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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 21/20 20220101AFI20231226BHJP
   B01F 23/232 20220101ALI20231226BHJP
   B01F 25/452 20220101ALI20231226BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20231226BHJP
   B01F 35/221 20220101ALI20231226BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20231226BHJP
   B01F 35/82 20220101ALI20231226BHJP
   C02F 1/68 20230101ALI20231226BHJP
   B01F 101/58 20220101ALN20231226BHJP
【FI】
B01F21/20
B01F23/232
B01F25/452
B01F35/213
B01F35/221
B01F35/222
B01F35/82
C02F1/68 520C
C02F1/68 530A
C02F1/68 530K
C02F1/68 530L
B01F101:58
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022530477
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2021020738
(87)【国際公開番号】W WO2021251199
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2020101007
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】安西 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】羽田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/167134(WO,A1)
【文献】特開2012-223725(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1690013(KR,B1)
【文献】特開2000-159504(JP,A)
【文献】特開平11-128704(JP,A)
【文献】特開2008-211096(JP,A)
【文献】特開2001-293342(JP,A)
【文献】特開2012-101173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
B01F 35/00-35/95
C02F 1/00
C02F 1/66-1/68
B01D 53/22,61/00-71/82
C02F 1/44
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜により、比抵抗値を調整する液体が供給される液相側領域と比抵抗値を調整する調整ガスが供給される気相側領域とに分けられた中空糸膜モジュールと、
前記液相側領域に前記液体を供給するために前記液相側領域に連通された液体供給管と、
前記液相側領域から前記液体を排出するために前記液相側領域に連通された液体排出管と、
前記気相側領域に前記調整ガスを供給するために前記気相側領域に連通されたガス供給管と、
前記気相側領域から前記調整ガスを排出するために前記気相側領域に連通されたガス排出管と、
前記中空糸膜モジュールをバイパスするように前記液体供給管及び前記液体排出管に連通されたバイパス管と、
前記バイパス管に設けられて、前記液体供給管側と前記液体排出管側との差圧に応じて流路の開度が変わる第一逆止弁と、を備える、
比抵抗値調整装置。
【請求項2】
前記第一逆止弁では、前記液体供給管側と前記液体排出管側との差圧が第一作動開始圧以下になると、前記第一逆止弁の前記流路が狭くなり始める、
請求項1に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項3】
前記第一逆止弁は、前記液体排出管側に向けられた弁座を有する本体と、前記弁座の前記液体排出管側に配置された弁体と、前記弁体を前記弁座側に押すスプリングと、を有する、
請求項1又は2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項4】
前記バイパス管は、互いに並列に配置された第一バイパス管及び第二バイパス管を有し、
前記第一逆止弁は、前記第一バイパス管に配置されて、前記第二バイパス管に配置されていない、
請求項1~3の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項5】
前記液体排出管の、前記バイパス管が前記液体排出管に接続される下流側接続部と前記中空糸膜モジュールとの間に位置する第一上流側液体排出管部に設けられて、前記中空糸膜モジュール側と前記中空糸膜モジュールの反対側との差圧に応じて流路の開度が変わる第二逆止弁を更に備える、
請求項1~4の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項6】
前記第一逆止弁の前記流路が閉じる第一クラッキング圧は、前記第二逆止弁の前記流路が閉じる第二クラッキング圧と同じである、
請求項5に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項7】
前記第二逆止弁では、前記中空糸膜モジュール側と前記中空糸膜モジュールとは反対側との差圧が第二作動開始圧以下になると、前記第二逆止弁の前記流路が狭くなり始める、
請求項5又は6に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項8】
前記液体排出管の、前記中空糸膜モジュールと前記第二逆止弁との間に位置する第二上流側液体排出管部と、前記バイパス管の、前記バイパス管が前記液体供給管に接続される上流側接続部と前記第一逆止弁との間に位置する上流側バイパス管部と、に接続されて、前記上流側バイパス管部の圧力を前記第二上流側液体排出管部に伝える圧力伝達管を更に備える、
請求項5~7の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項9】
請求項1~8何れか一項に記載された比抵抗値調整装置を用いて前記液体の比抵抗値を調整する、
比抵抗値調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の比抵抗値を調整する比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体又は液晶の製造工程では、超純水を使用して基板を洗浄する。この場合、超純水の比抵抗値が高いと、静電気が発生する。これにより、絶縁破壊して、又は微粒子が再付着して、製品歩留まりに著しく悪影響を及ぼす。このような問題を解決するために、疎水性の中空糸膜モジュールを用いた方法が提案されている。この方法は、中空糸膜モジュールを用いて超純水中に炭酸ガス又はアンモニアガス等のガスを溶解させる。すると、解離平衡によりイオンが発生し、この発生したイオンにより超純水の比抵抗値が低下する。
【0003】
また、基板の洗浄、ダイシング等の工程では、超純水の流動変動が激しい。そこで、特許文献1では、流量が変動しても比抵抗値を安定させる技術が提案されている。特許文献1に記載された技術では、小流量のガス付加超純水を生成する中空糸膜モジュールと、大流量の超純水を通過させるバイパス管と、を設ける。そして、生成されたガス付加超純水とバイパス管を通過した超純水とを合流する。これにより、容易に超純水の比抵抗値を調整できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、超純水が低流量になると、中空糸膜モジュールをバイパスする超純水の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される超純水の流量が低下して、超純水の比抵抗値が上昇する場合がある。そこで、特許文献2技術では、複数のバイパス管を設け、1又は複数のバイパス管にシャット弁を設ける技術が提案されている。特許文献2に記載された技術では、超純水の流量が低下すると、一部又は全部のシャット弁を閉める。これにより、超純水が低流量になっても、中空糸膜モジュールをバイパスする超純水の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される超純水の流量が低下するのを抑制できるため、超純水の比抵抗値が上昇するのを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3951385号公報
