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特許7409760表面処理銅箔、キャリア付銅箔、積層体、プリント配線板の製造方法及び電子機器の製造方法
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  • 特許-表面処理銅箔、キャリア付銅箔、積層体、プリント配線板の製造方法及び電子機器の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】表面処理銅箔、キャリア付銅箔、積層体、プリント配線板の製造方法及び電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20231226BHJP
   B32B 5/16 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20231226BHJP
   C25D 5/14 20060101ALI20231226BHJP
   C25D 5/16 20060101ALI20231226BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C25D7/06 A
B32B5/16
B32B15/08 J
B32B15/09 Z
B32B15/20
C25D5/14
C25D5/16
H05K1/09 C
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2017205410
(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公開番号】P2018090903
(43)【公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2016236250
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】新井 英太
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮
(72)【発明者】
【氏名】三木 敦史
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】池渕 立
【審判官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/051123(WO,A1)
【文献】特開2016-56452(JP,A)
【文献】特開2015-200026(JP,A)
【文献】特開2015-117436(JP,A)
【文献】特開2014-141729(JP,A)
【文献】特開2011-219789(JP,A)
【文献】特開2015-105440(JP,A)
【文献】特開2013-199082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔の少なくとも一方の面に表面処理層を有する表面処理銅箔であって
前記表面処理層は一次粒子層と二次粒子層とを有し、
前記一次粒子層は粗化粒子を含み、
前記二次粒子層は粗化粒子を含み、
前記表面処理層におけるZnの付着量が150μg/dm2以上であり、
前記表面処理層は、Niの付着量が20μg/dm2以上800μg/dm2以下であり、
前記表面処理層は、Coの付着量が284μg/dm2以上3000μg/dm2以下であり、
さらに、以下の(1)及び(2)のうちの一方又は両方を満たし、
(1)前記表面処理層は、Niの付着量が400μg/dm2以下であり、
(2)前記表面処理層は、Coの付着量が1500μg/dm2以下であり、
前記表面処理層の最表面の十点平均粗さRzが1.5μm以下である表面処理銅箔。
【請求項2】
前記表面処理層におけるZnの付着量は165μg/dm2以上である請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項3】
前記表面処理層におけるZnの付着量は180μg/dm2以上である請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項4】
前記表面処理層におけるZnの付着量は200μg/dm2以上である請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項5】
前記表面処理層におけるZnの付着量は250μg/dm2以上である請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項6】
前記表面処理層の最表面の十点平均粗さRzが1.0μm以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項7】
前記表面処理層はCoを含む請求項1~6のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項8】
前記表面処理層はNiを含む請求項1~7のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項9】
前記表面処理層はCo及びNiを含み、
前記表面処理層におけるCo及びNiの合計付着量が3500μg/dm2以下である請求項1~8のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項10】
両方の面に前記表面処理層を有する請求項1~9のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項11】
前記表面処理銅箔を前記表面処理層側から樹脂と積層し、前記表面処理銅箔をエッチングして10mm幅の回路を作成した後に、前記樹脂から前記回路を90°方向に剥離する際のピール強度が0.5kg/cm以上となり、
前記樹脂および前記積層の条件は以下の(1)~(3)のいずれか一つまたは二つまたは三つである、
請求項1~10のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
(1)樹脂:ヒドロキシ安息香酸とヒドロキシナフトエ酸との共重合体である液晶ポリマー樹脂、厚み50μm
積層の条件:圧力3.5MPa、加熱温度300℃、加熱時間10分間
(2)樹脂:低誘電ポリイミド樹脂、厚み50μm
積層の条件:圧力4MPa、加熱温度360℃、加熱時間5分間
(3)樹脂:ポリテトラフルオロエチレン、厚み50μm
積層の条件:圧力5MPa、加熱温度350℃、加熱時間30分間
【請求項12】
前記ピール強度が0.7kg/cm以上である請求項11に記載の表面処理銅箔。
【請求項13】
前記表面処理銅箔を前記表面処理層側から樹脂と積層し、前記表面処理銅箔をエッチングして10mm幅の回路を作成し、前記回路を大気下で180℃で10日間加熱後に、前記樹脂から前記回路を90°方向に剥離する際のピール強度が0.4kg/cm以上となり、
前記樹脂および前記積層の条件は以下の(1)~(3)のいずれか一つまたは二つまたは三つである、
請求項1~12のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
(1)樹脂:ヒドロキシ安息香酸とヒドロキシナフトエ酸との共重合体である液晶ポリマー樹脂、厚み50μm
積層の条件:圧力3.5MPa、加熱温度300℃、加熱時間10分間
(2)樹脂:低誘電ポリイミド樹脂、厚み50μm
積層の条件:圧力4MPa、加熱温度360℃、加熱時間5分間
(3)樹脂:ポリテトラフルオロエチレン、厚み50μm
積層の条件:圧力5MPa、加熱温度350℃、加熱時間30分間
【請求項14】
前記表面処理銅箔を前記表面処理層側から樹脂と積層し、前記表面処理銅箔をエッチングして10mm幅の回路を作成し、前記回路を大気下で180℃で10日間加熱後に、前記樹脂から前記回路を90°方向に剥離する際のピール強度が0.5kg/cm以上となる請求項13に記載の表面処理銅箔。
【請求項15】
前記表面処理層は前記一次粒子層または前記二次粒子層の上に、
(A)Niと、Fe、Cr、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、AsおよびTiからなる群から選択された一種以上の元素とからなる合金層、及び、
(B)クロメート処理層
のいずれか一方、又は、両方を有する請求項1~14のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項16】
前記表面処理層は前記一次粒子層または前記二次粒子層の上に、
以下の(A)又は(B)の少なくとも一方、および(C)を有する請求項1~14のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
(A)Niと、Fe、Cr、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、AsおよびTiからなる群から選択された一種以上の元素とからなる合金層
(B)クロメート処理層
(C)シランカップリング処理層
【請求項17】
前記表面処理層は前記一次粒子層または前記二次粒子層の上に、
Ni-Zn合金層またはクロメート処理層の少なくとも一方を有する請求項1~14のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項18】
前記表面処理層は前記一次粒子層または前記二次粒子層の上に、
Ni-Zn合金層またはクロメート処理層の少なくとも一方、およびシランカップリング処理層と、を有する請求項1~14のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項19】
高周波回路基板に用いられる請求項1~18のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の表面処理銅箔の前記表面処理層の表面に樹脂層を備える樹脂層付表面処理銅箔。
【請求項21】
キャリアの少なくとも一方の面に、中間層を介して、請求項1~19のいずれか一項に記載の表面処理銅箔または請求項20に記載の樹脂層付表面処理銅箔が形成されたキャリア付銅箔であって、前記銅箔が極薄銅層である、キャリア付銅箔
【請求項22】
請求項1~19のいずれか一項に記載の表面処理銅箔または請求項20に記載の樹脂層付表面処理銅箔を有する積層体。
【請求項23】
請求項21に記載のキャリア付銅箔を有する積層体。
【請求項24】
請求項21に記載のキャリア付銅箔と樹脂とを含み、
前記キャリア付銅箔の端面の一部または全部が前記樹脂により覆われた積層体。
【請求項25】
請求項21に記載のキャリア付銅箔を二つ有する積層体。
【請求項26】
請求項1~19のいずれか一項に記載の表面処理銅箔または請求項20に記載の樹脂層付表面処理銅箔または請求項21に記載のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法。
【請求項27】
請求項1~19のいずれか一項に記載の表面処理銅箔または請求項20に記載の樹脂層付表面処理銅箔または請求項21に記載のキャリア付銅箔と、絶縁基板とを準備する工程、
以下の(1)~(3)のいずれか一つを含む銅張積層板を形成する工程、
(1)前記表面処理銅箔と前記絶縁基板とを積層する工程、
(2)前記樹脂層付表面処理銅箔と前記絶縁基板とを積層する工程、
(3)前記キャリア付銅箔と前記絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
及び、
セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、前記銅張積層板を使用して回路を形成する工程
を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項28】
請求項1~19のいずれか一項に記載の表面処理銅箔の前記表面処理層側表面に回路を形成する工程、または、請求項21に記載のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面もしくは前記キャリア側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記表面処理銅箔の前記表面処理層側表面、または、前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面もしくは前記キャリア側表面に樹脂層を形成する工程、及び、
