IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-撮像装置 図1
  • 特許-撮像装置 図2
  • 特許-撮像装置 図3
  • 特許-撮像装置 図4
  • 特許-撮像装置 図5
  • 特許-撮像装置 図6
  • 特許-撮像装置 図7
  • 特許-撮像装置 図8
  • 特許-撮像装置 図9
  • 特許-撮像装置 図10
  • 特許-撮像装置 図11
  • 特許-撮像装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/50 20230101AFI20231226BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20231226BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20231226BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20231226BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20231226BHJP
   G02B 7/40 20210101ALI20231226BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20231226BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20231226BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231226BHJP
   G03B 37/00 20210101ALI20231226BHJP
【FI】
H04N23/50
H04N23/56
H04N23/60 500
G01B11/00 B
G01C3/06 120Q
G01C3/06 110B
G01C3/06 140
G02B7/40
G02B7/28 H
G03B17/02
G03B15/00 T
G03B37/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022130760
(22)【出願日】2022-08-18
(62)【分割の表示】P 2018186964の分割
【原出願日】2018-10-01
(65)【公開番号】P2022176974
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 聡一郎
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/229887(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104567818(CN,A)
【文献】特開2007-187970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/00
H04N 23/56
H04N 23/50
H04N 23/60
G01B 11/00
G01C 3/06
G02B 7/40
G02B 7/28
G03B 17/02
G03B 15/00
G03B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、各々異なる範囲を撮像範囲とする複数の撮像光学素子を含み、第1の軸の周囲の360度の範囲を撮像する撮像手段と、
光源と、互いに異なる方向に向けて配置された複数の投射光学素子を含み、前記光源から出射された光を前記360度の範囲に投射する投射手段と、
受光素子と、各々異なる範囲を受光範囲とする複数の受光光学素子を含み、前記360度の範囲から反射された前記光を受光する受光手段と、
を備え、
前記撮像手段と、前記投射手段と、前記受光手段とを、前記第1の軸方向を長手方向とする長手形状の筐体に一体的に備え、
前記筐体の長手方向において、互いに異なる位置に配置される前記投射光学素子と前記受光光学素子を含む
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
撮像素子と、各々異なる範囲を撮像範囲とする複数の撮像光学素子を含み、第1の軸の周囲の360度の範囲を撮像する撮像手段と、
光源と、互いに異なる方向に向けて配置された複数の投射光学素子を含み、前記光源から出射された光を前記360度の範囲に投射する投射手段と、
受光素子と、各々異なる範囲を受光範囲とする複数の受光光学素子を含み、前記360度の範囲から反射された前記光を受光する受光手段と、
を備え、
前記撮像手段と、前記投射手段と、前記受光手段とを、前記第1の軸方向を長手方向とする長手形状の筐体に一体的に備え、
前記筐体の長手方向において、互いに異なる位置に配置される前記撮像光学素子と前記投射光学素子を含む
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
撮像素子と、各々異なる範囲を撮像範囲とする複数の撮像光学素子を含み、第1の軸の周囲の360度の範囲を撮像する撮像手段と、
光源と、互いに異なる方向に向けて配置された複数の投射光学素子を含み、前記光源から出射された光を前記360度の範囲に投射する投射手段と、
受光素子と、各々異なる範囲を受光範囲とする複数の受光光学素子を含み、前記360度の範囲から反射された前記光を受光する受光手段と、
を備え、
前記撮像手段と、前記投射手段と、前記受光手段とを、前記第1の軸方向を長手方向とする長手形状の筐体に一体的に備え、
前記筐体の長手方向において、互いに異なる位置に配置される前記撮像光学素子と前記受光光学素子を含む
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
前記受光光学素子は、前記筐体の長手方向において前記投射光学素子および前記撮像光学素子とは異なる位置に配置される、ことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記複数の撮像光学素子の少なくとも1つと、前記複数の投射光学素子の少なくとも1つと、前記複数の受光光学素子の少なくとも1つと、が共に前記筐体の一面側に設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
