(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】受信局、無線通信システム、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/024 20170101AFI20231227BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20231227BHJP
H04J 1/06 20060101ALI20231227BHJP
H04B 7/155 20060101ALI20231227BHJP
H04B 7/185 20060101ALI20231227BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H04B7/024
H04B7/0413
H04J1/06 100
H04B7/155
H04B7/185
H04L7/00 160
(21)【出願番号】P 2020016258
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-05-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
(72)【発明者】
【氏名】柴山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】桶間 椋
(72)【発明者】
【氏名】山里 敬也
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-005032(JP,A)
【文献】五藤大介,他4名,低軌道衛星(LEO)-MIMO衛星システムの伝送容量評価 ,電子情報通信学会論文誌B ,電子情報通信学会,2019年,Vol.J102-B No.8 ,pp.614-623
【文献】桶間椋,他4名,深層学習を用いた2波LEO-MIMO制御信号の検出手法 ,電子情報通信学会技術研究報告,一般社団法人電子情報通信学会,2019年05月, Vol.119 No.27,pp.13-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/024
H04B 7/0413
H04J 1/06
H04B 7/155
H04B 7/185
H04L 7/00
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する送信局が所定周波数帯域で送信する制御信号、及び制御信号に同期して送信局が他の周波数帯域で送信するデータ信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した制御信号から、時間軸上でそれぞれ幅を有する複数の区間の制御信号を切出す切出し部と、
前記切出し部が切出した複数の区間の制御信号に基づいて、制御信号の周波数誤差を検出する誤差検出部と、
前記誤差検出部が検出した周波数誤差に基づいて、データ信号のチャネルを推定するチャネル推定
部と、
前記誤差検出部が検出した周波数誤差、所定周波数帯域の制御信号、及び移動する送信局の位置情報に基づく機械学習を行う機械学習部と
を有し、
前記誤差検出部は、
前記機械学習部が機械学習を行った結果を反映させて、制御信号の周波数誤差を検出すること
を特徴とする受信局。
【請求項2】
前記受信部は、
複数の送信局が送信する所定の同一周波数帯域に重畳された複数の制御信号、及び制御信号それぞれに同期して複数の送信局が送信する他の周波数帯域に重畳された複数のデータ信号を受信し、
前記切出し部は、
前記受信部が受信した複数の制御信号それぞれから、時間軸上でそれぞれ幅を有する複数の区間の制御信号を切出し、
前記誤差検出部は、
前記切出し部が切出した複数の区間の制御信号それぞれに基づいて、制御信号それぞれの周波数誤差を検出し、
前記誤差検出部が検出した制御信号それぞれの周波数誤差に基づいて、複数の制御信号それぞれを同期させる同期部をさらに有し、
前記チャネル推定部は、
前記同期部が同期させた複数の制御信号に基づいて、複数のデータ信号それぞれのチャネルを推定すること
を特徴とする
請求項1に記載の受信局。
【請求項3】
移動する送信局が送信する信号を受信する受信局を備えた無線通信システムにおいて、
前記受信局は、
送信局が所定周波数帯域で送信する制御信号、及び制御信号に同期して送信局が他の周波数帯域で送信するデータ信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した制御信号から、時間軸上でそれぞれ幅を有する複数の区間の制御信号を切出す切出し部と、
前記切出し部が切出した複数の区間の制御信号に基づいて、制御信号の周波数誤差を検出する誤差検出部と、
前記誤差検出部が検出した周波数誤差に基づいて、データ信号のチャネルを推定するチャネル推定
部と、
前記誤差検出部が検出した周波数誤差、所定周波数帯域の制御信号、及び移動する送信局の位置情報に基づく機械学習を行う機械学習部と
を有し、
前記誤差検出部は、
前記機械学習部が機械学習を行った結果を反映させて、制御信号の周波数誤差を検出すること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
移動する送信局が所定周波数帯域で送信する制御信号、及び制御信号に同期して送信局が他の周波数帯域で送信するデータ信号を受信する受信工程と、
受信した制御信号から、時間軸上でそれぞれ幅を有する複数の区間の制御信号を切出す切出し工程と、
切出した複数の区間の制御信号に基づいて、制御信号の周波数誤差を検出する誤差検出工程と、
検出した周波数誤差に基づいて、データ信号のチャネルを推定するチャネル推定工
程と、
前記誤差検出工程により検出した周波数誤差、所定周波数帯域の制御信号、及び移動する送信局の位置情報に基づく機械学習を行う機械学習工程と
を含み、
前記誤差検出工程では、