【文献】特開2012-223725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、超純水の流量に応じて複数のバイパス管に取り付けられたシャット弁を開閉する制御を行う必要があるため、装置が複雑になってコストが高くなるという問題がある。また、特許文献2に記載された技術では、供給される流量が変わると、シャット弁の開閉に伴いバイパス管の圧力損失が急激に変わるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な構成で、供給される液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制できる比抵抗値調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整装置は、中空糸膜により、比抵抗値を調整する液体が供給される液相側領域と比抵抗値を調整する調整ガスが供給される気相側領域とに分けられた中空糸膜モジュールと、液相側領域に液体を供給するために液相側領域に連通された液体供給管と、液相側領域から液体を排出するために液相側領域に連通された液体排出管と、気相側領域に調整ガスを供給するために気相側領域に連通されたガス供給管と、気相側領域から調整ガスを排出するために気相側領域に連通されたガス排出管と、中空糸膜モジュールをバイパスするように液体供給管及び液体排出管に連通されたバイパス管と、バイパス管に設けられて、液体供給管側と液体排出管側との差圧に応じて流路の開度が変わる第一逆止弁と、を備える。
【0009】
この比抵抗値調整装置では、バイパス管に、液体供給管側と液体排出管側との差圧に応じて流路の開度が変わる第一逆止弁が設けられている。供給される液体の流量が小さくなると、液体供給管側と液体排出管側との差圧が小さくなるため、第一逆止弁の開度が小さくなる。第一逆止弁の開度が小さくなると、バイパス管を流れる液体の圧力損失大きくなるため、中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される液体の流量が低下するのが抑制される。これにより、特許文献2に記載された技術に比べて簡易な構成で、供給される液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制できる。しかも、液体供給管側と液体排出管側との差圧に基づいて第一逆止弁の開度が変わるため、供給される流量が変わっても、特許文献2に記載された技術に比べてバイパス管の圧力損失が急激に変わるのを抑制できる。
【0010】
一実施形態として、第一逆止弁では、液体供給管側と液体排出管側との差圧が第一作動開始圧以下になると、第一逆止弁の流路が狭くなり始めてもよい。供給される液体の流量が大きい場合は、中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される液体の流量が低下する問題は生じない。また、供給される液体の流量が大きい場合は、第一逆止弁の液体供給管側と液体排出管側との差圧が大きい。この比抵抗値調整装置では、液体供給管側と液体排出管側との差圧が第一作動開始圧以下になると、第一逆止弁の流路が狭くなり始めるため、供給される液体の流量低下に伴う液体の比抵抗値の上昇を効率的に抑制することができる。
【0011】
また、一実施形態として、第一逆止弁は、液体排出管側に向けられた弁座を有する本体と、弁座の液体排出管側に配置された弁体と、弁体を弁座側に押すスプリングと、を有してもよい。この比抵抗値調整装置では、第一逆止弁が、液体排出管側に向けられた弁座を有する本体と、弁座の液体排出管側に配置された弁体と、弁体を弁座側に押すスプリングと、を有する。このため、液体供給管側と液体排出管側との差圧に応じて、スプリングの伸縮の程度が変わり、これにより弁座と弁体との間の隙間の大きさが変わる。これにより、液体供給管側と液体排出管側との差圧に応じて、流路の開度を適切に変えることができる。
【0012】
また、一実施形態として、バイパス管は、互いに並列に配置された第一バイパス管及び第二バイパス管を有し、第一逆止弁は、第一バイパス管に配置されて、第二バイパス管に配置されていなくてもよい。この比抵抗値調整装置では、第一逆止弁が第一バイパス管に配置されているため、供給される液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制できる。一方で、第一逆止弁が第二バイパス管に配置されていないため、第一逆止弁の流路が狭くなった際に、バイパス管を流れる液体の圧力損失が大きくなるのを抑制できる。
【0013】
また、一実施形態として、液体排出管の、バイパス管が液体排出管に接続される下流側接続部と中空糸膜モジュールとの間に位置する第一上流側液体排出管部に設けられて、中空糸膜モジュール側と中空糸膜モジュールの反対側との差圧に応じて流路の開度が変わる第二逆止弁を更に備えてもよい。この比抵抗値調整装置では、第一上流側液体排出管部に、中空糸膜モジュール側と中空糸膜モジュールの反対側との差圧に応じて流路の開度が変わる第二逆止弁が設けられている。このため、第一逆止弁及び第二逆止弁の設定を調整することで、中空糸膜モジュールに供給される液体と中空糸膜モジュールをバイパスする液体との分配比率を調整することができる。
【0014】
また、一実施形態として、第一逆止弁の流路が閉じる第一クラッキング圧は、第二逆止弁の流路が閉じる第二クラッキング圧と同じであってもよい。この比抵抗値調整装置では、第一逆止弁の流路が閉じる第一クラッキング圧が第二逆止弁の流路が閉じる第二クラッキング圧と同じであるため、中空糸膜モジュールに供給される液体と中空糸膜モジュールをバイパスする液体との分配比率の偏りを抑制できる。
【0015】
また、一実施形態として、第二逆止弁では、中空糸膜モジュール側と中空糸膜モジュールとは反対側との差圧が第二作動開始圧以下になると、第二逆止弁の流路が狭くなり始めてもよい。供給される液体の流量が大きい場合は、中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される液体の流量が低下する問題は生じない。また、供給される液体の流量が大きい場合は、第二逆止弁の中空糸膜モジュール側と中空糸膜モジュールとは反対側との差圧が大きい。この比抵抗値調整装置では、中空糸膜モジュール側と中空糸膜モジュールとは反対側との差圧が第二作動開始圧以下になると、第二逆止弁の流路が狭くなり始めるため、供給される液体の流量低下に伴う液体の比抵抗値の上昇を効率的に抑制することができる。
【0016】
また、一実施形態として、液体排出管の、中空糸膜モジュールと第二逆止弁との間に位置する第二上流側液体排出管部と、バイパス管の、バイパス管が液体供給管に接続される上流側接続部と第一逆止弁との間に位置する上流側バイパス管部と、に接続されて、上流側バイパス管部の圧力を第二上流側液体排出管部に伝える圧力伝達管を更に備えてもよい。中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される液体の流量が小さくなるように設定した場合、供給される液体が低流量になると、第一逆止弁が流路を開き、第二逆止弁が流路を閉じることがある。このような場合、液体が中空糸膜モジュールに流れなくなるため、液体の比抵抗値を調整することができない。しかしながら、この比抵抗値調整装置では、圧力伝達管により上流側バイパス管部の圧力が第二上流側液体排出管部に伝わることで、第二上流側液体排出管部の圧力と上流側バイパス管部の圧力とが均一化される。このため、第一逆止弁が流路を開き、第二逆止弁が流路を閉じる状態になるのを抑制することができる。
【0017】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整方法は、上記の何れかの比抵抗値調整装置を用いて液体の比抵抗値を調整する。この比抵抗値調整方法では、上述した何れかの比抵抗値調整装置を用いて液体の比抵抗値を調整するため、供給される液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成で、供給される液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第一実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図2】第一逆止弁及び第二逆止弁の模式断面図である。
図3】第二実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図4】第三実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図5】第四実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図6】比較例1の比抵抗値調整装置の模式図である。
図7】実施例1の計測結果を示すグラフである。
図8】実施例1の計測結果を示すグラフである。
図9】実施例2の計測結果を示すグラフである。
図10】実施例3の計測結果を示すグラフである。
図11】実施例3の計測結果を示すグラフである。
図12】実施例4の計測結果を示すグラフである。
図13】実施例4の計測結果を示すグラフである。
図14】比較例1の計測結果を示すグラフである。