記撮像光学素子と前記受光光学素子とはいずれもレンズであり、前記投射光学素子はレンズまたは光偏向素子である、ことを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記複数の撮像光学素子、前記複数の投射光学素子及び前記複数の受光光学素子は前記筐体の前記長手方向の一方寄りに配置され、前記筐体は、前記筐体の前記長手方向の他方寄りに、前記複数の撮像光学素子、前記複数の投射光学素子及び前記複数の受光光学素子のいずれも配置されない部分を含む、ことを特徴とする請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数の撮像光学素子は、前記筐体の長手方向において互いに異なる位置に配置される2つの撮像光学素子を含む、ことを特徴とする請求項1乃至7のうちの何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記受光手段により受光した光に基づいて距離情報を取得する取得手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項1乃至8のうちの何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
記取得手段によって取得された前記距離情報と、前記撮像手段によって撮像された画像と、に基づいて、3次元点群データを構成する情報処理手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実在する物体、建築物、それらを含む空間全体を、カメラで撮像したりあるいはレーザ光を照射したりするなどして計測し、その計測結果から現実空間にある3次元構造を電子データで復元する3次元モデル復元技術が知られている。椅子、机、模型などの小規模な対象物をターゲットとするものから、建設現場や観光地などのように複数の大規模な物体や開空間などをターゲットとするものまで、様々なターゲットへの利用が考えられる。
【0003】
また、単色の床や壁など模様がない領域についてはパターン光を照射して深度情報を取得する技術がある。また、投射した光を受光するLiDAR(Light Detection and Ranging)装置を開示した文献もある(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は、撮像装置と、レーザ光などを照射する照射装置とは別体であり、3次元モデルを復元するシステムとして複雑な準備(例えば、照射方向と撮像装置の撮像方向の位置あわせなど)をする必要があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、距離情報を取得するための準備が簡単な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一実施の形態の撮像装置は、撮像素子と、各々異なる範囲を撮像範囲とする複数の撮像光学素子を含み、第1の軸の周囲の360度の範囲を撮像する撮像手段と、光源と、互いに異なる方向に向けて配置された複数の投射光学素子を含み、前記光源から出射された光を前記360度の範囲に投射する投射手段と、受光素子と、各々異なる範囲を受光範囲とする複数の受光光学素子を含み、前記360度の範囲から反射された前記光を受光する受光手段と、を備え、前記撮像手段と、前記投射手段と、前記受光手段とを、前記第1の軸方向を長手方向とする長手形状の筐体に一体的に備え、前記筐体の長手方向において、互いに異なる位置に配置される前記投射光学素子と前記受光光学素子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、距離情報を取得するための準備が簡単な撮像装置を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る撮像装置の外観の一例を示す図である。
図2図2は、撮像装置の構成を説明するための図である。
図3図3は、処理回路の処理ブロックの構成の一例を示す図である。
図4図4は、Ctofのコストカーブ関数の一例を示す図である。
図5図5は、再投影処理を模式的に示した図である。
図6図6は、計測範囲の入力画像に対して対象物を示すセグメンテーション情報を付与する説明図である。
図7図7は、撮像装置の処理回路の動作の一例を示すフロー図である。
図8図8は、変形例1に係る位相差検出方式で計測する撮像装置の構成について説明するための図である。
図9図9は、投射部の構成の一例を模式的に示す図である。
図10図10は、MEMSミラーの構成の一例を説明する図である。
図11図11は、変形例2に係る撮像装置の構成の一例を説明するための図である。
図12図12は、EquiRectangular等の投影系の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、撮像装置および撮像処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1および図2は、第1の実施の形態に係る撮像装置の構成の一例を示す図である。図1は、撮像装置の外観の一例を示す図である。図2は、撮像装置の構成を説明するための図である。図2には、図1の撮像装置の内部の構成を示している。さらに、図2には、光の経路を説明するための図を重ねて示している。先ず、図1および図2を参照して撮像装置の構成について説明する。
【0011】
撮像装置1は、撮像部(カメラ)11と、可視光以外の光を投射する投射部(距離センサの発光部に相当する部分)12と、投射部12が投射した光に基づいて距離情報を取得する距離情報取得部(距離センサの受光部に相当する部分)13とを筐体10に対して一体に設けたものである。各部は、筐体10内部の処理回路14と同期信号線Lにより電気的に接続されており、それぞれ同期して動作する。ここで、撮像部11は「撮像手段」に相当し、投射部12は「投射手段」に相当し、距離情報取得部13は「受光手段」に相当する。処理回路14は、「取得手段」に相当する。
【0012】
