(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】回転主軸及び回転機械
(51)【国際特許分類】
F16C 3/03 20060101AFI20231226BHJP
F04D 29/044 20060101ALI20231226BHJP
F04D 29/054 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F16C3/03
F04D29/044
F04D29/054
(21)【出願番号】P 2022003632
(22)【出願日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 信介
(72)【発明者】
【氏名】石井 政輝
(72)【発明者】
【氏名】弘川 昌樹
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-257038(JP,A)
【文献】特開2000-230554(JP,A)
【文献】特開平5-280598(JP,A)
【文献】特開昭59-128901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 3/03
F04D 29/044
F04D 29/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、主軸部材と、前記主軸部材の一端側に設けられ、前記主軸部材の軸方向における移動を規制するためのスラスト円板と、を有する回転主軸であって、
前記主軸部材及び前記スラスト円板が互いに別部材からなる分割構造とされており、
前記主軸部材は、前記一端側の端面に凹部が設けられており、
前記スラスト円板は、少なくとも一面側における中心軸上に配置され、前記一面から突出するように設けられる凸部を有しており、
前記主軸部材と前記スラスト円板とが、前記凹部に前記凸部が内嵌め嵌合されることで固定されている
ことを特徴とする回転主軸。
【請求項2】
前記主軸部材と前記スラスト円板とが、前記主軸部材の前記凹部に設けられた雌ねじと、前記スラスト円板の前記凸部に設けられた雄ねじによってねじ留め固定されることで、軸方向で拘束されていることを特徴とする請求項1に記載の回転主軸。
【請求項3】
前記主軸部材と前記スラスト円板とが、前記主軸部材及び前記スラスト円板の各々の中心軸に軸方向で挿通して配置される固定ボルトによってボルト留め固定されることで、軸方向で拘束されていることを特徴とする請求項1に記載の回転主軸。
【請求項4】
前記主軸部材における前記凹部の内側面、及び、前記スラスト円板における前記凸部の外側面の各々が傾斜面とされ、互いに係止する逆テーパ構造で内嵌め嵌合されることにより、前記主軸部材と前記スラスト円板とが軸方向で拘束されていることを特徴とする請求項1に記載の回転主軸。
【請求項5】
前記主軸部材における前記凹部の内側面、及び、前記スラスト円板における前記凸部の外側面の各々が凹凸面とされ、該凹凸面同士が互いに嵌め込まれて係止する凹凸構造で嵌合されることにより、前記主軸部材と前記スラスト円板とが軸方向で拘束されていることを特徴とする請求項1に記載の回転主軸。
【請求項6】
前記主軸部材と前記スラスト円板とが、請求項2~請求項5に記載の軸方向における拘束構造を組み合わせて備えることを特徴とする請求項1記載の回転主軸。
【請求項7】
前記主軸部材と前記スラスト円板とが、さらに、ノックピンによって回転方向で拘束されていることを特徴とする請求項2~請求項6の何れか一項に記載の回転主軸。
【請求項8】
前記主軸部材と前記スラスト円板とが、さらに、キー溝構造によって回転方向で拘束されていることを特徴とする請求項2~請求項6の何れか一項に記載の回転主軸。
【請求項9】
前記主軸部材と前記スラスト円板とが、さらに、溶接によって回転方向で拘束されていることを特徴とする請求項2~請求項6の何れか一項に記載の回転主軸。
【請求項10】
前記主軸部材と前記スラスト円板とが、請求項7~請求項9に記載の回転方向における拘束構造を組み合わせて備えることにより、回転方向で拘束されていることを特徴とする請求項2~請求項6の何れか一項に記載の回転主軸。
【請求項11】
前記主軸部材は、前記一端側の端面に第1の凹部が設けられた第1の主軸部材と、前記一端側の端面に第2の凹部が設けられた第2の主軸部材とからなり、
前記スラスト円板は、前記凸部として、前記一面から突出するように設けられる第1の凸部と、前記一面と反対側の他面から突出するように設けられる第2の凸部とを有しており、
前記第1の主軸部材における前記第1の凹部に、前記スラスト円板の前記第1の凸部が内嵌め嵌合されるとともに、前記第2の主軸部材における前記第2の凹部に、前記スラスト円板の前記第2の凸部が内嵌め嵌合されることにより、前記第1の主軸部材、前記スラスト円板、及び前記第2の主軸部材がこの順で固定されていることを特徴とする請求項1~請求項10の何れか一項に記載の回転主軸。
【請求項12】
請求項1~請求項11の何れか一項に記載の回転主軸を備えることを特徴とする回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転主軸、及び、それを備えた回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、超電導電力ケーブルや超電導変圧器、超電導モータ等の電力機器には、液体窒素温度レベルで動作する高温超電導体が用いられている。このような高温超電導体の冷却には、例えば、ヘリウムガスやネオンガス等の冷媒を回転機械で循環させるブレイトンサイクル冷凍機が用いられている。また、液体窒素で高温超電導体を冷却する場合には、液体窒素の供給にポンプが用いられている。
【0003】
上記のようなブレイトンサイクル冷凍機の回転機や、液体窒素を供給するポンプとしては、例えば、モータを回転軸と一体化したターボ圧縮機や遠心式ポンプ等が用いられている。このようなターボ圧縮機や遠心式ポンプは、インペラを備えた回転主軸を回転させることで、インペラにより、流体の圧力を上昇させる。この際、流体の圧力差により、回転主軸に軸方向の荷重が作用する。このため、回転主軸にはスラスト円板が備えられ、このスラスト円板を挟み込むようにスラスト軸受が配置されることにより、回転主軸の軸方向の位置が保持される。
【0004】
ここで、スラスト円板としては、例えば、主軸部材と一体に形成された構造を有するものがある。また、スラスト円板が主軸部材と別部材とされ、それぞれ別々に加工した後に組み付ける分割構造とされたものもある(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0005】
特許文献1に記載の回転部材に備えられるスラスト円板(フランジ部)は、炭素繊維強化複合材のような軽量材料から形成されており、主軸部材(軸)とは別部材として加工された後、主軸部材の外面に嵌合固定されている。
また、特許文献2に記載の磁気軸受装置に備えられるスラスト円板は、磁性体材料から形成されており、主軸部材(回転スピンドル軸)とは別部材として加工された後、主軸部材の外面に嵌合固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-108380号公報
【文献】特開平04-004317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、主軸部材とスラスト円板とを別部材とした分割構造で構成する理由は幾つかあるが、例えば、以下の(1)~(4)に示すような場合が考えられる。
(1)主軸部材とスラスト円板とを一体形成した場合に比べて製造コストを低減できる。
(2)主軸部材とスラスト円板とを別部材とすることで、スラスト円板に高強度材料を使用できる。
(3)主軸部材とスラスト円板とを別部材とすることで、スラスト円板に軽量材料を使用できる。
(4)主軸部材とスラスト円板とを別部材とすることで、スラスト円板に磁性体材料を使用できる。
【0008】
上記(1)に関し、一般的に、スラスト円板は、回転主軸において最も外径が大きくなる。例えば、
図15及び
図16に示すように、主軸部材101とスラスト円板103とを一体構造で加工する場合、スラスト円板よりも外径寸法が大きな棒材が材料として必要となり、加工時の切削箇所も多くなるため、材料や製造に係るコストが増大するという問題がある。
【0009】
また、上記(2)、(3)に関し、スラスト円板の外周部は、回転主軸の中で最も周速が速くなることから、遠心力が最も大きく作用する。このため、例えば、スラスト円板に強度のより高い材料を用いて、発生する遠心応力に耐えられるようにすることや、軽量な材料を用いて、遠心応力を低減させることが試みられている。例えば、上述した特許文献1においては、スラスト円板のみを軽量な炭素繊維強化複合材から構成している。
