(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】フィルムの製造方法、及び製造装置並びに液晶硬化フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20231226BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20231226BHJP
B05C 13/00 20060101ALI20231226BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20231226BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20231226BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B05D3/00 C
B05C5/02
B05C13/00
B05D7/00 A
G02B1/14
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020563369
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050932
(87)【国際公開番号】W WO2020138212
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018246100
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 祐哉
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012031(JP,A)
【文献】特開2006-072298(JP,A)
【文献】特開2011-028039(JP,A)
【文献】特開2008-083244(JP,A)
【文献】特開2006-099855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05C 1/00-21/00
B32B 1/00-43/00
G02B 1/10-1/18、5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面Sに形成された液晶組成物層と、を備えるフィルムの製造方法であって、
前記基材を、搬送経路に沿って、塗布装置に搬送する工程1と、
前記塗布装置により、前記表面Sに、液晶組成物を塗布して、前記液晶組成物層を形成する工程2と、を含み、
前記基材の搬送は、搬送部材を用いて行い、
前記搬送部材は、前記表面Sを非接触状態で支持する部材で
あって、前記基材を非接触状態に保持する気体を噴出する複数の孔を有する多孔質材料からなる部材であり、前記孔の平均孔径は10μm以下であり、
前記搬送は、前記工程2を行う前において、前記搬送部材と、前記表面Sとの非接触状態を維持して行う、フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記基材の前記表面Sに、配向規制力を付与する工程Aを含み、
前記工程Aを行った後前記工程2を行うまでの間、前記基材の搬送を、前記表面Sと他の部材との非接触状態を維持して行う、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記工程Aは、ラビング処理、光配向処理、及び延伸処理から選ばれる処理方法により行う、請求項2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記工程1において、前記基材が、前記基材と、前記基材の前記表面Sに貼合された保護フィルムとを備える保護フィルム付き基材とされた状態で搬送される、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記工程2の前に行う、工程B1及び工程B2を含み、
前記工程B1は、前記保護フィルム付き基材から前記保護フィルムを剥離して、前記表面Sが露出した前記基材を得る工程であり、
前記工程B2は、前記工程B1を行った後の前記基材の張力を、遮断する工程である、請求項4に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記基材は、延伸処理により、配向規制力を制御可能な材料からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記搬送部材と、前記基材の前記表面Sとの間隔は、1mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記塗布装置よりも前記搬送経路の上流における前記基材の搬送張力T
1は、30N/m以上500N/m以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記搬送部材から噴出する前記気体は、圧力が0.05MPa以上0.7MPa以下の高圧空気である、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記搬送部材は、搬送方向に平行な方向の断面が弧状の断面弧状部を有する部材である、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記工程2における、前記基材の搬送張力T
2は200N/m以上であり、
前記塗布装置よりも前記搬送経路の上流における前記基材の搬送張力T
1は、前記搬送張力T
2よりも低く、かつ、前記搬送張力T
1は、前記基材の繰出しから前記工程2を行うまでの間に段階的に高くなるように設定されている、請求項1~
10のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法において用いるフィルムの製造装置であって、
前記基材の前記表面Sに、液晶組成物を塗布して、前記液晶組成物の層を形成する塗布装置と、
前記基材を、前記塗布装置に搬送する搬送部材と、を備え、
前記搬送部材は、前記表面Sを非接触状態で支持した状態で前記基材を搬送する搬送部材である、フィルムの製造装置。
【請求項13】
基材と、前記基材の表面Sに形成された液晶硬化層とを備える液晶硬化フィルムの製造方法であって、
請求項1~
11のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法により、前記基材と、前記基材の前記表面Sに形成された前記液晶組成物層とを備えるフィルムを製造する工程、並びに
前記工程2よりも前記搬送経路の下流において行う、工程3A及び工程3Bを含み、
前記工程3Aは、前記液晶組成物層を硬化して前記基材の前記表面Sに前記液晶硬化層を形成する工程であり、
前記工程3Bは、前記液晶硬化層の上にさらにハードコート層を形成する工程であり、
前記工程2から前記工程3Aへの搬送(2-3A)は、搬送部材(2-3A)を用いて行い、前記搬送部材(2-3A)は、前記フィルムの前記液晶組成物層側の面を非接触状態で支持する搬送部材であり、前記搬送(2-3A)は、前記工程2を行った後から前記工程3Aを行うまでの間、前記搬送部材(2-3A)と、前記フィルムの前記液晶組成物層側の面との非接触状態を維持して行い、かつ、
前記工程3Aから前記工程3Bへの搬送(3A-3B)は、搬送部材(3A-3B)を用いて行い、前記搬送部材(3A-3B)は、前記フィルムの前記液晶硬化層側の面を非接触状態で支持する搬送部材であり、前記搬送(3A-3B)は、前記工程3Aを行った後から前記工程3Bを行うまでの間、前記搬送部材(3A-3B)と、前記フィルムの前記液晶硬化層側の面との非接触状態を維持して行う、液晶硬化フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造方法、及び製造装置並びに液晶硬化フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムの一つとして、液晶化合物を用いて製造される液晶硬化フィルムが知られている。液晶硬化フィルムは、例えば、基材上に、重合性液晶化合物を含む組成物(液晶組成物)を塗布し、重合性液晶化合物を重合することにより得られる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-143786号公報(対応公報:米国特許出願公開第2015/218453号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材上への液晶組成物の塗布は、基材を繰り出して、塗布装置へ搬送し、当該塗布装置において行いうる。このような場合、塗布装置の付近では、液晶組成物のコーティング厚が均一となるように、基材に高い張力をかけて平面性を高めることが行われうる。一方、基材を搬送する際に、基材に高い張力がかかると、基材の変形が発生しうる。そこで、繰出しのときには、基材の張力を低くし、塗布装置付近では、基材の張力を高くすることが行われている。
【0005】
単一のニップロール等の装置を用いて、繰出しのときの張力を、コーティング厚が均一となるような張力まで高めると、当該装置の前後において、基材にかかる張力の変化が大きくなり、これにより、基材の寸法が大きく変化して傷が発生しうる。
基材にかかる張力の変化を緩やかにするには、多数の搬送ロールを用いて搬送することが考えられる。しかしながら、搬送ロールの前後における張力変化が小さくても基材の寸法変化は起こりうるため、基材の変形は発生しうる。このように変形した基材が、多数の搬送ロールにより塗布装置へ搬送されると、搬送ロールとの接触により、基材に傷が発生しうる。
【0006】
傷が発生した基材に液晶組成物を塗布して、液晶硬化フィルムを製造すると問題が生じうる。例えば、液晶組成物の塗布を行う前に、基材に配向規制力を付与する処理を行うことがあるが、傷の発生した基材を用いて、前記処理を行うと、配向欠陥が発生しうる。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたものであって、液晶組成物が塗布される基材における傷の発生を防止した、フィルムの製造方法、及び製造装置並びに液晶硬化フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、基材の搬送を、基材の液晶組成物が塗布される面を非接触状態で支持する搬送部材により、液晶組成物の塗布を行うまでの間、当該基材の液晶組成物が塗布される面との非接触状態を維持して行うことにより、前記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0009】
〔1〕 基材と、前記基材の表面Sに形成された液晶組成物層と、を備えるフィルムの製造方法であって、
前記基材を、搬送経路に沿って、塗布装置に搬送する工程1と、
前記塗布装置により、前記表面Sに、液晶組成物を塗布して、前記液晶組成物層を形成する工程2と、を含み、
前記基材の搬送は、搬送部材を用いて行い、
前記搬送部材は、前記表面Sを非接触状態で支持する部材であり、前記搬送は、前記工程2を行う前において、前記搬送部材と、前記表面Sとの非接触状態を維持して行う、フィルムの製造方法。
〔2〕 前記基材の前記表面Sに、配向規制力を付与する工程Aを含み、
前記工程Aを行った後前記工程2を行うまでの間、前記基材の搬送を、前記表面Sと他の部材との非接触状態を維持して行う、〔1〕に記載のフィルムの製造方法。
