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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】気泡発生装置および浮遊選鉱装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/20 20220101AFI20231227BHJP
   B01F 23/23 20220101ALI20231227BHJP
   B01F 31/80 20220101ALI20231227BHJP
   B03D 1/24 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B01F25/20
B01F23/23
B01F31/80
B03D1/24 102
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020039499
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137765
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 忠親
(72)【発明者】
【氏名】片桐 健
(72)【発明者】
【氏名】青木 悠二
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 美哲
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 樹人
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-149041(JP,A)
【文献】特開平09-313868(JP,A)
【文献】特開2011-050832(JP,A)
【文献】特開2000-237757(JP,A)
【文献】特開平08-230763(JP,A)
【文献】特開2009-131827(JP,A)
【文献】特開2008-246305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00 - 25/90
B01F 29/00 - 33/87
B03D 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹出口からガスを液中に吹き出して気泡を発生させるノズルと、
前記ノズルから発生した気泡に超音波を照射し、該気泡を分割する超音波振動子と、
前記ノズルの前記吹出口が内部に配置される円筒形の部材であり、中心軸回りに回転することで内部の気泡を外部に拡散させる拡散管と、を備える
ことを特徴とする気泡発生装置。
【請求項2】
前記拡散管は、
複数の長孔が形成された筒体と、
前記筒体の内周面に固定された複数の羽板と、を有する
ことを特徴とする請求項1記載の気泡発生装置。
【請求項3】
前記吹出口には複数の孔が形成された散気板が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の気泡発生装置。
【請求項4】
前記散気板は気泡発生面を上向きとして水平に配置されており、
前記超音波振動子は前記散気板と対向する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項記載の気泡発生装置。
【請求項5】
前記超音波振動子と前記散気板との距離は、超音波の半波長の整数倍である
ことを特徴とする請求項記載の気泡発生装置。
【請求項6】
前記散気板の前記孔の開口幅は20~60μmであり、隣り合う前記孔の間隔は0.5~1.5mmである
ことを特徴とする請求項のいずれかに記載の気泡発生装置。
【請求項7】
前記超音波振動子の内部に前記ノズルが組み込まれている
ことを特徴とする請求項1または2記載の気泡発生装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の気泡発生装置を備える
ことを特徴とする浮遊選鉱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡発生装置および浮遊選鉱装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、気泡発生装置、およびその気泡発生装置を有する浮遊選鉱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱石から有価金属を回収する金属製錬では、鉱石を粉砕した後、水を加えてスラリーとし、浮遊選鉱により脈石を除去することが行なわれる。鉱石の粉砕は、鉱石に含まれる有価鉱物を単体分離するため、有価鉱物の大きさと同程度の鉱物粒子が得られるように行なわれる。
