(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】画像形成装置、媒体引渡制御方法及び媒体引渡制御装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/06 20060101AFI20231226BHJP
B65H 29/60 20060101ALI20231226BHJP
B65H 37/06 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B65H29/06
B65H29/60 B
B65H29/60 C
B65H37/06
(21)【出願番号】P 2020014319
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 明仁
(72)【発明者】
【氏名】藤田 剛行
(72)【発明者】
【氏名】門傳 智弘
(72)【発明者】
【氏名】久保 和弘
(72)【発明者】
【氏名】片平 静穂
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-219358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/06
B65H 29/60
B65H 37/06
B65H 45/20
B65H 5/12
B65H 29/70
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の媒体に画像を形成する画像形成部と、画像が形成された前記媒体に後処理を施す後処理部と、を備える画像形成装置であって、
前記画像形成部から前記後処理部への前記媒体の引渡状態を制御する媒体引渡制御部を備え、
前記媒体引渡制御部は、
前記画像形成部から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を保持する保持部と、前記保持部によって保持された前記媒体を巻き付けて前記画像形成部から搬出された前記媒体を滞留させる巻取りローラとを有する媒体滞留部と、
前記媒体滞留部に対し、前記画像形成部から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を案内する媒体案内部と、
前記媒体滞留部で滞留している前記媒体の搬送方向後端部分から当該媒体を搬出する媒体搬出部と、
を備え
、前記媒体案内部は、前記媒体滞留部における異なる複数の所定の位置のいずれかに前記搬送方向先端部分を案内することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記媒体引渡制御部は、前記媒体滞留部への前記搬送方向先端部分の到達を検知する媒体到達検知部を備え、
前記媒体到達検知部は、前記所定の位置に対応して複数設けられる、
請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記媒体滞留部は、前記搬送方向先端部分から前記媒体を巻き取り、当該媒体を前記搬送方向後端部分から剥離する媒体巻き取りローラである、
請求項1
または2のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記媒体巻き取りローラは、前記搬送方向先端部分の検知位置によって回転方向が制御される、
請求項
3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記媒体滞留部は、
当該媒体滞留部に到達した前記搬送方向先端部分を保持する媒体先端保持部と、
前記媒体が当該媒体滞留部に滞留している滞留状態と当該媒体が滞留していない非滞留状態のいずれかを検知する媒体滞留検知部と、
を備える請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記媒体先端保持部は、前記搬送方向先端部分を挟持して保持するクランプ具であり、
前記クランプ具は、前記媒体案内部における前記搬送方向先端部分の案内方向に基づいて前記搬送方向先端部分を挟持可能状態にし、当該クランプ具に前記搬送方向先端部分が到達したときには当該搬送方向先端部分を挟持状態にし、前記媒体滞留検知部の検知結果が滞留から非滞留に変化したときに前記搬送方向先端部分の挟持を開放する、
請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
シート状の媒体に画像を形成する画像形成部と、画像が形成された前記媒体に後処理を施す後処理部と、を備える画像形成装置であって、
前記画像形成部から前記後処理部への前記媒体の引渡状態を制御する媒体引渡制御部を備え、
前記媒体引渡制御部は、
前記画像形成部から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を保持する保持部と、前記保持部によって保持された前記媒体を巻き付けて前記画像形成部から搬出された前記媒体を滞留させる巻取りローラとを有する媒体滞留部と、
前記媒体滞留部に対し、前記画像形成部から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を案内する媒体案内部と、
前記媒体滞留部で滞留している前記媒体の搬送方向後端部分から当該媒体を搬出する媒体搬出部と、
を備え、
前記媒体案内部は、前記媒体滞留部を介さずに前記搬送方向先端部分を前記媒体搬出部に案内することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記媒体搬出部は、前記媒体を前記媒体滞留部から前記後処理部に搬出する搬出ベルトである、
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬出ベルトは、前記媒体滞留部から前記後処理部に向けて下り傾斜面を形成する、
請求項
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記媒体引渡制御部は
前記媒体滞留部と、前記媒体案内部と、前記媒体搬出部と、を複数備え、
一の前記媒体案内部は、対応する前記媒体搬出部とは異なる他の媒体搬出部に対しても前記搬送方向先端部分を案内する、
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記媒体滞留部は、滞留させている前記媒体を加熱する加熱部を備える、