前記機械学習工程により機械学習を行った結果を反映させて、制御信号の周波数誤差を検出すること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
前記受信工程では、
複数の送信局が送信する所定の同一周波数帯域に重畳された複数の制御信号、及び制御信号それぞれに同期して複数の送信局が送信する他の周波数帯域に重畳された複数のデータ信号を受信し、
前記切出し工程では、
前記受信工程により受信した複数の制御信号それぞれから、時間軸上でそれぞれ幅を有する複数の区間の制御信号を切出し、
前記誤差検出工程では、
前記切出し工程により切出した複数の区間の制御信号それぞれに基づいて、制御信号それぞれの周波数誤差を検出し、
前記誤差検出工程により検出した制御信号それぞれの周波数誤差に基づいて、複数の制御信号それぞれを同期させる同期工程をさらに含み、
前記チャネル推定工程では、
前記同期工程により同期させた複数の制御信号に基づいて、複数のデータ信号それぞれのチャネルを推定すること
を特徴とする
請求項4に記載の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信局、無線通信システム、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低軌道(LEO:low Earth orbit)衛星システムは、静止衛星よりも低軌道(800~2000km)の衛星を用いて通信を行う無線通信システムである。この低軌道衛星システムは、高度約36,000kmにおける静止軌道(GEO:geostationary earth orbit)の静止衛星システムに比べて、端末局における通信が低遅延・低減衰量となる特徴がある。
【0003】
また、複数の受信アンテナを有する端末局は、複数のLEO衛星からの信号を用いたMIMO(Multi-Input Multi-Output)伝送により、単一のLEO衛星からの信号を受信する場合よりも通信容量を向上させることができる。
【0004】
端末局が受信する受信信号は、LEO衛星の移動に伴うドップラーシフトの影響を受けてしまう。よって、複数のLEO衛星を用いたMIMO伝送では、LEO衛星それぞれのドップラーシフトを個別に推定し、LEO衛星固有の制御信号を相互に分離できるように、LEO衛星ごとに固有の周波数帯域を割当てる必要があった。
【0005】
しかし、LEO衛星ごとに固有の周波数帯域を割当てると、システムの帯域幅を減少させることとなり、LEO-MIMOシステムの通信容量を低下させていた。
【0006】
例えば、低軌道衛星システムの周波数利用効率を向上させるために、ドップラーシフト環境下で複数のLEO衛星からの動的なMIMO伝送及び周波数割当てを行うダウンリンク制御方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ここでは、LEO衛星からのダウンリンク信号である制御信号とデータ信号を異なる周波数に配置している。さらに、サービスエリア内で端末局が受信可能な複数のLEO衛星の制御信号をそれぞれ異なる周波数帯域に割当てるように設定している。
【0008】
端末局は、複数のLEO衛星からの制御信号を用いて同期を行い、受信可能なLEO衛星とその数を把握する。さらに、端末局は、制御信号を用いてチャネル推定を行い、受信できる全LEO衛星との推定情報に基づいて、MIMO伝送を行うための対象となる複数のLEO衛星の情報をアップリンク信号によって基地局に通知する。
【0009】
端末局から通知を受けた基地局は、複数の当該LEO衛星を用いて端末局にMIMO伝送を行う。このとき、基地局は、各端末局が受信可能な衛星数に基づいて、固有のMIMO帯域をデータ信号帯域に設定し、それぞれ各LEO衛星に対して送信を開始する。
【0010】
さらに、基地局は、各LEO衛星に対する制御信号により、LEO衛星それぞれのデータ信号の周波数、帯域幅、及び衛星情報を通知する。なお、各LEO衛星を経由して送信される制御信号とデータ信号は、同じベースバンド信号から生成されたものであり、同期している。
【0011】
端末局は、通知された情報に従って、データ信号の受信、等化処理を行い、データを復調する。より具体的には、端末局は、制御信号のチャネル推定情報を用いて、MIMO信号の等化のための重み行列を算出し、各LEO衛星の信号を分離して復調する。
【0012】
このダウンリンク制御方式では、各LEO衛星の異なるドップラーシフトに伴う周波数非同期によって受信信号の誤検出が生じることを防ぐため、サービスエリア内で端末局が受信可能なLEO衛星の制御信号を異なる周波数帯域に割当てている。
【0013】
しかし、LEO衛星数が増加する度に制御信号が増加するため、周波数利用効率が劣化することが懸念される。つまり、複数のLEO衛星によるMIMO伝送を行った場合でも、制御信号の増加により、伝送容量を向上させることができないことがある。
【0014】
また、LEO衛星数が増加した場合であっても低軌道衛星システムの周波数利用効率を向上させるために、ドップラーシフト環境下で複数のLEO衛星からの動的なMIMO伝送及び周波数割当てを行い、制御信号をLEO衛星間で同周波数帯域に割当てるダウンリンク制御方式が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
ここでは、同周波数帯域に重畳された制御信号を受信した受信機(端末局)は、受信信号に対して機械学習を用いることにより、各制御信号の検出を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】D.Goto、H.Shibayama、F.Yamashita、T.Yamazato、"LEO-MIMO Satellite Systems for High Capacity Transmission"、IEEE GLOBECOM 2018、Dec 2018.
