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特許7411063硬化性オルガノポリシロキサン組成物、硬化物、及び電気/電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】硬化性オルガノポリシロキサン組成物、硬化物、及び電気/電子機器
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20231227BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20231227BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20231227BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231227BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231227BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/5415
C08K3/013
H01L23/30 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022504110
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 CN2019097918
(87)【国際公開番号】W WO2021016743
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チェン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】大西 正之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、コイチュン
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043270(WO,A1)
【文献】特開2007-224102(JP,A)
【文献】特公昭52-021016(JP,B2)
【文献】特開2012-251166(JP,A)
【文献】特開2013-155347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を有する、100質量部のオルガノポリシロキサンと、
(B)1分子当たり1個のケイ素原子結合水素原子を有し、アルケニル基及びケイ素原子結合アルコキシ基を含まない、0.05~5質量部のオルガノシロキサンと、
(C)1分子当たり1個のケイ素原子結合水素原子及び少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を有し、アルケニル基を含まない、0.01~10質量部のオルガノシロキサンと、
(D)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、アルケニル基及びケイ素原子結合アルコキシ基を含まない、0.1~20質量部のオルガノポリシロキサンと、
(E)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、
(F)触媒量の縮合反応触媒と、
を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、
成分(B)、(C)、及び(D)におけるケイ素原子結合水素原子の、成分(A)のアルケニル基に対するモル比が、0.2~0.9の範囲である、硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
成分(B)が、以下の一般式:
【化1】
[式中、各Rは、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、同一の又は異なる一価炭化水素基である]で表されるオルガノシロキサンである、請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
成分(C)が、以下の一般式:
【化2】
[式中、各Rは、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、同一の又は異なる一価炭化水素基であり、各Rは、1~3個の炭素原子を有する同一の又は異なるアルキル基であり、Rは、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、「a」は、0、1、又は2であり、「n」は、1~50の整数である]で表されるオルガノシロキサンである、請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
成分(C)が、以下の一般式:
【化3】
で表されるオルガノシロキサンである、請求項3に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
100質量部の成分(A)に対して0.1~10質量部の量で、(G)接着促進剤を更に含む、請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
100質量部の成分(A)に対して1~200質量部の量で、(H)無機充填剤を更に含む、請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
電気/電子機器の封入材又はシーラントとして使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより得られた硬化物。
【請求項9】
