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特許7409375液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20231226BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021516156
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017325
(87)【国際公開番号】W WO2020218331
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2019083223
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】中原 翔一朗
(72)【発明者】
【氏名】巴 幸司
(72)【発明者】
【氏名】新津 新平
(72)【発明者】
【氏名】別府 功一朗
(72)【発明者】
【氏名】仲井 崇
【審査官】廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/22215(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110354(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105237462(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105461925(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分と(B)成分を含有することを特徴とする液晶配向剤。
(A)成分:下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(A)。
(B)成分:下記式(2)で表される繰り返し単位及び下記式(3)で表される繰り返し単位を有する重合体(B)。
【化1】
(Xは4価の有機基であり、Yは2価の有機基である。)
【化2】
(Xは脂環式テトラカルボン酸二無水物又は非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基である。R2は水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基である。Z21、Z22はそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基を表す。)
【化3】
(Xは脂環式テトラカルボン酸二無水物又は非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基である。Yは下記式(n)で表される部分構造を有する2価の有機基である。Rは水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基であり、Z31、Z32は、上記式(2)の、それぞれ、Z21、Z22と同義である。)
【化4】
(Qは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Qは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。*は結合手を表す。)
【請求項2】
前記重合体(B)が、さらに、下記式(4)で表される繰り返し単位及び下記式(5)で表される繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化5】
(X、Xは芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基である。Rは式(2)のRと同義であり、Z41、Z42はそれぞれ式(2)のZ21、Z22と同義である。Yは、式(3)のYと同義であり、Rは式(3)のRと同義であり、Z51、Z52はそれぞれ式(3)のZ31、Z32と同義である。)
【請求項3】
前記重合体(A)の末端が下記式(6)で表される構造を有する、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【化6】
(*は結合手を表し、Zは1価の有機基を表す。)
【請求項4】
前記式(6)のZが、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-トリメチルシリルエチル基、1,1-ジメチルプロピニル基、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチル基、1、1-ジメチル-2-ハロエチル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチル基、シクロブチル基、1-メチルシクロブチル基、ビニル基、アリル基、シンナミル基、N-ヒドロキシピペリジニル基、ベンジル基、及び9-フルオレニルメチル基からなる群から選ばれる、請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記式(n)で表される部分構造を有する2価の有機基が、下記式(n-1)~(n-3)からなる群から選ばれる2価の有機基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化7】
(Q、Qは、それぞれ、前記式(n)のQ、Qと同義である。Qは、それぞれ独立して、単結合又は下記式(Ar)の構造を表し、nは1~3の整数を表す。*は結合手を表す。)
【化8】
(Qは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH-、-O(CHO-、-CONQ-、及び-NQCO-からなる群から選ばれる2価の有機基を表し、kは1~5の整数を表す。なお、Qは水素又は一価の有機基を表し、l、mは1~5の整数を表す。*1、*2は結合手を表し、*は式(n-1)~式(n-3)のベンゼン環と結合する。)
【請求項6】
前記式(1)のYが、下記式(H)で表される部分構造を有する2価の有機基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化9】
(R13は、-NRCO-、-COO-、-OCO-、-NRCONR-、-CONR-、又は-(CH-(nは1~20の整数)で表される構造であり、nが2~20である場合は、任意の-CH-はそれぞれ隣り合わない条件で-O-、-COO-、-OCO-、-ND-、-NRCO-、-CONR-、-NRCONR-、-NRCOO-、又は-OCOO-に置き換えられてもよい。Dは熱脱離性基を表し、Rは水素原子又は1価の有機基を表す。R14は単結合又はベンゼン環であり、ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の有機基で置き換えられてもよい。*1、*2は結合手を表し、R14が単結合である場合、*2はアミノ基中の窒素原子に結合する。R14がベンゼン環である場合は、R13は単結合であってもよい。)
【請求項7】
前記式(1)のYが、下記式(H-1)~(H-14)のいずれかで表される部分構造を有する2価の有機基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化10】
(*1、*2は結合手を表し、*2はイミド環中の窒素原子と結合する。Bocはtert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【請求項8】
前記式(1)のYが、下記式(MH-1)又は(MH-2)で表される2価の有機基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化11】
(*1はイミド環中の窒素原子と結合する。Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【請求項9】
前記式(1)のXが、下記式(4a)~(4n)、下記式(5a)及び下記式(6a)からなる群から選ばれる4価の有機基である請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化12】
(x及びyは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-CO-、-COO-、炭素数1~5のアルカンジイル基、1,4-フェニレン、スルホニル又はアミド基である。Z~Zは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子又はベンゼン環を表す。j及びkは、0又は1である。mは1~5の整数である。*は結合手を表す。)
【請求項10】
前記重合体(A)と前記重合体(B)との含有割合が、[重合体(A)]/重合体(B)]の質量比)で5/95~95/5である、請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
オキシラニル基、オキセタニル基、保護イソシアネート基、保護イソチオシアネート基、オキサゾリン環構造を含む基、メルドラム酸構造を含む基、シクロカーボネート基及び下記式(d)で表される基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物、及び下記式(e)で表される化合物から選ばれる化合物(C)を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化13】
(R32及びR33は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は「*-CH-OH」である。*は結合手であることを示す。Aは芳香環を有する(m+n)価の有機基を表す。mは1~6の整数を表し、nは0~4の整数を表す。)
【請求項12】
前記化合物(C)の含有量が、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.5~20質量部である、請求項11に記載の液晶配向剤。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項14】