【0010】
また、上記(4)に関し、回転主軸(スラスト円板)を磁気軸受で支持する場合、スラスト円板を磁性体から構成する必要がある。上述した特許文献2においては、スラスト円板のみを磁性体材料から構成した例が開示されている。
【0011】
一方、上記の何れの場合においても、スラスト円板と主軸部材を別部材として加工した後、一体化する必要がある。スラスト円板と主軸部材とを一体化する方法としては、例えば、
図17及び
図18に示すように、スラスト円板103の中心孔131を、主軸部材101の外面101aに焼嵌めする方法がある。しかしながら、このような方法でスラスト円板と主軸部材とを組み付けた場合、回転時に発生する遠心力によってスラスト円板が径方向の外側に変形して嵌合部が緩み、主軸部材からずれてしまうおそれがあった。また、スラスト円板と主軸部材とが異なる材質から構成される場合、各々の線膨張係数が異なるため、使用温度環境の変化によって嵌合部の緩みが生じてしまうおそれもあった。このように、スラスト円板と主軸部材との間に緩みやずれ、外れ等が生じた場合、回転主軸のスラスト方向(軸方向)におけるガタが生じ、回転主軸の回転が不安定なものとなり、回転主軸が備えられる各種の回転機械の動作も不安定になるという問題があった。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、主軸部材とスラスト円板とを別部材とした分割構造でありながら、遠心力や温度変化によって、スラスト円板の主軸部材に対する緩みが生じるのを抑制でき、安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能な回転主軸、及び、それを用いた回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、少なくとも、主軸部材と、前記主軸部材の一端側に設けられ、前記主軸部材の軸方向における移動を規制するためのスラスト円板と、を有する回転主軸であって、前記主軸部材及び前記スラスト円板が互いに別部材からなる分割構造とされており、前記主軸部材は、前記一端側の端面に凹部が設けられており、前記スラスト円板は、少なくとも一面側における中心軸上に配置され、前記一面から突出するように設けられる凸部を有しており、前記主軸部材と前記スラスト円板とが、前記凹部に前記凸部が内嵌め嵌合されることで固定されていることを特徴とする回転主軸を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記のように、主軸部材とスラスト円板とが、主軸部材の凹部に、スラスト円板の凸部が内嵌めされた構造を採用することにより、主軸部材とスラスト円板とを別部材とした分割構造でありながら、遠心力や温度変化によってスラスト円板の主軸部材に対する緩みが生じるのを抑制できる作用が得られる。また、上記の分割構造を採用することにより、材料コストや加工時間を削減できる。これにより、安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能な回転主軸が低コストで実現できる。
【0015】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の回転主軸であって、前記主軸部材と前記スラスト円板とが、前記主軸部材の前記凹部に設けられた雌ねじと、前記スラスト円板の前記凸部に設けられた雄ねじによってねじ留め固定されることで、軸方向で拘束されていることを特徴とする回転主軸である。
【0016】
本発明によれば、上記のように、主軸部材の凹部に設けられた雌ねじと、スラスト円板の凸部に設けられた雄ねじとによってねじ留め固定した構造を採用することで、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力をより高める作用が得られる。これにより、より安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0017】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の回転主軸であって、前記主軸部材と前記スラスト円板とが、前記主軸部材及び前記スラスト円板の各々の中心軸に軸方向で挿通して配置される固定ボルトによってボルト留め固定されることで、軸方向で拘束されていることを特徴とする回転主軸である。
【0018】
本発明によれば、主軸部材とスラスト円板とを固定ボルトで固定した構造を採用することで、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力をより高める作用が得られる。これにより、より安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0019】
また、請求項4に係る発明は、請求項1に記載の回転主軸であって、前記主軸部材における前記凹部の内側面、及び、前記スラスト円板における前記凸部の外側面の各々が傾斜面とされ、互いに係止する逆テーパ構造で内嵌め嵌合されることにより、前記主軸部材と前記スラスト円板とが軸方向で拘束されていることを特徴とする回転主軸である。
【0020】
本発明によれば、主軸部材における凹部の内側面、並びに、スラスト円板における凸部の外側面が傾斜面とされ、互いに係止する逆テーパ構造で内嵌めされていることで、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力をより高める作用が得られる。これにより、より安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0021】
また、請求項5に係る発明は、請求項1に記載の回転主軸であって、前記主軸部材における前記凹部の内側面、及び、前記スラスト円板における前記凸部の外側面の各々が凹凸面とされ、該凹凸面同士が互いに嵌め込まれて係止する凹凸構造で嵌合されることにより、前記主軸部材と前記スラスト円板とが軸方向で拘束されていることを特徴とする回転主軸である。
【0022】
本発明によれば、凹部の内側面と凸部の外側面とが、互いに嵌め込まれて係止する凹凸構造で内嵌めされていることで、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における主軸部材とスラスト円板との間の拘束力をより高める作用が得られる。これにより、より安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0023】
また、請求項6に係る発明は、請求項1に記載の回転主軸であって、前記主軸部材と前記スラスト円板とが、請求項2~請求項5に記載の軸方向における拘束構造を組み合わせて備えることを特徴とする回転主軸である。
【0024】
本発明によれば、上記のように、軸方向の拘束構造を複数で組み合わせて備えることで、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力をさらに高める作用が得られる。これにより、さらに安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0025】
また、請求項7に係る発明は、請求項2~請求項6の何れかに記載の回転主軸であって、前記主軸部材と前記スラスト円板とが、さらに、ノックピンによって回転方向で拘束されていることを特徴とする回転主軸である。
【0026】
本発明によれば、主軸部材とスラスト円板とが軸方向で拘束される構造に加え、さらに、ノックピン構造による回転方向での拘束構造を備えることで、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力を高める作用に加え、回転方向における拘束力を高める作用が得られる。これにより、より一層安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0027】
また、請求項8に係る発明は、請求項2~請求項6の何れかに記載の回転主軸であって、前記主軸部材と前記スラスト円板とが、さらに、キー溝構造によって回転方向で拘束されていることを特徴とする回転主軸である。
【0028】
本発明によれば、主軸部材とスラスト円板とが軸方向で拘束される構造に加え、さらに、キー溝構造による回転方向での拘束構造を備えることで、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力を高める作用に加え、回転方向における拘束力を高める作用が得られる。これにより、より一層安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0029】
また、請求項9に係る発明は、請求項2~請求項6の何れかに記載の回転主軸であって、前記主軸部材と前記スラスト円板とが、さらに、溶接によって回転方向で拘束されていることを特徴とする回転主軸である。
