(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20231226BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B65G54/02
G01N35/04 B
G01N35/04 G
(21)【出願番号】P 2020175128
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】東 信二
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/137182(WO,A1)
【文献】特開2016-171669(JP,A)
【文献】特開平6-16239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
G01N 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を搬送する搬送装置であって、
前記被搬送物は、磁力によって搬送可能であり、
前記搬送装置は、
複数の電磁石であって、各前記電磁石は、磁性体を含むティースと、前記ティースに巻かれた巻線とを備える、複数の電磁石と、
各前記電磁石を磁気的に結合するヨークと、
前記巻線に電流を供給する駆動回路と、
を備え、
前記ティースは、軸方向に延びる空洞を有する
ことを特徴とする、搬送装置。
【請求項2】
前記空洞は、前記ティースの、前記被搬送物と対向しない面に開口することを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記空洞は前記ティースを貫通することを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記空洞に挿入される非磁性体をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、さらに別のティースを備え、前記別のティースは、軸方向に延びる空洞を有しないことを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記空洞の、軸方向に垂直な断面による断面形状が、軸方向に沿って変化することを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記搬送装置は、前記巻線のインダクタンスの変化に基づいて前記被搬送物の位置を検出する検出装置をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記空洞の軸と、前記ティースの軸とが一致することを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記空洞は、前記ティースの軸に関して回転対称となる形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置に関する。搬送装置は、例えば、血液や尿などの生体試料の分析を行う検体分析システムや、分析に必要な前処理を行う検体前処理装置に用いられる。
【背景技術】
【0002】
血液、血漿、血清、尿その他の体液等の生体試料(以下「検体」という場合がある)の分析を行う検体分析システムにおいては、それぞれの検体について、指示された分析項目を検査するため、複数の機能を有する装置を接続し、自動的に各工程を処理している。言い換えると、検体分析システムでは、生化学や免疫など複数の分析分野の分析部を搬送ラインで接続し、一括して複数の分析がなされている。
【0003】
搬送ラインの搬送方式には、(1)ベルトコンベヤによる方式と、(2)電磁吸引力を推力に利用する方式とがある。(2)の方式の一例では、検体を保持するホルダ等の容器キャリアに永久磁石を設け、移送面に設けられた磁気回路の巻線に電流を供給することにより発生する電磁吸引力を、容器キャリアの推力として利用する。磁気回路は、格子状に配置されたティースと、ティースに取り付けられた巻線と、ティース同士を連結するヨークで構成される。これらの搬送方法では、容器キャリアに設けられた磁気活性デバイスの位置を検出する容器キャリア検出デバイスが設けられている。
【0004】
特許文献1においては、搬送平面上に位置する容器キャリアの存在および位置を検知するために、容器キャリア検知デバイスが設けられる。複数のIRベース反射光バリアを有するプリント回路基板を備えるとの記載がある。
【0005】
特許文献2においては、ラボラトリ試料分配システムが移送面を備える。移送面の下方に複数の電磁アクチュエータが配置される。さらに、複数の位置センサが移送面の上に分配される。位置センサはHallセンサとして具体化されるとの記載がある。
【0006】
巻線による損失を低減するために、電流当たりの電磁吸引力は大きいことが望ましい。電磁吸引力の向上には、ティース径を拡大し、磁石との対向面積を増加することが有効である。また、低コスト化を図るためには上記特許文献1乃至2に記載の検出デバイスを廃し、センサレス化することが望ましい。
