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特許7411159撮像装置、撮影レンズ、カメラボディ及び補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】撮像装置、撮影レンズ、カメラボディ及び補正方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20231228BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20231228BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20231228BHJP
   G02B 15/167 20060101ALI20231228BHJP
   G02B 15/20 20060101ALI20231228BHJP
   G03B 5/02 20210101ALI20231228BHJP
   G03B 5/04 20210101ALI20231228BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20231228BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20231228BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20231228BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G02B7/02 C
G02B7/02 F
G02B13/18
G02B15/167
G02B15/20
G03B5/02
G03B5/04
G03B17/14
H04N23/66
H04N23/67
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019174229
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021051196
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100140800
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 丈世
(74)【代理人】
【識別番号】100156281
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 敬
(72)【発明者】
【氏名】玉木 翔
(72)【発明者】
【氏名】吹野 邦博
(72)【発明者】
【氏名】松川 英二
(72)【発明者】
【氏名】山口 悟史
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 明光
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237250(JP,A)
【文献】特開2005-292659(JP,A)
【文献】特開2018-056810(JP,A)
【文献】特開2001-083428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/08
G02B 7/02
G02B 13/18
G02B 15/167
G02B 15/20
G03B 5/02
G03B 5/04
G03B 17/14
H04N 23/66
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能な撮影レンズを有する撮像装置であって、
前記撮影レンズは、
レンズ系の少なくとも一部のレンズの位置を検出する位置検出部と、
前記レンズ系の少なくとも一部のレンズを駆動し、前記レンズ系による像の結像状態を調整する調整部と、を有し、
前記撮像装置は、
前記レンズ系による被写体の像を撮像し、画像データを出力する撮像部と、
前記撮像部で撮像した前記像の結像状態を前記画像データに基づいて検出する像状態検出部と、
前記像状態検出部の検出結果に基づいて、前記調整部により前記レンズ系の少なくとも一部のレンズを駆動する駆動情報を算出し、使用状態と前記駆動情報と前記位置検出部が検出する前記レンズ系の少なくとも一部のレンズの位置とに基づいて前記調整部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記被写体の像の撮影時、前記レンズ系の合焦時、および前記レンズ系の変倍時、の少なくとも一つで前記調整部を制御して前記被写体の像を補正する撮像装置。
【請求項2】
前記像状態検出部は、前記像のコントラストからの前記像の結像状態の検出および前記レンズ系による像の結像位置と前記撮像部の撮像面とのズレからの前記像の結像状態の検出の少なくとも一方を実行する
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記像状態検出部は、前記撮像部で撮像した前記被写体の像の第1の部分の前記像の結像状態と第2の部分の前記像の結像状態を検出する
請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記駆動情報は、
前記レンズ系のレンズ又はレンズ群の駆動量及び前記レンズ系のレンズ又はレンズ群の駆動方向
の少なくとも一つを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記調整部は、
前記レンズ系の、
像面非対称を変化させるレンズ又はレンズ群、像面湾曲を変化させるレンズ又はレンズ群、球面収差を変化させるレンズ又はレンズ群及び偏芯コマ収差を変化させるレンズ又はレンズ群の少なくとも一つを駆動して前記像を補正する
請求項1~4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記レンズ系の最も像側のレンズ又はレンズ群をシフトおよびチルトの少なくとも一方を行うことにより前記像の像面非対称を補正する、
前記レンズ系の最も像側のレンズ又はレンズ群を光軸方向に移動させることにより前記像の像面湾曲を補正する、
前記レンズ系の最も像側のレンズ又はレンズ群を光軸方向に移動させることにより前記像の球面収差を補正する、
及び前記レンズ系の開口絞りと前記開口絞りの像側に配置されたレンズ群とをシフトおよびチルトの少なくとも一方を行うことにより前記像の偏芯コマ収差を補正する、
の少なくとも一つを行う
請求項1~5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記撮像部の撮像面に前記像を近づける、または前記像のコントラストが設定したコントラストに近づくように前記駆動情報を算出する
請求項2および請求項2に従属する請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像部から出力された前記画像データに基づく画像における2以上の位置と、前記位置におけるコントラストとを設定する設定部を有し、
前記制御部は、前記像状態検出部で検出された、前記設定部で設定された前記位置における前記像のコントラストに基づいて前記駆動情報を算出する
請求項1~7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記像状態検出部は、前記レンズ系の合焦レンズの位置を変化させて前記撮像部が撮像し出力する前記画像データに基づいて、前記画像データに基づく画像のデフォーカス量及びコントラストの評価値を検出し、
前記制御部は、前記像状態検出部で検出された前記デフォーカス量及び前記コントラストの評価値に基づいて前記駆動情報を算出する、
請求項2および請求項2に従属する請求項3から請求項8のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記レンズ系の状態を検出するレンズ系状態検出部を有し、
前記制御部は、前記レンズ系状態検出部により前記レンズ系の状態の変化が検出されると前記駆動情報を算出する
請求項1~9のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記レンズ系の状態と前記駆動情報とを関連付けて記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記駆動情報を算出すると前記駆動情報を前記レンズ系の状態と関連付けて前記記憶部に記憶する
請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている駆動情報を前記駆動情報として使用する
請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記レンズ系の状態は、前記レンズ系の焦点距離、前記レンズ系が格納されている撮影レンズの温度、前記レンズ系が取り付けられるカメラボディの姿勢及び前記レンズ系が取り付けられるカメラボディ部の温度の少なくとも一つである
請求項10~12のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記レンズ系の光軸に垂直な被写体を前記撮像部で撮像し、前記撮像部から出力される前記画像データから前記像の結像状態を前記像状態検出部で検出した結果に基づいて前記調整部を制御して前記被写体の像を補正する
請求項1~13のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記像状態検出部は、
前記光軸に垂直な被写体を前記画像データに基づいて検出する、
請求項14に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記撮像部での撮像前の合焦時に前記像状態検出部で検出された検出結果に基づいて前記駆動情報を算出する
請求項1~15のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項17】
撮像装置に着脱可能な撮影レンズのレンズ系で形成される被写体の像の撮影時、前記レンズ系の合焦時、および前記レンズ系の変倍時、の少なくとも一つで前記被写体の像を、前記撮影レンズが有する、前記レンズ系の少なくとも一部のレンズの位置を検出する位置検出部と前記レンズ系の少なくとも一部のレンズを駆動し、前記レンズ系による像の結像状態を調整する調整部とにより補正する補正方法であって、
前記撮影レンズが装着された前記撮像装置が有する撮像部が前記被写体の像を撮像して出力した画像データに基づいて、前記撮像装置が有する像状態検出部が前記被写体の像の結像状態を検出するステップと、
検出された前記被写体の像の結像状態に基づいて、前記像を補正するために前記調整部を駆動する駆動情報を前記撮像装置が有する制御部で算出するステップと、
前記制御部が、使用状態と前記駆動情報と前記位置検出部が検出する前記レンズ系の少なくとも一部のレンズの位置とに基づいて前記調整部を制御するステップと、
を有する補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮影レンズ、カメラボディ及び補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズの部品精度や使用状態に起因する光学性能の変化を防ぐ補正手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-090456号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様に係る撮像装置は、着脱可能な撮影レンズを有する撮像装置であって、前記撮影レンズは、レンズ系の少なくとも一部のレンズの位置を検出する位置検出部と、前記レンズ系の少なくとも一部のレンズを駆動し、前記レンズ系による像の結像状態を調整する調整部と、を有し、前記撮像装置は、前記レンズ系による被写体の像を撮像し、画像データを出力する撮像部と、前記撮像部で撮像した前記像の結像状態を前記画像データに基づいて検出する像状態検出部と、前記像状態検出部の検出結果に基づいて、前記調整部により前記レンズ系の少なくとも一部のレンズを駆動する駆動情報を算出し、使用状態と前記駆動情報と前記位置情報検出部が検出する前記レンズ系の少なくとも一部のレンズの位置とに基づいて前記調整部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記被写体の像の撮影時、前記レンズ系の合焦時、および前記レンズ系の変倍時、の少なくとも一つで前記調整部を制御して前記被写体の像を補正する。
