(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】外観検査経路探索方法、外観検査ロボットの検査経路探索装置、検査経路探索プログラム、および、外観検査ロボット
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20231226BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20231226BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01N21/84 C
G01B11/30 A
B25J9/22 A
G01N21/84 B
(21)【出願番号】P 2020065494
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 敦子
(72)【発明者】
【氏名】中須 信昭
(72)【発明者】
【氏名】山内 雄太
(72)【発明者】
【氏名】村松 克俊
(72)【発明者】
【氏名】西 雄一
(72)【発明者】
【氏名】染次 孝博
(72)【発明者】
【氏名】園田 真志
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇善
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003300(JP,A)
【文献】特開2019-158499(JP,A)
【文献】特開2013-217893(JP,A)
【文献】特開2017-140684(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092860(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0251866(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102500498(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
B25J 1/00 - B25J 21/02
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物およびカメラのうち少なくとも一方をハンドによって把持した姿勢点を変えて前記検査対象物を検査する外観検査ロボットの
経路をシミュレーション環境で生成する外観検査経路探索
方法であって、
判定部が、前記姿勢点毎に、前記検査対象物の
表面の三次元形状モデルを構成するポリゴンのうち前記カメラによって検査可能なものを判定する
ステップと、
前記判定部が判定した検査可能なポリゴン
集合の論理和、および前記姿勢点の変化によるコストに基づいて
、探索部が検査経路を探索する
ステップと、
を
実行することを特徴とする外観検査
経路探索方法。
【請求項2】
前記探索部
が、前記判定部が判定した検査可能なポリゴン
集合の論理和が所定値以上、かつ前記姿勢点の変化によるコストが所定値未満となる検査経路を探索する
ステップを更に実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項3】
前記探索部
が、前記判定部が判定した検査可能なポリゴン
集合の論理和が最大、かつ前記姿勢点の変化によるコストが最少となる検査経路を探索する
ステップを更に実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項4】
前記外観検査ロボットは、前記検査対象物を複数のハンドで把持するものであり、
前記探索部
が、前記判定部が判定した検査可能なポリゴン
集合の論理和、および、前記姿勢点の変化によるコストと前記ハンドの持ち替えによるコストに基づいた検査経路を探索する
ステップを更に実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項5】
前記探索部
が、前記判定部が判定した検査可能なポリゴン
集合の論理和が所定値以上、かつ前記姿勢点の変化によるコストと前記ハンドの持ち替えによるコストの和が所定値未満となる検査経路を探索する
ステップを更に実行する、
ことを特徴とする請求項4に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項6】
前記探索部
が、前記判定部が判定した検査可能なポリゴン
集合の論理和が最大、かつ前記姿勢点の変化によるコストと前記ハンドの持ち替えによるコストの和が最少となる検査経路を探索する
ステップを更に実行する、
ことを特徴とする請求項4に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項7】
前記探索部
が、各前記ポリゴンの法線と前記カメラの光軸との角度によって、当該ポリゴンが検査可能か否かを判定する
ステップを更に実行する、
ことを特徴とする請求項1から6のうち何れか1項に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項8】
前記探索部
が、各前記ポリゴンに入射する照明光の角度によって、当該ポリゴンが検査可能か否かを判定する
ステップを更に実行する、
ことを特徴とする請求項1から7のうち何れか1項に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項9】
各前記姿勢点は、前記三次元形状モデルを包含する多面体の各面の法線上に前記カメラが位置するものである、
ことを特徴とする請求項1から8のうち何れか1項に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項10】
各前記姿勢点は、前記三次元形状モデルを包含する球体の緯線と経線との交点に前記カメラが位置するものである、
ことを特徴とする請求項1から8のうち何れか1項に記載の外観検査
経路探索方法。
【請求項11】
前記判定部が検査可能と判定したポリゴンをハイライトする、
ことを特徴とする請求項1に記載の外観検査経路探索方法。
【請求項12】
検査対象物およびカメラのうち少なくとも一方をハンドによって把持した姿勢点を変えて前記検査対象物を検査する外観検査ロボットの検査点列をシミュレーション環境で生成する検査経路探索装置であって、
前記姿勢点毎に、前記検査対象物の表面の三次元形状モデルを構成するポリゴンのうち前記カメラによって検査可能なものを判定する判定部と、
前記判定部が判定した検査可能なポリゴン集合の論理和、および前記姿勢点の変化によるコストに基づいて検査経路を探索する探索部と、