〔3〕 前記工程Aは、ラビング処理、光配向処理、及び延伸処理から選ばれる処理方法により行う、〔2〕に記載のフィルムの製造方法。
〔4〕 前記工程1において、前記基材が、前記基材と、前記基材の前記表面Sに貼合された保護フィルムとを備える保護フィルム付き基材とされた状態で搬送される、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
〔5〕 前記工程2の前に行う、工程B1及び工程B2を含み、
前記工程B1は、前記保護フィルム付き基材から前記保護フィルムを剥離して、前記表面Sが露出した前記基材を得る工程であり、
前記工程B2は、前記工程B1を行った後の前記基材の張力を、遮断する工程である、〔4〕に記載のフィルムの製造方法。
〔6〕 前記基材は、延伸処理により、配向規制力を制御可能な材料からなる、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
〔7〕 前記搬送部材と、前記基材の前記表面Sとの間隔は、1mm以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
〔8〕 前記塗布装置よりも前記搬送経路の上流における前記基材の搬送張力T1は、30N/m以上500N/m以下である、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
〔9〕 前記搬送部材は、前記基材を非接触状態に保持する気体を噴出する孔を有する部材であり、
前記気体は、圧力が0.05MPa以上0.7MPa以下の高圧空気である、〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
〔10〕 前記搬送部材は、搬送方向に平行な方向の断面が弧状の断面弧状部を有する部材である、〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
〔11〕 前記搬送部材は複数の孔を有する多孔質材料からなる部材であり、前記孔の平均孔径は10μm以下である、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
〔12〕 前記工程2における、前記基材の搬送張力T2は200N/m以上であり、
前記塗布装置よりも前記搬送経路の上流における前記基材の搬送張力T1は、前記搬送張力T2よりも低く、かつ、前記搬送張力T1は、前記基材の繰出しから前記工程2を行うまでの間に段階的に高くなるように設定されている、〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
〔13〕 〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法において用いるフィルムの製造装置であって、
前記基材の前記表面Sに、液晶組成物を塗布して、前記液晶組成物の層を形成する塗布装置と、
前記基材を、前記塗布装置に搬送する搬送部材と、を備え、
前記搬送部材は、前記表面Sを非接触状態で支持した状態で前記基材を搬送する搬送部材である、フィルムの製造装置。
〔14〕 基材と、前記基材の表面Sに形成された液晶硬化層とを備える液晶硬化フィルムの製造方法であって、
請求項1~12のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法により、前記基材と、前記基材の前記表面Sに形成された前記液晶組成物層とを備えるフィルムを製造する工程、並びに
前記工程2よりも前記搬送経路の下流において行う、工程3A及び工程3Bを含み、
前記工程3Aは、前記液晶組成物層を硬化して前記基材の前記表面Sに前記液晶硬化層を形成する工程であり、
前記工程3Bは、前記液晶硬化層の上にさらにハードコート層を形成する工程であり、
前記工程2から前記工程3Aへの搬送(2-3A)は、搬送部材(2-3A)を用いて行い、前記搬送部材(2-3A)は、前記フィルムの前記液晶組成物層側の面を非接触状態で支持する搬送部材であり、前記搬送(2-3A)は、前記工程2を行った後から前記工程3Aを行うまでの間、前記搬送部材(2-3A)と、前記フィルムの前記液晶組成物層側の面との非接触状態を維持して行い、かつ、
前記工程3Aから前記工程3Bへの搬送(3A-3B)は、搬送部材(3A-3B)を用いて行い、前記搬送部材(3A-3B)は、前記フィルムの前記液晶硬化層側の面を非接触状態で支持する搬送部材であり、前記搬送(3A-3B)は、前記工程3Aを行った後から前記工程3Bを行うまでの間、前記搬送部材(3A-3B)と、前記フィルムの前記液晶硬化層側の面との非接触状態を維持して行う、液晶硬化フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶組成物を塗布される基材における傷の発生を防止した、フィルムの製造方法、及び製造装置並びに液晶硬化フィルムの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るフィルムの製造方法に用いる装置を模式的に示した側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るフィルムの製造方法において得られるフィルムを模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、保護フィルム付き基材を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、搬送部材を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係るフィルムの製造方法に用いる装置を模式的に示した側面図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態で説明する搬送部材を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0013】
以下の説明において、ある層の「面内方向」とは、別に断らない限り、層平面に平行な方向を表す。
【0014】
以下の説明において、ある層の「厚み方向」とは、別に断らない限り、層平面に垂直な方向を表す。よって、別に断らない限り、ある層の面内方向と厚み方向とは、垂直である。
【0015】
以下の説明において、「長尺」のフィルム(当該フィルムには以下で説明する「基材」も含む)とは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0016】
本願において、フィルム(当該フィルムには以下で説明する「基材」も含む)のMD方向とは、製造装置又は裁断装置において搬送される長尺のフィルム及びそれが切断されて得られる裁断後のフィルムが搬送される方向であり、TD方向とは、MD方向に対して垂直で、フィルムの面に平行な方向である。MD方向は、製造装置等において搬送される長尺状のフィルム及び裁断後のフィルムの長手方向と一致し、TD方向は、製造装置又は裁断装置において搬送される長尺状のフィルム及び裁断後のフィルムの幅方向と一致する。
【0017】
縦延伸とは、別に断らない限り、フィルム(延伸前のフィルム、延伸前の基材も含む)を、フィルムの長手方向に延伸することを表し、横延伸とは、別に断らない限り、フィルムをその幅方向に延伸することを表す。斜め延伸とは、別に断らない限り、フィルムを斜め方向に延伸することを表す。フィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの幅手方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
【0018】
以下の説明において、ある層の面内位相差Reは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。位相差の測定波長は、別に断らない限り、590nmである。面内位相差Reは、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定できる。
【0019】
以下の説明において、ある層の遅相軸とは、別に断らない限り、面内方向の遅相軸をいう。
【0020】
以下の説明において、要素の方向が「平行」及び「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±4°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0021】
以下の説明において、置換基を有する基の炭素原子数には、別に断らない限り、前記置換基の炭素原子数を含めない。よって、例えば「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基」との記載は、置換基の炭素原子数を含まないアルキル基自体の炭素原子数が1~20であることを表す。
【0022】
以下の説明において、「偏光板」は、別に断らない限り、樹脂フィルム等の可撓性を有するフィルム及びシートを含む用語として用いる。
【0023】
[本発明のフィルムの製造方法の概要]
本発明の、フィルムの製造方法は、基材と、基材の表面Sに形成された液晶組成物層と、を備えるフィルムの製造方法である。ここで用いられる通り、「表面S」の用語は、基材の、液晶組成物の塗布対象となる表面を示す。本発明のフィルムの製造方法は、基材を、搬送経路に沿って、塗布装置に搬送する工程1と、塗布装置により、基材の表面Sに、液晶組成物を塗布して、液晶組成物層を形成する工程2と、を含む。本発明のフィルムの製造方法において、基材の搬送は、搬送部材を用いて行う。搬送部材は、基材の表面Sを非接触状態で支持する搬送部材である。基材の搬送は、工程2を行う前において、搬送部材と、基材の表面Sとの非接触状態を維持して行う。本発明において、ある表面と、ある部材との「非接触状態」とは、当該部材が、当該表面と「直接」接触しない状態を意味し、当該部材が、対象となる面と間接的に接触することは含まれる。「間接的」な接触とは、当該部材と対象となる面とが、それらの間に位置するさらに別の部材を介して接触することをいう。例えば対象となる面に保護フィルム等が貼合された状態である場合に、対象となる面に貼合された保護フィルムと搬送部材とが直接接触することは、対象となる面と搬送部材との「非接触状態」に含まれる。
【0024】
[本発明のフィルムの製造装置の概要]
本発明のフィルムの製造装置は、本発明のフィルムの製造方法で用いる製造装置であって、基材の表面Sに、液晶組成物を塗布して、液晶組成物の層を形成する塗布装置と、基材を、塗布装置に搬送する搬送部材と、を備える。本発明のフィルムの製造装置において、搬送部材は、別に断らない限り、基材の表面Sを非接触状態で支持した状態で基材を搬送する搬送部材である。
【0025】
[本発明の液晶硬化フィルムの製造方法の概要]