【文献】桶間椋、五藤大介、山里敬也、山下史洋、柴山大樹、「深層学習を用いた2波LEO-MIMO制御信号の検出手法」、電子情報通信学会、May. 2019、vol.119,no.27,pp.13-17
【文献】I.Ali, N.Al-Dhahir and J.E.Hershey, "Doppler characterization for LEO satellites", IEEE Transactions on Communications, March 1998, vol.46, no.3, pp.309-313
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述したダウンリンク制御方式は、局所的な周波数推定しか行うことができないため、推定精度を向上させることが困難になる場合がある。
【0018】
例えば、衛星のドップラー周波数の変動は、時間軸で無相関の特性ではなく、衛星の軌道と地上局の位置によって概ね定まるものであり、時間を変数とした三角関数で定義されるものである(例えば、特許文献3参照)。
【0019】
一方、ドップラー周波数は、太陽と月の重力の影響を受けた地球軌道の変動(三体問題)、衛星の軌道や地上局の位置の変動、送信機自体の周波数変動によって誤差が生じるものである。よって、軌道情報や位置情報といった周辺情報のみからでは、チャネル推定の精度を十分に向上させることは困難である。
【0020】
本発明は、移動する送信局が送信する信号を精度よく受信することができる受信局、無線通信システム、及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様にかかる受信局は、移動する送信局が所定周波数帯域で送信する制御信号、及び制御信号に同期して送信局が他の周波数帯域で送信するデータ信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した制御信号から、時間軸上でそれぞれ幅を有する複数の区間の制御信号を切出す切出し部と、前記切出し部が切出した複数の区間の制御信号に基づいて、制御信号の周波数誤差を検出する誤差検出部と、前記誤差検出部が検出した周波数誤差に基づいて、データ信号のチャネルを推定するチャネル推定部と、前記誤差検出部が検出した周波数誤差、所定周波数帯域の制御信号、及び移動する送信局の位置情報に基づく機械学習を行う機械学習部とを有し、前記誤差検出部は、前記機械学習部が機械学習を行った結果を反映させて、制御信号の周波数誤差を検出することを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様にかかる無線通信システムは、移動する送信局が送信する信号を受信する受信局を備えた無線通信システムにおいて、前記受信局は、送信局が所定周波数帯域で送信する制御信号、及び制御信号に同期して送信局が他の周波数帯域で送信するデータ信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した制御信号から、時間軸上でそれぞれ幅を有する複数の区間の制御信号を切出す切出し部と、前記切出し部が切出した複数の区間の制御信号に基づいて、制御信号の周波数誤差を検出する誤差検出部と、前記誤差検出部が検出した周波数誤差に基づいて、データ信号のチャネルを推定するチャネル推定部と、前記誤差検出部が検出した周波数誤差、所定周波数帯域の制御信号、及び移動する送信局の位置情報に基づく機械学習を行う機械学習部とを有し、前記誤差検出部は、前記機械学習部が機械学習を行った結果を反映させて、制御信号の周波数誤差を検出することを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様にかかる無線通信方法は、移動する送信局が所定周波数帯域で送信する制御信号、及び制御信号に同期して送信局が他の周波数帯域で送信するデータ信号を受信する受信工程と、受信した制御信号から、時間軸上でそれぞれ幅を有する複数の区間の制御信号を切出す切出し工程と、切出した複数の区間の制御信号に基づいて、制御信号の周波数誤差を検出する誤差検出工程と、検出した周波数誤差に基づいて、データ信号のチャネルを推定するチャネル推定工程と、前記誤差検出工程により検出した周波数誤差、所定周波数帯域の制御信号、及び移動する送信局の位置情報に基づく機械学習を行う機械学習工程とを含み、前記誤差検出工程では、前記機械学習工程により機械学習を行った結果を反映させて、制御信号の周波数誤差を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、移動する送信局が送信する信号を精度よく受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態にかかる無線通信システムの概要を例示する図である。
【
図2】基地局が有する機能を例示する機能ブロック図である。
【
図3】上り制御信号のフレームフォーマットを例示する図である。
【
図4】下り制御信号のフレームフォーマットを例示する図である。
【
図5】中継局が有する機能を例示する機能ブロック図である。
【
図6】端末局が有する機能を例示する機能ブロック図である。
【
