ画像であるため、C、M、Yと同様のトナー付着量検知センサを用いることができる。なお、IRトナーのテスト像については、正反射光のみを取得してテスト像のトナー付着量を検知するよりも、正反射光および拡散反射光の両方を取得してテスト像のトナー付着量を検知する方が、高精度のトナー付着量検知を実現できる。
【0030】
続いて、本実施形態のプリンタの基本的な動作について説明する。
画像形成動作が開始されると、各感光体7が回転駆動され、帯電装置8の帯電ローラに所定の帯電バイアスを印加することで、各感光体7の表面が所定の極性(例えばマイナス極性)で所定の帯電電位となるように、一様に帯電される。次いで、読取装置(スキャナ)やパソコン等からの入力画像情報に基づき、露光装置11が各感光体7の帯電面にレーザ光を照射し、照射された感光体表面部分の電位が落ちる(電位がゼロに近づく)ように処理され、電位が落とされた部分(画像部)と電位が落とされない部分(地肌部)とのパターンによって、入力画像情報に対応する潜像(静電潜像)が形成される。
【0031】
各感光体7上に形成される潜像は、所望のフルカラー画像をY、M、Cの色情報に分解した単色の画像情報に基づく潜像である。詳しくは、入力画像情報の色情報(RGB、YCM等)を、当該プリンタ用の色情報(YMC)へ変換・分解するための色変換分解テーブルを用い、入力画像情報を、Y、M、Cの色情報に変換、分解した単色の画像情報を生成し、Y、M、C用の各露光装置11は、Y、M、Cの各色の画像情報に基づいてそれぞれの感光体7上に各色の潜像を形成する。
【0032】
また、本実施形態では、入力画像情報に含まれる付加情報や当該プリンタによって付加される付加情報等からIRの画像情報を生成する。入力画像情報に含まれる付加情報は、パソコン上のアプリケーションによって付加される情報でもよいし、パソコン上のプリントドライバによって付加される情報でもよい。IR用の露光装置11は、IRの画像情報に基づいてIRプロセスユニット6IRの感光体7上にIRの潜像を形成する。
【0033】
感光体7上に形成されたY、C、M、IRの各潜像は、感光体の回転駆動に伴って現像装置9と対向する現像領域へと搬送される。現像装置9では、回転駆動するトナー担持体としての現像ローラ上にトナー(現像剤)が担持され、現像ローラには所定の現像バイアスが印加される。トナーは、供給ローラ9bから現像ローラ9a上へと供給されるところ、現像ローラ9aと供給ローラ9bとの対向部でトナーが正規極性(例えばマイナス極性)に摩擦帯電する。
【0034】
このように正規極性に帯電されたトナーが現像ローラ9aの回転駆動により現像領域へ搬送されると、感光体表面上の画像部(露光装置11により電位が落とされた部分)と現像ローラ9aの電位(現像バイアス電位)との間の現像ポテンシャルにより正規極性のトナーが感光体の画像部側へ移動し、感光体表面上の地肌部(露光装置11により電位が落とされていない部分)と現像ローラ9aの電位(現像バイアス電位)との間の地肌ポテンシャルにより正規極性のトナーが現像ローラ9a側へ移動する力が作用する。このように、それぞれの現像装置9の現像領域において、それぞれの正規極性のトナーが感光体上の画像部に付着することで、Y、C、M、IRの潜像はそれぞれトナー像に現像される。
【0035】
各感光体7上のトナー像は、周回走行する中間転写ベルト12上に順次重ね合せて転写される。詳しくは、感光体7上のトナー像が一次転写ニップの位置に達すると、一次転写装置13の一次転写ローラに所定の電圧(一次転写バイアス)が印加されて形成される転写電界によって、感光体7上のトナー像が中間転写ベルト12上に順次転写される。このようにして、中間転写ベルト12の表面には、Y、C、Mトナーからなるフルカラートナー像(可視画像用トナー像)及びIRトナーからなるIRトナー像(視認困難画像用トナー像)が形成される。なお、中間転写ベルト12に転写しきれなかった各感光体7上のトナーは、感光体クリーニング装置10によって除去される。
【0036】
また、画像形成動作が開始されると、給紙ローラ19が回転して、給紙カセット18から用紙Pが給送される。給送された用紙Pは、タイミングローラ20によって搬送が一旦停止される。その後、所定のタイミングでタイミングローラ20の回転駆動が開始され、中間転写ベルト12上のトナー像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pが二次転写ニップへ搬送される。
【0037】
用紙Pが二次転写ニップに搬送された際、二次転写ローラ14には所定の電圧(二次転写バイアス)が印加されており、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト12上のトナー像が用紙Pに一括して転写される。また、このとき、中間転写ベルト12上に残ったトナーはベルトクリーニング装置17によって除去される。
【0038】
その後、用紙Pは定着装置21へと搬送され、定着ローラ22と加圧ローラ23によってトナー像が加熱されつつ加圧されて用紙Pに定着される。そして、用紙Pは排紙ローラ24によって装置外に排出され、排紙トレイ25上に載置される。
【0039】
以上の説明は、フルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット6Y,6M,6C,6IRのいずれか1つを使用して画像を形成したり、いずれか2つ又は3つのプロセスユニットを使用して画像を形成したりすることも可能である。
【0040】
次に、IRトナー像を作像する特殊画像形成動作時の制御について、図面を参照して説明する。
以下の説明では、入力画像情報の色情報がRGB多値の情報であり、入力画像情報にIRの画像情報(付加情報)が含まれている場合に、そのIRの画像情報に基づいてIR画像を形成する場合について説明する。なお、入力画像情報に含まれる付加情報は、画像情報でなくてもよく、非画像情報である場合には、例えば、制御部30において、予め決められたIR画像生成プログラムを実行し、その付加情報からIRの画像情報を生成する。また、入力画像情報に付加情報が含まれていない場合でも、制御部30において、ユーザ指定等に応じたIRの画像情報を生成してもよい。
【0041】
図2は、本実施形態のプリンタにおける主要な制御に関わるブロック図である。
本実施形態の制御部30は、主に、主制御部31と、記憶手段としての記憶部32と、色変換・分解処理部33と、ガンマ変換部34と、階調変換部36とから、構成されている。
【0042】
主制御部31は、CPU、RAM、ROMなどから構成され、各種プログラムを実行することにより、画像処理やプリンタの全体的な制御を実行する。
記憶部32は、制御部30の各部で用いる各種データやプログラムを記憶している。
【0043】
色変換・分解処理部33は、記憶部32に記憶されている色変換分解テーブルを用いて、入力画像情報の色情報(RGB)を、プリンタ用の色情報であるY、M、Cの色情報に変換、分解して、Y、M、Cごとの画像情報を生成する。また、入力画像情報中にIRの画像情報が含まれている場合には、IRの画像情報を入力画像情報から抽出して生成する。
【0044】
ガンマ変換部34は、記録媒体上において適切な階調を実現するために、記憶部32に記憶されているガンマ変換テーブルを用いて、Y、M、Cの各画像情報、及び、必要に応じてIRの画像情報も、γ(ガンマ)変換する処理を行う。
【0045】
階調変換部36は、記憶部32に記憶されているディザパターンデータを用いて、Y、M、C、IRの各画像情報を、中間調濃度(ハーフトーン濃度)に応じたディザパターンに変換する階調変換処理を実行する。本実施形態においては、Y、M、Cの画像情報に対して用いる可視用ディザパターンデータと、IRの画像情報に対して用いるIR用ディザパターンデータとは、そのディザパターンが異なるものを用いる。具体的には、IR用ディザパターンデータは、所定の画像面積率以下のハーフトーン濃度についてのディザパターンが、同じ画像面積率のハーフトーン濃度に対応する可視用ディザパターンデータのディザパターンと比べて、孤立ドットの数が少ないものとなっている。また、本実施形態のIR用ディザパターンデータは、所定の画像面積率以下のハーフトーン濃度についてのディザパターンが、同じ画像面積率のハーフトーン濃度に対応する可視用ディザパターンデータのディザパターンと比べて、空間周波数が低いものとなっている。また、本実施形態のIR用ディザパターンデータは、所定の画像面積率以下のハーフトーン濃度についてのディザパターンが、同じ画像面積率のハーフトーン濃度に対応する可視用ディザパターンデータのディザパターンと比べて、用紙上における画像の粒状度が高くなるものとなっている。
【0046】
図3は、本実施形態における画像形成動作の流れを示すフローチャートである。
制御部30は、読取装置(スキャナ)やパソコン等からの入力画像情報を取得すると(S1)、まず、IRの画像情報を生成するか否かを判断する。ここでは、IRの画像情報を生成するために用いる付加情報が入力画像情報に含まれているか否かを判断する(S2)。そして、付加情報が入力画像情報に含まれていると判断した場合には(S2のYes)、その付加情報に基づいてIRの画像情報を生成する(S3)。IRの画像情報の生成は、入力画像情報中にIRの画像情報が含まれている場合には、IRの画像情報を入力画像情報から抽出して生成する。
【0047】
続いて、制御部30は、記憶部32に記憶されている色変換分解テーブルを用いて、色変換・分解処理部33により、入力画像情報の色情報(RGB)を、プリンタ用の色情報であるY、M、Cの色情報に変換、分解する(S4)。そして、ガンマ変換部34により、Y、M、Cの各画像情報に対して、ガンマ変換処理を実行する(S5)。また、処理ステップS3でIRの画像情報を生成した場合には、ガンマ変換部34により、IRの画像情報に対しても、ガンマ変換処理を実行する(S5)。
【0048】
その後、制御部30は、ガンマ変換処理した後のY、M、Cの画像情報に対しては(S6のNo)、記憶部32から可視用ディザパターンデータを読み出して(S7)、階調変換部36により階調変換処理を実行する(S9)。また、IRの画像情報に対しては(S6のYes)、記憶部32からIR用ディザパターンデータを読み出して(S8)、階調変換部36により階調変換処理を実行する(S9)。その後、階調変換部36から出力されるY、M、C、IRの各画像情報は、画像形成制御部40に送られ、画像形成動作が実行される(S10)。