前記樹脂層を形成した後に前記表面処理銅箔を除去することで、または、前記キャリアもしくは前記極薄銅層を剥離させた後に前記極薄銅層もしくは前記キャリアを除去することで、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項29】
請求項21に記載のキャリア付銅箔の前記キャリア側表面または前記極薄銅層側表面と、樹脂基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔の樹脂基板と積層した側とは反対側表面に、樹脂層と回路とを設ける工程、及び、
前記樹脂層及び前記回路を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程
を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項30】
請求項23~25のいずれか一項に記載の積層体に樹脂層と回路とを設ける工程、及び、
前記樹脂層及び前記回路を形成した後に、前記積層体を構成しているキャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程
を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項31】
請求項26~30のいずれか一項に記載の方法で製造されたプリント配線板を用いた電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理銅箔、キャリア付銅箔、積層体、プリント配線板の製造方法及び電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して優れた高周波対応が求められている。
【0003】
高周波用基板には、出力信号の品質を確保するため、伝送損失の低減が求められている。伝送損失は、主に、樹脂(基板側)に起因する誘電体損失と、導体(銅箔側)に起因する導体損失からなっている。誘電体損失は、樹脂の誘電率及び誘電正接が小さくなるほど減少する。高周波信号において、導体損失は、周波数が高くなるほど電流は導体の表面しか流れなくなるという表皮効果によって電流が流れる断面積が減少し、抵抗が高くなることが主な原因となっている。
【0004】
高周波用銅箔の伝送損失を低減させることを目的とした技術としては、例えば、特許文献1に、金属箔表面の片面又は両面に、銀又は銀合金属を被覆し、該銀又は銀合金被覆層の上に、銀又は銀合金以外の被覆層が前記銀又は銀合金被覆層の厚さより薄く施されている高周波回路用金属箔が開示されている。そして、これによれば、衛星通信で使用されるような超高周波領域においても表皮効果による損失を小さくした金属箔を提供することができると記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、圧延銅箔の再結晶焼鈍後の圧延面でのX線回折で求めた(200)面の積分強度(I(200))が、微粉末銅のX線回折で求めた(200)面の積分強度(I0(200))に対し、I(200)/I0(200)>40であり、該圧延面に電解メッキによる粗化処理を行った後の粗化処理面の算術平均粗さ(以下、Raとする)が0.02μm~0.2μm、十点平均粗さ(以下、Rzとする)が0.1μm~1.5μmであって、プリント回路基板用素材であることを特徴とする高周波回路用粗化処理圧延銅箔が開示されている。そして、これによれば、1GHzを超える高周波数下での使用が可能なプリント回路板を提供することができると記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、銅箔の表面の一部がコブ状突起からなる表面粗度が2μm~4μmの凹凸面であることを特徴とする電解銅箔が開示されている。そして、これによれば、高周波伝送特性に優れた電解銅箔を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4161304号公報
【文献】特許第4704025号公報
【文献】特開2004-244656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高周波回路基板に用いたときの銅箔の伝送損失の制御については上記のように種々の研究がなされているが、未だ開発の余地が大きく残されている。また、表面処理銅箔は表面処理層側から樹脂と積層し、所定の温度および所定の時間(180℃で10日間)加熱した後に、表面処理銅箔と樹脂との剥離強度(ピール強度)が良好であることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、銅箔に一次粒子層を形成して得られる表面処理層、または一次粒子層及び二次粒子層を形成して得られる表面処理層における所定の金属の付着量及び表面処理層の最表面の十点平均粗さRzを制御することで、高周波回路基板に用いても伝送損失を良好に減少させることが可能となり、且つ、樹脂と積層し、所定の温度および所定の時間(180℃で10日間)加熱した後に、表面処理銅箔と樹脂との剥離強度(ピール強度)が良好となることを見出した。
【0010】
本発明は上記知見を基礎として完成したものであり、一側面において、銅箔と、前記銅箔の一方または両方の面に表面処理層とを有する表面処理銅箔であって、前記表面処理層は一次粒子層を有するか、または、一次粒子層と二次粒子層とを前記銅箔側からこの順に有し、前記表面処理層はZnを含み、前記表面処理層におけるZnの付着量が150μg/dm2以上であり、前記表面処理層はNiを含まないか、または、前記表面処理層がNiを含む場合には、前記表面処理層におけるNiの付着量は800μg/dm2以下であり、前記表面処理層はCoを含まないか、または、前記表面処理層がCoを含む場合には、前記表面処理層におけるCoの付着量は3000μg/dm2以下であり、前記表面処理層の最表面の十点平均粗さRzが1.5μm以下である表面処理銅箔である。
【0011】
本発明は別の一側面において、銅箔と、前記銅箔の一方または両方の面に表面処理層とを有する表面処理銅箔であって、前記表面処理層は一次粒子層を有するか、または、一次粒子層と、二次粒子層とを前記銅箔側からこの順に有し、前記表面処理層はZn及びMoを含み、前記表面処理層におけるZn及びMoの合計付着量が200μg/dm2以上であり、前記表面処理層はNiを含まないか、または、前記表面処理層がNiを含む場合には、前記表面処理層におけるNiの付着量は800μg/dm2以下であり、前記表面処理層はCoを含まないか、または、前記表面処理層がCoを含む場合には、前記表面処理層におけるCoの付着量は3000μg/dm2以下であり、前記表面処理層の最表面の十点平均粗さRzが1.5μm以下である表面処理銅箔である。
【0012】
本発明の表面処理銅箔は別の一実施形態において、前記表面処理層はCoを含む。
【0013】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面処理層はNiを含む。
【0014】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面処理層はCo及びNiを含み、前記表面処理層におけるCo及びNiの合計付着量が3500μg/dm2以下である。
【0015】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面処理銅箔と樹脂とを準備し、前記表面処理銅箔を前記表面処理層側から前記樹脂と積層した後に、前記樹脂から前記表面処理銅箔を剥離する際のピール強度が0.5kg/cm以上である。
【0016】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記ピール強度が0.7kg/cm以上である。
【0017】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面処理層は前記一次粒子層または前記二次粒子層の上に、
(A)Niと、Fe、Cr、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、AsおよびTiからなる群から選択された一種以上の元素とからなる合金層、及び、
(B)クロメート処理層
のいずれか一方、又は、両方を前記銅箔側からこの順で有する。
【0018】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面処理層は前記一次粒子層または前記二次粒子層の上に、
(A)Niと、Fe、Cr、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、AsおよびTiからなる群から選択された一種以上の元素とからなる合金層、及び、
(B)クロメート処理層
のいずれか一方、又は、両方と、シランカップリング処理層とを前記銅箔側からこの順で有する。
【0019】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面処理層は前記一次粒子層または前記二次粒子層の上に、Ni-Zn合金層、及び、クロメート処理層のいずれか一方、又は、両方を前記銅箔側からこの順で有する。
【0020】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面処理層は前記一次粒子層または前記二次粒子層の上に、Ni-Zn合金層、及び、クロメート処理層のいずれか一方、又は、両方と、シランカップリング処理層とを前記銅箔側からこの順で有する。
【0021】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面処理層の表面に樹脂層を備える。
【0022】
本発明の表面処理銅箔は更に別の一実施形態において、高周波回路基板に用いられる。
【0023】
本発明は更に別の一側面において、キャリアの一方の面、又は、両方の面に、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層が本発明の表面処理銅箔であるキャリア付銅箔である。
【0024】
本発明は更に別の一側面において、本発明の表面処理銅箔または本発明のキャリア付銅箔を有する積層体である。
【0025】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔と樹脂とを含む積層体であって、前記キャリア付銅箔の端面の一部または全部が前記樹脂により覆われた積層体である。
【0026】
本発明は更に別の一側面において、一つの本発明のキャリア付銅箔が、前記キャリア側又は前記極薄銅層側から、もう一つの本発明のキャリア付銅箔の前記キャリア側又は前記極薄銅層側に積層された積層体である。
【0027】
本発明は更に別の一側面において、本発明の表面処理銅箔または本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法である。
【0028】
本発明は更に別の一側面において、本発明の表面処理銅箔または本発明のキャリア付銅箔と、絶縁基板とを準備する工程、
前記表面処理銅箔と前記絶縁基板とを積層する工程を経て銅張積層板を形成する工程、または、前記キャリア付銅箔と前記絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成する工程、及び、
その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0029】
本発明は更に別の一側面において、本発明の表面処理銅箔の前記表面処理層側表面に回路を形成する工程、または、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面或いは前記キャリア側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記表面処理銅箔の前記表面処理層側表面、または、前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面或いは前記キャリア側表面に樹脂層を形成する工程、及び、