請求項13に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項15】
横電界駆動方式である請求項14に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液晶装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、テレビジョン受像機などの表示部として幅広く用いられている。液晶装置は、例えば、素子基板とカラーフィルタ基板との間に挟持された液晶層、液晶層に電界を印加する画素電極及び共通電極、液晶層の液晶分子の配向性を制御する配向膜、画素電極に供給される電気信号をスイッチングする薄膜トランジスタ(TFT)などを備えている。液晶分子の駆動方式としては、TN方式、VA方式などの縦電界方式や、IPS方式、FFS(フリンジフィールドスイッチング)方式などの横電界方式が知られている(特許文献1)。
【0003】
一般に、基板の片側のみに電極を形成させ、基板と平行方向に電界を印加する横電界方式では、従来の上下基板に形成された電極に電圧を印加して液晶を駆動させる縦電界方式と比べ、広い視野角特性を有し、高品位な表示が可能な液晶表示素子として知られている。液晶を一定方向に配向させるための手法としては、基板上にポリイミドなどの高分子膜を形成し、この表面を布で擦る、いわゆるラビング処理を行う方法があり、工業的にも広く用いられてきた。
【0004】
液晶表示素子の構成部材である液晶配向膜は、液晶を均一に配列させるための膜であるが、液晶の配向均一性だけでなく種々の特性が必要とされる。例えば、液晶を駆動させる電圧によって液晶配向膜に電荷が蓄積し、これらの蓄積された電荷が液晶の配向を乱し、あるいは残像や焼き付き(以下、残留DC由来の残像と称する。)として表示に影響を与え、液晶表示素子の表示品位を著しく低下させたりする問題点があるため、これらの課題を克服する液晶配向剤が提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、IPS方式やFFS駆動方式においては、液晶配向の安定性も重要となる。配向の安定性が小さいと、液晶を長時間駆動させた際に液晶が初期の状態に戻らなくなり、コントラストの低下や焼き付き(以下、AC残像と称する。)の原因となる。上記の課題を解決する手法として、特許文献3には特定のテトラカルボン酸二無水物と特定のジアミンを含有するポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選ばれる1種の重合体と特定の化合物とを含有する液晶配向剤が開示されている。
【0006】
さらに、生産工程での経済性が非常に重要であることから、素子基板の再生利用が容易であることも必要とされている。すなわち、液晶配向剤から液晶配向膜を形成後、配向性などの検査を行い欠陥が生じていた場合、基板から液晶配向膜を除去し、基板を回収するリワーク工程が簡便に実施できることが求められている。
加えて、IPS方式やFFS駆動方式においては、一般的に正のΔεを有する液晶材料(p型液晶材料)や負のΔεを有する液晶材料(n型液晶材料)が用いられている(特許文献4参照)。
p型液晶材料を液晶表示素子に適用した場合には、n型液晶材料を用いた液晶表示素子に対して、パネルを透過できるバックライト光量が、悪化する傾向にあり、より透過率を高める観点から、高い透過率を有する液晶配向膜が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本特開2013-167782号公報
【文献】WO2002/33481号パンフレット
【文献】WO2016/063834号パンフレット
【文献】WO2015/056644号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、コントラストの高いパネルを得るためには、電圧無印加時の黒品質も重要であり、ラビング工程による不良発生や配向性不足で発生する黒品質の低下がなく、より良質な黒品質が得られる液晶配向膜が求められている。
一方、n型液晶材料を適用した場合には表示不良の原因となる電圧保持率の低下が発生しやすいため、高い電圧保持率を備えた液晶配向膜が求められている。
【0009】
従来提案された液晶配向剤は必ずしも上記の課題を全て十分に達成できるものとは言えなかった。また、特許文献2、3に提案される液晶配向剤を用いた場合も、得られる液晶配向膜の光透過率が低くなるという問題があり、さらなる改善の余地があった。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされるものであり、その目的は、残留DC由来の残像やAC残像の発生が少なく、高い透過率、コントラスト及び電圧保持特性を有し、リワーク性が良好な液晶配向膜を形成可能な液晶配向剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を進めたところ、特定の重合体からなる成分の組み合わせを含有する液晶配向剤を使用することにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、下記の態様を有する。
下記の(A)成分と(B)成分を含有することを特徴とする液晶配向剤。
(A)成分:下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(A)。
(B)成分:下記式(2)で表される繰り返し単位及び下記式(3)で表される繰り返し単位を有する重合体(B)。
【化1】
(Xは4価の有機基であり;Yは2価の有機基である。)
【化2】
(Xは脂環式テトラカルボン酸二無水物又は非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基である。R2は水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基である。Z21、Z22は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。)
【化3】
(Xは脂環式テトラカルボン酸二無水物又は非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基である。Yは下記式(n)で表される部分構造を有する2価の有機基である。Rは水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基であり;Z31、Z32は上記式(2)の、それぞれ、Z21、Z22と同義である。)
【化4】
(Qは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Qは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。*は結合手を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶配向剤によれば、高い透過率及び電圧保持特性を有し、リワーク性が良好な液晶配向膜を得ることができる。また、本発明の液晶配向剤によれば、残留DC由来の残像やAC残像が発生しにくく、表示不良が少ない、且つコントラストに優れた液晶表示素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
<(A)成分>
本発明の液晶配向剤は、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(A)からなる(A)成分を含有する。かかる(A)成分を含有することで、AC残像の発生が少なく、透過率の高い液晶配向膜を得ることができ、また、電圧保持率が高く、コントラストの低下が抑えられた液晶表示素子を得ることができる。
上記式(1)において、X、Yは、上記に定義した通りである。式(1)のXとしては、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基が挙げられる。例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基が挙げられる。式(1)のYはジアミン化合物に由来する2価の有機基である。
【0014】
ここで、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシル基を含めて4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシル基を含めて4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、これら4つのカルボキシル基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0015】
重合体(A)の溶解性を高める観点において、Xは下記式(4a)~(4n)、下記式(5a)、及び下記式(6a)からなる群から選ばれる4価の有機基であることが好ましい。
【化5】
(x及びyは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-CO-、-COO-、炭素数1~5のアルカンジイル基、1,4-フェニレン、スルホニル又はアミド基である。Z~Zは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子又はベンゼン環を表す。j及びkは、0又は1の整数である。mは1~5の整数である。*は結合手を表す。)
【0016】
AC残像が少ない観点において、上記式(4a)の好ましい具体例として、下記式(4a-1)~(4a-4)のいずれかで表される構造が挙げられる。
【化6】
【0017】
上記式(5a)、(6a)のx及びyにおける炭素数1~5のアルカンジイル基としては、メチレン、エチレン、1,3-プロパンジイル、1,4-ブタンジイル、1,5-ペンタンジイルなどが挙げられる。
【0018】
