(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】カプセル化クリーンルームシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H01L21/02 D
(21)【出願番号】P 2020057088
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】原 史朗
(72)【発明者】
【氏名】前川 仁
(72)【発明者】
【氏名】クンプアン ソマワン
(72)【発明者】
【氏名】谷島 孝
(72)【発明者】
【氏名】石田 夕起
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-263048(JP,A)
【文献】特開2008-032335(JP,A)
【文献】特開2015-206549(JP,A)
【文献】特開2000-082731(JP,A)
【文献】特表2000-507686(JP,A)
【文献】特開平09-153533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
F24F 3/163-3/167
F24F 7/003
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、前記処理室を収納する収納区画と、
を有し、
作動時に、前記収納区画の気圧が、前記処理室および外部空間の気圧よりも低圧、または高圧であ
るカプセル化クリーンルームシステム
を内蔵し、
クリーンルーム内に設置されないことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記収納区画と、前記処理室及び前記外部空間との気圧差の絶対値が、0.1Pa以上10Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載の
装置。
【請求項3】
クリーンガスが、前記処理室に供給され、
作動時に、前記収納区画の気圧が、前記処理室および外部空間の気圧よりも低圧であることを特徴とする請求項1または2に記載の
装置。
【請求項4】
クリーンガスが、前記収納区画に供給され、
作動時に、前記収納区画の気圧が、前記処理室および外部空間の気圧よりも高圧であることを特徴とする請求項1または2に記載の
装置。
【請求項5】
半導体製造装置、塗工装置、フィルム貼合装置、培養装置、細胞処理装置のいずれかであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル化クリーンルームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、マイクロ流路、マイクロマシン、ディスプレイ、薄膜塗工フィルムなどの、製造時や検査時に気体中の微粒子数やガス濃度などの雰囲気を制御する必要のある製品(以下、クリーンルーム製造製品ともいう)は、クリーンルーム内で製造される。これらの製品は、生産性を上げるためにウェハの大径化やフィルムの広幅化がなされてきたが、それに伴う装置の大型化によりクリーンルームが広大となり、クリーンルームの設置、維持に係る費用が膨大な額にのぼっている。そのため、近年、処理を行う局所的領域のみをクリーン化する局所クリーン化が注目を集めており、例えば、直径0.5インチ(12.5mm)のウェハを用いる局所クリーン化した超小型生産システム(ミニマルファブ)が提案されている(特許文献1、2等参照)。
【0003】
クリーンルーム製造製品は、例えば、半導体製造工程において、ウェハ表面での酸化膜の形成を防ぐためにガス中の酸素濃度を低く保つ必要があるなど、処理室内の気体は、微粒子濃度、組成、さらには温度、湿度等を、極めて精密に制御することが求められており、外部気体が処理室内へ侵入しないことが要求されている。
また、レジスト、現像液、有機溶剤等の臭気を有する、または人体に有害もしくは不快な気体を用いる場合があり、これらの気体を用いる装置では、処理室内の気体が外部空間に漏出しないことが要求される。
【0004】
大気圧近傍でクリーンルーム製造製品を製造する装置において、処理室を構成する隔壁は、処理室から外部空間へ、もしくは外部空間から処理室へ、気体、微粒子等の出入りを完全に遮断できる気密性を有さず、処理室と外部空間とは完全に分離されていない。そして、処理室と外部空間との間で気圧を調整し、高圧から低圧へ一方方向へ気体を流すことにより、処理室内への外部気体の侵入、または、外部空間への処理室内の気体の漏出が防止されている。しかし、処理室を外部空間より高圧とすれば、処理室内への外部気体の侵入は防止できるが、外部空間へ処理室内の気体が漏出してしまう。逆に、処理室を外部空間より低圧とすれば、外部空間への処理室内の気体の漏出は防止できるが、処理室内へ外部気体が侵入してしまう。すなわち、クリーンルーム製造製品を製造する従来装置において、処理室内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室内の気体の漏出を、同時に防ぐことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5361002号公報
【文献】特許第5780531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、処理室内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室内の気体の漏出とを同時に防ぐことのできるシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.処理室と、前記処理室を収納する収納区画と、