前記樹脂層を形成した後に、前記表面処理銅箔を除去することで、または、前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させた後に、前記極薄銅層または前記キャリアを除去することで、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0030】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔の前記キャリア側表面または前記極薄銅層側表面と、樹脂基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔の樹脂基板と積層した側とは反対側表面に、樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、
前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0031】
本発明は更に別の一側面において、本発明の積層体のいずれか一方または両方の面に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、
前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記積層体を構成しているキャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0032】
本発明は更に別の一側面において、本発明の方法で製造されたプリント配線板を用いた電子機器の製造方法である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、高周波回路基板に用いても伝送損失を良好に減少させることが可能となり、且つ、樹脂と積層し、所定の温度および所定の時間(180℃で10日間)加熱した後に、表面処理銅箔と樹脂との剥離強度(ピール強度)が良好となる表面処理銅箔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】A~Cは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、回路メッキ・レジスト除去までの工程における配線板断面の模式図である。
図2】D~Fは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、樹脂及び2層目キャリア付銅箔積層からレーザー穴あけまでの工程における配線板断面の模式図である。
図3】G~Iは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、ビアフィル形成から1層目のキャリア剥離までの工程における配線板断面の模式図である。
図4】J~Kは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、フラッシュエッチングからバンプ・銅ピラー形成までの工程における配線板断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<表面処理銅箔>
本発明の表面処理銅箔は銅箔と、銅箔の一方または両方の面に表面処理層とを有する。本発明の表面処理銅箔を絶縁基板に貼り合わせた後、表面処理銅箔を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。本発明の表面処理銅箔は、高周波回路基板用の表面処理銅箔として用いてもよい。ここで、高周波回路基板とは、当該回路基板の回路を用いて伝送される信号の周波数が1GHz以上である回路基板のことを言う。また、好ましくは前記信号の周波数が3GHz以上、より好ましくは5GHz以上、より好ましくは8GHz以上、より好ましくは10GHz以上、より好ましくは15GHz以上、より好ましくは18GHz以上、より好ましくは20GHz以上、より好ましくは30GHz以上、より好ましくは38GHz以上、より好ましくは40GHz以上である。
【0036】
<銅箔>
本発明に用いることのできる銅箔の形態に特に制限はなく、典型的には本発明において使用する銅箔は、電解銅箔或いは圧延銅箔いずれでも良い。一般的には、電解銅箔は硫酸銅メッキ浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)やりん脱酸銅(JIS H3100 合金番号C1201、C1220またはC1221)や電気銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Fe、P、Ti、Sn、Zn、Mn、Mo、Co、Ni、Si、Zr、及び/又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。また、公知の組成を有する銅箔および銅合金箔も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
なお、銅箔の板厚は特に限定する必要は無いが、例えば1~1000μm、あるいは1~500μm、あるいは1~300μm、あるいは3~100μm、あるいは5~70μm、あるいは6~35μm、あるいは9~18μmである。
また、本発明は別の側面において、キャリアの一方の面、又は、両方の面に、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、極薄銅層が本発明の表面処理銅箔である。本発明においてキャリア付銅箔を使用する場合、極薄銅層表面に以下の粗化処理層等の表面処理層を設ける。なお、キャリア付銅箔の別の実施の形態については後述する。
【0037】
<表面処理層>
表面処理層は一次粒子層を有するか、または、一次粒子層と二次粒子層とを銅箔側からこの順に有する。一次粒子層及び二次粒子層は、電気メッキ層により形成する。この二次粒子の特徴は、前記一次粒子の上に成長した1又は複数個の粒子である。または二次粒子層は前記一次粒子の上に成長した正常メッキである。二次粒子は樹枝状の形状を有してもよい。すなわち、本明細書において用語「二次粒子層」を用いた場合には、被せメッキ等の正常メッキ層も含まれるものとする。また、二次粒子層は粗化粒子により形成される層を一層以上有する層であってもよく、正常メッキ層を一層以上有する層であってもよく、粗化粒子により形成される層と正常メッキ層とをそれぞれ一層以上有する層であってもよい。なお、表面処理層は一次粒子層や二次粒子層以外の一つまたは複数の他の層を有しても良い。
なお、一次粒子層とは、銅箔の上に直接形成されている粗化粒子と、当該粗化粒子の上に積み重なっている粗化粒子であって、銅箔の上に直接形成されている粗化粒子と組成が同様であるか、銅箔の上に直接形成されている粗化粒子が含有する元素と同じ元素を有する粗化粒子を含む層とする。二次粒子層とは、一次粒子層に含まれる粗化粒子の上に形成されている粗化粒子であって、一次粒子層を形成する粗化粒子とは組成が異なるか、または、一次粒子層を形成する粗化粒子が含まない元素を含む粗化粒子を含む層とする。
また、上述の一次粒子および/または二次粒子を構成する元素の有無、および/または、当該元素の濃度若しくは付着量を測定することができない場合には、一次粒子及び二次粒子は、例えば走査型電子顕微鏡写真で観察した際に、重なって見える粒子であって銅箔側(下方)に存在する粒子、および、重なっていない粒子を一次粒子とし、重なって見える粒子であって他の粒子の上に存在する粒子を二次粒子と判定することができる。
【0038】
本発明の表面処理銅箔は、一側面において、表面処理層はZnを含み、表面処理層におけるZnの付着量が150μg/dm2以上である。Znの付着量が150μg/dm2未満であると高周波回路基板用の表面処理銅箔として用いたときに耐熱性が不良となるおそれがある。当該Znの付着量は、好ましくは155μg/dm2以上、好ましくは165μg/dm2以上、好ましくは180μg/dm2以上、好ましくは200μg/dm2以上、好ましくは250μg/dm2以上、好ましくは270μg/dm2以上、好ましくは280μg/dm2以上、更により好ましくは290μg/dm2以上である。当該Znの付着量の上限は特に設ける必要は無いが、典型的には例えば50000μg/dm2以下、例えば30000μg/dm2以下、例えば10000μg/dm2以下、例えば5000μg/dm2以下、例えば3000μg/dm2以下、例えば2000μg/dm2以下、例えば1000μg/dm2以下である。
【0039】
なお、本発明において、表面処理層におけるZn、Ni、Co、Mo等の元素の付着量を規定しているが、これらは表面処理層が銅箔の両方の面に存在する場合には、一方の面の表面処理層における規定であり、両方の面に形成された表面処理層に含有される元素(例えばZn等)の合計値ではない。
【0040】
本発明の表面処理銅箔は、別の一側面において、表面処理層はZn及びMoを含み、表面処理層におけるZn及びMoの合計付着量が200μg/dm2以上である。Zn及びMoの合計付着量が200μg/dm2未満であると高周波回路基板用の表面処理銅箔として用いたときに耐熱性が不良となるおそれがある。当該Zn及びMoの合計付着量は、好ましくは250μg/dm2以上、より好ましくは300μg/dm2以上、より好ましくは340μg/dm2以上、より好ましくは360μg/dm2以上、より好ましくは400μg/dm2以上、より好ましくは420μg/dm2以上、より好ましくは450μg/dm2以上、より好ましくは460μg/dm2以上、より好ましくは500μg/dm2以上である。当該Zn及びMoの合計付着量の上限は特に設ける必要は無いが、典型的には例えば100000μg/dm2以下、例えば50000μg/dm2以下、例えば30000μg/dm2以下、例えば10000μg/dm2以下、例えば8000μg/dm2以下、例えば5000μg/dm2以下、例えば3000μg/dm2以下、例えば1000μg/dm2以下である。
【0041】
本発明の表面処理銅箔の表面処理層はCoを含まないか、または、表面処理層がCoを含む場合には、表面処理層におけるCoの付着量は3000μg/dm2以下である。当該Coの付着量が3000μg/dm2を超えると、高周波伝送特性が悪化するという問題が生じるおそれがある。当該Coの付着量は、より好ましくは2900μg/dm2以下、より好ましくは2800μg/dm2以下、より好ましくは2790μg/dm2以下、より好ましくは2700μg/dm2以下、より好ましくは2500μg/dm2以下、更により好ましくは1500μg/dm2以下、更により好ましくは1000μg/dm2以下である。なお、表面処理層がCoを含む場合の、表面処理層におけるCoの付着量の下限は特に限定する必要はないが、典型的には、例えばCoの付着量は0μg/dm2より大きい、例えば0.10μg/dm2以上、例えば1μg/dm2以上、例えば2μg/dm2以上、例えば3μg/dm2以上、例えば4μg/dm2以上、例えば5μg/dm2以上、例えば10μg/dm2以上、例えば15μg/dm2以上、例えば20μg/dm2以上である。なお、表面処理層がCoを含む場合、Coを含まない場合と比較して表面処理銅箔の耐候性が向上するという効果を奏する場合がある。
【0042】
本発明の表面処理銅箔の表面処理層はNiを含まないか、または、表面処理層がNiを含む場合には、表面処理層におけるNiの付着量は800μg/dm2以下である。当該Niの付着量が800μg/dm2を超えると、高周波伝送特性が悪化するという問題が生じるおそれがある。当該Niの付着量は、より好ましくは750μg/dm2以下、更により好ましくは600μg/dm2以下、更により好ましくは400μg/dm2以下、更により好ましくは250μm/dm2以下である。なお、表面処理層がNiを含む場合の、表面処理層におけるNiの付着量の下限は特に限定する必要はないが、典型的には、例えばNiの付着量は0μg/dm2より大きい、例えば0.10μg/dm2以上、例えば1μg/dm2以上、例えば2μg/dm2以上、例えば3μg/dm2以上、例えば4μg/dm2以上、例えば5μg/dm2以上、例えば10μg/dm2以上、例えば15μg/dm2以上、例えば20μg/dm2以上である。なお、表面処理層がNiを含む場合、Niを含まない場合と比較して表面処理銅箔の耐薬品性が向上するという効果を奏する場合がある。
【0043】