撮影スイッチ15は、ユーザが処理回路14に撮影指示信号を入力するためのものである。撮影指示に基づき処理回路14は各部を制御してRGB画像や距離情報のデータを取得し、さらに「情報処理手段」として、取得した距離情報のデータをRGB画像や距離情報のデータに基づいて高密度3次元点群データに再構築する処理を行う。距離情報のデータは、そのまま使用しても3次元点群データを構築することが可能だが、その場合、3次元点群データの精度が距離情報取得部13の画素数(解像度)に制限される。本例では、それを高密度の3次元点群データに再構築する場合の処理についても示す。再構築したデータは可搬型の記録媒体や通信などを介して外部のPCなどに出力され、3次元復元モデルの表示に利用される。
【0013】
各部や処理回路14には、筐体10内部に収容されるバッテリから電力が供給される。この他にも、筐体10の外部から接続コードにより電力供給を受ける構成としてもよい。
【0014】
撮像部11は、撮像素子11aや、魚眼レンズ(広角レンズ)11bなどを有する。投射部12は、光源部12aや広角レンズ12bなどを有する。距離情報取得部13は、TOF(Time Of Fright)センサ13aや広角レンズ13bなどを有する。なお、各部は、図示を省略しているがプリズムやレンズ群などの光学系を構成してよい。例えば、撮像部11に、魚眼レンズ11bが撮像範囲から集めた光を撮像素子11aに結像するための光学系を構成してよい。また、投射部12に、光源部12aの光を広角レンズ12bに導く光学系を構成してよい。また、距離情報取得部13に広角レンズ13bが集めた光をTOFセンサ13aに結像するための光学系を構成してよい。ここで周囲の撮像範囲の光を入射する配置の光学素子を「撮像光学素子」と呼ぶ。また、光源から出射された光を周囲へ投射する配置の光学素子を「投射光学素子」と呼ぶ。また、周囲からの反射光(投射光の反射光)を入射する配置の光学素子を「受光光学素子」と呼ぶ。各光学系については、撮像素子11a、光源部12a、TOFセンサ13aなどの構成や配置に応じて適宜決めてよいものとし、ここでは、プリズムやレンズ群などの光学系については省略して説明する。
【0015】
撮像素子11a、光源部12a、およびTOFセンサ13aは、筐体10の内部に一体的に収められている。魚眼レンズ11bと、広角レンズ12bと、広角レンズ13bとは、それぞれ筐体10の第1の面に設けられている。第1の面において、魚眼レンズ11b、広角レンズ12b、および広角レンズ13のぞれぞれの内側の範囲は開口している。
【0016】
撮像素子11aは、2次元解像度のイメージセンサ(エリアセンサ)である。撮像素子11aは、2次元方向に各画素の受光素子(フォトダイオード)が多数配列された撮像エリアを有する。撮像エリアには可視光を受光するためにベイヤ配列等のR(Red)とG(Green)とB(Blue)のカラーフィルタが設けられており、カラーフィルタを通過した光がフォトダイオードに蓄電される。ここでは、広角(例えば図2に示す撮像方向を正面とする周囲180度の半天球の範囲など)の2次元画像を高解像度で取得することができるように画素数の多いイメージセンサを使用する。撮像素子11aは、その撮像エリアに結像した光を各画素の画素回路で電気信号に変換して高解像度のRGB画像を出力する。魚眼レンズ11bは、広角(例えば図2に示す撮像方向を正面とする周囲180度の半球の範囲など)から光を集め、その光を撮像素子11aの撮像エリアに結像する。
【0017】
光源部12aは、半導体レーザであり、距離の計測に用いる可視光領域以外(ここでは一例として赤外とする)の波長帯のレーザ光を出射する。光源部12aには、1つの半導体レーザを用いてもよいし、複数の半導体レーザを組み合わせて使用してもよい。また、半導体レーザとして例えばVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)などの面発光型の半導体レーザを使用してもよい。また、半導体レーザの光を光学レンズにより縦に長くなるように成形し、縦長にした光を、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーなどの光偏向素子で計測範囲の一次元方向に走査するような構成にしてもよい。本実施の形態では、光源部12aとして、半導体レーザLAの光をMEMSミラーなどの光偏向素子を使用せずに広角レンズ12bを介して広角の範囲に広げる形態を示している。
【0018】
光源部12aの広角レンズ12bは、光源部12aが出射した光を広角(例えば図2に示す撮像方向を正面とする周囲180度の半球の範囲など)の範囲に広げる機能を有する。
【0019】
距離情報取得部13の広角レンズ13bは、投射部12により投射された光源部12aの光の反射光を、計測範囲である広角(例えば図2に示す撮像方向を正面とする周囲180度の半球の範囲など)の各方向から取り込み、それらの光をTOFセンサ13aの受光エリアに結像する。計測範囲には一つまたは複数の被投射物(例えば建物など)が含まれており、被投射物で反射した光(反射光)が広角レンズ13bに入射する。反射光は、例えば広角レンズ13bの表面全体に赤外領域の波長以上の光をカットするフィルタを設けるなどして取り込んでよい。なお、これに限らず、受光エリアに赤外領域の光が入射すればよいため、広角レンズ13bから受光エリアまでの光路にフィルタなど赤外領域の波長の光を通す手段を設けてもよい。
【0020】
TOFセンサ13aは、2次元解像度の光センサである。TOFセンサ13aは多数の受光素子(フォトダイオード)が2次元方向に配列された受光エリアを有する受光手段である。TOFセンサ13aは、計測範囲の各エリア(各エリアを位置とも言う)の反射光を、各エリアに対応する受光素子で受光し、各受光素子で検出した光に基づき各エリアまでの距離を計測(算出)する。
【0021】