請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記後処理部は、前記媒体を折る折り処理部であり、
前記折り処理部は、前記媒体引渡制御部からの前記媒体の案内方向に基づいて、前記媒体の折り幅を規定するデータの参照順を変更し、当該データに基づく折り処理を行う、
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
シート状の媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部から搬出された前記媒体を滞留させる巻取りローラとを有する媒体滞留部と、画像が形成された前記媒体に後処理を施す後処理部とを備える画像形成装置における、前記画像形成部から前記後処理部への前記媒体の引渡状態を制御する媒体引渡制御方法であって、
前記画像形成部から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を前記媒体滞留部における異なる複数の所定の位置のいずれかに案内し、
前記画像形成部から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を保持し、
保持された前記媒体を巻き付けて前記画像形成部から搬出された前記媒体を滞留させ、
滞留された前記媒体を搬送方向後端部分から搬出する、
ことを特徴とする媒体引渡制御方法。
【請求項14】
シート状の媒体に画像を形成する画像形成装置から画像が形成された前記媒体に後処理を施す後処理装置に対する当該媒体の引渡状態を制御する媒体引渡制御装置であって、
前記画像形成装置から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を保持する保持部と、前記保持部によって保持された前記媒体を巻き付けて搬出された前記媒体を滞留させる巻取りローラとを有する媒体滞留部と、
前記媒体滞留部に対し、前記画像形成装置から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を案内する媒体案内部と、
前記媒体滞留部で滞留している前記媒体の搬送方向後端部分から当該媒体を排出する媒体搬出部と、
を備え、
前記媒体案内部は、前記媒体滞留部における異なる複数の所定の位置のいずれかに前記搬送方向先端部分を案内することを特徴とする媒体引渡制御装置。
【請求項15】
前記媒体案内部は、前記媒体滞留部における異なる複数の所定の位置のいずれかに前記搬送方向先端部分を案内することに代えて、前記媒体滞留部を介さずに前記搬送方向先端部分を前記媒体搬出部に案内することを特徴とする請求項14記載の媒体引渡制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、媒体引渡制御方法及び媒体引渡制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の長尺媒体に画像を形成する画像形成部と、画像が形成された媒体に対し特定の後処理を行う後処理部と、を備える画像形成装置が知られている。画像形成部から後処理部に媒体を引き渡すとき、画像形成部における媒体の移動速度(線速)と、後処理部における媒体の移動速度を同期させ、かつ、一定にする必要がある。
【0003】
画像形成部と後処理部での媒体の移動速度に差異があると、媒体が引っ張られて損傷したり、媒体の移動機構に障害を与えたり、などの悪影響を生じさせる懸念がある。また、移動速度の差異によって媒体が撓んで媒体詰まり(ジャム)などの不具合を発生させる要因にもなりうる。
【0004】
上記の課題に対応するために、例えば、画像形成装置本体(画像形成部)と折り装置(後処理部)において、媒体を一時的に溜めておくシート滞留手段を備える画像形成装置が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている従来の画像形成装置では、滞留できる媒体の長さに上限がある。したがって、滞留可能な媒体長さを拡張する増やす場合は、シート滞留手段のレイアウトを大きくする必要があり、装置全体が大型になる。また、媒体の滞留量にも上限があるので、滞留量を増やすには装置全体を大型にする必要がある。なお、シート滞留手段は無制限に拡張できないなので、従来の装置では、画像形成部と後処理部と間で媒体の移動速度を同期させる制御機構が必要となる。画像形成部と後処理部の間での情報通信を含む動作制御が複雑化する。
【0006】
以上のように、従来の画像形成装置では、後処理のために媒体を引き渡すスペースを含む省スペース化を図ることや、媒体の引き渡し制御を簡易にし、後処理の安定性と生産性を向上させることにおいて課題を有する。
【0007】
本発明は、媒体の引き渡し制御を簡易にし、後処理の安定性と生産性を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、シート状の媒体に画像を形成する画像形成部と、画像が形成された前記媒体に後処理を施す後処理部と、を備える画像形成装置であって、前記画像形成部から前記後処理部への前記媒体の引渡状態を制御する媒体引渡制御部を備え、前記媒体引渡制御部は、前記画像形成部から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を保持する保持部と、前記保持部によって保持された前記媒体を巻き付けて前記画像形成部から搬出された前記媒体を滞留させる巻取りローラとを有する媒体滞留部と、前記媒体滞留部に対し、前記画像形成部から搬出された前記媒体の搬送方向先端部分を案内する媒体案内部と、前記媒体滞留部で滞留している前記媒体の搬送方向後端部分から当該媒体を搬出する媒体搬出部と、を備え、前記媒体案内部は、前記媒体滞留部における異なる複数の所定の位置のいずれかに前記搬送方向先端部分を案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、媒体の引き渡し制御を簡易にし、後処理の安定性と生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の第一実施形態の構成と動作例を示す図。
【
図2】上記第一実施形態に係る構成における動作の一例を示す図。
【
図3】上記第一実施形態に係る構成における別の動作の一例を示す図。
【