図7】機械学習部が行う機械学習を模式的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を用いて無線通信システムの一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態にかかる無線通信システム100の概要を例示する図である。無線通信システム100は、例えば基地局10、複数の中継局A,B,C・・・X、及び複数の端末局1,2,3を有する。なお、基地局10、中継局A,B,C・・・X、及び端末局1,2,3は、信号を送信する送信局としての機能と、信号を受信する受信局としての機能とをそれぞれ備えている。
【0027】
中継局A,B,C・・・Xそれぞれは、例えばLEO衛星などの人工衛星又は地上を移動する移動局などであり、移動しながら基地局10と端末局1,2,3との間で信号の中継を行う。ここでは、所定のサービスエリア内に位置する端末局に対し、中継局A,B,Cが信号を中継することができる範囲内に位置していることとする。
【0028】
基地局10は、例えば地上に配置された地上局であり、所定のサービスエリア内に位置する複数の端末局に対して信号をFDMA(Frequency-Division Multiple Access)方式により多重伝送する。また、基地局10は、周波数帯域ごとに等化・分離を可能な端末局に対してMIMO(空間多重)伝送を行うダウンリンク多元接続を行う。
【0029】
このとき、基地局10は、中継局A,B,C・・・Xそれぞれの位置(位置情報)を把握しており、中継局それぞれの位置に基づいて、所定のサービスエリア内で端末局が信号を受信可能な中継局を識別する。
【0030】
なお、基地局10は、中継局が所定の軌道上を移動する人工衛星である場合には、当該軌道を示す情報及び時刻に基づいて中継局それぞれの現在位置を把握する。また、基地局10は、中継局が地上を移動する移動局などである場合には、中継局がGPS(Global Positioning System)等を利用して取得した位置情報を、地上ネットワーク等を介して入手することにより、中継局それぞれの現在位置を把握する。
【0031】
端末局1,2,3は、それぞれ1つ又は複数のアンテナを備え、所定のサービスエリア内で通信サービスの提供を受ける端末である。ここでは、例えば端末局1はアンテナを1本備え、端末局2はアンテナを2本備え、端末局3はアンテナを3本備えることとする。つまり、2本以上のアンテナを有する端末局2,3に対しては、MIMO伝送が可能になっている。
【0032】
以下、基地局10が送信する下り信号を、中継局A,B,Cが端末局1,2,3に対して中継するダウンリンクを例として、無線通信システム100についての説明を行う。
【0033】
基地局10は、端末局1,2,3が所定のサービスエリア内で信号を受信可能な中継局A,B,Cを介して、同一の周波数帯域に割当てた制御信号A,B,Cを端末局1,2,3に対して送信する。
【0034】
また、基地局10は、端末局1,2,3が送信した上り制御信号が示す端末局それぞれの要求中継局に対し、データ信号の周波数帯域を割当てる。そして、基地局10は、割当てたデータ信号の周波数帯域を示す情報を下り制御信号(制御信号A,B,C)により端末局1,2,3に通知するとともに、対応する中継局(要求中継局)を介してMIMO伝送を開始する。
【0035】
なお、制御信号及びデータ信号は、それぞれ同じベースバンド信号から生成されるため、互いに同期しているものとする。つまり、制御信号を用いた同期により、データ信号も同期させることができるものとする。
【0036】
中継局A,B,Cは、基地局10が送信した信号を受信し、周波数変換及び増幅などを行うことにより、端末局1,2,3が受信可能な状態に信号変換して中継伝送する。具体的には、中継局A,B,Cは、ダウンリンクの信号である制御信号及びデータ信号を異なる周波数帯域に配置する。制御信号は、周波数帯域が固定されている。そして、サービスエリア内に位置する端末局1,2,3は、制御信号の周波数帯域(中心周波数など)を既知であるとする。データ信号の周波数帯域W1,W2,W3は、動的に変更可能にされている。
【0037】
ここでは、中継局A,B,Cと、制御信号A,B,C及びデータ信号A,B,Cのアルファベットが1対1で対応させてある。例えば、中継局Aは、制御信号Aを所定の周波数帯域において送信し、データ信号Aを周波数帯域W1,W2,W3において送信する。中継局Bは、制御信号Bを所定の周波数帯域において送信し、データ信号Bを周波数帯域W2,W3において送信する。中継局Cは、制御信号Cを所定の周波数帯域において送信し、データ信号Cを周波数帯域W3において送信する。
【0038】
図1に示した例では、端末局1宛てのデータ信号は、中継局Aから周波数帯域W1において送信される。端末局2宛てのデータ信号は、中継局A,Bから周波数帯域W2においてMIMO伝送される。端末局3宛てのデータ信号は、中継局A,B,Cから周波数帯域W3においてMIMO伝送される。
【0039】
端末局1,2,3は、中継局A,B,Cから送信された制御信号A,B,Cのうち、受信可能な制御信号を受信して同期処理を行い、それぞれ受信可能な中継局とその数を把握する。
【0040】