を備えることを特徴とする外観検査ロボットの検査経路探索装置。
【請求項13】
コンピュータに、
検査対象物およびカメラのうち少なくとも一方をハンドによって把持した姿勢点を変えて前記検査対象物を検査する外観検査ロボットの前記姿勢点毎に、前記検査対象物の
表面の三次元形状モデルを構成するポリゴンのうち前記カメラによって検査可能なものを判定する工程、
検査可能なポリゴン
集合の論理和、および前記姿勢点の変化によるコストに基づいて検査経路を探索する工程、
を実行させるための検査経路探索プログラム。
【請求項14】
カメラと、
検査対象物または前記カメラを把持するハンドと、
前記カメラと前記検査対象物との相対位置が所望の姿勢点になるように前記ハンドを制御する制御部と、
各前記姿勢点において、前記検査対象物の
表面の三次元形状モデルを構成するポリゴンのうち前記カメラによって検査可能なものを判定する判定部と、
前記判定部が判定した検査可能なポリゴン
集合の論理和、および前記姿勢点の変化によるコストに基づいて検査経路を探索する探索部と、
を備える外観検査ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査経路探索方法、外観検査ロボットの検査経路探索装置、検査経路探索プログラム、および、外観検査ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットがカメラや照明を持つ、または/および、ロボットが対象物を持つ外観検査装置において、対象物に複数の照射角度から照明を当てて、複数の視野角から対象物の画像を取得する際の検査画像を撮影する検査点列を生成して、カメラが生成された検査点列を辿るような検査作業計画を設計する必要がある。この検査作業計画の設計にあたり、検査時間を短くして効率よく検査画像を取得することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物に複数の照射角度から照明を当てて、複数の視野角から対象物の画像を取得する外観検査装置に関する発明が開示されている(特許文献1)。しかし、検査作業の効率と対象物の外観の網羅率を両立させる検査作業計画を提供するものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、外観検査ロボットにおいて、検査作業の効率と対象物の外観の網羅率とを両立させる検査作業計画を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明の外観検査経路探索方法は、検査対象物およびカメラのうち少なくとも一方をハンドによって把持した姿勢点を変えて前記検査対象物を検査する外観検査ロボットの経路をシミュレーション環境で生成する外観検査経路探索方法であって、判定部が、前記姿勢点毎に、前記検査対象物の表面の三次元形状モデルを構成するポリゴンのうち前記カメラによって検査可能なものを判定するステップと、前記判定部が判定した検査可能なポリゴン集合の論理和、および前記姿勢点の変化によるコストに基づいて、探索部が検査経路を探索するステップと、を実行することを特徴とする。
本発明の外観検査ロボットの検査経路探索装置は、検査対象物およびカメラのうち少なくとも一方をハンドによって把持した姿勢点を変えて前記検査対象物を検査する外観検査ロボットの前記姿勢点毎に、前記検査対象物の表面の三次元形状モデルを構成するポリゴンのうち前記カメラによって検査可能なものを判定する判定部と、前記判定部が判定した検査可能なポリゴン集合の論理和、および前記姿勢点の変化によるコストに基づいて検査経路を探索する探索部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の検査経路探索プログラムは、コンピュータに、検査対象物またはカメラをハンドによって把持した姿勢点を変えて前記検査対象物を検査する外観検査ロボットの前記姿勢点毎に、前記検査対象物の表面の三次元形状モデルを構成するポリゴンのうち前記カメラによって検査可能なものを判定する工程、検査可能なポリゴン集合の論理和、および前記姿勢点の変化によるコストに基づいて検査経路を探索する工程、を実行させるためのものである。
【0008】
本発明の外観検査ロボットは、カメラと、検査対象物または前記カメラを把持するハンドと、前記カメラと前記検査対象物との相対位置が所望の姿勢点になるように前記ハンドを制御する制御部と、各前記姿勢点において、前記検査対象物の表面の三次元形状モデルを構成するポリゴンのうち前記カメラによって検査可能なものを判定する判定部と、前記判定部が判定した検査可能なポリゴン集合の論理和、および前記姿勢点の変化によるコストに基づいて検査経路を探索する探索部と、を備える。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検査作業の効率と対象物の外観の網羅率とを両立させる検査作業計画を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】外観検査ロボットの全体構成の例を示す図である。
【
図2】制御装置のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【
図3】制御装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4C】ポリゴンへの入射光とカメラ光軸との関係を示す図である。
【
図5】検査対象物と多面体とカメラとの関係を示す図である。
【
図6A】ロボット動作決定処理のフローチャート(その1)である。
【
図6B】ロボット動作決定処理のフローチャート(その2)である。
【
図7】最適検査経路探索処理のフローチャートである。
【
図8】検査対象物を包含する多面体の各面の法線上に位置する各検査ノードを示す図である。
【
図9】検査対象物を構成するポリゴンのうち検査可能なものを示す図である。
【
図10】検査ノードを全て接続した完全グラフを模式的に示した図である。
【
図11】完全グラフのうち、検査可能なポリゴンが増加するノードを最小コストで辿る経路を模式的に示した図である。
【
図12】或るノードから検査対象物を撮影したときの検査可能ポリゴン集合の例を示す図である。
【
図13】他のノードから検査対象物を撮影したときの検査可能ポリゴン集合の変化の例を示す図である。
【
図14A】ハンド把持姿勢の変化を考慮したロボット動作決定処理のフローチャート(その1)である。
【
図14B】ハンド把持姿勢の変化を考慮したロボット動作決定処理のフローチャート(その2)である。
【
図15】最適検査経路探索処理のフローチャートである。