本発明の液晶硬化フィルムの製造方法は、本発明のフィルムの製造方法により得られるフィルムの液晶組成物層を、硬化させてなる液晶硬化フィルムの製造方法である。即ち、本発明の液相硬化フィルムの製造方法は、基材と、基材の表面Sに形成された液晶硬化層とを備える液晶硬化フィルムの製造方法であって、本発明のフィルムの製造方法により、基材と、基材の表面Sに形成された液晶組成物層とを備えるフィルムを製造する工程、並びに、工程2よりも搬送経路の下流において行う、工程3A及び工程3Bを含む。工程3Aは、液晶組成物層を硬化して基材の表面Sに液晶硬化層を形成する工程であり、工程3Bは、液晶硬化層の上にさらにハードコート層を形成する工程である。工程2から工程3Aへの搬送(以下において、この特定の搬送を、「搬送(2-3A)」という場合がある)を、搬送部材(以下において、この工程に用いる搬送部材を、他の工程に用いる搬送部材との区別のため、「搬送部材(2-3A)」という場合がある)を用いて行う。搬送部材(2-3A)は、フィルムの液晶組成物層側の面を非接触状態で支持する搬送部材である。搬送(2-3A)は、工程2を行った後から工程3Aを行うまでの間、搬送部材(2-3A)と、フィルムの液晶組成物層側の面との非接触状態を維持して行う。工程3Aから工程3Bへの搬送(以下において、この特定の搬送を、「搬送(3A-3B)」という場合がある)を、搬送部材(以下において、この工程に用いる搬送部材を、「搬送部材(3A-3B)」という場合がある)を用いて行う。搬送部材(3A-3B)は、フィルムの液晶硬化層側の面を非接触状態で支持する搬送部材である。搬送(3A-3B)は、工程3Aを行った後から工程3Bを行うまでの間、搬送部材(3A-3B)と、フィルムの液晶硬化層側の面との非接触状態を維持して行う。
【0026】
[実施形態1]
以下、本発明に係る実施形態1のフィルムの製造方法及び製造装置、ならびに、前記フィルムの製造方法により得られるフィルムを用いた液晶硬化フィルムの製造方法について、
図1~4を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態1に係るフィルムの製造方法に用いる装置を模式的に示した側面図である。
図2は、実施形態1に係るフィルムの製造方法において得られるフィルムを模式的に示す断面図である。
図3は、保護フィルム付き基材を模式的に示す断面図である。
図4は、搬送部材を模式的に示す断面図である。
【0027】
[1.フィルムの製造方法]
本実施形態のフィルムの製造方法は、繰り出し装置101により繰り出された基材1を、塗布装置110に搬送する工程1と、塗布装置110により、基材1Aの表面Sに、液晶組成物を塗布して液相組成物層を形成する工程2と、を含む。本実施形態のフィルムの製造方法は、
図1に示すフィルムの製造装置100を用いて行われる。
【0028】
本実施形態のフィルムの製造方法においては、繰出し装置101により繰り出された基材1を、図示右方向(A1で示す方向)に搬送し、装置102において、基材1の表面S(
図1において下側面)に、配向規制力を付与する(工程A)。この工程Aを行った後、基材(配向規制力が付与された基材1A、以下単に「基材1A」ともいう)の表面Sに保護フィルム2を貼合して、保護フィルム付き基材20とし、当該保護フィルム付き基材20を搬送する。本実施形態のフィルムの製造方法は、塗布装置110に搬送される前(工程2の前)に、保護フィルム付き基材20から保護フィルム20を剥離して基材1Aを得る工程B1と、工程B1を行った後に得られる基材1Aの張力を遮断する工程B2とを含む。工程B2を行った後の基材1Aを、基材1Aの表面S(
図1における下側面)を非接触状態で支持する搬送部材121,122により塗布装置110に搬送する。そして、塗布装置110により基材1Aの表面Sに、液晶組成物を塗布し、液晶組成物層5を形成する工程2を行う。これにより、
図2に示すように、基材1Aと基材1Aの表面Sに形成された液晶組成物層5とを備えるフィルム10が得られる。本発明において、工程A、工程B1、工程B2は任意の工程であり、これらの任意の工程を行うこと及び工程を行うタイミングは本実施形態で説明する態様に限定されない。以下、各工程について説明する。
【0029】
[1.1.工程1]
工程1は基材1を塗布装置110に搬送する工程である。
工程1においては、繰出し装置101から繰り出された基材1を、搬送部材121,122を用いて塗布装置110に搬送する。
【0030】
[基材]
基材としては、通常、樹脂フィルム又はガラス板を用いうる。基材としては長尺の樹脂フィルムを用いることが好ましい。基材としては、延伸処理により配向規制力を制御可能な材料からなるものが好ましい。
【0031】
基材として用いられる樹脂フィルムとしては、例えば脂環式構造含有重合体を含む樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、アクリルフィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP、OPP)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリスチレン(PS)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム等のプラスチックのフィルム、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム、アラミドフィルム等のスーパーエンプラのフィルムが挙げられる。
【0032】
基材として用いうる樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂からなり、熱可塑性樹脂は、重合体を含む。当該重合体としては、脂環式構造含有重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル重合体、メタクリル重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、アラミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。延伸処理により配向規制力を制御可能な材料であるという観点から、脂環式構造含有重合体が好ましい。
【0033】
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する非晶性の重合体であり、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いることができる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素数に特に制限はないが、通常4個~30個、好ましくは5個~20個、より好ましくは6個~15個である。
【0034】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は使用目的に応じて適宜選択されるが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位をこのように多くすることで、樹脂フィルムの耐熱性を高めることができる。
【0035】
脂環式構造含有重合体は、具体的には、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン重合体及びこれらの水素添加物がより好ましい。
【0036】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が特に好ましい。
上記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002-321302号公報に開示されている重合体から選ばれる。
【0037】
脂環式構造含有重合体は、そのガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃~250℃である。ガラス転移温度がこのような範囲にある脂環式構造含有重合体は、高温下での使用における変形及び応力が生じ難く、耐久性に優れる。
【0038】
脂環式構造含有重合体の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000~100,000、好ましくは25,000~80,000、より好ましくは25,000~50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、樹脂フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされる。
【0039】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、通常1~10、好ましくは1~4、より好ましくは1.2~3.5である。
【0040】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。オリゴマー成分の量が前記範囲内にあると、表面Sにおける微細な凸部の発生が減少し、厚みのバラツキが小さくなり面精度が向上する。オリゴマー成分の量の低減は、重合触媒及び水素化触媒の選択;重合、水素化等の反応条件;樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件;などの条件を適切に設定することにより、行いうる。
オリゴマーの成分量は、前述のGPCによって測定することができる。
【0041】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、脂環式構造含有重合体のみからなってもよいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含んでもよい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂中の、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」を挙げうる。
【0042】
樹脂は、上述の重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー、及び、軟質重合体等の、脂環式構造含有重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
[工程A]
基材は、液晶組成物の塗布を行う前に、配向規制力が付与されていることが好ましい。本実施形態のフィルムの製造方法は、基材1の表面S(
図1における下側面)に配向規制力を付与する工程Aを含む。
図1において、102は配向規制力を付与する装置である。
【0044】
工程Aは、基材1の表面Sに配向規制力を付与する工程である。工程Aを行うことにより、基材の表面Sに、配向規制力を付与し、液晶組成物層における液晶化合物の配向を促進しうる。配向規制力とは、液晶組成物に含まれる液晶化合物等の液晶化合物を配向させることができる、面の性質をいう。
【0045】
工程Aは、ラビング処理、光配向処理、及び延伸処理から選ばれる処理方法により行いうる。これらの処理方法のうち、製造効率に優れるという観点から、延伸処理が好ましい。
【0046】
延伸処理を行う場合、延伸する方向は、フィルムに求められる所望の配向方向に応じて適宜設定しうる。延伸処理は、斜め延伸のみでもよく、斜め延伸と、縦延伸(基材の長手方向への延伸)及び/又は横延伸(基材の幅手方向への延伸)とを組み合わせて行ってもよい。延伸倍率は、基材の複屈折が所望の範囲となるように、適宜設定しうる。延伸処理は、テンター延伸機などの既知の延伸機を用いて行いうる。
【0047】
工程Aを行った後、工程2を行うまでの間、工程Aを行った後の基材1Aの表面Sに該当する表面1A1と他の部材との非接触状態を維持して、当該基材1Aを搬送する。
【0048】
[保護フィルム付き基材]