本発明の表面処理銅箔は、表面処理層はさらにCo及びNiを含み、表面処理層におけるCo及びNiの合計付着量が3500μg/dm2以下であるのが好ましい。当該Co及びNiの合計付着量が3500μg/dm2を超えると、高周波伝送特性が悪化するという問題が生じるおそれがある。当該Co及びNiの合計付着量は、より好ましくは3100μg/dm2以下、更により好ましくは1900μg/dm2以下、更により好ましくは1400μg/dm2以下である。なお、表面処理層がCo及びNiを含む場合の、表面処理層におけるCo及びNiの合計付着量の下限は特に限定する必要はないが、典型的には、例えばCo及びNiの合計付着量は0μg/dm2より大きい、例えば0.10μg/dm2以上、例えば1μg/dm2以上、例えば2μg/dm2以上、例えば3μg/dm2以上、例えば4μg/dm2以上、例えば5μg/dm2以上、例えば10μg/dm2以上、例えば15μg/dm2以上、例えば20μg/dm2以上、例えば30μg/dm2以上、例えば40μg/dm2以上、例えば50μg/dm2以上、例えば60μg/dm2以上、例えば70μg/dm2以上である。なお、表面処理層がCo及びNiを含む場合、Co及びNiを含まない場合と比較して表面処理銅箔の耐薬品性および耐候性が向上するという効果を奏する場合がある。
【0044】
なお、表面処理層が含有する元素の付着量は、表面処理層を形成する際に使用する表面処理液中の当該元素の濃度を高くするか、および/または、表面処理がめっきの場合には、電流密度を高くするか、および/または、表面処理時間(めっきをする際の通電時間)を長くする、こと等により、多くすることが出来る。また、表面処理層が含有する元素の付着量は、表面処理層を形成する際に使用する表面処理液中の当該元素の濃度を低くするか、および/または、表面処理がめっきの場合には、電流密度を低くするか、および/または、表面処理時間(めっきをする際の通電時間)を短くする、こと等により、少なくすることが出来る。
【0045】
本発明の表面処理銅箔は、表面処理層の最表面の十点平均粗さRzが1.5μm以下である。表面処理層の最表面の十点平均粗さRzが1.5μmを超えると、高周波伝送特性が悪化するという問題が生じるおそれがある。表面処理層の最表面の十点平均粗さRzは、より好ましくは1.3μm以下、更により好ましくは1.1μm以下、更により好ましくは1.0μm以下、更により好ましくは0.9μm以下である。「表面処理層の最表面」とは、表面処理により形成された複数の層により表面処理層が形成されている場合には、当該複数の層の一番外側(最表面)の層の表面を意味する。そして、当該複数の層の一番外側(最表面)の層の表面について十点平均粗さRzを測定する。表面処理層の最表面の十点平均粗さRzの下限は特に限定をする必要はないが、典型的には例えば0.01μm以上、例えば0.05μm以上、例えば0.1μm以上である。
【0046】
本発明の表面処理銅箔の表面処理層は一次粒子層または二次粒子層の上に、
(A)Niと、Fe、Cr、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、AsおよびTiからなる群から選択された一種以上の元素とからなる合金層、及び、
(B)クロメート処理層
のいずれか一方、又は、両方を前記銅箔側からこの順で有してもよい。
【0047】
また、本発明の表面処理銅箔の表面処理層は一次粒子層または二次粒子層の上に、
(A)Niと、Fe、Cr、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、AsおよびTiからなる群から選択された一種以上の元素とからなる合金層、及び、
(B)クロメート処理層
のいずれか一方、又は、両方と、シランカップリング処理層とを銅箔側からこの順で有してもよい。
【0048】
また、本発明の表面処理銅箔の表面処理層は一次粒子層または二次粒子層の上に、Ni-Zn合金層、及び、クロメート処理層のいずれか一方、又は、両方を銅箔側からこの順で有してもよい。
【0049】
また、本発明の表面処理銅箔の表面処理層は一次粒子層または二次粒子層の上に、Ni-Zn合金層、及び、クロメート処理層のいずれか一方、又は、両方と、シランカップリング処理層とを銅箔側からこの順で有してもよい。
なお、前述のNi-Zn合金層はNiとZnとを含む合金の層を意味する。Ni-Zn合金層はNiとZnの合計濃度が80原子%以上の層であってもよい。NiとZnの合計濃度はXPS等を用いた深さ方向のNiとZnの原子濃度分析をし、得られたNi原子濃度とZn原子濃度を合計することによって測定することができる。Ni-Zn合金層はNiとZnのみからなる層であってもよい。
【0050】
本発明の表面処理銅箔は、当該表面処理銅箔と樹脂とを準備し、表面処理銅箔を表面処理層側から当該樹脂と積層し、当該表面処理銅箔をエッチングして10mm幅の回路を作成した後に、当該樹脂から当該回路を90°方向に剥離する際のピール強度0.5kg/cm以上、さらにはピール強度0.7kg/cm以上を達成することができる。
また、本発明の表面処理銅箔は、当該表面処理銅箔と樹脂とを準備し、表面処理銅箔を表面処理層側から当該樹脂と積層し、当該表面処理銅箔をエッチングして10mm幅の回路を作成し、当該回路を大気下で180℃で10日間加熱後に、当該樹脂から当該回路を90°方向に剥離する際のピール強度0.4kg/cm以上、さらにはピール強度0.5kg/cm以上を達成することができる。
なお、前述の樹脂および前記積層の条件は以下の(1)~(3)のいずれか一つまたは二つまたは三つである。すなわち、以下の(1)~(3)の条件のいずれかに基づいて得られたピール強度が上記範囲内であることが好ましい。
(1)樹脂:ヒドロキシ安息香酸とヒドロキシナフトエ酸との共重合体である液晶ポリマー樹脂、厚み50μm
積層の条件:圧力3.5MPa、加熱温度300℃、加熱時間10分間
(2)樹脂:低誘電ポリイミド樹脂、厚み50μm
積層の条件:圧力4MPa、加熱温度360℃、加熱時間5分間
(3)樹脂:ポリテトラフルオロエチレン、厚み50μm
積層の条件:圧力5MPa、加熱温度350℃、加熱時間30分間
【0051】
<伝送損失>
伝送損失が小さい場合、高周波で信号伝送を行う際の、信号の減衰が抑制されるため、高周波で信号の伝送を行う回路において、安定した信号の伝送を行うことができる。そのため、伝送損失の値が小さい方が、高周波で信号の伝送を行う回路用途に用いることに適するため好ましい。表面処理銅箔を、市販の液晶ポリマー樹脂(株式会社クラレ製Vecstar CTZ-厚み50μm、ヒドロキシ安息香酸(エステル)とヒドロキシナフトエ酸(エステル)との共重合体である樹脂)と貼り合わせた後、エッチングで特性インピーダンスが50Ωのとなるようマイクロストリップ線路を形成し、HP社製のネットワークアナライザーHP8720Cを用いて透過係数を測定し、周波数20GHzおよび周波数40GHzでの伝送損失を求めた場合に、周波数20GHzにおける伝送損失が、5.0dB/10cm未満が好ましく、4.1dB/10cm未満がより好ましく、3.7dB/10cm未満が更により好ましい。
【0052】
<キャリア付銅箔>
本発明の別の実施の形態であるキャリア付銅箔は、キャリアの一方の面、又は、両方の面に、中間層、極薄銅層をこの順に有する。そして、前記極薄銅層が前述の本発明の一つの実施の形態である表面処理銅箔である。
【0053】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCP(液晶ポリマー)フィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムの形態で提供される。
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)やりん脱酸銅や電気銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。また、公知の銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0054】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば5μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には8~70μmであり、より典型的には12~70μmであり、より典型的には18~35μmである。また、原料コストを低減する観点からはキャリアの厚みは小さいことが好ましい。そのため、キャリアの厚みは、典型的には5μm以上35μm以下であり、好ましくは5μm以上18μm以下であり、好ましくは5μm以上12μm以下であり、好ましくは5μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。なお、キャリアの厚みが小さい場合には、キャリアの通箔の際に折れシワが発生しやすい。折れシワの発生を防止するため、例えばキャリア付銅箔製造装置の搬送ロールを平滑にすることや、搬送ロールと、その次の搬送ロールとの距離を短くすることが有効である。なお、プリント配線板の製造方法の一つである埋め込み工法(エンベッティド法(Enbedded Process))にキャリア付銅箔が用いられる場合には、キャリアの剛性が高いことが必要である。そのため、埋め込み工法に用いる場合には、キャリアの厚みは18μm以上300μm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であることが好ましく、35μm以上100μm以下であることが好ましく、35μm以上70μm以下であることが更により好ましい。
なお、キャリアの極薄銅層を設ける側の表面とは反対側の表面に一次粒子層及び二次粒子層を設けてもよい。キャリアの極薄銅層を設ける側の表面とは反対側の表面に一次粒子層及び二次粒子層を設けることは、キャリアを当該一次粒子層及び二次粒子層を有する表面側から樹脂基板などの支持体に積層する際、キャリアと樹脂基板が剥離し難くなるという利点を有する。
【0055】
以下に、キャリアとして電解銅箔を使用する場合の製造条件の一例を示す。
<電解液組成>
銅:90~110g/L
硫酸:90~110g/L
塩素:50~100ppm
レべリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):10~30ppm
レべリング剤2(アミン化合物):10~30ppm
上記のアミン化合物には以下の化学式のアミン化合物を用いることができる。
【0056】
なお、本発明に用いられる電解、表面処理又はめっき等に用いられる処理液の残部は特に明記しない限り水である。
【0057】
【化1】
(上記化学式中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0058】
<製造条件>
電流密度:70~100A/dm2
電解液温度:50~60℃
電解液線速:3~5m/sec
電解時間:0.5~10分間
【0059】
<中間層>
キャリア上には中間層を設ける。キャリアと中間層との間に他の層を設けてもよい。本発明で用いる中間層は、キャリア付銅箔が絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離し難い一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能となるような構成であれば特に限定されない。例えば、本発明のキャリア付銅箔の中間層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでも良い。また、中間層は複数の層であっても良い。
また、例えば、中間層はキャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層を形成し、その上にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素の水和物または酸化物、あるいは有機物からなる層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層を形成することで構成することができる。
【0060】
中間層を片面にのみ設ける場合、キャリアの反対面にはNiメッキ層などの防錆層を設けることが好ましい。なお、中間層をクロメート処理や亜鉛クロメート処理やメッキ処理で設けた場合には、クロムや亜鉛など、付着した金属の一部は水和物や酸化物となっている場合があると考えられる。