図15】比較例1の計測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施形態の比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図1に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Aは、中空糸膜モジュール2と、液体供給管3と、液体排出管4と、ガス供給管5と、ガス排出管6と、バイパス管7と、第一逆止弁8と、を備える。
【0022】
中空糸膜モジュール2は、比抵抗値を調整する液体Lに比抵抗値を調整する調整ガスGを溶解させる。中空糸膜モジュール2は、複数本の中空糸膜21と、これらの中空糸膜21を内部に収容するハウジング22と、を備える。
【0023】
液体Lとして用いる液体は、特に限定されないが、例えば、半導体、液晶等を洗浄するための純水、超純水とすることができる。通常、純水・超純水の比抵抗値は、0.1MΩ・cm以上である。このため、液体Lの比抵抗値は、例えば、0.1MΩ・cm以上、好ましくは15.0MΩ・cm以上、より好ましくは17.5MΩ・cm以上の範囲であってよく。また、液体Lの比抵抗値の上限値は特に限定されないが、例えば、18.248MΩ・cm以下の範囲であってよい。
【0024】
液体Lの温度は特に限定されないが、例えば、5℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上の範囲であってよく、また、60℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下の範囲であってよい。液体Lの供給圧力は特に限定されないが、例えば、0.01MPa以上、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2PMa以上の範囲であってよく、また、1.0MPa以下、好ましくは0.4MPa以下、より好ましくは0.3MPa以下の範囲であってよい。
【0025】
調整ガスGとして用いるガスは、特に限定されないが、例えば、炭酸ガス又はアンモニアガスとすることができる。調整ガスGの温度は特に限定されないが、例えば、0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上の範囲であってよく、また、60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下の範囲であってよい。調整ガスGの供給圧力は特に限定されないが、例えば、0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上の範囲であってよく、また、0.5MPa以下、好ましくは0.2MPa以下、より好ましくは0.15MPa以下の範囲であってよい。
【0026】
中空糸膜21は、気体は透過するが液体は透過しない中空糸状の膜である。中空糸膜21の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。ハウジング22は、中空糸膜21を内部に収容する密閉容器である。中空糸膜モジュール1の膜面積は、処理流量(液体Lの流量)によって適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、例えば、0.1m以上120m以下の範囲であってよい。中空糸膜モジュール1の膜面積の最適値を処理流量によって調整する場合、例えば、一般的な流量処理(例えば、1~120L/min)の場合は0.1m以上4.0m以下の範囲であってよく、より大流量処理(例えば、120~4000L/min)の場合は4.0m以上120m以下の範囲であってよい。
【0027】
中空糸膜モジュール2は、中空糸膜21により、液相側領域と、気相側領域と、に分けられる。液相側領域は、中空糸膜モジュール2内の領域のうち、比抵抗値を調整する液体Lが供給される領域である。気相側領域は、中空糸膜モジュール2内の領域のうち、比抵抗値を調整する調整ガスGが供給される領域である。中空糸膜モジュール2の種類としては、内部灌流型及び外部灌流型がある。本実施形態では、内部灌流型及び外部灌流型の何れであってもよい。外部灌流型の中空糸膜モジュール2では、中空糸膜21の内側(内表面側)が気相側領域となり、中空糸膜21の外側(外表面側)が液相側領域となる。内部灌流型の中空糸膜モジュール2では、中空糸膜21の内側(内表面側)が液相側領域となり、中空糸膜21の外側(外表面側)が気相側領域となる。
【0028】
ハウジング22には、液体供給口22Aと、液体排出口22Bと、ガス供給口22Cと、ガス排出口22Dと、が形成される。液体供給口22Aは、液相側領域に液体Lを供給するためにハウジング22に形成された開口である。液体排出口22Bは、液相側領域から液体Lを排出するためにハウジング22に形成された開口である。ガス供給口22Cは、気相側領域に調整ガスGを供給するためにハウジング22に形成された開口である。ガス排出口22Dは、気相側領域から調整ガスGを排出するためにハウジング22に形成された開口である。このため、液体供給口22A及び液体排出口22Bは、液相側領域と連通される。また、ガス供給口22C及びガス排出口22Dは、気相側領域と連通される。
【0029】
液体供給口22A、液体排出口22B、ガス供給口22C、及びガス排出口22Dの位置は特に限定されない。但し、ガス排出口22Dは、中空糸膜モジュール2の下部に形成されることが好ましく、気相側領域の最下端に形成されることが更に好ましい。中空糸膜モジュール2の下部とは、比抵抗値調整装置1Aを設置した際の、中空糸膜モジュール2の鉛直方向における下側の部分をいう。気相側領域の最下端とは、比抵抗値調整装置1Aを設置した際の、気相側領域の鉛直方向における最下端をいう。
【0030】
液体供給管3は、液相側領域に連通されて、液相側領域に液体Lを供給する。液体供給管3は、内部に流路(不図示)が形成された管状の部材である。液体供給管3は、液体供給口22Aに接続される。液体排出管4の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0031】
液体排出管4は、液相側領域に連通されて、液相側領域から液体Lを排出する。液体排出管4は、内部に流路(不図示)が形成された管状の部材である。液体排出管4は、液体排出口22Bに接続される。液体排出管4の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0032】
ガス供給管5は、気相側領域に連通されて、気相側領域に調整ガスGを供給する。ガス供給管5は、内部に流路(不図示)が形成された管状の部材である。ガス供給管5は、ガス供給口22Cに接続される。ガス供給管5の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0033】
ガス供給管5には、圧力調整弁10と、圧力計Pと、が設けられる。圧力調整弁10は、圧力調整弁10を通過する調整ガスのガス圧を調整する。つまり、気相側領域における調整ガスGのガス圧は、圧力調整弁10により調整される。圧力調整弁10としては、公知の様々な圧力調整弁を採用することができる。圧力計Pは、ガス供給管5を流れる調整ガスGのガス圧を計測する。圧力計Pは、ガス供給管5における圧力計Pの下流側、すなわち、圧力計Pに対する気相側領域側に設けられる。圧力計Pとしては、公知の様々な圧力計を採用することができる。そして、比抵抗値調整装置1Aを制御する制御部(不図示)は、圧力調整弁10を通過する調整ガスGのガス圧、すなわち、気相側領域における調整ガスGのガス圧が、所定値(又は所定範囲内)となるように、圧力計Pで計測した調整ガスGのガス圧に基づいて圧力調整弁10を制御する。
【0034】
ガス排出管6は、気相側領域に連通されて、気相側領域から調整ガスGを排出する。ガス排出管6は、内部に流路(不図示)が形成された管状の部材である。ガス排出管6は、ガス排出口22Dに接続される。ガス排出管6の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0035】
ガス排出管6には、漏出部11が設けられる。漏出部11は、気相側領域の調整ガスGを漏れ出させる。漏出部11は、内部に細い流路(不図示)が形成された毛細管状の部材である。漏出部11からは、常時、調整ガスGが漏れ出る。
【0036】
バイパス管7は、中空糸膜モジュール2をバイパスするように液体供給管3及び液体排出管4に連通される。バイパス管7は、内部に流路が形成された管状の部材である。バイパス管7の一方端部は、中空糸膜モジュール2の上流側において液体供給管3に接続される。バイパス管7が液体供給管3に接続される部分を、上流側接続部12という。バイパス管7の他方端部は、中空糸膜モジュール2の下流側において液体排出管4に接続される。バイパス管7が液体排出管4に接続される部分を、下流側接続部13という。また、下流側接続部13と中空糸膜モジュール2との間に位置する液体排出管4の部分を、第一上流側液体排出管部4Aという。
【0037】