を有し、
作動時に、前記収納区画の気圧が、前記処理室および外部空間の気圧よりも低圧、または高圧であることを特徴とするカプセル化クリーンルームシステム。
2.前記収納区画と、前記処理室及び前記外部空間との気圧差の絶対値が、0.1Pa以上10Pa以下であることを特徴とする1.に記載のカプセル化クリーンルームシステム。
3.クリーンガスが、前記処理室に供給され、
作動時に、前記収納区画の気圧が、前記処理室および外部空間の気圧よりも低圧であることを特徴とする1.または2.に記載のカプセル化クリーンルームシステム。
4.クリーンガスが、前記収納区画に供給され、
作動時に、前記収納区画の気圧が、前記処理室および外部空間の気圧よりも高圧であることを特徴とする1.または2.に記載のカプセル化クリーンルームシステム。
5.1.~4.のいずれかに記載のカプセル化クリーンルームシステムを内蔵する装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、処理室と外部空間との間に収納区画を有し、作動時に、収納区画の気圧が、処理室および外部空間の気圧よりも低圧、または高圧であることにより、処理室内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室内の気体の漏出とを、同時に防ぐことができる。
収納区画と、処理室及び外部空間との気圧差の絶対値が、0.1Pa以上10Pa以下である本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、気圧差が大気圧(101,325Pa)の10000分の1以下と僅かであり、気圧差を維持するための装置を小型化、軽量化することができ、また、気圧差の維持に必要な気体の量、エネルギー量も少なくすることができる。
【0009】
収納区画の気圧が、処理室および外部空間の気圧よりも低圧の場合は、処理室内の気体および外部気体はより低圧な収納区画へ移動することができるが、収納区画からより高圧である処理室及び外部空間へ気体は移動することができない。すなわち、収納区画が、処理室と外部空間との間の気体の移動を妨げる谷のように作用することで、処理室内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室内の気体の漏出とを、同時に防ぐことができる。
収納区画の気圧が、処理室および外部空間の気圧よりも高圧の場合は、処理室内の気体および外部気体は、より高圧である収納区画へ移動することができない。すなわち、収納区画が、処理室と外部空間との間の気体の移動を妨げる山のように作用することで、処理室内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室内の気体の漏出とを、同時に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施態様であるミニマルファブ装置に概略を示す図。
【
図2】本発明の第二実施態様であるミニマルファブ装置の概略を示す図。
【
図3】実施例における臭いレベルの経時変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、処理室と、処理室を収納する収納区画と、を有し、
作動時に、収納区画の気圧が、処理室および外部空間の気圧よりも低圧、または高圧であるカプセル化クリーンルームシステムに関する。
【0012】
本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、ガス雰囲気下で処理を行う装置に内蔵することができる。例えば、洗浄装置、塗布装置、露光装置、現像装置、加熱装置、検査装置、エッチング装置、CMP装置等の半導体製造装置、塗工装置、フィルム貼合装置、培養装置、細胞処理装置等に内蔵することができる。
本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、下記で詳述するように、処理室と外部空間との間での、気体、微粒子等の移動を遮断するシステムである。本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、処理室を収納区画で収納し、気圧を制御するだけで、処理室を外部空間から遮断することができる。そのため、本発明のカプセル化クリーンルームシステムを内蔵する装置は、装置そのものにクリーンルームの機能が備わっており、装置をクリーンルーム内に設置する必要がない。
【0013】
処理室は、装置の種類に応じて、ガス雰囲気下で様々な処理、例えば、ウェハの洗浄、塗布、露光、現像、加熱、検査、エッチング、CMP等、フィルムの塗工、貼合等、微生物や細胞の培養等を行う空間であり、これらの処理を行うための個別装置が設置される。また、行う処理に応じて、空気、窒素、アルゴン、酸素等の気体が供給される。処理室は、レジスト、現像液、有機溶剤等の臭気を有する、または、人体に有害もしくは不快なガス発生源が存在する。
【0014】
収納区画は、処理室を収納している。収納区画は、処理室に隣接し、処理室と隔壁で分離された空間であって、気体、微粒子等が処理室との間で行き来(相互に移動)できる空間である。収納区画が、処理室を収納する方法は特に制限されず、例えば、収納区画内に設けた骨組みを介して処理室を固定してもよく、処理室の一面を収納区画の一面に溶接等で固定してもよい。収納区画と外部区画とを区切る物体は特に制限されず、装置の筐体、金属板、プラスチック板、エアフィルタ、ガラス板、パネルコンピュータ、ファン等が挙げられる。収納区画には、必要に応じて、処理室と装置の他の区画とを接続する各種配管、センサー、カメラ等を設けることができ、薬液ボトル、電子基板、モーター等の機械部品を設置することもできる。
