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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】保護膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231226BHJP
   B05B 17/06 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L21/78 M
B05B17/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019213178
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021086877
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 暁明
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-051271(JP,A)
【文献】特開2013-116443(JP,A)
【文献】特公昭39-24836(JP,B2)
【文献】特開昭55-120472(JP,A)
【文献】特開2017-144428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持テーブルの保持面に保持される被加工物の上面の全面に、液状樹脂を塗布することによって保護膜を形成する保護膜形成装置であって、
該保持面に保持された被加工物の上面に、該保持面の上方から該液状樹脂を霧状にして噴射する液状樹脂供給ノズルを備え、
該液状樹脂供給ノズルは、
該液状樹脂を内部に一時的に貯められる直方体の箱と、該箱の下面に形成される長方形の噴射口と、該箱内に該噴射口に対向して配置される長尺板状の超音波発振部と、該箱内における該超音波発振部と該噴射口との間に該液状樹脂を供給するための液状樹脂供給口と、を備え、
該超音波発振部に高周波電力を供給する高周波電力供給部をさらに備え、
該箱内に一時的に貯められている該液状樹脂に、該超音波発振部から発振される超音波振動を伝播させることにより、該噴射口から該液状樹脂を霧状にして被加工物に噴射し、被加工物の上面に保護膜を形成する、保護膜形成装置。
【請求項2】
該超音波発振部は、円弧形状の断面を有し、該噴射口に向かう面側が凹んでいる、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、半導体デバイスの製造において、被加工物の表面に格子状に分割予定ラインを形成することにより、回路が形成されたデバイス領域が区画される。被加工物を分割予定ラインに沿って分割する分割工程により、個々のチップが得られる。
【0003】
この分割加工に関して、被加工物に対し分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射するアブレーション加工が提案されている。アブレーション加工では、被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射する。このレーザー光線のエネルギーが被加工物におけるレーザー光線の照射部位で吸収されて、照射部位のエネルギーがバンドギャップエネルギーに達すると、原子の結合力が破壊されて、照射部位が除去される。このとき、被加工物の上面におけるレーザー光線のエネルギー拡散によって、被加工物が溶融してデブリが発生し、このデブリが飛散して被加工物の表面を汚染することがある。
【0004】
そこで、特許文献2に開示の技術では、被加工物の表面に水溶性の保護膜を形成し、飛散するデブリを保護膜に付着させている。これにより、被加工物の表面に、デブリが付着しにくくなる。また、この保護膜を薄く形成するために、特許文献3に開示の技術では、エアの供給によって霧状とされた液状樹脂を、被加工物の表面に塗布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-305420号公報
【文献】特開2006-140311号公報
【文献】特開2010-012508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、細かな霧状の液状樹脂を生成するためにエアの量を多くすると、被加工物の上面に向かって噴出されるエアの風圧によって、塗布された液状樹脂に、厚みのバラツキ(斑)が発生してしまう。
【0007】
したがって、本発明の目的は、被加工物の表面に液状樹脂を塗布することにより、斑の少ない略均一な厚みの保護膜を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保護膜形成装置(本保護膜形成装置)は、保持テーブルの保持面に保持される被加工物の上面の全面に、液状樹脂を塗布することによって保護膜を形成する保護膜形成装置であって、該保持面に保持された被加工物の上面に、該保持面の上方から該液状樹脂を霧状にして噴射する液状樹脂供給ノズルを備え、該液状樹脂供給ノズルは、該液状樹脂を内部に一時的に貯められる直方体の箱と、該箱の下面に形成される長方形の噴射口と、該箱内に該噴射口に対向して配置される長尺板状の超音波発振部と、該箱内における該超音波発振部と該噴射口との間に該液状樹脂を供給するための液状樹脂供給口と、を備え、該超音波発振部に高周波電力を供給する高周波電力供給部をさらに備え、該箱内に一時的に貯められている該液状樹脂に、該超音波発振部から発振される超音波振動を伝播させることにより、該噴射口から該液状樹脂を霧状にして被加工物に噴射し、被加工物の上面に保護膜を形成する。
