(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20231227BHJP
F28D 15/00 20060101ALI20231227BHJP
F28F 3/06 20060101ALI20231227BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20231227BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28D15/00
F28F3/06 A
F28F21/06
F28F21/08 A
F28F21/08 E
(21)【出願番号】P 2019234827
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅之
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-001553(JP,A)
【文献】特開2007-178010(JP,A)
【文献】特開平11-083365(JP,A)
【文献】特開2005-259391(JP,A)
【文献】特開平07-232499(JP,A)
【文献】特開2014-082283(JP,A)
【文献】国際公開第2014/112600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00-99/00
F28D 15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口および出口が設けられ,かつ一対の対向壁を有する外包体と、前記外包体内の前記一対の対向壁間に設けられ、かつ凹凸部を有するインナーフィンとを備え、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器であって、
前記外包体が、金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンが、金属製の伝熱層の両面側に
樹脂製の熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンにおける凹部底面および凸部頂面の熱融着層と、前記一対の対向壁の熱融着層とが接合一体化され、
前記インナーフィンにおける凹部底面および凸部頂面と、前記一対の対向壁との間の接合部に、前記各熱融着層の樹脂を素材とする樹脂溜まりが形成され
、
前記インナーフィンは、凹部および凸部が交互に連続して設けられ、かつ凹部底面および凸部頂面が平坦な角波形状に形成され、
前記樹脂溜まりは、前記凹部底面の中央部および前記外包体間と、前記凸部頂面の中央部および前記外包体間とに形成され、
前記外包体の熱融着層と前記インナーフィンの熱融着層とが同種の樹脂によって形成され、
前記樹脂溜まりによって前記一対の対向壁の一部が外方に膨出して、樹脂溜まり膨出部が形成され
るとともに、
前記樹脂溜まりによって前記インナーフィンにおける凹部底面および凸部頂面が内方に窪んでいることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記インナーフィンは、そのフィン高さが低くなる方向に圧縮した状態に配置されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記外包体は、中間領域に前記インナーフィンを収容するための凹陥部が形成されたトレイ部材と、前記トレイ部材の凹陥部を閉塞するように配置されるカバー部材とによって構成されている請求項1
または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記外包体は、前記インナーフィンを介して重ね合わせて配置される一対のシート状外包体基材によって構成されている請求項1
または2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の伝熱層に樹脂製の熱融着層が積層されたラミネートシート等のラミネート材を用いて製作される熱交換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の電子機器における小型高性能化に伴い、電子機器のCPU回りの発熱対策も重要となり、機種によっては水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、CPU等の電子部品に対する熱負荷を軽減するとともに、筐体内に熱をこもらせないようにして、熱による悪影響を回避する技術が従来より提案されている。
【0003】
また電気自動車やハイブリッド車に搭載される電池モジュールは、充電と放電とを繰り返し行うために電池パックの発熱が大きくなる。このため電池モジュールにおいても上記の電子機器と同様に、水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、熱による悪影響を回避する技術が提案されている。
【0004】
さらにシリコンカーバイト(SiC)製等のパワーモジュールも発熱対策として冷却板やヒートシンクを組み付ける等の対策が提案されている。
【0005】
ところで、上記のスマートフォンやパーソナルコンピュータのような電子機器では筐体が薄く、その薄い筐体内における限られたスペースに多数の電子部品や冷却器が組み込まれるため、冷却器自体も薄型のものが用いられることになる。
【0006】
従来において、小型の電子機器に組み込まれるヒートパイプ等の薄型の冷却器は一般的に、アルミニウム等の伝熱性が高い金属を加工して得られた複数の金属加工部品をろう付けや拡散接合等で接合することにより製作するようにしている(特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-59693号公報
【文献】特開2015-141002号公報
【文献】特開2016-189415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の小型電子機器用冷却器は、各構成部品が、鋳造や鍛造等の塑性加工や、切削等の除去加工等の金属加工(機械加工)によって製作されているが、このような金属加工は、面倒で制約も厳しいため、薄型化に限界があり、現行以上に薄型化を図ることが困難であるという課題があった。
【0009】
また従来の小型電子機器用冷却器は、各構成部品を接合する際に難易度の高いろう付けや拡散接合等の金属加工(金属間接合)を用いて製作する必要があり、製作が困難であるばかりか、生産効率が低下してコストも増大するという課題があった。
【0010】