図4】上記第一実施形態に係る画像形成装置が備える加熱部の構成を示す図。
【
図5】本発明に係る画像形成装置の第二実施形態の構成と動作例を示す図。
【
図6】本発明に係る媒体引渡制御方法の第一実施形態を説明するフローチャート。
【
図7】本発明に係る媒体引渡制御方法の第一実施形態を説明するフローチャート。
【
図8】本発明に係る媒体引渡制御方法の第一実施形態を説明するフローチャート。
【
図9】本発明に係る媒体引渡制御方法の第一実施形態を説明するフローチャート。
【
図10】本発明に係る媒体引渡制御方法の第二実施形態を説明するフローチャート。
【
図11】本発明に係る画像形成装置が備える後処理部における処理の例を説明するフローチャート。
【
図12】本発明に係る画像形成装置が備える後処理部における処理の例を説明する図。
【
図13】本発明に係る画像形成装置が備える制御部の構成を示すハードウェア構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本願に係る発明の実施形態について説明する。
図1、
図2及び
図3は、本実施形態に係る画像形成装置1000の構成図である。各図における画像形成装置1000は、媒体滞留制御動作を規定するための動作モードの違いに対応する各構成物の位置や動作状態を例示している。
【0012】
図1から
図3に示すように本実施形態に係る画像形成装置1000は、画像形成部200と後処理部300の間に、媒体引渡制御部100を備える。媒体引渡制御部100は、画像形成部200から搬出された媒体である「シートS」を後処理部300に引き渡す間において、シートSの引渡状態を制御する媒体引渡制御部100を備える。ここで「引渡状態」とは、画像形成部200からシートSが搬出される状態(シートSの向き、シートSの搬出タイミング、搬送速度を含む)と、後処理部300にシートSが搬入される状態(シートSの向き、シートSの搬入タイミング、搬送速度を含む)を含む。具体例としては、画像形成部200から後処理部300に対して直接的に搬送するのでなく、シートSを一旦巻き取る機構を用いて画像形成部200からのシートSを一旦巻き取る。その後、巻き取られたシートSを後処理部300に対して搬送する。このように、本実施形態に係る媒体引渡制御部100では、画像形成部200に係る引渡状態と、後処理部300に係る引渡状態の同期をとる必要がない。したがって、媒体引渡制御部100は、シートSを画像形成部200から後処理部300に移動させるときの搬送速度、搬送タイミング、搬送状態(向き)を、画像形成装置1000の利用者が任意に設定することができる。
【0013】
媒体引渡制御部100が備える構成と、その構成によるシートSの移動速度や移動タイミングの制御方法は、後述するように簡素なものとして実現可能である。したがって、画像形成装置1000全体の省スペース化を図りつつ、後処理部300への媒体の引渡し動作の安定性を向上させ、画像形成処理の生産性を向上させることができる。
【0014】
なお、画像形成部200の内部に媒体引渡制御部100を配置することで、画像形成装置1000全体のさらなる省スペース化を図ることができる。また、後処理部300の内部に媒体引渡制御部100を配置することでも、同様に、画像形成装置1000全体のさらなる省スペース化を図ることができる。
【0015】
なお、媒体引渡制御部100,画像形成部200,後処理部300を、それぞれ独立した装置として構成し、各装置の間を接続して情報通信を行う形態にした画像形成システムを構成することもできる。この場合、後処理部300は独立した後処理装置に相当する。
【0016】
[画像形成装置の第一実施形態]
図1から
図3に示すように本実施形態に係る画像形成装置1000は、シート状の長尺記録媒体であるシートSに対し画像形成部200において画像を形成し、このシートSを媒体引渡制御部100に搬出する。画像形成部200における画像形成の方式は、シートSに対して液体インクを付着させて画像を形成する「インクジェット方式」や、感光体に形成した画像をシートSに転写して画像を形成する「電子写真方式」などを採用可能である。したがって、本実施形態に係る媒体引渡制御部100は、画像形成部200における画像形成方式に限定されること無く適用可能である。
【0017】
媒体引渡制御部100において滞留させた、又は滞留させずに画像形成部200から直接的に搬送されたシートSに対して、所定の後処理を施す後処理部300は、例えば、シートSに対して設定された折り処理を施す折り装置である。なお、本実施形態に係る媒体引渡制御部100は、後処理部300における後処理の方法に限定されること無く適用可能である。
【0018】
媒体引渡制御部100は、方向制御部110と、巻取りローラ120と、媒体到達検知部130と、媒体搬出部140と、制御部150と、を備えている。
【0019】
媒体引渡制御部100を、画像形成部200や後処理部300から独立した装置として構成することで、本発明に係る媒体引渡制御装置の実施形態に相当する。
【0020】
[方向制御部110]
方向制御部110は、画像形成部200から搬出されたシートSの移動(搬送)方向を制御する媒体案内部である。方向制御部110は、シートSの先端部Stの移動方向を制御するための方向切替部111と、方向切替部111を動作させる軸112と、を有している。方向切替部111は軸112を回転中心として所定の角度範囲で回動するように構成された回転片である。したがって、方向切替部111は、所定の角度範囲において、任意に位置を切り替えて、シートSを案内する方向を切り替えることができる。言い換えると方向切替部111は、シートSの搬送方向先端部分である先端部Stを受けて、その先端部Stが移動する方向(案内方向)を変更し、これによって先端部Stの移動先が所定の位置(所定の方向)になるように変更可能な構造を備えている。例えば、
図1に例示するように、方向切替部111は、三つの異なる位置でシートSの移動方向(先端部Stの案内方向)を変更することができ、先端部Stの移動先を異なる複数の所定の位置のいずれかにできる。
【0021】
図1に例示するように、方向切替部111が第一位置P1にあるときは、シートSの先端部Stは巻取りローラ120の上方に移動する。
図2に例示するように、方向切替部111が第二位置P2にあるときは、シートSの先端部Stが巻取りローラ120の側方に移動する。