【
図16】暗視野と明視野の場合の視線入射角許容範囲データと照明入射角許容範囲データを示す図である。
【
図17】暗視野と明視野の場合の視線入射角と照明入射角を示す図である。
【
図18】ロボットアームがカメラを把持する外観検査ロボットの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、シミュレータは、シミュレーション環境下において、検査対象物の表面の形状モデルを複数の三角形のポリゴンに分割し、複数のポリゴンの集合によって示されるモデルに変換する。シミュレータは更に、各ポリゴンに対する照明の入射角とカメラ視野角の条件から検査可能なポリゴンを判定する。これによりシミュレータは、検査可能なポリゴンの数を最大とし、かつ、ロボットによる各検査点の運動時間を最短とするようなカメラやロボットアームの軌道(検査点列)を計画することができる。
【0012】
《第1の実施形態》
図1は、外観検査ロボット1の全体構成の例を示す図である。
外観検査ロボット1は、検査対象物6の外観検査を行うロボットであり、主に、把持手段2、測定手段3、コンベア41およびビジョンセンサ42、コンベア51、および、制御装置7から構成される。
【0013】
コンベア41は、検査対象物6を供給するための供給手段である。ビジョンセンサ42は、コンベア41の上方に配置され、コンベア41上の検査対象物6の位置および姿勢を認識する。認識された検査対象物6の位置および姿勢に基づいて、ロボットアーム21の先端のハンド22により検査対象物6が把持される。なお、供給手段は、図の例に限定されず、検査対象物6が山積みされたコンテナ(不図示)や、検査対象物6を整列させたトレー(不図示)や、パーツフィーダ(不図示)で構成されてもよい。
【0014】
把持手段2は、支柱11の両側部に双腕状に配置された多関節型(例えば6軸)のロボットアーム21,23から構成される。ロボットアーム21の先端には、ハンド22が設けられている。ロボットアーム23の先端には、ハンド24が設けられている。
【0015】
ハンド22,24は、検査対象物6を把持可能な構造であればどのような形態でもよいが、検査対象物6がハンド22,24により把持された状態で、検査対象物6の半分以上が露出する構造であることが望ましい。ハンド22,24をこのような構造とすれば、ハンド22,24間での一度の持ち替え動作で、検査対象物6の全面を測定することができる。ハンド22,24は、検査対象物6を挟持してもよく、検査対象物6を吸着してもよい。
【0016】
測定手段3は、支柱11の上部に配置された多関節型(例えば6軸)の測定用アーム31と、カメラ32と、照明34とから構成される。カメラ32は、例えば、測定用アーム31の先端部に直接、または他の部材を介して固定される。照明34は、カメラ32の光軸の周囲に配置され、カメラ32と連動する。しかし、これに限られず、カメラ32と照明34とは、異なるロボットアームに固定されていてもよい。
【0017】
カメラ32には、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像センサが搭載されている。照明34は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)である。検査対象物6の撮像時に、照明34の点灯が切り替えられ、照明角度の異なる2次元画像を収得することができる。
【0018】
この外観検査ロボット1は、ハンド22,24によって検査対象物6を把持しつつ、ロボットアーム21,23の各関節の角度を変化させた各姿勢点の検査において、カメラ32により検査対象物6の表面を撮影して検査する。
【0019】
コンベア51は、検査対象物6を排出するための排出手段である。なお、検査対象物6の検査の合否や欠陥の種類で分類できるように、コンベア51を複数設けても良い。
【0020】
制御装置7は、コンベア41,51、および測定手段3の動作を制御するコンピュータである。
以下、制御装置7のハードウェア構成(
図2)および機能構成(
図3)について説明する。
【0021】
図2は、制御装置7のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置7は、制御部71、記憶部72、通信部73、入力部74、モニタ75、インタフェース部76、UPS77等が、バス79を介して接続される汎用のコンピュータで実現される。但し、これに限ることなく、用途、目的に応じて様々な構成であってもよい。
【0022】
制御部71は、CPU(Centra1 Processing unit)、ROM(Read only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成される。CPUは、記憶部72、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス79を介して接続された各部や各装置を駆動制御する。
【0023】
ROMは、不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOS(Basic I/O System)等のプログラムやデータを恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部72、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部71が各種処理を行う為に使用するワークエリアとして機能する。
【0024】
記憶部72は、HDD(Hard Disk Drive)等であり、制御部71が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、後述する処理をコンピュータに実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部71により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種処理を実行する。
【0025】
本実施形態では、記憶部72には、検査対象物6の形状データが記憶されている。記憶部72には、光学系シミュレータのプログラムが記憶されている。制御部71が光学系シミュレータのプログラムを実行し、検査対象物6の形状データと光学仕様と検査可能条件とを入力することで、形状データにおける検査可能なポリゴンを算出することが可能となっている。
【0026】