その上さらに、従来の冷却器は、制約のある金属加工を用いて製作しているため、形状や大きさを簡単に変更することができず、設計の自由度に乏しく、汎用性に欠けるという課題も抱えている。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、十分な薄型化を図ることができるとともに、設計の自由度が高く汎用性に優れる上さらに、効率良く簡単に製作できてコストも削減することができる熱交換器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0013】
[1]入口および出口が設けられ,かつ一対の対向壁を有する外包体と、前記外包体内の前記一対の対向壁間に設けられ、かつ凹凸部を有するインナーフィンとを備え、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器であって、
前記外包体が、金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンが、金属製の伝熱層の両面側に熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンにおける凹部底面および凸部頂面の熱融着層と、前記一対の対向壁の熱融着層とが接合一体化され、
前記インナーフィンにおける凹部底面および凸部頂面と、前記一対の対向壁との間の接合部に、前記各熱融着層の樹脂を素材とする樹脂溜まりが形成され、
前記樹脂溜まりによって前記一対の対向壁の一部が外方に膨出して、樹脂溜まり膨出部が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【0014】
[2]前記インナーフィンは、そのフィン高さが低くなる方向に圧縮した状態に配置されている前項1に記載の熱交換器。
【0015】
[3]前記インナーフィンは、凹部および凸部が交互に連続して設けられ、かつ凹部底面および凸部頂面が平坦な角波形状に形成され、
前記凹部底面の中央部および前記凸部頂面の中央部に前記樹脂溜まりが形成されている前項1または2に記載の熱交換器。
【0016】
[4]前記外包体の熱融着層と前記インナーフィンの熱融着層とが同種の樹脂によって形成されている前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0017】
[5]前記外包体は、中間領域に前記インナーフィンを収容するための凹陥部が形成されたトレイ部材と、前記トレイ部材の凹陥部を閉塞するように配置されるカバー部材とによって構成されている前項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0018】
[6]前記外包体は、前記インナーフィンを介して重ね合わせて配置される一対のシート状外包体基材によって構成されている前項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0019】
[7]金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられた外包ラミネート材によって構成された一対の外包体基材を準備するとともに、金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、かつ凹凸部を有するインナーフィンを準備する部品準備工程と、
前記一対の外包体基材間に前記インナーフィンを配置した状態で、前記一対の外包体基材における外周縁部の熱融着層同士を熱融着して接合一体化する一方、その外周縁部が熱融着された前記一対の外包体基材を外包体とし、前記一対の外包体基材の互いの中間領域を一対の対向壁として、前記インナーフィンにおける凹部底面および凸部頂面の熱融着層と、前記一対の対応壁の熱融着層とを熱融着して接合一体化する融着工程とを含み、
前記融着工程を行う前の前記部品準備工程での前記インナーフィンのフィン高さHfを、前記融着工程を行った後の前記外包体における前記一対の対向壁の間隔Scよりも大きく設定することを特徴とする熱交換器の製造方法。
【0020】
[8]前記一対の対向壁の間隔Scを100%としたとき、前記インナーフィンの凹凸部高さHfを101%~110%に設定している前項7に記載の熱交換器の製造方法。
【0021】
[9]前記融着工程によって前記各熱融着層から流出した樹脂を、前記インナーフィンにおける凹部底面および凸部頂面と、前記一対の対向壁との接合部に流入させて樹脂溜まりを形成するようにした前項7または8に記載の熱交換器の製造方法。
【0022】
[10]前記樹脂溜まり周辺に対応する熱融着層が、樹脂の流出によって薄く形成されている前項9に記載の熱交換器の製造方法。
【0023】
[11]前記フィン融着工程においては、内面に伝熱性ゴム層が設けられた一対の金型をその伝熱性ゴム層を介して前記一対の外包体基材を挟み込んだ状態で加熱して熱融着するようにした前項7~10のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【0024】
[12]前記融着工程のうち、前記一対の外包体基材の外周縁部同士を融着する工程を外包体融着工程とし、前記インナーフィンを前記一対の対向壁に融着する工程をフィン融着工程として、
前記外包体融着工程を行った後、前記フィン融着工程を行うようにした前項7~11のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【0025】
[13]前記融着工程のうち、前記一対の外包体基材の外周縁部同士を融着する工程を外包体融着工程とし、前記インナーフィンを前記一対の対向壁に融着する工程をフィン融着工程として、
前記外包体融着工程と前記フィン融着工程とを同じ熱処理工程によって行うようにした前項7~11のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
発明[1][2]の熱交換器によれば、外包体とインナーフィンの凹凸部との接触部に樹脂溜まりが形成されているため、外包体とインナーフィンの凹凸部との隙間に熱交換媒体が浸入するのを防止でき、その浸入による不具合例えば、インナーフィンが外包体から剥離してしまう等の不具合を確実に防止することができる。また本発明の熱交換器においては、ラミネート材や樹脂成形品を熱融着して製作するものであるため、面倒な金属加工を用いる必要がなく、効率良く簡単に製作できてコストを削減できるとともに、十分な薄型化を図ることができる。さらに本発明の熱交換器において、外包体やインナーフィンとしてのラミネート材はその形状や大きさを簡単に変更できるため、設計の自由度が増して、汎用性を向上させることができる。
【0027】
発明[3]の熱交換器によれば、インナーフィンが角波形状に形成されているため、インナーフィンの外包体に対する接触面積を十分に確保でき、熱交換効率を向上できるとともに、インナーフィンの外包体に対する接着強度を向上できて、接触不良の発生等を防止することができる。さらにインナーフィンにおける凹部底壁および凸部頂壁間の立ち上がり壁が、外包体の厚さ方向に対し平行に配置されるため、外包体を厚さ方向に圧縮するような応力に対し十分な耐圧性を備えている。このため例えば熱交換器と熱交換対象部材と交互に複数積層させて配置するような場合に、積層方向に圧縮したとしても、不用意に変形するのを防止でき、十分な熱交換性能を得ることができる。