【0007】
センサレス化するための方式の1つに、磁気回路の巻線のインダクタンス変化を活用する方式がある。この方式は、容器キャリアが通電されている巻線のティースへの接近に伴い、巻線に鎖交する永久磁石の磁束の量が増加する。これによってティース内の磁束が飽和し、巻線のインダクタンスが変化する。すなわちインダクタンスには容器キャリアに設けられた永久磁石に位置に対する依存性があり、これを検出に活用する。センサレスで位置検出を行う際には、インダクタンス変化を大きくすると検出精度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-77971
【文献】特開2017-102103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の技術では、インダクタンス変化を大きくすると、推力が低下するというトレードオフの問題があった。
【0010】
インダクタンス変化の向上には、たとえばティースの径を縮小し、磁気飽和現象が起こりやすい構造とすることが有効である。しかしながら、インダクタンス変化を向上させるためにティースの径を縮小すると、上述のように電磁吸引力が小さくなり、結果として推力が低下する。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、推力の低下を抑制しつつインダクタンス変化を大きくできる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る搬送装置の一例は、
被搬送物を搬送する搬送装置であって、
前記被搬送物は、磁力によって搬送可能であり、
前記搬送装置は、
複数の電磁石であって、各前記電磁石は、磁性体を含むティースと、前記ティースに巻かれた巻線とを備える、複数の電磁石と、
各前記電磁石を磁気的に結合するヨークと、
前記巻線に電流を供給する駆動回路と、
を備え、
前記ティースは、軸方向に延びる空洞を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る搬送装置によれば、推力の低下を抑制しつつインダクタンス変化を大きくすることができる。他の課題および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係る搬送装置の概略構成図
【
図2】
図1の搬送装置の構成を説明する断面概略比較図
【
図3】
図2(a)の搬送装置及び
図2(b)の搬送装置における、推力とインダクタンスの特性を比較したグラフ
【
図4】実施例2に係る搬送装置の構成例を示す断面概略図
【
図5】
図2(a)における被搬送物とティースの間における磁束の流れを模式的に示した図
【
図6】
図2(b)における被搬送物とティースの間における磁束の流れを模式的に示した図
【
図7】実施例3に係る搬送装置の構成例を示す概略図
【
図8】実施例3における搬送装置の別の構成例を示す概略図
【
図9】実施例4に係るティースおよび空洞の様々な例を示す断面概略図
【
図10】実施例5に係るティースおよび空洞の様々な例を示す断面概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、実施例の形状、配置その他の構成を変更してもよい。
【0016】
<実施例1>
図1は本発明の実施例1に係る搬送装置の概略構成図である。本発明の搬送装置1は、被搬送物110を搬送する搬送装置である。搬送装置1は、被搬送物110が移動する搬送路を形成する。搬送路は、たとえば平面上に形成され、具体例として水平面上に形成される。
【0017】
搬送装置1は、被搬送物110を搬送するための電磁石25a、25bを備える。電磁石25a、25bは、たとえば搬送路を形成する板(図示せず)について、搬送路とは反対側の面に設けられる。また、搬送装置1は、電磁石25a、25bに電流を供給する駆動回路50a、50bを備える。電磁石25a、25bは複数(本実施例では2つ)設けられ、一般的には多数がたとえば格子状に配置される。駆動回路50a、50bには電源55が接続される。電源55は、たとえば電池であり、直流電流を供給するが、パルス電流を供給してもよい。電磁石25a、25bと駆動回路50a、50bとの間には電流検出器40a、40bが設けられる。電流検出器40a、40bは演算部41に接続される。
【0018】
以下、各構成について詳述する。被搬送物110は、磁力によって搬送可能なものであり、磁石(たとえば永久磁石)を備える。具体例として、被搬送物110の底面(すなわち搬送路に対向する面)には図示していない永久磁石が内蔵されている。被搬送物110の一例は検体ホルダである。検体ホルダは、検体容器を1本ずつ保持する。検体容器は、液体の検体(または試薬であってもよい)を入れた試験管であってもよいし、試料セルであってもよい。被搬送物110の別の例は検体ラックである。検体ラックは、検体容器を複数本保持することができる。被搬送物110に設けられる永久磁石としては、ネオジム合金やフェライト等が好適に用いられる。なお、永久磁石に代えて電磁石を用いてもよく、磁性体(たとえば軟磁性体)を用いてもよい。