記憶部72には更に、ROS(Robot operatingSystem)のプログラムが記憶されている。制御部71がROSのプログラムを実行することで、ROSの各機能が具現化される。このROSのシミュレータ機能を用いることで、ロボットアーム21,23および測定用アーム31の経路(検査点列)を自動生成することが可能である。これらシミュレータ機能による最適経路の生成方法は、後記する。
【0027】
通信部73は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して、他のコンピュータ間との通信制御を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
【0028】
入力部74は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部74を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。モニタ75は、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。なお、入力部74及びモニタ75は、タッチパネルディスプレイのように、一体となっていてもよい。
【0029】
インタフェース部76は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、インタフェース部76を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。インタフェース部76は、USB(Universa1 Seria1 Bus)やLAN(Local Area Network)やIEEE1394やRS-232C等によって構成されており、通常複数の周辺機器のインタフェースを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。制御装置7は、インタフェース部76を介して、コンベア41、コンベア51、ビジョンセンサ42、ロボットアーム21,23、測定用アーム31、カメラ32等と接続される。
【0030】
UPS(Uninterruptible Power Supply)77は、停電などによって電力が断たれた場合にも電力を供給し続ける無停電電源装置である。
バス79は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0031】
制御装置7は、1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータが協働して外観検査ロボット1の動作を実行するように構成されてもよい。以下の説明では、簡素な構成例として、制御装置7が1台のコンピュータで構成される例を説明する。
【0032】
図3は、制御装置7の機能構成の例を示すブロック図である。
CAD(Computer Aided Design)システム91は、検査対象物6の三次元の形状モデル60(
図5参照)を記憶し、この形状モデル60を1または複数の出力形式に変換して出力する部位である。この形状モデル60は、例えば複数のポリゴンによって構成されている。
【0033】
検査条件設定部92は、光学仕様設定部921と検査可能条件設定部922とを含んで構成される。光学仕様設定部921は、ユーザが光学仕様を設定する部位である。検査可能条件設定部922は、検査可能条件を入力する部位である。
【0034】
検査可能ポリゴン判定部93は、シミュレーション環境の各姿勢点に視点(検査位置)が設けられているとき、形状モデル60を構成するすべてのポリゴンについて、検査可能条件を満たすか否かを判定する。検査可能ポリゴン判定部93は、検査対象物6の形状モデル60の周囲の複数の視点に配置されたカメラ32で撮影された形状モデル60上のすべてのポリゴンについて、検査可能条件を満たすか否かを判定する。ここでカメラ32の各視点(検査位置)は、外観検査ロボット1のロボットアーム21,23の各関節の角度を変化させて各姿勢点とすることで実現される。
【0035】
検査経路処理部94は、検査経路探索用グラフ生成部941と、最適検査経路探索部942とを含んで構成される。検査経路探索用グラフ生成部941は、カメラ32が各検査位置となるようなロボットアーム21,23の各姿勢点(各関節の角度)をノードとし、すべてのノードをエッジで結合する完全グラフを生成する。この完全グラフのエッジは、検査における経路を構成する。
【0036】
つまり、検査経路探索用グラフ生成部941は、検査対象物6の三次元の形状モデル60を撮影するカメラの視点と照明モデルと検査可能なポリゴン集合とロボットの関節角度の組み合わせをグラフのノードとし、任意の2つのノードをエッジで結んで完全グラフを生成する。
【0037】
最適検査経路探索部942は、検査可能ポリゴン判定部93が判定した検査可能なポリゴンの集合の論理和が最大となり、かつ姿勢点の変化によるコストが最少となる最適検査経路を完全グラフ上で探索する。ここで姿勢点の変化によるコストとは、例えば姿勢点の変化に要する時間(検査時間)であるが、これに限られず、姿勢点の変化に要するエネルギなど、他のコスト指標であってもよい。
【0038】
なお、これに限られず、最適検査経路探索部942は、検査可能ポリゴン判定部93が判定した検査可能なポリゴンの集合の論理和が所定値以上となり、かつ姿勢点の変化によるコストが所定値未満となる最適検査経路を完全グラフ上で探索してもよい。つまり最適検査経路探索部942は、検査可能なポリゴンの集合の論理和、および姿勢点の変化によるコストに基づく最適検査経路を完全グラフ上で探索してもよい。
【0039】
例えばユーザが、検査可能なポリゴン集合の論理和に対する全ポリゴン集合の割合が70%以上、検査時間20分未満を指定すると、最適検査経路探索部942は、この指定条件を満たす最適経路を完全グラフ上で探索する。このように、検査可能なポリゴン集合の論理和に対する全ポリゴン集合の割合や検査時間は、ユーザが任意に指定可能であることが望ましい。
【0040】
シミュレータ95は、最適検査経路探索部942で得られた最適な検査経路に従い移動するロボットと、各検査点で撮影される画像上で検査可能と判定されたポリゴンをハイライトした検査画像をモニタ75(表示部)に表示する。
これら検査条件設定部92、検査可能ポリゴン判定部93、検査経路処理部94、シミュレータ95は、外観検査ロボット1の検査経路探索装置として機能する。
【0041】
ロボット制御部96は、バラメータ設定部961と、ハンド設定部962とを含んで構成される。
バラメータ設定部961は、ロボットの座標変換行列を生成するためのロボットのリンクの寸法や、各関節の配置関係を設定する部位である。
【0042】