【0028】
発明[4]の熱交換器によれば、インナーフィンと外包体とを十分な接着強度で接合することができる。
【0029】
発明[5][6]の熱交換器によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0030】
発明[7]~[10]の熱交換器の製造方法によれば、上記発明[1]の熱交換器を製造するためのプロセスの一つを特定するものであるため、上記発明[1]の熱交換器を確実に製造することができる。
【0031】
発明[11][12]の熱交換器の製造方法によれば、外包体の一対の対向壁と、インナーフィンの凹凸部とを確実に接触させつつ加熱できるため、高精度で熱融着処理を行うことができる。
【0032】
発明[13]の熱交換器の製造方法によれば、2つの熱融着処理を同時に行っているため、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器を示す斜視図である。
【
図2】
図2は第1実施形態の熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図、図(c)は図(a)のC-C線断面に相当する正面断面図である。
【
図3】
図3は第1実施形態の熱交換器を分解して示す斜視図である。
【
図4】
図4は第1実施形態の熱交換器に適用された外包体およびインナーフィンの関係を説明するための正面断面図である。
【
図5】
図5は第1実施形態のインナーフィンを説明するための正面断面図である。
【
図6】
図6は
図2(a)の一部を拡大した断面に相当する図であって、第1実施形態の熱交換器の特徴部を誇張して示す正面断面図である。
【
図7】
図7はこの発明の第2実施形態である熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図、図(c)は図(a)のC-C線断面に相当する正面断面図である。
【
図9】
図9は第2実施形態の熱交換器に適用されたインナーフィンを示す斜視図である。
【
図10】
図10は
図7の一部を拡大した断面図に相当する図であって、第2実施形態の熱交換器の特徴部を誇張して示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施形態>
図1~
図3はこの発明の第1実施形態である熱交換器を示す図である。以下の説明においては発明の理解を容易にするため、
図2(a)の左右方向を「前後方向」として説明し、さらに
図2(b)の上下方向を「上下方向(厚さ方向)」として説明する。
【0035】
図1~
図3に示すように、本第1実施形態の熱交換器は、伝熱パネルや伝熱チューブ等として用いられるものであり、ケーシング(容器)としての外包体1と、外包体1の内部に収容されるインナーフィン(内芯材)2と、外包体1の両端部内に収容される一対(両側)のヘッダー(ジョイント部材)3,3とを備えている。
【0036】
外包体1は、平面視矩形状のトレイ部材10と、平面視矩形状のカバー部材15とによって構成されている。
【0037】
トレイ部材10は、外包ラミネート材L1の成形品によって構成されており、外周縁部を除く中間領域全域が下方に深絞り成形や、押出成型等の冷間成形の手法を用いて凹陥形成されて、平面視矩形状の凹陥部11が形成されるとともに、凹陥部11の開口縁部外周に外方に突出するフランジ部12が一体に形成されている。
【0038】
またカバー部材15は、トレイ部材10における凹陥部11の前後両端部に対応して一対の出入口16,16が形成されている。言うまでもなく本実施形態においては、一対の出入口16のうち、一方の出入口16が入口として構成され、他方の出入口16が出口として構成されている。
【0039】
トレイ部材10およびカバー部材15は、柔軟性および可撓性を有するラミネートシートである外包ラミネート材L1によって構成されている。
【0040】
図4に示すように外包ラミネート材L1は、金属(金属箔)製の伝熱層51と、その伝熱層51の一面(内面)に接着剤を介して積層された熱融着性の樹脂フィルムないし熱融着性の樹脂シート製の熱融着層52と、伝熱層51の他面(外面)に接着剤を介して積層された耐熱性の樹脂フィルムないし耐熱性の樹脂シート製の保護層53とを備えている。なお本実施形態において、「箔」という用語は、フィルム、薄板、シートも含む意味で用いられている。
【0041】
外包ラミネート材L1における伝熱層51としては、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、ニッケルメッキ加工した銅箔、ニッケルと銅箔からなるクラッドメタル等を好適に用いることができる。なお本実施形態において、「銅」「アルミニウム」「ニッケル」「チタン」という用語は、それらの合金も含む意味で用いられている。
【0042】
伝熱層51は、集熱層とも称されるものであり、厚みが8μm~300μmのものを用いるのが良く、より好ましくは100μm以下のものを用いるのが良い。
【0043】
また伝熱層51は、化成処理等の表面処理を施しておくことにより、伝熱層51の腐食防止や、樹脂との接着性の向上など、より一層耐久性を向上させることができる。
【0044】
化成処理は、例えば次のような処理を施す。即ち、脱脂処理を行った金属箔の表面に、下記の1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0045】
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0046】
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0047】
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0048】
上記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2に設定するのが好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2に設定するのがより一層好ましい。
【0049】
熱融着層52としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂等によって構成されるフィルムないしシートを好適に用いることができる。中でも特に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)によって構成されるフィルムないしシートを用いるのが好ましい。
【0050】