第一上流側液体排出管部4Aには、流量調整弁9が設けられる。流量調整弁9は、第一上流側液体排出管部4Aを通過する液体Lの流量を調整することで、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスする液体L(バイパス管7に供給される液体L)との分配比率を調整する。流量調整弁9は、例えば、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量が、中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量に比べて小さくなるように、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lとの分配比率を調整する。流量調整弁9は、液体が通過する流路(不図示)と、当該流路を開閉するとともに当該流路の開度を調整する弁体(不図示)と、を備える。流量調整弁9としては、公知の様々な流量調整弁を採用することができ、例えば、ニードル弁を採用することができる。なお、流量調整弁9は、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lとの分配比率を調整することができれば、如何なる位置に取り付けられてもよい。例えば、流量調整弁9は、上流側接続部12と中空糸膜モジュール2との間に位置する液体排出管4の部分に取り付けられてもよく、バイパス管7に取り付けられてもよい。
【0038】
このため、液体供給管3に供給された液体Lは、上流側接続部12において、中空糸膜モジュール2を通って液体排出管4に流れていく液体Lと、中空糸膜モジュール2を迂回してバイパス管7から液体排出管4に流れていく液体Lと、に分配される。また、上流側接続部12において分配された液体Lは、下流側接続部13において合流する。なお、中空糸膜モジュール2を通って液体排出管4に流れていく液体Lの流量が、中空糸膜モジュール2を迂回して液体排出管4に流れていく液体Lの流量よりも大きくなるように、バイパス管7の内径(流路径)等が設定されていてもよい。
【0039】
第一逆止弁8は、バイパス管7に設けられて、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて流路の開度が変わる逆止弁である。ここで、上流側接続部12と第一逆止弁8との間に位置するバイパス管7の部分を、上流側バイパス管部7Aといい、下流側接続部13と第一逆止弁8との間に位置するバイパス管7の部分を、下流側バイパス管部7Bという。上流側バイパス管部7Aは、第一逆止弁8の液体供給管3側に位置し、下流側バイパス管部7Bは、第一逆止弁8の液体排出管4側に位置する。このため、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧は、上流側バイパス管部7A内の液体Lの圧力と下流側バイパス管部7B内の液体Lの圧力との差となる。なお、液体Lは、液体供給管3側から液体排出管4側に流れていくため、液体排出管4側の圧力よりも液体供給管3側の圧力の方が高くなる。
【0040】
第一逆止弁8には、第一逆止弁8の流路が閉じる第一クラッキング圧が設定されている。つまり、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が第一クラッキング圧以下になると、第一逆止弁8の流路が閉じ、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が第一クラッキング圧より大きくなると、第一逆止弁8の流路が開く。第一クラッキング圧は、所定の圧力値である。第一クラッキング圧は、特に限定されるものではないが、例えば、0.01kPa以上、好ましくは0.1kPa以上、より好ましくは1kPa以上の範囲であってよく、また、100kPa以下、好ましくは50kPa以下、より好ましくは20kPa以下の範囲であってよい。
【0041】
また、第一逆止弁8には、第一逆止弁8の流路が狭くなり始める第一作動開始圧が設定されている。つまり、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が第一作動開始圧より大きいと、第一逆止弁8の流路は全開の状態に保持され、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が第一作動開始圧以下になると、第一逆止弁8の流路が狭くなる。第一作動開始圧は、所定の圧力値である。第一作動開始圧は、特に限定されるものではないが、例えば、1kPa以上、好ましくは5kPa以上、より好ましくは10kPa以上の範囲であってよく、また、200kPa以下、好ましくは150kPa以下、より好ましくは100kPa以下の範囲であってよい。
【0042】
第一逆止弁8が全開した際の流路の断面積は、特に限定されないが、例えば、1/16インチ以上、好ましくは1/8インチ以上の範囲であってよく、また、2インチ以下、好ましくは1インチ以下の範囲であってよい。
【0043】
第一逆止弁8のCv値は、特に限定されないが、例えば、0.1以上10以下の範囲である。Cv値は、第一逆止弁8の全開時における単位時間あたりに第一逆止弁8を通過する液体Lの体積(流量)である。
【0044】
第一逆止弁8は、例えば、図2に示すように、本体81と、弁体82と、スプリング83と、を備えてもよい。本体81は、バイパス管7の流路と連通されて液体Lが流通する流路85と、流路85の一部を形成して弁体82の座面となる弁座86と、を有している。弁座86は、液体Lの流れ方向における液体排出管4側(下流側バイパス管部7B側)に向けられている。つまり、弁座86は、液体排出管4側(下流側バイパス管部7B側)に向かって広がる漏斗状(円錐台状、テーパ面状)に形成されている。弁体82は、本体81の流路85における、弁座86の液体排出管4側(下流側バイパス管部7B側)に配置されている。弁体82は、弁座86に密接して流路85を閉じることができるように、弁座86に対向する外周面に形成された溝と、当該溝に嵌め込まれたOリングと、を有している。スプリング83は、弁体82を弁座86側に押す部材である。そして、スプリング83は、本体81に固定された支持部材87に対して弁体82を弁座86側に押すように、圧縮された状態で、弁体82と支持部材87との間に挿入されている。この場合、第一逆止弁8の流路85が閉じる第一クラッキング圧、及び第一逆止弁8の流路が狭くなり始める第一作動開始圧は、スプリング83のばね乗数等により決まる。
【0045】
このように構成される第一逆止弁8では、比抵抗値調整装置1Aに供給される液体Lの流量が大きく、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が第一逆止弁8の第一作動開始圧より大きい場合は、第一逆止弁8の流路が全開となる。この状態を、全開状態という。全開状態では、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が変わっても、第一逆止弁8の流路は広くも狭くもならない。図2に示す第一逆止弁8では、スプリング83が縮んで、第一逆止弁8の流路85が全開となった状態が、全開状態となる。
【0046】
また、比抵抗値調整装置1Aに供給される液体Lの流量が小さくなって、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が第一逆止弁8の第一作動開始圧以下になると、第一逆止弁8の流路が狭くなり始める。この状態を、半開状態という。図2に示す第一逆止弁8では、スプリング83が全開状態よりも伸びて、流路85が開いた状態を維持しつつ、弁体82が弁座86に近づいた状態が、半開状態となる。半開状態では、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて、第一逆止弁8の流路の開度が変わる。つまり、半開状態では、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が小さいほど、第一逆止弁8の流路が狭くなり、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が大きいほど、第一逆止弁8の流路が広くなる。
【0047】
また、比抵抗値調整装置1Aに供給される液体Lの流量が更に小さくなって、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が第一逆止弁8の第一クラッキング圧以下になると、第一逆止弁8の流路が閉じる。この状態を、閉状態という。図2に示す第一逆止弁8では、スプリング83が伸びて、弁体82が弁座86に密接して、流路85が閉じた状態が、閉状態となる。
【0048】
次に、比抵抗値調整装置1Aにより液体Lの比抵抗値を調整する方法について説明する。
【0049】
この方法では、液相側領域に液体Lを通過させながら気相側領域に調整ガスを通過させて、液体Lに調整ガスGを溶解させる。そして、調整ガスGが溶解された液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスさせた液体Lとを混合させて、液体Lの比抵抗値を調整する。
【0050】