【0049】
画像形成制御部40は、Y、M、C、IRの各画像情報に基づき、Y、M、C、IR用の各露光装置11を制御して、Y、M、C、IRの各潜像をそれぞれの感光体7上に形成する。そして、画像形成制御部40は、現像装置9を制御して、各潜像をそれぞれのトナーによって現像してトナー像とし、転写部2の各部を制御して、中間転写ベルト12上に順次重ね合せて転写した後、中間転写ベルト12上のトナー像を用紙Pに一括して転写する。その後、画像形成制御部40は、定着装置21を制御して、トナー像を用紙Pに定着し、装置外へ排出する。
【0050】
次に、IR画像を確認するためのIR画像確認モードについて、図面を参照して説明する。
IR画像は、可視光下での発色が抑制されているため、実際に印刷されるIR画像をユーザーが目視で確認したり、カスレ、縦スジ、濃度ムラ等の画像異常がIR画像に発生しているか否かなどを、人間の目視で確認(検査)したりすることが困難である。また、可視画像を検出する一般的な画像センサを利用して、このような確認をすることも困難である。IR画像を検出できる専用な画像センサを本プリンタに設置すれば、IR画像を確認することは可能であるが、高コスト化を招く。
【0051】
そこで、本実施形態においては、記録媒体としての用紙Pに形成されるIR画像を可視化するための可視化制御を実行することで、人間の目視によってIR画像の確認をする。より詳しくは、IR画像を可視化するために、確認対象のIR画像を作像するにあたり、そのIRトナー像のIRトナーに対して可視画像用トナーであるY、C、Mトナーの少なくとも1つのトナーを選択的に付着させ、これを記録媒体上に転写して定着する。そして、この記録媒体を装置外へ排出し、当該可視画像用トナーによって可視化されたIR画像を人間の目視によって確認する。本実施形態では、IRトナーが存在する部分だけに可視画像用トナーが付着するので、実際に形成されるIR画像(IRトナーが付着している部分)が正確に可視化される。よって、実際には視認困難な状態で形成されることになるIR画像を適正に確認することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、人間の目視によってIR画像の確認をする例で説明するが、可視画像を検出する一般的な画像センサを利用して、IR画像を確認してもよい。
【0053】
図4は、本実施形態におけるIR画像確認モードの流れを示すフローチャートである。
ユーザー操作がされたタイミングなどの所定の確認開始タイミングになったら、制御部30の主制御部31は、IR画像確認モードの動作の実行を開始し、まず、IR画像を可視化するためにIRトナー像のIRトナーに対して、どの可視画像用トナー(Y、C、Mトナー)を選択的に付着させるかを決定する。すなわち、可視画像用であるカラーのプロセスユニット6Y,6M,6Cの中から、IR画像確認モードに用いるプロセスユニットを選択する(S11)。以下の説明では、マゼンタ(M)のプロセスユニット6Mが選択されるものとする。
【0054】
なお、処理ステップS11の選択条件は、適宜設定することができる。例えば、ユーザー操作によって指示されるプロセスユニットを選択するという条件でもよい。
また、例えば、確認に適した色(例えば、目視確認であれば記録媒体の地色に対して補色関係に近い色、可視画像用センサを用いる確認であれば当該センサの感度が高い色など)に対応するプロセスユニットを選択するという条件でもよい。この場合、確認精度の向上を図ることができる。
また、例えば、トナー残量の多いプロセスユニットを選択するという条件でもよい。この場合、トナーエンドによるダウンタイムの発生を抑制することができる。
また、例えば、IRのプロセスユニット6IRよりも中間転写ベルト12の走行方向下流側に配置されるすべてのプロセスユニットを選択するという条件でもよい。この場合、より多く量の可視画像用トナーをIRトナーに付着させることができるので、可視化されたIR画像の画像濃度が高まり、確認精度の向上を図ることができる。
【0055】
次に、主制御部31は、処理ステップS11で選択されたマゼンタ(M)のプロセスユニット6Mの作像条件を、IR画像確認モード用の作像条件に設定する(S12)。本実施形態では、中間転写ベルト12上に形成される確認対象のIRトナー像を構成するIRトナーに対し、プロセスユニット6Mにより、弱帯電状態又は逆帯電状態のMトナーを選択的に付着させることにより、IR画像の可視化を行う。
【0056】
図5は、IR画像確認モードにおいて、IRトナーT
IRに対して弱帯電状態又は逆帯電状態のMトナーT
Mが付着する様子を示す説明図である。
IR画像確認モードでは、マゼンタ(M)の感光体7の表面に、弱帯電状態又は逆帯電状態のMトナーT
Mを略一様に付着させる。この方法としては、例えば、回転駆動される感光体7の表面を、所定の帯電バイアスが印加される帯電装置8の帯電ローラによって所定の極性(例えばマイナス極性)で所定の帯電電位となるように一様に帯電する。その後、帯電された感光体表面部分は、露光装置11による静電潜像の形成が行われずに、現像領域へと搬送される。現像装置9の現像ローラ9aには、所定の現像バイアスが印加された現像ローラ9aの表面にトナーが担持されている。
【0057】
ここで、現像ローラ9aの表面に担持されるトナーの中には、十分に正規極性に帯電された正規帯電トナーのほかに、正規極性に帯電しているが帯電量が不十分な弱帯電状態のトナー(以下、適宜「弱帯電トナー」という。)や、正規極性とは逆極性に帯電してしまっている逆帯電状態のトナー(以下、適宜「逆帯電トナー」という。)も存在する。IR画像確認モードにおいて、現像領域に搬送されてくる感光体表面は、露光装置11により電位が落とされていない地肌部で一様になっているため、正規帯電トナーには感光体表面側へ移動する静電力は作用せず、感光体表面には付着しない。これに対し、逆帯電トナーには、感光体表面側へ移動する静電力が作用するため、感光体表面に付着する。また、弱帯電トナーも不安定な挙動を示して、感光体表面側へ移動し得る。
【0058】
このようにして、現像領域を通過した感光体表面には弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMが付着し、感光体7の回転駆動によって一次転写領域へと搬送される。一次転写領域では、中間転写ベルト12の走行方向上流側でIRのプロセスユニット6IRにより一次転写された中間転写ベルト12上のIRトナー像と、感光体7に一様に付着した弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMとが対向することになる。
【0059】
一次転写領域では、感光体7の表面上のMトナーTMが中間転写ベルト12上のIRトナー像を構成するIRトナーTIRに接触することで、MトナーTMが中間転写ベルト表面部分と接触する場合よりも強い付着力が発生する。これにより、感光体7の表面上のMトナーTMが中間転写ベルト12上のIRトナー像を構成するIRトナーTIRに対して選択的に付着する。
【0060】
更に、中間転写ベルト12上のIRトナー像を構成するIRトナーTIRは、正規極性(例えばマイナス極性)に帯電した状態である。したがって、一次転写領域では、一次転写装置13の一次転写バイアスを例えばOFFにしておくことにより、感光体7の表面上の逆帯電状態のMトナーTMには、中間転写ベルト12上のIRトナーTIRへ引き寄せられる静電力が作用する。また、感光体7の表面上の弱帯電状態のMトナーTMも、挙動が不安定であるため、中間転写ベルト12上のIRトナーTIRへ引き寄せられ得る。その結果、感光体7の表面上の弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMは、中間転写ベルト12上のIRトナー像を構成するIRトナーTIRに対して選択的に付着する。なお、一次転写装置13の一次転写バイアスをOFFではなく低めに設定しておくことによっても、逆帯電状態のMトナーTMや弱帯電状態のMトナーTMが、中間転写ベルト12上のIRトナーTIRへ転写されやすくなる。
【0061】
このように、本実施形態のIR画像確認モードでは、中間転写ベルト12上のIRトナーTIRに対して、Mの感光体7上における弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMを選択的に付着させるのであるが、IRトナーTIRに付着するMトナーTMの量が不十分であることがある。IRトナーTIRに付着するMトナーTMの量が不十分であると、可視化されたIR画像の視認性が低く、確認精度に影響を及ぼし得る。
【0062】
そこで、本実施形態では、IRトナーTIRに付着するMトナーTMの量が多くなるように、各種作像条件を、通常の画像形成動作時とは異なる作像条件に設定する(S12)。
【0063】
例えば、現像ローラ9aに担持されるMトナーTMのうち、弱帯電状態や逆帯電状態のトナー量を増やすように、作像条件を設定してもよい。現像ローラ9aに担持される弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMの量が増えれば、感光体の表面に付着する弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMの量も増える。よって、一次転写領域へ供給される弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMの量が増えるので、一次転写領域において、より多くのMトナーTMを中間転写ベルト12上のIRトナーTIRに付着させることができる。
【0064】
このような作像条件の設定方法としては、例えば、現像ローラ9aや供給ローラ9bの回転速度を遅くするように設定することが挙げられる。この場合、現像ローラ9aと供給ローラ9bとの対向部でのトナー摺擦力が小さくなり、トナーの摩擦帯電が不足気味になり、弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMの量を増やすことができる。また、トナーへの帯電能力向上のために、現像ローラ9aと供給ローラ9bとの対向部に供給バイアスを印加するような構成を採用している場合には、例えばその供給バイアスを小さくするように設定したり、あるいは、通常の画像形成動作時とは逆極性の供給バイアスに設定したりしてもよい。