【0009】
なお、本保護膜形成装置では、該超音波発振部は、円弧形状の断面を有し、該噴射口に向かう面側が凹んでいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本保護膜形成装置では、被加工物の上面に保護膜を形成するために、超音波振動によって霧状となった液状樹脂を、被加工物の上面に噴射している。このため、エアの強い風圧によって液状樹脂を霧状とする場合とは異なり、塗布された液状樹脂が、強い風圧を受けることがない。したがって、被加工物の上面に、厚みのバラツキ(斑)の少ない、略均一な厚みの保護膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】被加工物の一例であるウェーハを示す斜視図である。
図2】実施形態1にかかる保護膜形成装置の構成を示す斜視図である。
図3図2に示した保護膜形成装置における液状樹脂供給ノズルを示す説明図である。
図4図2に示した保護膜形成装置における他の液状樹脂供給ノズルを示す説明図である。
図5図4に示した液状樹脂供給ノズルの詳細な構成を示す説明図である。
図6】実施形態2にかかる保護膜形成装置の構成を示す説明図である。
図7図6に示した保護膜形成装置における液状樹脂供給ノズルの構成を示す説明図である。
図8】超音波振動板の構成を示す斜視図である。
図9図7におけるA-A線断面図である。
図10】液状樹脂供給ノズルからウェーハに霧上の液状樹脂が噴射されている様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
図1に示すウェーハWは、被加工物の一例であり、円板状の半導体ウェーハである。ウェーハWの表面Waには、格子状の分割予定ラインMが形成されている。分割予定ラインMによって区画された各領域には、デバイスDが形成されている。ウェーハWの裏面Wbは、デバイスDを有していない。ウェーハWの外周縁WEには、ウェーハWの結晶方位を示すノッチNが設けられている。
【0013】
図2に示す保護膜形成装置1は、このようなウェーハWの表面Waに対して、保護膜を形成する。
保護膜形成装置1は、ウェーハWを保持する保持テーブル10と、保持テーブル10に保持されたウェーハWに液状樹脂を噴射する液状樹脂供給ノズル2と、保持テーブル10を囲む図示しないケースとを備えている。
【0014】
保持テーブル10は、ウェーハWよりも小さい円盤状に形成されている。保持テーブル10は、ウェーハWを吸着保持する保持面10aと、保持面10aを支持する枠体10bとを備える。保持面10aは、ポーラス部材を含んでおり、図示しない吸引源に連通されることにより、保持面10a上に載置されたウェーハWの裏面Wbを吸着保持する。
【0015】
本実施形態では、保護膜形成装置1は、このような保持テーブル10の保持面10aに保持されるウェーハWの上面である表面Waの全面に、液状樹脂を塗布することによって保護膜を形成する。
【0016】
保持テーブル10の下側には、保持テーブル回転手段13が配設されている。保持テーブル回転手段13は、保持テーブル10の回転軸であるスピンドル14、および、スピンドル14を回転させるためのモータ15を含んでいる。モータ15は、スピンドル14を介して、保持テーブル10に回転駆動力を伝達する。これにより、保持テーブル10は、ウェーハWを保持した状態で、スピンドル14を中心として、たとえばA方向に高速回転する。
【0017】
液状樹脂供給ノズル2は、保持テーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの表面Waに、保持面10aの上方から、液状樹脂を霧状にして噴射する。
図2に示すように、液状樹脂供給ノズル2は、保持テーブル10の上方において旋回可能な液状樹脂供給パイプ12の先端に取り付けられている。
【0018】
液状樹脂供給パイプ12は、水平方向に延在しており、その後端側には、樹脂チューブおよび継手(ともに図示せず)を介して、液状樹脂供給源19が連通している。液状樹脂供給源19は、ポンプ等を備え、液状樹脂供給パイプ12を介して、液状樹脂供給ノズル2に、液状樹脂を送出するように構成されている。
【0019】
また、液状樹脂供給パイプ12の後端には、液状樹脂供給パイプ12を保持して回転する、液状樹脂供給パイプ12の旋回軸18が連結されている。旋回軸18は、Z軸方向に延びており、その先端に、液状樹脂供給パイプ12の後端が取り付けられている。旋回軸18の下端には、旋回軸18を回転させるための旋回モータ17が取り付けられている。
【0020】
なお、液状樹脂供給パイプ12は、旋回軸18の上端から保持テーブル10の中心まで届く長さを有している。これにより、旋回軸18は、液状樹脂供給パイプ12の先端に配設された液状樹脂供給ノズル2を、保持テーブル10に保持されたウェーハWの外周縁から中心まで、移動させることが可能となっている。
【0021】
液状樹脂供給ノズル2は、超音波振動を伝播させた液状樹脂を、ウェーハWの表面Waに噴射する装置である。図3に示すように、液状樹脂供給ノズル2は、液状樹脂供給源19から供給される液状樹脂Lを一時的に溜める箱20、箱20の下面に形成された噴射口24a、および、噴射口24aに対向して箱20内に配設される圧電振動板3、を備えている。