10~60のショア00硬度を有する、請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより得られた硬化物を含む、電気/電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、その硬化物、及びそれから作製された電気/電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、電気/電子機器の封入材又はシーラントとして広く使用されており、硬化中に接触する基材に対して優れた自己接着性を示すことが求められている。特に、最近では、電気/電子機器の小型化、多目的化、コンパクト化、及び軽量化が求められてきており、各種用途に対応する形状が複雑化してきており、従来とは異なる接着剤形態で使用される接着剤が必要とされてきている。
【0003】
特許文献1では、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子当たり1個のケイ素原子結合水素原子及び少なくとも1つのトリアルコキシシリル基を有するオルガノシロキサンと、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有する鎖状又は環状オルガノポリシロキサンと、1分子当たり少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有する鎖状オルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒と、縮合反応触媒と、接着促進剤と、を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、基材に良好な接着性を有する硬化物を形成するが、熱衝撃試験後に硬化物に亀裂又は剥離が生じるという問題がある。
【0005】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:国際公開第2018/043270(A1)号
【発明の概要】
【0006】
技術的な問題
本発明の目的は、硬化して、熱衝撃試験後に亀裂及び剥離が発生することなく、各種基材に対して優れた接着特性を有する硬化物を形成することができる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することである。本発明の別の目的は、熱衝撃試験後に亀裂及び剥離を含まない硬化物を提供することである。
【0007】
問題の解決策
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を有する、100質量部のオルガノポリシロキサンと、
(B)1分子当たり1個のケイ素原子結合水素原子を有し、アルケニル基及びケイ素原子結合アルコキシ基を含まない、0.05~5質量部のオルガノシロキサンと、
(C)1分子当たり1個のケイ素原子結合水素原子及び少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を有し、アルケニル基を含まない、0.01~10質量部のオルガノシロキサンと、
(D)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、アルケニル基及びケイ素原子結合アルコキシ基を含まない、0.1~20質量部のオルガノポリシロキサンと、
(E)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、
(F)触媒量の縮合反応触媒と、
を含み、
成分(B)、(C)、及び(D)におけるケイ素原子結合水素原子の、成分(A)のアルケニル基に対するモル比が、0.2~0.9の範囲である。
【0008】
様々な実施形態では、成分(B)は、以下の一般式:
【化1】
[式中、各Rは、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、同一の又は異なる一価炭化水素基である]で表されるオルガノシロキサンである。
【0009】
様々な実施形態では、成分(C)は、以下の一般式:
【化2】
[式中、各Rは、上述のとおりであり、各Rは、1~3個の炭素原子を有する同一の又は異なるアルキル基であり、Rは、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、「a」は、0、1、又は2であり、「n」は、1~50の整数である]で表されるオルガノシロキサンである。
【0010】
様々な実施形態では、成分(C)は、以下の一般式:
【化3】
で表されるオルガノシロキサンである。
【0011】
様々な実施形態では、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
100質量部の成分(A)に対して0.1~10質量部の量で、(G)接着促進剤を更に含む。
【0012】
様々な実施形態では、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
100質量部の成分(A)に対して1~200質量部の量で、(H)無機充填剤を更に含む。
【0013】
様々な実施形態では、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、電気/電子機器の封入材又はシーラントとして使用される。
【0014】
本発明の硬化物は、上記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより得られる。
【0015】
様々な実施形態では、硬化物は、10~60のショア00硬度を有する。
【0016】
本発明の電気/電子機器は、上記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより得られる硬化物を含む。
【0017】
発明の効果
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化可能であり、熱衝撃試験後に亀裂及び剥離が発生する様々な基材に対して優れた接着特性を有する硬化物を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば/など、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0019】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様を説明するために、本明細書で依拠されたあらゆるマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素から独立してそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠されてもよく、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0020】