例えば、図2に示すパルス方式で距離を計測する構成では、光源部12aで、立ち上がり時間が数ナノ秒(ns)で且つ光ピークパワーが強い超短パルスの照射パルスP1を出射し、これに同期してTOFセンサ13aにより、光源部12aが出射した照射パルスP1の反射光である反射パルスP2の受光までにかかる時間(t)を計測する。この方式を採用する場合、例えばTOFセンサ13aとして、受光素子の出力側に時間の計測を行う回路などを実装したものを使用する。各回路では、受光素子毎に、光源部12aが照射パルスP1を出射してから反射パルスP2を受光するまでにかかる時間を距離に換算し、各エリアまでの距離を得る。このように、TOFセンサ13aは、投射部12による光の照射に同期して駆動し、各受光素子(画素に対応)で反射光を受光するまでにかかった時間から各画素に対応する距離を算出し、画素情報に計測範囲内の各エリアまでの距離を示す情報を対応付けた距離情報(「距離画像」や「TOF画像」とも言う)を出力する。なお、測定範囲を分割することができるエリア数は、受光エリアの解像度によって決まる。従って、小型化のため解像度が低いものを使用した場合、距離画像の画素情報の数が減少するため、3次元点群の数も少なくなる。この方式は、ピーク光を使用し強力な光を出力することができるので、撮像装置1の広角化に適している。また、MEMSミラーなどを使用して光を振る(走査する)構成にした場合には、強力な光を、広がりを抑えつつ遠くまで照射することができるため、測定距離の拡大に繋がる。この場合、光源部12aから出射されたレーザ光を、MEMSミラーにより広角レンズ12bへ向けて走査(偏向)するような配置関係とする。
【0022】
なお、撮像部11の有効画角と距離情報取得部13の有効画角は例えば180度以上で一致していることが望ましいが、必ずしも一致していなくてもよい。必要に応じて撮像部11の有効画角と距離情報取得部13の有効画角とをそれぞれ減じてもよい。本実施例では、撮像部11および距離情報取得部13は画角に干渉するものがないように例えば100度~180度の範囲内などに有効画素を減じている。また、TOFセンサ13aの解像度は、撮像装置1の小型化を優先して撮像素子11aの解像度よりも低く設定してよい。本例のようなパルス方式の場合、TOFセンサ13aを高解像度に設けることは難しい。TOFセンサ13aを撮像素子11aよりも低解像度のものとすることにより、受光エリアのサイズ拡大を抑えることができるため、撮像装置1の小型化に繋げることができる。このためTOFセンサ13aは低解像度になり、TOFセンサ13aで得られる3次元点群は低密度となるが、「取得手段」である処理回路14を設けているため高密度の3次元点群に変換することができる。処理回路14において高密度の3次元点群に変換する処理については後述する。
【0023】
本実施の形態では、一例として、撮像素子11aと、光源部12aと、TOFセンサ13aとは筐体10の長手方向に直線上に並ぶように設けている。撮像素子11aの撮像エリア(撮像面)やTOFセンサ13aの受光エリア(受光面)は、図2に示すように長手方向に直交する方向に向けて配置してもよいし、光の直進方向(光路)を90度変換して入射させるプリズムなどを設けることで長手方向に向けて配置してもよい。この他にも、構成に応じて任意の向きに配置してもよい。つまり、撮像素子11aと、光源部12aと、TOFセンサ13aとは、同じ計測範囲が対象となるように配置される。撮像部11と、投射部12と、距離情報取得部13とが筐体10の一面側から、その測定範囲に向けて配置される。この際に、撮像素子11aとTOFセンサ13aとを、平行ステレオ化するように同一基線上に配置できればよい。平行ステレオ化するように配置することにより、撮像素子11aが1つであっても、TOFセンサ13aの出力を利用して視差データを得ることが可能になる。光源部12aは、TOFセンサ13aの計測範囲に光を照射することができるように構成する。
【0024】
(処理回路)
続いて、処理回路14の処理について説明する。TOFセンサ13aだけで得たTOF画像は、そのままでは解像度が低い。このため、本例では処理回路14により高解像度化し、高密度の3次元点群データを再構築する例を示す。なお、処理回路14における「情報処理手段」としての以下に示す処理の一部または全ては、外部装置で行ってもよい。
【0025】
図3は、処理回路14の処理ブロックの構成の一例を示す図である。図3に示す処理回路14は、制御部141と、RGB画像データ取得部142と、モノクロ処理部143と、TOF画像データ取得部144と、高解像度化部145と、マッチング処理部146と、再投影処理部147と、セマンティックセグメンテーション部148と、視差計算部149と、3次元再構成処理部150とを有する。なお、図3において、実線矢印は信号の流れを示し、破線矢印はデータの流れを示している。
【0026】
制御部141は、撮影スイッチ15からON信号(撮影開始信号)を受けると撮像素子11a、光源部12a、およびTOFセンサ13aに同期信号を出力し、処理回路14全体を制御する。制御部141は、先ず光源部12aに超短パルスの出射を指示する信号を出力し、これと同じタイミングでTOFセンサ13aにTOF画像データの生成を指示する信号を出力する。さらに、制御部141は、撮像素子11aに撮像を指示する信号を出力する。なお、撮像素子11aにおける撮像は、光源部12aから超短パルスが出射されている期間でもよいし、その前後の直近の期間でもよい。
【0027】
RGB画像データ取得部142は、制御部141による撮像指示に基づき、撮像素子11aが撮像したRGB画像データを取得する。モノクロ処理部143は、TOFセンサ13aから得られるTOF画像データとのマッチング処理のためにデータ種を揃えるための処理を行う。この例では、モノクロ処理部143は、RGB画像データをモノクロ画像に変換する処理を行う。
【0028】
TOF画像データ取得部144は、制御部141によるTOF画像データの生成指示に基づき、TOFセンサ13aが生成したTOF画像データを取得する。
【0029】
高解像度化部145は、TOF画像データをモノクロ画像に見立て、その解像度を高解像度化する。具体的に、高解像度化部145は、TOF画像データの各画素に対応付けられている距離の値を、モノクロ画像の値(グレースケール値)に置き換えて使用する。さらに、高解像度化部145は、モノクロ画像の解像度を撮像素子11aから得られたRGB画像データの解像度まで高解像度化する。高解像度への変換は、例えば通常のアップコンバート処理を施すことにより行う。その他の変換方法としては、例えば連続して生成されたTOF画像データを複数フレーム取得し、それらを利用して隣接する地点の距離を追加して超解像度処理を施すなどしてもよい。