具体的に説明すると、液体供給管3に液体Lを供給し、ガス供給管5に調整ガスGを供給する。すると、液体Lは、液体供給管3から中空糸膜モジュール2の液相側領域に供給されて、液体排出管4に排出される。また、液体Lは、上流側接続部12において液体供給管3から分岐し、中空糸膜モジュール2を迂回するようにバイパス管7を通って、液体排出管4に排出される。調整ガスGは、ガス供給管5から中空糸膜モジュール2の気相側領域に供給されて、ガス排出管6に排出される。中空糸膜モジュール2では、気相側領域に供給された調整ガスGは、中空糸膜21を透過することにより、液相側領域に供給された液体Lに溶解される。
【0051】
このとき、第一逆止弁8では、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて流路の開度が変わる。例えば、供給される液体Lの流量が大きくなって、第一逆止弁8の液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が大きくなると、第一逆止弁8の流路が広くなる。一方、供給される液体Lの流量が小さくなって、第一逆止弁8の液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が小さくなると、第一逆止弁8の流路が狭くなる。そして、中空糸膜モジュール2により調整ガスGが溶解された液体Lと、バイパス管7を通過した液体Lとは、下流側接続部13において混合される。これにより、液体Lの流量に関わらず、液体Lの比抵抗値を容易に調整できる。
【0052】
このように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Aでは、バイパス管7に、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて流路の開度が変わる第一逆止弁8が設けられている。供給される液体Lの流量が小さくなると、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が小さくなるため、第一逆止弁8の開度が小さくなる。第一逆止弁8の開度が小さくなると、バイパス管7を流れる液体Lの圧力損失大きくなるため、中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量に対して中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量が低下するのが抑制される。これにより、特許文献2に記載された技術に比べて簡易な構成で、供給される液体Lが低流量になっても液体Lの比抵抗値が上昇するのを抑制できる。しかも、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に基づいて第一逆止弁8の開度が変わるため、供給される流量が変わっても、特許文献2に記載された技術に比べてバイパス管7の圧力損失が急激に変わるのを抑制できる。
【0053】
ところで、供給される液体Lの流量が大きい場合は、中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量に対して中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量が低下する問題は生じない。また、供給される液体Lの流量が大きい場合は、第一逆止弁8の液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が大きい。この比抵抗値調整装置1Aでは、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が第一作動開始圧以下になると、第一逆止弁8の流路が狭くなり始めるため、供給される液体Lの流量低下に伴う液体Lの比抵抗値の上昇を効率的に抑制することができる。
【0054】
また、比抵抗値調整装置1Aでは、第一逆止弁8が、液体排出管4側に向けられた弁座86を有する本体81と、弁座86の液体排出管4側に配置された弁体82と、弁体82を弁座86側に押すスプリング83と、を有する。このため、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて、スプリング83の伸縮の程度が変わり、これにより弁座86と弁体82との間の隙間の大きさが変わる。これにより、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて、流路の開度を適切に変えることができる。
【0055】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態は、基本的に第一実施形態と同様であり、バイパス管が第一バイパス管及び第二バイパス管を有する点で、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0056】
図3は、第二実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図3に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Bは、中空糸膜モジュール2と、液体供給管3と、液体排出管4と、ガス供給管5と、ガス排出管6と、バイパス管7と、第一逆止弁8と、を備える。バイパス管7は、互いに並列に配置された第一バイパス管71及び第二バイパス管72を有する。
【0057】
第一バイパス管71と第二バイパス管72とは、上流側接続部12と下流側接続部13との間の全ての領域で互いに並列に配置されていてもよく、上流側接続部12と下流側接続部13との間の一部の領域で互いに並列に配置されていてもよい。本実施形態では、一例として、第一バイパス管71と第二バイパス管72とが、上流側接続部12と下流側接続部13との間の一部の領域で互いに並列に配置されているものとして説明する。
【0058】
第一バイパス管71及び第二バイパス管72は、基本的に第一実施形態のバイパス管7と同じであるが、第一逆止弁8は、第一バイパス管71に配置されているが、第二バイパス管72に配置されていない。このため、第一バイパス管71に供給された液体Lは、第一逆止弁8を通って液体排出管4に流れていくが、第二バイパス管72に供給された液体Lは、第一逆止弁8を通らずに液体排出管4に流れていく。
【0059】
次に、比抵抗値調整装置1Bにより液体Lの比抵抗値を調整する方法について説明する。
【0060】
この方法では、液相側領域に液体Lを通過させながら気相側領域に調整ガスを通過させて、液体Lに調整ガスGを溶解させる。そして、調整ガスGが溶解された液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスさせた液体Lとを混合させて、液体Lの比抵抗値を調整する。
【0061】
具体的に説明すると、液体供給管3に液体Lを供給し、ガス供給管5に調整ガスGを供給する。すると、液体Lは、液体供給管3から中空糸膜モジュール2の液相側領域に供給されて、液体排出管4に排出される。また、液体Lは、上流側接続部12において液体供給管3から分岐し、中空糸膜モジュール2を迂回するように第一バイパス管71又は第二バイパス管72を通って、液体排出管4に排出される。調整ガスGは、ガス供給管5から中空糸膜モジュール2の気相側領域に供給されて、ガス排出管6に排出される。中空糸膜モジュール2では、気相側領域に供給された調整ガスGは、中空糸膜21を透過することにより、液相側領域に供給された液体Lに溶解される。
【0062】
このとき、第一バイパス管71に設けられている第一逆止弁8では、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて、つまり、供給される液体Lの流量に応じて、流路の開度が変わる。そして、中空糸膜モジュール2により調整ガスGが溶解された液体Lと、第一バイパス管71又は第二バイパス管72を通過した液体Lとは、下流側接続部13において混合される。これにより、液体Lの流量に関わらず、液体Lの比抵抗値を容易に調整できる。
【0063】
このように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Bでは、第一逆止弁8が第一バイパス管71に配置されているため、供給される液体Lが低流量になっても液体Lの比抵抗値が上昇するのを抑制できる。一方で、第一逆止弁8が第二バイパス管72に配置されていないため、第一逆止弁8の流路が狭くなった際に、バイパス管7(第一バイパス管71及び第二バイパス管72)を流れる液体Lの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。
【0064】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態は、基本的に第一実施形態と同様であり、第二逆止弁が設けられている点で、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0065】
図4は、第三実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図4に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Cは、中空糸膜モジュール2と、液体供給管3と、液体排出管4と、ガス供給管5と、ガス排出管6と、バイパス管7と、第一逆止弁8と、第二逆止弁14と、を備える。