【0003】
一般的な鉱石に含まれる有価鉱物の粒径は、その種類にもよるが、100μm程度である。そのため、一般に、鉱石は粒径100μm程度の粒子が得られるように粉砕される。しかし、低品位の鉱石などでは、鉱石に含まれる有価鉱物の粒径が小さいことがある。この場合、鉱石をより細かく粉砕する必要がある。例えば、鉱石を粒径5~20μm程度の微細粒子となるまで粉砕することがある。
【0004】
浮遊選鉱では、親水性の鉱物粒子を沈降させるとともに、疎水性の鉱物粒子を気泡に付着させて浮鉱として回収する。しかし、粒径5~20μm程度の微細粒子は、疎水性であっても気泡に付着しにくく、浮鉱として回収されにくい。その結果、浮遊選鉱による分離効率が低下する。
【0005】
この問題について、特許文献1には、鉱物スラリーにケロシンを添加して銅鉱物の微細粒子を凝集させた後に、浮遊選鉱を行なうことが開示されている。銅鉱物の微細粒子が凝集すると、見かけの粒径が大きくなり、浮鉱として回収されやすくなる。その結果、浮遊選鉱による分離効率が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-42612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
浮遊選鉱に用いられる気泡の粒径には鉱物粒子の粒径との関係で適切な範囲がある。特許文献1の技術は、気泡に合わせて鉱物粒子を大きくすることで、気泡と鉱物粒子の粒径の調整を図るものといえる。これとは逆に、鉱物粒子に合わせて気泡を小さくすることによっても、同様の効果が得られると考えられる。
【0008】
例えば、鉱物粒子の粒径が5~20μm程度の場合、粒径100μm前後の気泡が浮遊選鉱に適していると考えられる。ところが、一般的な浮遊選鉱装置内で発生する気泡の粒径は数百μm~数mm程度である。そのため、浮遊選鉱装置内で粒径100μm前後の気泡を発生させることが求められる。
【0009】
微細な気泡を発生させる装置としてマイクロバブル発生装置が知られている。また、マイクロバブルの発生方式として、旋回液流式、スタティックミキサー式、微細孔式、エゼクター式、ベンチュリー式、加圧溶解式、冷却溶解式、混合蒸気凝縮式などが知られている。しかし、いずれの方式による装置も粒径1μmオーダー、または10μmオーダーの気泡を発生させるものであり、粒径100μm前後の気泡を発生させることができない。
【0010】
そこで、本願発明者らは粒径100μm前後の気泡を発生可能な装置を作成するべく試行錯誤を重ねた。その過程で、全く新規の原理に基づく気泡発生装置を考案するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の気泡発生装置は、吹出口からガスを液中に吹き出して気泡を発生させるノズルと、前記ノズルから発生した気泡に超音波を照射し、該気泡を分割する超音波振動子と、前記ノズルの前記吹出口が内部に配置される円筒形の部材であり、中心軸回りに回転することで内部の気泡を外部に拡散させる拡散管と、を備えることを特徴とする。
第2発明の気泡発生装置は、第1発明において、前記拡散管は、複数の長孔が形成された筒体と、前記筒体の内周面に固定された複数の羽板と、を有することを特徴とする。
第3発明の気泡発生装置は、第1または第2発明において、前記吹出口には複数の孔が形成された散気板が設けられていることを特徴とする。
第4発明の気泡発生装置は、第3発明において、前記散気板は気泡発生面を上向きとして水平に配置されており、前記超音波振動子は前記散気板と対向する位置に配置されていることを特徴とする。
第5発明の気泡発生装置は、第4発明において、前記超音波振動子と前記散気板との距離は、超音波の半波長の整数倍であることを特徴とする。
第6発明の気泡発生装置は、第3第5発明のいずれかにおいて、前記散気板の前記孔の開口幅は20~60μmであり、隣り合う前記孔の間隔は0.5~1.5mmであることを特徴とする。
第7発明の気泡発生装置は、第1または第2発明において、前記超音波振動子の内部に前記ノズルが組み込まれていることを特徴とする
8発明の浮遊選鉱装置は、第1~第7発明のいずれかの気泡発生装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、ノズルから発生した気泡を超音波で分割することで、細かい気泡を発生することができる。また、拡散管により気泡を拡散できるので、広い領域に気泡を供給できる。
第3発明によれば、ノズルに散気板が設けられているので、多数の気泡を発生することができる。