ハンド設定部962は、ハンド22,24が検査対象物6をどのように把持するのかを、ハンド座標系から見た検査対象物6の座標系の相対位置関係を設定する部位である。ハンド設定部962は、ロボットのエンドエフェクタ座標系に対するハンド座標系の相対位置関係も設定する。
【0043】
図4Aは、検査部の光学仕様データを示す図である。
光学仕様データには、視野項目と作動距離と被写界深度とが含まれる。
視野項目は、カメラ32から作動距離だけ離れた位置における、カメラ32による視野を、その縦横の長さを乗算した面積によって示している。
【0044】
作動距離は、カメラ32が物体に焦点を合わせた時の対物レンズの先端から物体までの距離のことをいい、カバーガラスを使用する対物レンズの場合にはカバーガラス上面から物体までの距離のことをいう。
【0045】
被写界深度とは、カメラ32の撮影画像の焦点が合っているように見える被写体側の距離の範囲のことをいう。
【0046】
図4Bは、検査可能条件データを示す図である。
図4Cは、検査対象物6の面への照明34の入射角Θiとカメラ32による視線入射角γiとの関係を示す図である。
【0047】
検査可能条件データには、視線入射角許容範囲と照明入射角許容範囲とが含まれる。ここで視線入射角許容範囲とは、検査対象物6の面の法線へのカメラ32の光軸による視線の入射角が許容される範囲いう。シミュレーション環境では、ポリゴン601の法線への視線の入射角である。
【0048】
照明入射角許容範囲とは、検査対象物6を構成する面の法線への照明34による照明光の入射角をいい、シミュレーション環境では、検査対象物6を構成するポリゴン601の法線への照明光の入射角である。この検査可能条件で示されるように、検査対象物6の面の法線への照明光の入射角が所定角度以内であり、かつ各カメラ32による視線の入射角が所定角度以内である場合に、この検査対象物6の当該面は検査可能となる。
【0049】
本実施形態では、検査対象物6の各面が、この検査可能条件データを満たすか否かをシミュレーション環境でシミュレーションしている。
【0050】
図5は、シミュレーション環境における検査対象物6の形状モデル60と、多面体61と視点33との関係を示す図である。
検査対象物6の形状モデル60は、ハンド22の形状モデル25によって挟持されるように配置される。この検査対象物6の形状モデル60と、ハンド22の形状モデル25とを取り囲むように、多面体61が設定されている。
【0051】
多面体61は、切頂二十面体である。視点33は、多面体61の各面の中央から延びる法線のうちの一つに設置されており、多面体61の各面の中央を視る方向に向いている。なお、形状モデル60を含む多面体は、点対称な多面体であればよく、例えば、正四面体、正六面体、正八面体、正一二面体、正二十面体、
1585630711021_0
、切頂六面体、切頂八面体、切頂十二面体、立方八面体、二十・十二面体、斜方立方八面体、斜方二十・十二面体、斜方切頂立方八面体、斜方切頂二十・十二面体、変形立方体、変形十二面体のうち何れでもよい。
【0052】
形状モデル60の周囲に視点33を配置する方法としては、例えば形状モデル60の周囲に球体を配置して、球体の緯度および経度で表される方向に視点33を配置する方法がある。この方法では、球体の極近傍では、視点33が密に配置されるため、検査効率が低下する。また、球体の赤道近傍では、視点33の配置密度が疎であるため、検査精度が低下する。本実施形態では、点対称な多面体の各面の法線上に視点33を配置しているため、全周に亘って配置密度が均一であり、方向による検査効率や検査精度の偏りは発生しない。
【0053】
図6Aと
図6Bは、ロボット動作決定処理のフローチャートである。
ステップS10において、CADシステム91は、検査対象物6の三次元モデルをSTL(Stereolithography)形式のモデルで出力する。これにより検査対象物6は、複数のポリゴンの集合によって示されるモデルに変換される。
【0054】
ステップS11において、検査条件設定部92の光学仕様設定部921は、検査で画像を取得するカメラ32の光学条件を入力し、検査可能条件設定部922は、対象物が検査可能となる検査可能条件を入力する。光学仕様設定部921が入力する光学仕様は、
図4Aに示すように、視野のサイズ、作動距離、および被写界深度などである。
【0055】
検査可能条件設定部922が入力する検査可能条件は、
図4Bに示すように、視線入射角許容範囲と照明入射角許容範囲の指定である。検査可能条件設定部922は更に、照明34の配置情報も入力する。
【0056】
ステップS12において、検査可能ポリゴン判定部93は、シミュレーション環境において、ハンド22の形状モデル25(
図8参照)で把持された検査対象物6の形状モデル60を包含するように多面体61を形成する。形状モデル25で把持された形状モデル60と、これを包含する多面体61は、前記する
図5に示されている。
【0057】
ステップS13において、検査可能ポリゴン判定部93は、シミュレーション環境において、
図4Aのカメラ32の光学仕様を満たすように、多面体61の各面の法線上に各視点33を生成する。検査可能ポリゴン判定部93は、各視点33を多面体61の各面の中心に向ける。
【0058】
ステップS14において、検査経路探索用グラフ生成部941は、視点33ごとに個別の視点番号eを振る。検査経路探索用グラフ生成部941は、照明モデル35を設計された配置情報通りにシミュレーション環境に配置し、照明モデル35ごとに個別の照明番号lを振る。これを
図8に示す。
検査経路探索用グラフ生成部941は更に、形状モデル60を構成するすべてのポリゴンに、個別の番号pを割り当てる。
【0059】
ステップS15において、検査可能ポリゴン判定部93は、視点番号をe、照明番号をlとしたときの(e,l)の組み合わせごとに、すべてのポリゴン601について、検査可能条件を満たし、かつ、形状モデル25の陰に隠れることなく画像としてとらえられるか否かを判定する。
【0060】
検査可能ポリゴン判定部93は、ポリゴン番号をpとしたとき、このポリゴンが検査可能条件を満たすか否かの判定結果を(e,l,p)として保存する。検査可能ポリゴン判定部93は、(e,l)が同じ検査可能なポリゴン番号pを集めて、ポリゴン集合Pとし、(e,l,P)を保存する。
【0061】
ステップS16において、検査可能ポリゴン判定部93は、すべての(e,l,P)に対し、外観検査ロボット1が検査対象物6をハンド22,24で把持する際、カメラ32が検査対象物6に対して視点番号eに該当する角度をとり、かつ照明34が検査対象物6に対して照明番号lに該当する角度をとるように、ロボットアーム21,23の関節角度aを計算する。これにより、(e,l,P,a)の組み合わせが得られる。