【0030】
マッチング処理部146は、TOF画像データを高解像度化したモノクロ画像と、RGB画像データのモノクロ画像とについて、テクスチャのある部分の特徴量を抽出し、抽出した特徴量によりマッチング処理を行う。例えば、マッチング処理部146は、各モノクロ画像からエッジを抽出し、抽出したエッジ情報同士でマッチング処理を行う。この他の方法として、例えばSIFT等のテクスチャの変化を特徴量化した手法でマッチング処理を行ってもよい。ここでマッチング処理とは、対応画素の探索のことを意味する。
【0031】
マッチング処理の具体的な手法として、例えばブロックマッチングがある。ブロックマッチングは、参照する画素の周辺で、M×M(Mは正の整数)ピクセルサイズのブロックとして切り出される画素値と、もう一方の画像のうち、探索の中心となる画素の周辺で、同じくM×Mピクセルのブロックとして切り出される画素値の類似度を計算し、最も類似度が高くなる中心画素を対応画素とする方法である。
【0032】
類似度の計算方法は様々である。例えば、次に示す(式1)は正規化自己相関係数CNCC(NCC:Normalized Correlation Coefficient)を示す式である。正規化自己相関係数CNCCは数値が高いほど類似度が高いことを示し、ブロックの画素値が完全に一致していれる場合に1となる。
【0033】
探索範囲の中で最も高い係数値を示すブロックの中心画素を対応画素とする。
【数1】
【0034】
また、TOF画像データからテクスチャレス領域の距離のデータも得られるため、領域に応じてマッチング処理に重みをつけてもよい。例えば式1の計算において、次に示す式2に示すようにエッジ以外の箇所(テクスチャレス領域)に重みをかける計算を行ってもよい。
【0035】
また、式1の代わりに、次の式3のような選択的正規化相関(SCC:Selective Correlation Coefficient)などを用いてもよい。
【数2】
【0036】
【数3】
【0037】
式3は基本的に式1と同様であるが、選択関数Cと呼ばれるマスク係数を通しているところが異なる。一般的にはCはb,b´をそれぞれ各画像に対する増分符号として定義される。つまりエッジがより強調されて計算される。この反対を使うことによってエッジでない領域によりTOFデータを利用させることができる。ただし、ここでCtofは、TOFセンサ13aで検出された距離位置を中心に幅を持たせた重みのコストカーブ関数とする。図4が、Ctofのコストカーブ関数の一例である。
【0038】
再投影処理部147は、計測範囲の各位置の距離を示すTOF画像データを撮像部11の2次元座標(スクリーン座標系)に再投影する処理を行う。再投影するとは、TOFセンサ13aが算出する3次元点が、撮像素子11aの画像ではどの座標に写るかを求めることである。TOF画像データは、距離情報取得部13(主に広角レンズ13b)を中心とする座標系における3次元点の位置を示す。従って、TOF画像データが示す3次元点を、撮像部11(主に魚眼レンズ11b)を中心とする座標系に再投影する。例えば、再投影処理部147は、TOF画像データの3次元点の座標を撮像部11を中心とする3次元点の座標に平行移動し、平行移動後に、RGB画像データが示す2次元の座標系(スクリーン座標系)に変換する処理を施す。図5は、再投影処理を模式的に示した図である。スクリーン座標系に変換する処理について式4を用いて説明する。
【0039】
式4において、(X,Y,Z)は撮像部11の座標系における3次元座標を示している。3×3行列は投影行列と呼ばれるものであり、スクリーン座標系の(x,y)方向の焦点距離(f,f)と、光学中心に対するスクリーン座標系のずれ(c,c)とを使って示される。式2により求まるλ(u,v)がスクリーン座標系に変換(再投影)されたときの座標(再投影座標)である。
【数4】
【0040】
視差計算部149は、マッチング処理により得られた対応画素との距離のズレから各位置の視差を計算する。
【0041】
なお、視差のマッチング処理は、再投影処理部147が変換した再投影座標を利用して、再投影座標の位置の周辺画素を探索することで、処理時間の短縮や、より詳細で高解像度な距離情報を取得することが可能になる。
【0042】
また、視差のマッチング処理にセマンティックセグメンテーション部148のセマンティックセグメンテーション処理により得られたセグメンテーションデータを利用してもよい。その場合、さらに詳細で高解像度の距離情報を取得することができるようになる。
【0043】
また、エッジのみや、強い特徴量のある部分のみ、視差のマッチング処理を行い、その他の部分は、TOF画像データも利用し、例えばRGB画像特徴や確率的な手法を利用し、伝搬処理を行ってもよい。
【0044】
セマンティックセグメンテーション部148は、深層学習を利用して、例えば図6のように、計測範囲の入力画像に対して対象物を示すセグメンテーションラベルを付与する。これにより、TOF画像データの各画素を、距離毎に分けた複数の距離領域の何れかに拘束させることができるので、計算の信頼性がさらに高まる。
【0045】
3次元再構成処理部145は、RGB画像データ取得部142からRGB画像データを取得し、視差計算部149が出力した距離情報に基づいて3次元データを再構成し、各3次元点に色情報を付加した高密度3次元点群を出力する。
【0046】
(処理回路の動作)
図7は、撮像装置1の処理回路14の動作の一例を示すフロー図である。処理回路14の制御部141は、ユーザにより撮影スイッチ15がONされ、撮影指示信号が入力されると、次のような方法で高密度3次元点群を生成する動作を行う。
【0047】
先ず、制御部141は、光源部12aと、TOFセンサ13aと、撮像素子11aとを駆動して計測範囲を撮影する(ステップS1)。制御部141による駆動により、光源部12aが赤外光(照射パルス)を照射し、その反射光である反射パルスをTOFセンサ13aが受光する。また、撮像素子11aが、光源部12aの駆動開始のタイミングあるいはその直近の期間に計測範囲を撮像する。
【0048】