第4発明によれば、散気板から発生した気泡がそのまま上昇するので、気泡が互いに合体して大きくなることを抑制できる。また、気泡の進行方向に沿って超音波が進むので、気泡に対して効率よく超音波を照射できる。その結果、より細かい気泡を発生することができる。
第5発明によれば、超音波振動子と散気板との間に超音波の定常波が生じるので、超音波による気泡の分割能力を高めることができる。
第6発明によれば、散気板から発生する気泡の粒径を150μm程度にできる。この気泡を超音波で分割することで、粒径が100μm前後の気泡を発生することができる。
第7発明によれば、超音波振動子の内部にノズルが組み込まれているので、装置を小型化でき、設置が容易になる
8発明によれば、浮遊選鉱装置内に細かい気泡を供給できるので、微細粒子を浮遊選鉱する場合でも、分離効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る気泡発生装置の正面図である。
図2】図(A)はノズルの正面図である。図(B)は図(A)におけるb-b線矢視断面図である。図(C)は図(A)におけるc-c線矢視断面図である。
図3】図(A)はノズルの平面図である。図(B)は図(A)における領域Bの拡大図である。
図4】第2実施形態に係る気泡発生装置の正面図である。
図5】第3実施形態に係る気泡発生装置の正面図である。
図6】第4実施形態に係る気泡発生装置の正面図である。
図7】図(A)は拡散管の平面図である。図(B)は拡散管の正面図である。
図8】図(A)は図7(B)におけるVIIIa-VIIIa線矢視断面図である。図(B)は図7(A)におけるVIIIb-VIIIb線矢視断面図である。
図9】一実施形態に係る浮遊選鉱装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔気泡の粒径〕
まず、浮遊選鉱における気泡の粒径について説明する。
前述のごとく、浮遊選鉱に用いられる気泡の粒径には鉱物粒子の粒径との関係で適切な範囲がある。その理由はつぎのとおりである。
【0015】
一般に、粒子が気泡に対して小さいほど、粒子が気泡に接触する頻度が低くなる。気泡よりも細かい微細粒子は、気泡の周囲の生じる水流に押し流され、気泡に接触しづらいからである。粒径5~20μm程度の微細粒子は粒径数mm程度の気泡に接触しづらい。そのため、微細な鉱物粒子は、疎水性であっても気泡に付着しにくく、浮鉱として回収されにくい。
【0016】
逆に、粒子が気泡に対して大きいほど、粒子が気泡に接触する頻度が高くなる。したがって、粒子は気泡に付着しやすい。しかし、気泡が小さいと、鉱物粒子の重さに対して気泡の浮力が弱いため、鉱物粒子を浮上させることができない。すなわち、気泡が小さすぎると鉱物粒子を浮鉱として回収することが困難になる。したがって、鉱物粒子が気泡に付着しやすく、かつ、十分な浮力を得るには、気泡の粒径が鉱物粒子の粒径に比べて大きすぎず、小さすぎず、適切な範囲にある必要がある。
【0017】
一般的な浮遊選鉱装置内で発生する気泡の粒径は数百μm~数mm程度である。この浮遊選鉱装置で粒径100μm程度の一般的な大きさの鉱物粒子の浮遊選鉱が問題なく行なわれていることからすれば、浮遊選鉱に用いられる気泡の粒径は鉱物粒子の粒径の数倍~数十倍程度が適していると推測される。すなわち、気泡の粒径が鉱物粒子の粒径の数十倍以下であれば、鉱物粒子が気泡に付着しやすい。また、気泡の粒径が鉱物粒子の粒径の数倍以上であれば、気泡の浮力が十分にあり、鉱物粒子を浮上させることができる。
【0018】
そうすると、粒径5~20μm程度の微細粒子の場合、浮遊選鉱に適した気泡の粒径は100μm前後であると考えられる。本願発明者らは、気泡の粒径の具体的な目標を30~130μmと設定している。
【0019】
なお、ISO 20480-1:2017には、体積相当の直径が100μm未満の気泡を「ファインバブル」と称することが定められている。また、ファインバブルのうち、体積相当の直径が1μm未満の気泡を「ウルトラファインバブル」と称し、体積相当の直径が1μm以上、100μm未満の気泡を「マイクロバブル」と称することが定められている。また、一般に、直径100μm~1mmの気泡を「サブミリバブル」と称し、直径1mm以上の気泡を「ミリバブル」と称する。したがって、粒径100μm前後(具体的には粒径30~130μm)の気泡は、ファインバブル(マイクロバブル)とサブミリバブルとの境界付近の気泡といえる。
【0020】
本発明の気泡発生装置は粒径100μm前後の気泡を発生することを目標の一つとして考案されたものである。しかし、各種の設定により、より大きな気泡またはより小さな気泡を発生させることができる。したがって、本発明の気泡発生装置は発生する気泡の粒径により限定されることはない。また、本発明の気泡発生装置は、浮遊選鉱装置に用いることを念頭に考案されたものであるが、その用途はこれに限定されない。