【0015】
本発明のカプセル化クリーンルームシステムにおいて、処理室と収納区画との間、および収納区画と外部空間との間は、完全に物理的に遮断されておらず、作動時に、設計通りに、または予期せず、気体、微粒子等が移動する。例えば、隔壁に、配管や駆動部品の駆動部が通る開口部や、気体が通過するための通気口等を設けることにより、設計通りに気体、微粒子等を移動させることができる。また、隔壁の接合部や開口部等を、Oリング、板状のゴム、プラスチック等の弾性部材でシールし、作動時の圧力差により弾性部材が変形して生じる隙間等から、予期せず気体、微粒子等が移動する場合がある。
【0016】
本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、作動時に、収納区画の気圧が、処理室および外部空間の気圧よりも低圧、または高圧である。なお、本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、作動時に、収納区画の気圧が、処理室と外部空間の両者の気圧よりも低圧、または高圧であればよく、処理室と外部空間との気圧の高低は、特に制限されない。
作動時における収納区画と、処理室及び外部空間との気圧差の絶対値は、0.1Pa以上10Pa以下であることが好ましい。この気圧差の絶対値が0.1Pa未満では、処理室内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室内の気体の漏出とを、十分に防げない場合がある。この気圧差の絶対値が10Paより大きいと、気圧差により生じる気体の流れが速くなりすぎて、処理に悪影響を及ぼす場合があり、また、気圧差を維持するために必要な気体の量、エネルギー量が大きくなる。作動時における収納区画と、処理室及び外部空間との気圧差の絶対値の上限は、5Pa以下であることが好ましく、3Pa以下であることがより好ましい。
【0017】
なお、本発明において、作動時とは、その装置の種類に応じた、洗浄、塗布、露光、現像、加熱、検査、エッチング、CMP、塗工、貼合、培養等の処理中のことを意味する。本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、少なくともこれらの処理中に、収納区画の気圧が、処理室および外部空間の気圧よりも低圧、または高圧であればよいが、処理中のみならず、ウェハ運搬中、休止中等も、所定の圧力を維持することが好ましい。
以下、本発明のカプセル化クリーンルームシステムを、ミニマルファブ装置を例に説明する。なお、ミニマルファブ装置とは、直径0.5インチ(12.5mm)のウェハを用いる局所クリーン化した超小型デバイス生産システム(ミニマルファブ)を構成する装置である。このミニマルファブ装置に本発明であるカプセル化クリーンルームシステムを内蔵することで、既に述べた処理室内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室内の気体の漏出とを同時に防止することができる。
【0018】
・第一実施態様
図1に、第一実施態様であるミニマルファブ装置101を概念的に示す。
第一実施態様であるミニマルファブ装置101は、筐体10、密閉搬送容器に収容されたウェハを取り出す装置前室11、ゲートバルブ12、ウェハに各種処理を施す処理室13、収納区画14を有する。なお、本明細書において、同一部材には同一符号を付す。
【0019】
装置前室11は、密閉搬送容器に収容されたウェハを取り出して、処理室13に搬送するための部屋である。装置前室11と処理室13との間にはゲートバルブ12が設けられており、密閉搬送容器から取り出したウェハは、このゲートバルブ12を通って装置前室11から処理室13へ搬入される。
【0020】
処理室13は、上方に設けられたULPAフィルタを通過したクリーンエアが供給される。
収納区画14は、処理室13に隣接し、処理室13と隔壁で分離された空間であって、気体、微粒子等が処理室13との間で行き来(相互に移動)できる空間である。本第一実施態様では、収納区画14は、処理室13と筐体10との間に形成される。また、収納空間13の下面は、機械室、薬液室等の他の区画と、金属板により区切られている。
【0021】
処理室13と収納区画14は、同一の排気装置15に接続されており、処理室13と排気装置15とを接続する排気管には流量調整弁151が設けられている。処理室13と収納区画14とは同一の排気装置15に接続されていて、処理室13と収納区画14が所定の圧力差となるようにこの流量調整弁151の開き具合を調整して、処理室体積あたりの排気量を、収納区画体積あたりの排気量よりも小さくすることにより、収納区画14から優先的に排気して、収納区画14の気圧を、処理室13および外部空間の気圧よりも低圧にすることができる。また、収納区画14は、排気により、外部空間の気圧よりも低圧となる。
【0022】
ここで、処理室13は、収納区画14と完全に物理的に遮断されていない。そのため、作動時により高圧の処理室13からより低圧の収納区画14へ気体が漏出する。しかし、収納区画14は、外部空間より低圧であるため、収納区画14から外部空間へ気体は漏出しない。同様に、外部空間からより低圧な収納区画14に侵入した外部気体は、収納区画14より高圧な処理室13へ侵入できない。