図3に例示するように、方向切替部111が第三位置P3にあるときは、シートSの先端部Stが巻取りローラ120の側方を通過し、巻取りローラ120に巻き取られること無く搬出ベルト141に直接的に移動する。
【0022】
なお、方向切替部111は第一位置P1、第二位置P2、第三位置P3のいずれかに切り替えられる場合でも、巻取りローラ120等の他の構成に衝突しないように配置されている。この方向切替部111の各位置は、画像形成装置1000の動作モードに対応して変化する。画像形成装置1000の動作モードは、画像形成装置1000の使用者の設定によるものである。
【0023】
[巻取りローラ120]
巻取りローラ120は、シートSを巻き取ることで一時的に滞留させる媒体滞留部を構成し、シートSを一時的に巻き取る媒体巻き取りローラである。巻取りローラ120は、第一回転方向aまたは第二回転方向bに回転できるように構成されたローラ部材からなる。なお、以下の説明において、第一回転方向aを「正回転」とし、第二回転方向bを「逆回転」と表記する。
【0024】
巻取りローラ120は、外周面にシート挟持部121を有している。シート挟持部121は、案内されてきたシートSの先端部Stを挟持する保持部に相当する。巻取りローラ120は、動作モードに応じて、シート挟持部121の位置を変更する。また、後述するように、動作モードに応じて方向切替部111の位置は異なり、また、シートSの先端部Stを挟持した後のシート挟持部121の回転方向も動作モードに応じて異なる。したがって、巻取りローラ120は、シートSの先端部Stを検知する検知位置に基づいて回転方向が制御される。すなわち、後述する媒体到達検知部130のいずれかがシートSの先端部Stを検知するかによって、巻取りローラ120の回転方向が制御される。
【0025】
例えば、
図1に例示するように、動作モードによって方向切替部111の位置が第一位置P1になる場合、シート挟持部121の位置が第一回転位置R1になるように回転して停止し挟持可能状態にする。また、
図2に例示するように動作モードによって方向切替部111の位置が第二位置P2になる場合、シート挟持部121の位置が第二回転位置R2になるように回転して停止して挟持可能状態にする。なお、
図3に例示するように、動作モードによって方向切替部111の位置が第三位置P3になる場合は、シート挟持部121の位置はいずれでもよい。
【0026】
シート挟持部121は、巻取りローラ120の周面に先端部Stを挟持して、巻取りローラ120の回転によってシートSが巻き取られる状態にするクランプ板121aを有する。クランプ板121aは、巻取りローラ120の回転方向と同様に、周面に設けられた回転軸を中心として、正回転に対応する挟持(
図1)と、逆回転に対応する挟持(
図2)のいずれにも対応可能なクランプ具である。クランプ板121aは、媒体先端保持部に相当する。
【0027】
例えば、
図1に例示するように、方向切替部111が第一位置P1にある場合、シート挟持部121は第一回転位置R1にある。この場合において、正回転と同じ方向にクランプ板121aは回動して挟持可能状態にし、先端部Stを挟持状態にするように動作する。また、
図2に例示するように、方向切替部111が第二位置P2にある場合、シート挟持部121は第二回転位置R2にある。この場合において、逆回転と同じ方向にクランプ板121aは回動して挟持可能状態にし、先端部Stを挟持状態にするように動作する。
【0028】
クランプ板121aは、巻取りローラ120に巻き取られた(滞留した)シートSが後処理部300に向けて排出されて、後端部Srが巻取りローラ120から剥離した場合、先端部Stの挟持を開放するように動作する。
【0029】
また、巻取りローラ120は外周面にシートSが巻かれた状態であるか否かを検知する媒体滞留検知部である媒体有無検知センサ122を有している。媒体有無検知センサ122は、シートSの搬送方向後端部分である後端部Srが巻かれた状態(滞留状態)であるか否か(非滞留状態)を検知するセンサによって構成される。媒体有無検知センサ122は、巻取りローラ120の周面において、シート挟持部121が配置されている位置から経方向の反対側に配置されている。媒体有無検知センサ122は、巻取りローラ120にシートSが巻きつけられているときに出力をオフにするセンサであって、シートSが巻取りローラ120から剥離した場合に出力をオンにする。したがって、媒体有無検知センサ122の出力(検知結果)がオフ(滞留)からオン(非滞留)に変わったタイミングに応じてクランプ板121aの回動タイミングを制御することで、巻取りローラ120に一旦巻き取られて滞留したシートSを所定のタイミングで後処理部300に搬出できる。
【0030】
なお、
図4に例示するように巻取りローラ120の内部に、加熱部であるヒータ123を備えてもよい。画像形成部200から搬送されてきたシートSのカールが強い場合、滞留させている間にカールを除去する処理を行う方が効果的である。画像形成装置1000の使用者がシートSのカールを除去する機能を動作させる設定をした場合、ヒータ123は動作をして巻取りローラ120の周面を加熱する。
【0031】
この場合、後述する制御部150が備える記憶手段に記録されているデータであって、処理対象のシートSの種類に基づいて特定されるシートSの厚みや材質によって、ヒータ123の温度を制御する。そのため、巻取りローラ120の表面温度や、環境温度や環境湿度を検知する温湿度センサ124が巻取りローラ120の近傍に配置される。
【0032】
温湿度センサ124が検出する巻取りローラ120の周面の温度や、環境温度・湿度と、制御部150に記憶されているシートSの仕様に基づいて、シートSのカール除去に適した温度になるようにヒータ123の温度が制御される。この温度制御によって、シートSに対するカールの逆方向のカール(逆カール)が付きすぎることを抑制できる。また、また、ヒータ123の熱によって、シートSに付着しているインクの乾燥度合いも高めることができる。
【0033】
[媒体到達検知部130]
媒体到達検知部130は、画像形成部200から搬出されて来たシートSの搬送方向先端部分である先端部Stを検知する。媒体到達検知部130は、先端部Stが特定の位置に到達したか否かを検知するセンサである。媒体到達検知部130は、方向切替部111の設定による位置に対応してシートSが所定の位置に到達していることを検知する。媒体到達検知部130は、シートSの先端部Stが特定の位置に到達するまでは、出力をオンにするように構成されている。そして、シートSの先端部Stが特定の位置に到達して、シートSが検知範囲にある間は出力をオフにするように構成されている。したがって、媒体到達検知部130の出力がオフのときは、シートSが方向制御部110によって特定の位置(方向)に搬送されている状態を知らせることとなる。