【0019】
被搬送物110と電磁石25a、25bの間には図示していない搬送路がある。たとえば搬送路を形成する板が配置され、板の片面に搬送路が形成されてもよい。被搬送物110は、磁力の作用により搬送路上を摺動して移動する。
【0020】
電磁石25a、25bはティース22a、22bを備える。ティース22a、22bは磁性体を含み、たとえば強磁性体から形成される。また、電磁石25a、25bは、ティース22a、22bに巻かれた巻線21a、21bを備える。ティース22a、22bについて軸(たとえば中心軸。具体例については
図10を参照して後述)を定義することができ、巻線21a、21bは、たとえばティース22a、22bの軸の周りに、ティース22a、22bの外周に沿って巻かれる。
図1においてティース22a、22bの形状は円柱状であるが、これに限定するものではなく、角柱状でもよい。
【0021】
電磁石25a、25bの巻線21a、21bは、それぞれ、駆動回路50a、50bに接続されており、上述の駆動回路50a、50bは、巻線21a、21bに電流を供給する。電磁石25a、25bはそれぞれ、電流を供給されて磁界を発生させる。ティース22a、22bの一端(たとえば上端)は、搬送路または被搬送物110に対向するよう配置されている。とくに、本実施例に係るティース22a、22bは、この一端側に搬送路または被搬送物110と対向する面を有する。磁界の一部は、この一端を通過するように(たとえば略上下方向に)生じる(
図6等に関連して後述する)。この磁界により、被搬送物110の永久磁石に推力が生じる。
【0022】
電流検出器40a、40bは、それぞれ電磁石25a、25bの巻線21a、21bに流れる電流を検出し、検出した電流値を演算部41に送る機能を有する。電流検出器40a、40bの具体的構造は任意に設計することができる。たとえば、直列抵抗の電圧を測定するもの、カレントトランスによるもの、ホール電流センサを用いたものなどを用いることができるが、これらに限定するものではない。
【0023】
演算部41は、検出された電流値に基づき、電磁石25a、25bそれぞれのインダクタンスを算出する。そして、インダクタンスに基づいて、ティース22a、22bそれぞれと被搬送物110との相対的な位置関係を算出する。さらに、この位置関係に基づき、搬送装置1内における被搬送物110の位置を演算する。このように、搬送装置1は、巻線21a、21bのインダクタンスの変化に基づいて被搬送物110の位置を検出する、検出装置として機能する。
【0024】
また、演算部41は、算出された被搬送物110の位置に基づいて、被搬送物110を適切に駆動するために駆動回路50a、50bにそれぞれ供給すべき電流量と、駆動回路50a、50bにそれぞれ電流を供給すべきタイミングとを決定する。演算部41は、決定された電流量およびタイミングに基づき、被搬送物110を移動させるための制御信号を生成し、駆動回路50a、50bにそれぞれ出力する。駆動回路50a、50bは、制御信号に従って電磁石25a、25bに電流を供給し、これによって被搬送物110を所望の位置に搬送することができる。
【0025】
次に、ティース22a、22bの構造について説明する。
図2は搬送装置1の構成を説明する断面概略比較図である。
図2(a)は従来技術に係るティース122の構成例を示し、
図2(b)は本実施例に係るティース22の構成例を示す。
【0026】
図2(a)の搬送装置および
図2(b)の搬送装置1のいずれも、ヨーク26を備える。ヨーク26は、複数の電磁石を磁気的に結合し、これによって磁気回路を形成する。磁気回路は、巻線21の内周と、ヨーク26と、巻線21の外周(すなわち隣接する2本の巻線21の間)とを通って形成される。
【0027】
図2(a)すなわち従来技術では、ティース122に空洞が無い。
図2(b)すなわち本実施例では、ティース22は空洞27を有する。
図2(b)において空洞27はハッチングで示す。空洞27は軸方向に延びる。本実施例では、空洞27は被搬送物と110対向しない面に(たとえばz軸負方向に向かって)開口する。
【0028】
図2(a)すなわち従来技術において、ティース22がヨーク26の孔28に挿入して固定できるように、ティース22の端部の外径は孔28の内径と同一となっている。
図2(b)すなわち本実施例の空洞27は、軸方向の断面形状が円形である。また、空洞27は、ティース22の軸を含む(より厳密には、ティース22の軸を構成するある線分を含む)。とくに、本実施例では、空洞27の軸とティース22の軸とが一致する。すなわち、空洞27の中心軸とティース22の中心軸とは共通である。
【0029】
図2(b)において、ヨーク26にはティースの空洞27と同じ内径の孔28が設けられている。