【0030】
本発明によれば、主軸部材とスラスト円板とが軸方向で拘束される構造に加え、さらに、溶接構造による回転方向での拘束構造を備えることで、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力を高める作用に加え、回転方向における拘束力を高める作用が得られる。これにより、より一層安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0031】
また、請求項10に係る発明は、請求項2~請求項6の何れかに記載の回転主軸であって、前記主軸部材と前記スラスト円板とが、請求項7~請求項9に記載の回転方向における拘束構造を組み合わせて備えることにより、回転方向で拘束されていることを特徴とする回転主軸である。
【0032】
本発明によれば、主軸部材とスラスト円板とが軸方向で拘束される構造に加え、さらに、回転方向における拘束構造を複数で組み合わせて備えることで、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向並びに回転方向の両方における各部材の拘束力を高める作用が得られる。これにより、より一層安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0033】
また、請求項11に係る発明は、請求項1~請求項10の何れか一項に記載の回転主軸であって、前記主軸部材は、前記一端側の端面に第1の凹部が設けられた第1の主軸部材と、前記一端側の端面に第2の凹部が設けられた第2の主軸部材とからなり、前記スラスト円板は、前記凸部として、前記一面から突出するように設けられる第1の凸部と、前記一面と反対側の他面から突出するように設けられる第2の凸部とを有しており、前記第1の主軸部材における前記第1の凹部に、前記スラスト円板の前記第1の凸部が内嵌め嵌合されるとともに、前記第2の主軸部材における前記第2の凹部に、前記スラスト円板の前記第2の凸部が内嵌め嵌合されることにより、前記第1の主軸部材、前記スラスト円板、及び前記第2の主軸部材がこの順で固定されていることを特徴とする回転主軸である。
【0034】
本発明によれば、主軸部材が、一端側に第1の凹部を有する第1の主軸部材と、他端側に第2の凹部を有する第2の主軸部材とからなるとともに、スラスト円板の一面及び他面に第1の凸部又は第2の凸部が設けられ、第1の凹部及び第2の凹部の各々に、第1の凸部又は第2の凸部が内嵌めされた構造を採用している。これにより、上記同様、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とを別部材とした分割構造でありながら、遠心力や温度変化によってスラスト円板の主軸部材に対する緩みが生じるのを抑制できる作用が得られる。また、上記の分割構造とすることにより、材料コストや加工時間を削減できる。これにより、上記同様、安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能な回転主軸が低コストで実現できる。
【0035】
請求項12に係る発明は、請求項1~請求項11の何れか一項に記載の回転主軸を備えることを特徴とする回転機械である。
【0036】
本発明によれば、上述した本発明に係る回転主軸を備えたものなので、回転主軸において、遠心力や温度変化により、スラスト円板の主軸部材に対する緩みが生じるのを抑制できる作用が得られることから、回転主軸の回転動作が長期間にわたって安定する。これにより、優れた動作効率が長期間にわたって得られる回転機械が低コストで実現できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る回転主軸によれば、上記構成を採用することにより、主軸部材とスラスト円板とを別部材とした分割構造でありながら、遠心力や温度変化によってスラスト円板の主軸部材に対する緩みやずれ、外れ等が生じるのを抑制できる。また、上記の分割構造を採用することにより、材料コストや加工時間を削減できる。従って、安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能な回転主軸が低コストで実現できる。
【0038】
また、本発明に係る回転機械によれば、上述した本発明に係る回転主軸を備えることで、回転主軸において、遠心力や温度変化によってスラスト円板の主軸部材に対する緩みが生じるのを抑制でき、回転主軸の回転動作が安定するので、優れた動作効率が長期間にわたって得られる回転機械が低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、回転主軸全体を示す側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材とスラスト円板とが内嵌め構造で固定された状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが内嵌め構造で固定された状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが、第1の主軸部材及び第2の主軸部材の凹部に設けられた雌ねじと、スラスト円板の第1の凸部及び第2の凸部に設けられた雄ねじによってねじ留め固定された状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが、軸方向で挿通される固定ボルトによってボルト留め固定された状態の一例を示す断面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが、軸方向で挿通される固定ボルトによってボルト留め固定された状態の他の例を示す断面図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが、軸方向で挿通される固定ボルトによってボルト留め固定された状態の他の例を示す断面図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材の凹部と、スラスト円板の第1の凸部及び第2の凸部とが、互いに係止する逆テーパ構造で内嵌めされた状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の第6の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材の凹部と、スラスト円板の第1の凸部及び第2の凸部とが、凹凸面同士が互いに嵌め込まれて係止する凹凸構造で内嵌めされた状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の第8の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材のうちの一方あるいは両方と、スラスト円板とが、ノックピン構造による拘束で回転止めされている状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の第9の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材のうちの一方あるいは両方とスラスト円板とが、キー溝構造による拘束で回転止めされた状態を示す断面図である。
【
図12】本発明の第10の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材及び第2の主軸部材のうちの一方あるいは両方とスラスト円板とが、溶接構造による拘束で回転止めされている状態の一例を示す断面図である。
【
図13】本発明の第10の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第1の主軸部材とスラスト円板とが、溶接構造による拘束で回転止めされている状態の他の例を示す断面図である。
【
図14】本発明の第10の実施形態である回転主軸について模式的に説明する図であり、第2の主軸部材とスラスト円板とが、溶接構造による拘束で回転止めされている状態の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を適用した実施形態である回転主軸及び回転機械について、
図1~
図14を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示する材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0041】
本実施形態の回転主軸は、例えば、ターボ圧縮機や遠心式ポンプ等の各種の回転機械に用いることが可能なものである。
【0042】
<回転主軸>
図1は、本発明に係る回転主軸(後述する第2の実施形態の回転主軸20を参照)の一例を示す全体側面図である。
本実施形態の回転主軸は、