本発明の様々な実施形態の記載で依拠された任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、その中に整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていない場合であっても、記述し、想定すると理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にすることを、そして、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2分の1、3分の1、4分の1、5分の1などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、そして添付の特許請求の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、そして各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。最終的に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。
【0021】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物について、詳細に説明する。
【0022】
成分(A)は、1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。アルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘキセニル基によって例示されるが、経済効率及び反応性の観点から、ビニル基が好ましい。成分(A)中のアルケニル基以外のケイ素原子結合基は、限定されないが、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、一価炭化水素基によって例示される。一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、又は同様のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、又は同様のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、又は同様のアラルキル基;及び3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、又は同様のハロゲン化アルキル基によって例示されるが、経済効率及び硬化物の耐熱性の観点から、メチル基が好ましい。
【0023】
成分(A)の分子構造は特に限定されないが、その例としては、直鎖構造、部分分岐直鎖構造、分岐構造、環状構造、ネットワーク構造、及び樹枝状構造が挙げられる。成分(A)は、これらの分子構造を有する二種以上の混合物であってもよい。
【0024】
更に、特に限定されないが、25℃での成分(A)の粘度は、例えば、好ましくは20~1,000,000mPa・sの範囲内、特に好ましくは100~100,000mPa・sの範囲内である。これは、25℃での粘度が上記範囲の下限以上である場合、得られた硬化物の物理的特性、特に可撓性及び伸びが大幅に増加し得ること、これに対し上記範囲の上限以下である場合、得られた組成物の取り扱い性が向上し得ることによる。粘度は、ASTM D 1084に従って回転式粘度計を使用することによって測定される。
【0025】
成分(A)のオルガノポリシロキサンの例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、及び分子鎖両末端メチルビニルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0026】
成分(B)は、本発明による特徴的な成分であり、1分子当たり1個のケイ素原子結合水素原子を有し、アルケニル基及びケイ素原子結合アルコキシ基を含まない、オルガノシロキサンである。成分(B)中のケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子結合基は、限定されないが、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、一価炭化水素基によって例示される。一価炭化水素基の例としては、上述の基が挙げられる。
【0027】
成分(B)の分子構造は特に限定されないが、その例としては、直鎖構造、部分分岐直鎖構造、分岐構造、環状構造、ネットワーク構造、及び樹枝状構造が挙げられる。
【0028】
様々な実施形態では、成分(B)は、以下の一般式:
【化4】
で表されるオルガノシロキサンである。
【0029】
式中、各Rは、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、同一の又は異なる一価炭化水素基である。一価炭化水素基の例としては、上述の基が挙げられる。
【0030】
成分(B)の含有量は、100質量部の成分(A)当たり、約0.01~約5質量部の範囲、好ましくは約0.1~約5質量部の範囲、あるいは約0.1~約3質量部の範囲、あるいは約0.5~約2質量部の範囲である。これは、成分(B)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、硬化物の熱衝撃安定性が改善されること、及び、成分(B)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、組成物の硬化性が改善されることによる。
【0031】