図2(b)において孔28はドットパターンで示す。本実施例では、搬送装置1は、空洞27に挿入される非磁性体29を備える。なお、
図2(b)では図示の便宜上、1つの空洞27にのみ非磁性体29が挿入された状態を示すが、実際にはすべての空洞27に同様の非磁性体29が挿入される。非磁性体29はたとえばピンまたはネジとして構成することができる。非磁性体29を、ティース22の空洞27およびヨーク26の孔28に挿入して固定することにより、ティース22をヨーク26に固定することができる。
【0030】
ここで、
図2(b)の構成では、空洞27は、ティース22の、被搬送物110と対向しない面に開口しているので、非磁性体29の挿入作業は搬送路に干渉することなく実施でき、搬送装置1の製造工程が簡素になる。
【0031】
また、
図2(b)の構成では、空洞27の軸とティース22の軸とが一致するので、ティース22全体の対称性が保たれ、磁気回路および制御の設計が容易である。
【0032】
図3は、
図2(a)すなわち従来技術の搬送装置及び
図2(b)すなわち本実施例の搬送装置1における、推力とインダクタンスの特性を比較したグラフである。X軸は被搬送物110の位置を表し、X=0はあるティース22の軸の位置であり、X=pは隣接するティース22の軸の位置である。
図3(a)は推力特性を示し、
図3(b)はインダクタンス特性を示す。演算部41は、算出されたインダクタンスと、
図3(b)に例示される関係とに基づいて、各ティースと被搬送物110との相対的な位置関係を算出することができる。
【0033】
図3(a)および
図3(b)いずれでも、一点鎖線は
図2(a)の構成に対応し、実線は
図2(b)すなわち本実施例の構成に対応する。X=0からX=pに向けて被搬送物110が移動する際に、位置に対する推力およびインダクタンスが
図3に示すように変化する。
【0034】
図3(a)の推力特性を見ると、推力は
図2(a)と
図2(b)の場合でほぼ変わらない。一方、
図3(b)のインダクタンス特性を見ると、
図2(a)すなわち従来技術の場合に比べ、
図2(b)すなわち本実施例の場合はX=0におけるインダクタンスとX=pにおけるインダクタンスとの差が大きい。以上から、
図2(b)のように空洞27を設けることにより、推力の低下を抑制しつつ、インダクタンス変化を大きくして位置検出の精度を向上させることができる。
【0035】
なお、推力の低下が抑制される理由としては、たとえばティース22において被搬送物110に対向する面の面積がほぼ維持されることが考えられる。また、インダクタンス変化が大きくなる理由としては、たとえば空洞27により磁気回路の断面積が減少することが考えられる。
【0036】
以上のように、空洞27を設けることにより、ティース22の外径を大きく維持して推力の低下を抑制しつつ、インダクタンス変化を大きくして位置検出精度を向上させることができる。
【0037】
<実施例2>
実施例2は、実施例1において、空洞がティースを貫通する構成としたものである。以下、実施例2について説明するが、実施例1と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0038】
図4は実施例2に係る搬送装置の構成例を示す断面概略図である。空洞27がティース22を貫通する。実施例1と同様に、空洞27の中心軸はティース22の中心軸と一致する。ティース22の一端は外径が縮小しており、この一端をヨーク26の孔28に挿入することでティース22とヨーク26とを接合し固定することができるようになっている。このため、ティース22とヨーク26とを固定するための部材(非磁性体のピンまたはねじ等)を用いる必要がない。
【0039】
空洞27がティース22を貫通するので、空洞27を冷媒の流路として利用できる。例えば、送風機を設置して風を空洞27に送り込むことにより、巻線21の発熱による搬送装置1の温度上昇を抑制できる。
【0040】
図5は、
図2(a)すなわち従来技術の例における被搬送物110とティース122の間における磁束170の流れを模式的に示した図である。また、
図6は、本実施例(たとえば
図2(b)と同一の構成)における被搬送物110とティース22の間における磁束70の流れを模式的に示した図である。
【0041】
図6のように、空洞27(ハッチングで示す)を貫通させることで、ティース22の被搬送物110に対向する対向面23の面積が減少する。しかし、
図5および
図6いずれの場合でも、磁束70および170の大部分は、対向面23および123のうち軸付近の部分を通らず、対向面23および123の外周付近の部分24および124(またはそれらの一部)を通る。これは、磁束70および170が磁気抵抗の小さい経路を通ろうとするために、より至近の強磁性体に入り込むためである。したがって、
図6のように、空洞27が貫通する構成であっても、空洞27の位置をティース22の対向面23のうち軸付近とすることにより、推力の低下を抑制することができる。
【0042】
<実施例3>