図1に示す例のように、長尺の棒状部材であり、長軸方向(軸方向)における何れかの位置にスラスト円板が設けられる。
図1に示す例(後述の回転主軸20)においては、長軸方向における中央よりも一端側に若干寄った位置で、スラスト円板(後述のスラスト円板3A)が設けられている。
【0043】
[第1の実施形態]
以下に、第1の実施形態の回転主軸について、主に
図2を適宜参照しながら説明する(
図1も適宜参照)。
図2は、第1の実施形態の回転主軸10における、第1の主軸部材1とスラスト円板3とが内嵌め構造で固定された要部を示す断面図である。
【0044】
本実施形態の回転主軸10は、少なくとも、第1の主軸部材(主軸部材)1と、この第1の主軸部材1の一端1a側に設けられ、第1の主軸部材1の軸方向における移動を規制するためのスラスト円板3とを有することにより、第1の主軸部材1及びスラスト円板3が互いに別部材からなる分割構造とされている。
図2に示すように、第1の主軸部材1は、一端1a側の端面11に第1の凹部(凹部)12が設けられている。また、スラスト円板3は、一面3a側における中心軸J側に配置され、一面3aから突出するように設けられる第1の凸部31を有している。
そして、本実施形態の回転主軸10は、第1の主軸部材1とスラスト円板3とが、第1の主軸部材1に設けられた第1の凹部12に、スラスト円板3に設けられた第1の凸部31が内嵌め嵌合されることで固定されている。即ち、本実施形態の回転主軸10は、第1の主軸部材1とスラスト円板3との固定構造が、内側嵌合構造とされている。
また、
図2に示す例では、回転主軸10における一方の端部にスラスト円板3が設けられている。
【0045】
第1の主軸部材1は、中心軸Jを回転軸として回転する部材であり、概略丸棒状に構成される(
図1中に示す第1の主軸部材1も参照)。
また、図示を省略するが、第1の主軸部材1の一端2bの近傍には、例えば、回転機械を構成するタービンインペラ等が配置され、一端2bと反対側の他端1bの近傍には、例えば、コンプレッサインペラ等が配置される。また、これらのタービンインペラやコンプレッサインペラは、第1の主軸部材1に対して一体に取り付けられる。
【0046】
上述したように、第1の主軸部材1には、一端1a側の端面11に第1の凹部12が設けられており、
図2に示す例では内側面12bが、端面11から底面12aに向かって平行な有底筒状に形成されている。また、
図2では図示を省略しているが、第1の凹部12は、例えば、平面視で円形状とされている。
【0047】
第1の主軸部材1の材質としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態の回転主軸10が適用される回転機械等のハウジングと、熱膨張係数がほぼ等しい材料を採用することが好ましく、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料を何ら制限無く採用できる。
【0048】
スラスト円板3は、
図2では図示を省略しているが、平面視で円形とされた板状の部材である。
スラスト円板3は、本実施形態の回転主軸10が適用される回転機械等において、例えば、流体の圧力差等によって回転主軸10に作用する軸方向(スラスト方向)の荷重に対し、このスラスト円板3を挟み込むように配置される図示略のスラスト軸受により、回転主軸10の軸方向の位置を保持する機能を有する。
【0049】
図2中に示す例のスラスト円板3は、上述したように、一面3a側に第1の凸部31が設けられている。第1の凸部31は、一面3aから突出するように、中心軸Jを中心とした概略円柱状に形成される。また、図示例のスラスト円板3は、他面3b側は平面状とされている。
【0050】
スラスト円板3の材質は、特に限定されないが、第1の主軸部材1と分割された構造であることを活かし、本実施形態の回転主軸10を用いる回転機械等における使用条件に鑑み、各種の材料を採用することが可能である。例えば、スラスト円板3を軽量に構成する必要がある場合には、炭素繊維強化複合材のような軽量材料を採用することができる。一方、回転主軸20を、軸方向での大きな負荷が生じる用途に適用する場合においては、より高強度な金属材料をスラスト円板3の材料として使用することが好ましい。
【0051】
本実施形態の回転主軸10は、上記構成とされた第1の主軸部材1及びスラスト円板3を備えるとともに、これらが、第1の主軸部材1の第1の凹部12と、スラスト円板3の第1の凸部31との内側嵌合構造によって固定されている。また、回転主軸10は、第1の凹部12の内側面12bと、第1の凸部31の外側面31bとが、面接触しながら嵌合されている。このような内側嵌合構造を採用することで、従来のように、スラスト円板を主軸部材に対して焼嵌めした外側嵌合構造において問題となっていた、スラスト円板が径方向外側へ変形して、主軸部材に対して緩みが生じるのを防止できる。
【0052】
また、本実施形態においては、第1の主軸部材1及びスラスト円板3に用いられる材料の強度、回転で生じる遠心応力、温度変化による熱応力等の各種条件に応じて、内嵌めによる嵌合部位の差し込み深さ等の寸法・形状についても最適化することがより好ましい。
具体的には、
図2中に示したような、スラスト円板3に備えられる第1の凸部31の外径d、及び、一面3a側からの高さhは、上述した材料の他、使用時の回転数や使用温度環境等の条件を加味し、適宜、決定する必要がある。
【0053】
例えば、第1の主軸部材1及びスラスト円板3に用いられる材料の強度に対して、回転数や使用温度等の運転条件が厳しくない場合には、第1の凸部31の形状は、JIS B 0203で規定される「テーパおねじ」の外径及び基準長さに基づいた寸法・形状とすれば良い。例えば、第1の凸部31の外径dをφ60mmとした場合、その高さは15mmである。
【0054】
一方、回転主軸10の使用条件が、高速回転や広い使用温度領域を含む条件であり、第1の主軸部材1及びスラスト円板3の材料に対して大きな応力が生じる可能性がある場合には、例えば、コンピュータを用いたFEM(Finite Element Method:有限要素法)によってシミュレーションを行い、この結果に基づいて詳細な寸法や形状を決定することが好ましい。
【0055】
なお、上述したような、主軸部材の凹部とスラスト円板の凸部との間の寸法関係は、後述する第2の実施形態の回転主軸20(
図3を参照)における、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとの間の寸法関係にも適用でき、さらに、後述する第2~第11の実施形態における各回転主軸に対しても適用可能なものである。
【0056】
本実施形態の回転主軸10によれば、第1の主軸部材1とスラスト円板3とが、第1の主軸部材1の第1の凹部12に、スラスト円板3の第1の凸部31が内嵌めされた内部嵌合構造を採用している。これにより、第1の主軸部材1とスラスト円板3とを別部材とした分割構造でありながら、遠心力や温度変化によってスラスト円板3の第1の主軸部材1に対する緩みが生じるのを抑制できる。また、上記の分割構造を採用することにより、材料コストや加工時間を削減できる。従って、安価な構成でありながら、安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0057】
[第2の実施形態]
以下に、本発明の第2の実施形態の回転主軸について、
図3を適宜参照しながら説明する(
図1も適宜参照)。
図3は、本実施形態の回転主軸20の要部について説明する図であり、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとが、内嵌め構造で固定された状態を示す断面図である。
本実施形態においては、上述した第1の実施形態に係る回転主軸10と共通あるいは類似する構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0058】
図3に示すように、本実施形態の回転主軸20は、上述した第1の実施形態の回転主軸10の構成に加え、さらに、スラスト円板3Aの他面3b側に接続される第2の主軸部材(主軸部材)2を備える点で、第1の実施形態の回転主軸10とは異なる。即ち、本実施形態における主軸部材は、一端1a側の端面11に第1の凹部12が設けられた第1の主軸部材1と、一端2a側の端面21に第2の凹部(凹部)22が設けられた第2の主軸部材2とからなる。
また、スラスト円板3Aは、凸部として、一面3a側に設けられる第1の凸部31に加え、さらに、他面3b側における中心軸J側に配置され、他面3bから突出するように設けられる第2の凸部(凸部)32を有している。