AC残像が少なく、溶解性を担保する観点において、上記式(1)のXは、上記式(4a)~(4h)、(4j)、(4l)~(4n)からなる群から選ばれる4価の有機基であることが好ましい。
【0019】
重合体(A)の式(1)のYの形成に用いることのできるジアミン化合物としては、特に限定されない。具体例としては、下記の非環式脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンなどが挙げられる。
非環式脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサンなど。
脂環式ジアミンとして、例えばp-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)など。
【0020】
芳香族ジアミンとして、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、ビス(4-アミノフェニル)アミン、N,N-ビス(4-アミノフェニル)メチルアミン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)-ピペラジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4-(4-アミノフェノキシカルボニル)-1-(4-アミノフェニル)ピペリジン、4,4’-[4,4’-プロパン-1,3-ジイルビス(ピペリジン-1,4-ジイル)]ジアニリンなど。
【0021】
また、式(1)のYの形成に用いることのできるジアミン化合物としては、国際公開(本明細書では、WOともいう。)2015/122413号に記載の下記式(Q)で表されるジアミン、下記式(H)で表される部分構造を有する2価の有機基に2つのアミノ基が結合したジアミンなどを挙げることができる。
【化7】
(R11は水素原子、メチル基、又はtert-ブトキシカルボニル基を表し、2つのR12はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。Q11は炭素数1~5の直鎖アルキレン基を表す。直鎖アルキレン基の具体例としてはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が挙げられる。)、
【0022】
【化8】
(R13は、-NRCO-、-COO-、-OCO-、-NRCONR-、-CONR-、又は-(CH-(nは1~20の整数)で表される構造であり、nが2~20である場合は、任意の-CH-はそれぞれ隣り合わない条件で-O-、-COO-、-OCO-、-ND-、-NRCO-、-CONR-、-NRCONR-、-NRCOO-、又は-OCOO-に置き換えられてもよい。Dは熱脱離性基を表し、Rは水素原子又は1価の有機基を表す。R14は単結合又はベンゼン環であり、ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の有機基で置き換えられてもよい。*1、*2は結合手を表し、R14が単結合である場合、*2はアミノ基中の窒素原子に結合する。R14がベンゼン環である場合は、R13は単結合であってもよい。)
【0023】
AC残像が少ない観点において、上記式(1)のYは、上記式(H)で表される部分構造を有する2価の有機基であることが好ましい。この場合において、上記式(H)のR14が単結合である場合、*2はイミド環中の窒素原子に結合する。中でも、上記式(1)のYは、下記式(H-1)~(H-14)のいずれかで表される部分構造を有する2価の有機基であることが好ましい。
【0024】
【化9】
(*1、*2は結合手を表し、*2はイミド環中の窒素原子と結合する。Bocは、本明細書では、tert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【0025】
合成が容易である観点において、上記式(1)のYは、上記式(H-1)~(H-14)、下記式(MH-1)又は(MH-2)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【化10】
(*1はイミド環中の窒素原子と結合する。)
【0026】
重合体(A)は、上記式(1)で表される繰り返し単位以外に、さらに、下記式(PA-1)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【化11】
【0027】
式(PA-1)中、X及びYはそれぞれ、好ましい態様も含めて式(1)のX及びYと同義である。R1は水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基である。Z11、Z12は、それぞれ、上記式(2)のZ21、Z22と同義である。
【0028】
上記Rの炭素数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基などが挙げられる。なお、「i-」はイソを表し、「s-」はsec-を表し、「t-」はtert-を表す。加熱によるイミド化のしやすさの観点から、Rは、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
AC残像が少ない観点において、Z11、Z12はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0029】
重合体(A)は、その末端が下記式(6)で表される構造を有してもよい。このような構成とすることで、後述する重合体(B)との層分離が促進され、AC残像及び残留DC由来の残像が低減された液晶配向膜が得られる点で好適である。
【化12】
(*は結合手を表し、Zは1価の有機基を表す。)
【0030】
上記式(6)のZとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-トリメチルシリルエチル基、1,1-ジメチルプロピニル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチル基、1、1-ジメチル-2-ハロエチル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、1-メチルシクロブチル基、1-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、シンナミル基、8-キノリル基、N-ヒドロキシピペリジニル基、ベンジル基、p-ニトロベンジル基、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基、9-フルオレニルメチル基等が挙げられる。
【0031】
Zとしては、得られる効果が高い観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-トリメチルシリルエチル基、1,1-ジメチルプロピニル基、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチル基、1、1-ジメチル-2-ハロエチル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチル基、シクロブチル基、1-メチルシクロブチル基、ビニル基、アリル基、シンナミル基、N-ヒドロキシピペリジニル基、ベンジル基、9-フルオレニルメチル基が好ましい。
【0032】
重合体(A)は、AC残像が少ない観点から、重合体(A)が有する全繰り返し単位に対して、上記式(1)で表される繰り返し単位を、好ましくは1~95モル%、より好ましくは50~90モル%含むことが好適である。
【0033】
<(B)成分>
本発明の液晶配向剤は、上記式(2)で表される繰り返し単位及び上記式(3)で表される繰り返し単位を有する重合体(B)からなる(B)成分を含有する。このような構成とすることで、透過率が高く、かつ残留DC由来の残像が低減された液晶配向膜が得られる。上記式(2)、(3)において、X、X、Y、R、R、Z21、Z22、Z31、Z32は、上記に定義した通りである。
【0034】
上記式(2)のZ21、Z22における1価の有機基は、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、tert-ブトキシカルボニル基、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基である。
【0035】
上記Z21、Z22の炭素数1~10のアルキル基の具体例としては、上記Rで例示した炭素数1~5のアルキル基の具体例に加えて、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。上記Z21、Z22の炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、例えばビニル基、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。上記Z21、Z22の炭素数2~10のアルキニル基の具体例としては、例えばエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基などが挙げられる。
21、Z22は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば,ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、シアノ基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0036】
上記R、Rの炭素数1~5のアルキル基の具体例としては、上記式(PA-1)のRで例示した構造が挙げられる。加熱によるイミド化のしやすさの観点から、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
AC残像が少ない観点において、Z21、Z22、Z31、Z32はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0037】