【0062】
ステップS17において、検査可能ポリゴン判定部93は、計算した(e,l,P,a)の組み合わせを保存する。
ステップS18において、検査経路探索用グラフ生成部941は、保存した(e,l,P,a)をグラフのノードとし、任意の2つのノードをエッジで結んだ完全グラフ8(
図10参照)を構成する。この完全グラフ8の詳細は、
図10にて詳細に説明する。
【0063】
ステップS19において、最適検査経路探索部942は、完全グラフ8の最適検査経路を探索する。最適検査経路探索部942は、与えられた始点ノードから探索を開始し、すべてのノードを評価したら、経路探索を終了する。ここで、ノードの評価とは、このノードに視点33を配置して、形状モデル60を検査するか否かを判定することをいう。この最適検査経路の探索処理は、後記する
図7と
図11で説明する。
【0064】
ステップS20において、最適検査経路探索部942は、最後に到達したノードから始点ノードまでをたどり、探索した経路を逆順にした最適検査経路を得て、これを保存する。
【0065】
ステップS21において、シミュレータ95は、モニタ75上のシミュレーション環境において、最適検査経路の各ノードに該当するようにロボットアーム21,23やハンド22,24の動作をシミュレーションし、この動作に従って検査可能ポリゴンをハイライト(強調)表示する。後記する
図12と
図13は、検査可能ポリゴンをハイライト表示した画面例である。ステップS21の処理が終了すると、
図6Bの処理を終了する。
【0066】
図7は、最適検査経路探索処理のフローチャートである。
最適検査経路探索部942は、
図10に示すような完全グラフ8を構成するノードのうち始点ノードとして決定したものをsrcノードに設定し(S30)、このsrcノードにおいて検査可能なポリゴンを、検査可能ポリゴン和集合に加える(S31)。
【0067】
そして、最適検査経路探索部942は、各経路のエッジにおける検査工数を検査可能ポリゴン和集合の増加分で除算して、当該経路を構成する各エッジのコストを算出する(S32)。各経路のエッジにおける検査工数とは、例えば外観検査ロボット1のロボットアーム21,23およびハンド22,24がエッジを動くときの移動時間である。
検査可能ポリゴン和集合の増加分とは、ロボットアーム21,23およびハンド22,24がエッジを動くことにより新たに検査可能となったポリゴンの数である。なお、最適検査経路探索部942は、未処理のノードに遷移するエッジであっても、当該ノードにおいて検査可能ポリゴン和集合が増加しないならば、当該エッジを経路としない。これにより最適検査経路探索部942は、検査可能なポリゴンの集合を最大とすることができる。
【0068】
最適検査経路探索部942は、srcノードから未処理のdestノードへの経路を構成する各エッジのコストを足しこんで、各経路のコストを計算しながら最適経路を探索する(S33)。この経路探索は、全てのノードを処理したか、または、どの未処理ノードに移動しても検査可能ポリゴン和集合が増加しなくなった場合に終了する。
最適検査経路探索部942は、経路のコストの総和が最小となる最適経路を特定し(S34)、
図7の最適検査経路探索処理を終了する。この最適経路は、コストが最小となり、最も効率よく検査を行える経路である。
【0069】
図8は、シミュレーション環境において、形状モデル60を包含する多面体61の各面の法線上に位置する各検査ノードを示す図である。
検査対象物6の形状モデル60は、ハンド22の形状モデル25によって挟持されるように配置される。
【0070】
多面体61は、形状モデル60と形状モデル25とを包含する。視点33は、多面体61の各面の中央から延びる各法線に設置され、それぞれ多面体61の各面の中央を視る方向に向いている。また多面体61の周囲には、各照明モデル35が設置されている。
【0071】
図9は、シミュレーション環境において、検査対象物6の形状モデル60を構成するポリゴンのうち検査可能なものを示す図である。
シミュレーション環境には、形状モデル25で把持された形状モデル60と、視点33と照明モデル35とが配置されている。
【0072】
形状モデル60は、ハイライト表示(破線ハッチング)されている検査可能ポリゴン62と、暗色系の色で表示されている検査不可ポリゴン63とを含んで構成される。形状モデル60を構成する各ポリゴンの法線と、照明モデル35の照明光の入射角との関係、および各ポリゴンの法線と視点33の入射角の関係とが、
図4Bに示す許容範囲であったならば、当該ポリゴンは、検査可能ポリゴンとして判定される。
【0073】
形状モデル60を構成する各ポリゴンの法線と、照明モデル35の照明光の入射角との関係、および各ポリゴンの法線と視点33の入射角の関係のうち何れかまたは両方が、
図4Bに示す許容範囲を外れていたならば、当該ポリゴンは、検査不可ポリゴンとして判定される。
【0074】
なお、
図4Bに示す許容範囲を満たしているポリゴンであっても、他のモデルの影になっている場合、当該ポリゴンは検査不可ポリゴンとして判定される。
【0075】
図10は、検査ノードを全て接続した完全グラフ8を模式的に示した図である。
完全グラフ8は、ノード81~87と、このノード81~87を相互に接続するエッジを含んで構成される。
【0076】
図11は、完全グラフ8のうち、検査可能ポリゴンが増加するノードを最小コストで辿る最適探査経路を模式的に示した図である。
図11に示す最適探査経路は、ノード82を始点として、ノード87→ノード86→ノード84→ノード83を順に辿るものである。
【0077】
ノード82における集合は、ノード82における検査可能ポリゴンの集合と等しい。
ノード82からノード87に辿ったときの検査可能ポリゴン和集合は、ノード82における検査可能ポリゴン和集合とノード87における検査可能ポリゴンの集合の和であり、かつ、ノード82,87における検査可能ポリゴンの集合の和である。
【0078】
更にノード87からノード86に辿ったときの検査可能ポリゴン和集合は、ノード87における検査可能ポリゴン和集合とノード86における検査可能ポリゴンの集合の和であり、かつ、ノード82,87,86における検査可能ポリゴンの集合の和である。
【0079】
更にノード86からノード84に辿ったときの検査可能ポリゴン和集合は、ノード86における検査可能ポリゴン和集合とノード84における検査可能ポリゴンの集合の和であり、かつ、ノード82,87,86,84における検査可能ポリゴンの集合の和である。
【0080】
更にノード84からノード83に辿ったときの検査可能ポリゴン和集合は、ノード84における検査可能ポリゴン和集合とノード83における検査可能ポリゴンの集合の和であり、かつ、ノード82,87,86,84,83における検査可能ポリゴンの集合の和である。
