(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法および送信装置
(51)【国際特許分類】
H04W 52/18 20090101AFI20231227BHJP
H04L 27/36 20060101ALI20231227BHJP
H04W 28/06 20090101ALI20231227BHJP
H04W 28/18 20090101ALI20231227BHJP
【FI】
H04W52/18
H04L27/36
H04W28/06 110
H04W28/18 110
(21)【出願番号】P 2021036460
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正文
(72)【発明者】
【氏名】宮城 利文
(72)【発明者】
【氏名】前原 文明
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0351771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B1/69-1/719
7/24-7/26
H04J1/00-1/20
4/00-13/22
99/00
H04L5/00-5/12
27/00-27/38
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信電力制御機能と適応変調機能とを備えた送信装置および当該送信装置から信号を受信する受信装置から構成される無線通信システムにおいて、
前記送信装置から前記受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成部と、
前記情報ビット生成部によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調部と、
前記データ信号変調部によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理部と、
前記FTN処理部によって処理されたデータ信号を前記受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換部と、
前記送信装置による送信電力を制御する送信電力制御部と、
前記送信電力制御部による送信電力制御時に、前記データ信号変調部による変調方式と前記FTN処理部によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRが前記送信電力制御部によって制御された送信電力に応じた許容値以下で且つパケット誤り率が許容値以下の伝送ビット数となる組み合わせからFTN効率が最も低い組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいて前記データ信号変調部と前記FTN処理部とを制御する適応変調制御部と、
を備える無線通信システム。
【請求項2】
送信電力制御機能と適応変調機能とを備えた送信装置および当該送信装置から信号を受信する受信装置が行う無線通信方法において、
前記送信装置から前記受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成工程と、
前記情報ビット生成工程によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調工程と、
前記データ信号変調工程によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理工程と、
前記FTN処理工程によって処理されたデータ信号を前記受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換工程と、
前記送信装置による送信電力を制御する送信電力制御工程と、
前記送信電力制御工程による送信電力制御時に、前記データ信号変調工程による変調方式と前記FTN処理工程によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRが前記送信電力制御工程によって制御された送信電力に応じた許容値以下で且つパケット誤り率が許容値以下の伝送ビット数となる組み合わせからFTN効率が最も低い組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいて前記データ信号変調工程と前記FTN処理工程とを制御する制御工程と、
を備える無線通信方法。
【請求項3】
送信電力制御機能と適応変調機能とを備えた送信装置において、
受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成部と、
前記情報ビット生成部によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調部と、
前記データ信号変調部によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理部と、
前記FTN処理部によって処理されたデータ信号を前記受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換部と、
送信電力を制御する送信電力制御部と、
前記送信電力制御部による送信電力制御時に、前記データ信号変調部による変調方式と前記FTN処理部によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRが前記送信電力制御部によって制御された送信電力に応じた許容値以下で且つパケット誤り率が許容値以下の伝送ビット数となる組み合わせからFTN効率が最も低い組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいて前記データ信号変調部と前記FTN処理部とを制御する適応変調制御部と、
を備える送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システム、無線通信方法および送信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、FTN(faster than nyquist)伝送に関する技術が開示されている。FTN伝送は、クロック周波数を超えるシンボルレートで変調シンボルを送出する手法である。FTN伝送によれば、同伝送ビット数の高次QAM変調と比較して、PAPRの低減が期待できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】J.A.Lucciardi, et al., "Trade-off between spectral efficiency increase and PAPR reduction when using FTN signaling: Impact of non linearities," IEEE ICC 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の非特許文献等の記載される従来のFTN伝送においては、シンボル間干渉(ISI)が発生するという課題がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本開示の目的は、シンボル間干渉を低減させることができる無線通信システム、無線通信方法および送信装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る無線通信システムは、送信電力制御機能と適応変調機能とを備えた送信装置および当該送信装置から信号を受信する受信装置から構成される無線通信システムである。無線通信システムは、送信装置から受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成部と、情報ビット生成部によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調部と、データ信号変調部によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理部と、FTN処理部によって処理されたデータ信号を受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換部と、送信装置による送信電力を制御する送信電力制御部と、送信電力制御部による送信電力制御時に、データ信号変調部による変調方式とFTN処理部によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRが送信電力制御部によって制御された送信電力に応じた許容値以下で且つパケット誤り率が許容値以下の伝送ビット数となる組み合わせからFTN効率が最も低い組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいてデータ信号変調部とFTN処理部とを制御する適応変調制御部と、を備える。