【0065】
また、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用い、現像ローラ上に担持した二成分現像剤中のトナーを、現像ローラと現像剤規制部材である現像ドクタとのギャップ(ドクタギャップ)を通過させる際に摩擦帯電させる構成を採用する場合には、例えば、現像ローラの回転速度を遅くするように設定してもよい。この場合、ドクタギャップを通過する際におけるトナーの摩擦帯電が不足気味になり、弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMの量を増やすことができる。また、トナーへの帯電能力向上のために、現像ローラと現像ドクタとの間に規制バイアスを印加するような構成を採用している場合には、例えばその規制バイアスを小さくするように設定したり、あるいは、通常の画像形成動作時とは逆極性の規制バイアスに設定したりしてもよい。
【0066】
また、現像領域において、露光装置11によって電位が落とされていない感光体表面上の地肌部に対する電位ポテンシャル(地肌ポテンシャル)が大きくなるように、作像条件を設定してもよい。地肌ポテンシャルが大きくなれば、現像ローラ9aから弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMを感光体表面側へ引き寄せる静電力が大きくなり、より多くの弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMを、感光体表面に付着させることができる。よって、一次転写領域へ供給される弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMの量が増えるので、一次転写領域において、より多くのMトナーTMを中間転写ベルト12上のIRトナーTIRに付着させることができる。
【0067】
このような作像条件の設定方法としては、例えば、通常の画像形成動作時よりも、帯電バイアスを大きくしたり、現像バイアスを小さくしたりする方法が挙げられる。
【0068】
以上のようにして、IR画像確認モード用の作像条件に設定したら、確認対象のIR画像の作像を開始する(S13)。これにより、IRのプロセスユニット6IRでは、通常の画像形成動作時と同様に、確認対象のIR画像に対応するIRトナー像が感光体7の表面に形成され、中間転写ベルト12上に一次転写される。一方、Mのプロセスユニット6Mでは、上述したように、感光体7の表面上に弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMを略一様に付着させる。そして、中間転写ベルト12上のIRトナー像がMのプロセスユニット6Mの一次転写領域を通過する際、Mのプロセスユニット6Mの感光体7上に付着する弱帯電状態や逆帯電状態のMトナーTMが、中間転写ベルト12上のIRトナーTRに対して選択的に付着する。その後、MトナーTMが付着した状態のIRトナー像は用紙Pに二次転写され、定着装置21により用紙Pに定着された後、装置外に排出される。
【0069】
これにより、排紙トレイ25上には、MトナーTMによって可視化されたIR画像が形成された用紙Pが得られるので、この用紙Pを用いて、確認対象のIR画像を人間の目視によって確認する(S14)。
【0070】
確認対象とするIR画像は、ユーザー操作によって指定されるIR画像(例えばユーザーが実際に画像形成するIR画像そのもの)であってもよい。この場合、ユーザーの意図するIR画像が適切に形成されるかどうかを確認、検査することができ、例えば、IR画像の内容修正、用紙P上におけるIR画像の位置や大きさの修正などをすることが可能となる。
【0071】
また、予め決められたIR画像(検査用の画像パターンをもったIR画像)を、検査対象のIR画像として用いてもよい。例えば、IRのプロセスユニット6IRの主走査方向の作像領域全体にわたる高濃度の画像パターンを、検査対象のIR画像として用いてもよい。この場合、IR画像の作像に関わる異常を検査することができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、中間転写方式の画像形成装置の例であったため、像担持体である中間転写ベルト12上に形成したIRトナー像のIRトナーに対して、可視画像用トナーであるMトナーを選択的に付着させる例であるが、これに限られない。直接転写方式の画像形成装置の例であれば、例えば、記録媒体上に形成したIRトナー像のIRトナーに対して可視画像用トナーであるMトナーを選択的に付着させてもよい。また、像担持体である単一の感光体上で複数種類のトナー像を重ね合わせる方式の画像形成装置の例であれば、例えば、感光体上に形成したIRトナー像のIRトナーに対して可視画像用トナーであるMトナーを選択的に付着させてもよい。
【0073】
次に、本実施形態で使用されるトナーについて説明する。
カラートナーは、結着樹脂、及び着色剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
IRトナーは、結着樹脂、及び近赤外光吸収材料を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0074】
<IRトナー>
IRトナーは、結着樹脂、及び近赤外光吸収材料を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0075】
<<結着樹脂>>
結着樹脂としては、特に制限はなく、従来公知の樹脂がすべて使用可能である。結着樹脂としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変成マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これら中でも、芳香族化合物を構成単位として含有するスチレン系樹脂、及びポリエステル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0076】
ポリエステル樹脂は、一般公知のアルコールと酸との重縮合反応によって得られる。
アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどのジオール類、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどのエーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した二価のアルコール単位体、その他の二価のアルコール単位体、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-サルビタン、ペンタエスリトールジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等の三価以上の高アルコール単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カルボン酸が好ましい。
カルボン酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した二価の有機酸単量体、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の二量体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体酸、これらの酸の無水物等の三価以上の多価カルボン酸単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
なお、結着樹脂には、結晶性樹脂を含有させることもできる。
結晶性樹脂としては、結晶性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、変性結晶性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂が好ましく、耐湿性や後述の非晶性樹脂との非相溶性を持たせるためにウレタン骨格及びウレア骨格の少なくともいずれかを有する樹脂が好ましい。
【0079】
結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、定着性の観点からは、2,000~100,000が好ましく、5,000~60,000がより好ましく、8,000~30,000が特に好ましい。重量平均分子量が、2,000以上であると、耐ホットオフセット性が悪化する不具合を防止することができ、100,000以下であると、低温定着性が悪化する不具合を防止することができる。
【0080】
<<近赤外光吸収材料>>
近赤外光吸収材料としては、無機材料系、及び有機材料系のいずれも用いることができる。
これまでにも、付加データ埋め込み技術のために、透明性を有する(不可視な)赤外線吸収材料が種々検討されており、様々な材料が開示されている。例えば、無機材料系では、イッテルビウムなどの希土類金属(特開平9-77507号公報、特開平9-104857号公報)や銅リン酸結晶化ガラスを含有する赤外線吸収材料(特開平7-53945号公報、特開2003-186238号公報)など、有機材料系としては、アルミニウム化合物(特開平7-271081号公報)や、クロコニウム色素(特開2001-294785号公報)が挙げられる。また、特開2002-146254号公報には、750nm~1100nmに分光吸収極大波長を有し、かつ650nmにおける吸光度が、該分光吸収極大波長における吸光度の5%以下である赤外線吸収材料を含有する有機材料が提案されている。更に、特開2007-171508号公報、特開2007-3944号公報、特開2010-113368号公報、及び特開2008-76663号公報には、ナフタロシアニン顔料を用いることが提案されており、可視光の吸光度及び赤外域の吸光度の差異の面から優れた技術といえる。
【0081】