そして、回転主軸20は、第1の主軸部材1における第1の凹部12に、スラスト円板3Aの第1の凸部31が内嵌め嵌合されるとともに、第2の主軸部材2における第2の凹部22に、スラスト円板3Aの第2の凸部32が内嵌め嵌合されている。これにより、回転主軸20は、図示例のように、第1の主軸部材1、スラスト円板3、及び第2の主軸部材2が、この順で固定されている。
本実施形態の回転主軸20は、
図1における全体の側面図に示したように、長軸方向における中央よりも一方の端部(第2の主軸部材2における他端2b)側に若干寄った位置で、スラスト円板3Aが配置されている。なお、スラスト円板3Aの位置は、
図1に例示する位置には限定されず、例えば、回転主軸20の長さ方向における中央寄りの位置であっても構わない。
【0059】
第2の主軸部材2は、第1の主軸部材1と同様、中心軸Jを回転軸として回転する部材であり、概略丸棒状に構成される。
また、
図1では図示を省略しているが、第2の主軸部材2の一端2aとは反対側となる他端2bの近傍には、上述したような、回転機械を構成するインペラが、第2の主軸部材2に対して一体に取り付けられている。
【0060】
上述したように、第2の主軸部材2には、第1の主軸部材1と同様、一端2a側の端面21に第2の凹部22が設けられており、
図3に示す例では、内側面22bが、端面21から底面22aに向かって平行な有底筒状に形成されている。また、
図3では図示を省略しているが、第2の凹部22は、例えば、平面視で円形状とされている。
【0061】
第2の主軸部材2の材質としても、特に限定されず、第1の主軸部材1と同様、本実施形態の回転主軸20が適用される回転機械等のハウジングと、熱膨張係数がほぼ等しい材料を採用することができ、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料を採用できる。
【0062】
スラスト円板3Aは、
図3では詳細な図示を省略しているが、第1の実施形態におけるスラスト円板3と同様、平面視で円形とされた板状の部材であり、上記同様、回転主軸20に作用する軸方向の荷重に対し、スラスト円板3Aを挟み込むように配置される図示略のスラスト軸受により、回転主軸20の軸方向の位置を保持する機能を有する。
【0063】
図3中に示す例のスラスト円板3Aは、上述したように、両面側に凸部(第1の凸部31又は第2の凸部32)が設けられている点で、第1の実施形態におけるスラスト円板3とは異なる。
具体的には、スラスト円板3Aは、第1の実施形態におけるスラスト円板3と同様、一面3a側に第1の凸部31が設けられており、
図3に示す例では、さらに、これと表裏対称配置となるように、他面3b側に第2の凸部32が設けられている。第2の凸部32は、第1の凸部31と同様、他面3bから突出するように、中心軸Jを中心とした概略円柱状に形成されている。
【0064】
スラスト円板3Aの材質も、特に限定されず、第1の実施形態で説明したスラスト円板3と同様の材料を採用することができる。即ち、本実施形態のスラスト円板3Aでも、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2と分割された構造であることを活かし、回転主軸20の使用条件を考慮しながら、炭素繊維強化複合材のような軽量材料、あるいは、より高強度である金属材料等、各種の材料を採用することが可能である。
【0065】
本実施形態の回転主軸20は、第1の主軸部材1とスラスト円板3Aとが、第1の主軸部材1に設けられた第1の凹部12と、スラスト円板3Aに設けられた第1の凸部31との内側嵌合構造によって固定されている。これとともに、回転主軸20は、第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとが、第2の主軸部材2に設けられた第2の凹部22と、スラスト円板3Aに設けられた第2の凸部32との内側嵌合構造によって固定されている。また、回転主軸20は、第1の凹部12の内側面12bと、第1の凸部31の外側面31bとが、面接触しながら嵌合されており、さらに、第2の凹部22の内側面22bと、第2の凸部32の外側面33bとが、面接触しながら嵌合されている。
このような内側嵌合構造を採用することで、本実施形態の回転主軸20においても、第1の実施形態の場合と同様、従来のような、焼嵌めによる外側嵌合構造に起因した、スラスト円板が変形して主軸部材に対する緩みが生じるのを防止することが可能となる。
【0066】
なお、スラスト円板3Aの一面3a側に設けられる第1の凸部31と、他面3b側に設けられる第2の凸部32は、図示例のような、表裏対称の関係とされた形状や大きさには限定されない。具体的には、第1の主軸部材1の他端1b側や、第2の主軸部材2の他端2b側に配置される図示略のインペラの大きさが異なる場合、例えば、他端1b側に配置されるインペラが他端2b側に配置されるインペラよりも小さい場合には、第1の凸部31を、第2の凸部32よりも小径に構成してもよい。このように、インペラの重量や遠心力等を考慮した構成とすることで、回転主軸20全体のバランスが最適化され、安定した回転特性を確保できる。
【0067】
本実施形態の回転主軸20によれば、第1の実施形態の回転主軸10に対して、さらに、スラスト円板3Aの他面3b側に接続される第2の主軸部材2を有し、第1の凹部12及び第2の凹部22の各々に、スラスト円板3の第1の凸部31又は第2の凸部32が内嵌めされた内部嵌合構造を採用している。これにより、第1の実施形態の場合と同様、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとを別部材とした分割構造でありながら、遠心力や温度変化によってスラスト円板3Aの第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2に対する緩みが生じるのを抑制できる。また、上記の分割構造を採用することにより、材料コストや加工時間を削減できる。従って、第1の実施形態の場合と同様、安価な構成でありながら、安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0068】
[第3の実施形態]
以下に、本発明の第3の実施形態の回転主軸について、主に
図4を適宜参照しながら説明する。
図4は、本実施形態の回転主軸30の要部について説明する図であり、第1の主軸部材1A及び第2の主軸部材2Aとスラスト円板3Bとがねじ留め固定された状態を示す断面図である。
【0069】
図4に示すように、本実施形態の回転主軸30は、ねじ留め固定構造を備える点で、第2の実施形態の回転主軸20とは異なる。
具体的には、本実施形態の回転主軸30は、第1の主軸部材1A及び第2の主軸部材2Aとスラスト円板3Bとが、第1の凹部12A及び第2の凹部22Aにおける内側面12b,22bにそれぞれ設けられた雌ねじ12c,22cと、第1の凸部31B及び第2の凸部32Bにおける外側面31b,32bに設けられた雄ねじ31a,32aとによってねじ留め固定されることで、軸方向で拘束されている。
【0070】
本発明に係る回転主軸が採用している内側嵌合構造を、回転動作がより安定したものとして実現するためには、スラスト円板と主軸部材との間を軸方向で拘束することがより重要となる。本実施形態においては、上記のねじ留め固定構造を採用し、さらに、各ねじ形状を最適化して緩みにくい形状とすることで、第1の主軸部材1A及び第2の主軸部材2Aとスラスト円板3Bとを強固に一体化できる。これにより、回転主軸30が高速回転した場合でも、第1の主軸部材1A及び第2の主軸部材2Aとスラスト円板3Bとの間の固定構造が緩むのを確実に防止できる。
【0071】
本実施形態の回転主軸30によれば、第1の主軸部材1Aにおける第1の凹部12A及び第2の主軸部材2Aにおける第2の凹部22Aに各々設けられた雌ねじ12c,22cと、スラスト円板3Bの第1の凸部31B及び第2の凸部32Bに各々設けられた雄ねじ31a,32aとによってねじ留め固定した構造を採用している。これにより、第1,2の主軸部材1A,2Aとスラスト円板3Bとが分割された構造でありながら、回転主軸30の軸方向における各部材の拘束力をより高める作用が得られる。これにより、より安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0072】
[第4の実施形態]
以下に、本発明の第4の実施形態の回転主軸について、主に
図5~
図7を適宜参照しながら説明する。
図5は、本実施形態の回転主軸40の要部について説明する図であり、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2Bとスラスト円板3Cとが、軸方向で挿通される固定ボルト4によってボルト留め固定された状態の一例を示す断面図である。
また、
図6は、本実施形態の回転主軸40Aの要部について説明する図であり、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2Cとスラスト円板3Cとが、軸方向で挿通される固定ボルト4Aによってボルト留め固定された状態の一例を示す断面図である。