実施例3は、実施例1または2において、空洞を備えないティースが混在する構成としたものである。以下、実施例3について説明するが、実施例1または2と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0043】
図7は、実施例3に係る搬送装置の構成例を示す概略図である。搬送装置は、実施例1に係るティース22cと、別のティース22dとを備える。ティース22cは実施例1に従って空洞27を備えるが、別のティース22dは空洞27を有しない。別のティース22dはたとえば従来技術のティースと同一の構成とすることができる。
【0044】
図8は、実施例3における搬送装置の別の構成例を示す概略図である。搬送装置は、実施例2に係るティース22eと、上述の空洞27の無い別のティース22dとを備える。ティース22eは実施例2に従って空洞27を備えるが、別のティース22dは空洞27を有しない。
【0045】
このように、空洞27を有するティース22cまたはティース22eと、空洞27を有しない別のティース22dとを混在させることにより、それぞれのティースの利点を活かすことができる。
【0046】
ティース22cまたはティース22eと、ティース22dとの配置は、任意に設計可能である。たとえば、被搬送物110をロボットアームで分析装置に移設する際の、高精度な位置検出を要求される箇所にのみ、空洞27を有するティース22cやティース22eを配置することができる。このようにすると、搬送路において、ある領域では推力を重視し、別の領域ではインダクタンス変化の大きさを重視するという使い分けが可能となる。
【0047】
なお、搬送装置の構成は
図7および
図8の例に限られない。たとえば、1つの搬送装置に、ティース22c、ティース22d、ティース22eの3種類を混在させても良い。
【0048】
<実施例4>
実施例4は、実施例1~3において使用可能なティース22および空洞27の形状の具体例を示すものである。
【0049】
図9は、実施例4に係るティース22および空洞27の様々な例を示す断面概略図である。ティース22の軸方向断面の外周は、
図9(a1)~
図9(a5)では円形であり、
図9(b1)~
図9(b5)では正方形である。また、ティース22の軸方向断面の内周(すなわち空洞27の形状)は、
図9(a1)では円形、
図9(a2)では正方形、
図9(a3)では正六角形、
図9(a4)では正方形(ただし、ティース22の配列方向に対する空洞27の向きが
図9(a2)とは異なる)、
図9(a5)では正八角形、
図9(b1)では正方形、
図9(b2)では正方形(ただし、ティース22の配列方向に対する空洞27の向きが
図9(b1)とは異なる)、
図9(b3)では正八角形、
図9(b4)では円形、
図9(b5)では正六角形、である。
【0050】
図9に示すいずれの構成でも、空洞27(少なくともその一部)は、ティース22の軸に関して回転対称となる形状を有する。このようにすると、被搬送物110の搬送方向によって推力やインダクタンスの特性が変化しないので好適である。
【0051】
また、空洞27の形状は、xz平面に関して面対称とすると、被搬送物110をy軸方向に搬送する場合に、搬送の向きによって推力やインダクタンスの特性が変化しないので好適である。同様に、空洞27の形状は、yz平面に関して面対称とすると、被搬送物110をx軸方向に搬送する場合に、搬送の向きによって推力やインダクタンスの特性が変化しないので好適である。
【0052】
<実施例5>
実施例5は、実施例1~3において使用可能なティース22および空洞27の形状のさらなる具体例を示すものである。とくに、実施例1および2では、空洞27の形状が軸方向に沿って一定であるが、実施例5では空洞27の形状が軸方向に沿って変化する。
【0053】
図10は、実施例5に係るティース22および空洞27の様々な例を示す断面概略図である。一点鎖線はティース22の軸を示す。空洞27の軸は、
図10の各例ではティース22の軸と一致する。
【0054】
図10(a)の例では、空洞27は、開口端付近において、開口端に向かって広がるテーパ部27aを有する。
図10(b)の例では、空洞27は、開口端付近において拡径された段付き部27bを有する。
図10(c)の例では、空洞27は、底部付近に円錐部27cを有する。
【0055】
図10に示すいずれの構成でも、空洞27の、軸方向に垂直な断面による断面形状は、軸方向に沿って変化する。このように断面形状を変化させることにより、ティース22の製造およびヨーク26への固定が容易となる。
【符号の説明】
【0056】
1…搬送装置
21,21a,21b…巻線
22,22a,22b,22c,22e…ティース
22d…別のティース
23…対向面
24…対向面の外周付近の部分
25a,25b…電磁石
26…ヨーク
27…空洞
28…孔
29…非磁性体
40a,40b…電流検出器
41…演算部
50a,50b…駆動回路
55…電源
70…磁束
110…被搬送物