無機材料系の近赤外光吸収材料としては、例えば、燐酸、シリカ、ホウ酸等の可視域の波長を透過する公知のガラス網目形成成分に、遷移金属イオンや、無機及び/又は有機化合物からなる色素等の材料を添加したガラスや、これを熱処理により結晶化した結晶化ガラスなどが挙げられる。これらの無機材料は可視領域の光を良く反射して、不可視の画像を得ることができる。
【0082】
有機材料系の近赤外光吸収材料としては、例えば、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物等の有色材料;アルミニウム塩系化合物、ナフタロシアニン系化合物等の無色材料などが挙げられる。これらの中でも、添加により画像を着色してしまうことがなく、赤外光域の吸収が十分に大きいことから添加量を抑えられ、結果としてカラー画像の画質を損ねない点から、無色材料が好ましい。
無色材料の中でも、可視光域の吸光度が非常に低く、無色に近い特徴があり、更にはトナーの帯電への影響が小さいことから、ナフタロシアニン系化合物が好ましい。
【0083】
ナフタロシアニン系化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下に例示する化合物が好ましい。
【0084】
【0085】
ただし、化学式(1)において、Metは、2個の水素原子、2価の金属原子、3価もしくは4価の置換金属原子を表し、A1~A8は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基又は置換もしくは非置換のアリールチオ基を表し、但し、A1とA2、A3とA4、A5とA6、A7とA8の各組み合わせにおいて、その両方が同時に水素原子又はハロゲン原子になることはなく、Y1~Y16は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、置換もしくは非置換のアリールチオ基、置換もしくは非置換のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは非置換のアリールアミノ基、置換もしくは非置換のジアリールアミノ基、置換もしくは非置換のアルキルアリールアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトリル基、オキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基又はモノもしくはジ置換アミノカルボニル基を表す。
【0086】
近赤外光吸収材料の読み取り波長の反射率としては、赤外光照射により機械読み取りを安定して行う点から、50%以下であることが好ましい。反射率が50%以下であると、読み取り精度が下がるという不具合を防止することができる。
反射率の測定方法としては、例えば、出力したベタ画像を、分光光度計(例えば、V-660(日本分光株式会社製)、eXact(X-Rite社製)等)を用いて測定することができる。
【0087】
近赤外光吸収材料はトナー粒子中に分散して含有することが好ましい。
近赤外光吸収材料をトナー表面に外部固着或いはトナー粒子群に混合添加した場合、トナー粒子及び現像剤中で材料凝集などを発生させる可能性が有り、さらにバルクとして必要量添加してもトナー表面に外部固着或いは現像剤調整の段階で、機器への付着などで失われ、IR画像中の近赤外光吸収材料が不足または偏在等することで情報を正確且つ安定に読み出せなくなってしまう。また、遊離した近赤外光吸収材料が機内、特に感光体等を汚染することで現像、転写などの他工程に悪影響を与える可能性も考えられる。 また、前述の有機系近赤外光吸収材料を用いる場合、無機系材料に比べ結着樹脂に対する分散性が良く、画像出力媒体上に形成されたIR画像中に均一に分散し、可視域においてより不可視性を損なうことなく、赤外域においては十分な吸収を示すことで情報が高密度に記録でき、且つトナー中への分散性が良いことからIR画像の機械読み取り・復号化処理が長期間わたり安定に行うことが可能となる。
【0088】
近赤外光吸収材料の含有量の数値範囲としては、近赤外光吸収材料の特性により異なる。近赤外光吸収材料の含有量の種類に関わらず、含有量が十分ではないと、近赤外光の吸収が十分ではなくなる。近赤外光の吸収が十分ではないと、IRトナーを紙などの媒体に多く付着させなければならない。このため、IRトナーの集合物(塊)による視認可能な凹凸を生じると共に、資源に無駄が生じる不具合が発生する。近赤外光吸収材料の含有量が過剰であると、近赤外光吸収材料は若干ではあれど、可視光波長域に吸収がある。このため、近赤外光吸収材料そのものが、視認されやすくなるという不具合が発生する。
透明性を有する(不可視の)近赤外光吸収材料としてよく用いられるバナジルナフタロシアニンの場合において、その含有量としては、IRトナーに対して、0.3質量%以上1.0質量%以下が好ましい。
【0089】
<<その他の成分>>
その他の成分としては、通常、トナーに含有されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離型剤、帯電制御剤、外添剤などが挙げられる。
【0090】
<<<離型剤>>>
離型剤としては、天然ワックス、及び合成ワックスのいずれも用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
天然ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックスなどが挙げられる。
【0091】
合成ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;1,2-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子である、ポリメタクリル酸n-ステアリル、ポリメタクリル酸n-ラウリル等のポリアクリレートのホモポリマー又はコポリマー(例えば、アクリル酸n-ステアリルーメタクリル酸エチル共重合体等)等の側鎖に長鎖アルキル基を有する結晶性高分子などが挙げられる。
【0092】
これらの中でも、離型剤としては、モノエステルワックスを含むことが好ましい。モノエステルワックスは、一般的な結着樹脂との相溶性が低いため、定着時に表面に染み出しやすく、高い離型性を示し、高光沢と高い低温定着性を確保できる。
モノエステルワックスとしては、合成エステルワックスであることが好ましい。合成エステルワックスとしては、例えば、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和アルコールから合成されるモノエステルワックスなどが挙げられる。長鎖直鎖飽和脂肪酸は、一般式CnH2n+1COOHで表わされ、n=5~28程度のものが好ましく用いられる。また、長鎖直鎖飽和アルコールとしては、CnH2n+1OHで表わされ、n=5~28程度が好ましい。
【0093】
長鎖直鎖飽和脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラモン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸およびメリシン酸などが挙げられる。一方、長鎖直鎖飽和アルコールの具体例としては、例えば、アミルアルコール、ヘキシールアルコール、ヘプチールアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコールおよびヘプタデカンノオールなどが挙げられ、低級アルキル基、アミノ基、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0094】
離型剤の融点は、50℃~120℃が好ましい。離型剤の融点が数値範囲であると、定着ローラとトナー界面の間で離型剤として効果的に作用することができるため、定着ローラにオイル等の離型剤を塗布しなくても高温耐オフセット性を向上させることができる。具体的には、融点が50℃以上であると、トナーの耐熱保存性が悪化する不具合を防止することができ、120℃以下であると、低温での離型性が発現されず、耐コールドオフセット性の悪化、定着機への紙の巻付きなどが発生するという不具合を防止することができる。
離型剤の融点の測定としては、例えば、示差走査熱量計であるTG-DSCシステムTAS-100(理学電機社製)を用いて、最大吸熱ピークを測定することにより求めることができる。
【0095】
離型剤の含有量としては、結着樹脂に対して、1質量%~20質量%が好ましく、3質量%~10質量%がより好ましい。含有量が、1質量%以上であると、オフセット防止効果が不十分となる不具合を防止することができ、20質量%以下であると、転写性、耐久性が低下するという不具合を防止することができる。
【0096】
また、モノエステルワックスの含有量としては、IRトナー100質量部に対して、4質量部~8質量部が好ましく、5質量部~7質量部がより好ましい。含有量が、4質量部以上であると、定着時における表面への染み出しが不十分となること、離型性が悪くなること、並びに光沢、低温定着性、及び耐高温オフセット性が低下することの不具合を防止することができる。含有量が、8質量部以下であると、トナー表面に析出する離型剤の量が増え、トナーとしての保存性が低下し、感光体等へのフィルミング性が低下するという不具合を防止することができる。
【0097】
本実施形態のトナーは、ワックス分散剤を含有することが好ましく、分散剤がモノマーとして少なくともスチレン、ブチルアクリレート、及びアクリロニトリルを含む共重合体組成物、並びに共重合体組成物のポリエチレン付加物であることが好ましい。
ワックス分散剤の含有量としては、IRトナー100質量部に対して、7質量部以下であることが好ましい。ワックス分散剤を含有することにより、ワックスの分散効果が得られ、製造方法に左右されることなく安定的に保存性の向上が期待できる。また、ワックスの分散効果によりワックス径が小さくなり、感光体等へのフィルミング現象を抑制できる。含有量が7質量部以下であると、ポリエステル樹脂に対する非相溶成分が多くなり、光沢が低下すること、ワックスの分散性が高くなりすぎるために、耐フィルミング性は向上するが、定着時のワックスの表面への染み出しが悪くなり、低温定着性、耐ホットオフセット性が低下することなどの不具合を防止することができる。
【0098】
<<<帯電制御剤>>>