また、
図7は、本実施形態の回転主軸40Bの要部について説明する図であり、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2Dとスラスト円板3Cとが、軸方向で挿通される固定ボルト4Bによってボルト留め固定された状態の一例を示す断面図である。
【0073】
本実施形態の回転主軸40,40A,40Bは、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2B,2C,2D、並びにスラスト円板3Cの各々の中心軸Jに軸方向で挿通して配置される固定ボルト4,4A,4Bを備える。そして、本実施形態の回転主軸40,40A,40Bは、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2B,2C,2Dの何れかと、スラスト円板3Cとが、固定ボルト4,4A,4Bの何れかによってボルト留め固定され、軸方向で拘束されている点で、上述した第2,3の実施形態の回転主軸20,30とは異なる。
【0074】
図5に示す回転主軸40は、第1の主軸部材1Bにおける第1の凹部12の底面12aに、固定ボルト4と螺合可能とされたねじ穴12dが設けられている。
また、スラスト円板3Cには、中心軸Jと同軸で形成され、固定ボルト4を軸方向で貫通させることが可能な貫通孔33が設けられている。
また、第2の主軸部材2Bにも、中心軸Jと同軸で形成され、固定ボルト4を軸方向で貫通させることが可能な貫通孔23が設けられている。
【0075】
図5に示す回転主軸40によれば、上記構成により、第1の主軸部材1Bと、スラスト円板3Cと、第2の主軸部材2Bとを、固定ボルト4でねじ留め固定することで、これらの各部材を強固に一体化できる。これにより、回転主軸40が高速回転した場合でも、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2Bとスラスト円板3Cとの間の固定構造が緩むのを確実に防止できる。
【0076】
図6に示す回転主軸40Aは、第2の主軸部材2Cにおける他端2b側にインペラ5が配置されている点で、
図5に示す回転主軸40とは異なる。
回転主軸40Aは、上記構成により、第1の主軸部材1Bと、スラスト円板3Cと、第2の主軸部材2Cと、インペラ5とを、固定ボルト4Aで共締めしたボルト留め構造を採用することで、インペラ5を含めて強固に一体化することが可能となる。これにより、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2Cとスラスト円板3Cとの間、さらには、第2の主軸部材2Cとインペラ5との間の固定構造が緩むのを確実に防止できる。また、回転主軸40Aの組立性も良好となるので、回転主軸40A、及び、回転主軸40Aが適用される回転機械等の生産性を高めることも可能となる。
【0077】
ここで、本実施形態のようなボルト締め工程構造を採用する場合、ボルトが緩まないように配慮する必要が生じることもある。このため、例えば、回転主軸40Aに備えられる固定ボルト4Aとして従来公知のテンションボルトを採用した場合には、固定ボルト4Aによる適切な応力を生じさせることができるので、回転主軸40Aが高速回転した場合でも、固定ボルト4Aが緩むのを防止することが可能となる。
【0078】
図7に示す回転主軸40Bは、第2の主軸部材2Dにおける他端2b側にナット24が配置されている点で、
図5に示す回転主軸40とは異なる。
また、固定ボルト4Bが、長軸方向の両端にねじ部4a,4bを備えている点でも、
図5に示す回転主軸40とは異なる。
【0079】
回転主軸40Bは、例えば、ナット24として、ねじ部の緩み防止機能が施されたU-NUT(富士精密社製(登録商標);インターネット[https://www.fun.co.jp/products/u-nut.php]を参照)を採用することで、第1の主軸部材1Bと、スラスト円板3Cと、第2の主軸部材2Dとを、固定ボルト4Bで強固にねじ留め固定して一体化することが可能となる。これにより、上記同様、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2Dとスラスト円板3Cとの間の固定構造が緩むのを確実に防止できる。
なお、本実施形態の回転主軸40Bにおいては、ナット24に代えて、図示略の割ピン等による緩み防止機構を構成することも可能である。
【0080】
本実施形態の回転主軸40,40A,40Bによれば、第1の主軸部材1B及び第2の主軸部材2B,2C,2Dの何れかと、スラスト円板3Cとが、固定ボルト4,4A,4Bの何れかによってボルト留め固定された構造を採用している。これにより、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸40,40A,40Bの軸方向における各部材の拘束力をより高める作用が得られるので、より安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0081】
[第5の実施形態]
以下に、本発明の第5の実施形態の回転主軸について、主に
図8を適宜参照しながら説明する。
図8は、本実施形態の回転主軸50の要部について説明する図であり、第1の主軸部材1Cに設けられる第1の凹部12B、及び、第2の主軸部材2Eに設けられる第2の凹部22Bと、スラスト円板3Dに設けられる第1の凸部31C及び第2の凸部32Cとの間が、互いに係止する逆テーパ構造で内嵌めされた状態を示す断面図である。なお、
図8においては、説明の都合上、逆テーパ構造による嵌合代を、実際のテーパ角度よりも大きな角度で示している。
【0082】
本実施形態の回転主軸50は、第1の主軸部材1Cにおける第1の凹部12B、及び、第2の主軸部材2Eにおける第2の凹部22Bの内側面12b,22b、並びに、スラスト円板3Dにおける第1の凸部31C及び第2の凸部32Cの外側面31b,32bが、それぞれ傾斜面とされ、互いに係止する逆テーパ構造で内嵌め嵌合される。これにより、回転主軸50は、第1の主軸部材1C及び第2の主軸部材2Eとスラスト円板3Dとが、軸方向で拘束されるように構成されている。
【0083】
本実施形態の回転主軸50の製造にあたり、第1の主軸部材1Cにおける第1の凹部12B及び第2の主軸部材2Eにおける第2の凹部22Bの各々に、スラスト円板3Dの第1の凸部31C又は第2の凸部32Cを嵌入する際は、例えば、スラスト円板3Dを冷却する冷やし嵌めか、あるいは、第1の主軸部材1C及び第2の主軸部材2Eを加熱することにより、焼嵌めを行う方法を採用できる。あるいは、スラスト円板3Dを冷却するとともに、第1の主軸部材1C及び第2の主軸部材2Eを加熱して焼嵌めすることも可能である。
【0084】
上記のような焼嵌めを行う場合の条件としては、特に限定されないが、例えば、第1の主軸部材1C及び第2の主軸部材2Eの外径dが100mm程度である場合、上記の逆テーパ構造による嵌合代を50~200μmの範囲とすることで、十分な嵌合強度を保持しながら、無理なく焼嵌め加工することができる。また、焼嵌め加工の際の加熱温度は、スラスト円板3D、及び、第1の主軸部材1C及び第2の主軸部材2Eを構成する材料にも依るが、例えば、100~200℃の範囲とすることができる。
【0085】
本実施形態の回転主軸50によれば、第1の主軸部材1C及び第2の主軸部材2Eと、スラスト円板3Dとが、互いに係止する逆テーパ構造で内嵌めされた構造を採用することで、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力がより高められる。これにより、より安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0086】
[第6の実施形態]
以下に、第6の実施形態の回転主軸について、主として
図9を適宜参照しながら説明する。
図9は、本実施形態の回転主軸60の要部について説明する図であり、第1の主軸部材1Dにおける第1の凹部12C及び第2の主軸部材2Fにおける第2の凹部22Cと、スラスト円板3Eにおける第1の凸部31D及び第2の凸部32Dとが、凹凸面同士が互いに嵌め込まれて係止する凹凸構造で内嵌め嵌合された状態を示す断面図である。
【0087】
本実施形態の回転主軸60は、第1の凹部12C及び第2の凹部22Cの各々の内側面12b,22b、並びに、第1の凸部31D及び第2の凸部32Dの各々の外側面31b,32bが凹凸面とされており、これら凹凸面同士が互いに嵌め込まれて係止する凹凸構造で内嵌め嵌合されている。これにより、回転主軸60は、第1の主軸部材1D及び第2の主軸部材2Fとスラスト円板3Eとが、軸方向で拘束されている。
【0088】