さらに、端末局1,2,3は、同期をとった制御信号を用いて中継局と自局との間のデータ信号のチャネルを推定し、受信可能な中継局とチャネルを示す情報(チャネル情報)に基づいて、MIMO伝送を要求する中継局(要求中継局)を示す情報を、任意のアップリンクを介して基地局10に通知する。
【0041】
また、端末局1,2,3は、制御信号とデータ信号とが同期していることを利用し、通知された情報に従ってデータ信号の受信及び等化処理を行い、データを復調する。さらに、端末局1,2,3は、制御信号のチャネル情報からMIMO信号を等化するための重み行列を算出し、空間多重された各中継局の信号を分離し、データを復調する。
【0042】
なお、中継局A,B,Cが人工衛星である場合のように、無線通信が見通し環境での通信であり、周波数選択性が小さいチャネル特性を有する場合には、制御信号による同期及びチャネル情報をデータ信号の等化に反映できるものとする。
【0043】
また、各FDMA信号間のガードバンド(
図1に示したG)を、無線通信システム100において想定される最大ドップラー周波数Δf
maxの2倍の値に設定することにより、キャリア間干渉を回避することが可能となる。
【0044】
次に、基地局10、中継局A,B,C・・・X、及び端末局1,2,3それぞれが有する機能の具体例について説明する。
【0045】
図2は、基地局10が有する機能を例示する機能ブロック図である。
図2に示すように、基地局10は、受信部11、端末局検出部12、中継局検出部13、選択部14、位置算出部15、帯域割当部16、信号生成部17、及び送信部18を有する。
【0046】
受信部11は、端末局1,2,3がそれぞれ送信する上り制御信号を受信する。
図3は、上り制御信号のフレームフォーマットを例示する図である。
図3に示すように、上り制御信号には、例えば同期に用いる同期用既知信号、端末局を特定する端末局ID、及び要求中継局を特定する要求中継局IDが含まれている。
【0047】
端末局検出部12(
図2)は、受信部11が受信した上り制御信号に含まれる端末局IDに基づいて、所定のサービスエリア内に位置する端末局を検出する。中継局検出部13は、上り制御信号に基づいて、端末局検出部12が検出した端末局それぞれがMIMO伝送等の信号中継を要求する要求中継局を端末局ごとに検出する。
【0048】
選択部14は、端末局1宛ての送信データ、端末局2宛ての送信データ、及び端末局3宛ての送信データそれぞれに対し、端末局検出部12が検出した端末局ぞれぞれの要求中継局に基づいて、データ信号を中継すべき中継局を選択する。
【0049】
例えば、
図1に示した例のように、選択部14は、端末局1宛ての送信データに対して中継局Aを選択し、端末局2宛ての送信データに対して中継局A,Bを選択し、端末局3宛ての送信データに対して中継局A,B,Cを選択する。
【0050】
位置算出部15は、予め定められた中継局A,B,C・・・Xの軌道及び時刻(又は中継局A,B,C・・・XのGPS等による位置情報など)に基づいて、中継局それぞれの現在位置を算出し、帯域割当部16に対して出力する。
【0051】
帯域割当部16は、位置算出部15が算出した中継局それぞれの現在位置に基づいて、当該基地局10が送信する信号を所定のサービスエリア内に位置する端末局に中継することができる中継局それぞれに対し、信号を送信するための周波数帯域をそれぞれ割当てる。
【0052】
信号生成部17は、選択部14が選択した中継局それぞれと、帯域割当部16が割当てた周波数帯域との組み合わせに基づいて、中継局それぞれを介して端末局1,2,3へ送信すべき下り制御信号及びデータ信号を生成し、送信部18に対して出力する。
【0053】
図4は、下り制御信号のフレームフォーマットを例示する図である。
図4に示すように、下り制御信号には、例えば同期・推定用既知信号、中継局ID、対象端末局ID、及びデータ信号周波数帯域情報が含まれている。同期・推定用既知信号は、例えば同期及びチャネルの推定に用いられる情報である。中継局IDは、中継すべき中継局を特定する情報である。対象端末局IDは、ダウンリンクの対象となる対象端末局を特定する情報である。データ信号周波数帯域情報は、データ信号を送信するための周波数帯域を示す情報である。つまり、下り制御信号は、データ信号と、データ信号の周波数帯域との対応も示している。
【0054】
例えば、信号生成部17は、
図1に例示したように、端末局1宛ての信号として、中継局Aを介して所定の周波数帯域により送信する制御信号Aと、中継局Aを介して周波数帯域W1により送信するデータ信号とを生成する。端末局1宛てのデータ信号は、中継局Aが送信するデータ信号Aが周波数帯域W1に割り当てられることによって送信される。
【0055】
また、信号生成部17は、端末局2宛ての信号として、中継局Bを介して所定の周波数帯域により送信する制御信号Bと、中継局A,Bを介して周波数帯域W2により送信するデータ信号とを生成する。端末局2宛てのデータ信号は、中継局A,Bが送信するデータ信号A,Bが周波数帯域W2に多重されることによってMIMO伝送される。
【0056】
また、信号生成部17は、端末局3宛ての信号として、中継局Cを介して所定の周波数帯域により送信する制御信号Cと、中継局A,B,Cを介して周波数帯域W3により送信するデータ信号とを生成する。端末局3宛てのデータ信号は、中継局A,B,Cが送信するデータ信号A,B,Cが周波数帯域W3に多重されることによってMIMO伝送される。