上記X、Xの脂環式テトラカルボン酸二無水物又は非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基としては、上記Xで例示した脂環式テトラカルボン酸二無水物又は非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基を挙げることができる。AC残像を抑制する観点において、X、Xは上記式(4a)~(4n)からなる群から選ばれる4価の有機基であることが好ましい。
【0038】
上記式(n)におけるQ、Qの炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。液晶配向膜の透過率を高め、AC残像と残留DC由来の残像を抑制する観点から、Q、Qはメチル基であることが好ましい。尚、式(n)中のベンゼン環の任意の水素原子は、一価の有機基で置換されてもよく、この一価の有機基としては、炭素数1~3を有する、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基若しくはフルオロアルコキシ基などが挙げられる。
【0039】
上記式(n)において、基「-NQ-Ph-」(Phはフェニレン基を表す)の結合位置は立体障害が少ない観点から、カルバゾール骨格の3位に結合していることが好ましい。
残留DC由来の残像が少ない観点から、上記式(n)で表される部分構造を有する2価の有機基が、下記式(n-1)~(n-3)からなる群から選ばれる2価の有機基であることが好ましい。
【0040】
【化13】
【0041】
式(n-1)~(n-3)中、Q、Qはそれぞれ、上記式(n)のQ、Qと好ましい具体例を含めて同義である。Qはそれぞれ独立して単結合、又は以下の式(Ar)の構造を表し、nは1~3の整数を表す。*は結合手を表す。更に、ベンゼン環の任意の水素原子は、上記式(n)の場合と同様に、一価の有機基で置換されていてもよい。
【化14】
式(Ar)中、Qは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH-、-O(CHO-、-CONQ-、及び-NQCO-からなる群から選ばれる2価の有機基を表し、kは1~5の整数を表す。なお、Qは水素もしくは一価の有機基を表し、l、mは1~5の整数を表す。*1、*2は結合手を表し、*は式(n-1)~式(n-3)中のベンゼン環と結合する。
上記式(Ar)のQにおける一価の有機基としては、炭素数1~3のアルキル基が挙げられる。
【0042】
合成が容易である観点で、上記式(n)で表される部分構造を有する2価の有機基は、下記式(cbz-1)~(cbz-6)のいずれかで表される2価の有機基であることが好ましい。*は結合手を表す。
【化15】
【0043】
【化16】
【0044】
上記重合体(B)は、残留DC由来の残像が少ない観点から、さらに、下記式(4)で表される繰り返し単位及び下記式(5)で表される繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有してもよい。
【化17】
【0045】
式(4)、(5)中、X、Xは芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、上記式(1)のXで例示した芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基を挙げることができる。AC残像と残留DC由来の残像が少ない観点において、X、Xは、上記式(5a)及び(6a)からなる群から選ばれる4価の有機基であることが好ましい。
【0046】
上記式(5a)、(6a)で表される4価の有機基のより好ましい具体例として、下記式(a-1)~(a-17)のいずれかで表される構造が挙げられる。
【化18】
【0047】
【化19】
(*は結合手を表す。)
【0048】
式(4)、(5)中、Rは上記式(2)のRと好ましい態様を含めて同義であり、Z41、Z42はそれぞれ上記式(2)のZ21、Z22と好ましい態様を含めて同義である。Yは、上記式(3)のYと好ましい態様を含めて同義であり、Rは上記式(3)のRと好ましい態様を含めて同義であり、Z51、Z52はそれぞれ上記式(3)のZ31、Z32と好ましい態様を含めて同義である。
【0049】
重合体(B)が、上記式(4)で表される繰り返し単位及び上記式(5)で表される繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する場合、高い透過率が得られる観点から、式(4)及び式(5)の繰り返し単位の合計量は、全繰り返し単位の0.1~30モル%であることが好ましく、1~25モル%であることがより好ましい。
【0050】
重合体(B)は、上記式(2)で表される繰り返し単位、上記式(3)で表される繰り返し単位、上記式(4)で表される繰り返し単位、上記式(5)で表される繰り返し単位以外に、さらに、下記式(PA-2)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【化20】
【0051】
式(PA-2)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。但し、Xが脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物又は芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基である場合は、Yはフェニレン基又は上記式(n)で表される部分構造を有する2価の有機基以外の構造を表す。Rは上記式(2)のRと好ましい態様を含めて同義であり、Z61、Z62は上記式(2)のZ21、Z22と好ましい態様を含めて同義である。
【0052】
の具体例としては、上記式(1)のXで例示した芳香族テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、又は脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基、日本特開2010-156953号の段落[0036]~[0052]に記載のテトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基などが挙げられる。
の具体例としては、上記式(1)のYで例示したジアミンに由来する2価の有機基の他、下記の(a)~(d)などの2価の有機基が挙げられる。
【0053】
WO2017/126627号に記載のピロール構造を有するジアミンに由来する2価の有機基、好ましくは下記式(pr)で表されるジアミンに由来する2価の有機基(a)。
【化21】
(Rは水素原子、フッ素原子、シアノ基、ヒドロキシ基、又はメチル基を表す。Rはそれぞれ独立して単結合又は基「*1-R-Ph-*2」を表し、Rは単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH-、-O(CHO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群から選ばれる2価の有機基を表し(l、mは1~5の整数である。)、*1は式(pr)中のベンゼン環と結合する部位を表し、*2は式(pr)中のアミノ基と結合する部位を表す。Phはフェニレン基を表す。nは1~3の整数を表す。)
【0054】
WO2018/062197号に記載のピロール構造を有するジアミンに由来する2価の有機基、好ましくは下式(pn)で表されるジアミンに由来する2価の有機基(b)。
【化22】
(R、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはそれぞれ独立して単結合又は基「*1-R-Ph-*2」を表し、Rは単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH-、-O(CHO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群から選ばれる2価の有機基を表し(l、mは1~5の整数である。)、*1は式(pn)中のベンゼン環と結合する部位を表し、*2は式(pn)中のアミノ基と結合する部位を表す。Phはフェニレン基を表す。nは1~3の整数を表す。)、
【0055】
WO2018/092759号に記載のチオフェン又はフラン構造を有するジアミンに由来する2価の有機基、好ましくは下式(sf)で表されるジアミンに由来する2価の有機基(c)。
【化23】
(Yは硫黄原子又は酸素原子を表す。Rは、それぞれ独立して、単結合又は基「*1-R-Ph-*2」を表し、Rは単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH-、-O(CHO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群から選ばれる2価の有機基を表し(l、mは1~5の整数である。)、*1は式(pn)中のベンゼン環と結合する部位を表し、*2は式(pn)中のアミノ基と結合する部位を表す。Phはフェニレン基を表す。nは1~3を表す。)
WO2018-181566号の段落[0013]~[0030]に記載の2価の有機基(d)。
【0056】
本発明の液晶配向剤では、AC残像と残留DC由来の残像が少ない観点において、上記重合体(A)と上記重合体(B)との含有割合が、[重合体(A)]/[重合体(B)]の質量比で5/95~95/5であることが好ましい。再現性の高い液晶配向膜が得られる観点から、[重合体(A)]/[重合体(B)]は質量比で、10/90~90/10がより好ましく、20/80~80/20がさらに好ましい。
【0057】
<重合体(A)、(B)の製造方法>
本発明に用いられる重合体(A)、(B)、又はそれらの原料中間体である、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸若しくはポリアミック酸エステル、ポリイミドは、いずれも既知の方法により得られる。例えば、それぞれ、以下に示す方法により合成することができる。
(ポリアミック酸の製造方法)