【0081】
ノード82からノード83までを辿ったのち、未処理ノードであるノード81,85のいずれに移動しても、カメラ32からは既に検査済のポリゴンしか撮影できないため、検査可能ポリゴン和集合が増加しない。そのため、このノード83が終点となる。
【0082】
図12は、所定ノードから検査対象物6の形状モデル60を撮影したときの検査可能ポリゴンをハイライト表示した画面68である。
画面68には、シミュレーション環境におけるハンド22,24の形状モデル25と、検査対象物6の形状モデル60と、検査可能ポリゴン62および検査不可ポリゴン63とが表示されている。
【0083】
所定ノードには視点33が設置され、更に照明モデル35が設置されている。視点33による視線と形状モデル60を構成する各ポリゴンとの角度により、このポリゴンが検査可能であるか否かをシミュレーションできる。更に照明モデル35の照明光と形状モデル60を構成する各ポリゴンとの角度により、このポリゴンが検査可能であるか否かをシミュレーションできる。ここでは検査可能ポリゴン62がハイライト表示されており、検査不可ポリゴン63は暗色系の色で表示されている。
【0084】
図13は、他のノードから検査対象物6を撮影したときの検査可能ポリゴンをハイライト表示した画面69である。
画面69における視点33は、
図12で示した所定ノードとは異なる他のノードに設置され、更に照明モデル35が他の箇所に設置されている。
図13の検査可能ポリゴン62は、
図12の検査可能ポリゴン62とは異なる。これによりユーザは、最適検査経路におけるロボットアーム21,23およびハンド22,24の動作や、この動作に伴う検査対象物6上の検査可能ポリゴンを知ることができる。ここで最適経路とは、最も効率よく検査が行える経路である。つまり、最適検査経路探索部942は、検査作業の効率と対象物の外観の網羅率とを両立させる検査作業計画を提供することが可能となる。
【0085】
実環境においても、カメラ32または/および検査対象物6を操作し、カメラ32から見て異なるノードから検査対象物6を撮影することにより、検査対象物6の表面を網羅的に検査することができる。
【0086】
《第2の実施形態》
図14Aと
図14Bは、検査対象物を把持するハンドの姿勢の変化を考慮したロボット動作決定処理のフローチャートである。
ステップS40において、CADシステム91は、検査対象物6の三次元モデルをSTL(Stereolithography)形式のモデルで出力する。これにより検査対象物6は、複数のポリゴンの集合によって示されるモデルに変換される。
【0087】
ステップS41において、検査条件設定部92の光学仕様設定部921は、検査で画像を取得するカメラ32の光学条件を入力し、検査可能条件設定部922は、対象物が検査可能となる検査可能条件を入力する。光学仕様設定部921が入力する光学仕様は、
図4Aに示すように、視野のサイズ、作動距離、および被写界深度などである。
【0088】
検査可能条件設定部922が入力する検査可能条件は、
図4Bに示すように、視線入射角許容範囲と照明入射角許容範囲の指定である。検査可能条件設定部922は更に、照明34の配置情報も入力する。
【0089】
ステップS42において、検査可能ポリゴン判定部93は、シミュレーション環境において、ハンド22の形状モデル25で把持された検査対象物6の形状モデル60を包含するように多面体61を形成する。形状モデル25で把持された形状モデル60と、これを包含する多面体61は、前記する
図5に示されている。
【0090】
ステップS43において、検査可能ポリゴン判定部93は、シミュレーション環境において、
図4Aのカメラ32の光学仕様を満たすように、ハンド把持姿勢ごとに、多面体61の各面の法線上に各視点33を生成する。ここでハンド把持姿勢とは、例えば、2つのハンド22,24のうち何れを使用して検査対象物6を把持しているかをいう。検査可能ポリゴン判定部93は、各視点33を多面体61の各面の中心に向ける。
【0091】
ステップS44において、検査経路探索用グラフ生成部941は、視点33ごとに個別の視点番号eを振る。検査経路探索用グラフ生成部941は、照明モデル35を設計された配置情報通りにシミュレーション環境に配置し、照明モデル35ごとに個別の照明番号lを振る。検査経路探索用グラフ生成部941は更に、ハンド把持姿勢ごとに個別の番号hを振る。
検査経路探索用グラフ生成部941は更に、すべてのポリゴン601に、個別の番号pを割り当てる。
【0092】
ステップS45において、検査可能ポリゴン判定部93は、視点番号をe、照明番号をl、ハンド把持姿勢をhとしたときの(e,l、h)の組み合わせごとに、すべてのポリゴン601について、検査可能条件を満たし、かつ、形状モデル25の陰に隠れることなく画像としてとらえられるか否かを判定する。
【0093】
検査可能ポリゴン判定部93は、ポリゴン番号をpとしたとき、(e,l,h,p)に対応付けて判定結果を保存する。(e,l,h)が同じ検査可能なポリゴン番号pを集めて、ポリゴン集合Pとし、(e,l,h,P)を保存する。
【0094】
ステップS46において、検査可能ポリゴン判定部93は、すべての(e,l,h,P)に対し、検査対象物6をハンド22,24で把持するロボットが、視点33に該当するカメラ32と照明34の姿勢をとるように、ロボットの関節角度aを計算する。これにより、(e,l,h,P,a)の組み合わせが得られる。
【0095】
ステップS47において、検査可能ポリゴン判定部93は、計算した(e,l,h,P,a)を保存する。
ステップS48において、検査経路探索用グラフ生成部941は、保存した(e,l,h,P,a)をグラフのノードに対応づけて、完全グラフを構成する。
【0096】
ステップS49において、最適検査経路探索部942は、完全グラフ8の最適検査経路を探索する。最適検査経路探索部942は、与えられた始点ノードから探索を開始し、すべてのノードを評価したら、経路探索を終了する。この最適検査経路の探索処理は、後記する
図15で説明する。
【0097】
ステップS50において、最適検査経路探索部942は、最後に到達したノードから始点ノードまでをたどり、逆順にして最適検査経路を得る。
【0098】
ステップS51において、シミュレータ95は、モニタ75上のシミュレーション環境において、ハンド22,24による持ち替え動作を含めて最適検査経路における動作をシミュレーションし、この動作に従って検査可能ポリゴンをハイライト(強調)表示する。ステップS51の処理が終了すると、