また、例えば、中間層は、キャリア上に、ニッケル、ニッケル-リン合金又はニッケル-コバルト合金と、クロムとがこの順で積層されて構成することができる。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロムとの界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。中間層におけるニッケルの付着量は好ましくは100μg/dm2以上40000μg/dm2以下、より好ましくは100μg/dm2以上4000μg/dm2以下、より好ましくは100μg/dm2以上2500μg/dm2以下、より好ましくは100μg/dm2以上1000μg/dm2未満であり、中間層におけるクロムの付着量は5μg/dm2以上100μg/dm2以下であることが好ましい。
【0061】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。中間層と極薄銅層との間には他の層を設けてもよい。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気メッキにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5~12μmであり、より典型的には1~5μm、更に典型的には1.5~5μm、更に典型的には2~5μmである。なお、キャリアの両面に極薄銅層を設けてもよい。
【0062】
<一次粒子層、二次粒子層の形成条件>
表面処理銅箔の場合は銅箔の上に、また、キャリア付銅箔の場合は極薄銅層の上に、一次粒子層を形成、または一次粒子層及び二次粒子層をこの順で形成する。一次粒子層、二次粒子層の形成条件を以下に示すが、これはあくまで好適な例を示すものであり、使用される樹脂との密着強度が十分、例えば初期ピールで0.5kg/cm以上である範囲であれば、下記に表示する以外のメッキ条件であることは何ら妨げるものではない。本発明はこれらを包含するものである。
【0063】
・一次粒子層
一次粒子めっき液(I)で処理した後、一次粒子めっき液(II)で処理する場合は以下の条件で一次粒子層を形成することが可能である。
(一次粒子めっき液(I)による処理)
<電解液組成>
銅:5~10g/L
硫酸:70~80g/L
<製造条件>
電流密度:50~55A/dm2
電解液温度:35℃
電解時間:0.5~1.6秒
(一次粒子めっき液(II)による処理)
<電解液組成>
銅:20~50g/L
硫酸:60~100g/L
<製造条件>
電流密度:4~10A/dm2
電解液温度:35~45℃
電解時間:1.4~2.5秒
【0064】
一次粒子めっき液(I)による処理のみで一次粒子層を形成する場合は以下の一次粒子めっき液(I)による処理1または、一次粒子めっき液(I)による処理2に記載の条件で実施することが可能である。
(一次粒子めっき液(I)による処理1)
<電解液組成>
銅:10~45g/L
コバルト:5~30g/L
ニッケル:5~30g/L
pH:2.8~3.2
<製造条件>
電流密度:30~45A/dm2
電解液温度:30~40℃
電解時間:0.3~0.8秒
【0065】
(一次粒子めっき液(I)による処理2)
<電解液組成>
銅:5~15g/L
ニッケル:3~30g/L
pH:2.6~3.0
<製造条件>
電流密度:50~70A/dm2
電解液温度:30~40℃
電解時間:0.3~0.9秒
【0066】
・二次粒子層
二次粒子層を形成する場合は、以下の二次粒子めっき液(I)、または、二次粒子めっき液(II)による処理で実施することが可能である。
(二次粒子めっき液(I)による処理)
<電解液組成>
銅:10~15g/L
コバルト:5~15g/L
ニッケル:5~15g/L
pH:2.8~3.2
<製造条件>
電流密度:30~35A/dm2
電解液温度:33~37℃
電解時間:0.5~1.0秒
【0067】
(二次粒子めっき液(II)による処理)
<電解液組成>
銅:5~12g/L
ニッケル:2~11g/L
pH:2.8
<製造条件>
電流密度:55~65A/dm2
電解液温度:35~40℃
電解時間:0.3~0.9秒
【0068】
<かぶせめっき>
一次粒子層の上に、または、二次粒子層が形成されている場合は二次粒子層の上に、かぶせめっきを行う。かぶせめっきによって形成する層は、例えば、Zn-Cr合金層、Ni-Mo合金層、Zn層、Co-Mo合金層、Co-Ni合金層、Ni-W合金層、Ni-P合金層、Ni-Fe合金層、Ni-Al合金層、Co-Zn合金層、Co-P合金層Zn-Co合金層、Ni層、Co層、Cr層、Al層、Sn層、Sn-Ni層、Ni-Sn層またはZn-Ni合金層等のような、Zn、Cr、Ni、Fe、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、As、Ti、Mo及びCo等からなる群から選択される一種の元素からなる金属層、または、Zn、Cr、Ni、Fe、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、As、Ti、Mo及びCoからなる群から選択される2種または3種以上を含む合金層または前述の元素群から選択される2種または3種以上の元素からなる合金層が挙げられる。
かぶせめっきは、以下のかぶせめっき液等による処理を行うことで、または、これらを組み合わせることで実施することができる。また、湿式めっきで設けることができない金属層、および/または、合金層はスパッタリング、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)等の乾式めっき法により設けることができる。
【0069】
・かぶせめっき液による処理(1)Zn-Cr
液組成:重クロム酸カリウム1~1g/L、Zn0.1~5g/L
液温:40~60℃
pH:0.5~10
電流密度:0.01~2.6A/dm2
通電時間:0.05~30秒
【0070】
・かぶせめっき液による処理(2)Ni-Mo
液組成:硫酸ニッケル270~280g/L、塩化ニッケル35~45g/L、酢酸ニッケル10~20g/L、モリブデン酸ナトリウム1~60g/L、クエン酸三ナトリウム10~50g/L、ドデシル硫酸ナトリウム50~90ppm
液温:20~65℃
pH:4~12
電流密度:0.5~5A/dm2
通電時間:0.1~5秒
【0071】
・かぶせめっき液による処理(3)Zn
液組成:Zn1~15g/L
液温:25~50℃
pH:2~6
電流密度:0.5~5A/dm2
通電時間:0.01~0.3秒
【0072】
・かぶせめっき液による処理(4)Co-Mo
液組成:Co1~20g/L、モリブデン酸ナトリウム1~60g/L、クエン酸ナトリウム10~110g/L
液温:25~50℃
pH:5~7
電流密度:1~4A/dm2
通電時間:0.1~5秒
【0073】
・かぶせめっき液による処理(5)Co-Ni
液組成:Co1~20g/L、N1~20g/L
液温:30~80℃
pH:1.5~3.5
電流密度:1~20A/dm2
通電時間:0.1~4秒
【0074】
・かぶせめっき液による処理(6)Zn-Ni
液組成:Zn1~30g/L、N1~30g/L
液温:40~50℃
pH:2~5
電流密度:0.5~5A/dm2
通電時間:0.01~0.3秒
【0075】
・かぶせめっき液による処理(7)Ni-W
液組成:Ni1~30g/L、W1~300mg/L
液温:30~50℃
pH:2~5
電流密度:0.1~5A/dm2
通電時間:0.01~0.3秒
【0076】
・かぶせめっき液による処理(8)Ni-P
液組成:Ni1~30g/L、P1~10g/L
液温:30~50℃
pH:2~5
電流密度:0.1~5A/dm2
通電時間:0.01~0.3秒
【0077】
<その他の表面処理>
かぶせめっき後、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、一次粒子層または二次粒子層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。
【0078】
本明細書において、クロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はCo、Fe、Ni、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Sn、AsおよびTi等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層や、無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層等が挙げられる。
【0079】
耐熱層、防錆層としては公知の耐熱層、防錆層を用いることができる。例えば、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む層であってもよく、ニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素からなる金属層または合金層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層は前述の元素を含む酸化物、窒化物、珪化物を含んでもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル-亜鉛合金を含む層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル-亜鉛合金層であってもよい。前記ニッケル-亜鉛合金層は、不可避不純物を除き、ニッケルを50wt%~99wt%、亜鉛を50wt%~1wt%含有するものであってもよい。前記ニッケル-亜鉛合金層の亜鉛及びニッケルの合計付着量が5~1000mg/m2、好ましくは10~500mg/m2、好ましくは20~100mg/m2であってもよい。また、前記ニッケル-亜鉛合金を含む層または前記ニッケル-亜鉛合金層のニッケルの付着量と亜鉛の付着量との比(=ニッケルの付着量/亜鉛の付着量)が1.5~10であることが好ましい。また、前記ニッケル-亜鉛合金を含む層または前記ニッケル-亜鉛合金層のニッケルの付着量は0.5mg/m2~500mg/m2であることが好ましく、1mg/m2~50mg/m2であることがより好ましい。耐熱層および/または防錆層がニッケル-亜鉛合金を含む層である場合、スルーホールやビアホール等の内壁部がデスミア液と接触したときに銅箔と樹脂基板との界面がデスミア液に浸食されにくく、銅箔と樹脂基板との密着性が向上する。
【0080】
例えば耐熱層および/または防錆層は、付着量が1mg/m2~100mg/m2、好ましくは5mg/m2~50mg/m2のニッケルまたはニッケル合金層と、付着量が1mg/m2~80mg/m2、好ましくは5mg/m2~40mg/m2のスズ層とを順次積層したものであってもよく、前記ニッケル合金層はニッケル-モリブデン合金、ニッケル-亜鉛合金、ニッケル-モリブデン-コバルト合金、ニッケル-スズ合金のいずれか一種により構成されてもよい。
【0081】
シランカップリング処理層は、公知のシランカップリング剤を使用して形成してもよく、エポキシ系シラン、アミノ系シラン、メタクリロキシ系シラン、メルカプト系シラン、ビニル系シラン、イミダゾール系シラン、トリアジン系シランなどのシランカップリング剤などを使用して形成してもよい。なお、このようなシランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。中でも、アミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤を用いて形成したものであることが好ましい。
【0082】
また、銅箔、極薄銅層、粗化処理層、耐熱層、防錆層、シランカップリング処理層またはクロメート処理層の表面に、公知の表面処理を行うことができる。
【0083】
本発明の表面処理層は前述した表面処理により形成される層を含んでもよい。例えば本発明の表面処理層は前述のかぶせめっき層、および/または、金属層、および/または、合金層、および/または、耐熱層、および/または、防錆層、および/または、クロメート処理層、および/または、シランカップリング処理層、および/または、粗化処理層を一つまたは複数含んでもよい。
【0084】