【0022】
箱20は、たとえば、略円柱状に形成されており、底板21と、底板21にZ軸方向において対向する天板22と、底板21と天板22とに連結する略円筒状の側壁23とを備えている。
【0023】
箱20内は、圧電振動板3によって、上下の2部屋、即ち、圧電振動板3よりも上側の第一室20Aと、圧電振動板3よりも下側の第二室20Bとに区画されている。そして、下側の第二室20B側の側壁23には、側壁23を貫通する液状樹脂供給口23aが形成されている。
【0024】
液状樹脂供給口23aは、箱20内における圧電振動板3と噴射口24aとの間に液状樹脂Lを供給するために用いられる。この液状樹脂供給口23aには、図2に示した液状樹脂供給パイプ12が連通されている。したがって、図3に示すように、液状樹脂供給源19から供給される液状樹脂Lは、箱20の第二室20B内に、一時的に溜められる。
【0025】
底板21には、-Z方向側に突き出るノズル部24が形成されている。ノズル部24は、先端に向かうにつれて、徐々に縮径されている。そして、ノズル部24は、先端に、箱20の第二室20B内に溜められた液状樹脂Lを噴射する噴射口24aを備えている。なお、ノズル部24は、噴射口24aに向けて縮径されていない形状であってもよい。
【0026】
圧電振動板3は、超音波発振部の一例である。圧電振動板3は、箱20の第二室20B内に溜められた液状樹脂Lに、超音波振動Sを伝播する。圧電振動板3は、箱20内において、噴射口24aに対向する位置に配置されている。圧電振動板3は、円弧形状の断面を有し、噴射口24aに向かう面側が凹んでいる。すなわち、圧電振動板3は、ドーム部30と、ドーム部30の外周縁から径方向に外側に張り出したツバ部31と、ツバ部31の外周縁から径方向に外側に張り出した環状板32と、を備える。
【0027】
ドーム部30は、第1電極板25、圧電素材27および第2電極板26を備えており、これらは、Z軸方向に沿って互いに重ねられている。
第1電極板25、圧電素材27および第2電極板26は、たとえば、セラミックスの一種であるピエゾ素子で構成されている。第1電極板25、圧電素材27、および第2電極板26は、ドーム形状を有するように形成されている。
【0028】
第1電極板25、圧電素材27および第2電極板26は、凹んだ側が噴射口24aに向くように、互いに重ねられている。第1電極板25および第2電極板26には、図示しない電極が取り付けられている。これらの電極および配線28を介して、第1電極板25および第2電極板26に、高周波電源29が接続されている。
【0029】
高周波電源29は、高周波電力供給部の一例であり、圧電振動板3に高周波電力を供給する。すなわち、高周波電源29は、圧電振動板3のドーム部30における第1電極板25および第2電極板26に、高周波の交流電圧を印加する。これにより、高周波電源29は、高周波電力を圧電振動板3に供給する。
【0030】
第2電極板26の凸側の上面は、圧電素材27を挟んで、第1電極板25の下面に密着している。第2電極板26の凹んでいる側の下面、即ち、噴射口24aに対向するドーム部30の下面は、箱20の第二室20B内に一時的に溜められた液状樹脂Lに向けて超音波振動Sを輻射する輻射面26bとなる。
【0031】
なお、本実施形態では、圧電振動板3の輻射面26bが、球形の一部の内面に類似のドーム形状を有するように形成されている。これに代えて、輻射面26bは、すり鉢の内面に類似のドーム形状を有するように形成されていてもよい。すなわち、輻射面26bは、噴射口24aに向かって超音波振動Sが集中するように構成されていればよい。
【0032】
円環板状のツバ部31は、ドーム部30の第2電極板26の外周縁から、径方向に外側に、一体的に張り出している。このツバ部31は、ドーム部30と同様に、ピエゾ素子等で構成される。
【0033】
環状板32は、ツバ部31の外周縁から、径方向に外側に張り出している。この環状板32は、その外周部分が箱20の側壁23に支持されていて、ドーム部30を箱20内で中空固定している。環状板32の厚みは、たとえば、0.1mmから0.2mmの範囲にある。環状板32の環状幅(リング幅)は、たとえば、3.0mmである。環状板32の材質は、たとえばステンレスである。
【0034】
環状板32の外周部分における2.0mm幅の部分は、側壁23に支持されている。これにより、ドーム部30の外周と側壁23との間隔が、1.0mmとなる。そして、環状板32は、側壁23に支持されていない1.0mmの部分によって、超音波振動Sを増幅させる。なお、ドーム部30は、たとえば、輻射面26bの直径が16mmとなり、かつ、ツバ部31の直径が20mmとなるように、形成されている。
【0035】
以下に、図2および図3に示す保護膜形成装置1における、ウェーハWの表面Waに保護膜を形成する動作について説明する。
【0036】
まず、作業者は、ウェーハWの中心が保持テーブル10の保持面10aの中心におおよそ合致するように、保持面10a上に、表面Waを上に向けて、ウェーハWを載置する。そして、図示しない吸引源が作動して生み出された吸引力が、保持面10aに伝達されることで、保持テーブル10の保持面10aがウェーハWの裏面Wbを吸着保持する。
【0037】