【0057】
このように、信号生成部17は、端末局ごとにデータ信号を中継する中継局と周波数帯域の割当てを実質的に行っている。
【0058】
送信部18(
図2)は、信号生成部17が生成した下り制御信号及びデータ信号を中継局A,B,Cそれぞれに対して送信し、中継局を介した端末局1,2,3への通信を行う。
【0059】
図5は、中継局A(又は中継局B,C)が有する機能を例示する機能ブロック図である。
図5に示すように、中継局A(又は中継局B,C)は、信号受信部21、周波数変換・増幅部22、及び信号送信部23を有する。
【0060】
信号受信部21は、基地局が送信した信号を受信し、周波数変換・増幅部22に対して出力する。周波数変換・増幅部22は、信号受信部21が受信した信号に対し、周波数変換及び増幅等の処理を行う。信号送信部23は、周波数変換・増幅部22が処理した信号を端末局に対して送信する。
【0061】
なお、中継局A(又は中継局B,C)は、下り制御信号を受信することにより、下り制御信号の周波数帯域(中心周波数など)及び中継局IDなどの情報を把握する。
【0062】
図6は、端末局1(又は端末局2,3)が有する機能を例示する機能ブロック図である。
図6に示すように、端末局1(又は端末局2,3)は、例えば要求送信局(中継局)選択部30及びデータ信号復調部40を有する。
【0063】
要求送信局選択部30は、下り制御信号受信部301、切出し部302、記憶部303、誤差検出部304、機械学習部305、同期部306、中継局検出部307、チャネル推定部308、チャネル相関算出部309、選択部310、信号生成部311、及び送信部50を有する。
【0064】
下り制御信号受信部301は、中継局を介して、基地局10が送信した受信可能な下り制御信号を受信し、切出し部302に対して出力する。より具体的には、下り制御信号受信部301は、複数の移動する中継局(送信局)が送信する所定の同一周波数帯域に重畳された複数の制御信号を受信する(
図1参照)。
【0065】
切出し部302は、下り制御信号受信部301が受信した複数の制御信号それぞれから、窓関数を用いて複数区間の制御信号を切出し、切出した複数区間の制御信号にフーリエ変換を行って記憶部303にそれぞれ記憶させる。
【0066】
なお、切出し部302が用いる窓関数は、指定した区間を1、それ以外の区間を0に設定した矩形窓であってもよいが、フーリエ変換後のスペクトルのサイドローブを抑圧するため、ハミング窓のような両端がなめらかな窓関数であることが望ましい。
【0067】
誤差検出部304は、切出し部302が切出した複数区間のフーリエ変換後の制御信号それぞれを記憶部303から読み出し、複数区間の制御信号それぞれ及び参照情報に基づいて、制御信号それぞれの周波数誤差(又はドップラー周波数)を検出する。そして、誤差検出部304は、検出した制御信号それぞれの周波数誤差及び参照情報を機械学習部305及び同期部306に対して出力する。
【0068】
なお、誤差検出部304が用いる参照情報には、予め取得した基地局10が送信する送信信号に関する送信信号情報と、送信信号以外の情報とが含まれる。送信信号情報には、例えば制御信号の中心周波数、QPSK又はQAMなどのデジタル信号の一次変調方式、及びOFDM変調などの二次変調方式が含まれる。また、送信信号以外の情報には、例えば、端末局の位置情報、方位角情報、速度情報、及び、中継局の位置情報などが含まれる。
【0069】
また、誤差検出部304は、機械学習部305が機械学習を行った結果を反映させて、制御信号の周波数誤差を検出する機能を備えている。
【0070】
機械学習部305は、誤差検出部304が検出した周波数誤差、所定周波数帯域の制御信号、及び移動する中継局(送信局)の位置情報に基づく機械学習を行い、機械学習を行った結果を誤差検出部304に対して出力する。
【0071】
図7は、機械学習部305が行う機械学習を模式的に例示する図である。例えば、機械学習部305は、複数区間の制御信号に対してフーリエ変換を行った結果を並列に接続したスペクトログラムを生成し、生成したスペクトログラムを入力層70として、ニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)による機械学習を行う。例えば、入力層70は、横軸が時間t
0~t
nを表し、縦軸が周波数を表すスペクトログラムである。
【0072】
そして、機械学習部305は、入力層70に対し、畳み込み層701、プーリング層702、畳み込み層703、プーリング層704・・・による特徴量の検出と圧縮を行い、全結合層80による分類を行って、出力層90の出力値を算出することにより、ドップラー周波数の推定を行う。出力層90には、時間ごとの各周波数と、推定される確率とが含まれる。
【0073】
また、機械学習部305は、ディープラーニングネットワーク(DNN:deep neural network)の入力層として、受信信号の一区間に対して高速フーリエ変換を行った周波数スペクトラム情報を用い、出力層として推定対象となる全人口衛星のドップラー周波数を設定することにより、受信信号から該当信号内のドップラー周波数を推定してもよい。