【0005】
本発明の第一の態様に係る補正方法は、撮像装置に着脱可能な撮影レンズのレンズ系で形成される被写体の像の撮影時、前記レンズ系の合焦時、および前記レンズ系の変倍時、の少なくとも一つで前記被写体の像を、前記撮影レンズが有する、前記レンズ系の少なくとも一部のレンズの位置を検出する位置検出部と前記レンズ系の少なくとも一部のレンズを駆動し、前記レンズ系による像の結像状態を調整する調整部により補正する補正方法であって、前記撮影レンズが装着された前記撮像装置が有する撮像部が前記被写体の像を撮像して出力した画像データに基づいて、前記撮像装置が有する像状態検出部が前記被写体の像の結像状態を検出するステップと、検出された前記被写体の像の結像状態に基づいて、前記像を補正するために前記調整部を駆動する駆動情報を前記撮像装置が有する制御部で算出するステップと、前記制御部が、使用状態と前記駆動情報と前記位置検出部が検出する前記レンズ系の少なくとも一部のレンズの位置とに基づいて前記調整部を制御するステップと、を有する。
【0006】
本発明の第一の態様に係る撮影レンズの変形例は、被写体からの光が入射し前記被写体の像を形成する、複数のレンズが配置されたレンズ系と、前記被写体の像の結像状態を補正する、前記レンズ系に配置された補正レンズと、前記被写体の像の結像状態から算出された、前記補正レンズの駆動情報をカメラボディから受信する受信部と、前記受信部で受信した前記駆動情報により前記補正レンズを駆動する駆動部と、を有する。
【0007】
本発明の第一の態様に係る撮影レンズの変形例であるカメラボディは、複数のレンズを有する撮影レンズにより形成された被写体の像を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像した前記被写体の像の第1の部分の結像状態と第2の部分の結像状態とから、前記被写体の像の結像状態を補正する、前記撮影レンズが有する補正レンズの駆動情報を算出する駆動情報算出部と、前記駆動情報を前記撮影レンズに送信する送信部と、を有する。
【0008】
本発明の第一の態様に係る補正方法の変形例は、撮像レンズにおいて、レンズ系で形成される被写体の像の結像状態を、前記レンズ系が有する補正レンズによって補正する補正方法であって、前記被写体の像の結像状態から算出された、前記補正レンズの駆動情報をカメラボディから受信するステップと、受信した前記駆動情報により前記補正レンズを駆動するステップと、を有する。
【0009】
本発明の第一の態様に係る補正方法の変形例は、カメラボディにおいて、複数のレンズを有する撮影レンズにより形成された被写体の像像を撮像部で撮像し、前記被写体の像の結像状態を、前記撮影レンズが有する補正レンズによって補正する補正方法であって、前記撮像部で撮像した前記被写体の像の第1の部分の結像状態と第2の部分の結像状態とから、前記被写体の像の結像状態を補正する、前記撮影レンズが有する補正レンズの駆動情報を算出するステップと、前記駆動情報を前記撮影レンズに送信するステップと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る撮像装置の処理を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態に係る撮像装置において、補正前の状態を示す説明図である。
図4】第1の実施形態に係る撮像装置において、補正後の状態を示す説明図である。
図5】第2の実施形態に係る撮像装置において、被写体と像と補正レンズとの関係を示す説明図である。
図6】第2の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態に係る撮像装置の処理を示すフローチャートである。
図8】第3の実施形態に係る撮像装置において、被写体とレンズ系の焦点面との関係を示す説明図である。
図9】第3の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
図10】第3の実施形態に係る撮像装置の処理を示すフローチャートである。
図11】第4の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
図12】第4の実施形態に係る撮像装置の処理を示すフローチャートである。
図13】第5の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
図14】第6の実施形態に係る撮像装置の処理を示すフローチャートである。
図15】レンズ系の第1実施例である変倍光学系のレンズ断面図である。
図16】第1実施例の諸収差図である。
図17】レンズ系の第2実施例である変倍光学系のレンズ断面図である。
図18】第2実施例の諸収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
まず、本実施形態に係る撮像装置が適用される光学機器の一例として、図1を用いてカメラ1について説明する。このカメラ1は、撮像部31や画像モニター32を有するボディ部(カメラボディ)3に対して、レンズ系20を有するレンズ部(撮影レンズ)2を着脱可能に構成されたレンズ交換式の所謂ミラーレスカメラである。本カメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、レンズ部2のレンズ系20で集光されて、不図示のOLPF(Optical low pass filter:光学ローパスフィルタ)を介して撮像部31の撮像センサ面上に被写体像を形成する。ここで、撮像センサ面とは、光を電気信号として蓄える撮像素子の群からなる面のことをいう。一般的に、カメラ1において、レンズ系20は、このレンズ系20の像面(物体面から射出された光が集光する面)と撮像センサ面とが一致するように設計されている。そして、撮像部31に設けられた撮像素子により被写体像が光電変換されて被写体の画像情報が生成される。この画像情報は、カメラ1のボディ部3に設けられた画像モニター32に表示される。これにより撮影者は、画像モニター32を介して被写体を観察することができる。
【0013】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、撮像部31により光電変換された画像情報が不図示のメモリに記憶される。このようにして、撮影者は本カメラ1による被写体の撮影を行うことができる。なお、本実施形態では、光学機器としてミラーレスカメラの例を説明したが、この光学機器は、カメラ本体にクイックリターンミラーを有しファインダー光学系により被写体を観察する一眼レフタイプのカメラであってもよいし、ボディ部3にレンズ部2が固定されたタイプ(レンズ部2を交換することができない一体型のタイプ)のカメラであってもよい。
【0014】
レンズ系20が理想的なレンズである場合、このレンズ系20の像面が光軸に対して垂直な面と一致するが、実際のレンズでは収差が発生するため一致しない。また、ボディ部3に対するレンズ部2の取り付け状態や、レンズ系20を構成するレンズ自体の誤差や組み立て誤差、又は機構上のガタによっても像面は光軸に対して垂直な面からのズレが生じる。
【0015】
本実施形態に係る撮像装置は、これらのズレ(収差)のうち、像面が傾斜して像高によって集光位置が光軸に方向に変化している状態である像面非対称、像面が湾曲して像高によって集光位置が光軸方向に変化している状態である像面湾曲、点を光源とする光線がレンズ系20を通った後、焦点1点に集束せず前後にばらつく状態である球面収差、及び、光軸外の点を光源とする光線がレンズ系20を通った後、像面において1点に集束しない状態である偏芯コマ収差(光学系の収差及び像の結像の非対称性の少なくとも一方)を補正の対象とする。像面非対称は、レンズ系20を構成するレンズ又はレンズ群を光軸と直交する方向の成分を持つように移動させるシフトや、光軸に対する角度を変化させるチルトにより調整(補正)することができる。また、像面湾曲は、レンズ系20を構成するレンズ群の間隔を変化させることで調整(補正)することができる。また、球面収差は、レンズ系20を構成するレンズ群内のレンズの間隔を変化させることで調整(補正)することができる。また、偏芯コマ収差は、レンズ系20を構成するレンズ又はレンズ群をシフト又はチルトさせることで調整(補正)することができる。
【0016】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る撮像装置は、レンズ系20の像における上述した収差を調整(補正)することにより、この像面と撮像部31の撮像センサ面とのズレを少なくし、これにより、画面全体のコントラストを最大にするように構成されている。
【0017】
図1に示すように、第1の実施形態の撮像装置を有するカメラ1において、レンズ系20は、調整部である補正レンズ20a、合焦レンズ20b及びその他のレンズ20cを含んでおり、被写体から射出される光をボディ部3内にある撮像部31の撮像センサ面に投影するものである。ここで、補正レンズ20a、合焦レンズ20b及びその他のレンズ20cの各々は、1枚のレンズであってもよいし、複数のレンズからなるレンズ群であってもよい。また、レンズ系20は、可変焦点距離レンズであってもいいし、固定焦点距離レンズであってもよい。
【0018】
レンズ部2は、光学系を構成するレンズ系20に加えて、補正レンズ20aの作動を制御する補正レンズ部21、合焦レンズ20bの作動を制御して合焦を行う合焦部22、ズームエンコーダ23、及び温度センサ24を有している。
【0019】
補正レンズ部21は、補正レンズ位置検出部21a及び補正レンズ駆動部21bから構成されている。また、合焦部22は、合焦レンズ位置検出部22a及び合焦レンズ駆動部22bから構成されている。
【0020】
補正レンズ部21は、ボディ部3に内蔵された後述する補正量演算部36からの指令を受け取り、指示された補正情報に基づいて補正レンズ20aを移動させる制御部としての機能を有している。なお、図1等には図示しないが、補正レンズ部21を構成する補正レンズ駆動部21bは、ボディ部3の補正量演算部(制御部)36から補正情報(駆動情報)を受信する受信部と、受信部で受信された補正情報(駆動情報)に基づいて補正レンズ20aを駆動させる駆動部と、を有している。
【0021】
合焦部22は、ボディ部3に内蔵された補正量演算部36からの指令を受け取り、所定のアルゴリズムに従って合焦レンズ20bによるピント合わせ(合焦)を行う機能を有している。なお、図1等には図示しないが、合焦部22を構成する合焦レンズ駆動部22bは、ボディ部3の補正量演算部36から合焦情報(合焦レンズ20bを駆動させるための情報)を受信する受信部と、受信部で受信された合焦情報に基づいて合焦レンズ20bを駆動させる駆動部と、を有している。
【0022】
ズームエンコーダ23は、レンズ系20の焦点距離情報を取得し、ボディ部3に内蔵された補正トリガー部34に取得した情報を送信するレンズ系状態検出部としての機能を有している。
【0023】
温度センサ24は、レンズ系20の温度変化を検知し、ボディ部3に内蔵された補正トリガー部34に検知した情報を送信する機能を有している。
【0024】
また、ボディ部3は、上述した撮像部31及び画像モニター32に加えて、撮像処理部33、補正トリガー部34、デフォーカス検出部35、補正量演算部36、姿勢センサ37、及び、温度センサ38を有している。
【0025】
撮像部31は、レンズ系20により集光された被写体の光信号を電気信号として変換し、画像処理部33に送信する機能を有している。
【0026】
画像処理部33は、撮像部31から出力された電気信号から、画像情報を生成する機能を有している。