その後、図3に示すように、スピンドル14が、ウェーハWを保持している保持テーブル10を、矢印A方向に回転させる。また、図2に示す旋回モータ17が、旋回軸18を回転させる。これにより、液状樹脂供給ノズル2が、保持テーブル10の外側の退避位置からウェーハWの上方に移動され、噴射口24aがウェーハWの表面Waに対向する。
【0038】
その後、液状樹脂供給源19から、加圧された液状樹脂Lが送出される。液状樹脂Lは、液状樹脂供給パイプ12を通り、液状樹脂供給ノズル2の箱20の第二室20Bに、一時的に溜められる。
【0039】
箱20の第二室20B内に所定量の液状樹脂Lが溜められていき、第二室20B内の圧力が上昇すると、液状樹脂Lが、噴射口24aから下方に向かって噴射される。なお、液状樹脂供給源19から液状樹脂Lが供給され続けることで、第二室20B内における液状樹脂Lの量は、所定量に維持される。
【0040】
また、この際、高周波電源29が、圧電振動板3に高周波電力を供給する。即ち、高周波電源29によって、所定の周波数(たとえば、1MHz~3MHz)で、電圧の印加のオンとオフとが繰り返される。これにより、第1電極板25および圧電素材27に、上下方向における伸縮運動が発生する。そして、この伸縮運動が、機械的な超音波振動Sとなる。
【0041】
第2電極板26は、第1電極板25の振動に共振することにより、噴射口24a側から見てなだらかに凹んだ凹面である輻射面26bから、箱20の第二室20Bに一時的に溜められた液状樹脂Lに超音波振動Sを伝播させる。また、凹面である輻射面26bから該液状樹脂Lに伝播される超音波振動Sは、噴射口24aに向かって集中する。
【0042】
このような超音波振動の伝播により、ノズル部24の噴射口24aから外部に向かって噴射される液状樹脂Lが、細かな霧状となる。すなわち、本実施形態では、ノズル部24の噴射口24aからウェーハWの表面Waに向かって、霧状の液状樹脂Lsが噴射される。
【0043】
ここで、超音波振動Sを発生するドーム部30が、箱20の側壁23に、環状板32を介して保持されている。このため、圧電振動板3に高周波電力を供給した際に、ドーム部30が振動しやすくなる。これにより、液状樹脂Lに、効果的に、環状板32で増幅された振幅の大きな超音波振動を伝播させることができる。
【0044】
また、この際、旋回モータ17によって旋回軸18が回転されることにより、液状樹脂供給ノズル2が、ウェーハWの中心上方を通過するようにして、保持テーブル10とともに回転しているウェーハWの上方を、所定角度で往復するように旋回移動する。これにより、ウェーハWの表面Wa全面に、霧状の液状樹脂Lsが噴射される。このようにして、霧状の液状樹脂Lsが、ウェーハWの表面Waの全面に塗布され、表面Waの全面を覆う保護膜となる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、表面Waの全面を覆う保護膜を形成するために、超音波振動Sによって霧状となった液状樹脂Lsを、ウェーハWの表面Waの全面に噴射している。このため、エアの強い風圧によって液状樹脂を霧状とする場合とは異なり、塗布された液状樹脂Lsが、強い風圧を受けることがない。したがって、ウェーハWの表面Waに、厚みのバラツキ(斑)の少ない、略均一な厚みの保護膜を形成することができる。
【0046】
また、本実施形態では、図3に示す環状板32によって、超音波振動を発生させるドーム部30が、箱20の側壁23に、直接に保持されていない。このため、圧電振動板3に高周波電力を供給した際に、ドーム部30が振動しやすくなる。したがって、環状板32によって増幅された大きい振幅を有する超音波振動を、液状樹脂に効果的に伝播させることができる。
【0047】
なお、本実施形態にかかる保護膜形成装置1は、図3に示した液状樹脂供給ノズル2に代えて、図4および図5に示すホーン型の液状樹脂供給ノズル4を備えてもよい。この液状樹脂供給ノズル4も、保持面10aに保持されたウェーハWの表面Waに、保持面10aの上方から液状樹脂を霧状にして噴射するものである。
【0048】
図5に示す液状樹脂供給ノズル4は、液状樹脂供給源19から供給される液状樹脂Lを一時的に溜める筒状の箱(水溜部)40と、箱40の下面に形成される噴射口41と、箱40内に噴射口41に対向して配置される超音波発振部43とを有している。噴射口41は、箱40の下方から液状樹脂Lを噴射する。超音波発振部43は、噴射口41に対向して箱40の上方に配設されている。超音波発振部43は、箱40内の液状樹脂Lに超音波振動Sを伝播させる。
【0049】
筒状の箱40は、SUS等からなり、一方の端側の噴射口41に向けて、徐々に縮径している。箱40の側壁50には、液状樹脂供給口50aが貫通形成されている。液状樹脂供給口50aには、開閉バルブ51を介して、液状樹脂供給源19が連通している。液状樹脂供給口50aは、超音波発振部43と噴射口41との間の箱40内に、液状樹脂Lを供給するために用いられる。
なお、箱40は、噴射口41に向けて縮径していない形状であってもよい。
【0050】
液状樹脂供給ノズル4は、箱40に一体的に連結し、箱40よりも大径の筒状の胴体部44を備えている。胴体部44の自由端側(+Z方向側)には、超音波発振部43が進入する進入口44aが形成されている。
【0051】
図5に示した超音波発振部43は、円柱状に形成されている。すなわち、超音波発振部43は、円柱形状の棒状体である第1の円柱部45と、第1の円柱部45の直径より大きい直径を有する第2の円柱部46と、第2の円柱部46の上方に配設される超音波振動板49と、を備えている。