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下で-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~12時間反応させることによって合成できる。
【0058】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0059】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエンなどが挙げられる。
【0060】
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、例えば、以下に示す(1)、(2)又は(3)の方法で合成することができる。
(1)ポリアミック酸から合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって合成することができる。
【0061】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジ-t-ブチルアセタール、1-メチル-3-p-トリルトリアゼン、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2~6モル当量が好ましい。
【0062】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0063】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから合成することができる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって合成することができる。
【0064】
上記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2~4倍モルであることが好ましい。
【0065】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0066】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとから合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で0~150℃、好ましくは0~100℃において、30分~24時間、好ましくは3~15時間反応させることによって合成することができる。
【0067】
上記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ-1,3,5-トリアジニルメチルモルホリニウム、などの公知の化合物が使用できる。
上記塩基には、ピリジンなどの第3級アミンが使用できる。
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法は、中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)が特に好ましい。
【0068】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミドは、上記ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、上記ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0069】
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸エステルを、有機溶媒中において塩基性触媒存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができる。中でもトリエチルアミンは反応を進行させるのに充分な塩基性を持つので好ましい。
【0070】
イミド化反応を行うときの温度は、-20~140℃、好ましくは0~100℃であり、反応時間は1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸エステル基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒などが残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0071】
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた上記ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0072】
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0073】
イミド化反応を行うときの温度は、-20~140℃、好ましくは0~100℃であり、反応時間は1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
【0074】
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒などが残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0075】
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリイミドの粉末を得ることができる。
【0076】
上記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
【0077】
<末端修飾された重合体(A)の製造方法>
上記式(6)で表される基を末端に有する重合体(A)は、例えば、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸誘導体とジアミンとを反応させて上記した重合体(A)を製造する際に、基「*-CO-O-Z」(Zは上記式(6)のZと同義である。*は結合手を表す。)を有する炭酸エステル、モノカルボニルクロリド、又は酸無水物やモノアミンなどの末端修飾剤を存在させて反応させることにより得ることができる。
【0078】
上記末端修飾剤の好ましい具体例としては、下記式(R-1)又は(R-2)で表される化合物、上記式(6)で表される基を有するモノアミンなどを挙げることができる。なお、末端修飾剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化24】
【0079】
式(R-1)、(R-2)中、R22、R22’は1価の有機基を表す。その具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-トリメチルシリルエチル基、1,1-ジメチルプロピニル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチル基、1,1-ジメチル-2-ハロエチル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、1-メチルシクロブチル基、1-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、シンナミル基、8-キノリル基、N-ヒドロキシピペリジニル基、ベンジル基、p-ニトロベンジル基、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基、9-フルオレニルメチル基などが挙げられる。
上記式(6)で表される基を末端に有する重合体(A)の合成に際し、末端修飾剤の使用割合は、該重合体(A)の製造に使用するジアミンの合計100モル部に対して、20モル部以下とすることが好ましく、0.001~10モル部とすることがより好ましい。
【0080】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、(A)成分である重合体(A)及び(B)成分である重合体(B)を含有する。本発明の液晶配向剤は、重合体(A)及び重合体(B)に加えて、その他の重合体を含有していてもよい。その他の重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン又はその誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0081】
液晶配向剤は、液晶配向膜を作製するために用いられるものであり、均一な薄膜を形成させるという観点から、塗布液の形態をとる。本発明の液晶配向剤においても上記した重合体成分と、有機溶媒とを含有する塗布液であることが好ましい。その際、液晶配向剤中の重合体の含有量(濃度)は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができる。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から、1質量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下が好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
【0082】
液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(これらを総称して、良溶媒ともいう)などを挙げることができる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。良溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、特に好ましいのは、30~80質量%である。
【0083】
また、液晶配向剤に含有される有機溶媒は、上記のような溶媒に加えて液晶配向剤を塗布する際の塗布性や塗膜の表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう。)を併用した混合溶媒を使用することが好ましい。併用する貧溶媒の具体例を下記に挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(2-ブトキシエトキシ)-2-プロパノール、2-(2-ブトキシエトキシ)-1-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)などを挙げることができる。