【0074】
なお、各中継局が送信する下り制御信号が同一周波数帯域に重畳されていても、中継局が人工衛星などである場合のチャネルモデルや、通信状況が地上に比べてシンプルな環境では、ある程度受信パターンが制限される。
【0075】
この場合、機械学習部305が例えば入力層、隠れ層、及び出力層によって構成される階層型ニューラルネットワークを用いた機械学習を行うことによるブラインド推定がなされても、誤差検出部304は、各中継局の下り制御信号の周波数誤差(ドップラー周波数)を検出することが可能である。
【0076】
同期部306(
図6)は、誤差検出部304が検出した制御信号それぞれの周波数誤差に基づいて、複数の下り制御信号それぞれを同期させる。
【0077】
中継局検出部307は、同期部306が同期させた複数の制御信号に含まれる中継局IDに基づいて、基地局10が送信した信号を中継すべき中継局を検出する。
【0078】
チャネル推定部308は、誤差検出部304が検出した周波数誤差、及び同期部306が同期させた複数の制御信号に基づいて、各中継局が送信する複数のデータ信号それぞれのチャネル(ダウンリンクのチャネル情報)を推定し、チャネル相関算出部309に対して出力する。例えば、チャネル推定部308は、自局宛ての下り制御信号に基づいて、自局に割当てられたデータ信号の周波数帯域を推定(検出)することとなる。
【0079】
また、チャネル推定部308は、推定されたドップラー周波数に基づいてチャネルを推定しているので、ドップラー効果に基づく周波数誤差を補償することができ、精度よくチャネルを推定することができる。
【0080】
チャネル相関算出部309は、チャネル推定部308が推定したチャネルの相関を算出し、算出結果を選択部310に対して出力する。
【0081】
選択部310は、チャネル相関算出部309が算出したチャネルの相関に基づいて、ダウンリンクの中継(MIMO伝送等)を要求する中継局(要求中継局)を選択し、信号生成部311に対して出力する。例えば、選択部310は、チャネルの相関が低く、MIMO伝送を要求する中継局を選択する。
【0082】
具体例として、中継局A,B,Cと、端末局3が有する3つのアンテナとの間のチャネル情報により生成される3×3のチャネル行列をHとすると、行列式det|H|が大きいほどチャネルの相関が低くなり、伝送容量が大きくなる傾向がある。このため、端末局3は、チャネル情報を推定して生成される行列H’の行列式det|H’|の値に基づいてMIMO伝送の有無を設定してもよい。
【0083】
また、各端末局は、必ずしも受信可能な中継局の全てを選択する必要はない。例えば、
図1に示した例では、端末局2は、中継局A,B,Cから送信された下り制御信号A,B,Cを受信可能であっても、中継局B,Cの相関が高くなる場合には、中継局A,B(又は中継局A,Cの組み合わせ)を選択してMIMO伝送を要求してもよい。
【0084】
また、端末局1,2は、所有するアンテナ数が受信可能な中継局数を下回っているため、それぞれのアンテナ数以下の中継局を選択することが必須となる。
【0085】
信号生成部311(
図6)は、選択部310が選択した要求中継局を示す情報を含む上り制御信号を生成し、送信部50に対して出力する。
【0086】
送信部50は、信号生成部311が生成した上り制御信号を基地局10へ送信する。なお、送信部50が上り制御信号を基地局10へ送信する方法は任意である。すなわち、送信部50は、中継局を介して上り制御信号を基地局10へ送信してもよいし、図示しない他の地上局などを介して上り制御信号を基地局10へ送信してもよい。
【0087】
データ信号復調部40は、データ信号受信部401、対象端末局検出部402、等化行列生成部403、及び等化・復調部404を有する。
【0088】
データ信号受信部401は、制御信号それぞれに同期して複数の中継局(送信局)が制御信号とは異なる周波数帯域で送信するデータ信号(又は制御信号とは異なる周波数帯域に重畳された複数のデータ信号)を受信し、受信したデータ信号を対象端末局検出部402及び等化・復調部404に対して出力する。
【0089】
なお、下り制御信号受信部301及びデータ信号受信部401は、下り制御信号及びデータ信号を受信する受信部60を構成するものとする。
【0090】
対象端末局検出部402は、データ信号受信部401が受信したデータ信号に基づいて、データ信号が自局宛てであるか否か(自局がデータ信号を受信すべき対象端末局であるか否か)を検出し、自局宛てであるデータ信号を等化行列生成部403に対して出力する。
【0091】
等化行列生成部403は、対象端末局検出部402から入力されたデータ信号、及びチャネル推定部308が推定したチャネル情報に基づいて、等化行列(受信重み行列)を生成し、等化・復調部404に対して出力する。
【0092】
等化・復調部404は、データ信号受信部401が受信したデータ信号に対し、等化行列生成部403が生成した等化行列を用いて、自局宛てのデータ信号の等化を行い、復調する。
【0093】
次に、無線通信システム100の動作例について説明する。
図8は、無線通信システム100の動作例を示す図である。