成分(C)はまた、本発明による特徴的な成分であり、1分子当たり1個のケイ素原子結合水素原子及び少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を有し、アルケニル基を含まない、オルガノシロキサンである。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基等の1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基によって例示されるが、反応性の観点からメトキシ基が好ましい。オルガノシロキサン中のケイ素原子結合アルコキシ基の結合位置には制限はなく、アルコキシ基は、主鎖上のケイ素原子に結合していてもよく、又は主鎖上のケイ素原子に結合したシリルアルキル基上のケイ素原子に結合していてもよい。ケイ素原子結合アルコキシ基は、好ましくはアルコキシシリルアルキル基の一部にある。アルコキシシリルアルキル基は、好ましくは以下の一般式:
-R-SiR (OR(3-a)
で表される。
【0032】
式中、Rは、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、一価炭化水素基である。一価炭化水素基の例としては、上述の基が挙げられる。
【0033】
式中、Rは、1~3個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられるが、経済効率及び反応性の観点からメチル基が好ましい。
【0034】
式中、Rは、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基である。アルキレン基の例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、及びヘキシレン基が挙げられる。
【0035】
式中、「a」は、0、1、又は2、あるいは0である。
【0036】
成分(C)中のケイ素原子結合水素原子及びアルコキシ基以外のケイ素原子結合基は、限定されないが、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、一価炭化水素基によって例示される。一価炭化水素基の例としては、上述の基が挙げられる。
【0037】
成分(C)の分子構造は特に限定されないが、その例としては、直鎖構造、部分分岐直鎖構造、分岐構造、環状構造、ネットワーク構造、及び樹枝状構造が挙げられる。
【0038】
様々な実施形態では、成分(C)は、以下の一般式:
【化5】
で表されるオルガノシロキサンである。
【0039】
式中、R、R、R、及び「a」は、上記のとおりである。
【0040】
式中、「n」は1~50の整数、好ましくは1~10の整数、あるいは1~5の整数である。これは、「n」が上記範囲の上限以下である場合、成分(C)の反応性が改善され、硬化物の接着特性も改善されることによる。
【0041】
この種の成分(C)の例としては、以下に言及されるもの等のオルガノシロキサンが挙げられる。
【化6】
【0042】
成分(C)の含有量は、100質量部の成分(A)当たり、約0.01~約10質量部の範囲、好ましくは約0.1~約5質量部の範囲、あるいは約0.1~約3質量部の範囲、あるいは約0.1~約2質量部の範囲である。これは、成分(C)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、組成物の硬化性が改善されること、及び、成分(B)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、組成物の貯蔵安定性が改善されることによる。
【0043】
成分(D)は、本組成物の主架橋剤として機能し、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、アルケニル基及びケイ素原子結合アルコキシ基を含まないオルガノポリシロキサンである。成分(D)中のケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子結合基は、限定されないが、1~12個の炭素原子を有する、脂肪族不飽和結合を含まない、一価炭化水素基によって例示される。一価炭化水素基の例としては、上述の基が挙げられる。
【0044】
成分(D)の分子構造は特に限定されないが、その例としては、直鎖構造、部分分岐直鎖構造、分岐構造、環状構造、ネットワーク構造、及び樹枝状構造が挙げられる。
【0045】
更に、特に限定されないが、25℃での成分(D)の粘度は、例えば、好ましくは1~1,000mPa・sの範囲内、特に好ましくは1~500mPa・sの範囲内である。これは、25℃での粘度が上記範囲の下限以上である場合、得られた硬化物の物理的特性、特に可撓性及び伸びが大幅に増加し得ること、これに対し、上記範囲の上限以下である場合、得られた組成物の取り扱い性が向上し得ることによる。粘度は、ASTM D 1084に従って回転式粘度計を使用することによって測定される。
【0046】
成分(D)のオルガノポリシロキサンの例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0047】
成分(D)の含有量は、100質量部の成分(A)当たり、約0.1~約20質量部の範囲、好ましくは約0.1~約10質量部の範囲、あるいは約0.5~約10質量部の範囲、あるいは約1~約5質量部の範囲である。これは、成分(D)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、組成物の硬化性が改善されること、及び、成分(D)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、硬化物の熱衝撃安定性が改善されることによる。
【0048】
ただし、成分(B)、(C)、及び(D)におけるケイ素原子結合水素原子の、成分(A)のアルケニル基に対するモル比は、約0.2~約0.9の範囲、好ましくは約0.3~約0.8の範囲、あるいは約0.4~約0.8の範囲である。これは、比率が上記範囲の下限以上である場合、得られた組成物が十分に硬化されること、これに対し、上記範囲の上限以下である場合、硬化物の熱衝撃安定性が向上することによる。