【0084】
貧溶媒としては、なかでも、ジイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、又はジイソブチルケトンが好ましい。貧溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が特に好ましい。貧溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。
【0085】
良溶媒と貧溶媒との好ましい溶媒の組み合わせとしては、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルカルビノール、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテートとジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0086】
本発明の液晶配向剤は、重合体成分及び有機溶媒以外の成分を追加的に含有してもよい。このような追加成分としては、液晶配向膜と基板との密着性や液晶配向膜とシール材との密着性を高めるための密着助剤、液晶配向膜の強度を高めるための化合物(以下、架橋性化合物ともいう。)、液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための誘電体や導電物質などが挙げられる。
【0087】
上記架橋性化合物として、AC残像の発生が少なく、膜強度の改善効果が高い観点から、オキシラニル基、オキセタニル基、保護イソシアネート基、保護イソチオシアネート基、オキサゾリン環構造を含む基、メルドラム酸構造を含む基、シクロカーボネート基下記及び式(d)で表される基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物、及び下記式(e)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物(以下、これらを総称して化合物(C)ともいう。)が好ましい。
【化25】
(R32及びR33は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は「*-CH-OH」である。*は結合手であることを示す。Aは芳香環を有する(m+n)価の有機基を表す。mは1~6の整数を表し、nは0~4の整数を表す。)
【0088】
オキシラニル基を有する化合物の具体例としては、例えば、日本特開平10-338880号公報の段落[0037]に記載の化合物や、WO2017/170483号に記載のトリアジン環を骨格にもつ化合物などの、2個以上のオキシラニル基を有する化合物が挙げられる。これらのうち、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、下記式(r-1)~(r-3)などのいずれか窒素原子を含有する化合物が特に好ましい。
【化26】
【0089】
オキセタニル基を有する化合物の具体例としては、例えば、WO2011/132751号の段落[0170]~[0175]に記載の2個以上のオキセタニル基を有する化合物などが挙げられる。
【0090】
保護イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、例えば、日本特開2014-224978号公報の段落[0046]~[0047]に記載の2個以上の保護イソシアネート基を有する化合物、WO2015/141598号の段落[0119]~[0120]に記載の3個以上の保護イソシアネート基を有する化合物などが挙げられる。これらのうち、下記式(bi-1)~(bi-3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0091】
【化27】
【0092】
保護イソチオシアネート基を有する化合物の具体例としては、例えば、日本特開2016-200798号公報に記載の、2個以上の保護イソチオシアネート基を有する化合物が挙げられる。
オキサゾリン環構造を含む基を有する化合物の具体例としては、例えば、日本特開2007-286597号公報の段落[0115]に記載の、2個以上のオキサゾリン構造を含む化合物が挙げられる。
【0093】
メルドラム酸構造を含む基を有する化合物の具体例としては、例えば、WO2012/091088号に記載の、メルドラム酸構造を2個以上有する化合物が挙げられる。
シクロカーボネート基を有する化合物の具体例としては、例えば、WO2011/155577号に記載の化合物が挙げられる。
上記式(d)で表される基のR32、R33の炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。
【0094】
上記式(d)で表される基を有する化合物の具体例としては、例えば、WO2015/072554号や、日本特開2016-118753号公報の段落[0058]に記載の、上記式(d)で表される基を2個以上有する化合物、日本特開2016-200798号公報に記載の化合物などが挙げられる。これらのうち、下記式(hd-1)~(hd-8)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化28】
【0095】
上記式(e)のAにおける芳香環を有する(m+n)価の有機基としては、炭素数6~30の(m+n)価の芳香族炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が直接又は連結基を介して結合した(m+n)価の有機基、芳香族複素環を有する(m+n)価の基が挙げられる。上記芳香族炭化水素基としては、例えばベンゼン、ナフタレンなどが挙げられる。
芳香族複素環としては、例えばピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、ピリダジン環、ピラジン環、ベンゾイミダゾール環、インドール環、キノキサリン環、アクリジン環などが挙げられる。
【0096】
上記連結基としては、炭素数1~10のアルキレン基、又は上記アルキレン基から水素原子を一つ除いた基、2価又は3価のシクロヘキサン環などが挙げられる。尚、上記アルキレン基の任意の水素原子は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基などの有機基で置換されてもよい。具体例を挙げるならば、WO2010/074269号に記載の化合物などが挙げられる。好ましい具体例としては、下記式(e-1)~(e-9)のいずれかのものが挙げられる。
【0097】
【化29】
【0098】
上記化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されるものではない。例えば、WO2015/060357号の段落[0105]~[0116]に開示されている上記以外の成分などが挙げられる。また、本発明の液晶配向剤に含有される架橋性化合物は、1種類であってもよく、2種類以上組み合わせてもよい。
本発明の液晶配向剤における、架橋性化合物の含有量は、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、架橋反応が進行し目的の効果を発現し、かつAC残像特性が少ない観点から、より好ましくは1~15質量部である。
【0099】
上記密着助剤としては、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。これらシランカップリング剤を使用する場合は、AC残像が少ない観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0100】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
液晶配向膜は、上記の液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られる膜である。本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板とともに、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることもできる。その際、液晶を駆動させるためのITO電極などが形成された基板を用いると、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウエハーなどの不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
【0101】
液晶配向剤の基板における塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法又はスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0102】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される溶媒を十分に除去するために50~120℃で1~10分焼成し、その後、150~300℃で5~120分焼成する条件が挙げられる。焼成後の液晶配向膜の厚みは、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
【0103】
本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜を配向処理する方法は、ラビング処理法でもよいが、光配向処理法を用いてもよい。
ラビング処理又は光配向処理による配向処理では、液晶配向性を改善するために、場合により、好ましくは、150~250℃の温度で加熱処理を行った後に配向処理してもよく、また、液晶配向膜が塗膜された基板を50~250℃で加熱しながら、配向処理をしてもよい。
【0104】
更に、上記の方法で、配向処理した液晶配向膜に、水や溶媒を用いて、接触処理を行い液晶配向膜に付着した不純物を除去することもできる。