本実施形態では、工程1において、基材が、基材と、基材の表面Sに貼合された保護フィルムとを備える保護フィルム付き基材とされた状態で搬送される。具体的には、配向規制力が付与された基材1Aの表面1A1(即ち基材1Aの表面S)の上に保護フィルム2が貼合されてなる保護フィルム付き基材20を搬送する。つまり、工程Aを行った後に得られた配向規制力が付与された基材1Aは、表面1A1に保護フィルム2を貼合した状態(保護フィルム付き基材20)として搬送する。これにより基材1Aの表面1A1と、保護フィルム2以外の他の部材との非接触状態が維持され、基材1Aの表面1A1におけるキズの発生や、当該面へのごみ等の付着を防止することができる。
【0049】
配向規制力が付与された基材1Aへの保護フィルム2の貼合(保護フィルム貼合工程)は、繰出し装置103から繰り出された保護フィルム2を、基材1Aの下側面に重ねて、2本のニップロール105A,105Bにより押圧することにより行いうる。
【0050】
保護フィルム付き基材20は、
図3に示すように、配向規制力が付与された基材1Aの表面1A1の上に保護フィルム2を備える。
【0051】
保護フィルムとしては、特に限定はないが、樹脂製のフィルムが挙げられる。ロールトゥロール法によって効率的に製造できるという観点から、長尺の樹脂製のフィルムが好ましい。保護フィルムを構成する樹脂としては、例えば、脂環式構造含有重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の重合体を含む樹脂が挙げられる。また、このような樹脂フィルムとしては、例えば、表面に適切な離型剤による離型処理が施されたフィルムや、表面に適切な粘着剤による粘着処理が施されたフィルムを用いてもよい。
保護フィルムは基材1Aに対して直接または粘着剤等を介して貼合しうる。
【0052】
[工程B1及び工程B2]
本実施形態のフィルムの製造方法は、工程2の前に行う、保護フィルム付き基材から保護フィルムを剥離して、表面Sが露出した基材を得る工程(工程B1)と、工程B1を行った後の基材の張力を、遮断する工程(工程B2)と、を含む。
【0053】
工程B1を行うことにより、基材を保護する保護フィルムが剥離され、基材の表面Sが露出し、表面Sへの液晶組成物の塗布が可能となる。工程B1において、保護フィルム付き基材20の保護フィルム2は、ニップロール106A,106Bを通過した後に剥離され、巻取装置104により巻き取られる。保護フィルム付き基材20から保護フィルム2を剥離した後(工程B1の後)に得られる基材1Aは、図示右方向に搬送され、この基材1Aに対し、基材の張力を遮断する工程B2を行う。
【0054】
工程B1を行うと、基材1Aにおいて、保護フィルムを剥離することに起因する張力のハンチング等が発生しうるが、工程B2を行うことにより、基材の張力が調整され、張力のハンチングを防止しうる。工程B2は、基材1Aの表面1A1とは反対側の面(
図1における上の面)のみに接触するサクションロール等のテンションカット装置(107,108)を、当該面に接触させることにより行いうる。工程B1を行った後においては、基材1Aの表面1A1は露出状態となるが、工程B2において、基材1Aの表面1A1とは反対側の面のみに接触する部材を用いて張力を遮断するので、工程B2においても、基材1Aの表面1A1と他の部材との非接触状態が維持されうる。
【0055】
[搬送部材]
工程B2を行った後の基材1Aは、基材1Aの表面1A1を非接触状態で支持する搬送部材121,122により塗布装置110に搬送される。これにより、工程1は、工程2を行うまでの間、基材1Aの表面1A1との非接触状態を維持して行いうる。
【0056】
本実施形態で用いる搬送部材121は、円筒形状の部材であり、
図4に示すように、搬送方向に平行な方向の断面が円形状をなす部材であり、外周部分の全域が断面弧状部121Rである。本発明において、「搬送方向に平行な方向の断面」とは基材を搬送する方向に対して平行な面で切断したときの断面のことを言う。本実施形態において「搬送方向に平行な方向の断面」は、搬送部材121を搬送方向A1(
図1の左右方向)に平行な面で切断したときの断面である。
【0057】
搬送部材121と基材1Aの表面1A1とは、全域において非接触であり、基材1Aは、搬送部材121の外周部分の一部に沿って、近接する位置に配される(
図4参照)。本発明において「近接する位置」とは、断面弧状部と樹脂フィルムとの間隔Xが1mm以下である部分をいう。
【0058】
搬送部材121と、基材1Aの表面1A1との間隔Xは、1mm以下に保持するのが好ましく、0.3mm以下がより好ましい。搬送部材121と基材1Aとの間隔を上限値以下とすることにより、基材1Aを、安定的に搬送することができる。間隔Xの下限は、例えば10μm以上としうる。
【0059】
本実施形態では、搬送部材122は、搬送部材121と同形同大であるので、搬送部材122の説明は省略する。2つの搬送部材の配置位置は、適宜設定することができる。
【0060】
本実施形態においては、搬送部材121,122は、基材1Aを非接触状態に保持する気体を噴出する孔を有する部材としうる。搬送部材としては、気体を噴出する孔を有する材料からなるものが好ましく、多孔質材料からなる部材がより好ましい。このような多孔質材料としては、ポーラスカーボン、ポーラスアルミナ等が挙げられる。このような多孔質材料からなる搬送部材を用いると、搬送部材から噴出する気体の圧力により基材を浮上させることができるので、基材の表面Sと搬送部材121,122との接触を防止し、フィルムの製造工程において、傷の発生をより有効に抑制することができる。
【0061】
搬送部材121,122が多孔質材料からなる部材である場合、搬送部材は、その表面に複数の孔を有することになる。その平均孔径は好ましくは10μm以下、より好ましくは2μm以下である。孔径が大きすぎる場合、一部の孔がふさがれて、他の孔から気体の漏れが生じることがあるが、孔径を上限値以下とすると、一部の孔がふさがれたとしても、気体の漏れを防止することができ、基材1Aが搬送部材121,122に均一な力で支持されうる。このことは、以下のメカニズムによるものと推測される。孔径が大きすぎる場合、一部の孔が基材で覆われて浮上しているときに、圧力の変動が搬送部材121,122の内部構造を伝わって、基材が覆われていない部分から多量の空気が漏れ出てしまい、充分に基材を浮上させられなくなることがある。孔径を上限値以下とすると、一部の孔が基材で覆われて浮上しているときにも、圧力の変動が搬送部材の内部構造に伝わりにくく、基材が覆われていない部分への大量の空気の漏れが抑制され、基材1Aが搬送部材121、122に均一な力で支持されうる。多孔質材料の平均孔径の下限は、例えば10nm以上としうる。
【0062】
搬送部材121,122が気体を噴出する孔を有する部材である場合、当該気体は、高圧空気であるのが好ましい。気体が高圧空気である場合、その圧力は好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上であり、好ましくは0.7MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。かかる圧力は、搬送部材の孔の内部であって、搬送部材の外部へ気体が噴出する直前の時点における圧力である。搬送部材121,122がこのような態様であると、基材との非接触状態を保った状態で、基材の搬送を行い得る。
【0063】
[1.2.工程2]
工程2は塗布装置110により、基材1Aの表面Sに該当する表面である表面1A1に液晶組成物を塗布して液晶組成物層5を形成する工程である。工程2を行うことにより、基材1Aと、液晶組成物層5とを備えるフィルム10が得られる(
図2参照)。
【0064】
液晶組成物を塗布する方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。
【0065】
[液晶組成物]
工程2で用いる液晶組成物は、液晶化合物を含む組成物である。この液晶組成物は、2種類以上の成分を含む材料だけでなく、1種類の液晶化合物のみを含む材料を包含する。
【0066】
液晶化合物は、液晶性を有するので、通常、当該液晶化合物を配向させた場合に、液晶相を呈することができる。
【0067】
液晶化合物は、重合性を有することが好ましい。よって、液晶化合物は、その分子が、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基等の重合性基を含むことが好ましい。液晶化合物の分子1つ当たりの重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。重合性を有する液晶化合物は、液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の屈折率楕円体において最大の屈折率を示す方向を変化させないように重合体となることができる。よって、液晶硬化層において液晶化合物の配向状態を固定したり、液晶化合物の重合度を高めて液晶硬化層の機械的強度を高めたりすることが可能である。
【0068】
液晶化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する液晶化合物を用いる場合に、液晶組成物の塗工性を特に良好にできる。
【0069】
測定波長590nmにおける液晶化合物の複屈折Δnは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である。このような範囲の複屈折Δnを有する液晶化合物を用いる場合に、配向欠陥の少ない液晶硬化層を得やすい。
【0070】
液晶化合物の複屈折は、例えば、下記の方法により測定できる。
液晶化合物の層を作製し、その層に含まれる液晶化合物をホモジニアス配向させる。その後、その層の面内位相差を測定する。そして、「(層の面内位相差)÷(層の厚み)」から、液晶化合物の複屈折を求めることができる。この際、面内位相差及び厚みの測定を容易にするために、ホモジニアス配向させた液晶化合物の層は、硬化させてもよい。
【0071】
液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0072】
液晶化合物の例としては、下記式(I)で表される液晶化合物が挙げられる。
【0073】
【0074】
式(I)において、Arは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されていてもよい、炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ペンゾピラノン環等が挙げられる。複素環としては、例えば、1,3-ジチオラン環、ピロリジン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニル環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0075】
式(I)において、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH2-、-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF2-O-、-O-CF2-、-CH2-CH2-、-CF2-CF2-、-O-CH2-CH2-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH2-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH2-、-CH2-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH2-、-CH2-CH2-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH2-CH2-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH3)-、-C(CH3)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0076】