図9に示す例では、スラスト円板3Eにおける第1の凸部31D及び第2の凸部32Dの先端近傍の外径が、一面3a及び他面3b側よりも大きく形成されている。また、第1の主軸部材1D及び第2の主軸部材2Fにおける、第1,2の凹部12C,22Cの内側面12b,22bの、底面12a,22a近傍の内径が、端面11,21側よりも大きく形成されている。本実施形態の回転主軸60は、上記のような、スラスト円板3Eの第1の凸部31D及び第2の凸部32Dと、第1の主軸部材1Dの第1の凹部12C及び第2の主軸部材2Fの第2の凹部22Cとが組み合わせされることにおり、凹凸構造が構成される。
【0089】
本実施形態の回転主軸60の製造にあたり、第1の主軸部材1Dにおける第1の凹部12C及び第2の主軸部材2Fにおける第2の凹部22Cの各々に、スラスト円板3Eにおける第1の凸部31D及び第2の凸部32Dの何れかを嵌入する際は、第5の実施形態における回転主軸50を製造する場合と同様、第1,2の主軸部材1D,2Fを加熱、もしくは、スラスト円板3Eを冷却、あるいはその両方により、焼嵌め、冷やし嵌めを行う方法を採用できる。
【0090】
本実施形態の回転主軸60によれば、第1の主軸部材1Dにおける第1の凹部12C及び第2の主軸部材2Fにおける第2の凹部22Cの内側面12b,22bと、スラスト円板3Eにおける第1の凸部31D及び第2の凸部32Dの外側面31b,32bとが、互いに嵌め込まれて係止する凹凸構造で内嵌めされている。これにより、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸60の軸方向における各部材の拘束力がより高められる。従って、より安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0091】
[第7の実施形態]
以下に、第7の実施形態の回転主軸について、第1~第6の実施形態で参照した図面と同じ図面を適宜参照しながら説明する。
本実施形態の回転主軸は、全体的且つ詳細な図示は省略するが、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが、上述した第3~第6実施形態の回転主軸30,40,40A,40B,50,60が有する軸方向の拘束構造を組み合わせて備えたものである。
【0092】
本実施形態の回転主軸によれば、上記のような軸方向の拘束構造を複数で組み合わせて備えることで、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向における各部材の拘束力をさらに高めることができる。従って、さらに安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0093】
[第8の実施形態]
以下に、第8の実施形態の回転主軸について、主として
図10を適宜参照しながら説明する。
図10は、本実施形態の回転主軸70の要部について説明する図であり、第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとが、ノックピン構造による拘束で回転止めされている状態を示す断面図である。
【0094】
本実施形態の回転主軸70は、
図10においては詳細な図示を省略しているが、上述した第3~第7実施形態の回転主軸30,40,40A,40B,50,60のうちの何れかにおいて、第1の主軸部材及び第2の主軸部材のうちの一方あるいは両方と、スラスト円板とが、ノックピン6によって回転方向で拘束されたものである。
図10に示す例においては、説明の都合上、
図1,3に示した第2の実施形態の回転主軸20に対してノックピン6を追加した構成を示している。図示例のノックピン6は、第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとの間で、それらの位相を別部材で固定するものである。
【0095】
本発明に係る回転主軸が採用している内側嵌合構造を、回転動作がより一層安定したものとして実現するためには、回転主軸の適用対象によっては、第3~第6の実施形態における軸方向の拘束構造に加え、さらに、スラスト円板が主軸部材に対して回転方向で係止された、空回り等を防止する構造も必要となる。本実施形態においては、上記の軸方向の拘束構造を採用したうえで、さらに、回転方向の拘束構造を備えることで、主軸部材(
図10中では第2の主軸部材2)と、スラスト円板(
図10中ではスラスト円板3A)との間を、軸方向及び回転方向の両方で強固に一体化する。
【0096】
ノックピン6の材質としては、特に限定されず、従来から金属部材の回転留め等の用途で用いられている金属材料を何ら制限無く採用することが可能である。
【0097】
なお、本実施形態においては、上記のノックピン構造は、
図10に示す例のものには限定されない。詳細な図示は省略するが、例えば、スラスト円板3Aの他面3b上にノックピン形状の凸部を設け、第2の主軸2の一端2aに上記の凸部と嵌合可能な凹部を設け、これら凸部と凹部とを嵌合させることで、第2の主軸2とスラスト円板3Aとの間の位相を固定する構成を採用してもよい。
【0098】
本実施形態の回転主軸70によれば、第3~第7実施形態における、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが軸方向で拘束される構造に加え、さらに、ノックピン構造による回転方向での拘束構造を備えた構成を採用している。これにより、分割構造でありながら、回転主軸70の軸方向における各部材の拘束力が高められ、さらに、回転方向における拘束力が高められる。従って、より一層安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0099】
[第9の実施形態]
以下に、第9の実施形態の回転主軸について、主として
図11を適宜参照しながら説明する。
図11は、本実施形態の回転主軸80の要部について説明する図であり、第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとが、キー溝構造による拘束で回転止めされた状態を示す断面図である。
【0100】
本実施形態の回転主軸80は、第8の実施形態の回転主軸70の場合と同様、
図11においては詳細な図示を省略しているが、上述した第3~第7の実施形態の回転主軸30,40,40A,40B,50,60のうちの何れかにおいて、第1の主軸部材及び第2の主軸部材のうちの一方あるいは両方と、スラスト円板とが、キー溝構造による拘束で回転止めされたものである。また、
図11に示す例においては、第8の実施形態の場合と同様、説明の都合上、
図1,3に示した第2の実施形態の回転主軸20に対してキー7、及び、キー7が挿入される溝部25を追加した構成を示している。図示例のキー7、及び、第2の主軸部材2に設けられる溝部25は、第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとの間で、それらの位相を別部材で固定するものである。
【0101】
キー7の材質としても、ノックピン6の場合と同様、特に限定されず、従来から金属部材の回転留め等の用途で用いられている金属材料を何ら制限無く採用することが可能である。
【0102】
なお、本実施形態においては、上記のキー溝構造は、
図11に示す例のものには限定されない。詳細な図示は省略するが、例えば、第2の主軸2における第2の凹部22の内側面22bにキー形状の凸部を設け、スラスト円板3Aにおける第2の凸部32の外面32bに設けられた溝部25と上記の凸部とを嵌合させることで、第2の主軸2とスラスト円板3Aとの間の位相を固定する構成を採用してもよい。
【0103】
本実施形態の回転主軸80によれば、第3~第7の実施形態における、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが軸方向で拘束される構造に加え、さらに、キー溝構造による回転方向での拘束構造を備えた構成を採用している。これにより、第8の実施形態の回転主軸70の場合と同様、分割構造でありながら、回転主軸80の軸方向における各部材の拘束力が高められ、さらに、回転方向における拘束力が高められる。従って、より一層安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0104】
[第10の実施形態]
以下に、第10の実施形態の回転主軸について、主として
図12~
図14を適宜参照しながら説明する。
図12は、本実施形態の回転主軸90の要部について説明する図であり、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとが、溶接構造による拘束で回転止めされている状態の一例を示す断面図である。
また、
図13は、本実施形態の回転主軸90Aの要部について説明する図であり、第1の主軸部材1とスラスト円板3とが、溶接構造による拘束で回転止めされている状態の他の例を示す断面図である。