次に、TOF画像データ取得部144が、TOFセンサ13aから2次元領域の各位置の距離を示すTOF画像データを取得する(ステップS2)。さらに、RGB画像データ取得部142が、撮像素子11aから計測範囲のRGB画像データを取得する(ステップS3)。なお、ステップS2とステップS3は逆の順序で行われても良い。
【0049】
次に、モノクロ処理部143が、RGB画像データをモノクロ画像へ変換する(ステップS4)。TOF画像データとRGB画像データとでは、それぞれが距離データとRGBデータとでデータ種が異なり、そのままではマッチングを行うことができない。従って、先ず一旦、それぞれのデータをモノクロ画像に変換する。TOF画像データについては、高解像度化部145が高解像度化の前に各画素の距離を示す値を、そのままモノクロ画像の値に置き換えることで変換する。
【0050】
次に、高解像度化部145がTOF画像データの解像度を高解像度化する(ステップS5)。
【0051】
次に、マッチング処理部146が、各モノクロ画像についてテクスチャのある部分の特徴量を抽出し、抽出した特徴量でマッチング処理を行う(ステップS6)。
【0052】
次に、視差計算部149が、対応画素の距離のズレから各位置の視差を計算する(ステップS7)。
【0053】
そして、3次元再構成処理部145が、RGB画像データ取得部142からRGB画像データを取得し、視差計算部149が出力した距離情報に基づいて3次元データを再構成し、各3次元点に色情報を付加した高密度3次元点群を出力する(ステップS8)。
【0054】
以上のように、本実施の形態に係る撮像装置は、可視光を受光して画像を取得する撮像部と、可視光以外の光を投射する投射部と、投射部が投射した光に基づいて距離情報を取得する距離情報取得部とを筐体に対して一体的に設ける。これにより、距離情報を取得するための準備が簡単な撮像装置を実現することができる。従来のように撮像装置と投射装置とが別体の場合は、撮影のたびに、撮像装置と投射装置のキャリブレーションが必要になる。キャリブレーションとは、投射方向と撮像方向の位置あわせなどである。しかし、本実施の形態では、共通の筐体に一体的に設けられるため、そのようなキャリブレーションは不要である、このため、距離情報を取得するための準備が簡単になる。また、処理回路において、各部が出力したデータを基に高密度の3次元点群データを再構築する。これにより、「高解像度」で「高精度」な「遠方・広角の3次元復元」を1つの小型デバイスとして実現することが可能になる。
【0055】
(変形例1)
実施の形態には、パルス方式で距離を計測する構成を示したが、この方式に限らず、適宜他の方式に変形してもよい。変形例1では、パルス方式以外の一例として位相差検出方式で距離を計測する場合の構成について示す。
【0056】
一般に、位相差検出方式では、基本周波数で振幅変調したレーザ光を計測範囲に照射し、その反射光を受光して照射光と反射光との位相差を測定することで時間を求め、その時間に光速をかけて距離を算出する。この方式では、ある程度の解像度が見込めることが強みだが、位相差を取るために光を出し続ける必要がある。このために強い光を出力することはできず、計測範囲を遠方まで稼ぐことが難しい。またスポット光が基本になるために広角化が難しい。変形例1では、この点も改善する。
【0057】
図8は、変形例1に係る位相差検出方式で計測する撮像装置の構成について説明するための図である。図8には、図2に示す撮像装置1の構成において、位相差検出方式に変形した場合の構成を示している。ここでは、図2に示す撮像装置の構成とは異なる箇所について説明し、共通する箇所については説明を適宜省略する。
【0058】
変形例1に係る撮像装置2において、光源部は、基本周波数で振幅変調したレーザ光を照射する。ここでは位相差検出方式を採用するため、スポット光を利用する。図8に示す一例では、「走査手段」である光偏向素子の一例のMEMSミラー231と、半導体レーザ232とを設けている。
【0059】
MEMSミラー231は、一次元方向に駆動し、半導体レーザ232のレーザ光を計測範囲の一方向(例えばX軸方向)に走査する。投射部から見た場合、計測範囲の全てはX軸と、これに直交するY軸の2次平面に投影することができる。そこで、この計測範囲の全てを2次平面と考えたときのX軸方向に対してMEMSミラー231によりレーザ光を走査する。2次平面におけるY軸方向の範囲についてはレーザ光に縦長の光を使用することによりカバーする。このように構成することにより、位相差検出方式において広角化を可能にする。
【0060】
図8に示す例では、半導体レーザ232を設けて走査系拡大レンズ233によりレーザ光を縦長の径になるように成形することで、2次平面のY軸方向の範囲をカバーする。ここでは、一例として、多数の半導体レーザ232を使用する。なお、半導体レーザ232の数は、適宜決めてよい。半導体レーザ232は、強い光を得るために複数構成したものを示しているが、これに限定せず、1であってもよい。なお、半導体レーザ232の数を増やすにつれて、強い光を出し続けることがより可能になる。
【0061】
半導体レーザとしてVCSELを使用してもよい。複数の半導体レーザを構成する場合、VCSELにおいてレーザ光を出射する発光部を一次元方向に配列したものや、2次元方向に配列したものなどを利用することができる。
【0062】
図9は、変形例1に係る投射部の構成の一例を模式的に示す図である。図9に示すように、処理回路14の制御部141が、半導体レーザ232の発光回路232aとX軸方向にスポット光を走査するMEMSミラー231とを共に制御する。具体的に、制御部141は、半導体レーザ232を発光した後、MEMSミラー231を一軸方向(図9の回転軸周り)に往復回動させる。この制御により、半導体レーザ232から出射されたレーザ光PがMEMSミラー231を介して計測範囲の一次元方向(X軸方向)に走査される。
【0063】
図9には、MEMSミラー231を介することによりレーザ光Pが方向を変えて出射される様子を破線矢印で示している。また、この例では、走査系拡大レンズ233を設けているため、レーザ光Pは径が縦長になるように成形されて出射される。図9には、MEMSミラー231により一次元方向に走査されるレーザ光Pにおいて、任意のレーザ光Pの径が走査系拡大レンズ233により縦長になるように成形されて出射される様子を一点鎖線矢印で示している。このように、変形例1に示す構成であれば、MEMSミラー231の一軸方向の駆動だけで計測範囲全体にレーザ光Pが照射される。また、位相差検出方式において強い光を出し続けることと広角化とを実現することができる。