【0034】
媒体到達検知部130は、方向切替部111の位置(第一から第三のいずれかの位置)に対応するように、第一媒体到達検知センサ131と、第二媒体到達検知センサ132と、第三媒体到達検知センサ133と、を有する。
【0035】
第一媒体到達検知センサ131は、
図1に示すように、方向切替部111が第一位置P1になる動作モードにおいて、先端部Stが巻取りローラ120の第一回転位置R1へ向かうように移動していることを検知するセンサである。
【0036】
第二媒体到達検知センサ132は、
図2に示すように、方向切替部111が第二位置P2になる動作モードにおいて、先端部Stが巻取りローラ120の第二回転位置R2へ向かうように移動していることを検知するセンサである。
【0037】
第三媒体到達検知センサ133は、
図3に示すように、方向切替部111が第三位置P3になる動作モードにおいて、先端部Stが巻取りローラ120の側方を通過して媒体搬出部140へ向かうように移動していることを検知するセンサである。
【0038】
[媒体搬出部140]
媒体搬出部140は、巻取りローラ120から後処理部300に対してシートSを搬出させる。媒体搬出部140は、シートSの先端部Stを搬出口に誘導するための搬出ベルト141と、搬出ベルト141を回動させるベルトローラ142と、を備えている。
【0039】
搬出ベルト141は、無端状ベルトであって、複数のベルトローラ142に掛け回されている。搬出ベルト141はベルトローラ142によって点線矢印方向に回動する。搬出ベルト141は、巻取りローラ120側から後処理部300の搬入口に向けて下り傾斜面を形成している。この搬出ベルト141の表面をシートSが移動することで後処理部300に引き渡される。
【0040】
図1等において、巻取りローラ120に一旦巻き取られてから、後処理部300に搬出されるシートSを「シートS’」として区別して表している。
【0041】
[制御部150]
制御部150は、方向制御部110と、巻取りローラ120と、媒体到達検知部130と、媒体搬出部140の動作を制御する。
【0042】
ここで、制御部150の構成について
図13を用いて説明する。制御部150は一般的な情報処理装置と同様の構成を含む。本実施形態に係る画像形成装置1000が備える制御部150は、CPU(Central Processing Unit)151、RAM(Random Access Memory)152、ROM(Read Only Memory)153、HDD(Hard Disk Drive)154及びI/F155がバス159を介して接続されている。また、I/F155には表示部156、操作部157及び専用デバイス158が接続されている。
【0043】
CPU151は演算手段であり、画像形成装置1000全体の動作を制御する。RAM152は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU151が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM153は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD154は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や、媒体引渡制御プログラムや後処理制御プログラムなどの各種の制御プログラム、アプリケーションプログラム等が格納される。
【0044】
I/F155は、バス159と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。表示部156は、利用者が画像形成装置1000の状態や設定している動作モードを確認するための視覚的ユーザインタフェースであり、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によって実現される。操作部157は、利用者が画像形成装置1000の動作モードの設定を入力するためのユーザインタフェースである。
【0045】
専用デバイス158は、画像形成装置1000において専用の動作をする機能を実現するためのハードウェアであって、例えば画像形成部200の画像形成処理機能を実現する構成や、後処理部300の折処理機能を実現する構成を含む。また、専用デバイス158には、媒体引渡制御部100が備える動作や機能を実現する構成も含む。例えば、方向制御部110、巻取りローラ120、媒体到達検知部130、媒体搬出部140は専用デバイス158に含まれるものとする。
【0046】
制御部150は、専用デバイス158に含まれる各ハードウェア構成を用いて、ROM153やHDD154などに格納されたプログラムをRAM152に読み出してCPU151によって実行されることで、所定の機能を実現するソフトウェア制御部を構成する。
【0047】
[画像形成装置の第二実施形態]
図5に示すように、第一実施形態において説明した画像形成装置1000が備える媒体引渡制御部100に相当するものを、複数備える画像形成装置1000aを、本発明の第二実施形態とすることもできる。
【0048】
画像形成装置1000aの場合は、巻取りローラ120と同様の構成である第一巻取りローラ120aと第二巻取りローラ120bを備える。また、第一巻取りローラ120aと第二巻取りローラ120bに対応して、方向制御部110に対応する第一方向制御部110aと第二方向制御部110b、媒体到達検知部130に対応する第一媒体到達検知部130aと第二媒体到達検知部130b、媒体搬出部140に対応する第一媒体搬出部140aと第二媒体搬出部140b、を備える。また、画像形成装置1000aは、上記の各構成を制御する制御部150aを備える。
【0049】
第一装置100aと第二装置100bが備える各部の構成は、第一実施形態として説明したものと同等であるので詳細な説明を省略する。
【0050】
[媒体引渡制御方法の実施形態]
次に、画像形成装置1000において実行可能な媒体引渡制御方法にいついて、
図6から