なお、熱融着層52としては、厚みが20μm~5000μmのものを用いるのが良く、より好ましくは30μm~80μmのものを用いるのが良い。
【0051】
また保護層53としては、耐熱性樹脂であるポリエステル樹脂(PET)、ポリアミド樹脂(ONY)等によって構成されるフィルムないしシートを好適に用いることができる。
【0052】
さらに保護層53としては、厚みが6μm~100μmのものを用いるのが良い。
【0053】
また外包ラミネート材L1を構成する伝熱層51、熱融着層52および保護層53の各間を接着するための接着剤としては、厚みが1μm~5μmのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、オレフィン系接着剤等を好適に用いることができる。
【0054】
なお本実施形態においては、外包体1を構成するラミネート材L1として、3層構造のシートを用いるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、4層以上の構造のシートを用いるようにしても良い。例えば保護層と伝熱層との間に他の層を介在させたり、伝熱層と熱融着層との間に他の層を介在したりして、4層以上の構造のシートを採用するようにしても良い。
【0055】
以上の構成の外包ラミネート材L1によって、外包体1のトレイ部材10およびカバー部材15が構成されている。そして後に詳述するようにカバー部材15がトレイ部材10にその凹陥部11の開口を閉塞するように取り付けられることによって、外包体1が形成されるものである。
【0056】
なお本実施形態においては、トレイ部材10およびカバー部材15によって、一対の外包体基材が構成されるものである。さらにトレイ部材10における凹陥部11の底壁(下壁)111と、トレイ部材10に取り付けられたカバー部材15における凹陥部11に対応する部分の天壁(上壁)151とによって、一対の対向壁が構成されるものである。
【0057】
図1~
図4に示すように外包体1の中空部(凹陥部)11内に収容されるインナーフィン2は、柔軟性ないし可撓性を有するラミネートシートである内芯ラミネート材L2によって構成されている。
【0058】
図4に示すように内芯ラミネート材L2は、金属箔製の伝熱層61と、伝熱層61の両面に接着剤を介して積層された樹脂フィルムないし樹脂シート製の熱融着層62,62とを備えている。
【0059】
内芯ラミネート材L2における伝熱層61としては、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、ニッケルメッキ加工した銅箔、ニッケルと銅箔からなるクラッドメタル等を好適に用いることができる。
【0060】
伝熱層61は、厚みが8μm~300μmのものを用いるのが良く、より好ましくは100μm以下のものを用いるのが良い。
【0061】
熱融着層62としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂等によって構成されるフィルムないしシートを好適に用いることができる。中でも特に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)によって構成されるフィルムないしシートを用いるのが好ましい。
【0062】
熱融着層62としては、厚みが20μm~5000μmのものを用いるのが良く、より好ましくは30μm~80μmのものを用いるのが良い。
【0063】
また内芯ラミネート材L2を構成する伝熱層61および熱融着層62の各間を接着するための接着剤としては、上記外包ラミネート材L1と同様、厚みが1μm~5μmのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、オレフィン系接着剤等を好適に用いることができる。
【0064】
なお本実施形態においては、インナーフィン2を構成するラミネート材L2として、3層構造のシートを用いるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、4層以上の構造のシートを用いるようにしても良い。例えば熱融着層と伝熱層との間に他の層を介在させることによって、4層以上の構造のシートを採用するようにしても良い。
【0065】
またインナーフィン2の加工方法は、切削加工、射出成型、シート成形(真空成形、圧空成形等)の他、コルゲート加工やエンボス加工を用いることができる。なお言うまでもなく、インナーフィン2の加工方法は限定されるものではない。
【0066】
図2~
図5に示すようにインナーフィン2は、凹部25および凸部26が交互に連続して形成された波形に形成されており、凹部底面(底壁)および凸部頂面(頂壁)が平坦に形成され、かつ隣り合う凹部底壁および凸部頂壁間の立ち上がり壁が垂直に形成された角波形状(矩形波形状)、いわゆるデジタル信号波形に形成されている。さらにインナーフィン2は、隣り合う凹凸部25,26において凹部25の中心線から凸部26の中心線までの間隔をフィンピッチ(ハーフピッチ)Pfとしたとき、等ピッチで配置されている。換言すると、凹部底壁の幅寸法(
図5の紙面に向かって左右方向の幅寸法)W11と、凸部頂壁の幅方向W12の寸法とが等しく設定されている。
【0067】
本実施形態においては、フィンピッチPfを1mm~5mmに設定するのが良い。すなわちフィンピッチPfが狭過ぎると、加工が困難になるとともに、熱交換媒体の圧力損失も大きくなり、好ましくない。逆にフィンピッチPfが広過ぎると、外圧によって変形し易くなり、耐圧性の低下を招くおそれがあり、好ましくない。
【0068】
このインナーフィン2が、トレイ部材10の凹陥部11内に収容される。この場合、インナーフィン2は、トレイ部材10の凹陥部11における前後両端部を除いた中間部に収容される。さらにインナーフィン2は、その山筋方向および谷筋方向がトレイ部材10の前後方向(
図1の左右方向)に一致するように配置される。これにより、インナーフィン2の山筋部および谷筋部によって形成されるトンネル部および溝部が、熱交換流路として構成されている。この熱交換流路は、トレイ部材10の前後方向(長さ方向)に沿うように配置され、かつ幅方向(左右方向)に並列に複数配置されており、熱交換媒体(熱媒体)が各熱交換流路を通って均等に分散しながら外包体1の前後方向一端側から他端側に向けてスムーズに流通できるように構成されている。
【0069】
なお後に詳述するが、熱交換器組付前の部品製作段階でのインナーフィン2のフィン高さHfは、熱交換器組付完了後の設計上の外包体1の上下壁111,151間の間隔(中空部高さ)Scよりも大きく形成されている。
【0070】
一方
図2および
図3に示すように、外包体1の両端部に配置される一対のヘッダー3,3は、合成樹脂の成形品によって構成されている。
【0071】