また、
図14は、本実施形態の回転主軸90Bの要部について説明する図であり、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとが、溶接構造による拘束で回転止めされている状態の他の例を示す断面図である。
【0105】
本実施形態の回転主軸90,90A,90Bは、
図12~
図14においては詳細な図示を省略しているが、上述した第3~第7の実施形態の回転主軸30,40,40A,40B,50,60のうちの何れかにおいて、第1の主軸部材及び第2の主軸部材のうちの一方あるいは両方と、スラスト円板とが、溶接による拘束で回転止めされたものである。なお、説明の都合上、
図12,14に示す例においては、
図1,3に示した第2の実施形態の回転主軸20に対して溶接部8又は溶接部81を追加した構成を示し、
図13に示す例においては、
図2に示した第1の実施形態の回転主軸10に対して溶接部82を追加した構成を示している。図示例の溶接部8,81,82は、それぞれ、第2の主軸部材2又は第1の主軸部材1のうちの一方又は両方と、スラスト円板3A又はスラスト円板3との間で、それらの位相を固定するものである。
【0106】
図12に示す回転主軸90は、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2の外面側におけるスラスト円板3A近傍に溶接部8が設けられている。これにより、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとの間で位相が固定されている。
【0107】
図13に示す回転主軸90Aは、第1の主軸部材1に設けられた第1の凹部12の底面12aにおける貫通部36の近傍に溶接部82が設けられている。これにより、第1の主軸部材1とスラスト円板3との間で位相が固定されている。
【0108】
図14に示す回転主軸90Bは、第1の主軸部材1に設けられた第1の凹部12,及び、第2の主軸部材2に設けられた第2の凹部22の内側面12b,22b側における、スラスト円板3Aの近傍に溶接部81が設けられている。これにより、回転主軸90Bは、
図12に示した回転主軸90と同様、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとの間で位相が固定されている。
【0109】
本実施形態においては、
図12に示す回転主軸90のように、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2おける外面側から溶接処理を行えばよい。あるいは、
図13に示す回転主軸90Aのように、第1の主軸部材1の一端1a側にスラスト円板3が設けられるのみの構成である場合には、スラスト円板3に中心軸Jに沿った貫通部36を形成することで、スラスト円板3を中空状とし、第1の主軸部材1における第1の凹部12側から溶接処理を行ってもよい。
【0110】
本実施形態において、溶接部8,81,82を形成させる方法としては、特に限定されないが、例えば、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接等の各方法の中から適宜選択することができる。
また、
図14に示した回転主軸90Bに備えられる溶接部82を形成させる場合には、例えば、銀ろう付け等の方法で、第1の主軸部材1及び第2の主軸部材2とスラスト円板3Aとを溶接してもよい。
【0111】
本実施形態の回転主軸90,90A,90Bによれば、第3~第7の実施形態における、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが軸方向で拘束される構造に加え、さらに、溶接構造による回転方向での拘束構造を備える。これにより、上記同様、分割構造でありながら、回転主軸90,90A,90Bの軸方向における各部材の拘束力が高められ、さらに、回転方向における拘束力が高められる。従って、より一層安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0112】
[第11の実施形態]
以下に、第11の実施形態の回転主軸について、第1~第10の実施形態で参照した図面と同じ図面を適宜参照しながら説明する。
本実施形態の回転主軸は、全体的且つ詳細な図示は省略するが、軸方向の拘束構造を有する第3~第7施形態の回転主軸30,40,40A,40B,50,60において、第1の主軸部材及び第2の主軸部材のうちの一方あるいは両方と、スラスト円板とが、上述した第8~第10の実施形態における回転方向の拘束構造を組み合わせて備えた構成を採用する。本実施形態の回転主軸は、上記構成により、第1の主軸部材、及び/又は、第2の主軸部材と、スラスト円板との間が、軸方向及び回転方向の両方で強固に拘束される。
【0113】
本実施形態の主軸部材によれば、第1の主軸部材及び第2の主軸部材とスラスト円板とが軸方向で拘束される構造に加え、さらに、回転方向で拘束する複数の拘束構造を組み合わせて備える。これにより、分割構造でありながら、回転主軸の軸方向並びに回転方向の両方における各部材の拘束力をさらに高めることができる。従って、より一層安定した回転動作を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0114】
[その他の実施形態]
本発明に係る回転主軸は、上記の第1~第11の実施形態に係る構成のものには限定されず、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・置換・変更が可能なものである。
【0115】
例えば、本実施形態では、各々の主軸部材とスラスト円板とを異なる材料から構成した例を説明しているが、これらを同じ材料から構成してもよく、適宜選択して採用することが可能である。
【0116】
<回転機械>
本実施形態の回転機械は、その全体の図示は省略するが、上述した第1~第11の実施形態で説明した回転主軸10,20,30,40,40A,40B,50,60,70,80,90の何れかを備えて構成される。
本実施形態の回転機械としては、例えば、ターボ圧縮機や遠心式ポンプ等の各種の回転機械が挙げられる。このような回転機械の具体例としては、例えば、特開2019-173615号公報に開示した回転機械等を例示でき、このような回転機械に、上記の各実施形態の何れかの回転主軸を適用したもの等が挙げられる。
【0117】
上記のような回転機械は、例えば、上記の各実施形態に示した回転主軸と、図示略のロータ部及びステータ部からなるモータと、回転主軸の一方の端部に取り付けられるタービンインペラと、回転主軸のスラスト円板を挟み込むように設けられるスラスト軸受と、回転主軸の他方の端部に取り付けられるコンプレッサインペラと、各構成部品を内部に収容するハウジングとを備えたもの等が挙げられる。
【0118】
本実施形態の回転機械によれば、上記の第1~第9の実施形態に係る回転主軸を備えたものなので、回転主軸において、遠心力や温度変化により、スラスト円板の主軸部材に対する緩みが生じるのを抑制でき、回転主軸の回転動作が長期間にわたって安定する。これにより、優れた動作効率が長期間にわたって得られるものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の回転主軸によれば、遠心力や温度変化によってスラスト円板の主軸部材に対する緩みが生じるのを抑制でき、安定した回転動作を保持することが可能なものである。従って、本発明の回転主軸は、例えば、ターボ圧縮機や遠心式ポンプ等の各種の回転機械に用いられる回転主軸として非常に好適である。
【符号の説明】
【0120】
10,20,30,40,40A,40B,50,60,70,80,90,90A,90B…回転主軸
1,1A,1B,1C,1D…第1の主軸部材
1a…一端
11…端面
12,12A,12B,12C…第1の凹部(凹部)
12a…底面
12b…内側面
12c…雌ねじ
12d…ねじ穴
1b…他端
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F…第2の主軸部材
2a…一端
21…端面
22,22A,22B,22C…第2の凹部(凹部)
22a…底面
22b…内側面
22c…雌ねじ
2b…他端
23…貫通孔
24…ナット
25…溝部
3,3A,3B,3C,3D,3E…スラスト円板
3a…一面
3b…他面
31,31B,31C,31D…第1の凸部(凸部)
31a…雄ねじ
31b…外側面
32,32B,32C,32D…第2の凸部(凸部)
32a…雄ねじ
32b…外側面
32c…凹凸面
33…貫通孔
36…貫通部
4,4A,4B…固定ボルト
4a,4b…ねじ部
5…インペラ
6…ノックピン
7…キー
8,81,82溶接部
J…中心軸