【0066】
第二逆止弁14は、第一上流側液体排出管部4Aに設けられて、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧に応じて流路の開度が変わる逆止弁である。ここで、中空糸膜モジュール2と第二逆止弁14との間に位置する第一上流側液体排出管部4Aの部分を、第二上流側液体排出管部4Bといい、下流側接続部13と第二逆止弁14との間に位置する第一上流側液体排出管部4Aの部分を、第三上流側液体排出管部4Cという。第二上流側液体排出管部4Bは、第二逆止弁14の中空糸膜モジュール2側に位置し、第三上流側液体排出管部4Cは、第二逆止弁14の液体排出管4側に位置する。このため、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧は、第二上流側液体排出管部4B内の液体Lの圧力と第三上流側液体排出管部4C内の液体Lの圧力との差となる。なお、液体Lは、中空糸膜モジュール2側から液体排出管4側に流れていくため、中空糸膜モジュール2の反対側の圧力よりも中空糸膜モジュール2側の圧力の方が高くなる。
【0067】
第二逆止弁14には、第二逆止弁14の流路が閉じる第二クラッキング圧が設定されている。つまり、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧が第二クラッキング圧以下になると、第二逆止弁14の流路が閉じ、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧が第二クラッキング圧より大きくなると、第二逆止弁14の流路が開く。第二クラッキング圧は、所定の圧力値である。第二クラッキング圧は、第一逆止弁8の流路が閉じる第一クラッキング圧と同じであってもよい。第二クラッキング圧は、特に限定されるものではないが、例えば、0.01kPa以上、好ましくは0.1kPa以上、より好ましくは1kPa以上の範囲であってよく、また、100kPa以下、好ましくは50kPa以下、より好ましくは20kPa以下までの範囲であってよい。
【0068】
また、第二逆止弁14には、第二逆止弁14の流路が狭くなり始める第二作動開始圧が設定されている。つまり、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧が第二作動開始圧より大きいと、第二逆止弁14の流路は全開の状態に保持され、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧が第二作動開始圧以下になると、第二逆止弁14の流路が狭くなる。第二作動開始圧は、所定の圧力値である。第二作動開始圧は、第一逆止弁8の流路が狭くなり始める第一作動開始圧と同じであってもよい。第二作動開始圧は、特に限定されるものではないが、例えば、1kPa以上、好ましくは5kPa以上、より好ましくは10kPa以上の範囲であってよく、また、200kPa以下、好ましくは150kPa以下、より好ましくは100kPa以下の範囲であってよい。
【0069】
なお、第二逆止弁14が全開した際の流路の断面積、第二逆止弁14における液体Lの圧力損失等は、第一逆止弁8と同じにしてもよい。
【0070】
第二逆止弁14は、例えば、図2に示すように、本体141と、弁体142と、スプリング143と、を備えてもよい。本体141は、第一上流側液体排出管部4Aの流路と連通されて液体Lが流通する流路145と、流路145の一部を形成して弁体142の座面となる弁座146と、を有している。弁座146は、液体Lの流れ方向における第三上流側液体排出管部4C側に向けられている。つまり、弁座146は、第三上流側液体排出管部4C側に向かって広がる漏斗状(円錐台状、テーパ面状)に形成されている。弁体142は、本体141の流路145における、弁座146の第三上流側液体排出管部4C側に配置されている。弁体142は、弁座146に密接して流路145を閉じることができるように、弁座146に対向する外周面に形成された溝と、当該溝に嵌め込まれたOリングと、を有している。スプリング143は、弁体142を弁座146側に押す部材である。そして、スプリング143は、弁体142と本体141に固定された支持部材147に対して弁体142を弁座146側に押すように、圧縮された状態で、弁体142と支持部材147との間に挿入されている。この場合、第二逆止弁14の流路145が閉じる第二クラッキング圧、及び第二逆止弁14の流路が狭くなり始める第二作動開始圧は、スプリング143のばね乗数等により決まる。
【0071】
次に、比抵抗値調整装置1Cにより液体Lの比抵抗値を調整する方法について説明する。
【0072】
この方法では、液相側領域に液体Lを通過させながら気相側領域に調整ガスを通過させて、液体Lに調整ガスGを溶解させる。そして、調整ガスGが溶解された液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスさせた液体Lとを混合させて、液体Lの比抵抗値を調整する。
【0073】
具体的に説明すると、液体供給管3に液体Lを供給し、ガス供給管5に調整ガスGを供給する。すると、液体Lは、液体供給管3から中空糸膜モジュール2の液相側領域に供給されて、液体排出管4に排出される。また、液体Lは、上流側接続部12において液体供給管3から分岐し、中空糸膜モジュール2を迂回するようにバイパス管7を通って、液体排出管4に排出される。調整ガスGは、ガス供給管5から中空糸膜モジュール2の気相側領域に供給されて、ガス排出管6に排出される。中空糸膜モジュール2では、気相側領域に供給された調整ガスGは、中空糸膜21を透過することにより、液相側領域に供給された液体Lに溶解される。
【0074】
このとき、バイパス管7に設けられている第一逆止弁8では、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて流路の開度が変わる。例えば、供給される液体Lの流量が大きくなって、第一逆止弁8の液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が大きくなると、第一逆止弁8の流路が広くなる。一方、供給される液体Lの流量が小さくなって、第一逆止弁8の液体供給管3側と液体排出管4側との差圧が小さくなると、第一逆止弁8の流路が狭くなる。
【0075】
また、第一上流側液体排出管部4Aに設けられている第二逆止弁14でも、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧に応じて流路の開度が変わる。例えば、供給される液体Lの流量が大きくなって、第二逆止弁14の中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧が大きくなると、第二逆止弁14の流路が広くなる。一方、供給される液体Lの流量が小さくなって、第二逆止弁14の中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧が小さくなると、第二逆止弁14の流路が狭くなる。
【0076】
そして、中空糸膜モジュール2により調整ガスGが溶解された液体Lと、バイパス管7を通過した液体Lとは、下流側接続部13において混合される。これにより、液体Lの流量に関わらず、液体Lの比抵抗値を容易に調整できる。
【0077】
このように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Cでは、第一上流側液体排出管部4Aに、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧に応じて流路の開度が変わる第二逆止弁14が設けられている。このため、第一逆止弁8及び第二逆止弁14の設定を調整することで、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lとの分配比率を調整することができる。
【0078】
また、比抵抗値調整装置1Cでは、第一逆止弁8の流路が閉じる第一クラッキング圧が第二逆止弁14の流路が閉じる第二クラッキング圧と同じであるため、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lとの分配比率の偏りを抑制できる。
【0079】
ところで、供給される液体Lの流量が大きい場合は、中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量に対して中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量が低下する問題は生じない。また、供給される液体Lの流量が大きい場合は、第二逆止弁14の中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2とは反対側との差圧が大きい。比抵抗値調整装置1Cでは、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュールと2は反対側との差圧が第二作動開始圧以下になると、第二逆止弁14の流路が狭くなり始めるため、供給される液体Lの流量低下に伴う液体Lの比抵抗値の上昇を効率的に抑制することができる。