ヘッダー3を構成する樹脂としては、上記外包体1およびインナーフィン2の熱融着層52,62を構成する樹脂と同種の樹脂を用いるのが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂等を好適に用いることができる。
【0072】
ヘッダー3は、一側面に開口部32を有する箱状の取付箱部31と、取付箱部31の上壁に設けられたパイプ部33とを備えている。パイプ部33は取付箱部31内に連通しており、パイプ部33の内部と取付箱部31の内部との間で熱交換媒体が往来できるように構成されている。
【0073】
このヘッダー3の取付箱部31がトレイ部材10の凹陥部11におけるインナーフィン2の両側に配置される。さらにヘッダー3のパイプ部33が上向き配置されるとともに、取付箱部31の開口部32が内側に向けて、つまりインナーフィン2に対向して配置される。
【0074】
こうしてヘッダー3,3をトレイ部材10内に収容して、カバー部材15をトレイ部材10にその開口部を閉塞するように配置する。この場合、カバー部材15の出入口16内に、ヘッダー3,3の上向きのパイプ部33,33を挿通配置する。
【0075】
こうして仮組された熱交換器は、既述した通り、組付前のフィン製作時のインナーフィン2のフィン高さHfが、組付完了後の外包体1の上下壁111,151間の間隔(中空部高さ)Scよりも大きいため、カバー部材15の中間領域がインナーフィン2によって押し上げられて上方に膨らむように配置される。
【0076】
そしてこの熱交換器仮組品を加熱することによって、接触し合う部材同士を熱融着して接合一体化する。
【0077】
まず、外包体1におけるトレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との重ね合わせ部分を、上下一対の加熱シール型によって挟み込みながら加熱する(外包体融着工程)。これにより、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との熱融着層52同士を熱融着(熱接着)して、外包体1の中空部を気密ないし液密状態に封止する。
【0078】
続いて、外周縁部を熱溶着した外包体1の中間領域(下壁111および上壁151)を上下一対の加熱板によって挟み込みながら加熱する。これにより、インナーフィン2の山頂部および谷底部の熱融着層62と、トレイ部材10の底壁111およびカバー部材15の中間領域(上壁)151の熱融着層52とを熱接着(熱融着)により接合一体化して、液密ないし気密状態に封止する(フィン融着工程)。さらにこのフィン融着工程においては、ヘッダー3,3の取付箱部31,31の外周面と、それに対応するトレイ部材10およびカバー部材15の熱融着層52とを熱融着(熱接着)により接合一体化して、液密ないし気密状態に封止する。
【0079】
こうして組み付けられた熱交換器は、外包体1における両端部の上壁(カバー部材15)からヘッダー3,3のパイプ部33,33が上方に突出するように配置されている。
【0080】
ここでインナーフィン2およびヘッダー3,3と、外包体1との熱融着部を同種の樹脂によって構成している場合には、両者を十分な取付強度で確実に固着することができる。
【0081】
なお本実施形態において、熱融着処理(加熱処理)を減圧下で行うことで、トレイ部材10とカバー部材15との間、トレイ部材10およびカバー部材15とそれらと接触しているインナーフィン2およびヘッダー3,3との間の熱接着を強く行うことができる。従って熱融着処理を減圧下で行うのが好ましい。
【0082】
本実施形態において、熱融着処理時の加熱温度(溶着温度)は、140℃~250℃に設定するのが良く、より好ましくは160℃~200℃に設定するのが良い。さらに熱融着時の圧力(溶着圧力)は、0.1MPa~0.5MPaに設定するのが良く、より好ましくは0.15MPa~0.4MPaに設定するのが良い。さらに融着時間(溶着時間)は、2秒~10秒に設定するのが良く、より好ましくは3秒~7秒に設定するのが良い。
【0083】
また本実施形態においては、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部とを熱融着する外包体融着工程と、インナーフィン2およびヘッダー3,3と外包体1とを熱融着するフィン融着工程とを別々の熱処理で行うようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、外包体融着工程と、フィン融着工程とを同じ熱処理で行うようにしても良い。
【0084】
また本実施形態では、融着工程特に、フィン融着工程においては、外包体1の下壁111および上壁151を挟み込む一対の加熱板における外包体1との接触面に、伝熱性ゴム層を配置しておくことによって、外包体1の下壁111および上壁151と、インナーフィン2の凹部底面および凸部頂面とを確実に接触させることができ、高精度で熱融着処理を行うことができる。
【0085】
以上の本実施形態の熱交換器においては、外包体融着工程およびフィン融着工程等の融着工程を行う前のフィン成形段階でのインナーフィン2のフィン高さHfが、融着工程を行った後の熱交換器完成後の外包体1の上下壁間の間隔(中空部高さ)Scよりも大きく形成されているため、フィン融着工程においては、インナーフィン2のフィン高さHfが低くなるように上下方向に加圧されて圧縮した状態で熱融着される。このように加圧圧縮状態で、熱融着が行われると、
図6に示すようにインナーフィン2の各部位(壁部)が湾曲するように変形しつつ、外包体1およびインナーフィン2の熱融着層52,62の樹脂が溶融して、インナーフィン2の凸部頂面と、外包体1の上下壁111,151との間に流入することにより、その間に樹脂溜まり4が形成されるとともに、熱融着層52,62の溶融樹脂がインナーフィン2の立ち上がり壁と、外包体1との接触部の上下位置に流れ込んで滞留し、その位置にも樹脂溜まり4が形成される。
【0086】
こうして樹脂溜まり4が形成されると、その樹脂溜まり4によって持ち上げられて、外包体1の一部が外方に膨出して、樹脂溜まり膨出部41が形成される。
【0087】
なお樹脂溜まり4の周辺の熱融着層52,62は、樹脂溜まり4に樹脂が流出することによって薄く形成されることになる。
【0088】
このように本実施形態の熱交換器は、インナーフィン2が高さ方向に圧縮変形した状態で、外包体1とインナーフィン2の凹凸部25,26との接触部(接合部)に樹脂溜まり4が形成され、その樹脂溜まり4に対応して外包体1に液溜まり膨出部41が形成されている。
【0089】