【0027】
デフォーカス検出部35は、レンズ系20を通して得られた被写体のデフォーカス情報を取得することができ、その情報を補正量演算部36に送信することができる像状態検出部としての機能を有している。
【0028】
補正量演算部36は、後述する補正トリガー部34から送信された信号を元に演算を開始し、デフォーカス検出部35から得られた画面内のデフォーカス情報と、補正レンズ部21の補正レンズ位置検出部21aから得られた補正レンズ20aの位置情報とから補正レンズ20aの駆動量(補正情報または駆動情報)を算出して決定し、補正レンズ部21の補正レンズ駆動部21bに駆動量を指示する補正情報決定部としての機能を有している。また、補正量演算部36は、合焦部22の合焦レンズ位置検出部22aから合焦レンズ20bの位置情報を受信することができ、合焦部22の合焦レンズ駆動部22bに対して合焦レンズ20bの駆動量を送信する機能を有している。なお、図1等には図示しないが、補正量演算部36は、補正レンズ位置検出部21a、合焦レンズ位置検出部22a、補正トリガー部34、デフォーカス検出部35、入力処理部39等から情報を受信する受信部と、補正レンズ20aの駆動情報及び合焦レンズ20bの駆動情報を算出する駆動情報算出部と、算出された駆動情報をレンズ部2の補正レンズ駆動部21b及び合焦レンズ駆動部22bに送信する送信部と、を有している。
【0029】
姿勢センサ37は、ボディ部3の姿勢変化を検知し、検知した情報を補正トリガー部34に送信する機能を有している。
【0030】
温度センサ38は、ボディ部3の温度変化を検知し、検知した情報を補正トリガー部34に送信する機能を有している。
【0031】
補正トリガー部34は、レンズ部2に内蔵された合焦レンズ位置検出部22a、ズームエンコーダ23、温度センサ24、ボディ部3に内蔵された温度センサ38、姿勢センサ37等の少なくとも一つから得られた情報(レンズ系20の焦点距離情報、レンズ部2の温度情報、ボディ部3の姿勢情報、ボディ部3の温度情報等の少なくとも一つである光学系の状態)より、レンズ系20の状態変化を検知し、検知した情報(レンズ情報)を補正量演算部36に補正開始指令を送信する状態変化検出部としての機能を有している。なお、これらのセンサの他に、レンズ部2やボディ部3に対する衝撃を検出するセンサ等を設けて、これらのセンサから得られる情報を用いてもよい。
【0032】
補正レンズ20aは、以降の説明では、像面非対称を調整する(補正する)レンズ又はレンズ群(像面非対称の変化に対する感度が高いレンズ又はレンズ群)として説明するが、像面湾曲を調整する(補正する)レンズ又はレンズ群(像面湾曲の変化に対する感度が高いレンズ又はレンズ群)でもよいし、球面収差、偏芯コマ収差を調整する(補正する)レンズ又はレンズ群でもよい。したがって、補正レンズ20aは、光軸に対して直交方向の成分を持つように移動されてもよいし、光軸に対して傾きを持つように移動されてもよいし、光軸方向に移動されてもよいし、全方向に移動されてもよい。
【0033】
また、補正トリガー部34の補正開始指令に使われるセンサは、上述したレンズ部2のズームエンコーダ23、温度センサ24、ボディ部3の姿勢センサ37、温度センサ28のいずれか一つでもよいし、全部を用いてもよい。また、その他のセンサを用いてもよい。
【0034】
また、デフォーカス検出部35は、位相差センサを用いてもよいし、像面位相差センサを用いてもよい。
【0035】
図2図4を用いて、第1実施例に係る撮像装置による像補正処理について説明する。
【0036】
本実施形態に係る撮像装置を有するカメラ1において、姿勢変化、温度変化、撮像レンズ20の焦点距離変化、変倍時、合焦時、電源がオンされたとき、オフされたとき、交換レンズの交換がある(これらを「使用状態」と呼ぶ)と、これらの変化によってレンズ系20の各レンズや各レンズ群に偏芯誤差や倒れ誤差が生じる。その結果として、図3(a)に示すように、レンズ系20の像面PIにおいて、像面非対称(若しくは像面湾曲)といった諸収差が撮像センサ面PS上で生じる。
【0037】
第1の実施形態に係るカメラ1は、レンズ部2やボディ部3に配置されたセンサにて、姿勢変化や温度変化を検知し、これらの検知情報に基づいて、補正トリガー部34に設定された閾値を超えた変化があった場合は、補正量演算部36に指令を送信し、レンズ系20の像の補正を開始する。
【0038】
具体的には、図2に示すように、補正トリガー部34は、カメラ部2に配置されたズームエンコーダ23、温度センサ24、ボディ部3に配置された姿勢センサ37、温度センサ38等により、レンズ系20の状態変化を検知すると(ステップS100)、当該状態変化が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS101)。補正トリガー部34が、状態変化が閾値以下であると判断した場合(ステップS101:Yes)、補正トリガー部34は、ステップS100に戻って処理を繰り返す。
【0039】
補正トリガー部34が、状態変化が閾値以下でないと判断した場合(ステップS101:No)、補正トリガー部34は、補正量演算部36に検知した情報(レンズ情報)を送信することにより補正トリガーをオンにし、補正量演算部36に対して補正の開始を指示する(ステップS102)。
【0040】
補正量演算部36は、補正トリガー部34により補正トリガーがオンにされたことを検知すると、合焦部22により合焦レンズ20bの作動を制御して合焦処理を実行する(ステップS103)。
【0041】
第1の実施形態においては、撮像部31の撮像センサ面での像(像面)の状態を、レンズ系20を被写体に合焦させるための位相差センサをデフォーカス検出部35として用いて、画像情報のデフォーカス量(コントラスト)を検出するように構成されている。被写体Oに対して、レンズ系20の焦点がある程度合っていれば、図3(b)に示すように、デフォーカス検出部(位相差センサ)35からの出力の高さが高くなり(コントラストの山が高くなり)、ベストフォーカス位置の検出が容易となるが、被写体Oに焦点が合っていないと、このコントラストの山がつぶれてしまい、ベストフォーカス位置の検出が困難となってしまう。そのため、この第1の実施形態では、ステップS103において、補正量演算部36は、合焦部22により合焦レンズ20bの作動を制御して、被写体への合焦処理を行うように構成されている。
【0042】
なお、第1の実施形態においては、撮像センサ面での像(像面)の結像状態(
撮像センサ面と像とのずれの状態(合焦状態)、撮像センサ面での像の収差を含むボケに関する状態)を検出するために、デフォーカス検出部35により、撮像センサ面の中心(センター)である第1の部分、及び、この中心を通る垂直及び水平方向の軸で分割された4つの象限(周辺の4箇所)である第2の部分からなる5箇所のデフォーカス量(コントラスト)を取得するように構成されている。5箇所で検出したデフォーカス量(コントラスト)に基づいて、レンズ系20により形成された被写体の像の傾き、すなわちレンズ系20の光軸に垂直な面において被写体が合焦している領域と、合焦していない領域を特定する。
【0043】
補正量演算部36は、デフォーカス検出部35により、撮像センサ面のセンターと周辺のデフォーカス量(コントラスト)を測定する(ステップS104)。例えば、図3(a)に示すように、撮像部31の撮像センサ面PSに対して、レンズ系20の像面PIが傾いていた場合、センターのデフォーカス量が最小となる(コントラストが最大となる)ように、合焦レンズ20bを移動させると、レンズ系20の光軸(センター)に焦点が合った状態で像面PIが傾くことになる。このときの周辺(第1象限~第4象限)のコントラストの例を図3(b)に示す。この図3(b)の場合、第1象限及び第2象限のコントラストの最大値は被写体Oに近づく方向にずれており、第3象限及び第4象限のコントラストの最大値は被写体Oから遠ざかる方向にずれていることがわかる。
【0044】
以上より、補正量演算部36は、デフォーカス検出部35で得られたセンター及び周辺の5箇所のデフォーカス量(コントラスト)から、像面PIを撮像センサ面PSに近づけるための補正レンズ20aの補正情報(駆動方向及び駆動量を含む情報であって、以下「駆動情報」と呼ぶ)を決定し、補正レンズ部21に駆動情報を送信する(ステップS105)。なお、図3(a)、(b)は、像面非対称の場合を示しているが、像面湾曲の場合も、補正量演算部36は、デフォーカス検出部35で得られたセンター及び周辺の5箇所のデフォーカス量(コントラスト)から、補正レンズ20aの駆動情報を決定することができる。なお、複数種類の収差を補正する場合に、それぞれの収差を補正するための補正レンズ20aが複数ある場合(例えば、像面非対称、像面湾曲、球面収差、偏芯コマ収差を補正するための補正レンズ20aが異なる場合)には、駆動情報が補正のために駆動する補正レンズ20aを特定する情報を有するようにしてもよい。また、駆動方向は、レンズ系20の光軸の方向と光軸と交差する方向と光軸に対する傾きを変化させる方向の少なくとも1つの方向を有する。
【0045】
補正量演算部36から補正レンズ20aの駆動情報を受信した補正レンズ部21は、補正レンズ駆動部21bにより、駆動情報で示された目標位置に補正レンズ20aが近づく方向に、所定量だけ補正レンズ20aを移動させる(ステップS106)。補正レンズ部21は、ステップS106で移動された補正レンズ20aの位置を補正レンズ位置検出部21bにより取得し(ステップS107)、補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分(位置の差)を算出して比較する(ステップS108)。補正レンズ部21は、ステップS108で得られた補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分が許容値以下であるか否かを判断する(ステップS109)。
【0046】
補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下でないと判断した場合(ステップS109:No)、補正レンズ部21は、ステップS106に戻って上述した処理を繰り返す。
【0047】
補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下であると判断した場合(ステップS109:Yes)、像補正処理を終了する。このとき、図4(a)に示すように、レンズ系20の像面PIは、撮像部21の撮像センサ面PSに近づいている。また、周辺の4箇所のコントラストの最大値は、センターのコントラストの最大値の位置に近づいている。
【0048】
なお、図2には図示していないが、補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下であると判断した場合(ステップS109:Yes)、ステップS104に戻り、補正量演算部36は、再度、デフォーカス検出部35により、撮像センサ面のセンターと周辺のデフォーカス量(コントラスト)を測定し、周辺の4箇所のコントラストがセンターのベストの位置とずれていた場合に、ステップS105~ステップS109を繰り返すように構成してもよい。
【0049】
また、この像の補正方法では、補正量演算部36における計算負荷を軽減するために、センターと周辺の代表点(4箇所)の、合わせて5箇所のデフォーカス量から像(像面)の状態を検出していたが、周辺の5箇所以上のデフォーカス量から像(像面)の状態を検出するように構成してもよい。また、撮像部31で取得された画像情報から、撮像センサ面に配置された撮像素子の各々(各画素)の輝度値に基づいてデフォーカス量を取得する場合は、センターを含む全ての画素のコントラストを用いて像(像面)の状態を検出するように構成してもよい(第4の実施形態として後述する)。
【0050】
なお、以上の説明は、像面非対称を調整する(補正する)ために、補正レンズ20aを駆動させる場合について説明したが、補正量演算部36が、デフォーカス検出部35から得られた5箇所のコントラストにより、像面湾曲を調整する(補正する)必要があると判断したときは、補正量演算部36は、レンズ系20のレンズ群間の間隔を調整する。