このようにして、表面処理銅箔、および/または、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層の上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔が製造される。表面処理銅箔、および/または、キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば表面処理銅箔、および/または、極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、低誘電ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて、(キャリア付銅箔の場合は熱圧着後にキャリアを剥がして)銅張積層板とし、絶縁基板に接着した表面処理銅箔、および、または、極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0085】
<樹脂層>
本発明の表面処理銅箔は、表面処理層の表面に樹脂層を備えてもよい。また、Niと、Fe、Cr、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、AsおよびTiからなる群から選択された一種以上の元素とからなる合金層、または、クロメート処理層、または、シランカップリング処理層、または、Ni-Zn合金層の表面に樹脂層を備えてもよい。樹脂層は、表面処理銅箔の最表面に形成されているのがより好ましい。
本発明のキャリア付銅箔は一次粒子層または二次粒子層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層、または、シランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。
【0086】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0087】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリマレイミド化合物、マレイミド系樹脂、芳香族マレイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、ゴム性樹脂、ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボン酸の無水物、多価カルボン酸の無水物、架橋可能な官能基を有する線状ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、リン含有フェノール化合物、ナフテン酸マンガン、2,2-ビス(4-グリシジルフェニル)プロパン、ポリフェニレンエーテル-シアネート系樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、シアノエステル樹脂、フォスファゼン系樹脂、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂、イソプレン、水素添加型ポリブタジエン、ポリビニルブチラール、フェノキシ、高分子エポキシ、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ビスフェノール、ブロック共重合ポリイミド樹脂およびシアノエステル樹脂の群から選択される一種以上を含む樹脂を好適なものとして挙げることができる。
【0088】
また前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。また、前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましい。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン化合物、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができ、又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。
前記リン含有エポキシ樹脂として公知のリンを含有するエポキシ樹脂を用いることができる。また、前記リン含有エポキシ樹脂は例えば、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0089】
前記樹脂層は公知の樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体(無機化合物及び/または有機化合物を含む誘電体、金属酸化物を含む誘電体等どのような誘電体を用いてもよい)、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでよい。また、前記樹脂層は公知の形成方法、形成装置を用いて形成してもよい。
【0090】
上述したこれらの樹脂を例えばメチルエチルケトン(MEK)、トルエンなどの溶剤に溶解して樹脂液とし、これを前記表面処理銅箔上、および/または、前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート皮膜層、あるいは前記シランカップリング剤層等を含む表面処理層の上に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100~250℃、好ましくは130~200℃であればよい。
【0091】
樹脂層付表面処理銅箔、および/または、キャリア付銅箔(樹脂付キャリア付銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついでキャリア付銅箔である場合にはキャリアを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、表面処理銅箔または極薄銅層に所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0092】
この樹脂層付表面処理銅箔、および/または、キャリア付銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0093】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
【0094】
この樹脂層の厚みは0.1~80μmであることが好ましい。樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。
【0095】
一方、樹脂層の厚みを80μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる。更には、形成された樹脂層はその可撓性が劣るので、ハンドリング時にクラックなどが発生しやすくなり、また内層材との熱圧着時に過剰な樹脂流れが起こって円滑な積層が困難になる場合がある。
【0096】
更に、樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層が有する表面処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
【0097】
プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。本発明において、「プリント配線板」にはこのように電子部品類が搭載されたプリント配線板およびプリント回路板およびプリント基板も含まれることとする。
また、当該プリント配線板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント回路板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント基板を用いて電子機器を作製してもよい。以下に、本発明に係るキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。なお、キャリア付銅箔の極薄銅層として本発明の表面処理銅箔を用いても同様にプリント配線板を製造することができる。
【0098】
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔(以下、「キャリア付銅箔」および「極薄銅層」を「表面処理銅箔」または「樹脂層付表面処理銅箔」と読み替え、また「極薄銅層側」を「表面処理層側」または「樹脂層付表面処理銅箔側」と読み替えて、プリント配線板を製造しても良い。前述のように読み替えた場合、キャリアについての記載はないものとして、プリント配線板を製造してもよい。)と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0099】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0100】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0101】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0102】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0103】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0104】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0105】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0106】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0107】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0108】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0109】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0110】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0111】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0112】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【0113】
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは一次粒子層及び二次粒子層を粗化処理層として設けた場合について説明している。
まず、図1-Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、図1-Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、図1-Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、図2-Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、図2-Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、図2-Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、図3-Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、図3-Hに示すように、ビアフィル上に、上記図1-B及び図1-Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、図3-Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、図4-Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、図4-Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
なお、上述のプリント配線板の製造方法で、「極薄銅層」をキャリアに、「キャリア」を極薄銅層に読み替えて、キャリア付銅箔のキャリア側の表面に回路を形成して、樹脂で回路を埋め込み、プリント配線板を製造することも可能である。
【0114】