帯電制御剤としては、公知のものを全て使用することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、第4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、及びサリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
帯電制御剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ボントロン03、ボントロンP-51、ボントロンS-34、E-82、E-84、E-89(以上、オリエント化学工業社製)、TP-302、TP-415、コピーチャージPSY VP2038、コピーブルーPR、コピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、LR-147(日本カーリット社製)などが挙げられる。
【0100】
帯電制御剤の含有量としては、結着樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法に応じて適宜選択することができるが、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部~5質量部が好ましく、0.2質量部~2質量部がより好ましい。含有量が、5質量部以下であると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く不具合を防止することができる。
【0101】
また、帯電制御剤の中でも三価以上の金属塩を用いることでトナーの熱物性を制御することも可能である。金属塩を含むことにより、定着時に結着樹脂の酸性基と架橋反応が進行し、弱い三次元的な架橋を形成することで、低温定着性を維持しつつ、耐高温オフセット性を得ることができる。
【0102】
金属塩としては、例えば、サリチル酸誘導体の金属塩、アセチルアセトナート金属塩などが挙げられる。金属としては、3価以上の多価イオン金属であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、ニッケルなどが挙げられる。これらの中でも、3価以上のサリチル酸金属化合物が好ましい。
【0103】
金属塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、IRトナー100質量部に対して、0.5質量部~2質量部が好ましく、0.5質量部~1質量部がより好ましい。含有量が、0.5質量部以上であると、耐ホットオフセット性に劣る不具合を防止することができ、含有量が、2質量部以下であると、光沢性が劣る不具合を防止することができる。
【0104】
<<<外添剤>>>
外添剤は、流動性や現像性、帯電性を補助するために含有される。外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機微粒子、高分子系微粒子などが挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
高分子系微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子などが挙げられる。
【0105】
外添剤は、表面処理剤による表面処理を行なって、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0106】
外添剤の一次粒子径としては、5nm~2μmが好ましく、5nm~500nmがより好ましい。また、外添剤のBET法による比表面積としては、20m2/g~500m2/gが好ましい。
外添剤の含有量としては、IRトナーに対して0.01質量%~5質量%が好ましく、0.01質量%~2.0質量%がより好ましい。
【0107】
<<<クリーニング性向上剤>>>
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために含有される。クリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などが挙げられる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0108】
<カラートナー>
カラートナーは、結着樹脂、及び着色剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。その他の成分については、その他の成分と同様のものを使用することができる。
カラートナーとしては、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーのいずれかであることが好ましく、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーであることがより好ましい。言い換えれば、トナーセットにおいては、IRトナーのベタ画像の60度光沢度が、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーのいずれかのベタ画像の60度光沢度より10以上高いことが好ましく、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、のすべてのベタ画像の60度光沢度より10以上高いことがより好ましい。
【0109】
<<結着樹脂>>
本実施形態のカラートナーにより作像されるトナー像としては、一般的なオフセット印刷などと比較して低グロスであることが好ましい。
このため、カラートナーに含有される結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゲルを含むことが好ましい。ゲル分率としては、結着樹脂に対して、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1.0質量%以上10質量%以下がより好ましい。
ゲルを含まない場合でも、カラートナーに用いられる結着樹脂としては、重量平均分子量Mwc100,000以上の高分子量体を含有していることが好ましく、IRトナーで用いられる結着樹脂の重量平均分子量Mwiよりも大きいことがより好ましい。カラートナーにおいて用いられる結着樹脂の重量平均分子量Mwcを、IRトナーにおいて用いられる結着樹脂の重量平均分子量Mwiよりも大きくすることにより、オフセット印刷と比較して視認性の高い、60度光沢度で10から30程度のカラー画像のグロスを得ることができる。
【0110】
<<着色剤>>
着色剤としては、800nm以上の波長の吸収が、小さいものが好ましく、例えば、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、ペリレンブラック、ペリノンブラック及びこれらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0111】
プロセスカラートナーとして用いる場合、シアン、マゼンタ、及びイエローのそれぞれについて、以下の着色剤が好ましい。
シアンでは、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。マゼンタでは、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド269、及びC.I.ピグメントレッド81:4が好ましい。イエローでは、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントイエロー185が好ましい。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
着色剤の800nm以上の吸光度としては、0.05未満が好ましく、0.01未満がより好ましい。吸光度が、0.05未満であると、カラートナーがIRトナーの上に重ねられたとき、IRトナーで形成される情報の読み取りを阻害するという不具合を防止することができる。
【0113】
着色剤の含有量としては、各着色剤の着色力にもよるが、各色のカラートナー全体に対して、3質量%~12質量%が好ましく、5質量%~10質量%がより好ましい。含有量が、3質量%以上であると、着色力が十分でなく単色トナー付着量が多くなり資源に無駄が生じる不具合を防止することができる。含有量が、12質量%以下であると、トナーの帯電性に影響が大きくなり安定したトナー帯電量を維持することが困難となる不具合を防止することができる。
【0114】
<IRトナー、及びカラートナーの特性>
IRトナーのベタ画像の60度光沢度としては、30以上であり、30以上80以下が好ましく、30以上60以下が更に好ましい。ベタ画像の60度光沢度が、30未満ではIRトナー像の視認性が増すことにより、目的の隠し画像としての体をなさなくなる。80より大きいと、トナー樹脂の分子量が小さくなり、十分な定着温度範囲が維持できにくくなることがある。
カラートナーのベタ画像の60度光沢度としては、10以上40以下が好ましく、15以上35以下がより好ましい。光沢度が数値範囲であると、カラートナー像が比較的低グロスの画像となる。
また、IRトナーのベタ画像の60度光沢度は、カラートナーのベタ画像の60度光沢度より10以上高く、15以上高いことが好ましく、20以上高いことが更に好ましい。IRトナーのベタ画像の60度光沢度と、カラートナーのベタ画像の60度光沢度との差が、10未満であると、画像出力媒体上で、画像形成時の加熱定着前にIRトナー像の上にカラートナー像を重ねた場合、加熱加圧定着される際に、上層のカラートナーが下層のIRトナー層内に入り込み、カラートナー像の視認性が悪化する。即ち、IRトナーのベタ画像の光沢度が、カラートナーのベタ画像の光沢度と比較して高いことにより、上層に重ねられたカラートナー像の視認性が向上し、結果として、下層のIRトナー像が視認されにくくなる。
【0115】
カラートナーのベタ画像の800nm以上の吸光度としては、0.05未満であることが好ましく、0.01未満であることがより好ましい。
【0116】