【0051】
従来の補正方法では、例えば、可変焦点距離レンズの光学機器(カメラ1)に対して、製造時に、広角端状態、中間焦点距離状態および望遠端状態で撮像センサ面に対する像面の最適位置となる補正レンズ20aの駆動情報(補正レンズの位置)を測定して、補正量記憶部(あるいはそれに準ずる部分)を設けて記憶し、この光学機器(カメラ1)で被写体を撮影するときに、現在の変倍状態をズームエンコーダ23で検出し、検出された変倍状態に対する駆動情報を補正量記憶部から読み出して補正レンズ20aを駆動させて像の補正を行っていた。しかしながら、カメラ1のボディ部3には個体差があり、レンズ部2のレンズ系20の、撮像センサ面での像面の面形状や倒れ量にも個体差があるため、工場等で記憶した補正量(駆動情報)と、レンズ部2をボディ部3に取り付けた状態での最適補正量とは異なる。そのため、第1の実施形態に係る撮像装置(像補正方法)では、撮影時に、特定のレンズ(レンズ部2)と特定のカメラボディ(ボディ部3)の組み合わせで収差量を評価するので、常に最適な補正状態を維持することができる。
【0052】
例えば、従来の方式に基づいて、製造時に測定された駆動情報により、補正レンズ20aの位置を決定する構成の場合、ボディ部3に搭載された撮像部31が曲面センサであったとき(撮像素子の面が曲面を形成しているとき)に、レンズ部2のレンズ系20は、曲面センサに対応するものでないと、像の補正を行うことはできない。同様に、ボディ部3に搭載された撮像部31が平面センサであったときは、レンズ部2のレンズ系20は、平面センサに対応する必要がある。しかし、上述した第1の実施形態に係る撮像装置(像補正方法)は、デフォーカス検出部35で検出されたデフォーカス量(コントラスト)から、像面と撮像センサ面とのずれを検出するため、レンズ部2とボディ部3の組み合わせに関わらず、像(像面)を最適な状態に調整する(補正する)ことができる。
【0053】
また、上述した説明において、補正トリガー部34は、レンズ部2に内蔵されたズームエンコーダ23や温度センサ24、ボディ部3に内蔵された温度センサ38や姿勢センサ37から得られた情報より、レンズ系20の状態変化を検知し、検知した情報を補正量演算部36に補正開始指令を送信する機能を有しているとして説明したが、状態変化は他の情報であってもよい。例えば、レリーズボタンが押されて撮影が開始されたことを状態変化としてもよく、事前に受けた衝撃、温度変化等によって生じた光学性能の劣化を排除することができるので好ましい。また、合焦部22の作動による合焦を状態変化としてもよく、合焦時に生じた光学性能の劣化を排除できるので好ましい。また、ズームエンコーダ23の作動による変倍を状態変化としてもよく、変倍時に生じた光学性能の劣化を排除できるので好ましい。また、ズームエンコーダ23の作動による広角側から望遠側への変倍を状態変化としてもよく、広角側から望遠側への変倍時に生じた光学性能の劣化を排除できるので好ましい。また、ズームエンコーダ23の作動による望遠側から広角側への変倍を状態変化としてもよく、望遠側から広角側への変倍時に生じた光学性能の劣化を排除できるので好ましい。なお、撮影の開始を検出せずに、撮影時に像の補正を行うように構成してもよい。
【0054】
また、本実施形態に係る撮像装置がレンズ系20の像を補正するのは、光軸に垂直な被写体、光軸に垂直な平面被写体、の少なくとも一方で行うことが好ましい。このように構成すると、上述したズレ(収差)の検出精度の向上が図れる。
【0055】
(第2の実施形態)
図5(a)に示すように、被写体Oが傾いている場合、撮像部31の撮像センサ面PSに対してレンズ系20による被写体Oの像面PIは傾いて形成される。このとき、図5(b)に示すように、補正レンズ20aを上方に移動させると、像PIは撮像センサ面PSに近づく方向に回転し、図5(c)に示すように、補正レンズ20aを下方に移動させると、像PIは撮像センサ面PSから離れる方向に回転する。すなわち、補正レンズ20aによる像(像面)の調整(補正)を行うことで、図5(d)に示すように、画像モニター32に表示された被写体Oの像O′の合焦状態として、上部及び下部にピントが合った状態や、ピントがぼけた状態を選択することができる。なお、図5は、補正レンズ20aにより像面非対象を調整(補正)したものであるが、像面湾曲を調整(補正)したり、像面非対象と像面湾曲を組み合わせたりすることで、像O′の所望の位置の合焦状態を変化させることができる。
【0056】
第2の実施形態に係る撮像装置は、撮像レンズ20の像を画像モニター32に表示し、画像モニター32に表示されている画像内の数点を撮影者に選択させ、上述したように、指定された点(指定点)のコントラスト(結像状態)を調整するように構成されている。
【0057】
図6に示すように、カメラ1のレンズ部2の構成は、第1の実施形態と同じである(同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する)。また、カメラ1のボディ部3には、第1の実施形態で説明した構成に加えて、入力処理部39が設けられている。
【0058】
入力処理部39は、画像モニター32に表示された被写体Oの画像に対して、撮影者が選択した位置の入力を受け付け、この位置におけるコントラストを設定する設定部としての機能を有しており、例えば、画像モニター32の表示面の接触箇所の座標を出力するタッチパネルでもよいし、画像モニター32とは別に設けられた入力手段(カーソルや選択ボタンにより、画面上の位置を選択可能な構成)であってもよい。
【0059】
なお、第2の実施形態に係るカメラ1に、第1の実施形態で説明した像補正処理を設けてもよく、その場合は、第1の実施形態で説明した像補正処理(この処理を「全体補正モード」と呼ぶ)と、この第2の実施形態として説明する像補正処理(この処理を「部分補正モード」と呼ぶ)との選択を可能とする切り替え手段(例えば、スイッチ等)が用いられる。この切り替え手段は図示しないが、例えば、画像モニター32に表示されたボタンを、入力処理部39を介してタッチパネルで検出するように構成することができる。
【0060】
第1の実施形態である全体補正モードでは、レンズ系20の状態の変化を検出して像(像面)の補正を開始したが、この第2の実施形態である部分補正モードでは、図7に示すように、撮影者の部分補正モードの選択により開始される。具体的には、入力処理部39が部分補正モードの選択を受け付けると、部分補正モードが選択された旨の情報が補正トリガー部34に送信され、補正トリガー部34は、補正量演算部36に検知した情報(レンズ情報)を送信することにより補正トリガーをオンにし、補正量演算部36に対して補正の開始を指示する(ステップS200)。このカメラ1に全体補正モードが実装されているときは、部分補正モードが選択されたときに、全体補正モードはオフとなる。
【0061】
この部分補正モードでは、上述したように、画像モニター32に表示された被写体Oの画像から、撮像者にコントラスト(合焦状態)を調整したい箇所を選択させるため、補正量演算部36は、合焦部22により合焦レンズ20bの作動を制御して合焦処理を実行する(ステップS201)。
【0062】
次に、入力処理部39は、画像モニター32に表示された画像において、撮像者が補正したい補正点の選択を受け付け、入力された補正点(指定点)を補正量演算部36に送信する(ステップS202)。また、入力処理部39は、補正点の入力受付が完了したか否かを判断する(ステップS203)。例えば、画像モニター32において、被写体Oの画像に重ねて、選択完了のボタンを表示し、タッチパネルで検出する。入力処理部39が、まだ補正点の入力受付が完了していないと判断した場合(ステップS203:No)、入力処理部39は、ステップS202に戻って処理を繰り返す。図5(d)は、2つの補正点(指定点)P1,P2が選択された場合を示している。
【0063】
入力処理部39が、補正点の入力受付が完了したと判断した場合(ステップS203:Yes)、入力処理部39は、撮像者により選択された補正点(指定点)におけるコントラスト操作量を受け付け、入力されたコントラスト操作量を補正量演算部36に送信する(ステップS204)。ここで、コントラスト操作量に対しては、上述したように、コントラストを上げる(像PIを撮像センサ面PSに近づける)か、コントラストを下げる(像PIを撮像センサ面PSから遠ざける)かが選択される。
【0064】
補正量演算部36は、デフォーカス検出部35により、このデフォーカス検出部35で検出された像の、指定点におけるデフォーカス情報を取得する(ステップS205)。なお、指定点におけるデフォーカス情報が取得できない場合は、近傍のデフォーカス情報から補完等を行って取得する。
【0065】
補正量演算部36は、指定点の情報、コントラスト操作量及びデフォーカス情報に基づいて、補正レンズ20aの駆動情報を決定し、補正レンズ部21に駆動情報を送信する(ステップS206)。
【0066】
補正量演算部36から補正レンズ20aの駆動情報を受信した補正レンズ部21は、補正レンズ駆動部21bにより、駆動情報で示された目標位置に補正レンズ20aが近づく方向に、所定量だけ補正レンズ20aを移動させる(ステップS207)。補正レンズ部21は、ステップS207で移動された補正レンズ20aの位置を補正レンズ位置検出部21bにより取得し(ステップS208)、補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分(位置の差)を算出して比較する(ステップS209)。補正レンズ部21は、ステップS209で得られた補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分が許容値以下であるか否かを判断する(ステップS210)。
【0067】
補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下でないと判断した場合(ステップS210:No)、補正レンズ部21は、ステップS207に戻って上述した処理を繰り返す。また、補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下であると判断した場合(ステップS210:Yes)、像補正処理を終了する。
【0068】
なお、図5(d)では、画像上の2点P1,P2が選択された場合について説明したが、3点が選択された場合も、その3点が含まれる平面に対して像面非対象の補正を行うことで、選択された3点におけるコントラストを所望の状態に調整することができる。一方、4点以上が選択された場合は、選択された点から最小二乗平面又は最小二乗曲面を算出し、像面非対象補正又は像面湾曲補正(若しくは両方)を行うことで、選択された点におけるコントラストを所望の状態に近づけることができる。
【0069】
この第2の実施形態に係る撮像装置によれば、画面内(画像モニター32に表示された画像内)の特定の領域におけるコントラストを上げたり、逆に下げたりすることができる。すなわち、傾いた被写体をより鮮明に映し出すことや、主題以外のボカし量を増やすことで主題をはっきりとさせる効果を得ることができる。例えば、図5を用いて説明したように、第1の部分P1と第2の部分P2との2つの補正点(指定点)を選択した場合(3つ以上の部分を選択してもよい)、第1の部分P1及び第2の部分P2の少なくとも一方は、主要被写体の領域が選択されることにより、主要被写体(主題)の領域の結像状態であるコントラストを上げることにより、主要被写体(主題)をより鮮明に映し出し、主要被写体(主題)以外の領域をぼかすというような補正を行うことができる。
【0070】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、レンズ系20の像面を調整(補正)することにより、この像面と撮像部31の撮像センサ面とのズレを少なくし、これにより、画面全体のコントラストを最大にするように構成されている。この撮像装置(像補正方法)によると、例えば、図8(a)に示すように、被写体M1~M4が右から左にカメラ1から遠ざかるように並んでいる場合、中央の2名(M2,M3)にレンズ系20の焦点面(通常の焦点面)を合わせると、被写界深度外にいる左右の2名(M1,M4)がぼけてしまう(焦点を合わせることができずコントラストが下がる)。そのため、この第3の実施形態に係る撮像装置は、顔検出処理等により、被写体を検出し、検出された全ての被写体(主要被写体)に焦点が合う(コントラストが最大になる)ように制御する。