【0052】
第1の円柱部45は、箱40に、非接触で収容されている。第2の円柱部46は、第1の円柱部45と中心軸を同じくして、第1の円柱部45に連結されている。第1の円柱部45および第2の円柱部46は、たとえば、所定の金属(たとえば、チタン合金又はアルミ合金等)から構成される。
【0053】
第1の円柱部45の根元54は、第2の円柱部46に、一体的に連結されている。第1の円柱部45の根元54の外周面は、末広がりのR状の傾斜となるように形成されている。
【0054】
第2の円柱部46は、第1の円柱部45の直径および箱40の内径よりも大きい直径を有している。第2の円柱部46は、胴体部44の天板52に、円環板状のゴム板55を介して接触している。天板52に固定接着されたゴム板55は、シール部材としての役割を果たし、液状樹脂供給口50aから箱40内に供給された液状樹脂Lが胴体部44側に入り込むことを抑制する。また、ゴム板55は、超音波発振部43全体の伸縮と共に伸縮して、胴体部44が超音波振動の増幅の妨げになることを抑制している。
【0055】
超音波発振部43は、第1の円柱部45および第2の円柱部46に加えて、さらに、第3の円柱部47および第4の円柱部48を備えている。
【0056】
第3の円柱部47は、所定の金属で構成された、円柱形状の棒状体である。第3の円柱部47は、たとえば、第1の円柱部45と略同径の直径を有している。第3の円柱部47の下端(図5における-Z方向端面)は、第2の円柱部46の自由端面46aに、連結ネジ60によって連結されている。第3の円柱部47の上端側の根元56(図5における+Z方向端側)は、超音波振動板49の直径と略同径になるように、フランジ状に拡径されている。
【0057】
そして、第3の円柱部47の他端側には、第3の円柱部47よりも大径の金属製の連結板57が、所定のろう付け部材等により、接着固定されている。第3の円柱部47は、超音波振動板49から伝達されてきた超音波振動の振幅(振動の大きさ)を増減して調整する、ブースターの役割を果たす。
【0058】
連結板57には、超音波振動板49が接着固定されている。超音波振動板49は、電圧が印加されることで伸縮する、互いに重ねられた板状の第1の圧電素子62および第2の圧電素子63を備えている。第1の圧電素子62および第2の圧電素子63は、たとえば、ピエゾ素子から構成されている。第1の圧電素子62と第2の圧電素子63とには、それぞれ図示しない電極が取り付けられ、該電極および配線64を介して、高周波電源65が接続されている。
【0059】
高周波電源65は、高周波電力供給部の一例であり、高周波電力を超音波振動板49に供給する。高周波電源65によって、所定の周波数(たとえば、16kHzから80kHz)で電圧の印加のオンとオフとが繰り返されることによって、第1の圧電素子62と第2の圧電素子63とに、Z軸方向における伸縮運動が発生する。そして、この伸縮運動が、機械的な超音波振動となる。このようにして、超音波振動板49は、超音波振動を発生する。
【0060】
超音波振動板49上には、第4の円柱部48が配設されている。第4の円柱部48は、第3の円柱部47と螺合する固定ボルト61によって、超音波振動板49上に固定される。したがって、超音波振動板49は、第4の円柱部48と第3の円柱部47とにより、Z軸方向の両側から、しっかりと挟まれている。
【0061】
胴体部44の底板53の上面側には、環状のゴム板59が接着固定されている。超音波発振部43が、箱40および胴体部44に挿入された状態において、超音波発振部43の連結板57が、該ゴム板59に当接する。連結板57の外周側の領域には、ネジ穴57aが、周方向に均等に複数形成されている。そして、図示しない固定ネジが、ネジ穴57aに挿入され、ゴム板59および胴体部44の底板53の図示しないネジ孔に螺合される。これにより、超音波発振部43が、胴体部44に固定される。
なお、第3の円柱部47の根元56の外周面は、胴体部44に直接的には接触していない状態となっている。
【0062】
液状樹脂供給ノズル4では、超音波振動板49で発生した振動(Z軸方向の振動)は、ブースターである第3の円柱部47によって共振することで増幅され、第2の円柱部46に伝えられ、さらに、第2の円柱部46から第1の円柱部45に伝達される。
【0063】
図5には、超音波発振部43における超音波の強さを示す振動分布も合わせて示している。図5中、(B)は超音波振動における腹の位置であり、(A)は超音波振動における節の位置(ノード点の位置)を示している。ノード点では、Z軸方向の振幅が0になる。即ち、腹の位置では、超音波振動におけるZ軸方向の振幅が、最大(超音波振動が最大)となる。一方、節の位置では、超音波振動におけるZ軸方向の振幅が、最小(超音波振動が最小)となる。
【0064】
そして、液状樹脂供給ノズル4では、箱40および胴体部44の長手方向長さおよび内径、並びに、超音波発振部43を構成する第1の円柱部45、第2の円柱部46、および第3の円柱部47の長手方向長さおよび直径が、所定の大きさに設定されている。
【0065】
たとえば、第1の円柱部45の長さ:第2の円柱部46の長さ:第3の円柱部47の長さ:第3の円柱部47の根元56の長さ=56.5:57.1:59.0:9.0である。
また、第1の円柱部45の直径:第2の円柱部46の直径:第3の円柱部47の直径:第3の円柱部47の根元56の直径:第4の円柱部48の直径=25:45:25:42:42である。