IRトナー、及びカラートナーのベタ画像の光沢度を調整する手段としては、例えば、結着樹脂のゲルの割合を調整する、結着樹脂の重量平均分子量を調整することなどが挙げられる。結着樹脂のゲル分率が大きいほど低光沢となり、ゲル分率が0に近づくほど高光沢となる傾向となる。ゲルを含まない結着樹脂を用いた場合、結着樹脂の重量平均分子量が大きいほど低光沢となり、重量平均分子量が小さいほど高光沢となる傾向にある。
更に結着樹脂に酸価のある樹脂を用いると、3価以上の金属塩を添加することにより光沢を調整することも可能である。結着樹脂酸価が大きく、金属塩添加量が多いほど低光沢となる傾向になり、結着樹脂酸価が小さく、金属塩添加量が少ないほど高光沢となる傾向となる。
【0117】
IRトナーの重量平均分子量(Mwi)としては、6,000~12,000が好ましく、7,500~10,000がより好ましい。
重量平均分子量としては、THF溶解分の分子量分布をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置GPC-150C(ウォーターズ社製)によって測定できる。
重量平均分子量の測定としては、例えば、カラム(KF801~807:ショウデックス社製)を使用し、以下の方法で行う。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流す。次いで、試料0.05gをTHF5gに十分に溶かした後、前処理用フィルタ(例えば、孔径0.45μm クロマトディスク(クラボウ製))で濾過し、最終的に試料濃度として0.05質量%~0.6質量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を50μL~200μL注入して測定する。
【0118】
IRトナーのゲル分率は0質量%~2質量%が好ましい。
ゲル分率は、重量平均分子量の測定の際に用いた、前処理用フィルタにてろ過された成分の乾燥重量より算出することができる。
【0119】
IRトナーの重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)としては、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnの測定方法としては、IRトナーの有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、分子量が6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106(PressureChemical Co.社製、又は東洋ソーダ工業社製)などが挙げられる。検量線を作成するにあたり、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0120】
IRトナーの酸価としては、12mgKOH/g以下が好ましく、6mgKOH/g~12mgKOH/gがより好ましい。酸価は、結着樹脂として、ポリエステル樹脂を用いることで数値範囲内にすることができ、低温定着性と、耐ホットオフセット性を両立しやすい。
本実施形態におけるトナー及び結着樹脂の酸価の測定は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行った。
試料溶液の調製としては、トナー又は結着樹脂0.5g(酢酸エチル可溶成分では0.3g)をトルエン120mLに添加して室温(23℃)で約10時間攪拌して溶解した。更に、エタノール30mLを添加して試料溶液とした。
測定は装置にて計算することが出来るが、具体的には次のように計算した。あらかじめ標定されたN/10苛性カリ~アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算で酸価を求めた。
酸価=KOH(mL数)×N×56.1/試料質量(ただしNはN/10KOHのファクター)
なお、以下に示す実施例及び比較例では、結着樹脂とトナーの酸価がほぼ一致した。したがって、結着樹脂の酸価をトナーの酸価として扱う。
【0121】
<<トナー粒径>>
IRトナーの重量平均粒径としては、5μm以上7μm以下が好ましく、5μm以上6μm以下がより好ましい。
カラートナーの重量平均粒径としては、4μm以上8μm以下が好ましく、5μm以上7μm以下がより好ましい。
重量平均粒径が範囲内であると、600dpi以上の微少ドットを再現し、高画質な画像を得ることができる。これは、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有することができ、ドット再現性に優れるという利点が得られる。
特に、IRトナーにおいては、画像出力媒体上に転写され定着前の状態において、高密度に配置され、その上に重ねられるカラートナーがその隙間に入り込まないようにすることにより、再現性の高い定着後の画像を得ることができる。その再現性の高い画像は赤外光照射により機械読み取り処理にあたり、より安定した処理が可能となる。
カラートナーの重量平均粒径(D4)が4μm以上であると、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象を防止することができ、カラートナーの重量平均粒径(D4)が8μm以下であると、上述のように定着前の画像に重なられたカラートナーが入り込むことによる画像情報の乱れが生じやすくなること、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しくなるという不具合を抑えることができる。
【0122】
また、重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)との比(D4/D1)としては、1.00~1.40が好ましく、1.05~1.30がより好ましい。比(D4/D1)は、1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。
このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
異なる色のトナー像を重ね合わせることにより多色像を形成するフルカラー画像形成方法においては、ブラックトナー1色のみで画像形成するため異なる色のトナー像を重ね合わせる必要のないモノクロ画像形成方法に比べて紙上に付着させるトナー量が多い。
すなわち現像、転写、定着されるトナー量が多くなるために、上述の転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下、文字やラインの飛び散り、地肌かぶりなど画質を悪化させる不具合が起こりやすく、重量平均粒径(D4)や重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)との比(D4/D1)の管理が重要となる。
【0123】
トナー粒子の粒度分布の測定は、コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置を用いて行うことができる。装置としては、例えば、コールターカウンターTA-IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。
具体的な測定方法は以下のとおりである。
まず、電解水溶液100mL~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩など)を0.1mL~5mL加える。電解水溶液とは、1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えば、ISOTON-II(コールター社製)が挙げられる。
次に、測定試料を2mg~20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間~3分間分散処理を行ない、測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの重量、個数を測定して、重量分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00~2.52μm未満;2.52~3.17μm未満;3.17~4.00μm未満;4.00~5.04μm未満;5.04~6.35μm未満;6.35~8.00μm未満;8.00~10.08μm未満;10.08~12.70μm未満;12.70~16.00μm未満;16.00~20.20μm未満;20.20~25.40μm未満;25.40~32.00μm未満;32.00~40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0124】
電子写真現像用トナーの正接損失(tanδ)は、画像の光沢度と明らかな相関があることが知られている。tanδの値が大きくなるとトナーの定着時の延展性が大きくなり、基材隠蔽性が高くなり、高光沢の画像が得られる。
IRトナーの100℃~140℃における正接損失(tanδi)としては、2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。tanδiは、15以下が好ましい。なお、IRトナーの100℃~140℃における正接損失(tanδi)が2.5以上であるとは、100℃~140℃において、IRトナーの正接損失(tanδi)が常に2.5以上の値をとることを意味する。
カラートナーの正接損失(tanδc)としては、2以下が好ましい。tanδcは、0.1以上が好ましい。カラートナーの正接損失が2以下であると、IR画像上に重ねたカラートナーがIRトナー画像内に入り込み、IRトナー画像の安定性を損なうという不具合を防止することができる。なお、カラートナーの100℃~140℃における正接損失(tanδc)が2以下であるとは、100℃~140℃において、カラートナーの正接損失(tanδc)が常に2以下の値をとることを意味する。
【0125】
電子写真現像用トナーの正接損失(tanδ)は、損失弾性率(G’’)及び貯蔵弾性率(G’)の比(G’’)/(G’)であり、粘弾性測定により測定することができる。損失弾性率(G’’)及び貯蔵弾性率(G’)は、例えば、以下の方法により測定することができる。IRトナー、又はカラートナーを0.8g、φ20mmのダイスを用いて30MPaの圧力で成型し、ADVANCED RHEOMETRIC EXPANSION SYSTEM(TA社製)でφ20mmのパラレルコーンを使用して周波数1.0Hz、昇温速度2.0℃/分間、歪み0.1%(自動歪み制御:許容最小応力1.0g/cm、許容最大応力500g/cm、最大付加歪み200%、歪み調整200%)、GAPはサンプルセット後FORCEが0~100gmになる範囲で、損失弾性率(G’')、貯蔵弾性率(G')、正接損失(tanδ)の測定を行うことができる。