【0064】
(光偏向素子)
図10は、MEMSミラー231の構成の一例を説明する図である。図10に示すMEMSミラー231は、支持基板131に、可動部132と二組の蛇行状梁部133とを有する。
【0065】
可動部132は反射ミラー1320を備えている。二組の蛇行状梁部133はそれぞれ一端が可動部132に連結され、他端が支持基板131により支持されている。二組の蛇行状梁部133はそれぞれミアンダ形状の複数の梁部からなり、共に、第1の電圧の印加により変形する第1の圧電部材1331と、第2の電圧の印加により変形する第2の圧電部材1332とを各梁部に1つおきに有する。第1の圧電部材1331と第2の圧電部材1332と隣り合う梁部ごとに独立に設けられている。二組の蛇行状梁部133はそれぞれ第1の圧電部材1331と第2の圧電部材1332への電圧の印加により変形し、可動部132の反射ミラー1320を回転軸周りに回転させる。
【0066】
具体的には、第1の圧電部材1331と第2の圧電部材1332に逆位相となる電圧を印加し、各梁部に反りを発生させる。これにより、隣り合う梁部が異なる方向にたわみ、それが累積され、二組の蛇行状梁部133に連結する可動部132と共に反射ミラー1320が回転軸を中心に往復回動する。さらに、回転軸を回転中心とするミラー共振モードに合わせた駆動周波数をもつ正弦波を逆相で第1の圧電部材1331と第2の圧電部材1332とに印加することで、低電圧で非常に大きな回転角度を得ることができる。
【0067】
なお、駆動波形は正弦波に限らない。例えばノコギリ波であってもよい。また、共振モードに限らず、非共振モードで駆動させてもよい。
【0068】
(処理回路の動作)
制御部141は、撮影スイッチ15からON信号(撮影開始信号)を受けると撮像素子11a、光源部(半導体レーザ232とMEMSミラー231)、およびTOFセンサ13a(この例では位相差検出方式のTOFセンサ)に同期信号を出力して駆動し、処理回路14全体を制御する。変形例1では、制御部141は、光源部の複数の半導体レーザ232を駆動し、MEMSミラー231による一走査の間、強い光をMEMSミラー231に照射し続ける。MEMSミラー231は、半導体レーザ232の照射と共に走査を開始する。TOFセンサ13aは、走査期間中、測定範囲からの反射光を対応する受光素子で受光し、各画素のデータを処理回路14へ出力する。
【0069】
処理回路14へ出力されたデータは、距離情報取得部13が取得し、照射光と反射光との位相差から時間を求め、その時間に光速をかけて距離を算出する。このようにして生成されたTOF画像データは、実施の形態と同様の手順で高密度3次元点群データが再構築される。3次元点群データの再構築の処理については、実施の形態の説明の繰り返しになりため、ここでの説明は省略する。
【0070】
以上のように、変形例1の構成では、光偏向素子や複数の半導体レーザを設けた場合のものについて示している。本構成では、MEMSミラーや、VCSELなどを採用することにより、撮像素子11aと、光源部(半導体レーザ232とMEMSミラー231)と、TOFセンサ13aとを筐体10の長手方向に直線上に並ぶように設けることができるため、撮像装置1を小型化することがより可能になる。
【0071】
(変形例2)
実施の形態や変形例1には、RGB画像を取得する撮像部と、可視光領域以外の光を投射する投射部と、投射部が投射した光に基づいて距離情報を取得する距離情報取得部とを、それぞれを1組ずつ半天球(略180度、または180度以下)の測定範囲を対象に筐体10に設けたものを示した。各部の数は、1組ずつに限らず適宜増やしてもよい。例えば、半天球(略180度、または180度以下)の測定範囲を対象に、撮像部を同一基線上に2組設け、撮像部をステレオカメラ化してもよい。また、筐体10の正面側だけでなく背面側などにも、同じ数の撮像部、投射部、距離情報取得部を設けてもよい。このように、撮像部、投射部、および距離情報取得部を複数組設ける場合、複数組の一つの組(例えば正面側の組)と他の組(例えば背面側の組)とは計測範囲が互いに異なる計測範囲になる向きに設ける。
【0072】
図11は、変形例2に係る撮像装置の構成の一例を説明するための図である。図11には、図2に示す撮像装置1の構成を変形した場合の構成を示している。ここでは、図2に示す撮像装置の構成とは異なる箇所について説明し、共通する箇所については説明を適宜省略する。
【0073】
図11に示す撮像装置3は、筐体10の一面(正面とする)に撮像部11を同一基線上に2組設けた場合のものである。また、筐体10の背面にも、正面と同様の数および配列で、撮像部11と、投射部12と、距離情報取得部13とを一体に設けている。
【0074】
図11に示すように、正面だけでなく背面側にも設けることにより、正面側の半天球(略180度)に背面側の半天球(略180度)も加わり、全天球(周囲360度)の範囲をカバーすることができるようになる。つまり、1度の撮影により処理回路14は360度全方向のRGB画像と距離情報のデータとを取得することができ、全方向の3次元復元モデルのためのデータ(高密度3次元点群データ)を1度に生成することができる。なお、高密度3次元点群データを生成する処理は、全方向のRGB画像と距離情報のデータとを使用することを除き実施の形態と略同様である。
【0075】
また、図11に示す構成では、筐体10の一面にRGBの撮像部11を同一基線上に2組設けている。この場合、処理回路14において多眼での処理が可能になる。つまり、一面において所定距離離して設けた2つの撮像部11を同時に駆動することにより2つの視点のRGB画像が得られる。このため、2つのRGB画像に基づいて計算した視差の使用が可能になり、さらに測定範囲全体の距離精度を向上させることができる。
【0076】
具体的には、RGBの撮像部11を複数設けた場合、従来の視差計算のように、SSSDを使ったマルチベースラインステレオ(MSB)やEPI処理などが利用可能になる。このため、これを利用することで視差の信頼度があがり、高い空間解像度と精度を実現することが可能になる。