図8に示すように、まず、基地局10は、中継局それぞれの位置に基づいて、サービスエリア内で端末局1,2,3が受信可能な中継局を識別(検出)する(S100)。
【0094】
次に、基地局10は、全中継局に対して同一周波数帯域の下り制御信号を生成して送信する(S102)。
【0095】
端末局1,2,3は、各中継局から送信された下り制御信号のうち、受信可能な下り制御信号をそれぞれ受信する(S200)。このとき、下り制御信号には、それぞれ異なる周波数誤差(ドップラー周波数)が発生している。
【0096】
次に、端末局1,2,3は、下り制御信号に対し、窓関数を用いて複数区間を切出して、それぞれフーリエ変換を行い(S202)、複数区間のフーリエ変換した結果を記憶する(S204)。
【0097】
そして、端末局1,2,3は、複数区間のフーリエ変換した結果と、上述した参照情報とを用いて機械学習を行い、複数区間の周波数誤差を検出する(S206)。
【0098】
また、端末局1,2,3は、制御信号それぞれの周波数誤差に基づいて、複数の下り制御信号それぞれを同期させる(S208)。
【0099】
例えば、
図1に示した例では、端末局1は、中継局Aが送信する下り制御信号Aの周波数誤差Δf
Aを推定して周波数同期をとる。端末局2は、中継局A,Bが送信する下り制御信号A,Bの周波数誤差Δf
A,Δf
Bを推定して周波数同期をとる。端末局3は、中継局A,B,Cが送信する下り制御信号A,B,Cの周波数誤差Δf
A,Δf
B,Δf
Cを推定して周波数同期をとる。
【0100】
また、端末局1,2,3は、下り制御信号を受信した中継局と端末局との間のチャネルを推定する(S210)。
【0101】
そして、端末局1,2,3は、MIMO伝送を要求する中継局を選択し(S212)、要求する中継局を特定する情報(要求中継局ID)を含む上り制御情報を基地局10に対して送信する(S214)。
【0102】
基地局10は、端末局それぞれが送信する上り制御信号に含まれる端末局IDに基づいて、要求中継局を端末局ごとに検出し(S104)、端末局ごとにデータ信号を送信する中継局と周波数帯域を割当てる(S106)。
【0103】
そして、基地局10は、端末局ごとに下り制御信号とデータ信号を生成し、対応する中継局を介して端末局それぞれへ送信する(S108)。
【0104】
端末局1,2,3は、自局宛ての下り制御信号に基づいてデータ信号に割当てられた周波数帯域を検出(チャネルを推定)し、生成した受信重み行列を用いて自局宛てのデータ信号を復調する(S216)。
【0105】
また、端末局1,2,3は、受信可能な中継局を変更する必要があるか否かを判定し(S218)、中継局を変更する必要がある場合(S218:Yes)にはS210の処理に進み、中継局を変更する必要がない場合(S218:No)にはS216の処理を継続する。
【0106】
すなわち、端末局1,2,3は、基地局10が送信する下り制御信号をモニタリングし、中継局又は端末局の移動などに伴って、端末局が信号を受信可能な要求中継局を変更する場合には、再度チャネルを推定し、上り制御情報を基地局10に対して送信する。
【0107】
このように、端末局1,2,3は、誤差検出部304が検出した周波数誤差に基づいて、データ信号のチャネルを推定するので、移動する中継局(送信局)が送信する信号を精度よく受信することができる。
【0108】
また、端末局1,2,3は、移動する中継局(送信局)の数が増加した場合でも、周波数利用効率を低下させることなく、移動する中継局(送信局)が送信する信号を精度よく受信することができる。
【0109】
なお、基地局10、中継局A,B,C・・・X、及び端末局1,2,3がそれぞれ有する各機能は、それぞれ一部又は全部がPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0110】
例えば、本発明にかかる端末局1,2,3は、コンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0111】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明が上述の実施形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、省略、置換、その他の変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1,2,3・・・端末局、10・・・基地局、11・・・受信部、12・・・端末局検出部、13・・・中継局検出部、14・・・選択部、15・・・位置算出部、16・・・帯域割当部、17・・・信号生成部、18・・・送信部、30・・・要求送信局選択部、40・・・データ信号復調部、50・・・送信部、60・・・受信部、100・・・無線通信システム、301・・・下り制御信号受信部、302・・・切出し部、303・・・記憶部、304・・・誤差検出部、305・・・機械学習部、306・・・同期部、307・・・中継局検出部、308・・・チャネル推定部、309・・・チャネル相関算出部、310・・・選択部、311・・・信号生成部、401・・・データ信号受信部、402・・・対象端末局検出部、403・・・等化行列生成部、404・・・等化・復調部