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、図3-Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
【0115】
上述のようなプリント配線板の製造方法によれば、回路めっきが樹脂層に埋め込まれた構成となっているため、例えば図4-Jに示すようなフラッシュエッチングによる極薄銅層の除去の際に、回路めっきが樹脂層によって保護され、その形状が保たれ、これにより微細回路の形成が容易となる。また、回路めっきが樹脂層によって保護されるため、耐マイグレーション性が向上し、回路の配線の導通が良好に抑制される。このため、微細回路の形成が容易となる。また、図4-J及び図4-Kに示すようにフラッシュエッチングによって極薄銅層を除去したとき、回路めっきの露出面が樹脂層から凹んだ形状となるため、当該回路めっき上にバンプが、さらにその上に銅ピラーがそれぞれ形成しやすくなり、製造効率が向上する。
【0116】
なお、埋め込み樹脂には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂やBT樹脂を含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂には本明細書に記載の樹脂層および/または樹脂および/またはプリプレグを使用することができる。
【0117】
また、前記一層目に用いられるキャリア付銅箔は、当該キャリア付銅箔の表面に基板または樹脂層を有してもよい。当該基板または樹脂層を有することで一層目に用いられるキャリア付銅箔は支持され、しわが入りにくくなるため、生産性が向上するという利点がある。なお、前記基板または樹脂層には、前記一層目に用いられるキャリア付銅箔を支持する効果するものであれば、全ての基板または樹脂層を用いることが出来る。例えば前記基板または樹脂層として本願明細書に記載のキャリア、プリプレグ、樹脂層や公知のキャリア、プリプレグ、樹脂層、金属板、金属箔、無機化合物の板、無機化合物の箔、有機化合物の板、有機化合物の箔を用いることができる。
【0118】
また、本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面または前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、前記樹脂基板と積層した極薄銅層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付銅箔の表面に、樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程を含むプリント配線板の製造方法(コアレス工法)であってもよい。当該コアレス工法について、具体的な例としては、まず、本発明のキャリア付銅箔の極薄銅層側表面またはキャリア側表面と樹脂基板とを積層して積層体(銅張積層板、銅張積層体ともいう)を製造する。その後、樹脂基板と積層した極薄銅層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付銅箔の表面に樹脂層を形成する。キャリア側表面又は極薄銅層側表面に形成した樹脂層には、さらに別のキャリア付銅箔をキャリア側又は極薄銅層側から積層してもよい。また、樹脂基板又は樹脂又はプリプレグを中心として、当該樹脂基板又は樹脂又はプリプレグの両方の表面側に、キャリア/中間層/極薄銅層の順あるいは極薄銅層/中間層/キャリアの順でキャリア付銅箔が積層された構成を有する積層体あるいは「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂基板又は樹脂又はプリプレグ/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体あるいは「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂基板/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体あるいは「極薄銅層/中間層/キャリア/樹脂基板/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体を上述のプリント配線板の製造方法(コアレス工法)に用いてもよい。そして、当該積層体の両端の極薄銅層あるいはキャリアの露出した表面には、別の樹脂層を設け、さらに銅層又は金属層を設けた後、当該銅層又は金属層を加工することで回路を形成してもよい。さらに、別の樹脂層を当該回路上に、当該回路を埋め込むように設けても良い。また、このような回路及び樹脂層の形成を1回以上行ってもよい(ビルドアップ工法)。そして、このようにして形成した積層体(以下、積層体Bとも言う)について、それぞれのキャリア付銅箔の極薄銅層またはキャリアをキャリアまたは極薄銅層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。なお、前述のコアレス基板の作製には、2つのキャリア付銅箔を用いて、後述する極薄銅層/中間層/キャリア/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有する積層体や、キャリア/中間層/極薄銅層/極薄銅層/中間層/キャリアの構成を有する積層体や、キャリア/中間層/極薄銅層/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有する積層体を作製し、当該積層体を中心に用いることもできる。これら積層体(以下、積層体Aとも言う)の両側の極薄銅層またはキャリアの表面に樹脂層及び回路の2層を1回以上設け、樹脂層及び回路の2層を1回以上設けた後に、それぞれのキャリア付銅箔の極薄銅層またはキャリアをキャリアまたは極薄銅層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。前述の積層体は、極薄銅層の表面、キャリアの表面、キャリアとキャリアとの間、極薄銅層と極薄銅層との間、極薄銅層とキャリアとの間には他の層を有してもよい。他の層は樹脂基板または樹脂層であってもよい。なお、本明細書において「極薄銅層の表面」、「極薄銅層側表面」、「極薄銅層表面」、「キャリアの表面」、「キャリア側表面」、「キャリア表面」、「積層体の表面」、「積層体表面」は、極薄銅層、キャリア、積層体が、極薄銅層表面、キャリア表面、積層体表面に他の層を有する場合には、当該他の層の表面(最表面)を含む概念とする。また、積層体は極薄銅層/中間層/キャリア/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有することが好ましい。当該積層体を用いてコアレス基板を作製した際、コアレス基板側に極薄銅層が配置されるため、モディファイドセミアディティブ法を用いてコアレス基板上に回路を形成しやすくなるためである。また、極薄銅層の厚みは薄いため、当該極薄銅層の除去がしやすく、極薄銅層の除去後にセミアディティブ法を用いて、コアレス基板上に回路を形成しやすくなるためである。
なお、本明細書において、「積層体A」または「積層体B」と特に記載していない「積層体」は、少なくとも積層体A及び積層体Bを含む積層体を示す。
【0119】
なお、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付銅箔または上述の積層体(積層体Aを含む)の端面の一部または全部を樹脂で覆うことにより、ビルドアップ工法でプリント配線板を製造する際に、中間層または積層体を構成する1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔の間のへの薬液の染み込みを防止することができ、薬液の染み込みによる極薄銅層とキャリアの分離やキャリア付銅箔の腐食を防止することができ、歩留りを向上させることができる。ここで用いる「キャリア付銅箔の端面の一部または全部を覆う樹脂」または「積層体の端面の一部または全部を覆う樹脂」としては、樹脂層に用いることができる樹脂または公知の樹脂を使用することができる。また、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付銅箔または積層体において平面視したときにキャリア付銅箔または積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)の外周の少なくとも一部が樹脂又はプリプレグで覆ってもよい。また、上述のコアレス基板の製造方法で形成する積層体(積層体A)は、一対のキャリア付銅箔を互いに分離可能に接触させて構成されていてもよい。また、当該キャリア付銅箔において平面視したときにキャリア付銅箔または積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)の外周の全体又は積層部分の全面にわたって樹脂又はプリプレグで覆われてなるものであってもよい。また、平面視した場合に樹脂又はプリプレグはキャリア付銅箔または積層体または積層体の積層部分よりも大きい方が好ましく、当該樹脂又はプリプレグをキャリア付銅箔または積層体の両面に積層し、キャリア付銅箔または積層体が樹脂又はプリプレグにより袋とじ(包まれている)されている構成を有する積層体とすることが好ましい。このような構成とすることにより、キャリア付銅箔または積層体を平面視したときに、キャリア付銅箔または積層体の積層部分が樹脂又はプリプレグにより覆われ、他の部材がこの部分の側方向、すなわち積層方向に対して横からの方向から当たることを防ぐことができるようになり、結果としてハンドリング中のキャリアと極薄銅層またはキャリア付銅箔同士の剥がれを少なくすることができる。また、キャリア付銅箔または積層体の積層部分の外周を露出しないように樹脂又はプリプレグで覆うことにより、前述したような薬液処理工程におけるこの積層部分の界面への薬液の浸入を防ぐことができ、キャリア付銅箔の腐食や侵食を防ぐことができる。なお、積層体の一対のキャリア付銅箔から一つのキャリア付銅箔を分離する際、またはキャリア付銅箔のキャリアと銅箔(極薄銅層)を分離する際には、樹脂又はプリプレグで覆われているキャリア付銅箔又は積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)が樹脂又はプリプレグ等により強固に密着している場合には、当該積層部分等を切断等により除去する必要が生じる場合がある。
【0120】
本発明のキャリア付銅箔をキャリア側又は極薄銅層側から、もう一つの本発明のキャリア付銅箔のキャリア側または極薄銅層側に積層して積層体を構成してもよい。また、前記一つのキャリア付銅箔の前記キャリア側表面又は前記極薄銅層側表面と前記もう一つのキャリア付銅箔の前記キャリア側表面又は前記極薄銅層側表面とが、必要に応じて接着剤を介して、直接積層させて得られた積層体であってもよい。また、前記一つのキャリア付銅箔のキャリア又は極薄銅層と、前記もう一つのキャリア付銅箔のキャリア又は極薄銅層とが接合されていてもよい。ここで、当該「接合」は、キャリア又は極薄銅層が表面処理層を有する場合は、当該表面処理層を介して互いに接合されている態様も含む。また、当該積層体の端面の一部または全部が樹脂により覆われていてもよい。
【0121】
キャリア同士、極薄銅層同士、キャリアと極薄銅層、キャリア付銅箔同士の積層は、単に重ね合わせる他、例えば以下の方法で行うことができる。
(a)冶金的接合方法:融接(アーク溶接、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接、MIG(メタル・イナート・ガス)溶接、抵抗溶接、シーム溶接、スポット溶接)、圧接(超音波溶接、摩擦撹拌溶接)、ろう接;
(b)機械的接合方法:かしめ、リベットによる接合(セルフピアッシングリベットによる接合、リベットによる接合)、ステッチャー;
(c)物理的接合方法:接着剤、(両面)粘着テープ
【0122】