【0049】
本組成物は、2つの異なる硬化触媒、(E)ヒドロシリル化反応触媒及び(F)縮合反応触媒を更に含む。このような2つの触媒が成分(A)~(D)と組み合わせて使用される場合、それらは室温から50℃に加温することにより容易に硬化され、各種基材に対して接着性に優れるという技術的効果が実現する。
【0050】
成分(E)は、ヒドロシリル化反応を促進し、本組成物を硬化させるための成分として機能する。例示的なそのような成分(E)としては、白金黒、白金担持活性炭、白金担持シリカ微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、及び白金のビニルシロキサン錯体等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒;及びロジウム系触媒が挙げられ得る。特に、成分(E)は、好ましくは白金系触媒である。
【0051】
成分(E)の量は、触媒量であり、所望の硬化条件に従って適切に選択することができ、一般に、成分(A)に対して質量単位で約1~1000ppmの成分(E)中の金属原子の範囲内である。加えて、組成物の取り扱い性及び可使時間を改善するという観点から、熱可塑性樹脂によって分散及びカプセル化された微粒子中の白金系触媒を使用してもよい。ここで留意すべきは、ヒドロシリル化反応を促進するための触媒として、鉄、ルテニウム、及び鉄/コバルト等の非白金系金属触媒を使用してもよいことである。
【0052】
成分(F)が成分(E)と組み合わせて使用される場合、室温から50℃までの加温における本組成物の硬化性、及び各種基材に対する接着性を改善することができる。
【0053】
例示的な成分(F)としては、例えば、ジメチルスズジネオデカノエート及び第一スズオクトエート等のスズ化合物;テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n-ブトキシ)チタン、テトラ(t-ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、チタンテトラアセチルアセトネート、及びジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)チタン等のチタン化合物;アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセトリアセテート(aluminum trisacetriacetate)、及びトリス(sec-ブトキシ)アルミニウム等のアルミニウム化合物;ニッケルビスアセチルアセトネート等のニッケル化合物;コバルトトリスアセチルアセトネート等のコバルト化合物;亜鉛ビスアセチルアセトネート等の亜鉛化合物;並びにジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、及びジルコニウムトリブトキシモノステアレート等のジルコニウム化合物が挙げられ得る。
【0054】
成分(F)の量は、触媒量であり、所望の硬化条件に従って適切に選択することができ、一般に、100質量部の成分(A)に対して0.01~5質量部の範囲内である。
【0055】
貯蔵安定性及び取り扱い性を向上させる、並びに可使時間を改善するための任意の成分として、本発明によるそのような組成物は、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、及び1-エチニルシクロヘキサノール等のアセチレン系化合物;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、及び3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなどのエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン(1,3,5,7-tetramethyl-1,3,5,7-tetrahexenylcyclototrasiloxane);ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類;ホスフィン;メルカプタン類;並びにヒドラジン類を含む硬化抑制剤を含んでもよい。
【0056】
これらの硬化抑制剤の含有量は、本組成物の硬化条件に基づいて適切に選択されるべきであり、例えば、100質量部の成分(A)に対して、0.001~5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0057】
本組成物は、(G)接着促進剤を更に含んでもよい。成分(G)は、独立して、又は2種類のみで、本組成物を硬化させることで得られる硬化物の接着性を改善する。
【0058】
成分(G)の例としては、アミノ基含有アルコキシシランとエポキシ基含有化合物との反応生成物又は混合物;1分子当たり少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する有機化合物;アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物が挙げられる。
【0059】
成分(G)のアミノ基含有アルコキシシランとエポキシ基含有化合物との反応生成物の例としては、以下に言及されるもの等のカルバシラトラン誘導体が挙げられる。
【化7】
【0060】
このようなカルバシラトラン誘導体の合成方法は公知である。日本の特許第3831481(B2)号及び米国特許第8,101,677(B2)号の開示は、カルバシラトラン誘導体の調製を示すため参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0061】
成分(G)の有機化合物の例としては、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1-メチルジメトキシシリル-6-トリメトキシシリルヘキサン、1-フェニルジエトキシシリル-6-トリエトキシシリルヘキサン、及び1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサンが挙げられる。