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
まず、画像形成装置1000において、引渡制御処理が開始された場合、制御部150において滞留機能(媒体の引き渡しタイミングなどの制御を行う機能)を動作させるように設定されているか否かを判定する(S601)。滞留機能が設定されている場合(S601:YES)、シートSのカールを除去する機能を動作させるように設定されているか否かを制御部150において判定する(S602)。
【0052】
カール除去機能が設定されている場合(S602:YES)、カール除去滞留制御処理が実行される(S603)。カール除去機能を動作させるように設定されていない場合(S602:NO)、通常滞留制御処理が実行される(S604)。また、滞留機能を動作させるように設定されていない場合(S601:NO)、無滞留搬送制御処理が実行される(S605)。
【0053】
[通常滞留制御処理]
次に、通常滞留制御処理の詳細について
図7を用いて説明する。まず、第一媒体到達検知センサ131において、シートSの先端部Stの監視を開始する(S701)。第一媒体到達検知センサ131からの出力がオフになれば先端部Stが第一媒体到達検知センサ131の検知範囲に到達したことになる。
【0054】
続いて、方向制御部110を動作させて方向切替部111の位置を第一位置P1に切り替える(S702)。
【0055】
続いて、巻取りローラ120を回動させてシート挟持部121の位置を第一回転位置R1に移動させる(S703)。
【0056】
続いて、搬出ベルト141の正転方向(
図1における点線矢印方向)への回動を開始させる(S704)。以上によって、画像形成部200からシートSが搬出されたときに、巻取りローラ120に巻取可能な状態になる。
【0057】
続いて、第一媒体到達検知センサ131の出力がオフになるか否か、すなわち、第一媒体到達検知センサ131が先端部Stを検知した否かを判定する(S705)。先端部Stが検知されるまで(S705:NO)、待ち状態になる。
【0058】
先端部Stが検知された場合(S705:YES)、先端部Stがクランプ板121aに挟持される位置に至るタイミングでクランプ板121aを回動させて、先端部Stを挟持する(S706)。
【0059】
続いて、先端部Stがクランプ板121aによって挟持された後に、巻取りローラ120を正回転(回転方向1aへ回転)させる(S707)。第一媒体到達検知センサ131がシートSを検知しなくなるまで(第一媒体到達検知センサ131の出力がオンになるまで)、巻取りローラ120を正回転させる(S708:NO)。巻取りローラ120の回転速度は、画像形成部200の線速に合わせるように制御される。
【0060】
第一媒体到達検知センサ131がシートSを検知しなくなった場合(第一媒体到達検知センサ131の出力がオフになった場合)、巻取りローラ120を逆回転(回転方向1bへ回転)させる(S709)。この処理によって、巻取りローラ120に巻き取られていたシートSは、後端部Sr’から媒体搬出部140を介して後処理部300へ搬送される。
【0061】
巻取ローラの逆回転を開始した後、媒体有無検知センサ122の出力を監視する処理を開始する(S710)。媒体有無検知センサ122は巻取りローラ120にシートSが巻き取られている状態であるか否かを検知し、シートSが巻き取られた状態が継続している場合は、出力をオフにする(S710:NO)。
【0062】
なお、画像形成装置1000aのように媒体引渡制御部100を複数備えているならば、画像形成部200から次のシートSが搬入されるまでは、巻取りローラ120の逆回転は継続する(S715:NO)。画像形成部200から次のシートSが搬入された場合(S715:YES)は、巻取りローラ120の逆回転は継続したままで連続滞留制御処理(S716)を実行する。媒体引渡制御部100を複数備えていないならば、S715とS716の処理は行われず、媒体有無検知センサ122がオフになるまで、処理をループする(S710:NO)。
【0063】
巻取りローラ120を逆回転させることで、媒体有無検知センサ122の出力がオフになった場合(S710:YES)、クランプ板121aを回動させてシートSの先端部Stを開放する(S711)。その後、巻取りローラ120の回転(逆回転)を停止する(S712)。
【0064】
巻取りローラ120に一旦巻き取られて滞留したシートS’が媒体引渡制御部100から搬出されるまで搬出ベルト141は回動を継続する(S713:NO)。シートS’の先端部St’が搬出された場合(S714:YES)、搬出ベルト141を停止させる(S714)。
【0065】
以上の一連の処理は、制御部150のハードウェア資源と制御部150が備える記憶手段に格納されているソフトウェアの協働によって実行される。
【0066】
以上説明した媒体滞留制御方法によれば、画像形成部200において画像が形成されたシートSに対して、後処理部300において後処理を施す場合に、画像形成部200と後処理部300のシートSの搬送速度を非同期にすることができる。また、画像形成部200の動作タイミングと、後処理部300の動作タイミングを非同期にでき、シートSの搬送速度を一律にしなくても、任意のタイミングで画像形成処理と、後処理を実行することができる。
【0067】
したがって、本実施形態に係る媒体滞留制御方法によれば、後処理部300への媒体の引渡し動作の安定性を向上させ、画像形成処理の生産性を向上させることができる。
【0068】
[カール除去滞留制御処理]
次に、カール除去滞留制御処理の詳細について
図8を用いて説明する。まず、第二媒体到達検知センサ132において、シートSの先端部Stの監視を開始する(S801)。第二媒体到達検知センサ132からの出力がオフになれば先端部Stが第二媒体到達検知センサ132の検知範囲に到達したことになる。
【0069】
続いて、巻取りローラ120に内蔵されているヒータ123が動作しているか否かを判定する(S802)。ヒータ123が動作していなければ(S802:NO)、ヒータ123を動作させた後に(S803)、方向制御部110を動作させて方向切替部111の位置を第二位置P2に切り替える(S804)。ヒータ123が動作していれば(S802:YES)、方向制御部110を動作させて方向切替部111の位置を第二位置P2に切り替える(S804)。
【0070】
続いて、巻取りローラ120を回動させてシート挟持部121の位置を第二回転位置R2に移動させ(S805)、搬出ベルト141の正転方向(