【0071】
図9に示すように、カメラ1のレンズ部2及びボディ部3の構成は、第1の実施形態と同じである(同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する)。但し、画像処理部33の情報が補正量演算部36に入力されるように構成されている。
【0072】
なお、第2の実施形態と同様に、第3の実施形態に係るカメラ1に、第1の実施形態で説明した像補正処理を設けてもよく、その場合は、第1の実施形態で説明した像補正処理(全体補正モード)と、この第3の実施形態として説明する像補正処理(この処理を「自動選択補正モード」と呼ぶ)との選択を可能とする切り替え手段(例えば、スイッチ等)が用いられる(図示せず)。
【0073】
図10に示すように、撮影者の操作により自動選択補正モードが選択されると、補正量演算部36は自動補正モードに移行し(ステップS300)、合焦部22により合焦レンズ20bの作動を制御して合焦処理を実行する(ステップS301)。
【0074】
次に、画像処理部33は、撮像部31で撮像された画像情報から、顔認識等の画像処理を行い、補正点を決定して補正量演算部36に送信する(ステップS302)。図8の例では4名の被写体M1~M4の顔の位置が補正点として決定される。
【0075】
補正量演算部36は、デフォーカス検出部35により、補正点におけるデフォーカス情報を取得する(ステップS303)。なお、補正点におけるデフォーカス情報が取得できない場合は、近傍のデフォーカス情報から補完等を行って取得する。
【0076】
補正量演算部36は、補正点におけるデフォーカス量が最小となる平面(最小二乗平面)を算出する(ステップS304)。また、補正量演算部36は、ステップS302で決定された補正点に対応する像面の位置が、撮像部31の撮像センサ面上に位置するように(図8(b)に示すように、レンズ系20の焦点面がステップS304で算出した最小二乗平面にフィットするように)、合焦レンズ20bと補正レンズ20aの駆動情報(合焦レンズ20bに対しては駆動量、補正レンズ20aに対しては駆動方向及び駆動量)を算出し、合焦部22及び補正レンズ部21に送信する(ステップS305)。なお、ステップS304において、補正点におけるデフォーカス量が最小となる曲面(最小二乗曲面)を算出しても、像面非対象補正と像面湾曲補正とを組み合わせることにより調整(補正)することができる。ステップS305において、合焦レンズ20bの駆動情報を算出するのは、レンズ系20の焦点面を最小二乗平面にフィットさせることにより、焦点面の位置が変化する場合があるからである。
【0077】
補正量算出部36から合焦レンズ20bの駆動情報を受信した合焦部22は、合焦レンズ駆動部22bにより、駆動情報で示された目標位置に合焦レンズ20bを移動させる(ステップS306)。
【0078】
また、補正量演算部36から補正レンズ20aの駆動情報を受信した補正レンズ部21は、補正レンズ駆動部21bにより、駆動情報で示された目標位置に補正レンズ20aが近づく方向に、所定量だけ補正レンズ20aを移動させる(ステップS307)。補正レンズ部21は、ステップS307で移動された補正レンズ20aの位置を補正レンズ位置検出部21bにより取得し(ステップS308)、補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分(位置の差)を算出して比較する(ステップS309)。補正レンズ部21は、ステップS309で得られた補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分が許容値以下であるか否かを判断する(ステップS310)。
【0079】
補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下でないと判断した場合(ステップS310:No)、補正レンズ部21は、ステップS307に戻って上述した処理を繰り返す。また、補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下であると判断した場合(ステップS310:Yes)、像補正処理を終了する。
【0080】
なお、被写体となる物体の認識には、顔認識以外のいずれかの手段を用いてもよい(例えば、機械学習を用いた画像認識を用いてもよい)。
【0081】
(第4の実施形態)
第1の実施形態では、像(像面)の状態を検出するために、位相差センサ等を用いて撮像部31で取得される画像情報のデフォーカス量(コントラスト)を取得していた。しかしながら、位相差センサは、撮像センサ面の所定の箇所のデフォーカス量(コントラスト)しか取得することができず、位相差センサが配置されていない箇所のデフォーカス量(コントラスト)は、近傍の位相差センサで取得された値から補間等を行って取得する必要ある。そこで、この第4の実施形態に係る撮像装置では、撮像部31及び画像処理部33で取得される画像情報の各々の画素のデフォーカス量(コントラスト)を取得して像(像面)を補正するように構成されている。
【0082】
図11に示すように、カメラ1のレンズ部2の構成は、第1の実施形態と同じである(同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する)。また、カメラ1のボディ部3には、第2の実施形態で説明した構成におけるデフォーカス検出部35に代えてデフォーカス量計算部310が設けられている。
【0083】
デフォーカス量計算部310は、撮像部31で取得されて画像処理部33で処理された画像情報から、画面内のコントラストを計算する機能を有している。また、合焦レンズ20bの合焦レンズ位置検出部22aより情報を受け取り、光軸方向に対する画面のコントラストの変化から、画面内のデフォーカス情報を読み取る機能も併せて有している。
【0084】
図12を用いて、この第4の実施形態に係る撮像装置の処理(像補正処理)について説明する。なお、ここでは、第2の実施形態又は第3の実施形態との組み合わせについては説明しないが、上述したように切り替えスイッチ等により切り替えられるように構成してもよい。
【0085】
補正トリガー部34は、カメラ部2に配置されたズームエンコーダ23、温度センサ24、ボディ部3に配置された姿勢センサ37、温度センサ38等により、レンズ系20の状態変化を検知すると(ステップS400)、当該状態変化が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS401)。補正トリガー部34が、状態変化が閾値以下であると判断した場合(ステップS401:Yes)、補正トリガー部34は、ステップS400に戻って処理を繰り返す。
【0086】
補正トリガー部34が、状態変化が閾値以下でないと判断した場合(ステップS401:No)、補正トリガー部34は、補正量演算部36に検知した情報(レンズ情報)を送信することにより補正トリガーをオンにし、補正量演算部36に対して補正の開始を指示する(ステップS402)。
【0087】
補正量演算部36は、補正トリガー部34により補正トリガーがオンにされたことを検知すると、合焦部22により合焦レンズ20bをフォーカス測定端の一方まで移動させる(ステップS403)。
【0088】
補正量演算部36は、合焦部22により、フォーカス測定端の他方に向けて、所定量だけ合焦レンズ20bを移動させる(ステップS404)。また、補正量演算部36は、撮像部31で現在の画像情報を取得し、画像処理部33で処理された画像情報をデフォーカス量計算部310に送信して、デフォーカス量計算部310により、画像情報から画素毎のコントラストを計算して一時的に記憶する(ステップS405)。なお、画素毎のコントラストは、合焦部22の合焦レンズ位置検出部22aで取得される合焦レンズ20bの位置情報ともに記憶される。そして、補正量演算部36は、合焦レンズ20bが他方のフォーカス端に位置しているか否かを判断する(ステップS406)。補正量演算部36が、合焦レンズ20bが他方のフォーカス端に位置していないと判断した場合(ステップS406:No)、補正量演算部36は、ステップS404に戻って処理を繰り返す。
【0089】
補正量演算部36が、合焦レンズ20bが他方のフォーカス端に位置していると判断した場合(ステップS406:Yes)、一時的に記憶されている画素毎の合焦レンズ20bの位置情報及びコントラスト情報から、画素毎のデフォーカス量を計算する(ステップS407)。
【0090】
補正量演算部36は、合焦部22により合焦処理を行い、合焦レンズ20bを所定の位置(ピント位置)に移動させる(ステップS408)。例えば、撮像領域の中心にある被写体に焦点が合うように合焦レンズ20bを移動させてもよいし、顔認識等で認識された被写体に焦点が合うように合焦レンズ20bを移動させてもよい。
【0091】
補正量演算部36は、ステップS407で算出された画素毎のデフォーカス量から、画面全体のコントラストが最良となるための補正レンズ20aの駆動情報(駆動方向及び駆動量)を決定し、補正レンズ部21に駆動情報を送信する(ステップS409)。
【0092】
補正量演算部36から補正レンズ20aの駆動情報を受信した補正レンズ部21は、補正レンズ駆動部21bにより、駆動情報で示された目標位置に補正レンズ20aが近づく方向に、所定量だけ補正レンズ20aを移動させる(ステップS410)。補正レンズ部21は、ステップS410で移動された補正レンズ20aの位置を補正レンズ位置検出部21bにより取得し(ステップS411)、補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分(位置の差)を算出して比較する(ステップS412)。補正レンズ部21は、ステップS412で得られた補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分が許容値以下であるか否かを判断する(ステップS413)。
【0093】
補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下でないと判断した場合(ステップS413:No)、補正レンズ部21は、ステップS410に戻って上述した処理を繰り返す。
【0094】
補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下であると判断した場合(ステップS413:Yes)、像補正処理を終了する。
【0095】
このように、第4の実施形態に係る撮像装置によると、撮像センサ面の任意の位置(画素)のデフォーカス量(コントラスト)を取得することができるので、画面全体のコントラストが改善されるように、像(像面)を調整(補正)することができる。
【0096】
なお、以上の説明では、画面内の全ての画素についてデフォーカス量やコントラストを取得していたが、一部の画素についてデフォーカス量やコントラストを取得して補正レンズ20aの駆動情報を決定してもよい。
【0097】
(第5の実施形態)
上述した第1~第4の実施形態では、レンズ系20の変化を検出したとき、又は、撮影者により補正処理の開始が選択されときに、必ず、補正レンズ20a等の駆動情報を算出して像(像面)の補正処理を行っていたが、この第5の実施形態では、過去に補正した情報(補正が開始されたときのレンズの状態やそのときの補正レンズ20a、合焦レンズ20bの駆動情報)を記憶しておき、現在の状態が記憶された情報と類似する状態になったときは、記憶された情報に基づいて補正レンズ20a及び合焦レンズ20bの移動させるように構成している。
【0098】
図13に示すように、カメラ1のレンズ部2の構成は、第1の実施形態と同じである(同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する)。また、カメラ1のボディ部3には、第1の実施形態で説明した構成に加えて、補正量記憶部311が設けられている。