【0126】
<トナーの製造方法>
本実施形態のトナーセットの製造方法としては、溶融混練-粉砕法、重合法など従来公知の方法が適用できる。また、カラートナーとIRトナーの製造法は同じ製造方法を用いても良いし、カラートナーは重合法、IRトナーは溶融混練粉砕法といったように別の製造方法を用いても良い。
【0127】
<<溶融混練-粉砕法>>
溶融混練-粉砕法においては、その製造工程では、(1)少なくとも結着樹脂と着色剤もしくは近赤外光吸収材料、離型剤とを溶融混錬する工程、(2)溶融混錬されたトナー組成物を粉砕/分級する工程、(3)無機微粒子を外添する工程を有する。また、工程(2)の粉砕/分級工程で複製する微紛を、工程(1)の原料としてサイド混練することがコストの面で好ましい。
【0128】
混練に使用する混錬機としては、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、又はオープンロール型混練機等を用いることができる。混錬機の種類としては、例えば、KRCニーダー(栗本鉄工所社製)、ブス・コ・ニーダー(Buss社製)、TEM型押し出し機(東芝機械社製)、TEX二軸混練機(日本製鋼所社製)、PCM混練機(池貝鉄工所社製)、三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製)、ニーデックス(三井鉱山社製)、MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製)、バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)などが挙げられる。
【0129】
粉砕機としては、例えば、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製)、クロスジェットミル(栗本鉄工所社製)、ウルマックス(日曹エンジニアリング社製)、SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製)、クリプトロン(川崎重工業社製)、ターボミル(ターボ工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)などが挙げられる。
分級機としては、例えば、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製)、ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製)、ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製)、YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、例えば、ウルトラソニック(晃栄産業社製)、レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社)、バイブラソニックシステム(ダルトン社製)、ソニクリーン(新東工業社製)、ターボスクリーナー(ターボ工業社製)、ミクロシフター(槙野産業社製)、円形振動篩いなどが挙げられる。
【0130】
<<重合法>>
重合法としては、従来公知の方法を用いることができる。重合法としては、例えば、以下のような手順が挙げられる。先ず、着色剤、結着樹脂、離型剤を有機溶媒中に分散させ、トナー材料液(油相)を作る。トナー材料液には、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を添加し、造粒中に反応させて、ウレア変性ポリエステル樹脂をトナーに含有させることが好ましい。
【0131】
次に、トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体としては、水系媒体に用いる水系溶媒は、水単独でもよいし、アルコールなどの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100質量部に対する水系溶媒の使用量は、通常50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
樹脂微粒子としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0132】
分散後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
【0133】
IRトナー、及びカラートナーは、一成分現像剤としても、二成分現像剤として用いることができる。
本実施形態のトナーを二成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いればよく、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100質量部に対して、トナー1質量部~10質量部が好ましい。
磁性キャリアとしては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、粒子径20μm~200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなどが挙げられる。
磁性キャリアは、被覆されたものも使用することができる。磁性キャリアを被覆するための被覆材料としては、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等のアミノ系樹脂;ポリビニル等のポリビニリデン系樹脂;アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂などが挙げられる。
更に必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μm以下であると、電気抵抗の制御が困難になるという不具合を防止することができる。
【0134】
IRトナー像がベタ画像である場合のベタ画像の60度光沢度は、30以上であり、30以上80以下が好ましく、30以上60以下が更に好ましい。
画像形成方法、及び画像形成装置の一例において、IRトナー像がベタ画像である場合のベタ画像の60度光沢度は、カラートナー像がベタ画像である場合のベタ画像の60度光沢度より10以上高く、15以上高いことが好ましく、20以上高いことが更に好ましい。
画像形成方法、及び画像形成装置の他の一例において、IRトナーの100℃~140℃における正接損失(tanδi)は、2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。また、画像形成方法、及び画像形成装置において、カラートナーの正接損失(tanδc)としては、2以下が好ましい。
【0135】
カラートナー像の形成に用いるカラートナーの数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。カラートナーを複数使用する場合は、複数のカラートナーを同時に形成する方法、単色トナーを繰り返し形成させて各色を重ねる方法のいずれも行うことができるが、単色トナーを繰り返し形成させて各色を重ねる方法が好ましい。なお、カラートナー像において、各色を形成させる順序としては特に制限はない。
【0136】
IRトナー像における、IRトナーの付着量としては、0.30mg/cm2以上0.45mg/cm2以下が好ましく、0.35mg/cm2以上0.40mg/cm2以下がより好ましい。IRトナーの付着量が、0.30mg/cm2以上であると画像の基材隠蔽率が十分となり安定した画像が得られる。
また、近赤外光吸収材料は、可視光領域に若干の吸収があり、完全に無色ではないため、近赤外光吸収材料のトナーへの添加量が増えれば、視認性が増してしまう。その為に、画像のIRトナー付着量を、0.45mg/cm2以下とすることにより、視認性の低減が可能となる。
【0137】
IRトナー像に重ねるカラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量は、30%以上80%以下が好ましい。カラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量がこの数値範囲内であると、カラートナー像の下にあるIRトナー像の視認性を十分に低下させることができる点で好ましい。
この理由としては、以下のことが考えられる。本実施形態のIRトナーは、可視光領域に若干の吸収があり、単色での画像は完全な透明ではない。よって、IRの画像情報を不可視にする(目視しにくくする)ためには、カラートナーでマスクするのが好ましい。カラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量が30%以上であれば、IRトナー像が視認されやすくなるという不具合を防止するのに有効である。カラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量が30%未満であると、特にイエロートナーを重ねた場合のIRトナー像の視認性が上がってしまう。
【0138】
IRトナー像上のカラートナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量を30%以上80%以下とする画像形成方法は、特に二次元コード画像を重ねて画像形成する際に有効である。互いに情報の異なるIRトナーによる二次元コード画像とカラートナーによる二次元コード画像とを重ねて画像形成することにより、異なる光波長の読み取り装置(それぞれ860nm、532nm)を用いれば、同じ画像面積内で、カラートナーによる二次元コード画像のみの場合よりも多くの情報を埋め込むことができる。
記録媒体上において、IRトナー像である二次元コード画像(i)が、カラートナー像である二次元コード画像(c)よりも記録媒体側に形成されていることが好ましい。この際に、カラートナー像がベタ画像である場合のベタ画像の800nm以上900nm以下の吸光度は、0.05未満であることが好ましく、0.01未満であることがより好ましい。