図1における点線矢印方向)への回動を開始させる(S806)。その後、第二媒体到達検知センサ132の出力がオフになるか否かを判定する(S807)。第二媒体到達検知センサ132が先端部Stを検知するまで(S807:NO)、待ち状態になる。
【0071】
先端部Stが検知された場合(S807:YES)、クランプ板121aを回動させて、先端部Stを挟持し(S808)、巻取りローラ120を逆回転(回転方向1bへ回転)させる(S809)。第二媒体到達検知センサ132がシートSを検知しなくなるまで、巻取りローラ120を逆回転させる(S810:NO)。巻取りローラ120の回転速度は、画像形成部200の線速に合わせるように制御される。
【0072】
第一媒体到達検知センサ131がシートSを検知しなくなった場合、巻取りローラ120を正回転(回転方向1aへ回転)させる(S711)。この処理によって、巻取りローラ120に巻き取られていたシートSは、加熱されてカールが除去された状態で、後端部Sr’から媒体搬出部140を介して後処理部300へ搬送される。
【0073】
巻取ローラの正回転を開始した後、媒体有無検知センサ122の出力を監視する処理を開始する(S812)。シートSが巻き取られた状態が継続している場合は(S710:NO)、巻取りローラ120の正回転は継続する。
【0074】
通常滞留制御処理と同様に、媒体引渡制御部100を複数備えている装置であれば、画像形成部200から次のシートSが搬入されるまでは、巻取りローラ120の正回転は継続する(S817:NO)。そして、画像形成部200から次のシートSが搬入された場合(S817:YES)は、巻取りローラ120の逆回転は継続したままで連続滞留制御処理(S818)を実行する。媒体引渡制御部100を複数備えていないならば、S817とS818の処理は行われず、媒体有無検知センサ122がオフになるまで、処理をループする(S812:NO)。
【0075】
巻取りローラ120を正回転させることで、媒体有無検知センサ122の出力がオフになった場合(S812:YES)、クランプ板121aを回動させてシートSの先端部Stを開放し(S813)。巻取りローラ120の回転(正回転)を停止する(S814)。
【0076】
巻取りローラ120に一旦巻き取られて滞留したシートS’が媒体引渡制御部100から搬出されるまで搬出ベルト141は回動を継続する(S815:NO)。シートS’の先端部St’が搬出された場合(S816:YES)、搬出ベルト141を停止させる(S816)。
【0077】
以上の一連の処理は、制御部150のハードウェア資源と制御部150が備える記憶手段に格納されているソフトウェアの協働によって実行される。
【0078】
以上説明した媒体滞留制御方法によれば、画像形成部200において画像が形成されたシートSに対して、後処理部300において後処理を施す場合に、シートSのカールを除去した状態で行うことができる。また、画像形成部200と後処理部300のシートSの搬送速度を非同期にすることができる。また、画像形成部200の動作タイミングと、後処理部300の動作タイミングを非同期にでき、シートSの搬送速度を一律にしなくても、任意のタイミングで画像形成処理と、後処理を実行することができる。
【0079】
したがって、本実施形態に係る媒体滞留制御方法によれば、後処理部300への媒体の引渡し動作の安定性を向上させ、画像形成処理の生産性を向上させることができる。
【0080】
[無滞留搬送制御処理]
次に、無滞留搬送制御処理の詳細について
図9を用いて説明する。まず、
図3で例示したように、第三媒体到達検知センサ133において、シートSの先端部Stの監視を開始する(S901)。続いて、方向制御部110を動作させて方向切替部111の位置を第三位置P3に切り替えて(S902)、第三媒体到達検知センサ133の出力がオフになるか否か、すなわち、第三媒体到達検知センサ133が先端部Stを検知した否かを判定する(S903)。先端部Stが検知されるまで(S903:NO)、待ち状態になる。
【0081】
シートSが第三媒体到達検知センサ133において検知された場合(S903:YES)、搬出ベルト141の正転方向(
図1における点線矢印方向)への回動を開始させる(S904)。以上によって、画像形成部200から搬出されたシートSが滞留することなく後処理部300に搬送可能な態になる。
【0082】
第三媒体到達検知センサ133がシートSを検知しなくなり(S905:YES)、シートSの後端部Srが搬出された場合(S906:YES)、搬出ベルト141を停止させる(S907)。
【0083】
以上の一連の処理は、制御部150のハードウェア資源と制御部150が備える記憶手段に格納されているソフトウェアの協働によって実行される。
【0084】
以上説明した媒体滞留制御方法によれば、画像形成装置1000の使用者が、シートSの滞留制御を不要と判断した場合や、シートSが長尺物ではなく、いわゆるカットシートの場合は、滞留制御をすることなく、シートSの搬送をすることができる。
【0085】
[連続滞留制御処理]
次に、連続滞留制御処理の詳細について
図10を用いて説明する。
図5に例示したように、複数の媒体引渡制御部100(便宜上、一方を第一装置100aとし、他方を第二装置100bとする)を備えている場合もある。この場合において、いずれかの媒体引渡制御部100が動作中に、画像形成部200から次のシートSが搬入されたとき(S1001:YES)、第一装置100aが動作中であるか否かを判定する(S1002)。第一装置100aが動作中であれば(S1002:YES)、第一方向制御部110aを動作させて第一方向切替部111aの位置を第四位置P4に切り替える(S1003)。この切替処理によって画像形成部200から搬入されてきたシートSの滞留制御を第二装置100bによって実行しつつ、第一装置100aによる滞留制御を平行することができる(S1004)。なお、第一装置100aが動作中でなければ(S1002:NO)、第一装置100aによる滞留制御を実行する(S1005)。
【0086】
なお、S1004とS1005における滞留制御は、いずれも、すでに説明した媒体滞留制御方法と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0087】