【0021】
〔気泡発生装置〕
つぎに、気泡発生装置の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る気泡発生装置1はノズル10と超音波振動子20とを有する。ノズル10はその吹出口11から、空気、窒素などのガスを液中に吹き出す。これにより液中に気泡を発生させる。超音波振動子20はノズル10から発生した気泡に超音波を照射する。超音波の作用により、気泡は分割され、細かくなる。ノズル10から発生した気泡を超音波で分割することで、細かい気泡を発生するというのが、気泡発生装置1の基本的な原理である。
【0022】
気泡を発生させる液は、特に限定されず、水でもよいし、何らかの水溶液でもよい。また、液は固体成分を含むスラリーでもよい。液は、図1に示すように槽に貯留してもよいし、パイプなどの中を流動してもよい。
【0023】
ノズル10は少なくとも吹出口11が液中に配置されていればよい。ノズル10の全体を液中に配置してもよいし、吹出口11以外の部分を液の外に配置してもよい。
【0024】
ノズル10はガスを導入する導入口12を有する。導入口12にはガス供給回路が接続される。ガス供給回路は、エアコンプレッサ、ガスボンベなどのガス供給源31と、ガス供給源31と導入口12とを接続する管路30とを有する。ガス供給源31から供給されたガスは、導入口12からノズル10内に導入され、吹出口11から液中に吹き出される。ノズル10に供給するガスの流量を調整するため、管路30に流量制御弁32および流量計33を設けることが好ましい。
【0025】
超音波振動子20は超音波発生装置の一部である。超音波発生装置は主に発振機41、コンバータ42および超音波振動子20からなる。発振機41から送られた出力をコンバータ42で振動に変換し、超音波振動子20を振動させる。超音波振動子20により液に超音波振動を与えることで、液中に超音波を発生させる。超音波振動子20は少なくともその先端部が液中に配置されていればよい。超音波の周波数は、特に限定されないが、一般的には20kHz以上である。
【0026】
図2(A)、(B)、(C)に示すように、ノズル10は一端に吹出口11を有し、他端に導入口12を有する筒形の部材である。吹出口11には散気板13が設けられている。散気板13は表裏に貫通する複数の孔が形成された平板状の部材である。ノズル10に散気板13が設けられているので、一度に多数の気泡を発生することができる。
【0027】
図3(A)に示すように、散気板13には複数の孔14が平面状に分布するよう配置されている。孔14の配置は、正方格子状、矩形格子状、三角格子状など規則正しく配置することが好ましいが、ランダムに配置してもよい。また、孔14は等間隔に配置することが好ましいが、不等間隔に配置してもよい。孔14の形状は、特に限定されず、正方形などの多角形でもよいし、円形でもよい。
【0028】
図3(B)に示すように、孔14の縦、横の開口幅をWとする。また、隣り合う孔14の間隔(中心間距離)をDとする。孔14の開口幅Wを20~60μmとし、孔14の間隔Dを0.5~1.5mmとすれば、散気板13から発生する気泡の粒径を150μm程度、具体的には100~200μmにできる。
【0029】
より詳細に説明すると、孔14から発生する気泡の粒径は孔14の開口幅Wよりも大きくなる。ノズル10に導入するガスの流量にもよるが、孔14の開口幅Wを20~60μmとすれば、粒径150μm程度の気泡を発生させることができる。また、隣り合う孔14の間隔Dが狭いと、発生した気泡同士が合体して、気泡の粒径が大きくなる。孔14の間隔Dを0.5mm以上にすれば、気泡の発生箇所が十分に離れているので、気泡同士が合体することを抑制できる。そのため、散気板13から発生する気泡の粒径を150μm程度にできる。また、孔14の間隔Dを1.5mm以下にすれば、ある程度孔14を密集させることができ、限られた面積を有する散気板13で多数の気泡を発生させることができる。
【0030】
散気板13で発生した粒径150μm程度の気泡を超音波で分割することで、粒径100μm前後の気泡にすることができる。具体的には、粒径100~200μmの気泡を超音波で分割すれば、粒径30~130μmの気泡となる。すなわち、最終的には、粒径100μm前後(具体的には粒径30~130μm)の気泡を発生することができる。
【0031】
図1に示すように、本実施形態において散気板13は気泡発生面を上向きとして水平に配置されている。ここで、気泡発生面とは、散気板13の表裏主面のうち、液に面しており気泡が発生する方の面(ノズル10の外側の面)をいう。このような姿勢で散気板13が配置されているので、散気板13で発生した気泡はそのまま上昇する。そのため、気泡が互いに合体して大きくなることを抑制できる。