また、二次元コード画像(i)が有する情報と、二次元コード画像(c)が有する情報とが異なることが好ましい。
【0139】
IRトナーの二次元コード画像と、カラートナーの二次元コード画像とを重ねる場合、カラートナーの二次元コード画像をダミーのコードとする形態も可能である。このような形態では、IRトナーの二次元コード画像は、視認されることなく、赤外光の二次元コードの読み取り機のみで情報を読み取れ、カラートナーの二次元コード画像は、視認されるが、赤外光の二次元コードの読み取り機では情報を読み取ることができない。
【0140】
なお、本実施形態においては、視認困難画像用トナーとして、IRトナーを用いた例であるが、視認困難な画像を形成するために用いるトナーであれば、これに限られない。例えば、紫外線を当てるという顕在化処理を施すことで蛍光する透明性の蛍光トナーのように、特殊な処理(顕在化処理)を施すことで可視光領域の光を発するような特殊トナーであってもよい。また、単に透明性の高いクリアトナーであってもよい。
【0141】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、可視画像用トナー(例えばY、M、Cトナー)からなる可視画像と視認困難画像用トナー(例えばIRトナー)からなる視認困難画像(例えばIR画像)とを記録媒体(例えば用紙P)上に形成する画像形成装置(例えばプリンタ)において、像担持体(例えば中間転写ベルト12)又は記録媒体上の視認困難画像用トナーに対して前記可視画像用トナーを付着させることにより前記視認困難画像を可視化する動作の実行手段(例えば制御部30)を有することを特徴とするものである。
本態様においては、視認困難である視認困難画像の確認のために、確認対象とする視認困難画像を作像するにあたり、その視認困難画像の視認困難画像用トナーに対して可視画像用トナーを選択的に付着させる。本態様では、視認困難画像用トナーが存在する部分だけに可視画像用トナーが付着するので、視認困難画像が正確に可視化される。これにより、本来は視認困難な状態で形成される視認困難画像を、適切に視認することが可能となり、視認困難画像の確認が容易になる。
【0142】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記視認困難画像用トナーを用いて像担持体又は記録媒体上に視認困難画像用トナー像を作成する第一作像手段(例えばIRのプロセスユニット6IR)と、前記可視画像用トナーを用いて前記像担持体又は前記記録媒体上に可視画像用トナー像を作成する第二作像手段(例えばY、M、Cのプロセスユニット6Y,6M,6C)とを有し、前記実行手段は、前記第一作像手段により前記像担持体又は前記記録媒体上に形成した視認困難画像用トナー像の視認困難画像用トナーに対し、前記可視画像用トナーが選択的に付着するように、前記第二作像手段を制御する動作を実行することを特徴とするものである。
本態様によれば、第二作像手段を制御することで、第一作像手段により形成される視認困難画像用トナー像の視認困難画像用トナーに対し、より適切に可視画像用トナーを選択的に付着させることができる。
【0143】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記実行手段は、前記視認困難画像用トナーに対して、弱帯電状態又は逆帯電状態の可視画像用トナーが選択的に付着するように、前記第二作像手段を制御する動作を実行することを特徴とするものである。
本態様によれば、通常の画像形成動作時には不要もしくは邪魔になる弱帯電状態又は逆帯電状態の可視画像用トナーを用いて、視認困難画像の可視化を行うことができるので、正常な可視画像用トナーの消費を抑制することができる。
【0144】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記第二作像手段は、可視画像用トナーを正規帯電状態に帯電させるトナー帯電手段(例えば現像ローラ9aと供給ローラ9b)を含み、前記実行手段は、前記トナー帯電手段の帯電能力を低下させる制御を行う動作を実行することを特徴とするものである。
本態様によれば、トナー帯電手段の帯電能力が低下することで、弱帯電状態や逆帯電状態のトナー量を増やすことができるので、より多くの量の弱帯電状態や逆帯電状態のトナーを視認困難画像用トナーに付着させることができる。これにより、可視化された視認困難画像の視認性が高まり、確認精度を向上させることができる。
【0145】
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、前記第二作像手段は、帯電バイアスを印加して潜像担持体(例えば感光体7)の表面を一様に帯電させる帯電手段(例えば帯電装置8)と、該帯電手段により帯電された潜像担持体の表面の電位を画像情報に基づいて選択的に落として静電潜像を形成する潜像形成手段(例えば露光装置11)と、現像領域において電位が落とされた画像部に対して正常帯電状態の可視画像用トナーが選択的に付着するように現像バイアスを印加して現像処理を行う現像手段(例えば現像装置9)とを含み、前記実行手段は、現像領域において前記潜像形成手段によって電位が落とされていない地肌部に対する電位ポテンシャル(地肌ポテンシャル)が大きくなるように、前記帯電バイアス及び前記現像バイアスの少なくとも一方を制御する動作を実行することを特徴とするものである。
本態様によれば、地肌ポテンシャルが大きくなることで、現像手段側から弱帯電状態や逆帯電状態の可視画像用トナーを潜像担持体側へ引き寄せる静電力が大きくなり、より多くの弱帯電状態や逆帯電状態の可視画像用トナーを、潜像担持体に付着させることができる。よって、より多くの量の弱帯電状態や逆帯電状態のトナーを視認困難画像用トナーに付着させることができる。これにより、可視化された視認困難画像の視認性が高まり、確認精度を向上させることができる。
【0146】
[第6態様]
第6態様は、第3乃至第5のいずれかにおいて、前記第二作像手段は、転写バイアスを印加して前記可視画像用トナー像を前記像担持体又は前記記録媒体上に転写する転写手段(例えば一次転写装置13)を含み、前記実行手段は、前記像担持体又は前記記録媒体上の前記視認困難画像用トナーに対し、弱帯電状態又は逆帯電状態の可視画像用トナーが選択的に付着するように、前記転写バイアスを制御する動作を実行することを特徴とするものである。
本態様によれば、像担持体又は記録媒体上の視認困難画像用トナーに対し、弱帯電状態又は逆帯電状態の可視画像用トナーをより適切に付着させることができるようになる。これにより、可視化された視認困難画像の視認性が高まり、確認精度を向上させることができる。
【0147】
[第7態様]
第7態様は、第2乃至第6態様のいずれかにおいて、前記第二作像手段は、前記第一作像手段に対し、前記像担持体又は前記記録媒体の表面移動方向下流側に配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、第一作像手段によって視認困難画像用トナー像を形成した後すぐに、その視認困難画像用トナー像の視認困難画像用トナーに対して可視画像用トナーを付着させることができる。そのため、より迅速に、視認困難画像の確認を行うことが可能となる。
【0148】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記実行手段は、互いに異なる複数色の可視画像用トナー(例えばY、M、Cトナー)の中から前記視認困難画像用トナーに対して付着させる可視画像用トナー(例えばMトナー)を選択し、選択した可視画像用トナーを用いて前記動作を実行することを特徴とするものである。
本態様によれば、例えばより視認性が高まる色の可視画像用トナーを選択することで、視認困難画像の確認精度を向上させることができる。
【0149】
[第9態様]
第9態様は、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、前記視認困難画像用トナーは、結着樹脂及び近赤外光吸収材料を含み、ベタ画像の60度光沢度が30以上であり、かつ、ベタ画像の60度光沢度が前記可視画像用トナーのベタ画像の60度光沢度よりも10以上高いことを特徴とするものである。
本態様においては、赤外光吸収トナーによる視認困難画像の認識精度を安定して確保することができる。
【0150】
[第10態様]
第10態様は、可視画像用トナーからなる可視画像と視認困難画像用トナーからなる視認困難画像とを記録媒体上に形成する画像形成装置における視認困難画像の確認方法であって、像担持体又は記録媒体上の視認困難画像用トナーに対して前記可視画像用トナーを付着させる工程と、前記視認困難画像用トナーに前記可視画像用トナーを付着させた確認対象トナー像、又は、該確認対象トナー像を記録媒体上に形成した確認対象画像を確認する工程とを有することを特徴とする視認困難画像のものである。
本態様においては、視認困難である視認困難画像の確認のために、確認対象とする視認困難画像を作像するにあたり、その視認困難画像の視認困難画像用トナーに対して可視画像用トナーを選択的に付着させる。本態様では、視認困難画像用トナーが存在する部分だけに可視画像用トナーが付着するので、視認困難画像が正確に可視化される。これにより、本来は視認困難な状態で形成される視認困難画像を、適切に視認することが可能となり、視認困難画像の確認が容易になる。
【符号の説明】
【0151】
1:画像形成部
2:転写部
3:記録媒体供給部
4:定着部
5:記録媒体排出部
6:プロセスユニット
7:感光体
8:帯電装置
9:現像装置
9a:現像ローラ
9b:供給ローラ
11:露光装置
12:中間転写ベルト
13:一次転写装置
14:二次転写ローラ
18:給紙カセット
21:定着装置
22:定着ローラ
23:加圧ローラ
24:排紙ローラ
25:排紙トレイ
26:トナーカートリッジ
27:廃トナー収容容器
30:制御部
31:主制御部
32:記憶部
33:分解処理部
34:ガンマ変換部
36:階調変換部
40:画像形成制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0152】