【0066】
これにより、箱40に第1の円柱部45が収容され、箱40を形成する側壁50が、超音波発振部43の長手方向(Z軸方向)において、超音波振動がゼロになる位置で、胴体部44に接続される。また、胴体部44の側壁が、超音波発振部43の長手方向において超音波振動がゼロになる位置で、箱40および連結板57に接続される。
【0067】
このような構成を有する液状樹脂供給ノズル4では、図5に示すように、超音波振動板49から発生された超音波振動の振幅は、第1の円柱部45と第2の円柱部46との境界付近、および、第3の円柱部47と超音波振動板49との境界付近でゼロとなる一方、第2の円柱部46と第3の円柱部47との境界付近で大きくなる。さらに、第2の円柱部46から第1の円柱部45に伝達された超音波振動は、第1の円柱部45内においても増幅されて、第1の円柱部45の下端付近において最大となる。そして、第1の円柱部45の下端面から、超音波振動Sが、箱40内の液状樹脂Lに伝播する。
【0068】
このような超音波振動Sの伝播により、噴射口41から外部に向かって噴射される液状樹脂Lが、細かな霧状となる。すなわち、図4に示すように、噴射口41からウェーハWの表面Waに向かって、霧状の液状樹脂Lsが噴射される。ウェーハWの表面Waに噴射された霧状の液状樹脂Lsは、表面Waの全面に塗布され、表面Waの全面を覆う保護膜となる。
【0069】
図4および図5に示す構成では、箱40に第1の円柱部45を収容し、箱40を形成する側壁50を、超音波発振部43の長手方向において超音波振動がゼロになる部分に接続させている。このため、大きな振幅の超音波振動Sを、液状樹脂Lに伝播させることができる。したがって、霧状の液状樹脂Lsを良好に生成および噴射することが可能となる。
また、この構成では、液状樹脂Lの濃度が高い場合でも、霧状の液状樹脂Lsを噴射することが可能である。
【0070】
なお、上記した各円柱部の長さの比や各円柱部の直径の比は、一例であってこれに限定されるものではなく、たとえば、第1の円柱部45の根元54の外周面の末広がりのR状の傾斜の角度等によっても変化する。
【0071】
[実施形態2]
図6に、本実施形態にかかる保護膜形成装置1aを示す。この保護膜形成装置1aも、実施形態1に示した保護膜形成装置1と同様に、図1に示したウェーハWの表面Waに対して、保護膜を形成する。
【0072】
保護膜形成装置1aは、略矩形の装置ベース70、を備えている。装置ベース70の上面側には、開口部70aが設けられている。そして、開口部70a内には、保持手段71が配置されている。保持手段71は、ウェーハWを吸着する保持面73aを備えた保持テーブル73、および、保持テーブル73を支持する支持部材72を含んでいる。保持テーブル73の保持面73aは、吸引源(図示せず)に連通されており、ウェーハWの裏面Wbを吸引保持する。
【0073】
保持テーブル73は、支持部材72によって支持されている。保持テーブル73は、支持部材72に備えられた図示しない回転手段により、保持面73aにウェーハWを保持した状態で、保持面73aの中心を通るZ軸方向に延在する中心軸を中心として回転可能である。
【0074】
保護膜形成装置1aは、このような保持テーブル73の保持面73aに保持されるウェーハWの表面Waの全面に、液状樹脂を塗布することによって保護膜を形成する。
【0075】
保持テーブル73の周囲には、Y軸方向に伸縮する蛇腹カバーCが連結されている。そして、保持テーブル73および蛇腹カバーCの下方には、Y軸方向移動手段74が配設されている。保持テーブル73を含む保持手段71は、このY軸方向移動手段によって、Y軸方向に往復移動することが可能となっている。
【0076】
Y軸方向移動手段74は、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール76、このY軸ガイドレール76上をスライドするY軸移動テーブル79、Y軸ガイドレール76と平行なY軸ボールネジ77、および、Y軸ボールネジ77に接続されているY軸サーボモータ78、および、これらを保持する保持台75を備えている。
【0077】
Y軸移動テーブル79は、Y軸ガイドレール76にスライド可能に設置されている。Y軸移動テーブル79の下面には、図示しないナット部が固定されている。このナット部には、Y軸ボールネジ77が螺合されている。Y軸サーボモータ78は、Y軸ボールネジ77の一端部に連結されている。
【0078】
Y軸方向移動手段74では、Y軸サーボモータ78がY軸ボールネジ77を回転させることにより、Y軸移動テーブル79が、Y軸ガイドレール76に沿って、Y軸方向に移動する。Y軸移動テーブル79には、保持手段71の支持部材72が載置されている。したがって、Y軸移動テーブル79のY軸方向への移動に伴って、保持テーブル73を含む保持手段71が、Y軸方向に移動する。
【0079】
また、本実施形態では、保護膜形成装置1aは、保持テーブル73の近傍に、樹脂供給装置80を備えている。樹脂供給装置80は、保持テーブル73の保持面73aに保持されたウェーハWの表面Waに、液状樹脂を供給する。
【0080】
樹脂供給装置80は、装置ベース70に固定された枠体81、枠体81に取り付けられた昇降シリンダ83、および、昇降シリンダ83に連結された樹脂供給ノズル85を備えている。
【0081】