式(I)において、A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。A1、A2、B1及びB2が表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、3~100である。中でも、A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の芳香族基が好ましい。
【0077】
A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基等の、炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基等の、炭素原子数5~20のビシクロアルカンジイル基;等が挙げられる。中でも、置換されていてもよい炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。環状脂肪族基は、トランス体であってもよく、シス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。中でも、トランス体がより好ましい。
【0078】
A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
A1、A2、B1及びB2における芳香族基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
【0080】
A1、A2、B1及びB2における芳香族基が有しうる置換基としては、例えば、A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0081】
式(I)において、Y1~Y4は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0082】
式(I)において、G1及びG2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH2-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G1及びG2の前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G1及びG2の両末端のメチレン基(-CH2-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
【0083】
G1及びG2における炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
【0084】
G1及びG2における炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数3~20のアルキレン基が挙げられる。
【0085】
式(I)において、P1及びP2は、それぞれ独立して、重合性基を表す。P1及びP2における重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH2=CR31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。中でも、CH2=CR31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH2=CH-C(=O)-O-(アクリロイルオキシ基)、CH2=C(CH3)-C(=O)-O-(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0086】
式(I)において、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【0087】
式(I)で表される液晶化合物は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0088】
式(I)で表される液晶化合物としては、具体的には、例えば、下記の式で表される化合物が挙げられる。
【0089】
【0090】
液晶組成物は、必要に応じて、液晶化合物に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
【0091】
例えば、液晶化合物の重合を促進するため、液晶組成物は、任意の成分として重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれを用いてもよい。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点では、光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0092】
また、重合開始剤の種類は、液晶組成物に含まれる重合性の化合物の種類に応じて選択しうる。例えば、重合性の化合物がラジカル重合性であれば、ラジカル重合開始剤を使用しうる。また、重合性の化合物がアニオン重合性であれば、アニオン重合開始剤を使用しうる。さらに、重合性の化合物がカチオン重合性であれば、カチオン重合開始剤を使用しうる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0093】
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オキシムエステル系重合開始剤がより好ましい。オキシムエステル系重合開始剤とは、オキシムエステル基を含有する重合開始剤である。オキシムエステル系重合開始剤を用いることにより、液晶組成物の硬化物の耐溶解性を効果的に高めることができる。
【0094】
重合開始剤の具体例としては、オキシムエステル系重合開始剤としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-(4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム))、エタノン,1-(9-エチル-6(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)、特開2001-233842号公報に記載されたオキシムエステル系重合開始剤、などが挙げられる。また、オキシムエステル系重合開始剤の例を商品名で挙げると、BASF社製のIrgacureOXE01、IrgacureOXE02、IrgacureOXE04;ADEKA社製のアデカアークルズN-1919T、アデカアークルズNCI730;などが挙げられる。
【0095】
重合開始剤の量は、液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。重合開始剤の量が前記範囲に収まる場合、重合を効率的に進行させることができる。
【0096】
例えば、液晶組成物は、任意の成分として、界面活性剤を含んでいてもよい。特に、配向性に優れた液晶硬化層を安定して得る観点から、界面活性剤としては、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤が好ましい。以下の説明において、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤を、適宜「フッ素系界面活性剤」ということがある。
【0097】
界面活性剤はノニオン系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤がイオン性基を含まないノニオン系界面活性剤である場合に、液晶硬化層の面状態及び配向性を、特に良好にすることができる。
【0098】
界面活性剤としては、例えば、AGCセイミケミカル社製のサーフロンシリーズ(S242、S386、S420など)、DIC社製のメガファックシリーズ(F251、F554、F556、F562、RS-75、RS-76-Eなど)、ネオス社製のフタージェントシリーズ(FTX601AD、FTX602A、FTX601ADH2、FTX650A、209Fなど)等が挙げられる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0099】
界面活性剤の量は、液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.010重量部以上であり、好ましくは1.00重量部以下、より好ましくは0.50重量部以下である。界面活性剤の量が前記の範囲にある場合、液晶硬化層の面状態を良好にしたり、液晶硬化層の配向欠陥の発生を抑制したりできる。
【0100】
例えば、液晶組成物は、任意の成分として、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤を用いることにより、液晶組成物のゲル化を抑制できるので、液晶組成物のポットライフを長くできる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類状を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0101】
酸化防止剤の量は、液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.005重量部以上、特に好ましくは0.010重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下、特に好ましくは1重量部以下である。酸化防止剤の量が、前記範囲にある場合に、液晶組成物のポットライフを効果的に長くできる。
【0102】
液晶組成物は、任意の成分として、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、液晶化合物を溶解できるものが好ましい。このような溶媒としては、通常、有機溶媒を用いる。有機溶媒の例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;及びトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;が挙げられる。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0103】
溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、好ましくは60℃~250℃、より好ましくは60℃~150℃である。
【0104】
溶媒の量は、液晶化合物100重量部に対して、好ましくは200重量部以上、より好ましくは250重量部以上、特に好ましくは300重量部以上であり、好ましくは650重量部以下、より好ましくは600重量部以下、特に好ましくは500重量部以下である。溶媒の量が前記範囲の下限値以上である場合に、異物発生の抑制ができる。また、溶媒の量が前記範囲の上限値以下である場合に、乾燥負荷の低減ができる。