図14Bの処理を終了する。
【0099】
図15は、最適検査経路探索処理のフローチャートである。
最適検査経路探索部942は、完全グラフを構成するノードのうち始点ノードとして決定したものをsrcノードに設定し(S60)、このsrcノードにおいて検査可能なポリゴンを検査可能ポリゴン和集合に加える(S61)。
【0100】
そして、最適検査経路探索部942は、各経路のエッジにおける検査工数を検査可能ポリゴン和集合の増加分で除算した値と、前回に通過したノードとのハンド把持姿勢が異なる場合に加算するペナルティ値(コスト)との合計値を各エッジのコストとして算出する(S62)。各経路のエッジにおける検査工数とは、例えば、外観検査ロボット1のロボットアーム21,23およびハンド22,24がエッジを動くときの移動時間である。ハンド把持姿勢がsrcノードとdestノードで異なる場合には、srcノードの姿勢点からdestノードの姿勢点までロボットアーム21,23の関節が変化する時間加えて、ハンド22とハンド24との間の持ち替え時間が更に加算される。ここでハンド22とハンド24との間の持ち替え時間は、上記したペナルティ値(コスト)である。
このように、複数指標のコストがある場合,その総和あるいは線形比重和を用いてもよい。
【0101】
検査可能ポリゴン和集合の増加分とは、ロボットアーム21,23およびハンド22,24がエッジを動くことにより新たに検査可能となったポリゴンの数である。なお、最適検査経路探索部942は、未処理のノードに遷移するエッジであっても、当該ノードにおいて検査可能ポリゴン和集合が増加しないならば、当該エッジを経路としない。
【0102】
最適検査経路探索部942は、srcノードから未処理のdestノードへの経路を構成する各エッジのコストを足しこんで、各経路のコストを計算しながら最適な経路を探索する(S63)。この経路探索は、全てのノードを処理したか、または、どの未処理ノードに移動しても検査可能ポリゴン和集合が増加しなくなった場合に終了する。
最適検査経路探索部942は、経路のコストの総和が最小となる最適経路を特定し(S64)、
図15の最適検査経路探索処理を終了する。これにより、最適検査経路探索部942は、検査作業の効率と対象物の外観の網羅率とを両立させる検査作業計画を提供することが可能となる。
【0103】
《第3の実施形態》
第3の実施形態は、視線入射角許容範囲と照明入射角許容範囲を、明視野観察と暗視野観察の場合に分けて処理を行うものである。
【0104】
図16は、暗視野と明視野の場合の視線入射角許容範囲データと照明入射角許容範囲データを示す図である。
図17は、暗視野と明視野の場合の視線入射角と照明入射角を示す図である。
【0105】
明視野観察とは、サンプルを均一な光で法線の近傍から照らして観察する方法をいう。
図16では、照明入射角が0度からΘ
1度のとき、明視野観察の許容範囲と定義している。これを
図17のハッチング領域で示す。
【0106】
暗視野観察とは、サンプルに斜めから光を当て、サンプルからの散乱光や反射光により観察する方法をいう。真っ暗な視野の中にサンプルの欠陥部分が光って見えるため、透明なサンプルなどに適している。
図16では、照明入射角がΘ
1度からΘ
2度のとき、暗視野観察の許容範囲と定義している。これを
図17でも示している。
【0107】
ここでは、第1,第2の実施形態の処理を、明視野観察と暗視野観察のそれぞれについて行う。これにより、サンプル表面のうち外部から観察可能な領域を、明視野観察と暗視野観察によって可能な限り広くすることができる。
【0108】
《第4の実施形態》
第1~3の実施形態において、ロボットアーム21およびハンド22、または、ロボットアーム23およびハンド24が検査対象物6を把持していた。これに対して第4の実施形態では、ロボットアームおよびハンドがカメラを把持している。
【0109】
図18は、ロボットアーム26とハンド27がカメラ32を把持する外観検査ロボットの例を示す図である。
外観検査ロボット1Aは、ロボットアーム26とハンド27を備えている。この外観検査ロボット1Aは、ロボットアーム26とハンド27がカメラ32を把持し、検査台に載せられた検査対象物6の周囲を撮影することで、この検査対象物6の欠陥を検査する。
【0110】
検査可能ポリゴン判定部93は、この検査対象物6の形状モデル60を取り囲むように、多面体が設定して、多面体の各面の中央から延びる法線上に各視点を設定する。検査経路探索用グラフ生成部941は、各視点をノードとする完全グラフを構成する。そして最適検査経路探索部942は、最適検査経路を探索する。
【0111】
ロボットアーム26とハンド27が、最適検査経路の各視点に相当する位置および方向に、カメラ32を移動させることにより、第1~第3の実施形態の各外観検査ロボット1と同様に、検査対象物6の表面を好適に検査することができる。
【0112】
なお、これに限られず、ロボットアームとハンドがカメラを把持し、他のロボットアームとハンドが検査対象物を把持して、両者の姿勢点を変えながら検査対象物を検査してもよく、限定されない。つまり、外観検査ロボットは、カメラおよび検査対象物のうち少なくとも一方をハンドによって把持した姿勢点を変えて、この検査対象物を検査するものであればよい。
【0113】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0114】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0115】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 外観検査ロボット
2 把持手段
21 ロボットアーム
22 ハンド
23 ロボットアーム
24 ハンド
25 形状モデル
26 ロボットアーム
27 ハンド
3 測定手段
31 測定用アーム
32 カメラ
34 照明
41 コンベア
42 ビジョンセンサ
51 コンベア
6 検査対象物
601 ポリゴン
60 形状モデル
61 多面体
62 検査可能ポリゴン
63 検査不可ポリゴン
7 制御装置
71 制御部
72 記憶部
73 通信部
74 入力部
75 モニタ
76 インタフェース部
77 UPS
8 完全グラフ
81~87,81a~87a,81b~87b ノード
91 CADシステム
92 検査条件設定部
921 光学仕様設定部
922 検査可能条件設定部
93 検査可能ポリゴン判定部 (判定部)
94 検査経路処理部
941 検査経路探索用グラフ生成部
942 最適検査経路探索部 (探索部)
95 シミュレータ
96 ロボット制御部
961 バラメータ設定部
962 ハンド設定部