【0032】
超音波振動子20は散気板13と対向する位置に配置されている。超音波は超音波振動子20の先端面から発生する。超音波の進行方向は、図1において白抜き矢印で示すように、超音波振動子20の先端面に対して垂直である。超音波振動子20はその先端面が散気板13と対向するよう配置されている。そのため、超音波は散気板13に向かって、散気板13に対して垂直に進む。
【0033】
このような位置関係で超音波振動子20と散気板13と配置すれば、気泡の進行方向に沿って(逆向きに)超音波が進む。気泡に対して効率よく超音波を照射できるため気泡を分割しやすい。その結果、より細かい気泡を発生することができる。
【0034】
超音波振動子20の先端面と散気板13の気泡発生面との距離は、超音波の半波長の整数倍とすることが好ましい。そうすれば、超音波振動子20と散気板13との間に超音波の定常波が生じる。これにより超音波の振幅が大きくなるため、超音波による気泡の分割能力を高めることができる。
【0035】
超音波の波長が可変である場合、超音波振動子20と散気板13との距離を超音波の波長に合わせて調整することが好ましい。例えば、コンバータ42を位置調整機構付きの支持具に取り付け、超音波振動子20と散気板13との距離を調整可能とすることが好ましい。
【0036】
(第2実施形態)
つぎに、第2実施形態に係る気泡発生装置2を説明する。
第1実施形態において散気板13は水平に配置されている。しかし、散気板13の姿勢はこれに限定されない。例えば、図4に示すように、散気板13を鉛直面に沿って配置してもよい。この場合、図4において黒塗り矢印で示すように、散気板13で発生した気泡は、ガスを吹き出した勢いにより、少なくとも発生初期は横方向に進む。
【0037】
また、超音波振動子20は気泡に超音波を照射できればよく、その姿勢は特に限定されない。例えば、図4に示すように、横方向に進む気泡(黒塗り矢印)に対して縦方向(白抜き矢印)に、すなわち気泡の進行方向と直交する方向に超音波を照射するよう超音波振動子20を配置してもよい。
【0038】
散気板13および超音波振動子20を図4に示すような配置としたとしても、ノズル10から発生した気泡を超音波で分割することで、細かい気泡を発生することができる。
【0039】
(第3実施形態)
つぎに、第3実施形態に係る気泡発生装置3を説明する。
図5に示すように、超音波振動子20の内部に気泡を発生させるノズルを組み込んでもよい。具体的には、超音波振動子20の内部に流路15が形成されている。流路15の一端15aは超音波振動子20の先端面21に開口している。また、流路15の他端15bは超音波振動子20の側面に開口している。端部15bにはホースなどが接続され、ここからガスが導入される。流路15に導入されたガスは端部15aから吹き出される。したがって、端部15aおよび15bは、それぞれ、ノズルの吹出口および導入口となっている。
【0040】
気泡は超音波振動子20の先端面21で発生する。気泡の吹き出し方向は、図5において黒塗り矢印で示すように、先端面21に対して垂直である。また、超音波の進行方向は、図5において白抜き矢印で示すように、先端面21に対して垂直である。すなわち、超音波は気泡の進行方向に沿って(同じ向きに)進む。気泡に対して効率よく超音波を照射できるため気泡を分割しやすい。その結果、より細かい気泡を発生することができる。
【0041】
本実施形態によれば、超音波振動子20の内部にノズルが組み込まれているので、装置を小型化できる。そのため、浮遊選鉱装置など他の装置への気泡発生装置3の設置が容易になる。なお、散気板は必須の構成ではなく、本実施形態のようにノズルに散気板を設けなくてもよい。
【0042】
(第4実施形態)
つぎに、第4実施形態に係る気泡発生装置4を説明する。
図6に示すように、気泡発生装置4は、ノズル10および超音波振動子20に加え、拡散管50を有する。拡散管50は円筒形の部材であり、その内部に少なくともノズル10の吹出口11が配置される。また、通常、超音波振動子20の先端部も拡散管50の内部に配置される。超音波で分割された細かい気泡は、拡散管50の内部において発生する。拡散管50はその中心軸回りに回転することで内部の気泡を外部に拡散させる。
【0043】
図7(A)、(B)に示すように、拡散管50は、筒体51と、筒体51の上部に固定されたプーリ52とを有する。モータ61により回転するプーリ62と拡散管50のプーリ52との間にベルト63を掛け回し、モータ61を駆動させることで、拡散管50を中心軸回りに回転させることができる(図6参照)。