【0105】
液晶組成物が含みうる任意のその他の成分としては、例えば、金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;紫外線吸収剤;赤外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらの成分の量は、液晶化合物の合計100重量部に対して、各々0.1重量部~20重量部としうる。
【0106】
[1.3.基材の搬送張力]
本実施形態のフィルムの製造方法における基材の搬送張力は以下のようにしうる。
塗布装置110よりも搬送経路の上流における基材1(基材1A)の搬送張力T1は、好ましくは30N/m以上、より好ましくは50N/m以上であり、好ましくは500N/m以下、より好ましくは200N/m以下である。塗布装置110よりも搬送経路の上流、つまり工程1における基材1(基材1A)の搬送張力T1を前記上限値以下とすることにより、搬送張力に起因する基材1(基材1A)の変形を防止することができる。搬送張力T1を前記下限値以上とすることにより、工程2における搬送張力との差を小さくし、張力差に起因する基材の寸法変化を抑制することができる。
【0107】
工程2における、基材1Aの搬送張力T2は好ましくは200N/m以上、より好ましくは250N/m以上であり、好ましくは500N/m以下、より好ましくは400N/m以下である。工程2における搬送張力を前記下限値以上とすることにより、工程2における基材の平面性を高め、液晶組成物のコーティング厚を均一とすることができる。搬送張力T2を前記上限値以下とすることにより、液晶組成物を塗布した基材の変形を防止しうる。
【0108】
搬送張力T1は、搬送張力T2よりも低く、かつ、基材の繰出しから工程2を行うまでの間に段階的に高くなるように設定されているのが好ましい。搬送張力T1及び搬送張力T2をこのような態様とすることにより、搬送張力の急激な上昇を抑制することができ、これにより基材の寸法変化を抑制し、寸法変化に起因するキズの発生を防止することができる。段階的な搬送張力の上昇は、工程1における搬送経路内に、複数のサクションロール及び/又はニップロールを設け、それぞれの上流より下流において搬送張力が高まるよう、それらの駆動速度を調整することにより達成しうる。
【0109】
[2.フィルムの製造装置]
上述した本実施形態のフィルムの製造方法で用いる製造装置100は、基材1の表面Sに、液晶組成物を塗布して、液晶組成物の層5を形成する塗布装置110と、基材1(基材1A)を、塗布装置110に搬送する搬送部材121,122と、を備える。本実施形態のフィルムの製造装置において、搬送部材121,122は、基材1の表面1A1(即ち基材1の表面S)を非接触状態で支持した状態で、基材を搬送する搬送部材である。
【0110】
フィルムの製造装置100は、搬送部材121,122及び塗布装置110以外に、基材1を繰り出す繰出し装置101、基材1に配向規制力を付与する装置102、保護フィルム2を繰り出す繰出し装置103、保護フィルム付き基材20から剥離した保護フィルム2を巻き取る巻取装置104、サクションロール107,108、ニップロール105A,105B,106A,106Bを備える。
【0111】
[3.作用・効果]
以下、本実施形態のフィルムの製造方法及び製造装置の作用及び効果について説明する。
本実施形態のフィルムの製造方法においては、繰出し装置101から繰り出された基材1を、A1で示す方向に搬送し、配向規制力を付与する装置102において、基材1の表面Sに、配向規制力を付与する(工程A)。工程Aを行うことにより、配向規制力が付与された基材1Aが得られる。
工程Aを行った後の基材(基材1A)は、その表面1A1に、繰出し装置103から繰り出された保護フィルム2が貼合され、保護フィルム付き基材20の状態で搬送される。これにより、基材の表面1A1と、保護フィルム2以外の他の部材との直接的な接触が防止されるので、基材1Aは、基材1Aの表面1A1と他の部材との非接触状態を維持した状態で搬送される。
保護フィルム2を備えた態様(保護フィルム付き基材20の状態)の基材1Aは、塗布装置110に搬送される前に、その表面1A1から、保護フィルム20を剥離される(工程B1)。工程B1を行った後に得られた基材1Aの表面1A1とは反対側の面に、サクションロール107を接触させて、基材1Aの張力を遮断する(工程B2)。これにより、保護フィルム2を剥離した後の基材1Aにおいて、張力が調整され、張力のハンチングの発生を防止しうる。
工程B2を行った後に得られた基材1Aを、基材1Aの表面1A1を非接触状態で支持した状態で搬送する、搬送部材121,122により塗布装置110に搬送する。本実施形態では、搬送部材121,122による搬送を行った後、サクションロール108を経て、塗布装置110に搬送する。サクションロール108は基材1Aの表面1A1とは反対側の面に接触して基材の張力を調整する部材である。したがって、工程B2を行った後の基材1Aの搬送を、工程2を行うまでの間、基材1Aの表面1A1との非接触状態を維持して行うことができる。
次に塗布装置110に搬送した基材1Aの表面1A1に、液晶組成物を塗布し、液晶組成物層5を形成する工程2を行う。これにより、
図2に示すように、基材1Aと基材1Aの表面1A1に形成された液晶組成物層5とを備えるフィルム10が得られる。
【0112】
本実施形態のフィルムの製造方法においては、基材1(基材1A)の搬送を、基材1(基材1A)の表面1A1を非接触状態で支持する搬送部材121,122により、工程2を行うまでの間、基材1(1A)の表面1A1との非接触状態を維持して行う。
また、本実施形態によれば、工程Aを行った後の基材1Aは、保護フィルムが貼合された状態で搬送されるので、基材1Aの表面1A1と、保護フィルム以外の他の部材との直接的な接触が防止される。その結果、基材1Aは、工程Aの後、工程2を行うまでの間、基材1Aの表面1A1と他の部材との非接触状態を維持した状態で搬送されうる。
その結果、本実施形態のフィルムの製造方法によれば、液晶組成物が塗布される基材における傷の発生を防止した、フィルムの製造方法及び製造装置を提供することができる。
【0113】
[4.液晶硬化フィルムの製造方法]
上記のフィルムの製造方法により得られるフィルム(基材と、液晶組成物層とを備えるフィルム)を用いた液晶硬化フィルムの製造方法について説明する。
【0114】
液晶硬化フィルムの製造方法は、上記本実施形態のフィルムの製造方法により得られるフィルムの、液晶組成物層を、硬化させてなる液晶硬化フィルムの製造方法である。
【0115】
即ち、本実施形態の液晶硬化フィルムの製造方法は、基材と、基材の表面Sに形成された液晶硬化層とを備える液晶硬化フィルムの製造方法であって、本発明のフィルムの製造方法により、基材と、基材の表面Sに形成された液晶組成物層とを備えるフィルムを製造する工程、並びに、上記工程2よりも搬送経路の下流において行う、工程3A及び工程3Bを含む。
工程3Aは、液晶組成物層を硬化して基材の表面Sに液晶硬化層を形成する工程であり、工程3Bは、液晶硬化層の上にさらにハードコート層を形成する工程である。本発明において、工程3Bは任意の工程であり、この任意の工程を行うこと及び工程を行うタイミングは本実施形態で説明する態様に限定されない。
【0116】
工程2から工程3Aへの搬送(2-3A)は、フィルムの液晶組成物層側の面を非接触状態で支持する搬送部材(2-3A)により、工程2を行った後から工程3Aを行うまでの間、搬送部材(2-3A)と、フィルムの液晶組成物層側の面との非接触状態を維持して行う。
工程2から工程3Aへの搬送(2-3A)において用いる搬送部材(2-3A)は、基材1Aの搬送において用いる搬送部材121,122と、同様の構成のものを用いうる。
液晶組成物が液体であり、搬送部材(2-3A)が浮上搬送部材(即ち、上述した、表面から気体を噴出する部材)である場合、浮上搬送部材からの気体の吹付により液晶組成物が飛散してしまう可能性がある。但し、そのような飛散は、製造方法の実施の諸条件を調整することにより、低減又は防止することができる。かかる調整の例としては、液晶組成物の粘度を高める、液晶組成物を容易に乾燥するものとする、液晶組成物の層の厚みを薄くする、フィルムが工程2の終了後最初の浮上搬送部材に到達するまでの時間を延長する、フィルムが工程2の終了後最初の浮上搬送部材に到達するまでの間に適切な乾燥手段を設ける、及び浮上搬送部材からの気体の噴出を穏やかなものとする、等の調整が挙げられる。
【0117】
[工程3A]
工程3Aでは、通常、液晶組成物に含まれる重合性の化合物の重合により、液晶組成物の層を硬化させる。よって、液晶化合物が重合性を有する場合、その液晶化合物は、通常、重合する。硬化によって、硬化前の流動性が失われるので、通常、得られる液晶硬化層では、液晶化合物の配向状態は、固定される。
【0118】
重合方法としては、液晶組成物に含まれる成分の性質に適合した方法を選択しうる。重合方法としては、例えば、活性エネルギー線を照射する方法、及び、熱重合法が挙げられる。中でも、加熱が不要であり、室温で重合反応を進行させられるので、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。ここで、照射される活性エネルギー線には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光、並びに電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。
【0119】
工程3Aから工程3Bへの搬送(3A-3B)は、フィルムの液晶硬化層側の面を非接触状態で支持する搬送部材(3A-3B)により、工程3Aを行った後から工程3Bを行うまでの間、フィルムの液晶硬化層側の面との非接触状態を維持して行う。説明の便宜上、基材及び液晶硬化層を含む複層物であって、ハードコート層の形成に供されるものは、上に述べた本発明のフィルム(基材及び液晶組成物層を含む複層物)と同様に「フィルム」と称する。
工程3Aから工程3Bへの搬送(3A-3B)において用いる搬送部材(3A-3B)は、基材1Aの搬送において用いる搬送部材121,122と、同様の構成のものを用いうる。
【0120】
[工程3B]
工程3Bは、液晶硬化層の上にさらにハードコート層を形成する工程である。ハードコート層はハードコート層を形成する組成物を液晶硬化層の上に塗布して硬化させることにより形成しうる。
【0121】
ハードコート層を形成する組成物としては、例えば、活性エネルギー線により硬化しうる、活性エネルギー線硬化型樹脂と微粒子とを含む組成物が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線などが挙げられる。
【0122】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、硬化後にJIS K5600-5-4に規定される鉛筆硬度試験で、「HB」以上の硬度を示す樹脂が好ましい。
【0123】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系、多官能アクリレート系の、活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられる。なかでも、接着力が良好であり、強靭性及び生産性に優れる観点から、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂及び/又は多官能アクリレート系紫外線硬化型樹脂が好ましい。