一方のキャリアの一部若しくは全部と他方のキャリアの一部若しくは全部若しくは極薄銅層の一部若しくは全部とを、上記接合方法を用いて接合することにより、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層を積層し、キャリア同士またはキャリアと極薄銅層を分離可能に接触させて構成される積層体を製造することができる。一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが弱く接合されて、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが積層されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層との接合部を除去しないでも、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とは分離可能である。また、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが強く接合されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが接合されている箇所を切断や化学研磨(エッチング等)、機械研磨等により除去することにより、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層を分離することができる。
【0123】
また、このように構成した積層体に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を少なくとも1回形成した後に、前記積層体のキャリア付銅箔から前記極薄銅層又はキャリアを剥離させる工程を実施することでコアを有さないプリント配線板を作製することができる。なお、当該積層体の一方または両方の表面に、樹脂層と回路との2層を設けてもよい。
前述した積層体に用いる樹脂基板、樹脂層、樹脂、プリプレグは、本明細書に記載した樹脂層であってもよく、本明細書に記載した樹脂層に用いる樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでもよい。なお、前述のキャリア付銅箔または積層体は平面視したときに樹脂又はプリプレグ又は樹脂基板又は樹脂層よりも小さくてもよい。
【0124】
また、樹脂基板はプリント配線板等に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム、LCP(液晶ポリマー)フィルム、フッ素樹脂等を使用する事ができる。なお、LCP(液晶ポリマー)フィルムやフッ素樹脂フィルムを用いた場合、ポリイミドフィルムを用いた場合よりも、当該フィルムと表面処理銅箔とのピール強度が小さくなる傾向にある。よって、LCP(液晶ポリマー)フィルムやフッ素樹脂フィルムを用いた場合には、銅回路を形成後、銅回路をカバーレイで覆うことによって、当該フィルムと銅回路とが剥がれにくくし、ピール強度の低下による当該フィルムと銅回路との剥離を防止することができる。
【実施例
【0125】
以下、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。すなわち、本発明に含まれる他の態様または変形を包含するものである。
実施例1~2、4~6、9~16及び比較例1~2、4、6~7の原箔には、厚さ12μmの標準圧延銅箔TPC(JIS H3100 C1100に規格されているタフピッチ銅、JX金属製、表面の十点平均粗さRz=0.7μm)を使用した。実施例3、8及び比較例3、5の原箔には、厚さ12μmの電解銅箔(JX金属製 HLP箔、析出面(M面)の表面の十点平均粗さRz=0.7μm)を使用し、析出面(M面)に表面処理層を設けた。
また、実施例7及び比較例8の原箔には以下の方法により製造したキャリア付銅箔を用いた。
実施例7は、厚さ18μmの電解銅箔(JX金属製 JTC箔)をキャリアとして準備し、比較例8については上述の厚さ18μmの標準圧延銅箔TPCをキャリアとして準備した。そして下記条件で、キャリアの表面に中間層を形成し、中間層の表面に極薄銅層を形成した。なお、キャリアが電解銅箔の場合には光沢面(S面)に中間層を形成した。
【0126】
・実施例7、比較例8
<中間層>
(1)Ni層(Niメッキ)
キャリアに対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続メッキラインで電気メッキすることにより1000μg/dm2の付着量のNi層を形成した。具体的なメッキ条件を以下に記す。
硫酸ニッケル:270~280g/L
塩化ニッケル:35~45g/L
酢酸ニッケル:10~20g/L
ホウ酸:30~40g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等
ドデシル硫酸ナトリウム:55~75ppm
pH:4~6
液温:55~65℃
電流密度:10A/dm2
(2)Cr層(電解クロメート処理)
次に、(1)にて形成したNi層表面を水洗及び酸洗後、引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続メッキライン上でNi層の上に11μg/dm2の付着量のCr層を以下の条件で電解クロメート処理することにより付着させた。
重クロム酸カリウム1~10g/L、亜鉛0g/L
pH:7~10
液温:40~60℃
電流密度:2A/dm2
<極薄銅層>
次に、(2)にて形成したCr層表面を水洗及び酸洗後、引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続メッキライン上で、Cr層の上に厚み1.5μmの極薄銅層を以下の条件で電気メッキすることにより形成し、キャリア付銅箔を作製した。
銅濃度:90~110g/L
硫酸濃度:90~110g/L
塩化物イオン濃度:50~90ppm
レベリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):10~30ppm
レベリング剤2(アミン化合物):10~30ppm
なお、レベリング剤2として下記のアミン化合物を用いた。
【化2】
(上記化学式中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
電解液温度:50~80℃
電流密度:100A/dm2
電解液線速:1.5~5m/sec
【0127】
続いて、圧延銅箔、電解銅箔またはキャリア付銅箔の極薄銅層表面に、表1~3に示す条件範囲で一次粒子層または、一次粒子層及び二次粒子層を形成した。表1の一次粒子電流条件欄に電流条件、クーロン量が2つ記載されている例は、左に記載されている条件でメッキを行った後に、右に記載されている条件で更にメッキを行ったことを意味する。例えば、実施例1の一次粒子電流条件欄には「(50A/dm2、65As/dm2)+(8A/dm2、16As/dm2)」と記載されているが、これは一次粒子を形成する電流密度を50A/dm2、クーロン量を65As/dm2でメッキを行った後に、更に一次粒子を形成する電流密度を8A/dm2、クーロン量を16As/dm2としてメッキを行ったことを示す。
【0128】
続いて、一次粒子層の上に、または二次粒子層が形成されているものは二次粒子層の上に、表1、4に示す条件範囲でかぶせめっきを形成した。なお、かぶせめっきの欄に複数の処理を行ったことが記載されている場合には、左側の処理から順に行ったことを意味する。例えば、実施例2において表1に「かぶせめっき条件(表4のかぶせめっき液)」の欄に「(2)Ni―Mo+(1)Zn―Cr」と記載されており、「かぶせめっき通電時間(秒)」の欄に「(2)0.17,(1)1.0」と記載されている。これは実施例2において、かぶせめっきを表4の(2)Ni-Moめっき、(1)Zn-Crめっきの順に行い、その通電時間をそれぞれ、(2)Ni-Moめっきは0.17秒、(1)Zn-Crめっきは1.0秒としたことを意味する。
【0129】
<一次粒子層及び二次粒子層及びかぶせめっき以外の表面処理層>
かぶせめっき形成後、実施例3、5、比較例6については以下の電解クロメート処理を行った。それ以外の実施例、比較例については以下の電解クロメート処理を行わなかった。
・電解クロメート処理
液組成:重クロム酸カリウム1~1g/L
液温:40~60℃
pH:0.5~10
電流密度:0.01~2.6A/dm2
通電時間:0.05~30秒
その後、実施例3~5、10について以下のジアミノシランを用いたシランカップリング処理を行った。
・シランカップリング処理
シランカップリング剤:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
シランカップリング剤濃度:0.5~1.5vol%
処理温度:20~70℃
処理時間:0.5~5秒
【0130】
(十点平均粗さRzの測定)
粗化処理層側表面の表面粗さRz(十点平均粗さ)をJIS B0601-1982に準拠して株式会社小阪研究所製接触粗さ計Surfcorder SE-3C触針式粗度計を用いて測定した。Rzを任意に10箇所測定し、そのRzの10箇所の平均値をRzの値とした。
【0131】
(伝送損失の測定)
各サンプルについて、液晶ポリマー樹脂基板(株式会社クラレ製Vecstar CTZ-厚み50μm、ヒドロキシ安息香酸(エステル)とヒドロキシナフトエ酸(エステル)との共重合体である樹脂)と貼り合わせた後、エッチングで特性インピーダンスが50Ωのとなるようマイクロストリップ線路を形成し、HP社製のネットワークアナライザーN5247Aを用いて透過係数を測定し、周波数20GHzでの伝送損失を求めた。周波数20GHzにおける伝送損失の評価として、4.0dB/10cm以下を○、4.1dB/10cm以上を×とした。
【0132】
(ピール強度の測定)
銅箔の表面処理面と表2に記載の樹脂基板を熱プレスにて張り合わせて銅張積層板を作製し、一般的な塩化銅回路エッチング液を使用して10mm幅の回路を作製し、銅箔を基板から剥いて、90°方向に引っ張りながら初期ピール強度を測定した。また、作製した回路を180℃の大気下オーブンに投入し、10日後に取り出し、常態ピールと同様に90°方向に引っ張りながら、加熱後のピール強度を測定した。ピール強度の評価は、初期ピール強度が0.5kg/cm以上であり、加熱後ピール強度が0.3kg/cm以上である場合を○、初期ピール強度が0.5kg/cm未満もしくは加熱後ピール強度が0.3kg/cm未満である場合を×とした。
また、表2に記載の積層樹脂について、「LCP」は液晶ポリマーであり、「低誘電PI」は低誘電ポリイミドであり、「PTFE」はポリテトラフルオロエチレンである。
液晶ポリマーにはヒドロキシ安息香酸(エステル)とヒドロキシナフトエ酸(エステル)との共重合体である液晶ポリマー樹脂であるクラレ社製vecstor CT-Zを用いた。
低誘電ポリイミドには、誘電正接の値が0.002であるポリイミドを用いた。なお本明細書では誘電正接の値が0.01以下であるポリイミドを、低誘電ポリイミドとする。誘電正接は、一般社団法人 日本電子回路工業会の「プリント配線板用銅張積層板試験方法 比誘電率及び誘電正接」JPCA-TM001-2007に記載されているトリプレート共振器法により測定可能である。
なお、前述の銅箔と樹脂基板の熱プレス条件は以下の通りとした。
液晶ポリマーを樹脂基板とした場合:圧力3.5MPa、加熱温度300℃、加熱時間10分間
低誘電ポリイミドを樹脂基板とした場合:圧力4MPa、加熱温度360℃、加熱時間5分間
ポリテトラフルオロエチレンを樹脂基板とした場合:圧力5MPa、加熱温度350℃、加熱時間30分間
前述の樹脂基材の厚みは50μmである。
上記製造条件及び評価結果を表1~4に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
(評価結果)
実施例1~16は、いずれも電送損失が良好に抑制されており、ピール強度も良好であった。
比較例1、6は、表面処理層におけるZnの付着量が150μg/dm2未満であり、さらに表面処理層におけるZn及びMoの合計付着量が200μg/dm2未満であり、ピール強度が不良であった。
比較例2は、表面処理層におけるCoの付着量が3000μg/dm2超であったため伝送損失が不良であった。
比較例3、8は、表面処理層の最表面の十点平均粗さRzが1.5μm超であったため、伝送損失が不良であった。
比較例4は、一次粒子層及び二次粒子層を形成しておらず、ピール強度が不良であった。
比較例5は、表面処理層におけるZnの付着量が150μg/dm2未満であり、またZn及びMoの合計付着量が200μg/dm2未満であり、さらに表面処理層の最表面の十点平均粗さRzが1.5μm超であったため、電送損失及びピール強度が不良であった。
比較例7は、表面処理層にNiを含んでいるが、当該Niの付着量が800μg/dm2を超えたため、伝送損失が不良であった。
図1
図2
図3
図4