枠体81は、装置ベース70に、その開口部70aをX軸方向に跨ぐように配置されている。枠体81は、Z軸方向に延びる2本の縦柱部81a、および、2本の縦柱部81aをつなぐように配された横柱部81bを備えている。横柱部81bは、開口部70aを、X軸方向に沿って横断するように配置されている。
【0082】
昇降シリンダ83は、横柱部81bの略中央に取り付けられている。昇降シリンダ83は、樹脂供給ノズル85をZ軸方向に沿って上下に移動させることにより、樹脂供給ノズル85の高さを調整する。また、昇降シリンダ83は、樹脂供給ノズル85をX軸方向に沿って移動させることにより、樹脂供給ノズル85のX軸方向における位置を調整することもできる。
【0083】
樹脂供給ノズル85は、保持テーブル73の保持面73aに保持されたウェーハWの表面Waに、保持面73aの上方から、液状樹脂を霧状にして噴射する。
【0084】
次に、樹脂供給装置80における樹脂供給ノズル85の構成について説明する。図7に示すように、樹脂供給ノズル85は、筐体である箱91、箱91の下面(-Z方向側の面)91cに形成された噴射口93、箱91内に配された長尺板状の超音波振動板(圧電振動板)95、および、箱91における-X側の端面91dに設けられた液状樹脂供給口97、を有している。
【0085】
箱91は、X軸方向に沿って延びる直方体形状を有する。箱91は、液状樹脂を内部に一時的に貯められる。
噴射口93は、箱91の下面91cの略中央に形成された細長い開口部である。噴射口93は、X軸方向に沿って延びる長方形状を有している。噴射口93は、ウェーハW(図1参照)の半径以上の長さを有する。
【0086】
超音波振動板95は、超音波発振部の一例である。超音波振動板95は、箱91の噴射口93に対向するように、箱91内に配置されている。超音波振動板95は、箱91におけるZX面に平行な第1長側壁91aおよび第2長側壁91bによって支持されている。
【0087】
液状樹脂供給口97は、図示しない液状樹脂供給源に接続されている。液状樹脂供給口97は、箱91内における超音波振動板95と噴射口93との間に、液状樹脂Lを供給するために用いられる。液状樹脂供給口97から供給された液状樹脂Lは、超音波振動板95と噴射口93(下面91c)との間に、一時的に溜められる。
【0088】
図8に示すように、超音波振動板95は、X軸方向に沿って延びる、振動板101、第1電極板103および第2電極板105を備えている。また、図8、および、図7におけるA-A線断面図である図9に示すように、超音波振動板95は、第1電極板103と第2電極板105との間に、圧電素材104を備えている。
【0089】
なお、図9では、便宜上、箱91における-X側の端面91dに設けられている液状樹脂供給口97も示している。
【0090】
図8および図9に示すように、超音波振動板95、および、超音波振動板95の本体部である第2電極板105は、噴射口93に向かう側が凹んだ円弧状の断面(たとえば半円弧の断面)を有する。すなわち、超音波振動板95および第2電極板105は、円筒を縦方向に略半分に切断したような形状(トンネル形状)を有している。
【0091】
したがって、第2電極板105の噴射口93に対向する面は、凹状の断面を有する輻射面106となっている。輻射面106は、超音波振動板95と噴射口93との間に供給された液状樹脂Lに向けて、超音波振動を輻射する。
【0092】
振動板101、第1電極板103および圧電素材104は、第2電極板105と同様の長さ(X軸方向に沿う長さ)を有している。
【0093】
振動板101は、たとえばステンレスからなる板であり、第2電極板105における2つの下端部(-Z方向側の端部)、ならびに、箱91の第1長側壁91aおよび第2長側壁91bの内側に取り付けられている。
【0094】
圧電素材104は、第2電極板105の上部と同様の湾曲形状(断面円弧形状)を有している。圧電素材104は、その下面を第2電極板105の上面に密着させるように、第2電極板105に重ねられている。第1電極板103は、圧電素材104と同様の湾曲形状(断面円弧形状)を有している。第1電極板103は、その下面を圧電素材104の上面に密着させるように、圧電素材104に重ねられている。
【0095】
第1電極板103、圧電素材104および第2電極板105は、たとえば、ピエゾ素子から構成されている。また、第1電極板103および第2電極板105は、高周波電源107に電気的に接続されている。高周波電源107は、超音波振動板95に高周波電力を供給するものである。
【0096】
次に、保護膜形成装置1aにおける、ウェーハWの表面Waに保護膜を形成する動作について説明する。まず、作業者が、ウェーハWを、その表面Waを上向きにして、保持テーブル73の保持面73aに載置する。
【0097】
その後、ウェーハWを保持した保持テーブル73は、Y軸方向移動手段74によって、樹脂供給装置80の樹脂供給ノズル85の真下に配置される。
この際、昇降シリンダ83が、樹脂供給ノズル85の高さを調整する。さらに、昇降シリンダ83は、たとえば、樹脂供給ノズル85の長方形の噴射口93が、ウェーハWの中央部分から外周部分までの上方に配置されるように、樹脂供給ノズル85のX軸方向における位置を調整する。
【0098】
その後、保持テーブル73が、図示しない回転手段によって回転される。それとともに、図9に示す液状樹脂供給口97から、箱91内における超音波振動板95と噴射口93との間に、液状樹脂Lが供給される。さらに、高周波電源107が駆動される。
【0099】