【0044】
筒体51には複数の長孔53が形成されている。長孔53は筒体51の中心軸方向に沿って形成されている。また、長孔53は周方向に等間隔に並んで配置されている。図8(A)、(B)に示すように、筒体51の内周面には複数の羽板54が固定されている。羽板54は筒体51の中心軸方向に長い長方形の板材である。羽板54は隣り合う長孔53の間に配置されている。すなわち、筒体51の周方向に沿って長孔53と羽板54とが交互に配置されている。各羽板54は筒体51の半径方向に対して傾斜して設けられている。
【0045】
筒体51を図8(A)に示す矢印の方向に回転させると、羽板54により筒体51の内部から外部に向かう液流が生じる。液は長孔53を通って筒体51の内部から外部に向かって流れる。拡散管50の内部で発生した気泡は液流とともに筒体51の外部に向かって拡散する。このように、拡散管50により気泡を拡散できるので、ノズル10の周囲のみならず、広い領域に気泡を供給できる。
【0046】
〔浮遊選鉱装置〕
つぎに、浮遊選鉱装置の実施形態を説明する。
図9に示すように、本実施形態の浮遊選鉱装置5は気泡発生装置1を有する。浮遊選鉱装置5は浮選槽70を有する。浮選槽70にはスラリー供給口71が設けられている。鉱物粒子を含むスラリーはスラリー供給口71から浮選槽70の内部に供給される。
【0047】
また、浮選槽70には尾鉱排出口72と浮鉱樋73とが設けられている。浮選槽70の内部で沈降した尾鉱は尾鉱排出口72から排出される。また、気泡に付着して浮上した浮鉱は浮鉱樋73に回収される。浮遊選鉱装置5は撹拌機74を有する。撹拌機74により浮選槽70の内部のスラリーが撹拌される。
【0048】
気泡発生装置1は浮選槽70の内部に配置される。気泡発生装置1で発生した気泡により浮遊選鉱が行なわれる。なお、浮遊選鉱装置5に設けられる気泡発生装置1の数は特に限定されず、1つでもよいし、複数でもよい。
【0049】
前述のごとく、鉱物粒子が微細であると浮鉱として回収されにくく、浮遊選鉱による分離効率が低下する。これに対し、本実施形態の気泡発生装置1は浮遊選鉱装置5内に細かい気泡を供給できる。例えば、粒径5~20μm程度の鉱物粒子の浮遊選鉱に適していると考えられる粒径100μm前後の気泡を供給できる。そのため、微細粒子を浮遊選鉱する場合でも、分離効率を高くすることができる。
【実施例
【0050】
つぎに、実施例を説明する。
図2(A)、(B)、(C)および図3(A)、(B)に示す形状のノズルを、3Dプリンタを用いて作成した。ここで、散気板には間隔Dを1mmとした正方格子状に孔を形成した。孔は縦方向に12列、横方向に12列の計144個である。各孔は正方形であり、縦、横の開口幅Wは40μmである。一つの孔の開口面積は0.0016mm2であり、全ての孔の合計開口面積は0.23mm2である。また、超音波発生装置として超音波ホモジナイザー(三井電気精機株式会社製、型番:UX-300)を用意した。
【0051】
図1に示すように、水槽中にノズルを縦に配置し、その真上に超音波振動子を配置した。超音波振動子の先端面と散気板の気泡発生面との距離を37.5mmとした。この距離は、周波数20kHzの超音波の水中における半波長に相当する。水槽に貯留した水にMIBCを30ppmとなるよう添加した。
【0052】
(実施例1)
超音波ホモジナイザーの出力を100%とし、ノズルに空気を流量0.15L/分で供給した。ノズルの孔の合計開口面積に対する空気の流量は0.65L/分・mm2である。
【0053】
発生した気泡の粒径をつぎの手順で測定した。透明な水槽の側壁の近くに鏡面プレートを設置し、側壁の外側に顕微鏡を配置した。顕微鏡で撮影した画像中の気泡100個程度に対して、粒径を手動で測定した。その結果、気泡の粒径は平均97.8μmであった。
【0054】
(実施例2)
ノズルに供給する空気の流量を1.0L/分に変更した。ノズルの孔の合計開口面積に対する空気の流量は4.34L/分・mm2である。それ以外は実施例1と同様の条件とした。その結果、気泡の粒径は平均62.8μmであった。
【0055】
以上より、ノズルに供給するガスの流量を0.5~5.0L/分・mm2程度にした場合、粒径30~130μmの気泡を発生できることが確認された。また、ノズルに供給するガスの流量を多くするほど、気泡の粒径が小さくなることが分かった。
【符号の説明】
【0056】
1~4 気泡発生装置
10 ノズル
11 吹出口
12 導入口
13 散気板
14 孔
20 超音波振動子
50 拡散管
5 浮遊選鉱装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9