本開示に係る無線通信方法は、送信電力制御機能と適応変調機能とを備えた送信装置および当該送信装置から信号を受信する受信装置が行う無線通信方法である。無線通信方法は、送信装置から受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成工程と、情報ビット生成工程によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調工程と、データ信号変調工程によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理工程と、FTN処理工程によって処理されたデータ信号を受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換工程と、送信装置による送信電力を制御する送信電力制御工程と、送信電力制御工程による送信電力制御時に、データ信号変調工程による変調方式とFTN処理工程によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRが送信電力制御工程によって制御された送信電力に応じた許容値以下で且つパケット誤り率が許容値以下の伝送ビット数となる組み合わせからFTN効率が最も低い組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいてデータ信号変調工程とFTN処理工程とを制御する制御工程と、を備える。
本開示に係る送信装置は、送信電力制御機能と適応変調機能とを備えた送信装置である。送信装置は、受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成部と、情報ビット生成部によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調部と、データ信号変調部によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理部と、FTN処理部によって処理されたデータ信号を受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換部と、送信電力を制御する送信電力制御部と、送信電力制御部による送信電力制御時に、データ信号変調部による変調方式とFTN処理部によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRが送信電力制御部によって制御された送信電力に応じた許容値以下で且つパケット誤り率が許容値以下の伝送ビット数となる組み合わせからFTN効率が最も低い組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいてデータ信号変調部とFTN処理部とを制御する適応変調制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シンボル間干渉を低減させることができる無線通信システム、無線通信方法および送信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る無線通信システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】無線通信における増幅器の入出力関係のイメージ図である。
【
図3】FTN効率と変調方式との組み合わせによるISIおよびPAPRの例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して、実施の形態について説明する。本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本開示は、以下の各実施の形態に限定されるものではない。本開示には、その趣旨を逸脱しない範囲において、以下の各実施の形態によって開示される構成の種々の変形および組み合わせが含まれ得る。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る無線通信システムの構成を模式的に示すブロック図である。本実施の形態に係る無線通信システムは、送信電力制御(TPC)機能と適応変調機能とを備えるシステムである。無線通信システムは、信号を送信する送信装置10と、当該送信装置10から信号を受信する受信装置20と、から構成される。
【0011】
送信装置10は、送信アンテナ11から信号を送信する。受信装置20は、複数の受信アンテナ21から信号を受信可能に構成される。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態に係る送信装置10は、情報ビット生成部12と、データ信号変調部13と、FTN処理部14と、送信信号変換部15と、を備える。
【0013】
情報ビット生成部12は、送信装置10から受信装置20に伝送する情報ビットを生成するものである。情報ビット生成部12は、例えば、誤り訂正符号化機能およびインターリーブ機能等を有していてもよい。
【0014】
データ信号変調部13は、情報ビット生成部12によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するものである。変調方式としては、例えば、直交振幅変調(QAM)等が挙げられる。
【0015】
FTN処理部14は、データ信号変調部13によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すものである。送信信号変換部15は、FTN処理部14によって処理されたデータ信号を送信アンテナ11から受信装置20に伝送するための変換を行うものである。
【0016】
また、送信装置10は、
図1に示すように、送信電力制御部16および適応変調制御部17を備えている。
【0017】
送信電力制御部16は、送信装置10による送信電力を制御するものである。送信電力制御部16は、無線環境に応じた送信電力制御を行う。送信電力制御部は、例えば、干渉状況を把握して送信電力を下げる、または、電波強度を高めたいときに送信電力を上げる、等の制御を行う。
【0018】
適応変調制御部17は、送信電力の制御値に応じて、FTN効率と変調方式との組み合わせを選択する機能を有するものである。適応変調制御部17は、送信電力制御部16による送信電力制御時に、データ信号変調部13による変調方式とFTN処理部14によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRが送信電力制御部16によって制御された送信電力に応じた許容値以下で且つパケット誤り率が許容値以下の伝送ビット数となる組み合わせからFTN効率が最も低い組み合わせを選択する。適応変調制御部17は、当該選択結果に基づいてデータ信号変調部13とFTN処理部14とを制御する。
【0019】
また、本実施の形態に係る受信装置20は、
図1に示すように、受信信号変換部22と、データ信号復調部23と、情報ビット検出部24と、を備える。受信信号変換部22は、受信アンテナ21で受信されたデータ信号を、受信装置20で処理するための変換を行う。データ信号復調部23は、データ信号を情報ビットとして検出するための復調を行う。情報ビット検出部24は、情報ビットを検出する。情報ビット検出部24は、情報ビット生成部12に合わせて、誤り訂正復号機能およびデインターリーブ機能等を必要に応じて有していてもよい。
【0020】
図2は、無線通信における増幅器の入出力関係のイメージ図である。PAPRの許容値は、送信アンテナ11からの送信出力と増幅器のバックオフとの関係から得られる。送信アンテナ11からの送信出力は、送信電力制御により変動する。送信電力制御によって増幅器のバックオフ値に対してPAPRの余裕が生じた場合には、PAPRが高いが通信品質が良くなるFTN効率と変調方式との組み合わせを用いることが望ましい。具体的には、FTN効率を下げる(FTN伝送を行わないことを含む)ことで、伝送の最適化を行うことが望ましい。
【0021】
図3は、FTN効率と変調方式との組み合わせによるISIおよびPAPRの例を示すテーブルである。
図3に例示したような組み合わせのテーブルは、予めシステム内に保持しておく。適応変調制御部17は、このテーブルから、最適な組み合わせを選択する。適応変調制御部17は、各伝送ビット数に対して、送信出力とPAPRとの関係から、選択すべき組み合わせを決定する。そして、適応変調制御部17は、パケット誤り率が許容値以下となるように伝送ビット数を決定する。適応変調制御部17は、決定した伝送ビット数となる、FTN効率と変調方式の組み合わせを選択する。なお、パケット誤り率は、ACK等によって認識可能である。また、FTN効率と変調方式との関係の情報は、例えば、予めシグナルフィールド等に収納しておき、送信装置10から受信装置20へ通知される。
【0022】
例えば、
図3に示す例においては、PAPRの余裕がある場合には、PAPRが高くなる組み合わせを選択する。これによって、シンボル間干渉を小さくすることができる。
【0023】
以上の実施の形態に示したように構成された送信装置10およびこの送信装置10を備える無線通信システムであれば、シンボル間干渉を低減させることができる。なお、
図1に示される無線通信システムおよび送信装置10の各機能は、無線通信方法としても実現することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 送信装置
11 送信アンテナ
12 情報ビット生成部
13 データ信号変調部
14 FTN処理部
15 送信信号変換部
16 送信電力制御部
17 適応変調制御部
20 受信装置
21 受信アンテナ
22 受信信号変換部
23 データ信号復調部
24 情報ビット検出部