以上の構成の熱交換器は、電池等を冷却対象部材(熱交換対象部材)として冷却する冷却器(冷却装置)として用いられる。すなわち熱交換器の一方のパイプ部33に、熱交換媒体(冷媒)としての冷却液(冷却水、不凍液等)を流入するための流入管が連結されるとともに、他方のパイプ部33に、冷却液を流出するための流出管が連結される。さらに熱交換器の外包体1における下壁111および/または上壁151に冷却対象部材としての電池を接触させた状態に配置する。そしてその状態で一方のパイプ部33から冷却液を一方のヘッダー3を介して外包体1の内部に流入し、その冷却液をインナーフィン2の部分を流通させて、他方のヘッダー3を介して他方のパイプ部33から流出させる。こうして冷却液を外包体1に循環させることにより、その冷却液と電池との間でインナーフィン2および外包体1の上下壁を介して熱交換されて、電池が冷却されるものである。
【0090】
本実施形態の熱交換器は、その使用形態は特に限定されるものではなく、1つだけで使用することもできるし、2つ以上で使用することもできる。1つでの使用は、既述した通り、熱交換器の上下面に熱交換対象部材を接触させて使用するものである。2つで使用する場合には、例えば2つの熱交換器によって熱交換対象部材を挟み込むように配置して使用することができる。さらに2つ以上で使用する場合、熱交換器と熱交換対象部材とを交互に重ね合わせるように配置して使用することもできる。
【0091】
以上のように本第1実施形態の熱交換器によれば、外包体1とインナーフィン2の凹凸部25,26との接触部に樹脂溜まり4が形成されているため、外包体1とインナーフィン2の凹凸部25,26との隙間に熱交換媒体(冷媒)が浸入するのを防止でき、その浸入による不具合例えば、インナーフィン2が外包体1から剥離して接触不足が発生して、熱交換性能が低下する等の不具合を確実に防止することができる。
【0092】
また本実施形態においては、熱交換器外表面に樹脂溜まり膨出部41が形成されているため、その膨出部41を外部から視認することによって、樹脂溜まり4が形成されていることを容易に把握することができる。このため樹脂溜まり4が確実に形成されているか否かを外観から簡単に判断でき、利便性を向上させることができる。
【0093】
ここで本実施形態において、上記樹脂溜まり4を精度良く安定した状態に形成するために、組付前の部品製作時のインナーフィン2のフィン高さHfを、完成後の外包体1の上下壁間隔Scよりも大きく設定している。具体的には、部品製作時のフィン高さHfを完成後の外包体1の上下壁間隔Scに対し1.01倍~1.10倍に設定するのが良い。換言すると完成後の外包体1の上下壁間隔Scを100%としたとき、部品製作時のフィン高さHfを101%~110%に設定するのが好ましい。
【0094】
また本実施形態の熱交換器においては、インナーフィン2を角波形状に形成しているため、外包体1との接触面積を十分に確保でき、外包体1の外面に接触する冷却対象部材との間の熱交換効率を向上させることができ、高い熱交換性能を得ることができる。さらにインナーフィン2と外包体1との接着面積を大きく確保できるため、インナーフィン2の外包体1に対する取付強度を向上でき、接触不良の発生等を確実に防止することができる。
【0095】
また本実施形態の熱交換器においては、インナーフィン2の位置をヘッダー3,3によって規制することができるため、熱交換媒体の流通によってインナーフィン2が揺れ動いたり、ばたついたりすることがなく、その動きによって発生する熱交換媒体の滞留を防止することができる。このため熱交換媒体の流動性を向上させることができ、熱交換性能を一層向上させることができる。
【0096】
また本実施形態の熱交換器によれば、構成部材としてのトレイ部材10、カバー部材15、インナーフィン2およびヘッダー3が合成樹脂を基に製作されているため、各構成部材を適宜熱融着するだけで簡単に製作することができる。このため本実施形態の熱交換器は、ろう付け接合等の難易度が高くて面倒な接合加工によって製作する従来の金属製の熱交換器に比べて、コストの削減および生産性の向上を図ることができる。
【0097】
さらに本実施形態の熱交換器は、金属の塑性加工や切削加工等の面倒かつ制約のある金属加工を用いる場合と異なり、より一層生産効率の向上およびコストの削減を図ることができる。
【0098】
また本実施形態の熱交換器は、薄型のラミネートシート(ラミネート材)L1からなるトレイ部材10およびカバー部材15を貼り合わせて形成するものであるため、十分な薄肉化および軽量化を確実に図ることができる。
【0099】
また本実施形態の熱交換器によれば、外包体1の内部にインナーフィン2を配置して、外包体1の内部に冷媒流通用空間(熱交換流路)を確保するものであるため、内圧および外圧のいずれの圧力に対しても高い強度を確保でき、動作信頼性を向上させることができる。
【0100】
さらに本実施形態の熱交換器は、外包体1がラミネート材L1であるため、熱交換器自体の形状や大きさを簡単に変更できるとともに、既述した通り、厚みや強度、熱交換性能等も簡単に変更できるので、熱交換器取付位置等に合わせて適切な構成に簡単に仕上げることができ、設計の自由度が増し、汎用性も向上させることができる。
【0101】
<第2実施形態>
図7はこの発明の第2実施形態である熱交換器を示す図、
図8は
図7(c)の一部を拡大して示す断面図、
図9は第2実施形態の熱交換器に適用されたインナーフィン2を示す斜視図である。これらの図に示すようにこの熱交換器は、袋状の外包体1と、その外包体1の内部に配置されるインナーフィン2とを備え、外包体1の前端および後端に、出入口16,16が設けられている。
【0102】
外包体1は、上記第1実施形態と同様の3層構造の外包ラミネート材L1によって構成されている。そして本実施形態の外包体1は、後述するように矩形状に形成された一対(2枚)のシート状の外包ラミネート材(外包体基材)L1が上下に重ね合わされて、外周縁部の熱融着層52同士が熱融着(ヒートシール)によって接合一体化されることにより、袋状に形成されている。
【0103】
また外包体1における出入口16,16にはジョイントパイプ33,33が設けられる。本実施形態においてジョイントパイプ33,33は例えば、上記第1実施形態のヘッダー3と同様の合成樹脂成形品によって構成されている。
【0104】
このジョイントパイプ33,33は、外包体1を構成する2枚の外包ラミネート材L1の前端部間および後端部間に挟み込まれるように配置されて、各ジョイントパイプ33,33の外周面(熱融着層)が、それに対応する外包ラミネート材L1の熱融着層52に熱融着によって接合一体化されている。これによりジョイントパイプ33,33が外包体1の出入口16,16の位置において外包体1の前端部および後端部を貫通した状態で外包体1に固定されている。この状態では、ジョイントパイプ33,33の外周面全域と外包ラミネート材L1の熱融着層52との間は熱融着によって封止されている。さらに各ジョイントパイプ33,33の一端側は外包体1の外部に配置されるとともに、他端側は外包体1の内部に配置されており、熱交換媒体としての冷媒を一方のジョイントパイプ33を介して外包体1の内部に導入できるとともに、外包体1の内部の冷媒を他方のジョイントパイプ33を介して外部に導出できるようになっている。