【0062】
成分(G)のアルコキシシランの例としては、3-グリシドキシプロリルトリメトキシシラン(3-glycidoxyprolyltrimethoxysilane)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシラン(ethyltrimethoxylane)、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0063】
成分(G)の含有量は、限定されるものではないが、100質量部の成分(A)当たり、好ましくは約0.1~約10質量部の範囲、好ましくは約0.1~約5質量部の範囲、あるいは約0.1~約3質量部の範囲である。これは、成分(G)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、硬化物の接着特性が更に改善されること、及び、成分(G)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、組成物の貯蔵安定性が改善されることによる。
【0064】
本組成物は、(H)無機充填剤を更に含んでもよい。成分(H)は、好ましくは、補強充填剤、熱伝導性充填剤、又は導電性充填剤から選択される1つ以上であり、特に、本組成物が封入材又はシーラントの用途に使用される場合、好ましくは補強充填剤を含有する。
【0065】
補強充填剤は、本組成物を硬化させ、保護剤又は接着剤として性能を改善することで得られる硬化物に機械的強度を付与する成分である。例示的な補強充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ微粉末、沈降シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、ヒュームド二酸化チタン微粉末、石英微粉末、炭酸カルシウム微粉末、ケイ藻土微粉末、酸化アルミニウム微粉末、水酸化アルミニウム微粉末、酸化亜鉛微粉末、及び炭酸亜鉛微粉末等の無機充填剤を挙げることができ、これらの無機充填剤は、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン、トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン、α,ω-シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、及びα,ω-シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー等の処理剤により表面処理した無機充填剤を含有することができる。特に、分子鎖両末端にシラノール基を有する低重合度のオルガノポリシロキサン(好適には、分子中に当該末端シラノール基以外の反応性官能基を有しないα,ω-シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン)により成分(H)の表面を予め処理することにより、室温で優れた初期接着性、接着耐久性、及び接着強度を実現でき、更に十分な使用可能時間(保存期間、取り扱い作業時間、及び可使時間)を確保できる。
【0066】
特に限定されないが、補強充填剤の微粉末の粒子径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定に基づいて、メジアン径で0.01μm~1000μmの範囲内であり得る。
【0067】
これに限定されないが、補強充填剤の含有量は、100質量部の成分(A)に対して、0.1~200質量部の範囲内であることが好ましい。
【0068】
熱伝導性充填剤又は導電性充填剤は、本組成物を所望に応じて硬化させることで得られるシリコーンゴム硬化物に熱伝導性又は導電性を付与する成分であり、その例としては、金、銀、ニッケル、及び銅等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、又は有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着又はメッキすることで得られる微粉末;酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、又は酸化亜鉛等の金属化合物、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。銀粉末、アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末、又はグラファイトが特に好適である。更に、本組成物に、電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、又は金属窒化物系粉末であることが好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、又は窒化アルミニウム粉末であることが好ましい。
【0069】
そのような熱伝導性充填剤又は導電性充填剤の平均粒子径は、メジアン径として、好ましくは1~100μmの範囲内、特に好ましくは1~50μmの範囲内である。
【0070】
これに限定されないが、熱伝導性充填剤又は導電性充填剤の含有量は、100質量部の成分(A)に対して、100~2,500質量部の範囲内であることが好ましい。
【0071】
更に、本組成物は、任意選択で、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、及びヘプタン等の有機溶媒;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン及び分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン等の非架橋性ジオルガノポリシロキサン;カーボンブラック等の難燃剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;酸化鉄等の耐熱剤;分子鎖両末端ヒドロキシジアルキルシロキシ基封鎖ジアルキルシロキサンオリゴマー等の可塑剤;並びに他の顔料、チキソトロピー付与剤、及び抗真菌剤を、本組成物が本発明の目的を損なわない限り、含有してもよい。