【0099】
補正量記憶部311は、補正量演算部36で計算した補正レンズ20aの位置(駆動情報)と、各センサの値(レンズ情報)を関連付けて記憶する機能、及び、補正量演算部36の指令に応じてその保存した情報を読み出す機能を有している。
【0100】
図14に示すように、補正トリガー部34は、カメラ部2に配置されたズームエンコーダ23、温度センサ24、ボディ部3に配置された姿勢センサ37、温度センサ38等により、レンズ系20の状態変化を検知すると(ステップS500)、当該状態変化が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS501)。補正トリガー部34が、状態変化が閾値以下であると判断した場合(ステップS501:Yes)、補正トリガー部34は、ステップS500に戻って処理を繰り返す。
【0101】
補正トリガー部34が、状態変化が閾値以下でないと判断した場合(ステップS501:No)、補正トリガー部34は、補正量演算部36に検知した情報(レンズ情報)を送信することにより補正トリガーをオンにし、補正量演算部36に対して補正の開始を指示する(ステップS502)。
【0102】
補正量演算部36は、補正トリガー部34により補正トリガーがオンにされたことを検知すると、補正量記憶部311により、レンズ部2のズームエンコーダ23、温度センサ24、ボディ部3の姿勢センサ37、温度センサ38等のセンサから得られる現在の状態(レンズ情報)が、過去おいて実行された補正の状態(補正情報)と類似するか否かを判断する(ステップS503)。
【0103】
補正量記憶部311が、現在の状態と類似する、過去において実行された補正の状態が記憶されていないと判断した場合(ステップS503:No)、補正量演算部36は、合焦部22により合焦レンズ20bの作動を制御して合焦処理を実行する(ステップS504)。
【0104】
補正量演算部36は、デフォーカス検出部35により、撮像センサ面のセンターと周辺のデフォーカス量(コントラスト)を測定する(ステップS505)。補正量演算部36は、デフォーカス検出部35で得られたセンター及び周辺の5箇所のコントラストから、補正レンズ20aの駆動情報(駆動方向及び駆動量)を決定し、補正レンズ部21に駆動情報を送信し(ステップS506)、ステップS508に進む。
【0105】
補正量記憶部311が、現在の状態と類似する、過去において実行された補正の状態が記憶されていると判断した場合(ステップS503:Yes)、補正量記憶部311は類似する補正情報に含まれる駆動情報を読み出し、補正レンズ部21に当該駆動情報を送信し(ステップS507)、ステップS508に進む。
【0106】
補正量演算部36又は補正量記憶部311から補正レンズ20aの駆動情報を受信した補正レンズ部21は、補正レンズ駆動部21bにより、駆動情報で示された目標位置に補正レンズ20aが近づく方向に、所定量だけ補正レンズ20aを移動させる(ステップS508)。補正レンズ部21は、ステップS508で移動された補正レンズ20aの位置を補正レンズ位置検出部21bにより取得し(ステップS509)、補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分(位置の差)を算出して比較する(ステップS510)。補正レンズ部21は、ステップS510で得られた補正レンズ20aの現在位置と目標位置との差分が許容値以下であるか否かを判断する(ステップS511)。
【0107】
補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下でないと判断した場合(ステップS511:No)、補正レンズ部21は、ステップS508に戻って上述した処理を繰り返す。
【0108】
補正レンズ部21が、現在位置と目標位置との差分が許容値以下であると判断した場合(ステップS511:Yes)、補正量演算部36は、今回決定した駆動情報を補正量記憶部311に記憶させるか否かを判断する(ステップS512)。補正量演算部36が、ステップS503で類似の補正情報が記憶されていないと判断され、今回決定した駆動情報を補正量記憶部311に記憶させると判断した場合(ステップS512:Yes)、補正量演算部36は、補正量記憶部311により、今回決定した駆動情報を、レンズ部2のズームエンコーダ23、温度センサ24、ボディ部3の姿勢センサ37、温度センサ38等のセンサから得られた現在の状態と対応付けて記憶し(ステップS513)、像補正処理を終了する。補正量演算部36が、ステップS503で類似の補正情報が記憶されていたと判断され、今回決定した駆動情報を補正量記憶部311に記憶させないと判断した場合(ステップS512:No)、補正量演算部36は像補正処理を終了する。
【0109】
この第5の実施形態に係る撮像装置によると、像(像面)の補正を実行するときに、過去の補正情報を検索し、すでに類似する情報が存在する(記憶されている)ときは、補正レンズ20aの駆動情報を再度計算することなく、記憶されている情報を読み出して補正レンズ20aの作動を制御するため、撮影時の処理を簡略化することができ、カメラ1による撮影処理を高速化することができる。
【0110】
(第6の実施形態)
上述した第1~第5の実施形態では、主に、レンズ系20により形成される像面の像面非対称及び像面湾曲を調整することで、撮像部31で得られる画像情報の状態を調整する方法について述べたが、同様の方法で像における球面収差を調整する(補正する)ことも可能である。例えば、球面収差は、レンズ系20の変倍状態により変化するため、上述した補正トリガー部34が、ズームエンコーダ23でレンズ系20の焦点距離情報の変化を検出したときに、補正量演算部36で球面収差の補正を行うように構成することができる。具体的には、カメラ1の撮像センサ面の中心(光軸上)に点光源(または点光源に相当する被写体)の像を位置させ、球面収差の変化に対する感度が高いレンズ又はレンズ群(補正レンズ)を光軸方向に移動させる(上述したように、レンズ群内のレンズの間隔を変化させる)ことで、コントラストが最も高くなる位置を検出し、当該位置に補正レンズを位置させることで、球面収差を補正することができる。ここで、球面収差を補正する場合は、デフォーカス情報を、第4の実施形態として説明した画像情報から取得する方法を用いる必要がある。
【0111】
なお、球面収差の補正と、上述した第1~第5の実施形態における像補正方法とを組み合わせる場合は、補正トリガー部34によりトリガーがオンされたとき、まず、球面収差の補正を行い、続いて、第1~第5の実施形態における像補正方法を実行するように構成することが望ましい。
【0112】
また、レンズ系20の偏芯コマ収差についても、偏芯コマ収差の変化に対する感度が高いレンズ又はレンズ群をチルトさせることにより、上述した方法で補正することができる。
【0113】
従来の像補正方法では、製造時に記録した最上の収差補正位置と、別の撮像装置に取り付けたときの最上の収差補正位置は必ずしも一致せず、撮像装置の部品誤差や組み立て誤差、外力や熱変形によっても最上の収差補正位置は変化してしまう。また、レンズ部の側にも各所にガタがあるため、重力方向の変化によってセンサと光学系(レンズ系)全体ないしは一部のレンズの相対位置関係が変化してしまう。
【0114】
一方、上述した第1~第6の実施形態に係る撮像装置(像補正方法)によると、現在の撮影状態から補正レンズ等の補正情報(駆動情報)を決定することができるので、レンズ部2とボディ部3との組み合わせや、撮影環境に関わらず、最適な画像(画像情報)を取得することができる。また、画面内の特定の領域におけるコントラストを上げたり、逆に下げたりすることができるので、傾いた被写体をより鮮明に映し出すことや、主題以外のボカし量を増やすことで主題をはっきりとさせる効果を得ることができる。
【実施例
【0115】
以下に2つの実施例について説明する。
【0116】
(第1実施例)
図15は、第1実施例に係るレンズ系20である、変倍光学系ZL1の構成を示す図である。なお、図15に示す変倍光学系ZL1の断面図の下部には、広角端状態(W)から中間焦点距離状態(M)を経て望遠端状態(T)に変倍する際の各レンズ群G1~G5の光軸に沿った移動方向が矢印で示されている。
【0117】
また、この実施例において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐定数をKとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で表される。なお、以降の実施例において、「E-n」は「×10-n」を示す。
【0118】
S(y)=(y2/r)/{1+(1-K×y2/r21/2
+A4×y4+A6×y6+A8×y8+A10×y10+A12×y12 (a)
【0119】
なお、各実施例において、2次の非球面係数A2は0である。また、各実施例の表中において、非球面には面番号の右側に*印を付している。
【0120】
この図15に示す変倍光学系ZL1は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5と、から構成されている。
【0121】
この変倍光学系ZL1において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸レンズL12とを接合した接合レンズ、及び、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13で構成されている。また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズの物体側のレンズ面に樹脂層を設けて非球面形状が形成された負レンズL21、両凹レンズL22、両凸レンズL23、及び、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL24で構成されている。また、第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸レンズL31、両凸レンズL32と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL33とを接合した接合レンズ、及び、両凸レンズL34で構成されている。また、第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側のレンズ面が非球面形状に形成された両凹レンズ形状の負レンズL41と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL42とを接合した接合レンズである負の屈折力を有する第4Aレンズ群G4A、及び、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL43である負の屈折力を有する第4Bレンズ群G4Bで構成されている。また、第5レンズ群G5は、物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸レンズL51、及び、両凸レンズL52と像側のレンズ面が非球面形状に形成された負メニスカスレンズ形状の負レンズL53とを接合した接合レンズで構成されている。また、開口絞りSは、第3レンズ群G3の物体側に配置されている。また、負レンズL41及び負レンズL53はガラスモールド非球面レンズである。
【0122】
この変倍光学系ZL1は、広角端状態から望遠端状態への変倍に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が減少し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が増大し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が減少するように、各レンズ群が光軸に沿って物体側に移動するように構成されている。なお、開口絞りSは第3レンズ群G3と一体に移動する。また、第3レンズ群G3と第5レンズ群G5は、像面に対する移動量が等しくなるように構成されている。