【0124】
微粒子は、有機物から構成される有機微粒子であっても、無機物から構成される無機微粒子であってもよい。微粒子は、好ましくは無機微粒子であり、より好ましくは無機酸化物の微粒子である。微粒子を構成しうる無機酸化物としては、例えば、シリカ、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム、五酸化アンチモン、二酸化チタン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、リンをドープした酸化錫(PTO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及びフッ素をドープした酸化スズ(FTO)が挙げられる。
【0125】
微粒子としては、ハードコート層を形成するバインダーとしての樹脂との密着性と、透明性とのバランスに優れ、ハードコート層の屈折率を容易に調整できるので、シリカ微粒子が好ましい。
【0126】
ハードコート層を形成するための組成物は、微粒子を1種単独で含んでいても、2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。
【0127】
微粒子の数平均粒子径は、好ましくは1nm以上1000nm以下であり、より好ましくは、1nm以上500nm以下であり、更に好ましくは、1nm以上250nm以下である。微粒子の数平均粒子径が小さいほど、ハードコート層のヘイズを低くすることができ、微粒子と、ハードコート層を形成するバインダーとしての樹脂との密着性を高くすることができる。
【0128】
ハードコート層を形成するための組成物において、微粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対して、好ましくは10~80重量部であり、より好ましくは10~50重量部であり、更に好ましくは20~40重量部である。微粒子の含有量が上記範囲であると、ヘイズ値、全光線透過率等の光学特性に優れる。
【0129】
全光線透過率(%)は、例えば、市販されているヘイズメーター(日本電色社製「NDH 2000」)等を用いて、JIS K-7361に準拠して測定することができる。
【0130】
ハードコート層を形成するための組成物は、活性エネルギー線硬化型樹脂を溶解又は分散させるための溶剤を含んでいてもよい。該溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトングリコール等のグリコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルエチルケトオキシム等のオキシム類;及びこれらの2種以上からなる組み合わせ;等が挙げられる。
【0131】
活性エネルギー線硬化型樹脂を紫外線により硬化させる場合、ハードコート層を形成するための組成物は、更に光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、例えば、従前公知の光重合開始剤が挙げられ、具体的には、例えば、ベンゾフェノン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「ダロキュアー1173」、「イルガキュアー651」、「イルガキュアー184」、「イルガキュアー907」、「イルガキュアー754」などが挙げられる。
【0132】
ハードコート層を形成するための組成物は、上記微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂以外に、各種添加剤(例、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、溶剤、消泡剤、レベリング剤)を含んでいてもよい。
【0133】
上述した本実施形態に係る製造方法により、液晶硬化層を含む液晶硬化フィルムを製造できる。この製造方法では、通常、基材と、この基材の支持面上に形成された液晶硬化層と、液晶硬化層の上に形成されたハードコート層と、を含む液晶硬化フィルムが得られる。
【0134】
液晶硬化層の厚みは、位相差等の特性を所望の範囲にできるように、適切に設定しうる。具体的には、液晶硬化層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
【0135】
ハードコート層の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは、0.5μm以上10μm以下であり、更に好ましくは、0.5μm以上8μm以下である。
【0136】
[任意の工程]
上述した実施形態に係る液晶硬化フィルムの製造方法は、上述した工程3Aおよび工程3Bに組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
液晶硬化フィルムの製造方法は、例えば、支持面から液晶硬化層を剥離する工程、液晶硬化層の上またはハードコート層の上に、任意の層を、さらに、形成する工程を含んでいてもよい。また、液晶硬化フィルムの製造方法は、工程3Aの後に液晶硬化層を加熱する工程を含んでいてもよい。
【0137】
任意の層としては、位相差フィルム;他の部材と接着するための接着層;フィルムの滑り性を良くするマット層;反射防止層;防汚層;等が挙げられる。
【0138】
さらに、本実施形態の液晶硬化フィルムの製造方法は、例えば、基材上に形成された液晶硬化層を、任意のフィルム層に転写する工程を含んでいてもよい。よって、例えば、液晶硬化フィルムの製造方法は、基材上に形成された液晶硬化層と任意のフィルム層とを貼り合わせた後で、必要に応じて基材を剥離して、液晶硬化層及び任意のフィルム層を含む液晶硬化フィルムを得る工程を含んでいてもよい。この際、貼り合わせには、適切な粘着剤又は接着剤を用いてもよい。
【0139】
また、液晶硬化フィルムの製造方法は、工程3Aの前に、工程2で形成した液晶組成物の層を乾燥させる工程を含んでいてもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、液晶組成物の層から、溶媒を除去することができる。
【0140】
[液晶硬化フィルムの用途]
本実施形態の液晶硬化フィルムの製造方法により得られた液晶硬化フィルムは、種々の用途に使用されうる。例えば、偏光子と組み合わせて偏光板としうる。偏光板とした場合、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、適宜「有機EL表示装置」ということがある。)の表示面に設けることにより外光の反射を抑制できるので、好適である。
【0141】
[作用・効果]
本実施形態においては、工程2から工程3Aへの搬送(2-3A)は、フィルムの液晶組成物層側の面を非接触状態で支持する搬送部材(2-3A)により、工程2を行った後から工程3Aを行うまでの間、フィルムの液晶組成物層側の面との非接触状態を維持して行う。また、本実施形態においては、工程3Aから工程3Bへの搬送(3A-3B)は、フィルムの液晶硬化層側の面を非接触状態で支持する搬送部材(3A-3B)により、工程3Aを行った後から工程3Bを行うまでの間、フィルムの液晶硬化層側の面との非接触状態を維持して行う。
その結果、本実施形態の液晶硬化フィルムの製造方法によれば、液晶組成物の層を形成した基材における傷及びその他の不具合の発生を防止した、液晶硬化フィルムの製造方法を提供できる。
【0142】
[実施形態2]
以下、本発明の実施形態2に係るフィルムの製造方法及び製造装置について
図5を参照しつつ、説明する。
図5は、実施形態2に係るフィルムの製造方法に用いる装置200を模式的に示した側面図である。
【0143】
本実施形態のフィルムの製造方法は、配向規制力を付与する工程Aの後に得られる基材1Aに保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程を含まない点で実施形態1と相違する。以下において、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付し、重複した説明は省略する。
【0144】
本実施形態のフィルムの製造方法においては、工程Aを行った後の基材1Aは、搬送部材221,222により、塗布装置210に搬送される。塗布装置210に搬送された基材1Aの表面1A1には、液晶組成物が塗布され、これにより、基材1と基材の表面1A1に形成された液晶組成物層5とを備えるフィルム10が得られる(
図2参照)。本実施形態のフィルムの製造方法においては、保護フィルム貼合工程を含まないので、保護フィルムを剥離する工程(工程B1)及び保護フィルム剥離後の基材の張力を遮断する工程(工程B2)を含まない。
【0145】
本実施形態のフィルムの製造方法に用いる装置は、基材1の表面Sに、液晶組成物を塗布して、液晶組成物の層5を形成する塗布装置210と、基材1(基材1A)を、塗布装置210に搬送する搬送部材221,222と、を備える。本実施形態において用いる搬送部材221,222は、基材1の表面1A1を非接触状態で支持する搬送部材であり、基材の搬送を、工程2を行うまでの間、基材の表面Sとの非接触状態を維持して行う搬送部材である。搬送部材221,222は実施形態1で説明した搬送部材121,122と同じ形状(円筒形状)であり、搬送方向に平行な方向における断面形状が円形状の搬送部材である。
【0146】
図5において207および208はニップロールであるが、これらのニップロール207,208は、基材1Aの上側面と接触しており基材1Aの表面1A1(
図5における下側面)とは接触していない。したがって、本実施形態のフィルムの製造方法においても、基材1(基材1A)の搬送を、工程2を行うまでの間、基材1(1A)の表面1A1との非接触状態を維持して行いうる。
【0147】
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態のフィルムの製造方法においては、繰出し装置201から繰り出された基材1を、A1で示す方向に搬送し、配向規制力を付与する装置202において、基材1の表面1A1に、配向規制力を付与する(工程A)。工程Aを行うことにより、配向規制力が付与された基材1Aが得られる。
工程Aを行った後の基材(基材1A)を、基材1Aの表面1A1を非接触状態で支持した状態で搬送する、搬送部材221,222により塗布装置210に搬送する。これにより、工程Aを行った後の基材1Aの搬送を、工程2を行うまでの間、搬送部材と基材1Aの表面1A1との非接触状態を維持して行うことができる。
次に塗布装置210に搬送した基材1Aの表面1A1に、液晶組成物を塗布し、液晶組成物層5を形成する工程2を行う。これにより、
図2に示すような、基材1Aと基材1Aの表面1A1上に形成された液晶組成物層5とを備えるフィルム10が得られる。
【0148】
本実施形態のフィルムの製造方法においても、基材1(基材1A)の搬送を、基材1(基材1A)の表面1A1を非接触状態で支持する搬送部材221,222により、工程2を行うまでの間、基材1(1A)の表面1A1との非接触状態を維持して行う。
その結果、本実施形態のフィルムの製造方法によれば、液晶組成物が塗布される基材における傷の発生を防止した、フィルムの製造方法及び製造装置を提供することができる。
【0149】