【0072】
本組成物は、上記の成分を均一に混合することによって生成することができる。各成分を混合するための方法は、従来から公知の方法であってもよく、特に限定されないが、均一な混合物は一般に、簡単な撹拌によって作製される。更に、無機充填剤等の固体成分が任意の成分として含有される場合、混合装置を用いた混合がより好ましい。特に限定されるものではないが、例示的なこのような混合装置としては、一軸又は二軸の連続ミキサー、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられ得る。
【0073】
本組成物は、一液型硬化性オルガノポリシロキサン組成物として使用することができるが、大気中の湿気及び含水量に関係なく、表面層及び内部の両方を均一に硬化させるため、好ましくは多成分型、特に好適には二液型硬化性オルガノポリシロキサン組成物である。
【0074】
より具体的には、本組成物は、成分(A)~(G)、並びに必要に応じて、成分(H)及び他の任意の成分を湿気遮断下で均一に混合することによって生成することができる。
【0075】
二液型硬化性オルガノポリシロキサン組成物の場合、一方の液体成分は、少なくとも当該成分(E)及び(F)を含有し、任意に成分(A)の一部を含有し、
他方の液体成分は、少なくとも成分(B)、(C)、及び(D)、並びに成分(A)の残りの量を含有する。
【0076】
一方の液体成分及び他方の液体成分の両方を、長期間貯蔵することができるように、湿気遮断下で密封容器内に封入することができ、一方の液体成分及び他方の液体成分を混合し、次いで室温又は50℃以下の加温下で急速に硬化させて、シリコーンゴムを形成することができる。
【0077】
本組成物は、各種被着体又は基体に良好に接着されている。例示的な被着体又は基体は、ガラス、セラミック、モルタル、コンクリート、木、アルミニウム、銅、黄銅、亜鉛、銀、ステンレススチール、鉄、トタン、ブリキ、ニッケルメッキ表面、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等で作製された被着体又は基体を含み得る。更に、それらの例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、又はポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂で作製された被着体又は基体が挙げられ得る。更に、より強固な接着性が求められる場合、上記の接着促進剤をブレンドしてもよく、加えて、これらの被着体又は基体の表面に適切なプライマーを塗布し、本組成物をプライマー塗布表面に接着させることができる。
【0078】
本発明による多成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、建築部材として、並びに電気/電子部品及び車両部品のシーリング材、ポッティング材、シーリング材、又は接着剤として好適である。具体的には、ガラス接着用シーリング剤、浴槽ユニットのシーリング材、自動車等の車両の照明部品用接着剤及びシーリング材、電気/電子部品の保護剤又は接着剤(シーリング材、コーティング材、ポッティング剤、又は接着剤)等として好適に使用することができる。
【0079】
本組成物は、硬化中に接触する各種ベース材料、特に未洗浄アルミニウムダイキャスト、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の有機樹脂に対して、初期接着性を改善させるという優れた効果を有し、特に、接着耐久性に優れ、硬化後高い接着強度を達成することができるため、電気/電子機器の保護剤又は接着剤組成物として特に有用である。
【0080】
本組成物は、電気/電子機器を含む硬化物の提供を可能にする。特に、上記の構成により、本組成物は、少量かつ薄層であっても、高い接着強度を達成することができることに加えて、初期段階において被着体に強固に接着していることが特徴である。したがって、本組成物を含む接着層は、被着体に対して強固な密着性を有し、界面剥離等により剥離しにくい接着剤/接着状態(強制剥離時の凝集破壊モード)を形成する。具体的には、硬化層の厚さが10~500μmの場合、本組成物は各種ベース材料を接着又は保護することができ、少量での接着、薄層での接着、複雑な形状等において、従来のものとは異なる接着形態で使用される接着剤又は保護剤として有用である。特に、接着剤層又は保護層を含む電気/電子機器に好適に利用され、硬化層は10~500μm、適切には50~300μmの厚さを有する。更に、本組成物は、薄層接着以外の接着剤形態で被着体に対して高い初期接着性及び接着強度を発揮するため、従来使用されている厚塗、ポッティング剤、封入材、又はシーラントとしても有用であり、接着剤層又は保護層を含む電気/電子機器の提供を可能にする。
【0081】
本発明による電気/電子部品は、本組成物によって封止又は密封されていない限り特に限定されるものではないが、その例としては、ガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、セラミックス等のベース材料上に金属電極(銀、銅、アルミニウム、又は金等)及び金属酸化物膜電極(ITO(酸化インジウムスズ)等)を形成した電気回路又は電極等を含む電子機器が挙げられる。本組成物を含む保護剤又は接着剤組成物は、特に、優れた接着耐久性、及び硬化後の高い接着強度を達成できることに加えて、初期接着性を改善させるという優れた効果を有するため、電気/電子部品を保護又は接着するための接着剤、ポッティング材、コーティング材、又はシーリング材等として使用する場合、これらの電気/電子機器の信頼性及び耐久性を改善することができる。特に、電子回路基板等の防水構造を形成するために好適に使用することができる。
【0082】