【0123】
また、この変倍光学系ZL1において、無限遠から近距離物点への合焦は、第2レンズ群G2を物体側に移動させることにより行うように構成されている。
【0124】
また、この変倍光学系ZL1において、手振れ発生時の像位置の補正(防振)は、第4レンズ群G4の第4Aレンズ群G4Aを光軸と直交する方向の変位成分を持つように移動させることにより行う。なお、全系の焦点距離がfで、防振係数(手振れ発生時の像位置の補正での第4Aレンズ群G4Aの移動量に対する結像面での像移動量の比)がKのレンズで角度θの回転ぶれを補正するには、防振群である第4Aレンズ群G4Aを(f・tanθ)/Kだけ光軸と直交方向に移動させればよい(以降の実施例においても同様である)。この第1実施例の広角端状態においては、防振係数は-0.65であり、焦点距離は16.49(mm)であるので、0.50°の回転ぶれを補正するための第4Aレンズ群G4Aの移動量は-0.22(mm)である。また、この第1実施例の中間焦点距離状態においては、防振係数は-0.79であり、焦点距離は35.00(mm)であるので、0.50°の回転ぶれを補正するための第4Aレンズ群G4Aの移動量は-0.39(mm)である。また、この第1実施例の望遠端状態においては、防振係数は-0.99であり、焦点距離は77.79(mm)であるので、0.50°の回転ぶれを補正するための第4Aレンズ群G4Aの移動量は-0.68(mm)である。
【0125】
以下の表1に、変倍光学系ZL1の諸元の値を掲げる。この表1において、全体諸元に示すfは全系の焦点距離、FNOはFナンバー、ωは半画角、Yは最大像高、TLは全長、及び、BFはバックフォーカスの値を、広角端状態、中間焦点距離状態及び望遠端状態毎に表している。ここで、全長TLは、無限合焦時の最も物体側のレンズ面(図1における第1面)から像面Iまでの光軸上の距離を示している。また、バックフォーカスBFは、無限遠合焦時の最も像面側のレンズ面(図1における第32面)から像面Iまでの光軸上の距離(空気換算長)を示している。また、レンズデータにおける第1欄mは、光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序(面番号)を、第2欄rは、各レンズ面の曲率半径を、第3欄dは、各光学面から次の光学面までの光軸上の距離(面間隔)を、第4欄nd及び第5欄νdは、d線(λ=587.6nm)に対する屈折率及びアッベ数を示している。また、曲率半径0.000は平面を示し、空気の屈折率1.00000は省略してある。なお、表1に示す面番号1~32は、図1に示す番号1~32に対応している(なお、図1において、一部の面番号のみを示している)。また、レンズ群焦点距離は第1~第5レンズ群G1~G5の各々の始面と焦点距離を示している。
【0126】
ここで、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔d、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、これらの符号の説明及び諸元表の説明は以降の実施例においても同様である。
【0127】
(表1)第1実施例
[全体諸元]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.49 ~ 35.00 ~ 77.79
FNo = 2.72 ~ 3.38 ~ 4.16
ω = 43.2 ~ 22.0 ~ 10.4
Y = 14.75 ~ 14.75 ~ 14.75
TL = 130.371 ~ 146.181 ~ 171.571
BF = 37.994 ~ 49.378 ~ 63.528
BF(空気換算長)= 37.994 ~ 49.378 ~ 63.528

[レンズデータ]
m r d nd νd
物面 ∞
1 142.08408 1.800 1.84666 23.8
2 61.98900 6.800 1.59319 67.9
3 2234.55748 0.100
4 54.61907 4.400 1.81600 46.6
5 160.87634 D5
6* 111.35036 0.200 1.56093 36.6
7 74.66256 1.200 1.81600 46.6
8 13.29818 6.450
9 -26.94042 1.000 1.81600 46.6
10 41.14663 0.800
11 38.15106 4.500 1.84666 23.8
12 -28.49989 0.500
13 -21.99346 1.000 1.88300 40.7
14 -53.69291 D14
15 0.00000 1.600 開口絞りS
16 237.40240 3.500 1.54814 45.8
17 -29.52544 0.150
18 41.68613 4.200 1.51742 52.2
19 -26.94900 1.100 1.90200 25.3
20 -425.16586 0.100
21 37.61777 2.850 1.49782 82.6
22 -64.06628 D22
23* -69.82119 0.800 1.79050 45.0
24 24.82010 2.000 1.90200 25.3
25 100.53108 2.550
26 -22.07831 1.000 1.81600 46.6
27 -33.57787 D27
28 0.00000 4.600 1.49782 82.6
29 -20.99670 0.100
30 71.45078 6.100 1.49782 82.6
31 -20.04840 1.200 1.88202 37.2
32* -55.06437 BF
像面 ∞

[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
第1レンズ群 1 86.49
第2レンズ群 6 -13.10
第3レンズ群 15 24.85
第4レンズ群 23 -35.11
第5レンズ群 28 36.01
【0128】
この変倍光学系ZL1において、第6面、第23面及び第32面は非球面形状に形成されている。次の表2に、非球面のデータ、すなわち円錐定数K及び各非球面定数A4~A12の値を示す。
【0129】
(表2)
[非球面データ]
第 6面 K= 1.00000e+00
A4 A6 A8 A10 A12
1.91866e-05 -3.07743e-08 -1.44905e-10 1.15106e-12 -1.98690e-15
第23面 K= 1.00000e+00
A4 A6 A8 A10 A12
3.75789e-06 -1.80254e-08 0.00000e+00 0.00000e+00 0.00000e+00
第32面 K= 1.00000e+00
A4 A6 A8 A10 A12
7.46360e-06 8.05331e-09 -4.65179e-11 2.16314e-13 0.00000e+00
【0130】
この変倍光学系ZL1において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔D5、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3(開口絞りS)との軸上空気間隔D14、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔D22、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との軸上空気間隔D27、及び、バックフォーカスBFは、上述したように、変倍に際して変化する。次の表3に、無限遠合焦状態及び至近合焦状態での広角端状態(W)、中間焦点距離状態(M)及び望遠端状態(T)の各焦点距離状態における可変間隔を示す。なお、D0は変倍光学系ZL1の最も物体側の面(第1面)から物体までの距離を示し、βは倍率を示す(以降の実施例においても同様である)。
【0131】
(表3)
[可変間隔データ]
無限遠 至近
W M T W M T
D0 ∞ ∞ ∞ 219.63 203.82 178.43
β - - - -0.0648 -0.1260 -0.2249
f 16.49 35.00 77.79 - - -
D5 2.100 17.730 35.502 0.885 15.776 31.579
D14 18.846 7.642 1.110 20.061 9.596 5.033
D22 1.434 6.306 9.411 1.434 6.306 9.411
D27 9.397 4.525 1.420 9.397 4.525 1.420
BF 37.994 49.378 63.528 37.994 49.378 63.528
【0132】
この第1実施例に係る変倍光学系ZL1において、像面非対称に対しては、変倍光学系ZL1の最も像側のレンズ又はレンズ群をシフトすることにより補正する。具体的には、第5レンズ群G5をシフトすることにより調整(補正)することができる。また、像面湾曲に対しては、変倍光学系ZL1の最も像側のレンズ群を光軸方向に移動させることにより補正する。具体的には、第5レンズ群G5を光軸方向に移動させて第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔を変化させることにより調整(補正)することができる。また、球面収差に対しては、変倍光学系ZL1の最も像側のレンズ又はレンズ群を光軸方向に移動させることにより補正する。具体的には、第5レンズ群G5を構成する両凸レンズL52と負レンズL53とを接合した接合レンズを光軸方向に移動させて、この第5レンズ群G5内のレンズの間隔を変化させる。また、第2レンズ群G2を構成する両凸レンズL23及び負メニスカスレンズL24を光軸方向に移動させて、この第2レンズ群G2内のレンズの間隔を変化させることでも球面収差を調整(補正)することができる。また、偏芯コマ収差に対しては、変倍光学系ZL1の開口絞りSと当該開口絞りSの像側に配置されたレンズ群とを一体にチルトさせることにより補正する。具体的には、開口絞りS及び第3レンズ群G3をチルトすることにより調整(補正)することができる。
【0133】
この変倍光学系ZL1の、無限遠合焦時の広角端状態、中間焦点距離状態及び望遠端状態における球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図及び横収差図を図16に示す。各収差図において、FNOはFナンバー、Aは半画角(単位は[°])、NAは開口数、H0は物体高をそれぞれ示す。なお、球面収差図では最大口径に対応するFナンバー又は開口数の値を示し、非点収差図及び歪曲収差図では半画角又は物体高の最大値をそれぞれ示し、横収差図では各半画角又は各物体高の値を示す。dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。また、以降に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。これらの各収差図より、この変倍光学系ZL1は、広角端状態から望遠端状態にわたって諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0134】
(第2実施例)
図17は、第2実施例に係るレンズ系20である変倍光学系ZL2の構成を示す図である。なお、図17に示す変倍光学系ZL2の断面図の下部には、広角端状態(W)から中間焦点距離状態(M)を経て望遠端状態(T)に変倍する際の各レンズ群G1~G5の光軸に沿った移動方向が矢印で示されている。
【0135】
本実施例に係る変倍光学系ZL2は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0136】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群G1Aと、正の屈折力を有する後群G1Bとからなる。
前群G1Aは、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11からなる。