上記接触処理に使用する溶媒としては、特に限定されるものではないが、具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル又は酢酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0105】
本発明の液晶配向膜は、IPS方式やFFS方式などの横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適であり、特に、FFS方式の液晶表示素子全般の液晶配向膜として有用である。液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して得られる。
【0106】
液晶セルの作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。なお、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
具体的には、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされている。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO-TiOの膜とすることができる。
【0107】
次に、各基板の上に液晶配向膜を形成し、一方の基板に他方の基板を互いの液晶配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール剤で接着する。シール剤には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入しておき、また、シール剤を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール剤の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。次いで、シール剤に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール剤で包囲された空間内に液晶材料を注入し、その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。液晶材料は、ポジ型液晶材料やネガ型液晶材料のいずれを用いてもよいが、好ましいのは、ネガ型液晶材料である。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。
【実施例
【0108】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下における化合物の略号及び各特性の測定方法は、次のとおりである。また、「%」は、特に言及しない限り、「質量%」を意味する。
(ジアミン)
l-1:下記式(l-1)で表される化合物
m-1:下記式(m-1)で表される化合物
n-1:下記式(n-1)で表される化合物
DA-1~DA-7:それぞれ下記式(DA-1)~(DA-7)で表される化合物
【0109】
(テトラカルボン酸二無水物)
CA-1~CA-4:それぞれ下記式(CA-1)~(CA-4)で表される化合物
(化合物C)
C-1:下記式(C-1)で表される化合物
(化合物D)
D-1:下記式(D-1)で表される化合物
(化合物E)
E-1:下記式(E-1)で表される化合物
(有機溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、 GBL:γ―ブチロラクトン、
BCS:ブチルセロソルブ
【0110】
【化30】
【0111】
【化31】
【0112】
【化32】
(Etはエチル基を表す。)
【0113】
<イミド化率の測定>
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500、日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0114】
[重合体の合成]
<合成例1>
撹拌装置及び窒素導入管付きの1Lの四つ口フラスコに、DA-2を8.60g(35.2mmol)、DA-4を5.34g(9.59mmol)、及びDA-3を7.65g(19.1mmol)量り取り、NMPを固形分濃度が12%となるように加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1を9.32g(41.6mmol)添加し、さらにNMPを固形分濃度が15%となるように加え、窒素雰囲気下40℃で3時間撹拌した。さらに、CA-2を2.82g(14.3mmol)添加し、さらにNMPを固形分濃度が15%となるように加え、窒素雰囲気下23℃で4時間撹拌し、ポリアミック酸溶液を得た。
撹拌子の入った3L三角フラスコに、上記で得られたポリアミック酸溶液を80.0g分取し、NMPを70.0g、無水酢酸を6.97g、及びピリジンを1.80g加え、室温で30分間撹拌した後、55℃で3時間反応させた。この反応溶液を560gのメタノール中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後、60℃で減圧乾燥し、ポリイミドの粉末(イミド化率:75%)を得た。
撹拌子の入った300mL三角フラスコに、このポリイミドの粉末を9.00g分取し、NMPを36.0g加えて、50℃にて20時間撹拌して溶解させ、固形分濃度が20%のポリイミド(PI-A-1)の溶液を得た。
【0115】
<合成例2>
下記表1に示す、ジアミン、テトラカルボン酸誘導体及び有機溶媒を使用し、それぞれ、合成例1と同様の手順で実施することにより、下記表1に示す組成のポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸溶液1000.0gを分取し、化合物E-1を45.32g(207.63mmol)加えてさらに12時間撹拌した後、合成例1と同様に、NMPと無水酢酸とピリジンを用いて、ポリイミド(PI-A-2)の溶液を得た。表1中、括弧内の数値は、テトラカルボン酸成分については、合成に使用したジアミンの合計量100モル部に対する各化合物の配合割合(モル部)を表し、ジアミン成分については、合成に使用したジアミンの合計量100モル部に対する各化合物の配合割合(モル部)を表す。有機溶媒については、合成に使用した有機溶媒の合計量100質量部に対する各有機溶媒の配合割合(質量部)を表す。
【0116】
<合成例3>
撹拌装置及び窒素導入管付きの1Lの四つ口フラスコに、l-1を12.00g(111.0mmol)、m-1を29.34g(148.0mmol)、及びn-1を46.79g(111.0mmol)を測りとり、固形分濃度が12%となるように、NMPを451.7g及びGBLを194.7g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2を55.14g(281.1mmol)とGBLを固形分濃度が14.5%となるように加え、窒素雰囲気中、水冷下で2時間撹拌した。さらに、CA-3を16.14g(74.0mmol)添加し、次いでGBLを固形分濃度が15%となるように加え、窒素雰囲気下50℃で15時間撹拌し、固形分15%でNMP/GBL=50/50となるポリアミック酸(PAA-B-1)の溶液を得た。
【0117】
<合成例4>
撹拌装置及び窒素導入管付きの1Lの四つ口フラスコに、l-1を12.00g(111.0mmol)、m-1を29.34g(148.0mmol)、及びn-1を46.79g(111.0mmol)を測りとり、固形分濃度が12%となるように、NMPを447.1g、GBLを199.3g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2を69.65g(355.2mmol)及びGBLを固形分濃度が15.0%となるように加え、窒素雰囲気下水冷下で5時間撹拌し、固形分15%でNMP/GBL=50/50となるポリアミック酸(PAA-B-2)の溶液を得た。
【0118】
<合成例5~9>
下記表1に示す、ジアミン、テトラカルボン酸誘導体及び有機溶媒を使用し、それぞれ、合成例3と同様の手順で実施することにより、下記表1に示すポリアミック酸(PAA-B-3)~(PAA-B-7)の溶液を得た。表1中、括弧内の数値は、テトラカルボン酸成分については、合成に使用したジアミンの合計量を100モル部としたときの各化合物の配向割合(モル部)を表し、ジアミン成分については、合成に使用したジアミンの合計量100モル部に対する各化合物の配合割合(モル部)を表す。有機溶媒については、合成に使用した有機溶媒の合計量100質量部に対する各有機溶媒の配合割合(質量部)を表す。
【0119】
<合成例10>
下記表1に示す、ジアミン、テトラカルボン酸誘導体及び有機溶媒を使用し、それぞれ、合成例4と同様の手順で実施することにより、下記表1に示すポリアミック酸(PAA-B-8)の溶液を得た。表1中、括弧内の数値は、テトラカルボン酸成分については、合成に使用したジアミンの合計量を100モル部としたときの各化合物の配向割合(モル部)を表し、ジアミン成分については、合成に使用したジアミンの合計量100モル部に対する各化合物の配合割合(モル部)を表す。有機溶媒については、合成に使用した有機溶媒の合計量100質量部に対する各有機溶媒の配合割合(質量部)を表す。
【0120】
【表1】
【0121】
<実施例1>
[液晶配向剤の調製]
合成例2で得られたポリイミド(PI-A-2)の溶液及び合成例3で得られたポリアミック酸(PAA-B-1)の溶液を用いて、NMP、GBL及びBCSにより希釈し、更に化合物(C-1)を全ての重合体100質量部に対して3が挙げられる。