【0105】
インナーフィン2は、上記第1実施形態と同様の3層構造の内芯ラミネート材L2によって構成されている。
【0106】
本実施形態においてインナーフィン2は、略円弧状の凹部25および凸部26が交互に連続して配置される一般的な波形状(正弦波形状)、いわゆるアナログ信号波形に形成されている。なおインナーフィン2の加工方法は特に限定されるものではないが、例えばシート状の内芯ラミネート材L2を一対のエンボスロールまたは一対のコルゲートロールによって挟み込みつつ、その一対のロール間に通過させて、凹凸部を成形する方法を好適に採用することができる。
【0107】
この構成のインナーフィン2が既述した通り、外包体1の内部に収容されている。そしてインナーフィン2の凹部底面および凸部頂面と、外包体1の熱融着層(内面層)52とが熱融着により接合一体化されている。
【0108】
本第2実施形態の熱交換器において、他の構成は、上記第1実施形態の熱交換器と実質的に同様であるため、同一または相当部分に、同一符号を付して重複説明は省略する。
【0109】
この第2実施形態の熱交換器の製造手順は、一方(下側)の外包ラミネート材L1の中間領域に、インナーフィン2を設置し、さらに外包ラミネート材L1の外周縁部における前端縁部および後端縁部にジョイントパイプ33,33を設置する。
【0110】
続いて他方(上側)の外包ラミネート材L1を、インナーフィン2およびジョイントパイプ33,33を覆うようにして、下側の外包ラミネート材L1上に配置する。こうして上下の外包ラミネート材L1の外周縁部における互いの熱融着層52同士を重ね合わせて、その重ね合わせ部を上記第1実施形態と同様、一対の加熱シール型によって挟み込みながら加熱して、当該重ね合わせ部を熱融着して接合一体化する(外包体融着工程)。なおジョイントパイプ33,33の部分は、ジョイントパイプ33,33の外周面を上下の外包ラミネート材L1の外周縁部における熱融着層52に熱融着して接合一体化する。
【0111】
さらに外包体1の一対の外包ラミネート材L1,L1において対向し合う一対の中間領域を一対の対向壁1a,1aとして、その一対の対向壁1a,1aを上下一対の加熱板によって挟み込みながら加熱する。これによりインナーフィン2の山頂部および谷底部の熱融着層62を、一対の対向壁1a,1aの熱融着層52に熱融着により接合一体化する(フィン融着工程)。
【0112】
こうして本第2実施形態の熱交換器が製造される。本第2実施形態においても、外包体融着工程と、フィン融着工程とを別々に行っても良いし、同時に行っても良い。
【0113】
この第2実施形態の熱交換器においては、一方のジョイントパイプ33から冷却液等の熱交換媒体を外包体1内に流入させて、他方のジョイントパイプ33から流出させることにより、冷却液を外包体1内に循環させるとともに、循環する冷却液と、外包体1の外表面に接触させた熱交換対象部材との間で熱交換させて、熱交換対象部材を冷却するものである。
【0114】
この第2実施形態の熱交換器においても、上記第1実施形態の熱交換器と同様、融着工程を行う前の部品製作時のインナーフィン2のフィン高さHfを、融着工程後の組付完了状態での外包体1における一対の対向壁1a,1aの間隔Scよりも大きく設定している。このため熱融着時には、インナーフィン2が一対の対向壁1a,1aに抑圧されて、厚さ方向(上下方向)に圧縮した状態となるため、
図10に示すように熱融着時に、各熱融着層52,62の樹脂が溶融してインナーフィン2の山頂部および谷底部に流れ込んで滞留し、その位置に樹脂溜まり4が形成されるとともに、その樹脂溜まり4に持ち上げられて、外包体1の一部が外方に膨出して樹脂溜まり膨出部41が形成される。
【0115】
この第2実施形態の熱交換器において、他の構成は上記第1実施形態の熱交換器と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0116】
以上の構成の第2実施形態の熱交換器においても、上記第1実施形態の熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0117】
1.外包ラミネート材(PE12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40)の準備。
【0118】
伝熱層51としてのJIS H4160のA8021のアルミニウム箔(厚さ120μm)にクロメート処理を行い、下地層を両面にコーティングした(クロム付着量は片面当たり10g/m2)。このアルミニウム箔の一方の面(外面)に、ウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して保護層としてPETフィルム(厚さ12μm)を積層した。さらにアルミニウム箔の他方の面(内面)に、ウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して熱融着層52としてのLLDPEフィルム(厚さ40μm)を積層した。これにより外包体用のラミネート材L1を準備した。
【0119】
2.内芯ラミネート材(LLDPE40/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40)の準備
伝熱層61としてのJIS H4160のA8021のアルミニウム箔(厚さ120μm)にクロメート処理を行い、下地層を両面にコーティングした(クロム付着量は片面当たり10g/m2)。このアルミニウム箔の両面に、ウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して熱融着層62としてのLLDPEフィルム(厚さ40μm)を積層した。これによりインナーフィン用のラミネート材L2を準備した。
【0120】
3.トレイ部材10およびカバー部材15の作製
図1~
図3に示す第1実施形態に準拠して、上記外包ラミネート材L1をカットして得られたシート材を、深絞り成形により、深さ4mm×幅65mm×長さ120mmの凹陥部11と、凹陥部11の開口縁部の全周に形成された幅10mmのフランジ部12とを有するトレイ部材11を作製した。
【0121】
上記外包ラミネート材L1をカットして、トレイ部材11の上面に対応する大きさのシート状のカバー部材15であって、トレイ部材11の凹陥部11の両側に対応して出入口16が形成されたものを作製した。
【0122】
【0123】
4.インナーフィン2の作製
(1)表1に示すように、内芯ラミネート材L2に対し、コルゲート加工を行って
図2~
図4に示すようにフィン高さHf4.1mmの矩形波形状(角波形状)のフィン材(幅65mm×長さ60mm)を作製して、実施例1のインナーフィン2とした。
【0124】
(2)表1に示すように、フィン高さHfを4.2mmとした以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2のインナーフィン2を作製した。