後群G1Bは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12と両凸形状の正レンズL13との接合レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14とからなる。
【0137】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と、負の屈折力を有する第1負部分群G2Aと、負の屈折力を有する第2負部分群G2Bとからなる。
第1負部分群G2Aは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合レンズからなる。
第2負部分群G2Bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL24と物体側に凸面を向けた平凸形状の正レンズL25との接合レンズからなる。
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL32との接合レンズからなる。
【0138】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1部分レンズ群G4Aと、負の屈折力を有する第2部分レンズ群G4Bと、正の屈折力を有する第3部分レンズ群G4Cとからなる。
第1部分レンズ群G4Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた平凸形状の正レンズL41と、両凸形状の正レンズL42と両凹形状の負レンズL43との接合レンズとからなる。
第2部分レンズ群G4Bは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL44と両凹形状の負レンズL45との接合レンズと、両凹形状の負レンズL46とからなる。
第3部分レンズ群G4Cは、物体側から順に、両凸形状の正レンズL47と、両凸形状の正レンズL48と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL49とからなる。
【0139】
本実施例に係る変倍光学系ZL2において、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間には、開口絞りSが配置されている。第4レンズ群G4中の第1部分レンズ群G4Aと第2部分レンズ群G4Bとの間には、フレアカット絞りFSが配置されている。
本実施例に係る変倍光学系ZL2は、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔が増加し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔が減少するように、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とを光軸方向へ移動させることにより、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。このとき、第1レンズ群G1、第4レンズ群G4及び開口絞りSは、いずれも光軸方向の位置が固定である。
本実施例に係る変倍光学系ZL2は、第1レンズ群G1中の後群G1Bを合焦レンズ群として光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
【0140】
本実施例に係る変倍光学系ZL2は、第4レンズ群G4中の第2部分レンズ群G4Bを防振レンズ群として光軸と直交する方向の成分を含むように移動させることにより防振を行う。
ここで、レンズ全系の焦点距離がf、防振係数(防振時の防振レンズ群の移動量に対する像面I上での像の移動量の比)がKであるレンズにおいて、角度θの回転ぶれを補正するためには、防振レンズ群を(f・tanθ)/Kだけ光軸と直交する方向へ移動させればよい。
したがって、本実施例に係る変倍光学系ZL2は、広角端状態において防振係数が-1.28、焦点距離が71.40(mm)であるため、0.60°の回転ぶれを補正するための第2部分レンズ群G4Bの移動量は0.58(mm)となる。また、望遠端状態においては防振係数が-1.28、焦点距離が194.00(mm)であるため、0.40°の回転ぶれを補正するための第2部分レンズ群G4Bの移動量は1.06(mm)となる。
【0141】
以下の表4に、本実施例に係る変倍光学系ZL2の諸元の値を掲げる。
表4において、fは焦点距離、BFはバックフォーカス(最も像側のレンズ面と像面Iとの光軸上の距離)を示す。
[面データ]において、面番号は物体側から数えた光学面の順番、rは曲率半径、dは面間隔(第n面(nは整数)と第n+1面との間隔)、ndはd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、νdはd線(波長λ=587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、可変は可変の面間隔、絞りSは開口絞りS、絞りFSはフレアカット絞りFS、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示している。
【0142】
(表4)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 140.3879 3.2500 1.487490 70.31
2 399.4846 16.2331 1.000000
3 151.1551 2.0000 1.903660 31.27
4 77.3360 6.2000 1.497820 82.57
5 -417.8459 0.1000 1.000000
6 72.3229 5.2000 1.497820 82.57
7 810.3397 可変 1.000000
8 -398.4538 1.3000 1.834810 42.73
9 49.6681 3.9000 1.000000
10 -83.0944 1.2500 1.618000 63.34
11 54.6110 2.5500 1.846660 23.80
12 399.8540 1.4500 1.000000
13 -70.8083 1.2500 1.729160 54.61
14 84.0230 2.1500 1.846660 23.80
15 ∞ 可変 1.000000
16 204.9027 5.2000 1.717000 47.98
17 -32.6310 1.4000 1.903660 31.27
18 -73.6790 可変 1.000000
19(絞りS) ∞ 0.4000 1.000000
20 49.2393 3.7500 1.772500 49.62
21 ∞ 0.3000 1.000000
22 35.5052 4.9000 1.497820 82.57
23 -162.2410 1.8500 1.903660 31.27
24 41.9940 14.3500 1.000000
25(絞りFS) ∞ 0.5000 1.000000
26 85.3575 4.0000 1.805180 25.45
27 -47.5520 1.2000 1.603110 60.69
28 54.4401 4.0000 1.000000
29 -254.0256 1.2000 2.000690 25.46
30 63.7889 3.9000 1.000000
31 81.7216 4.0000 1.589130 61.22
32 -81.7216 0.7000 1.000000
33 77.7312 4.2000 1.719990 50.27
34 -77.7312 6.5000 1.000000
35 -41.7728 2.0000 1.834000 37.18
36 -200.4805 BF 1.000000
像面 ∞

[各種データ]
変倍比 2.72

W M T
f 71.4 135.0 194.0
FNO 4.1 4.1 4.1
ω 17.4° 8.9° 6.2°
Y 21.6 21.6 21.6
TL 218.3 218.3 218.3
BF 63.693 63.693 63.693

W M T
d7 2.435 27.748 37.096
d15 25.093 13.529 1.423
d18 15.877 2.127 4.886

[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 100.018
1A 1 442.202
1B 3 122.385
2 8 -28.545
3 16 100.062
4 19 85.726
【0143】
この第2実施例に係る変倍光学系ZL2において、像面非対称に対しては、変倍光学系ZL2の最も像側のレンズ又はレンズ群をシフトすることにより補正する。具体的には、第4レンズ群G4の第3部分レンズ群G4Cをシフトする。また、第2レンズ群G2をシフトするか、開口絞りSと第4レンズ群G4の第1部分レンズ群G4Aをシフトすることにより像面非対称を調整(補正)することができる。また、像面湾曲に対しては、変倍光学系ZL2の最も像側のレンズ群を光軸方向に移動させることにより補正する。具体的には、第4レンズ群G4の第3部分レンズ群G4Cを光軸方向に移動させて第2部分レンズ群G4Bと第3部分レンズ群G4Cとの間隔を変化させることにより調整(補正)することができる。また、球面収差に対しては、変倍光学系ZL2の最も像側のレンズ又はレンズ群を光軸方向に移動させることにより補正する。具体的には、第4レンズ群G4の第3部分レンズ群G4Cを構成する負メニスカスレンズL49を光軸方向に移動させて、この第3部分レンズ群G4C内のレンズの間隔を変化させることにより調整(補正)することができる。また、偏芯コマ収差に対しては、変倍光学系ZL1の開口絞りSと当該開口絞りSの像側に配置されたレンズ群とを一体にチルトさせることにより補正する。具体的には、開口絞りSと第4レンズ群G4の第1部分レンズ群G4Aとをチルトする。また、第4レンズ群G4の第3部分レンズ群G4Cを構成する負メニスカスレンズL49をシフトするか、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL12と両凸形状の正レンズL13との接合レンズと、正メニスカスレンズL14とをチルトすることにより偏芯コマ収差を調整(補正)することができる。
【0144】
図18(a)、図18(b)、及び図18(c)はそれぞれ、本願の第2実施例に係る変倍光学系ZL2の広角端状態、中間焦点距離状態、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0145】
各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高をそれぞれ示す。dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)における収差をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。
なお、後述する各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。
各収差図より、本実施例に係る変倍光学系は、広角端状態から望遠端状態にわたって諸収差が良好に補正されて優れた結像性能を有しており、さらに防振時にも優れた結像性能を有していることがわかる。
【符号の説明】
【0146】
1 カメラ(撮像装置)
2 レンズ部(撮影レンズ) 3 ボディ部(カメラボディ)
20 レンズ系 20a 補正レンズ(調整部)
23 ズームエンコーダ(レンズ系状態検出部)
31 撮像部 33 画像処理部 34 補正トリガー部(状態変化検出部)
35 デフォーカス検出部(像状態検出部)
36 補正量演算部(制御部、駆動情報算出部)
39 入力処理部(設定部)
310 デフォーカス量計算部(像状態検出部) 311 補正量記憶部(記憶部)
図1
図2
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