以上説明した連続滞留制御処理によれば、画像形成部200から媒体引渡制御部100に対してシートSが連続して搬入された場合であっても、使用者の任意の設定に基づいて、シートSの滞留制御を行うことができる。
【0088】
[後処理部300に係る実施形態]
次に、本実施形態に係る画像形成装置1000が備える後処理部300において実行可能な後処理について説明する。
図11は、本実施形態に係る制御部150が制御する後処理部300における後処理の流れを例示するフローチャートである。
【0089】
すでに説明したとおり、画像形成装置1000は、画像形成部200から搬出されたシートSに対して滞留制御処理を実行したときは、後処理部300に対して後端部Sr’から搬入される。一方、無滞留搬送制御を実行したときは、後処理部に対して先端部Stから搬入される。
【0090】
従来から知られている後処理の一種に、シートSを搬送方向に対して「山折り」と「谷折り」を交互に繰り返す「ジャバラ折り」がある。ジャバラ折りを実行する場合、制御部150の記憶媒体に記憶されている「折り幅テーブル」に格納されている「折り幅データ」に基づいて、シートSの折り位置と折り方向(山折り、谷折り)が設定される。なお、通常の折り幅テーブルは、折り幅データをシートSの搬送方向先端部(先端部St)側から順番に格納している。
【0091】
したがって、媒体引渡制御部100において無滞留搬送制御処理が実行されたときには、折り幅テーブルに格納されている順番で折り幅データを参照してジャバラ折り処理を実行すればよい。しかし、通常滞留制御処理又はカール除去滞留制御処理が行われたときは、媒体引渡制御部100の作用によって、画像形成部200から搬出されたシートSは、後処理部300(折り処理部)に対する端部の向きが反転する。この場合、後端部Sr’から後処理部300に搬入されることになる。この場合、後処理部300でのジャバラ折り処理では、シートSは先端部Stからは行われずに、シートSの後端部Sr’から行われることになる。
【0092】
そこで、
図11のフローチャートに示すように、まず、制御部150において、ジャバラ折り処理の制御を始めるときに、媒体引渡制御部100における処理の種類を判定する(S1101)。無滞留搬送制御処理が行われた場合であれば(S1101:YES)、従来と同様のジャバラ折り処理を実行する(S1102)。
【0093】
S1102において実行されるジャバラ折り処理について
図12(a)を用いて説明する。
図12(a)に示すように、従来と同様、シートSの先端部Stが搬送方向の先頭になる。制御部150の記憶手段に記憶されている先端部分から順番の形成される折り目(n1、n2、n3、n4)の位置を示す折り幅データは、「折り幅テーブル」に順番に沿って格納されている。したがって、「折り幅データ」が格納されている順を参照順とすることによって
図12(a)に示す位置で折り目が形成される。
【0094】
なお、
図12において点線は谷折り、実線は山折りを表現している。各折りによって形成される折り幅(w1からw5)が全て異なった長さの場合、折り幅w5の面が、シートSのジャバラ折り後の表紙Scに相当する。
【0095】
したがって、画像形成装置1000においてジャバラ折り処理を実行する場合、全ての折り幅が等間隔である場合か無滞留搬送制御であった場合は、折り幅テーブルの格納順に折り幅データを参照してジャバラ折り処理を実行すればよい(S1101)。
【0096】
一方、媒体引渡制御部100を備える画像形成装置1000の後処理部300で無滞留搬送制御処理以外の搬送滞留制御処理は実行された場合(S1103:YES)、折り幅テーブルの格納順と逆の順番を折り幅データの参照順とする(S1104)。これは、無滞留搬送制御処理以外の処理が行われたシートS’に対して、従来の折り処理と同様のS1102の折り処理を実行すると、ジャバラ折りを施した場合の成果物が、使用者の意図しない形態になり得るからである。
【0097】
例えば最初の折り幅w1が長く設定されていて、残りの折り幅は短い場合など、折り幅が不規則に設定されているときは、S1102の処理をでは使用者の意図とは逆の折り幅順でジャバラ折りが行われることになる。
図12の例であれば、後処理部300においてジャバラ折り処理が施されたシートSの最後の面の折り幅が長くなる。
【0098】
すなわち、媒体引渡制御部100を備える画像形成装置1000において、無滞留搬送制御処理以外の搬送滞留制御処理を実行後にS1102の折り処理を実行すると、ジャバラ折りを施した場合の成果物が、使用者の意図しない形態になることがあり得る。
【0099】
したがって、無滞留搬送制御処理が行われた場合で無く(S1101:NO)、面ごとに折り幅が異なる場合(S1103:YES)、制御部150の記憶手段に格納されている折り幅テーブル内の折り幅データの順番とは逆の順番で折り処理を行う(S1104)。
【0100】
図12(b)は、画像形成装置1000に対応するS1104のジャバラ折り処理を実行した例である。折り幅が一定ではないジャバラ折りを実行するとき、折り幅w1~w5の順番を、折り幅テーブルに設定されている順番とは逆の順番で参照することで、従来と同じような成果物を得ることができる。これによって、滞留搬送制御処理の種類に限定されずに、ジャバラ折りの意図した成果物を得ることができる。表紙Scも、折り幅w5の面になり、
図12(a)の例と同じ成果物になっている。
【0101】
以上説明した実施形態によれば、媒体引渡制御部100における処理の内容に応じて後処理部300における折り処理を制御し、シートSが後処理部300に搬入されるときの端部が逆転しての、同じ折り処理成果物を得ることができる。
【0102】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
100 :媒体引渡制御部
110 :方向制御部
111 :方向切替部
112 :軸
120 :巻取りローラ
121 :シート挟持部
121a :クランプ板
122 :媒体有無検知センサ
123 :ヒータ
124 :温湿度センサ
130 :媒体到達検知部
131 :第一媒体到達検知センサ
132 :第二媒体到達検知センサ
133 :第三媒体到達検知センサ
140 :媒体搬出部
141 :搬出ベルト
142 :ベルトローラ
150 :制御部
200 :画像形成部
300 :後処理部
1000 :画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】