高周波電源107は、所定の周波数(たとえば、1MHz~3MHz)で、電圧印加のオンとオフとを繰り返す。これにより、第1電極板103および圧電素材104が、Z軸方向に沿って伸縮運動する。そして、第2電極板105が、第1電極板103の振動に共振する。
【0100】
これにより、図10に示すように、第2電極板105における凹状の断面を有する輻射面106から、噴射口93に向かって集中するように、超音波振動Sが輻射される。これにより、箱91における超音波振動板95(輻射面106)と噴射口93との間に一時的に溜められている液状樹脂Lに、超音波振動板95から発振される超音波振動が伝播される。
【0101】
このような超音波振動の伝播により、X軸方向に延びる細長い長方形の噴射口93の略全体から噴射される液状樹脂が、細かな霧状となる。すなわち、噴射口93からウェーハWの表面Waに向かって、霧状の液状樹脂Lsが噴射される。ウェーハWの表面Waに噴射された霧状の液状樹脂Lsは、表面Waの全面に塗布され、表面Waの全面を覆う保護膜となる。
【0102】
以上のように、本実施形態でも、ウェーハWの表面Waの全面を覆う保護膜を形成するために、超音波振動によって霧状となった液状樹脂を、ウェーハWの表面Waの全面に噴射している。このため、ウェーハWの表面Waに、厚みのバラツキ(斑)の少ない、略均一な厚みの保護膜を形成することができる。
【0103】
また、本実施形態では、樹脂供給装置80の樹脂供給ノズル85は、箱91の下面91cに形成されている長方形の噴射口93、および、噴射口93に対向配置されている長尺板状の超音波振動板95を備えている。
そして、超音波振動板95からの超音波により、超音波振動板95と噴射口93との間に供給された液状樹脂Lに超音波振動が伝播されて、長方形の噴射口93から、霧状の液状樹脂Lsが、回転するウェーハWの表面Waに向けて噴射される。したがって、ウェーハWの表面Waにおける広い範囲に対して、霧状の液状樹脂Lsを一度に供給することができる。
【0104】
このため、樹脂供給ノズル85では、小さい噴射口を用いて液状樹脂を噴射する構成と比較して、ウェーハWの表面Waの全体に対する液状樹脂の供給を、短時間で実施することができる。
【0105】
また、本実施形態では、超音波振動板95(第2電極板105)は、噴射口93に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有している。これにより、超音波振動Sを輻射する輻射面106が凹状の断面を有するため、輻射面106から液状樹脂Lに伝播される超音波振動Sが、噴射口93に向かって集中する。すなわち、噴射口93に向かって、超音波振動Sが集束する。したがって、超音波振動Sが箱91内で反射しにくいので、噴射口93から噴射される液状樹脂を、良好に霧状にすることができる。
【0106】
また、本実施形態では、霧状の液状樹脂Lsを噴射する噴射口93は、回転する保持テーブル73に保持されたウェーハWの半径以上の長さを有している。これにより、樹脂供給ノズル85を移動させることなく、ウェーハWにおける表面Waの全面に対して、霧状の液状樹脂Lsを供給することができる。
【0107】
また、本実施形態では、樹脂供給ノズル85の超音波振動板95は、円筒を縦方向に略半分に切断したような形状(トンネル形状)を有している。これに関し、超音波振動板95は、噴射口93に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有する、複数の短い凹状板から構成されていてもよい。この場合、超音波振動板95は、複数の凹状板をX軸方向に沿って接続することによって形成される。
【符号の説明】
【0108】
1:保護膜形成装置、
10:保持テーブル、10a:保持面、10b:枠体、
12:液状樹脂供給パイプ、17:旋回モータ、18:旋回軸、
13:保持テーブル回転手段、14:スピンドル、15:モータ、
19:液状樹脂供給源、
2:液状樹脂供給ノズル、
20:箱、20A:第一室、20B:第二室、23a:液状樹脂供給口、
24:ノズル部、24a:噴射口、
3:圧電振動板、30:ドーム部、31:ツバ部、32:環状板、
25:第1電極板、26:第2電極板、26b:輻射面、27:圧電素材、
28:配線、29:高周波電源、
4:液状樹脂供給ノズル、
40:箱、41:噴射口、43:超音波発振部、44:胴体部、
45:第1の円柱部、46:第2の円柱部、47:第3の円柱部、
48:第4の円柱部、
49:超音波振動板、62:第1の圧電素子、63:第2の圧電素子、
64:配線、65:高周波電源、
1a:保護膜形成装置、
70:装置ベース、70a:開口部、C:蛇腹カバー、
71:保持手段、72:支持部材、73:保持テーブル、73a:保持面、
74:Y軸方向移動手段、
80:樹脂供給装置、
81:枠体、81a:縦柱部、81b:横柱部、83:昇降シリンダ、
85:樹脂供給ノズル、
91:箱、91a:第1長側壁、91b:第2長側壁、
91c:下面、91d:端面、93:噴射口、97:液状樹脂供給口、
95:超音波振動板、
101:振動板、103:第1電極板、104:圧電素材、105:第2電極板、
106:輻射面、107:高周波電源、
L:液状樹脂、Ls:液状樹脂、S:超音波振動、
W:ウェーハ、Wa:表面、Wb:裏面、
M:分割予定ライン、D:デバイス、N:ノッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10