本実施形態のフィルムの製造方法により得られたフィルムは、液晶硬化フィルムを製造するフィルムとして用いることができる。本実施形態のフィルムの製造方法により得られたフィルムを用いた液晶硬化フィルムは、実施形態1で説明した液晶硬化フィルムの製造方法と同じ方法で製造することができる。
【実施例】
【0150】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0151】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0152】
[評価方法]
(A.キズ状欠陥の検査)
(A-1)検査対象の用意
各例において、サンプリングした基材にマスキングフィルム(藤森工業株式会社製、マスタックTFBシリーズ)を貼合しマスキングフィルム付きサンプルフィルムを作製した。
面状評価用アングル材に強力磁石で、マスキングフィルム付きサンプルフィルムのマスキングフィルム貼合面とは反対側の面をアングル材側に配して、マスキングフィルム付きサンプルフィルムを固定した。サンプルフィルムに折れが入らないように、アングル材に固定したマスキングフィルム付きサンプルフィルムからマスキングフィルムを剥がしたもの(アングル材に固定したサンプルフィルム)を、検査対象とした。
【0153】
(A-2)ポラリオンライトによるキズ状欠陥の検査
検査対象のサンプルフィルムの端部から順に、ポラリオンライト(ポラリオン社製、NP-1)を、斜め下方向から照射しながら、TD方向に移動させ、肉眼視によりキズ状欠陥の有無を観察した。長さ50mmを超えるキズはキズ状欠陥と判断し、検知したキズ状欠陥に印をつけた。
検知したキズ状欠陥については、MD方向に沿って長さを測定し、長さが1m未満で途切れている場合は、MD方向に沿って、他のキズ状欠陥がないかどうか観察し、MD方向に断続的に発生している場合は、1本と判断した。次にキズ状欠陥のTD方向の位置を測定した。
次に、検知したキズ状欠陥と、キズ状欠陥の見本(日本ゼオン株式会社、社内管理品、光学フィルム向け見本)との比較を行った。ポラリオンライトの照射角度、観察する方向(角度)を変えながら、見本と、検知したキズ状欠陥とが、それぞれ最も強く見える条件で比較し、長さ及び太さが見本よりも大きいキズ状欠陥の本数と、その位置を測定した。サンプルフィルムの長さ1m×製品幅の範囲で上記測定を行った。
【0154】
(A-3)蛍光灯反射検査
(A-2)において見本を超えるキズ状欠陥を1本ずつMD20cm×TD15cmの大きさに切断し、黒プラダン枠に挟んだ。暗室内の黒板の上で両手でサンプルを持ち、目とサンプルフィルムとの距離、サンプルフィルムと蛍光灯の距離をそれぞれ30cm以下とし、サンプルフィルムの角度を変え、蛍光灯の光を反射させ、キズ状欠陥が視認できるか否かを観察した。キズ状欠陥の観察は、サンプルフィルムの両面側から行い、MD方向及びTD方向の双方から蛍光灯の光を照射して観察した。蛍光灯の光を反射させ視認できるキズ状欠陥の数と、その位置を測定した。キズ状欠陥の数を表1に示す。キズ状欠陥の数が150個以上の場合については「多数」とする。
【0155】
(B.光抜け検査)
バックライトの上に、偏光板2枚を配置し2つの偏光板の間に、各例で作製した液晶硬化フィルムを配置した。2枚の偏光板はパラレルニコルに配した。液晶硬化フィルムは、液晶硬化フィルムの遅相軸と2枚の偏光板の透過軸とが45°となるように配置した。
バックライトの上に配置した、偏光板/液晶硬化フィルム/偏光板の積層体の正面側から、光抜けの有無を肉眼視により観察し、光抜けの数(輝点の数)を測定した。検知された光抜けについては、顕微鏡(倍率500倍、オリンパス株式会社製、偏光顕微鏡BX51-P)による観察を行い、キズ状欠陥に起因するものか否か判断した。キズ状欠陥以外の原因による光抜けは、除外し、液晶硬化フィルムの単位面積当たりの、キズ状欠陥に起因する輝点の数を算出した。結果を表1に示す。
【0156】
[液晶化合物の説明]
以下に説明する実施例及び比較例で使用した液晶化合物1の構造は、下記の式(A-1)に示す通りである。
【0157】
【0158】
[液晶組成物の調製]
上記式(A-1)に示す液晶化合物1を100重量部、光重合開始剤(アデカアークルズNCI730)を4.0重量部、フッ素系界面活性剤(DIC社製「F562」)を0.30重量部、及び、溶媒としての1,3-ジオキソラン243.4重量部を混合して、液晶組成物を得た(固形分30%)。
【0159】
[実施例1]
フィルムの製造装置として実施形態2で説明したフィルムの製造装置200(
図5参照)を用い、以下の手順により、実施例1のフィルムを製造した。
【0160】
(1-1.工程1)
(1-1-1.工程A)
基材として、環状オレフィン重合体を含む長尺の樹脂フィルム(日本ゼオン株式会社製、ゼオノアフィルム、;厚み115μm)を用いた。この基材を繰出し装置201から繰り出して、配向規制力を付与する装置202に搬送し、延伸倍率1.5で、基材の幅手方向に対して45°方向に斜め延伸して、配向規制力を付与した。配向規制力が付与された基材(以下、「基材X」ともいう)は、面内位相差Reが140nmで厚み77μmであった。
【0161】
(1-1-2.搬送部材による搬送)
搬送部材221,222として、多孔質材料(材質:セラミック、平均孔径2μm、株式会社ナノテム製)からなる円筒状の搬送部材(浮上搬送部材)を2本用いて、(1-1-1)で製造した基材Xを、搬送速度10m/分、搬送張力300Nで、5分間搬送させた後、搬送ラインを停止させ、搬送部材221,222よりも下流側で基材Xのサンプリングを行い、キズ状欠陥の検査に供した。用いた搬送部材は、圧力が0.2MPaの高圧空気を噴出する孔を有する部材である。サンプリングは、基材Xの全幅(約1330mm)×約3000mm(約4m2)程度の大きさのものを切り出すことにより行った。本例において用いた搬送部材は、基材を浮上させた状態(非接触状態)で支持しつつ搬送する部材であるので、当該搬送部材による基材Xの搬送は、搬送部材と、基材Xの表面Sとの非接触状態を維持して行われた。
【0162】
(1-2.工程2)
キズ状欠陥の検査の後の基材XをA3サイズ程度に切断し、方形状の基材Xを得た。当該方形状の基材Xの、搬送部材221が配されていた側の面(
図5における下側面)に液晶組成物を塗布して、表面Sに液晶組成物層が形成された基材Xを得た。
【0163】
(1-3.工程3A)
液晶組成物層が形成された基材Xの液晶組成物層を110℃で4分間乾燥させた後、UV照射を行って液晶組成物層を硬化させ、液晶硬化フィルムを製造した。得られた液晶硬化フィルムについて、光抜け検査を行い、結果を表1に示した。UV照射の条件は1000mJ/cm2とした。
【0164】
[比較例1~5]
実施例1の(1-1-2)において、浮上搬送部材に代えて、以下の搬送部材を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行った。比較例1~5では、搬送部材による基材Xの搬送は、搬送部材と、基材Xの表面Sとが接触した状態で行われた。
比較例1の搬送部材(微細溝形成ロール):表面に溝加工を行った円筒状の搬送ロール(Rz(最大高さ)=0.8μm)(材質:アルミ材料素管の表面にクロムメッキ、野村鍍金製、搬送ローラー)
比較例2の搬送部材(特殊マットロール):凹凸構造を備える特殊マットロール(Rz=5μm)(材質:アルミ材料素管の表面にクロムメッキ、野村鍍金製、搬送ローラー)
比較例3の搬送部材(クロムメッキロール):クロムメッキロール(Rz=0.8μm)(材質:アルミ材料素管の表面にクロムメッキ、株式会社オテック製、搬送ローラー)
比較例4の搬送部材(DLCメッキロール):ダイヤモンドライクカーボン(DLC)の表面処理がなされたロール(ピッカース硬度約2000、Rz=0.4μm)(材質:アルミ材料素管の表面にクロムメッキを施し、表面研磨の上にDLCメッキ、野村鍍金製、搬送ローラー)
比較例5の搬送部材(PTFEロール):ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ロール(搬送ロール(株式会社オテック社製、搬送ローラー)にPTFEチューブ(グンゼ株式会社製、フッ素PFA熱収縮チューブ100PB)を巻きつけたもの)
【0165】
比較例1~5においても、実施例1と同様に、工程1の後にサンプリングした基材Xについてキズ状欠陥の検査を行った。また、比較例1~5においても、各例のキズ状欠陥の検査の後の基材XをA3サイズに切断した方形状の基材Xを用いて、実施例1の(1-2)および(1-3)と同じ操作を行って、液晶硬化フィルムを製造し、各液晶硬化フィルムについて光抜け試験を行った。結果を表に示す。
【0166】
【0167】
以上の結果によれば、基材の搬送が、搬送部材と、基材の表面Sとの非接触状態を維持して行われた実施例1では、比較例1~5と比較して、キズ状欠陥に起因する輝点の数が少ないことが分かる。上記結果から、本発明で規定する搬送部材を用いた実施例1によれば、液晶組成物が塗布される基材における傷の発生を防止した、フィルムの製造方法を実現しうる。
【0168】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、搬送部材として全体として円筒形状であり、搬送方向に平行な方向の断面が円形状をなすものを示したが、搬送部材はこれに限定されない。搬送部材は少なくともその一部に断面弧状部を有していればよく、例えば、搬送方向に平行な方向における断面形状が扇形状の搬送部材、搬送方向に平行な方向における断面形状が楕円形の搬送部材、
図6に示すように搬送方向に平行な方向の断面がアーチ状のものであってもよい。
図6に示す搬送部材300においては、300Aから300Bまでの部分300Rが断面弧状部である。
【0169】
(2)上記実施形態においては、工程Aを含むフィルムの製造方法を示したが、本発明はこれに限定されない。フィルムの製造方法は工程Aを含まないものであってもよい。この場合、工程1において、配向規制力が付与されていない基材を搬送し、工程2において、前記基材に液晶組成物の層を形成してもよい。
【0170】
(3)上記実施形態においては、2つの搬送部材をともに、基材の表面S側に配置した態様を示したが、搬送部材の数および配置位置はこれに限定されない。搬送部材の数は1つでもよいし3つ以上であってもよい。また搬送部材を、基材の表面S側と、表面Sとは反対側の面に交互に配置してもよい。
【0171】
(4)上記実施形態においては、液晶硬化層の上にさらにハードコート層を形成した液晶硬化フィルムの製造方法を示したが、液晶硬化フィルムの製造方法は、ハードコート層を形成する工程(工程3B)を含まないものであってもよい。
【符号の説明】
【0172】
1…基材
1A…配向規制力が付与された基材
1A1…基材の液晶組成物が塗布される面(即ち表面S)
2…保護フィルム
5…液晶組成物層
10…フィルム
20…保護フィルム付き基材
100…フィルムの製造装置
101,103…繰出し装置
102…配向規制力を付与する装置
104…巻取装置
105A,105B,106A,106B…ニップロール
107,108…サクションロール
110…塗布装置
121,122…搬送部材
121R…断面弧状部
200…フィルムの製造装置
201…繰り出し装置
202…配向規制力を付与する装置
207,208…ニップロール
210…塗布装置
221,222…搬送部材
300…搬送部材
300A…断面弧状部の始点
300B…断面弧状部の終点
300R…断面弧状部