より具体的には、本発明による電気/電子部品の保護剤又は接着剤組成物は、電気/電子機器の周辺部品、車載部品ケース、端子箱、照明部品、及び太陽電池モジュール等の耐久性、耐水性等が要求される金属及び/又は樹脂製構造のシーリング材として有用であり、例えば、エンジン制御(輸送機器内)、パワー/トレインシステム、及びエアコン制御等のパワー半導体用途において回路基板及びそのハウジングケースに適用した場合に初期接着性及び接着耐久性に優れる。更に、有利には、電子制御ユニット(ECU)等の車載電子部品にも組み込まれ、過酷な環境下で使用される場合に、これらのパワー半導体、車載部品等の信頼性及び耐久性、並びに雨水等に対する耐水性等を改善できながら、優れた接着耐久性を達成する。
【実施例
【0083】
以下、実施例及び比較例を使用して、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物、硬化物、及び電気/電子機器について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下に列挙する実施例の説明により限定されるものではない。粘度を25℃で測定した。
【0084】
[実施例1~3及び比較例1~2]
下記の成分を使用して、表1に示す硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。更に、表1において、「SiH/Vi」は、成分(A)中の総ビニル基1モル当たりの、成分(B)、(C)、及び(D)中のケイ素結合水素原子の総モルを表す。
【0085】
以下の成分を、成分(A)として使用した。
成分(a-1):分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、粘度248mPa・s(ビニル基の含有量:0.62質量%)
成分(a-2):分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、粘度450mPa・s(ビニル基の含有量:0.42質量%)
【0086】
以下の成分を、成分(B)として使用した。
成分(b-1):以下の一般式:
【化8】
で表されるオルガノトリシロキサン、
ケイ素結合水素原子の含有量:0.45質量%
【0087】
以下の成分を、成分(C)として使用した。
成分(c-1):以下の一般式:
【化9】
で表されるオルガノシロキサン、
ケイ素結合水素原子の含有量:0.36質量%
【0088】
以下の成分を、成分(D)として使用した。
成分(d-1):分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、粘度150mPa・s、ケイ素結合水素原子の含有量:0.15質量%
成分(d-2):分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、粘度14mPa・s、ケイ素結合水素原子の含有量:0.15質量%
【0089】
以下の成分を、成分(E)として使用した。
成分(e-1):白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量=約5,000質量ppm)
【0090】
以下の成分を、成分(F)として使用した。
成分(f-1):47質量%のメチルトリメトキシシランと、45質量%のジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)と、7質量%の以下の一般式:
【化10】
で表されるカバシラトラン誘導体との混合物
【0091】
以下の成分を、成分(G)として使用した。
成分(g-1):メチルトリメトキシシラン
【0092】
以下の成分を、成分(H)として使用した。
成分(h-1):平均粒子径が約3μmの石英粉末
【0093】
以下の成分を、他の成分(I)として使用した。
成分(i-1):50質量%のカーボンブラックと、50質量%の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンの混合物、粘度2,000mPa・s(ビニル基の含有量:0.23質量%)
【0094】
表1で報告された特性は、以下の方法によって測定した。
【0095】
<ショア00硬度>
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を空気循環オーブン内で60℃で1時間熱硬化させることにより、硬化物を得た。デュロメータ測定のため、硬化物を少なくとも6mmの厚さになるよう積層した。25℃での硬化物のショア00硬度を、試験方法ASTM D2240-05(2010)(ゴム特性デュロメータ硬度の標準試験方法)に従って決定した。
【0096】
<熱衡撃試験>
18mlの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、直径22mm及び高さ84mmのガラス瓶に注いだ。硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、空気循環オーブン内で60℃で1時間硬化させた。次いで、信頼性試験のためガラス瓶内の硬化物を熱衝撃チャンバーに1サイクル(-40℃⇔125℃、-40℃及び125℃でそれぞれ30分間放置)入れた。360サイクルの熱衝撃試験後、硬化物を視覚的に観察した。
【0097】
【表1】
【0098】
表1の結果から明らかなように、実施例1~3で調製した硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物は、比較例1~2で調製した硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物と比較して、特定量の成分(B)を含有するため、優れた熱衝撃安定性を示したことが見出された。
【0099】
産業上の利用可能性
本発明による硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化して低硬度シリコーンゴムを形成し、硬化中に接触する各種基材に対して優れた初期接着性を示し、優れた熱衝撃安定性を示すため、当該硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、モーター制御、輸送機器のモーター制御、発電システム、又は宇宙輸送システム等のパワーデバイス用の封入材又はシーラントとして有用である。