【0125】
(3)表1に示すように、フィン高さHfを3.8mmとした以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1のインナーフィン2を作製した。
【0126】
(4)表1に示すように、内芯ラミネート材L2に対し、コルゲート加工を行って
図7~
図9に示すようにフィン高さHf4.1mmの正弦波形状のフィン材(幅65mm×長さ60mm)を作製して、実施例3のインナーフィン2とした。
【0127】
5.ヘッダー3の作製
図2~
図4に示すように、高さ4mm×長さ65mm×幅30mmの取付箱部31に、内径φ10mm、外径φ12mm、長さ3mmのパイプ部33が一体に形成されたヘッダー3を射出成型によって作製した。
【0128】
<実施例1>
トレイ部材10の凹陥部11における両端部にヘッダー3,3を、各パイプ部33が上方に向くようにして収容した。さらに凹陥部11内におけるヘッダー3,3間に上記実施例1のインナーフィン2を収容した。
【0129】
次にトレイ部材10にその凹陥部11を上から閉塞するようにカバー部材15を配置した。この際、カバー部材15の出入口16,16にヘッダー3,3のパイプ部33,33を挿通してカバー部材の15の上方に突出させた。
【0130】
こうして非接合状態の熱交換器仮組品を作製し、表1に示すようにその仮組品に対し、2段階で融着処理(溶着処理)を行った。1段目の溶着処理では、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部とが重なり合った部分を、金属製のシール金型によって上下から挟み込んで、180℃×0.3MPa×7秒の条件で溶着処理を行って、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部とを融着して外包体1を作製した。
【0131】
次に2段目の溶着処理では、トレイ部材10の底面と、カバー部材15の中央領域上面とを、金属製のシール金型によって上下から挟み込んで、190℃×0.3MPa×7秒の条件で溶着処理を行って、トレイ部材10の底部およびカバー部材15の中央領域と、インナーフィン2の凹部底面および凸部頂面とを融着して、実施例1の熱交換器を作製した。
【0132】
<実施例2>
表1に示すように、インナーフィンとして、実施例2のインナーフィン2を用いた以外は上記実施例1と同様にして、実施例2の熱交換器を作製した。
【0133】
<比較例1>
表1に示すように、インナーフィンとして、比較例1のインナーフィン2を用いた以外は上記実施例1と同様にして、比較例1の熱交換器を作製した。
【0134】
<実施例3>
表1に示すように、実施例3のインナーフィン2を用いて、上記実施例1と同様に熱交換器仮組品を作製し、その仮組品に対し、1段階で融着処理(溶着処理)を行った。
【0135】
この溶着処理では、トレイ部材10の凹陥部底面およびフランジ部12と、カバー部材15の上面全域とを、金属製のシール金型によって上下から挟み込んで、190℃×0.3MPa×7秒の条件で溶着処理を行って、トレイ部材10、カバー部材15およびインナーフィン2の各接触部を溶着して実施例3の熱交換器を作製した。
【0136】
実施例3の1段の溶着処理においては、金属製のシール金型の外包体1との接触面に伝熱性ゴム層(耐熱用シリコーンゴム製:信越化学工業社製の製品名「KE-5552」)を配置した。なお、実施例1,2比較例1の2段の溶着処理時には、シール金型に伝熱性ゴムは配置していない。
【0137】
<耐圧試験>
表1に示すように、実施例1~3および比較例1の各熱交換器に熱交換媒体としての冷却水を流通して、内圧1MPaで5分間保持して、各熱交換器の外包体1とインナーフィン2との剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所の有無を目視により観察した。また参考までに、5分経過しても接着破壊箇所が確認できなかった場合には、内圧を1.5MPaまで過剰に上昇させて、引き続き観察した。
【0138】
<耐圧試験の評価基準>
上記耐圧試験の結果、内圧15MPaまで、剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所が発生しなかったものは、優良「◎」と評価し、内圧1MPaまでは、剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所が発生しなかったが、内圧が1MPaを超えると、1.5MPa未満までに剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所が発生したものは、良好「○」と評価し、内圧1MPa未満までに剥がれ、膨れ等の接着破壊箇所が発生したものは、不良「×」と評価した。その評価結果を表1に併せて示す。
【0139】
<外観評価試験>
実施例1~3および比較例1の各熱交換器を切断して、各断面を観察し、以下の項目(1)((2)を評価した。
【0140】
(1)外包体1とインナーフィン2との接合部における樹脂溜まり4の形成状態
(2)樹脂溜まり4の発生位置付近の外包体1の外表面の形状
<外観評価基準>
外観評価試験の結果、接合部で樹脂溜まり4が形成されており、樹脂溜まり付近の外包体1が持ち上げられて、樹脂溜まり膨出部41が形成されていたものは、良好「○」と評価し、接合部で樹脂溜まり4が形成されておらず、接合部付近の外包体が平坦面であったものは、不良「×」として評価した。その評価結果を表1に併せて示す。
【0141】
表1から明らかなように、フィン高さを高くして、樹脂溜まり4を形成した実施例1~3の熱交換器は、耐圧性に優れているのが判る。特に、矩形波形状の実施例1,2の熱交換器は、より高い耐圧性を備えているのが判る。
【0142】
これに対し、フィン高さを通常または低くして、樹脂溜まりを形成しなかった比較例1の熱交換器は、耐圧性に劣っているのが判る。
【産業上の利用可能性】
【0143】
この発明の熱交換器は、スマートフォンやパーソナルコンピュータのCPU回り、電池回りの発熱対策、液晶テレビ、有機ELテレビ、プラズマテレビのディスプレイ回りの発熱対策、自動車のパワーモジュール回り、電池回りの発熱対策に用いられる冷却器(冷却装置)の他、床暖房、除雪に用いられる加熱器(加熱装置)として利用することができる。
【符号の説明】
【0144】
1:外包体
1a:一対の対向壁
10:トレイ部材
11:凹陥部
111:底壁(対向壁)
15:カバー部材
151:上壁(対向壁)
16:出入口
2:インナーフィン
25:凹部
26:凸部
4:樹脂溜まり
41:樹脂溜まり膨出部
51:伝熱層
52:熱融着層
61:伝熱層
62:熱融着層
L1:外包ラミネート材
L2:内芯ラミネート材
Hf:フィン高さ
Sc:上下壁(一対の対向壁)の間隔