【0080】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態は、基本的に第三実施形態と同様であり、圧力伝達管が設けられている点で、第三実施形態と相違する。このため、以下では、第三実施形態と相違する事項のみを説明し、第三実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0081】
図5は、第四実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図5に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Dは、中空糸膜モジュール2と、液体供給管3と、液体排出管4と、ガス供給管5と、ガス排出管6と、バイパス管7と、第一逆止弁8と、第二逆止弁14と、圧力伝達管15と、を備える。
【0082】
圧力伝達管15は、内部に流路が形成された管状の部材である。圧力伝達管15の一方端部は、第二上流側液体排出管部4Bに接続される。圧力伝達管15の他方端部は、上流側バイパス管部7Aに接続される。つまり、圧力伝達管15は、第二上流側液体排出管部4Bと上流側バイパス管部7Aとに連通されて、上流側バイパス管部7Aの圧力を第二上流側液体排出管部4Bに伝える。この場合、圧力伝達管15は、上流側バイパス管部7Aの圧力を第二上流側液体排出管部4Bに伝えるが、上流側バイパス管部7Aと第二上流側液体排出管部4Bとの間の液体Lの流通を少なくすることが好ましい。このため、圧力伝達管15の断面積は、上流側バイパス管部7A又は第二上流側液体排出管部4Bの断面積よりも小さいことが好ましい。なお、圧力伝達管15、上流側バイパス管部7A及び第二上流側液体排出管部4Bのそれぞれの断面積は、圧力伝達管15、上流側バイパス管部7A及び第二上流側液体排出管部4Bのそれぞれの流路と直交する断面の面積であって、圧力伝達管15、上流側バイパス管部7A及び第二上流側液体排出管部4Bのそれぞれの最も小さい断面積である。
【0083】
圧力伝達管15は、上流側バイパス管部7Aの圧力を第二上流側液体排出管部4Bに伝えることができれば、如何なる構成であってもよい。
【0084】
圧力伝達管15の断面積は、例えば、上流側バイパス管部7A又は第二上流側液体排出管部4Bの断面積の0.2倍であってもよく、0.04倍であってもよく、0.008倍であってもよい。また、圧力伝達管15の断面積は、例えば、1.5mmであってもよく、3.0mmであってもよく、10mmであってもよい。
【0085】
圧力伝達管15、上流側バイパス管部7A、第二上流側液体排出管部4Bが円管状である場合は、圧力伝達管15の内径は、例えば、上流側バイパス管部7A又は第二上流側液体排出管部4Bの内径の0.5倍であってもよく、0.2倍であってもよく、0.09倍であってもよい。また、圧力伝達管15の内径は、例えば、2.0mmであってもよく、3.0mmであってもよく、4.0mmであってもよい。圧力伝達管15、上流側バイパス管部7A及び第二上流側液体排出管部4Bのそれぞれの内径は、圧力伝達管15、上流側バイパス管部7A及び第二上流側液体排出管部4Bのそれぞれの流路と直交する断面の内径であって、圧力伝達管15、上流側バイパス管部7A及び第二上流側液体排出管部4Bのそれぞれの最も小さい内径である。
【0086】
次に、比抵抗値調整装置1Dにより液体Lの比抵抗値を調整する方法について説明する。
【0087】
この方法では、液相側領域に液体Lを通過させながら気相側領域に調整ガスを通過させて、液体Lに調整ガスGを溶解させる。そして、調整ガスGが溶解された液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスさせた液体Lとを混合させて、液体Lの比抵抗値を調整する。
【0088】
具体的に説明すると、液体供給管3に液体Lを供給し、ガス供給管5に調整ガスGを供給する。すると、液体Lは、液体供給管3から中空糸膜モジュール2の液相側領域に供給されて、液体排出管4に排出される。また、液体Lは、上流側接続部12において液体供給管3から分岐し、中空糸膜モジュール2を迂回するようにバイパス管7を通って、液体排出管4に排出される。調整ガスGは、ガス供給管5から中空糸膜モジュール2の気相側領域に供給されて、ガス排出管6に排出される。中空糸膜モジュール2では、気相側領域に供給された調整ガスGは、中空糸膜21を透過することにより、液相側領域に供給された液体Lに溶解される。
【0089】
このとき、圧力伝達管15が、第一逆止弁8の上流側に配置される第二上流側液体排出管部4Bと、第二逆止弁14の上流側に配置される上流側バイパス管部7Aと、に接続されている。このため、第一逆止弁8の液体供給管3側の圧力と、第二逆止弁14の中空糸膜モジュール2側の圧力とが、均一化される。そして、バイパス管7に設けられている第一逆止弁8では、液体供給管3側と液体排出管4側との差圧に応じて流路の開度が変わり、第一上流側液体排出管部4Aに設けられている第二逆止弁14でも、中空糸膜モジュール2側と中空糸膜モジュール2の反対側との差圧に応じて流路の開度が変わる。
【0090】
そして、中空糸膜モジュール2により調整ガスGが溶解された液体Lと、バイパス管7を通過した液体Lとは、下流側接続部13において混合される。これにより、液体Lの流量に関わらず、液体Lの比抵抗値を容易に調整できる。
【0091】
ここで、中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量に対して中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量が小さくなるように設定した場合、供給される液体Lが低流量になると、第一逆止弁8が流路を開き、第二逆止弁14が流路を閉じることがある。このような場合、液体Lが中空糸膜モジュール2に流れなくなるため、液体Lの比抵抗値を調整することができない。
【0092】
しかしながら、本実施形態に係る比抵抗値調整装置1Dでは、圧力伝達管15により上流側バイパス管部7Aの圧力が第二上流側液体排出管部4Bに伝わることで、第二上流側液体排出管部4Bの圧力と上流側バイパス管部7Aの圧力とが均一化される。このため、第一逆止弁8が流路を開き、第二逆止弁14が流路を閉じる状態になるのを抑制することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0094】
例えば、上記実施形態では、第一逆止弁及び第二逆止弁の具体的な例を挙げて説明したが、第一逆止弁及び第二逆止弁は、上流側と下流側との差圧に応じて流路の開度が変わる弁であれば、如何なる構成のものを採用してもよい。
【0095】
また、バイパス管、第一バイパス管、及び第二バイパス管のそれぞれは、1本で構成されていてもよく、複数本で構成されていてもよい。例えば、第一実施形態に係る比抵抗値調整装置1A、第三実施形態に係る比抵抗値調整装置1C、及び第四実施形態に係る比抵抗値調整装置1Dでは、第一逆止弁8が設けられるバイパス管7が、互いに並列に配置された複数本の管で構成されていてもよい。また、第二実施形態に係る比抵抗値調整装置1Bでは、第一逆止弁8が設けられる第一バイパス管71が、互いに並列に配置された複数本で構成されていてもよく、第一逆止弁8が設けられない第二バイパス管72が、互いに並列に配置された複数本の管で構成されていてもよい。
【0096】
また、上記の各実施形態は、その一部または全部を適宜組み合わせてもよい。例えば、第二実施形態に係る比抵抗値調整装置1Bの、第一逆止弁8が設けられる第一バイパス管71及び第一逆止弁8が設けられない第二バイパス管72の構成を、第三実施形態に係る比抵抗値調整装置1C、及び第四実施形態に係る比抵抗値調整装置1Dに適用してもよい。
【実施例
【0097】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
(比較例1)
比較例1では、図6に示す比抵抗値調整装置101を用いて、液体Lの比抵抗値を調整した。比較例1の比抵抗値調整装置101は、基本的に第一実施形態と同様であり、第一逆止弁が設けられていない点のみ、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1Aと相違する。
【0099】
液体供給管3に供給する液体Lとしては、25℃における比抵抗値が18.2MΩ・cmの超純水を用いた。液体供給管3に供給する液体Lの流量は、120~5L/minの間で段階的に変動させた。液体供給管3に供給する液体Lの水圧は、0.3MPaとした。ガス供給管5に供給する調整ガスGとしては、炭酸ガスを用いた。炭酸ガスの供給源には、7mの炭酸ガスボンベを用いた。圧力調整弁10として、二段式圧力調整器及びプレッシャーレギュレーティングバルブを用い、中空糸膜モジュール2の気相側領域に供給する調整ガスGのガス圧を、0.1MPaとした。中空糸膜モジュール2として、ポリ-4-メチルペンテン-1を素材とする内径180μm、外径250μmの中空糸膜21を束にし、PP樹脂製のハウジング22内で、中空糸膜21の束の両端を樹脂で固め、4.0mの膜面積を有する外部灌流型の気体給気用中空糸膜モジュール(DIC(株)製 SEPAREL PF-04-SP4)を得た。