第一実施態様であるミニマルファブ装置101では、処理室13内の気体と外部気体の両者は、収納区画14に侵入することはできるが、収納区画14から処理室13及び外部空間へ移動することはできない。すなわち、第一実施態様であるミニマルファブ装置101は、いわば、収納区画14が、処理室13と外部空間との間の気体の移動を妨げる谷のように作用することで、処理室13内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室13内の気体の漏出とを、同時に防ぐことができる。
【0023】
・第二実施態様
図2に、第二実施態様であるミニマルファブ装置102を概念的に示す。
第二実施態様であるミニマルファブ装置102は、収納区画14の気圧が、処理室13及び外部空間の気圧よりも高圧である。以下、第一実施態様との相違点を中心に説明する。
【0024】
第二実施態様であるミニマルファブ装置102は、処理室13が、収納区画14に収納されている。収納区画14は、上方に設けられたULPAフィルタを通過したクリーンエアが供給され、外部空間よりも高圧となる。処理室13は、収納区画14と完全に物理的に遮断されておらず、収納区画14に供給されたクリーンエアは処理室13へも供給される。
【0025】
処理室13と収納区画14は、同一の排気装置15に接続されており、収納区画14と排気装置15とを接続する排気管には流量調整弁151が設けられている。処理室13と収納区画14とは同一の排気装置15に接続されていて、処理室13と収納区画14が所定の圧力差となるようにこの流量調整弁151の開き具合を調整して、収納区画体積あたりの排気量を、処理室体積あたりの排気量よりも小さくすることにより、処理室13から優先的に排気して、収納区画14の気圧を、処理室13の気圧よりも高圧にすることができる。
【0026】
収納区画14は、処理室13より高圧であるため、処理室13内の気体は収納区画14へ漏出しない。同様に、外部気体もより高圧な収納区画14へ侵入できない。すなわち、第二実施態様であるミニマルファブ装置102は、いわば、収納区画14が、処理室13と外部空間との間の気体の移動を妨げる山のように作用することで、処理室13内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室13内の気体の漏出とを、同時に防ぐことができる。
【0027】
第一、第二実施態様であるミニマルミニマルファブ装置は、直径0.5インチ(12.5mm)のウェハを用いる小型の製造装置であるため、シールする距離が短く、収納区画の気密性を確保しやすく、給排気流量を小さくできる。そのため、給排気装置にかかるエネルギーコストが低く、静音化を実現することができる。また、装置が小型なので、差圧を制御する必要のある空間体積が小さく、差圧の時間応答性が良く、短い時間で設定した差圧に到達することができる。さらに、ミニマルファブ装置は、筐体が規格化されているため、装置毎に収納区画の気密構造を設計する必要が無い。
【0028】
なお、第一、第二の実施態様であるミニマルファブ装置は一例であり、本発明のカプセル化クリーンルームシステムはこれらに限定されない。例えば、本発明のカプセル化クリーンルームシステムは、直径0.5インチ(12.5mm)のウェハを用いるミニマルファブ装置に限定されず、6インチ(150mm)、12インチ(300mm)等の他の大きさのウェハを用いる半導体製造装置、塗工装置、フィルム貼合装置、培養装置、細胞処理装置等とすることができる。また、排気量、給気量のいずれか、または両方により、差圧を制御することもでき、処理室と収納区画の圧力を圧力センサーでモニタリングしながら、排気量、給気量を制御することもできる。また、ULPAフィルタに代えて、HEPAフィルタ、その他の種類のパーティクルフィルタを用いることもできる。
【実施例】
【0029】
第一実施態様例と同様の構成を有するミニマルファブ装置を使用した。実施例で使用したミニマルファブ装置は、研究開発用であり、内部の調整が容易であるように、筐体の側面及び背面の3面が、塩化ビニール板で覆われている。
処理室内部に、臭気源となるエタノール20mlを入れた50ml容ビーカーを置き、処理室にクリーンエアを30L/minで供給した。排気装置により、処理室、収納区画の圧力を外部圧力に対して以下のように制御した。なお、処理室が外部圧力に対して正圧となるのは、クリーンエアの給気のためである。
1)処理室:+0.5Pa、収納区画:-3.3Pa 5分
2)処理室:+0.5Pa、収納区画:+0.5Pa 5分
3)処理室:+0.5Pa、収納区画:-3.3Pa 10分
4)処理室:+0.5Pa、収納区画:+0.5Pa 5分
筐体背面から約5cm、床上1mの地点における臭気を、ポータブル型ニオイセンサー(新コスモス電機株式会社、XP-329IIIR)を用いて測定し、処理室内からのエタノールの漏出を調査した。臭いレベルの経時変化を
図3に示す。
【0030】
・結果
収納区画が、処理室および外部空間よりも低圧であると、臭いレベルは低く、処理室内から外部空間へのエタノールの漏出を防ぐことができた。一方、処理室と収納区画との気圧が等しいと、臭いレベルが急激に上昇し、処理室内から外部空間へエタノールが漏出した。
本実験において、処理室は常にクリーンエアが供給され、かつ外部空間より正圧であるため、外部空間から処理室への微粒子の侵入は常に防げている。そのため、収納区画を処理室および外部空間より低圧とすることにより、処理室内への外部気体の侵入と、外部空間への処理室内の気体の漏出とを同時に防ぐことができた。
【符号の説明】
【0031】
101 第一実施態様であるミニマルファブ装置
102 第二実施態様であるミニマルファブ装置
10 筐体
11 装置前室
12 ゲートバルブ
13 処理室
14 収納区画
15 排気装置
151 流量調整弁