質量部となるように、化合物(D-1)を全ての重合体の合計100質量部に対して1質部添加し室温で撹拌した。次いで、この得られた溶液を孔径0.5μmのフィルターでろ過することにより、重合体の成分比率が(PI-A-2):(PAA-B-1)=40:60(固形分換算質量比)、溶媒組成比が固形分:NMP:GBL:BCS=4.5:30:45.5:20(質量比)、化合物(C-1)と化合物(D-1)の配合割合が、それぞれ重合体成分の合計100質量部に対して3質量部と1質量部となる液晶配向剤(1)を得た(下記の表2参照)。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0122】
<実施例2~8、比較例1~4>
下記表2に示す重合体及び重合比以外は、実施例1と同様に実施することにより、液晶配向剤(2)~(12)を得た。表2中、括弧内の数値は、重合体及び化合物(C)についてはそれぞれ液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の合計100質量部に対する各重合体成分又は化合物(C)の配合割合(質量部)を表す。有機溶媒については、液晶配向剤に含まれる有機溶媒の合計量100質量部に対する各有機溶媒の配合割合(質量部)を表す。
【0123】
【表2】
【0124】
[FFS型液晶表示素子の作製]
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:FFS)モード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製する。
始めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたITO電極が形成されている。第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD(化学蒸着)法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
【0125】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲した「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲した「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字の「くの字」に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
【0126】
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が-10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。
【0127】
次に、液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板と裏面にITO膜が成膜されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した。その後、80℃で15分間乾燥して、液晶配向膜付き基板を得た。これら2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、ラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた。その後、シール剤を硬化させて、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネガ型液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから液晶配向性の評価に使用した。
【0128】
[電圧保持率測定用液晶セルの作製]
液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、電極付き基板(横30mm×縦40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板。電極は幅10mm×長さ40mmの矩形で、厚さ35nmのITO電極)に、スピンコート塗布にて塗布した。50℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚60nmの塗膜を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜をレーヨン布(吉川化工製YA-20R)でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。
【0129】
上記の液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に高さ4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネガ型液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置し、電圧保持率測定用液晶セルを得た。
【0130】
[透過率評価基板の作製]
得られた液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、石英基板上に配向剤をスピンコート塗布し、80℃のホットプレート上で2分間乾燥後、230℃で20分焼成し、膜厚100nmのポリイミド膜を形成した。この基板の塗膜面に向かい合う二辺のみ両面テープを貼り、何も成膜されていない石英基板と貼り合わせた。こうして出来た簡易セルに安息香酸ベンジルを注入したものを評価基板とした。
【0131】
[評価]
1.長期交流駆動による残像評価
上記残像評価に使用した液晶セルと同様の構造の液晶セルを準備した。
この液晶セルを用い、60℃の恒温環境下、周波数60Hzで±5Vの交流電圧を120時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度Δとして算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し同様の角度Δを算出した。
この角度Δが0.13°未満の時、良好な液晶配向性であるとした。評価結果を、表3に示す。
【0132】
2.蓄積電荷の緩和速度測定
上記(液晶セルの作製)と同様にして作製した液晶セルを、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で、2枚の偏光板の下からLEDバックライトを照射しておき、2枚の偏光板の上で測定するLEDバックライト透過光の輝度が最小となるように、液晶セルの角度を調節した。次に、この液晶セルに周波数60Hzの交流電圧を印加しながらV-Tカーブ(電圧-透過率曲線)を測定し、相対透過率が23%となる交流電圧を駆動電圧として算出した。
【0133】
残像評価では、相対透過率が23%となる周波数60Hzの交流電圧を印加して液晶セルを駆動させながら、同時に1Vの直流電圧を印加し、120分間駆動させた。その後、直流電圧の印加のみを停止し、交流電圧のみでさらに15分駆動した。
直流電圧の印加を停止した時点から10分間が経過するまでに、相対透過率が25%以下に緩和した場合に、「良好」とし、相対透過率が25%以下に低下するまでに10分間以上を要した場合には、「不良」と定義して評価した。
そして、上述した方法に従う残像評価は、液晶セルの温度が40℃の状態の温度条件下で行った。
【0134】
3.黒レベル評価
上記(液晶セルの作製)と同様にして作製した液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。その液晶セルを浜松ホトニクス社製のデジタルCCDカメラ「C8800-21C」を用いて観察を行い、撮り込んだ画像を同社の解析ソフト「ExDcam Image capture Software」を用いて輝度の数値化を行った。この液晶セルの輝度値が580以下であれば「良好」、それ以上は「不良」とした。
【0135】
4.電圧保持率のバックライト耐性の評価
上記の電圧保持率測定用液晶セルに60℃の温度下で1Vの電圧を60μsec印加し、167msec後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として算出した。これを初期の電圧保持率とする。
次いでバックライト耐性試験として、この液晶セルを、表面温度が50℃の高輝度バックライト(20000cd)の下で168時間放置した。この液晶セルの電圧保持率を上記と同様に測定した。これを耐性試験後の電圧保持率とする。
電圧保持率のバックライト耐性は、初期値から耐性試験後の値をひいた値が、1%未満であれば「良好」とし、1%以上であれば「不良」とした。
【0136】
5.リワーク性の評価
本発明の液晶配向剤をITO基板にスピンコート塗布にて塗布した。60℃のホットプレート上で1分30秒間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。その後、35℃に加熱したリワーク剤(KPX社製、KR-31)に作製した基板を600秒間浸漬させて現像した後、超純水で30秒間流水洗浄を行った。その後、エアブローで乾燥させ、残膜量を観察した。この時、残膜なしの場合に「良好」とし、残膜ありの場合に「不良」とした。
【0137】
6.透過率の評価
透過率の評価は、上記手法で得られた基板の透過率を測定することで行った。具体的には、測定装置にCary 5000(VARIAN社製)を用い、温度25℃、スキャン波長を380~800nmの条件で、透過率を測定した。その際、リファレンス(参照例)に何も塗布していない石英基板を用いて行った。評価は、380~800nmの波長の平均透過率を算出し、その値が98%以上のものを「良好」とし、98%未満のものを「不良」とした。
【0138】
上記実施例1~8及び比較例1~4の各液晶配向剤を使用する液晶表示素子について、上記の通り実施した評価結果を下記表3に示す。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の液晶配向剤は、IPS駆動方式やFFS駆動方式などの広範な液晶表示素子における液晶配向膜の形成に有用である。
なお、2019年4月24日に出願された日本特許出願2019-083223号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。