【0100】
そして、液体供給管3に液体Lを供給するとともに、ガス供給管5に調整ガスGを供給した。液体供給管3に供給した液体Lは、中空糸膜モジュール2の液相側領域に流れ込む比較的小流量の流れと、中空糸膜モジュール2を迂回してバイパス管7に流れ込む比較的大流量の流れと、に分配され、その後、液体排出管4で合流した。ガス供給管5に供給した調整ガスGは、圧力調整弁10により0.1[MPa]に調整された後、中空糸膜モジュール2の気相側領域に供給された。中空糸膜モジュール2では、調整ガスGは、中空糸膜21を透過し、中空糸膜21内の液相側領域を流れる液体Lに溶解され、液体Lは、炭酸ガスが付加された炭酸ガス付加超純水となった。
【0101】
このとき、実験Aでは、液体供給管3に60L/minの液体Lを供給したときの炭酸ガス付加超純水の比抵抗値が0.8MΩ・cmとなるように流量調整弁9を調節した。実験Bでは、液体供給管3に60L/minの液体Lを供給したときの炭酸ガス付加超純水の比抵抗値が0.6MΩ・cmとなるように流量調整弁9を調節した。実験Cでは、液体供給管3に60L/minの液体Lを供給したときの炭酸ガス付加超純水の比抵抗値が0.4MΩ・cmとなるように流量調整弁9を調節した。実験Dでは、液体供給管3に60L/minの液体Lを供給したときの炭酸ガス付加超純水の比抵抗値が0.2MΩ・cmとなるように流量調整弁9を調節した。
【0102】
そして、液体排出管4から排出された炭酸ガス付加超純水(液体L)の比抵抗値を計測した。この計測結果を図14及び図15に示す。図14では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に経過時間を示し、右縦軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示した。また、図14では、計測した比抵抗値を実線で示し、液体供給管3に供給した液体Lの流量を破線で示した。図15では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示し、右縦軸に比抵抗値調整装置101全体における液体Lの圧力損失を示した。また、図15では、計測した比抵抗値を実線で示し、比抵抗値調整装置101全体における液体Lの圧力損失を破線で示した。
【0103】
図15に示すように、比較例1では、供給される液体Lが低流量になるに従い、比抵抗値が大きく上昇した。また、図14に示すように、比較例1では、液体Lを供給している際の比抵抗値の振れも大きかった。
【0104】
(実施例1)
実施例1では、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1Aを用いて、液体Lの比抵抗値を調整した。
【0105】
実施例1では、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1Aを用いた他は、比較例1と同条件とした。
【0106】
そして、液体排出管4から排出された炭酸ガス付加超純水(液体L)の比抵抗値を計測した。この計測結果を図7及び図8に示す。図7では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に経過時間を示し、右縦軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示した。また、図7では、計測した比抵抗値を実線で示し、液体供給管3に供給した液体Lの流量を破線で示した。図8では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示し、右縦軸に比抵抗値調整装置1A全体における液体Lの圧力損失を示した。また、図8では、計測した比抵抗値を実線で示し、比抵抗値調整装置1A全体における液体Lの圧力損失を破線で示した。
【0107】
図8に示すように、実施例1では、比較例1に比べて、供給される液体Lが低流量になるに従って比抵抗値が上昇する現象が抑制された。また、図7に示すように、実施例1では、比較例1に比べて、液体Lを供給している際の比抵抗値の振れが小さくなった。
【0108】
(実施例2)
実施例2では、図3に示す第二実施形態の比抵抗値調整装置1Bを用いて、液体Lの比抵抗値を調整した。
【0109】
実施例2では、図3に示す第二実施形態の比抵抗値調整装置1Bを用いた他は、比較例1と同条件とした。
【0110】
そして、液体排出管4から排出された炭酸ガス付加超純水(液体L)の比抵抗値を計測した。この計測結果を図9に示す。図9では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示し、右縦軸に比抵抗値調整装置1B全体における液体Lの圧力損失を示した。また、図9では、計測した比抵抗値を実線で示し、比抵抗値調整装置1B全体における液体Lの圧力損失を破線で示した。
【0111】
図9に示すように、実施例1では、比較例1に比べて、供給される液体Lが低流量になるに従って比抵抗値が上昇する現象が抑制された。
【0112】
(実施例3)
実施例3では、図4に示す第三実施形態の比抵抗値調整装置1Cを用いて、液体Lの比抵抗値を調整した。
【0113】
実施例3では、図4に示す第三実施形態の比抵抗値調整装置1Cを用いた他は、比較例1と同条件とした。
【0114】
そして、液体排出管4から排出された炭酸ガス付加超純水(液体L)の比抵抗値を計測した。この計測結果を図10及び図11に示す。図10では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に経過時間を示し、右縦軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示した。また、図10では、計測した比抵抗値を実線で示し、液体供給管3に供給した液体Lの流量を破線で示した。図11では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示し、右縦軸に比抵抗値調整装置1C全体における液体Lの圧力損失を示した。また、図11では、計測した比抵抗値を実線で示し、比抵抗値調整装置1C全体における液体Lの圧力損失を破線で示した。
【0115】
図10に示すように、実施例3では、比較例1に比べて、供給される液体Lが低流量になるに従って比抵抗値が上昇する現象が抑制された。また、図11に示すように、実施例3では、比較例1に比べて、液体Lを供給している際の比抵抗値の振れが小さくなった。
【0116】
(実施例4)
実施例4では、図5に示す第四実施形態の比抵抗値調整装置1Dを用いて、液体Lの比抵抗値を調整した。
【0117】
実施例4では、図5に示す第四実施形態の比抵抗値調整装置1Dを用いた他は、比較例1と同条件とした。
【0118】
そして、液体排出管4から排出された炭酸ガス付加超純水(液体L)の比抵抗値を計測した。この計測結果を図12及び図13に示す。図12では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に経過時間を示し、右縦軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示した。また、図12では、計測した比抵抗値を実線で示し、液体供給管3に供給した液体Lの流量を破線で示した。図13では、左縦軸に計測した比抵抗値を示し、横軸に液体供給管3に供給した液体Lの流量を示し、右縦軸に比抵抗値調整装置1D全体における液体Lの圧力損失を示した。また、図13では、計測した比抵抗値を実線で示し、比抵抗値調整装置1D全体における液体Lの圧力損失を破線で示した。
【0119】
図13に示すように、実施例4では、比較例1に比べて、供給される液体Lが低流量になるに従って比抵抗値が上昇する現象が抑制された。また、図12に示すように、実施例3では、比較例1に比べて、液体Lを供給している際の比抵抗値の振れが小さくなった。
【符号の説明】
【0120】
1A…比抵抗値調整装置、1B…比抵抗値調整装置、1C…比抵抗値調整装置、1D…比抵抗値調整装置、2…中空糸膜モジュール、3…液体供給管、4…液体排出管、4A…第一上流側液体排出管部、4B…第二上流側液体排出管部、4C…第三上流側液体排出管部、5…ガス供給管、6…ガス排出管、7…バイパス管、7A…上流側バイパス管部、7B…下流側バイパス管部、8…第一逆止弁、9…流量調整弁、10…圧力調整弁、11…漏出部、12…上流側接続部、13…下流側接続部、14…第二逆止弁、15…圧力伝達管、21…中空糸膜、22…ハウジング、22A…液体供給口、22B…液体排出口、22C…ガス供給口、22D…ガス排出口、71…第一バイパス管、72…第二バイパス管、82…弁体、83…スプリング、85…流路、86…弁座、87…支持部材、101…比抵抗値調整装置、142…弁体、143…スプリング、145…流路、146…弁座、147…支持部材、G…調整ガス、L…液体、P…圧力計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15