【0077】
(処理回路の動作)
例えば次に示す式5のように、式2をベースとしてさらにエッジでのRGB画像を利用する比率を高くする。ここでCRGBは、RGB多眼画像による視差計算処理であり、MBSやEPIで計算されるコスト値である。wはCwnccとCRGBのどちらを優先するかを決定する重み値であるが、式2で示したwをそのまま利用してもよい。
【数5】
【0078】
マッチングした視差から、実際の距離への計算は、次式の式6により行う。Zが奥行き、fが焦点であり、baselineは基線長と呼ばれ、撮像部11間の基線上における距離である。dは視差であり、上記のマッチング処理によって算出された値、つまり、その基線方向で、参照画素と対応画素の座標値の差に画素ピッチを乗じた値である。
【数6】
【0079】
なお、これは画像の投影形態が透視投影の場合であり、全周囲画像等で利用されるEquiRectangular等の投影系では、下記式7が利用される。図12に、この式を導出する説明図を示している。
【数7】
【0080】
(適用例)
計測範囲についての3D復元技術は、Structure from Motonと呼ばれる手法や、複数の画像撮影手段を備えた機器を用いた、ステレオ法と呼ばれる手法をメインとしている。これらの手法は基本的な処理として、カメラによって異なる位置から撮影された画像中から、同じ箇所を撮影したとされる点を、画像の類似度に基づいて探索する。この処理は対応点探索などと呼ばれる。この対応点探索処理に引き続いて、場合によっては複雑な計算を施して、大規模な空間を可能な限り隙間なく滑らかに復元しようとするものである。
【0081】
異なる地点から撮影した画像において、同じ箇所が撮影されたとするような点を探す場合には、基本的には画像の特徴が重要である。例えば室内の単色の壁や、単色の床など、画像として映った際に、どこを撮影しても同じで特徴のみつからないような領域(テクスチャレス領域)については、画像の類似度を元に対応点を探すことが非常に困難になる。この対応点が見つからないと、人間の目でいうところの視差が分からないことになり、奥行きを知ることができない。つまり対応点が見つからない点については正しく3D復元することが困難になる。
【0082】
この課題に対して、パターン光やランダム光を照射することで、対応画素を探しやすくする手法が知られている。これは総称してアクティブステレオ法などと呼ばれる。アクティブステレオ法の例として、ゲームプレイヤーのジェスチャ入力を可能とする装置であるKinectに代表されるように、既知のパターン光(赤外光)を照射してカメラで撮像し、深度情報を得るデバイスもあるが、これらは深度情報を取得することのみが目的とされ、被写体の自然な色情報を同時に得ることはできない。そのため、物体や空間を3次元復元し、デジタル3Dデータとして再利用することは難しい。別途色情報を通常のカメラ撮影によって取得し、3Dメッシュのテクスチャなどとして重ね合わせることはできるが、被写体が動いたり撮像装置が動いたりしている場合には不可能である。
【0083】
また、カメラのマッチングを利用して距離を推測する場合には、根本的に画像の対応点マッチングによって処理を行うため、特徴領域点においてさえも、キャリブレーション性能などによって距離精度が悪化する、対象までの距離に従って測距精度が悪化する、といった問題がある。これはアクティブステレオにおいても同様の問題である。これに加え、アクティブステレオの場合は、パターンが投射されている領域は特徴点がとれるが、しかし広角にパターンを投射するためには、大きな投影装置が必要になるという問題がある。
【0084】
一方、TOFを利用した方法では、投光した光が受光装置で計測できる領域においては、距離に関わらず高い測距精度を実現することができるが、光を投射してその戻ってくる時間を計測するため、ある投光に対して受光系をなすシステムが必要になる。このため、一度に数多くの測距点を取得するためには、投光・受光系のシステムを大量に備える必要が生じ、装置が大型化し、かつコストが膨大にかかる。このため、限られた投光・受光系のシステムに回転機構を設けて、装置を実現するのが一般的である。このような場合でも、カメラほどの解像度は実現できないことと、回転系を備えるために時間差が生じてしまい、装置の大型化は避けられない。回転機構に対しては、近年、機械的な回転機構をなくして投光レーザや受光センサを振るMEMS技術や複数点の受光を可能にするTOFセンサ、それに複数のレーザを備えたVCSELなども出てきている。これより、根源的な解像度不足と広角化の問題が改良されはするが、それでもカメラほどの高解像度化と広角化・小型化は実現できない。また、アクティブステレオと同様に、これらは深度情報を取得することのみが目的とされ、被写体の自然な色情報を同時に得ることはできない。
【0085】
従来の装置をただ接続した場合は非常に大型なものになってしまうが、本実施の形態や、その変形例として示す各撮像装置においては、これらの課題が解決される。つまり、小型でありながら、略180度~360度(全周囲)をターゲットとする広角の3次元情報をテクスチャレス領域も含め、高密度に一度に復元することができる。特に可視光以外を投光する投光系と、その光を受光するセンサを、解像度が粗くてもいいように構築する場合において非常に小型な一体構成を実現することができる。
【0086】
なお、上述の実施の形態および変形例は、本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形による実施が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 撮像装置
10 筐体
11 撮像部
11a 撮像素子
11b 魚眼レンズ
12 投射部
12a 光源部
12b 広角レンズ
13 距離情報取得部
13a TOFセンサ
13b 広角レンズ
14 処理回路
15 撮影スイッチ
L 同期信号線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【文献】特開2018-028555号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12